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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/10 20060101AFI20230725BHJP
   F01P 11/12 20060101ALI20230725BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20230725BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20230725BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230725BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
F01P11/10 K
F01P11/12 D
F01P5/04 G
F01P5/06 510A
E02F9/00 D
B60K11/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020046681
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148025
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】組谷 賢次郎
(72)【発明者】
【氏名】中原 涼太
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121676(JP,A)
【文献】特開2016-61180(JP,A)
【文献】特開2014-144678(JP,A)
【文献】実開昭54-98929(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
F01P 5/00
E02F 9/00
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが収容される機械室の内部に配置された冷却器と、
上記機械室から吸気口へ延び、屈曲部を有する風路と、
上記風路と上記冷却器との間に設けられた防塵フィルタと、
上記吸気口から上記冷却器へ向かう正風を発生させ、該冷却器よりも該正風の下流側に設けられる冷却ファンと、
上記屈曲部の外側コーナーの内壁面において該屈曲部よりも上記正風の下流側に設けられ、該正風の上流側に開口部を有し、該正風の下流側に底部を有し、該屈曲部を通過する異物を該正風から慣性分離させて該底部へ回収可能な集塵ポケットと、を備え、
上記冷却ファンは、上記冷却器から上記吸気口へ向かう逆風を発生させ、該逆風によって上記防塵フィルタに付着した異物を吹き飛ばすことが可能であり、
上記集塵ポケットは、上記開口部に回動軸及び該回動軸を中心に回動可能な蓋部を有し、
上記蓋部は上記正風及び上記逆風によって回動可能であり、上記正風時に上記開口部を開放し、上記逆風時に該開口部を閉塞することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
上記集塵ポケットは、上記風路の内壁面と該内壁面よりも内側に上記正風の上流側へ延びる仕切り壁とを備え、
上記蓋部は、上記仕切り壁の上部に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
上記蓋部から上記集塵ポケットの外側へ延びる風受け部をさらに備え、
上記風受け部が上記正風を受けて該正風の下流側へ回動すると上記蓋部が連動して上記開口部を開放し、
上記風受け部が上記逆風を受けて上記正風の上流側へ回動すると上記蓋部が連動して上記開口部を閉塞することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
上記蓋部及び上記風受け部は、上記正風時に上記開口部が開放された状態及び上記逆風時に上記開口部が閉塞された状態で該正風及び該逆風に対する空気抵抗を低減させる角度で上記仕切り壁の上端において回動可能に連結されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の建設機械において、
上記風受け部は、屈折して上記開口部が閉塞された状態で先端側が上記正風の上流側へ延びるように形成された屈折部を有することを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の建設機械において、
上記蓋部と上記仕切り壁との間に、上記回動軸から該蓋部よりも短く延び、該蓋部の該仕切り壁への衝突を防止する蓋部ストッパを有し、
上記風受け部と上記仕切り壁との間に、上記回動軸から該風受け部よりも短く延び、該風受け部の該仕切り壁への衝突を防止する風受け部ストッパを有し、
上記蓋部ストッパ及び上記風受け部ストッパは、上記蓋部及び上記風受け部とともに回動することを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の建設機械において、
上記集塵ポケットには、上記風路の外部かつ上記機械室の外部へ通じ、該集塵ポケット内を減圧する通気孔が設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上部旋回体の車両後部にエンジンが設置される機械室が設けられ、その機械室内にエンジンを冷却するための冷却器及び冷却ファンが配置された建設機械が知られている。冷却ファンは吸気口から冷却器へ向かって正風(冷却風)を送り、冷却器にはこの正風の上流側に空気中の粉塵等の異物を捕集するための防塵フィルタが取り付けられている。
【0003】
防塵フィルタに堆積した異物を放っておくと、防塵フィルタのメッシュ穴がふさがって空気が通過し難くなりオーバーヒートの原因となるため、防塵フィルタから異物を取り除くためのクリーニングを行う必要がある。特に、産業廃棄現場や解体現場のように、粉塵等が大量に浮遊する環境下で建設機械を使用すると、クリーニングを頻繁に行う必要があるため、建設機械の作業効率が低下するという問題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1には、防塵フィルタのクリーニングに起因する作業効率の低下を抑制できるように、吸気口から吸気室との接続部までの間に屈曲部を有し、屈曲部の外側コーナーの内壁面の下流側に集塵ポケットが設けられた建設機械が開示されている。この作業機械では、目詰まりを生じさせる比較的サイズの大きい異物の一部又は全部を屈曲部において慣性分離して集塵ポケット内に回収できるように構成されている。
【0005】
また、特許文献2には、防塵フィルタ(防塵ネット)に付着した粉塵等の異物を、人為的作業を必要とせずに排出できるように、正逆回転可能な冷却ファンを備えたリサイクル機械が開示されている。このリサイクル機械では、冷却ファンが正風の下流側から上流側へ向かって逆風を送ることにより防塵フィルタに付着堆積していた粉塵等を吹き飛ばして落下させると同時に排出口の蓋体が開放することにより、落下した粉塵等が外方へ排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特願2019-015508号
【文献】特開2007-307464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の建設機械の冷却ファンは、吸気口から冷却器へ向かう正風を送るものであり、逆風は想定されていない。この建設機械に正逆回転可能な冷却ファンを適用した場合、下流側から上流側へ向かって逆風を送った際に、集塵ポケットに集められた異物が舞い上がって集塵ポケットの外に飛散してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に記載のリサイクル機械では、粉塵等と正風とを分離して回収することはできず、単に防塵ネットから粉塵等を吹き飛ばして排出するだけであるので、逆風によって粉塵等が再び防塵フィルタに付着してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、冷却ファンの正風によって回収された集塵ポケット内の異物が、防塵フィルタを清掃するための冷却ファンの逆風によって飛散することを防止した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る建設機械は、異物を回収する粉塵ポケットの開口部に冷却ファンの正風及び逆風によって開口部を開閉可能とする蓋部を設けた。
【0011】
具体的には、第1の発明では、エンジンが収容される機械室の内部に配置された冷却器と、上記機械室から吸気口へ延び、屈曲部を有する風路と、上記風路と上記冷却器との間に設けられた防塵フィルタと、上記吸気口から上記冷却器へ向かう正風を発生させ、該冷却器よりも該正風の下流側に設けられる冷却ファンと、上記屈曲部の外側コーナーの内壁面において該屈曲部よりも上記正風の下流側に設けられ、該正風の上流側に開口部を有し、該正風の下流側に底部を有し、該屈曲部を通過する異物を該正風から慣性分離させて該底部へ回収可能な集塵ポケットと、を備え、上記冷却ファンは、上記冷却器から上記吸気口へ向かう逆風を発生させ、該逆風によって上記防塵フィルタに付着した異物を吹き飛ばすことが可能であり、上記集塵ポケットは、上記開口部に回動軸及び該回動軸を中心に回動可能な蓋部を有し、上記蓋部は上記正風及び上記逆風によって回動可能であり、上記正風時に上記開口を開放し、上記逆風時に上記開口部を閉塞する。
【0012】
上記の構成によると、機械室から吸気口へ延びる風路の屈曲部は、外側コーナーの内壁面において屈曲部よりも正風の下流側に集塵ポケットを有するので、冷却器の正風によって、吸気口から吸気された外気に含まれる粉塵等(以下、異物とする)のうち、熱交換器等に目詰まりを生じさせる比較的サイズの大きい異物(以下、大径異物とする)の一部又は全部を吸気筒の屈曲部において慣性分離して集塵ポケットに回収することができる。すなわち、大径異物の一部又は全部は、吸気口から吸気された空気のように屈曲部で滑らかに方向転換することはできず、屈曲部の外側コーナーの内壁面に衝突した後、その内壁面に沿って進み、その後、集塵ポケットの底部に回収される。
【0013】
この集塵ポケットは、開口部に冷却ファンによる正風及び逆風によって開閉可能な蓋部を有するため、異物を回収する場合は開口部を開放し、異物を回収しない場合には開口部を閉塞することが可能である。そのため、冷却ファンが防塵フィルタに付着した異物を除去すべく冷却器から吸気口へ向かう逆風を送った際には、蓋部が開口部を閉塞するように構成することが可能であり、集塵ポケット内に回収された異物が舞い上げられて集塵ポケットの外へ飛散することを防止できる。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、上記集塵ポケットは、上記風路の内壁面と該内壁面よりも内側に上記正風の上流側へ延びる仕切り壁とを備え、上記蓋部は、上記仕切り壁の上部に設けられている。
【0015】
上記の構成によると、風路の内壁面よりも内側に位置する仕切り壁の方がより正風及び逆風を受けやすい。そのため仕切り壁の上部に蓋部を設けることで、正風及び逆風による蓋部の開閉動作が容易となる。
【0016】
第3の発明では、第2の発明において、上記蓋部から上記集塵ポケットの外側へ延びる風受け部をさらに備え、上記風受け部が上記正風を受けて該正風の下流側へ回動すると上記蓋部が連動して上記開口部を開放し、上記風受け部が上記逆風を受けて上記正風の上流側へ回動すると上記蓋部が連動して上記開口部を閉塞する。
【0017】
上記の構成によると、風受け部が正風及び逆風を受けて回動することによって、蓋部が連動するため、複雑な開閉機構を設けることなく簡易な機構で正風及び逆風を利用して自動的に開口部を開閉することができる。
【0018】
第4の発明では、第3の発明において、上記蓋部及び上記風受け部は、上記正風時に上記開口部が開放された状態及び上記逆風時に上記開口部が閉塞された状態で該正風及び該逆風に対する空気抵抗を低減させる角度で上記仕切り壁の上端において回動可能に連結されている。
【0019】
上記の構成によると、正風時に開口部が開放された状態において、蓋部が正風の抵抗を受け難い角度に延び、逆風時に開口部が閉塞された状態において、風受け部が逆風の抵抗を受け難い角度に延びるので、蓋部及び風受け部が正風及び逆風の空気抵抗となるのを防止できる。
【0020】
第5の発明では、第3又は第4の発明において、上記風受け部は、屈折して上記開口部が閉塞された状態で先端側が上記正風の上流側へ延びるように形成された屈折部を有する。
【0021】
上記の構成によると、屈曲部によって風受け部が正風及び逆風を捉えやすくなるため、蓋部の開閉動作が容易となる。
【0022】
第6の発明では、第3から第5のいずれかの発明において、上記蓋部と上記仕切り壁との間に、上記回動軸から該蓋部よりも短く延び、該蓋部の該仕切り壁への衝突を防止する蓋部ストッパを有し、上記風受け部と上記仕切り壁との間に、上記回動軸から該風受け部よりも短く延び、該風受け部の該仕切り壁への衝突を防止する風受け部ストッパを有し、上記蓋部ストッパ及び上記風受け部ストッパは、上記蓋部及び上記風受け部とともに回動する。
【0023】
上記の構成によると、蓋部ストッパ及び風受け部ストッパは、蓋部及び風受け部の慣性モーメントを大きく増加させることなく、蓋部及び風受け部が仕切り壁に衝突することを防止することが可能となる。
【0024】
第7の発明では、第1から第6のいずれかの発明において、上記集塵ポケットには、上記風路の外部かつ上記機械室の外部へ通じ、該集塵ポケット内を減圧する通気孔が設けられている。
【0025】
上記の構成によると、通気孔によって集塵ポケット内を減圧させることが可能となるため、逆風時に蓋部が集塵ポケットの開口部を閉塞しやすくなり、正風時には一旦集塵ポケット内に回収された異物が風圧によって集塵ポケットの外へ押し出されてしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によると、冷却ファンの正風によって回収された集塵ポケット内の異物が、防塵フィルタを清掃するための冷却ファンの逆風によって飛散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図である。
図2】実施形態に係る建設機械における上部旋回体の内部構成を示す背面模式図である。
図3】第1実施形態に係る建設機械の正風時における風路を示す模式図である。
図4】第1実施形態に係る建設機械の逆風時における風路を示す模式図である。
図5】第1実施形態に係る建設機械から集塵ケースを取り出す際の模式図である。
図6】第2実施形態に係る建設機械の正風時における風路を示す模式図である。
図7】第2実施形態に係る建設機械の逆風時における風路を示す模式図である。
図8】第3実施形態に係る建設機械の正風時における風路を示す模式図である。
図9】第3実施形態に係る建設機械の逆風時における風路を示す模式図である。
図10】第4実施形態に係る建設機械の正風時における風路を示す模式図である。
図11】第4実施形態に係る建設機械の逆風時における風路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態)
以下、実施形態に係る建設機械について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図であり、図2は、実施形態に係る建設機械における上部旋回体の内部構成を示す背面模式図である。なお、図1及び図2においては、上下や前後左右の方向を矢印で示しており、特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれらの矢印で示す方向に従って説明する。また、下記の説明において、「正風」とは吸気口から冷却器へ向かう空気の流れであり、「逆風」とは冷却器から吸気口へ向かう空気の流れである。また、「上流」とは正風の上流であり、「下流」とは正風の下流である。
【0030】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る建設機械10は、例えば油圧ショベルであり、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体20とを備えている。上部旋回体20には、アタッチメント13、キャブ14、機械室15、アッパーフレーム21等が設けられている。建設機械10は、例えば小旋回型であり、旋回半径が小さくなるように、上部旋回体20は相対的に小さく構成されている。
【0031】
アッパーフレーム21は、上部旋回体20の下部に設置されており、キャブ14及び機械室15は、アッパーフレーム21の上に設けられている。キャブ14は、例えば矩形箱形の運転室であり、アタッチメント13に隣接して上部旋回体20に設置されている。機械室15は、上部旋回体20の後部に設置されている。
【0032】
機械室15は、上部旋回体20の後部の外周縁に沿って搭載されたカウンタウエイト22と、カウンタウエイト22と共に機械室15の周囲を覆う機械室カバー16とによって区画されている。
【0033】
機械室15の内部には、エンジン31が収容されている。機械室15の内部には、エンジン31の他にも、油圧ポンプ32、冷却器35、冷却ファン33、吸気ダクト40等の冷却装置が配置されている。具体的には、空気流通方向の上流側から順に、吸気ダクト40、冷却器35、冷却ファン33、エンジン31及び油圧ポンプ32が横並びに配置されている。機械室15の内部は、垂直に延びる壁部17によって、冷却器35、冷却ファン33及びエンジン31が配置されたエンジン室15aと、吸気ダクト40が配置された吸気室15bとに仕切られている。
【0034】
機械室15には、外部に開口した吸気口50aへ延びる吸気筒50が接続されている。具体的には、吸気室15bの上面となる機械室カバー16の左側上部に設けられた開口に、吸気筒50の接続部50bが取り付けられている。一方、エンジン室15aの上面となる機械室カバー16の右側上部には、排気口16aが設けられている。
【0035】
冷却器35は、コア面が車両左右方向を向くように配置されており、例えばラジエータから構成されている。
【0036】
冷却ファン33は、正転状態で吸気口50aから冷却器35へ向かう正風Xを発生させ、逆転状態で冷却器35から吸気口50aへ向かう逆風Yを発生させる。冷却ファン33によって発生した正風X及び逆風Yは吸気筒50の内部(風路50d)を通過する。冷却ファン33は、エンジン31の駆動軸の左端部に接続され、冷却器35よりも下流側において、エンジン31と冷却器35との間に設けられている。冷却ファン33の周囲は、ファンシュラウド34によって覆われており、冷却器35を通過した空気がエンジン31に向かって導かれるようになっている。
【0037】
油圧ポンプ32は、エンジン31の駆動軸の右端部に接続されている。風路50dと冷却器35との間には、吸気ダクト40が設けられている。吸気ダクト40は、冷却器35の吸気側を密閉して囲むダクトであり、吸気ダクト40の吸気口には、冷却器35等に目詰まりを生じさせる大径ダストを除去するための防塵フィルタ44が設けられている、
建設機械10では、エンジン31の駆動時に、機械室15の内部に左側から右側ヘ向かう空気の流れ(正風X)が形成され、冷却器35においてその空気と熱交換する冷媒によってエンジン31等が冷却される。具体的には、冷却ファン33の正転によって吸気筒50の吸気口50aから外気が正風Xとして機械室15の内部に取り入れられる。取り入れられた空気は、吸気筒50、吸気室15b、防塵フィルタ44、吸気ダクト40を通過してエンジン室15aに入り、冷却器35を通過する際に冷却器35を流れる冷媒の熱を吸熱して熱気となり、排気口16aから機械室15の外に排出される。
【0038】
防塵フィルタ44の清掃を行う際は、冷却ファン33を逆転状態で作動させる。冷却ファン33が逆転状態で作動したとき、冷却ファン33から防塵フィルタ44を介して吸気口50aへ向かう右側から左側へ向かう空気の流れ(逆風Y)が形成される。この逆風Yによって防塵フィルタ44の上流側に付着した異物が吹き飛ばされることによって清掃を行うことができる。
【0039】
本実施形態は、防塵フィルタ44の他にも、外部からの吸気によって取り込まれた異物を回収する機構を備えている。
【0040】
風路50d(吸気筒50)は、吸気口50aから接続部50bまでの間に屈曲部50cを有する。風路50dには、屈曲部50cの外側コーナー側の内壁面50eにおいて、屈曲部50cよりも下流側に集塵ポケット51が設けられている。
【0041】
集塵ポケット51は、図3に示すように、吸気筒50における屈曲部50cの外側コーナー側の内壁面50eにおいて、屈曲部50cよりも下流側に設けられている。集塵ポケット51は、風路50dの内壁面50eと内壁面50eよりも内側に上流側へ延びる仕切り壁51aを備える。集塵ポケット51は上流側が開放された開口部51bを有し、下流側に底部51cを有する。集塵ポケット51は、開口部51bに回動軸60及び回動軸60を中心に回動可能な蓋部61を有する。
【0042】
吸気筒50の吸気口50aから吸気された正風Xに含まれる異物のうち、冷却器35等に目詰まりを生じさせる大径の異物Dの一部又は全部を、屈曲部50cを通過する際に正風Xから慣性分離させて集塵ポケット51の底部51cへ回収することができる。すなわち、大径異物Dの一部又は全部は、吸気口50aから吸気された正風X(図2の実線矢印参照)のように屈曲部50cで遠心力等の影響で、屈曲部50cの外側コーナーの内壁面50eに衝突した後、内壁面50eに沿って進み、その後、集塵ポケット51に回収される(図2の破線矢印参照)。
【0043】
回動軸60は仕切り壁51aの上部に設けられ、前後方向に延びており、回動軸60から集塵ポケット51へ向かって蓋部61が延びている。蓋部61は開口部51bを覆うほどの大きさであり、正風X及び逆風Yによって回動することにより開口部51bを開閉可能である。
【0044】
集塵ポケット51は、蓋部61から集塵ポケット51の外側(風路50d側)へ延びる風受け部62をさらに備える。風受け部62は回動軸60によって蓋部61と連結されており、例えば、蓋部61と風受け部62とは、ほぼ一直線上にある。
【0045】
図3中、二点鎖線で示すように、蓋部61の端部が吸気筒50の内壁面50eへ当接して開口部51bを閉塞し、風受け部62が風路50dを遮るように延びている状態から正風Xを発生させると、風受け部62は風路50dにおいて正風Xを受けて上流側から下流側へ回動し、蓋部61は風受け部62と連動して開口部51bを開放する。また、図4中、二点鎖線で示すように、風受け部62が下流側に延び、蓋部61が開口部51bを開放した状態から逆風Yを発生させると、風受け部62が風路50dにおいて逆風Yを受けて下流側から上流側へ回動し、蓋部61は風受け部62と連動して開口部51bを閉塞する。
【0046】
なお、図5に示すように、吸気筒50は、屈曲部50cよりも下流側において屈曲部50cの外側コーナー側に扉53が設けられ、開閉可能となっている。この扉53を開放し、扉53の内側に着脱可能に設置された集塵ポケット51内の集塵ケース57を吸気筒50の外部へ露出させて扉53から取り外すことにより、集塵ケース57内に堆積した異物Dを排出することができる。
【0047】
以上のように構成した第1実施形態の建設機械10によれば、機械室15から吸気口50aへ延びる風路50dの屈曲部50cは、外側コーナーの内壁面50eに集塵ポケット51を有するので、冷却ファン33の正風Xによって、吸気口50aから吸気された外気に含まれる異物の一部又は全部を屈曲部50cにおいて慣性分離して集塵ポケット51に回収することができる。
【0048】
さらに、この集塵ポケット51は、開口部51bに正風X及び逆風Yによって開閉可能な蓋部61を有するため、異物Dを回収する場合は開口部51bを開放し、異物Dを回収しない場合には開口部51bを閉塞することが可能である。そのため、防塵フィルタ44に付着した異物を除去すべく逆風Yを送った際に、蓋部61が開口部51bを閉塞することが可能であり、集塵ポケット51内に回収された異物Dが舞い上げられて集塵ポケット51の外へ飛散することを防止できる。また、集塵ポケット51の仕切り壁51aの上部に蓋部61を設け、集塵ポケット51の外側へ延びる風受け部62と蓋部61とを連動させることにより、蓋部61の開口部51bにおける開閉動作はより容易となる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態に係る建設機械10について説明する。図6及び図7は本発明の第2実施形態を示し、蓋部と風受け部とがなす角度が上記第1実施形態と異なる。なお、以下の各実施形態では、図3及び図4と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
第1実施形態において、蓋部61と風受け部62はほぼ一直線上に延びていたが、第2実施形態では、蓋部161と風受け部162は、正風X時に開口部51bが開放された状態及び逆風Y時に開口部51bが閉塞された状態で、正風X及び逆風Yに対する空気抵抗を低減させる角度で仕切り壁51aの上端において回動可能に連結されている。
【0051】
具体的には、図6に示すように、正風X時に開口部51bが開放された状態において、蓋部161は吸気口50aの方向へ向かって斜め上へ傾いた状態である。この状態において、蓋部161は正風Xが蓋部161周辺を流れる方向とほぼ同じ方向に延びているため、正風Xに対する空気抵抗を低減させることができる。
【0052】
さらに、図7に示すように、逆風Y時に開口部51bが閉塞された状態において、風受け部162は吸気口50aの方向へ向かって斜め上へ傾いた状態である。この状態において、風受け部162は逆風Yが風受け部162周辺を流れる方向とほぼ同じ方向に延びているため、逆風Yに対する空気抵抗を低減させることができる。
【0053】
このように構成した第2実施形態の建設機械10によれば、蓋部161及び風受け部162が正風X及び逆風Yの空気抵抗となるのを防止することができる。
【0054】
また、図6及び図7に示すように、集塵ポケット51には、風路50dの外部かつ機械室15の外部へ通じ、集塵ポケット51内を減圧する通気孔51dが設けられていることが好ましい。通気孔51dは、開口部51bが閉塞された状態で蓋部61よりも下流側の内壁面50eを貫通させて設けられ、外部と通じている。
【0055】
集塵ポケット51内を減圧する通気孔51dが設けられていることにより、逆風Y時に蓋部161が集塵ポケット51の開口部51bを閉塞しやすくなり、正風X時には一旦集塵ポケット51内に回収された異物Dが風圧によって集塵ポケット51の外へ押し出されてしまうことを防ぐことができる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態に係る建設機械10について説明する。図8及び図9は本発明の第3実施形態を示し、風受け部の形態が上記第1実施形態と異なる。
【0057】
第3実施形態において風受け部262は屈折しており、図8に二点鎖線で示すように、開口部51bが閉塞された状態で先端側が正風Xの上流側へ延びるように形成された屈折部262aを有する。
【0058】
屈折部262aによって風受け部262が正風Xを捉えやすくなるため、開口部51bが閉塞されやすくなる。また、図9に二点鎖線で示すように、開口部51bが開放された状態で屈折部262aから先端側が風路50dの内側へ延びているため、風受け部262が逆風Yを捉えやすくなるため、開口部51bが開放されやすくなる。
【0059】
次に、本発明の第4実施形態に係る建設機械10について、説明する。図10及び図11は本発明の第4実施形態を示し、蓋部及び風受け部のストッパを備える点で上記他の実施形態と異なる。
【0060】
第4実施形態に係る建設機械10は、蓋部61と仕切り壁51aとの間に、回動軸60から蓋部61よりも短く延びる蓋部ストッパ71と、風受け部62と仕切り壁51aとの間に、回動軸60から風受け部62よりも短く延びる風受け部ストッパ72を有する。蓋部ストッパ71及び風受け部ストッパ72は、蓋部61及び風受け部62とともに回動する。
【0061】
蓋部ストッパ71は開口部51bが閉塞される際に、蓋部61よりも先に仕切り壁51aへ衝突するため、蓋部61が仕切り壁51aへ衝突するのを防止する。また、風受け部62は開口部51bが解放される際に、風受け部62よりも先に仕切り壁51aへ衝突するため、風受け部62が仕切り壁51aへ衝突するのを防止する。
【0062】
蓋部ストッパ71及び風受け部ストッパ72を蓋部61及び風受け部62よりも短くしたことにより、蓋部61及び風受け部62の慣性モーメントを大きく増加させることなく、蓋部61及び風受け部62が仕切り壁51aに衝突するのを防止することが可能となる。
【0063】
なお、蓋部ストッパ71及び風受け部ストッパ72はどのような材質であってもよいが、蓋部61及び風受け部62よりも比重の軽い材質を用いることで慣性モーメントをより低減させることができる。
【0064】
上記実施形態では、建設機械はクローラ式の油圧ショベルとしたが、ホイール式の油圧ショベル、移動式クレーンなど他の建設機械でもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、冷却ファンは、正転状態で正風を発生させ、逆転状態で逆風を発生させるが、正風及び逆風の発生方法は冷却ファンの正転及び逆転に限定されることはなく、例えば、冷却ファンの羽根の角度を変化させることによって正風及び逆風の切り替えを行う構成としてもよい。
【0066】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0067】
10 建設機械
11 下部走行体
13 アタッチメント
14 キャブ
15 機械室
16 機械室カバー
17 壁部
20 上部旋回体
21 アッパーフレーム
22 カウンタウエイト
31 エンジン
32 油圧ポンプ
33 冷却ファン
34 ファンシュラウド
35 冷却器
40 吸気ダクト
44 防塵フィルタ
50 吸気筒
50a 吸気口
50b 接続部
50c 屈曲部
50d 風路
50e 内壁面
51 集塵ポケット
51a 仕切り壁
51b 開口部
51c 底部
51d 通気孔
53 扉
57 集塵ケース
60 回動軸
61,161 蓋部
62,162,262 風受け部
262a 屈折部
71 蓋部ストッパ
72 風受け部ストッパ
X 正風
Y 逆風
D 異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11