(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230725BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20230725BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 A
H02M3/155 V
(21)【出願番号】P 2020107017
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩史
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-059217(JP,A)
【文献】特開2015-092798(JP,A)
【文献】特表2005-509396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/04
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電力を出力する系統電源との接続に用いられる系統端子と、
電源用蓄電装置との接続に用いられる電源端子と、
負荷との接続に用いられる負荷端子と、
前記系統端子に入力される前記系統電力を特定電圧の直流電力に変換するAC/DC変換回路と、
前記AC/DC変換回路に接続され、前記特定電圧の直流電力の電圧変換を行うDC/DC変換回路と、
前記AC/DC変換回路及び前記DC/DC変換回路を制御する制御部と、
を備え、
前記DC/DC変換回路は、
第1スイッチング素子、第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を直列に接続する第1接続線と、
前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を直列に接続する第2接続線と、
前記第1接続線と前記電源端子とを接続する電源線と、
前記電源線上に設けられた第1コイルと、
前記第2接続線と前記負荷端子とを接続する負荷線と、
前記負荷線上に設けられた第2コイルと、
を備え、
前記制御部は、前記各スイッチング素子を制御するものであることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電源装置は、前記負荷としての対象蓄電装置を充電するものである請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記特定電圧が、前記電源用蓄電装置の電圧である電源電圧と、前記対象蓄電装置の電圧である負荷電圧との双方よりも高くなるように前記AC/DC変換回路を制御し、且つ、前記特定電圧の直流電力が降圧変換されるように前記各スイッチング素子を制御する請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電源用蓄電装置としての蓄電池を系統電源としての電力系統に系統連系させた電源装置について記載されている。当該電源装置は、電源用蓄電装置から出力される電力を系統電力に変換して電力系統に出力することにより、電力系統に接続された負荷への電力供給を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電源装置としては、例えば効率の観点から、系統電力に変換することなく電源用蓄電装置を用いた負荷への電力供給を行いたい場合がある。また、電源装置としては、例えば系統電力を用いて負荷への電力供給を行ったり、系統電力を用いて電源用蓄電装置への電力供給を行うことにより電源用蓄電装置の充電を行ったりしたい場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は電源用蓄電装置を用いた負荷への電力供給や、系統電力を用いた電源用蓄電装置又は負荷への電力供給を行うことができる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する電源装置は、系統電力を出力する系統電源との接続に用いられる系統端子と、電源用蓄電装置との接続に用いられる電源端子と、負荷との接続に用いられる負荷端子と、前記系統端子に入力される前記系統電力を特定電圧の直流電力に変換するAC/DC変換回路と、前記AC/DC変換回路に接続され、前記特定電圧の直流電力の電圧変換を行うDC/DC変換回路と、前記AC/DC変換回路及び前記DC/DC変換回路を制御する制御部と、を備え、前記DC/DC変換回路は、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子及び第3スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を直列に接続する第1接続線と、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を直列に接続する第2接続線と、前記第1接続線と前記電源端子とを接続する電源線と、前記電源線上に設けられた第1コイルと、前記第2接続線と前記負荷端子とを接続する負荷線と、前記負荷線上に設けられた第2コイルと、を備え、前記制御部は、前記各スイッチング素子を制御するものであることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、各スイッチング素子を制御することにより、系統電力に変換することなく電源用蓄電装置を用いた負荷への電力供給を行うことができる。また、各スイッチング素子を制御することにより、系統電力を用いて、電源用蓄電装置又は負荷への電力供給を行うことができる。特に、本構成によれば、3つのスイッチング素子という比較的簡素な構成によって、これらの電力供給を実現することができる。
【0008】
上記電源装置は、前記負荷としての対象蓄電装置を充電するものであるとよい。
かかる構成によれば、系統電源又は電源用蓄電装置を用いて対象蓄電装置を充電することができる。これにより、状況に応じて適切な電源を選択しながら対象蓄電装置を充電することを通じて、充電効率の向上や系統電源が逼迫している状況等に対応することができる。
【0009】
上記電源装置について、前記制御部は、前記特定電圧が、前記電源用蓄電装置の電圧である電源電圧と、前記対象蓄電装置の電圧である負荷電圧との双方よりも高くなるように前記AC/DC変換回路を制御し、且つ、前記特定電圧の直流電力が降圧変換されるように前記各スイッチング素子を制御するとよい。
【0010】
かかる構成によれば、電源電圧は電源用蓄電装置のSOCに応じて変動し、負荷電圧は対象蓄電装置のSOCに応じて変動する。この場合、特定電圧と、電源電圧及び負荷電圧との大小関係が逆転すると、DC/DC変換回路としては、昇圧変換と降圧変換とを切り替える必要が生じ、制御が煩雑なものとなったり、回路構成が複雑になったりするといった不都合が生じ得る。
【0011】
この点、本構成によれば、特定電圧が電源電圧及び負荷電圧の双方よりも高くなるため、特定電圧と、電源電圧及び負荷電圧との大小関係の逆転が生じない。これにより、DC/DC変換回路の回路構成及び制御の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、電源用蓄電装置を用いた負荷への電力供給や、系統電力を用いた電源用蓄電装置又は負荷への電力供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、電源装置及び当該電源装置を備えた電力システムの一実施形態について説明する。本実施形態では、電源装置は、工場や商業施設などに設置されている。すなわち、本実施形態の電力システムは、家庭用ではなく商業用または産業用である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の電力システム10は、車両20に設けられた対象蓄電装置としての車両用蓄電装置21への電力供給を行うものであり、系統電源11とは異なる電源用蓄電装置12と、電源装置30と、を備えている。
【0016】
系統電源11は、例えば3相の系統電力P0を出力するものである。系統電源11が供給可能な系統電力P0の最大値は、電力会社との契約内容又は他の電力システムの電力使用状況等に応じて変動する。
【0017】
電源用蓄電装置12は、例えば二次電池や電気二重層キャパシタなどである。電源用蓄電装置12の電圧である電源電圧Vpは、電源用蓄電装置12のSOC(充電状態)に応じて変動する。一例としては、電源電圧Vpは、電源用蓄電装置12のSOCが高くなるに従って高くなる。詳細には、電源電圧Vpは、最小電源電圧Vpminから最大電源電圧Vpmaxまでの範囲内に亘って変動する。
【0018】
車両用蓄電装置21は、例えば二次電池や電気二重層キャパシタなどである。本実施形態では、負荷電圧Vrの直流電力が車両用蓄電装置21に入力されることにより、車両用蓄電装置21の充電が行われる。このため、負荷電圧Vrは、車両用蓄電装置21の電圧であり、車両用蓄電装置21が充電するのに必要な電圧といえる。また、負荷電圧Vrは、負荷の要求電圧ともいえる。
【0019】
車両用蓄電装置21の電圧である負荷電圧Vrは、車両用蓄電装置21の種類やSOC(充電状態)に応じて変動する。例えば、車両用蓄電装置21がリチウムイオン電池である場合と鉛蓄電池である場合とで負荷電圧Vrは異なる。また、一般的に、負荷電圧Vrは、車両用蓄電装置21のSOCが高くなるに従って高くなる。
【0020】
ここで、本電力システム10において想定される負荷電圧Vrの最小値を最小負荷電圧Vrminといい、負荷電圧Vrの最大値を最大負荷電圧Vrmaxという。負荷電圧Vrは、最小負荷電圧Vrminから最大負荷電圧Vrmaxまでの範囲内に亘って変動する。
【0021】
本実施形態では、最小電源電圧Vpminは最小負荷電圧Vrminよりも低く、最大電源電圧Vpmaxは最小負荷電圧Vrminよりも高い。詳細には、Vpmin<Vrmin<Vpmaxとなっている。このため、両蓄電装置12,21のSOCに応じて、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも低くなる場合と、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも高くなる場合とがある。なお、電源用蓄電装置12及び車両用蓄電装置21の具体的な構成は任意である。
【0022】
本実施形態の最大負荷電圧Vrmaxは、最大電源電圧Vpmaxよりも高く設定されている(Vrmax>Vpmax)。つまり、本電力システム10は、負荷電圧Vrが最大電源電圧Vpmaxよりも高くなり得る車両用蓄電装置21を有する車両20にも適用することができる。これにより、本電力システム10に適用可能な車両用蓄電装置21の範囲を広げることができる。したがって、汎用性の向上を図ることができる。
【0023】
電源装置30は、系統電源11との接続に用いられる系統端子31~33を備えている。系統電源11が系統端子31~33に接続されることにより、系統電源11から出力される系統電力P0が電源装置30に入力される。系統端子31~33は、系統電力P0が入力される系統入力部ともいえる。
【0024】
なお、本実施形態では、三相の系統電力に対応させて、系統端子31~33は3つである。但し、これに限られず、単相の系統電力P0に対応させて、系統端子は2つでもよい。すなわち、系統電力P0は単相でもよいし、三相でもよい。
【0025】
電源装置30は、電源用蓄電装置12との接続に用いられる電源端子34,35を備えている。電源端子34,35は、電源装置30と電源用蓄電装置12とを電気的に接続するためのものであり、電源用蓄電装置12の正極端子及び負極端子に接続されるものである。詳細には、両電源端子34,35のうち正極電源端子34は電源用蓄電装置12の正極端子に接続され、負極電源端子35は電源用蓄電装置12の負極端子に接続される。電源用蓄電装置12が電源端子34,35に接続されることにより、電源装置30と電源用蓄電装置12との間で電力の授受が可能となる。
【0026】
電源装置30は、車両20と電気的に接続するのに用いられる負荷接続部としてのコネクタ40を有している。コネクタ40が車両20に接続されることにより、電源装置30と車両用蓄電装置21とが電気的に接続される。コネクタ40は、負荷と電源装置30とを接続するための接続部ともいえる。
【0027】
コネクタ40は、車両用蓄電装置21との接続に用いられる負荷端子41,42を備えている。負荷端子41,42は、電源装置30と車両用蓄電装置21とを電気的に接続するためのものである。詳細には、両負荷端子41,42のうち正極負荷端子41は、車両用蓄電装置21の正極端子に接続されるものであり、負極負荷端子42は、車両用蓄電装置21の負極端子に接続されるものである。両負荷端子41,42が車両用蓄電装置21に接続されることにより、電源装置30と車両用蓄電装置21とで電力の授受が可能となる。
【0028】
電源装置30は、負極電源端子35と負極負荷端子42とを接続する負極線LN0を有している。これにより、電源装置30を介して、電源用蓄電装置12と車両用蓄電装置21との負極同士が電気的に接続される。
【0029】
本実施形態では、説明の便宜上、コネクタ40の数は1つとする。ただし、これに限られず、電源装置30は、互いに並列に接続された複数のコネクタ40を有しており、複数の車両20と同時に接続可能となっている構成でもよい。この場合、電源装置30は、複数の車両20に対して同時に電力供給を行うことができる。
【0030】
以上のとおり、電源装置30は、系統電源11、電源用蓄電装置12及び車両20(詳細には車両用蓄電装置21)に接続可能に構成されている。そして、本実施形態の電源装置30は、系統電源11又は電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行うように構成されている。
【0031】
電源装置30について説明する。
図1に示すように、電源装置30は、系統電力P0を特定電圧Vmの直流電力に変換するAC/DC変換回路50と、AC/DC変換回路50によって変換された特定電圧Vmの直流電力が入力されるDC/DC変換回路60と、AC/DC変換回路50とDC/DC変換回路60との間に設けられた中間コンデンサ51と、を備えている。
【0032】
AC/DC変換回路50は、例えば系統電力P0を昇圧しつつ整流することにより、系統電力P0を特定電圧Vmの直流電力に変換する。なお、AC/DC変換回路50の具体的な構成は任意である。例えばAC/DC変換回路50は、Dual Active Bridge方式のマトリックスコンバータなどでもよい。
【0033】
中間コンデンサ51には、特定電圧Vmの直流電力が入力される。この場合、中間コンデンサ51によって特定電圧Vmの直流電力に含まれるノイズが低減されるとともに、電圧が安定化されている。つまり、中間コンデンサ51は、特定電圧Vmを維持するもの、換言すればAC/DC変換回路50からの出力電圧が変動するのを抑制するものとして機能している。
【0034】
DC/DC変換回路60は、中間コンデンサ51を介してAC/DC変換回路50に接続されている。DC/DC変換回路60には、特定電圧Vmの直流電力が入力される。また、DC/DC変換回路60は、電源端子34,35及び負荷端子41,42の双方に接続されている。これにより、DC/DC変換回路60は、電源用蓄電装置12及び車両用蓄電装置21の双方に接続される。換言すれば、DC/DC変換回路60は、電源端子34,35を介して電源用蓄電装置12に接続され、負荷端子41,42を介して車両用蓄電装置21に接続される。
【0035】
DC/DC変換回路60は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、第3スイッチング素子Q3と、第1接続線LN1と、第2接続線LN2と、を備えている。
【0036】
各スイッチング素子Q1~Q3は、例えばパワーMOSFETであり、ボディダイオードを有している。ただし、各スイッチング素子Q1~Q3の具体的な構成は任意であり、例えばIGBTなどでもよい。
【0037】
第1接続線LN1は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを直列に接続している。第2接続線LN2は、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを直列に接続している。各スイッチング素子Q1~Q3は、両接続線LN1,LN2によって互いに直列に接続されている。
【0038】
各スイッチング素子Q1~Q3の直列接続体は、中間コンデンサ51と並列接続された状態でAC/DC変換回路50に接続されている。これにより、各スイッチング素子Q1~Q3の直列接続体には、特定電圧Vmの直流電力が入力される。
【0039】
DC/DC変換回路60は、第1接続線LN1と電源端子としての正極電源端子34とを接続する電源線LN3と、電源線LN3上に設けられた第1コイル61と、第2接続線LN2と負荷端子としての正極負荷端子41とを接続する負荷線LN4と、負荷線LN4上に設けられた第2コイル62と、を備えている。
【0040】
また、DC/DC変換回路60は、各スイッチング素子Q1~Q3の直列接続体(詳細には第3スイッチング素子Q3)と負極負荷端子42とを接続するグランド線LN5を備えている。負極線LN0は、グランド線LN5に接続されることにより、負極負荷端子42に接続される。
【0041】
DC/DC変換回路60は、電源線LN3における第1コイル61と正極電源端子34とを接続する部分とグランド線LN5とに接続された第1コンデンサ63と、電源線LN3における第2コイル62と正極負荷端子41とを接続する部分とグランド線LN5とに接続された第2コンデンサ64と、を備えている。
【0042】
ここで、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを1つのスイッチング素子とみなせば、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3と、第1コイル61とによって第1昇降圧回路71が構成されているといえる。第1昇降圧回路71は、中間コンデンサ51を介してAC/DC変換回路50に接続されているとともに電源端子34,35によって電源用蓄電装置12に接続されており、特定電圧Vmの直流電力を降圧変換して電源用蓄電装置12に出力する。
【0043】
同様に、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とを1つのスイッチング素子とみなせば、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、第3スイッチング素子Q3と、第2コイル62とによって第2昇降圧回路72が構成されているといえる。第2昇降圧回路72は、中間コンデンサ51を介してAC/DC変換回路50に接続されているとともに負荷端子41,42によって車両用蓄電装置21に接続されている。第2昇降圧回路72は、特定電圧Vmの直流電力を降圧変換して車両用蓄電装置21に出力したり、電源用蓄電装置12の電力を降圧変換して車両用蓄電装置21に出力したりすることができる。
【0044】
ちなみに、第1昇降圧回路71及び第2昇降圧回路72は、第2スイッチング素子Q2を共有した状態で並列に接続されているといえる。すなわち、本実施形態のDC/DC変換回路60は、電源用蓄電装置12に接続された第1昇降圧回路71と、車両用蓄電装置21に接続され、第1昇降圧回路71に並列に接続された第2昇降圧回路72と、を備えているともいえる。
【0045】
電源装置30は、電源用蓄電装置12の電圧である電源電圧Vpを検出する電源電圧センサ81と、車両用蓄電装置21の電圧である負荷電圧Vrを検出する負荷電圧センサ82と、を備えている。
【0046】
電源電圧センサ81は、電源線LN3及び負極線LN0に接続されており、両電源端子34,35間の電圧を検出する。負荷電圧センサ82は、負荷線LN4及びグランド線LN5に接続されており、両負荷端子41,42間の電圧を検出する。
【0047】
電源装置30は、AC/DC変換回路50及びDC/DC変換回路60を制御する制御部としての制御ECU83を備えている。制御ECU83は、両電圧センサ81,82に接続されており、両電圧センサ81,82から出力される検出結果を受信することにより、電源電圧Vp及び負荷電圧Vrを把握する。
【0048】
制御ECU83は、特定電圧Vmが電源電圧Vp及び負荷電圧Vrの双方よりも高くなるようにAC/DC変換回路50を制御する。なお、特定電圧Vmは、電源電圧Vp及び負荷電圧Vrに応じて変動する可変値でもよいし、予め定められた固定値でもよい。例えば、特定電圧Vmは、最大電源電圧Vpmax及び最大負荷電圧Vrmaxの双方よりも高くてもよい。
【0049】
制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、電力制御を行う。
例えば、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、特定電圧Vmの直流電力を用いて電源用蓄電装置12を充電することができる。一例としては、制御ECU83は、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3を同期させた状態で、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力を電源電圧Vpの直流電力に変換する。この場合、制御ECU83は、第1昇降圧回路71を降圧動作させているといえる。これにより、電源用蓄電装置12の充電が行われる。なお、第3スイッチング素子Q3は常時ON状態でもよい。
【0050】
例えば、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、特定電圧Vmの直流電力を用いて車両用蓄電装置21を充電することができる。一例としては、制御ECU83は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を同期させた状態で、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2と、第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。この場合、制御ECU83は、第2昇降圧回路72を降圧動作させているといえる。これにより、車両用蓄電装置21への電力供給が行われ、車両用蓄電装置21の充電が行われる。なお、第1スイッチング素子Q1は常時ON状態でもよい。
【0051】
例えば、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、特定電圧Vmの直流電力を用いて電源用蓄電装置12及び車両用蓄電装置21の双方を同時に充電することができる。一例としては、制御ECU83は、まず電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致するように各スイッチング素子Q1~Q3を制御する。詳細には、制御ECU83は、電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致するように、両蓄電装置12,21のうちいずれか一方の蓄電装置を充電する。そして、制御ECU83は、電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致したことに基づいて、第2スイッチング素子Q2を常時ON状態とし、第1スイッチング素子Q1と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力を電源電圧Vp又は負荷電圧Vrの直流電力に変換する。これにより、両蓄電装置12,21が同時に充電される。
【0052】
例えば、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、系統電力P0に変換することなく、電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行うことができる。
【0053】
一例としては、仮に電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも高い場合には、制御ECU83は、第1スイッチング素子Q1を常時OFF状態とし、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより電源電圧Vpの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。この場合、制御ECU83は、AC/DC変換回路50の変換動作を停止させてもよい。
【0054】
一方、仮に電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも低い場合、制御ECU83は、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも十分に高くなるように、特定電圧Vmの直流電力を用いて電源用蓄電装置12を充電する。そして、制御ECU83は、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも十分に高くなったことに基づいて、第1スイッチング素子Q1を常時OFF状態とし、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより電源電圧Vpの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。なお、特定電圧Vmの直流電力を用いた電源用蓄電装置12の充電は、車両20がコネクタ40に接続される前に行われてもよい。
【0055】
同様に、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、車両用蓄電装置21を用いて電源用蓄電装置12への電力供給を行うことができる。
一例としては、仮に負荷電圧Vrが電源電圧Vpよりも低い場合には、第1スイッチング素子Q1を常時OFF状態とし、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、負荷電圧Vrの直流電力を電源電圧Vpの直流電力に変換する。この場合、制御ECU83は、AC/DC変換回路50の変換動作を停止させてもよい。
【0056】
次に本実施形態の作用について説明する。
AC/DC変換回路50によって系統電力P0が特定電圧Vmの直流電力に変換される。そして、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、特定電圧Vmの直流電力を用いた電源用蓄電装置12への電力供給や、車両用蓄電装置21への電力供給が行われる。また、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、電源用蓄電装置12から車両用蓄電装置21への電力供給が行われる。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)電源装置30は、系統電力P0を出力する系統電源11との接続に用いられる系統端子31~33と、電源用蓄電装置12との接続に用いられる電源端子34,35と、負荷としての車両用蓄電装置21との接続に用いられる負荷端子41,42と、を備えている。
【0058】
電源装置30は、系統端子31~33に入力される系統電力P0を特定電圧Vmの直流電力に変換するAC/DC変換回路50と、AC/DC変換回路50に接続され、特定電圧Vmの直流電力の電圧変換を行うDC/DC変換回路60と、AC/DC変換回路50及びDC/DC変換回路60を制御する制御ECU83と、を備えている。
【0059】
DC/DC変換回路60は、第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3と、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を直列に接続する第1接続線LN1と、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3を直列に接続する第2接続線LN2と、を備えている。DC/DC変換回路60は、第1接続線LN1と電源端子としての正極電源端子34とを接続する電源線LN3と、電源線LN3上に設けられた第1コイル61と、を備えている。DC/DC変換回路60は、第2接続線LN2と負荷端子としての正極負荷端子41とを接続する負荷線LN4と、負荷線LN4上に設けられた第2コイル62と、を備えている。制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3を制御するものである。
【0060】
かかる構成によれば、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、系統電力P0に変換することなく電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行うことができる。また、各スイッチング素子Q1~Q3を制御することにより、系統電力P0を用いて、電源用蓄電装置12又は車両用蓄電装置21への電力供給を行うことができる。
【0061】
特に、本構成によれば、3つのスイッチング素子Q1~Q3という比較的簡素な構成によって、これらの電力供給を実現することができる。これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0062】
(2)電源装置30は、負荷として対象蓄電装置である車両用蓄電装置21を充電するものである。
かかる構成によれば、系統電源11又は電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21を充電することができる。これにより、状況に応じて適切な電源を選択しながら車両用蓄電装置21を充電することを通じて、充電効率の向上や系統電源11が逼迫している状況等に対応することができる。
【0063】
(3)制御ECU83は、特定電圧Vmが、電源用蓄電装置12の電圧である電源電圧Vpと、車両用蓄電装置21の電圧である負荷電圧Vrとの双方よりも高くなるようにAC/DC変換回路50を制御する。そして、制御ECU83は、特定電圧Vmの直流電力が降圧変換されるように各スイッチング素子Q1~Q3を制御する。
【0064】
かかる構成によれば、電源電圧Vpは電源用蓄電装置12のSOCに応じて変動し、負荷電圧Vrは車両用蓄電装置21のSOCに応じて変動する。この場合、特定電圧Vmと、電源電圧Vp及び負荷電圧Vrとの大小関係が逆転すると、DC/DC変換回路60としては、昇圧変換と降圧変換とを切り替える必要が生じ、回路構成が複雑になったり、制御が煩雑なものとなったりするといった不都合が生じ得る。
【0065】
この点、本構成によれば、特定電圧Vmが電源電圧Vp及び負荷電圧Vrの双方よりも高くなるため、特定電圧Vmと、電源電圧Vp及び負荷電圧Vrとの大小関係の逆転が生じない。これにより、DC/DC変換回路60の回路構成及び制御の簡素化を図ることができる。
【0066】
(4)制御ECU83は、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも高い状況において電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行う場合、第1スイッチング素子Q1を常時OFF状態とし且つ両スイッチング素子Q2,Q3を交互にON/OFFさせることにより、電源電圧Vpの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。
【0067】
一方、制御ECU83は、電源電圧Vpが負荷電圧Vrよりも低い状況において電源用蓄電装置12を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行う場合、先に系統電力P0(詳細には系統電力P0を変換して得られる特定電圧Vmの直流電力)を用いて電源用蓄電装置12を充電することにより、電源電圧Vpを負荷電圧Vrよりも高くする。その後、制御ECU83は、第1スイッチング素子Q1を常時OFF状態とし且つ両スイッチング素子Q2,Q3を交互にON/OFFさせることにより、電源電圧Vpの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。
【0068】
(5)制御ECU83は、系統電源11を用いて電源用蓄電装置12への電力供給を行う場合、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3を同期させた状態で、第1スイッチング素子Q1と両スイッチング素子Q2,Q3とを交互にON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力を電源電圧Vpの直流電力に変換する。
【0069】
(6)制御ECU83は、系統電源11を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行う場合、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を同期させた状態で、両スイッチング素子Q1,Q2と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力を負荷電圧Vrの直流電力に変換する。
【0070】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で、上記各実施形態と下記別例とを適宜組み合わせてもよい。
○ 電源用蓄電装置12の数は任意であり、2つ以上であってもよい。すなわち、電源用蓄電装置12は、1つの場合と複数の場合との双方を含む。この場合、電源装置30は、複数の電源用蓄電装置12のうち一部の電源用蓄電装置12と系統電源11とを用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行う構成でもよいし、複数の電源用蓄電装置12の全てと系統電源11とを用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行う構成でもよい。
【0071】
○ 電源用蓄電装置12は電源装置30の一部でもよい。すなわち、電源装置30は、電源用蓄電装置12を備えていなくてもよいし、備えていてもよい。
○ 対象蓄電装置は、車両用蓄電装置21に限られず任意であり、商業施設や工場に設置された蓄電装置でもよい。
【0072】
○ 電源装置30が電力供給を行う負荷は、蓄電装置に限られず任意である。
○ 電源装置30は、AC/DC変換回路50を制御する第1制御回路と、DC/DC変換回路60を制御する第2制御回路と、を別々に有する構成でもよい。この場合、第1制御及び第2制御回路が「制御部」に対応する。
【0073】
○ DC/DC変換回路60の具体的な制御態様は、実施形態に記載されたものに限られず、任意である。
○ 制御ECU83が電源電圧Vp及び負荷電圧Vrを把握するための構成は任意であり、例えば車両20との通信によって負荷電圧Vrを取得する構成でもよい。
【0074】
○ DC/DC変換回路60は、少なくとも各スイッチング素子Q1~Q3、両コイル61,62、接続線LN1,LN2、電源線LN3、及び負荷線LN4を備えていればよく、その他に他の部品(例えばスイッチング素子)を有していてもよい。
【0075】
○ 制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3をON/OFFさせることにより、特定電圧Vmの直流電力及び電源用蓄電装置12の電力の双方を用いて車両用蓄電装置21への電力供給を行ってもよい。
【0076】
例えば、制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3のスイッチングパターンとして、第1パターン、第2パターン及びOFFパターンを有している。第1パターンは、第1スイッチング素子Q1がON状態であり且つ両スイッチング素子Q2,Q3がOFF状態であるスイッチングパターンである。第2パターンは、第2スイッチング素子Q2がON状態であり且つ両スイッチング素子Q1,Q3がOFF状態であるスイッチングパターンである。OFFパターンは、全スイッチング素子Q1~Q3がOFF状態となるスイッチングパターンである。
【0077】
制御ECU83は、第1パターン→OFFパターン→第2パターン→OFFパターンを1周期とする単位動作が繰り返し行われるようにスイッチングパターンを順次切り替える。これにより、系統電源11及び電源用蓄電装置12の双方から車両用蓄電装置21へ向けて電力供給が行われる。
【0078】
○ 制御ECU83は、DC/DC変換回路60において昇圧動作と降圧動作との双方が行われるように各スイッチング素子Q1~Q3を個別にON/OFFしてもよい。例えば、制御ECU83は、第1昇降圧回路71及び第2昇降圧回路72のうち一方において昇圧動作が行われ、他方において降圧動作が行われるように各スイッチング素子Q1~Q3を周期的にON/OFFさせてもよい。
【0079】
○ 制御ECU83は、各スイッチング素子Q1~Q3をON/OFFさせることにより、電源用蓄電装置12の電力又は車両用蓄電装置21の電力を特定電圧Vmの直流電力に変換してもよい。
【0080】
例えば、制御ECU83は、第2スイッチング素子Q2及び第3スイッチング素子Q3を同期させた状態で、第1スイッチング素子Q1と両スイッチング素子Q2,Q3とを交互にON/OFFさせることにより、電源電圧Vpの直流電力を、電源電圧Vpよりも高い特定電圧Vmの直流電力に変換してもよい。なお、第3スイッチング素子Q3は常時ON状態でもよい。
【0081】
例えば、制御ECU83は、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を同期させた状態で、両スイッチング素子Q1,Q2と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、負荷電圧Vrの直流電力を負荷電圧Vrよりも高い特定電圧Vmの直流電力に変換してもよい。なお、第2スイッチング素子Q2は常時ON状態でもよい。
【0082】
例えば、制御ECU83は、まず電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致するように各スイッチング素子Q1~Q3を制御してもよい。詳細には、制御ECU83は、電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致するように、両蓄電装置12,21のうちいずれか一方の蓄電装置を他方の蓄電装置を用いて充電する。そして、制御ECU83は、電源電圧Vpと負荷電圧Vrとが一致したことに基づいて、第2スイッチング素子Q2を常時ON状態とし、第1スイッチング素子Q1と第3スイッチング素子Q3とを交互にON/OFFさせることにより、両蓄電装置12,21の電力を特定電圧Vmの直流電力に変換してもよい。
【0083】
ちなみに、AC/DC変換回路50は、系統電力P0を特定電圧Vmの直流電力に変換する第1変換動作と、DC/DC変換回路60によって変換された特定電圧Vmの直流電力を系統電力P0に変換する第2変換動作とを、実行可能な双方向変換回路であるとよい。これにより、両蓄電装置12,21の電力を系統電力P0として系統電源11に供給することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…電力システム、11…系統電源、12…電源用蓄電装置、20…車両、21…車両用蓄電装置、30…電源装置、31~33…系統端子、34,35…電源端子、40…コネクタ、41,42…負荷端子、50…AC/DC変換回路、51…中間コンデンサ、60…DC/DC変換回路、61…第1コイル、62…第2コイル、80…制御ECU、Q1…第1スイッチング素子、Q2…第2スイッチング素子、Q3…第3スイッチング素子、LN1…第1接続線、LN2…第2接続線、LN3…電源線、LN4…負荷線、P0…系統電力、Vm…特定電圧、Vp…電源電圧(電源用蓄電装置の電圧)、Vr…負荷電圧(車両用蓄電装置の電圧)。