IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動倉庫 図1
  • 特許-自動倉庫 図2
  • 特許-自動倉庫 図3
  • 特許-自動倉庫 図4
  • 特許-自動倉庫 図5
  • 特許-自動倉庫 図6
  • 特許-自動倉庫 図7
  • 特許-自動倉庫 図8
  • 特許-自動倉庫 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】自動倉庫
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20230725BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B65G1/04 555A
B65G1/137 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020207107
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094209
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】武田 英里
(72)【発明者】
【氏名】荒川 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100160(JP,A)
【文献】特開2003-012119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031643(US,A1)
【文献】特許第3538554(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を格納可能な複数の棚段を有するラックと、
各棚段に配置されて前記棚段に沿って走行するとともに、前記棚段に荷物を入庫及び前記棚段から荷物を出庫する入出庫台車と、
荷物が載置可能な昇降台と、前記昇降台を前記複数の棚段に沿って昇降させる昇降機構とを有する昇降装置と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
複数個の荷物をまとめて出庫するオーダーを取得するオーダー取得手段と、
1つのオーダーに含まれる荷物を格納する棚段の数の上限値を記憶するとともに、荷物入庫時に、1つのオーダーに含まれる荷物を前記上限値以下の複数の棚段に分散させて入庫位置を決定する入庫位置決定手段と、を有し、
前記上限値は、前記ラックの荷物を格納可能な全ての棚段の段数よりも小さい、
自動倉庫。
【請求項2】
前記入庫位置決定手段は、荷物入庫の際に、第1オーダーに含まれた荷物が入庫される複数の棚段を第1オーダー用棚段として決定し、次に第2オーダーに含まれた荷物が入庫される複数の棚段を前記第1オーダー用棚段に並んだ位置に第2オーダー用棚段として決定する、請求項1に記載の自動倉庫。
【請求項3】
前記昇降装置は、複数個である第1数量の荷物を搬入し、
前記入庫位置決定手段は、1つのオーダーに含まれる第1数量の荷物を1つの棚段ごとに入庫位置を決定する、請求項1又は2に記載の自動倉庫。
【請求項4】
前記コントローラは、出庫動作指示出力手段をさらに有しており、
前記出庫動作指示出力手段は、1つのオーダーに含まれる第1数量以上の荷物が1つの棚段に格納されている場合は、当該棚段から第1数量の荷物を出庫するとともに、当該棚段の残りの荷物よりも先に、別の棚段から当該オーダーに含まれる第1数量の荷物を出庫するように、前記入出庫台車を動作させる指示を出力する、請求項3に記載の自動倉庫。
【請求項5】
前記コントローラは、出庫動作指示出力手段をさらに有しており、
前記出庫動作指示出力手段は、1つのオーダーに含まれる荷物をまとめて出庫する際に、出庫動作中以外の棚段に格納された荷物だけのオーダーの出庫動作指示を、出庫動作中の棚段に格納された荷物を含むオーダーよりも先に出庫するように、前記入出庫台車を動作させる指示を出力する、請求項1~3のいずれかに記載の自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫に関し、特に、荷物を保管する複数の棚段に対応して、荷物を搬送する搬送車を設けた自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を保管する複数の棚段に対応して、荷物を搬送する搬送車を設けた自動倉庫(以下、「段ごと搬送車付き自動倉庫」という)が知られている。各搬送車は、対応する棚段において棚段の延長方向に走行し、棚段の延長方向の所定の位置において、搬送車と対応する棚段との間で荷物を移載する。
このような自動倉庫において、荷物をまとめて出庫するオーダーを指令されると、同一オーダー内の荷物を複数の棚段に分散して保管する組み合わせシステムを採用したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-100160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すように、段ごと搬送車付き自動倉庫では、1オーダー複数の荷物は、各棚段に分散して入庫される。そして、1オーダーの荷物が自動倉庫内でそろうと(荷合わせグループが完成すると)、各棚段の搬送車によって同時搬送されて出庫される。このように出庫時に複数の搬送車が一斉に動作できるので、出庫効率が向上している。
【0005】
一般的に上記の自動倉庫では、搬送車の合計搬送能力が、昇降装置の搬送能力を上回る。つまり、昇降装置の搬送能力が自動倉庫全体の能力の上限となる。
そのため、1オーダーに含まれる荷物が入庫される棚段を全段にすると、搬送車は比較的早く出庫できたとしても、昇降装置の能力を超える分の荷物がバッファコンベヤの上で待機させられてしまう。
【0006】
本発明の目的は、自動倉庫において、出庫効率が上がるように入庫位置を決定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る自動倉庫は、ラックと、入出庫台車と、昇降装置と、コントローラとを備えている。
ラックは、荷物を格納可能な複数の棚段を有する。
入出庫台車は、各棚段に配置されて棚段に沿って走行するとともに、棚段に荷物を入庫及び棚段から荷物を出庫する。
昇降装置は、荷物が載置可能な昇降台と、昇降台を複数の棚段に沿って昇降させる昇降機構とを有する。
コントローラは、オーダー取得手段と、入庫位置決定手段とを備えている。
オーダー取得手段は、複数個の荷物をまとめて出庫するオーダーを取得する。
入庫位置決定手段は、1つのオーダーに含まれる荷物を格納する棚段の数の上限値を記憶するとともに、荷物入庫時に、1つのオーダーに含まれる荷物を上限値以下の複数の棚段に分散させて入庫位置を決定する。
この自動倉庫では、1つのオーダーに含まれる荷物は、複数の棚段に分散され、その棚段の数の上限値が決められている。したがって、昇降台による同時搬送の可能性を高めることができる。つまり、本発明とは異なって1つのオーダーの荷物が全段に入庫されている場合は当該オーダー以外のオーダーの荷物の出庫動作ができないが、本発明では当該オーダーの荷物が入庫された棚段以外の棚段において搬送車が別のオーダーの荷物の出庫を行うことができる。つまり、入出庫台車の搬送効率が高くなる。
【0009】
入庫位置決定手段は、荷物入庫の際に、第1オーダーに含まれた荷物が入庫される複数の棚段を第1オーダー用棚段として決定し、次に第2オーダーに含まれた荷物が入庫される複数の棚段を第1オーダー用棚段に並んだ位置に第2オーダー用棚段として決定してもよい。
この自動倉庫では、第2オーダー用棚段は、第1オーダー用棚段に連続した棚段に設定される。したがって、第1オーダー用棚段と第2オーダー用棚段が重複しにくい。さらに、昇降台上の2個の荷物の一方が第1オーダーの荷物であり他方が第2オーダーの荷物である場合、昇降台の昇降距離が短くなる。
【0010】
昇降装置は、複数個である第1数量の荷物を搬入してもよい。
入庫位置決定手段は、1つのオーダーに含まれる第1数量の荷物を1つの棚段ごとに入庫位置を決定してもよい。
この自動倉庫では、1つのオーダーに含まれる荷物のうちの同じ棚段に格納された第1数量の荷物を出庫する際に、例えば第1数量の荷物を昇降台へ同時に移載でき、その場合は自動倉庫の出庫効率が向上する。
【0011】
コントローラは、出庫動作指示出力手段をさらに有していてもよい。
出庫動作指示出力手段は、1つのオーダーに含まれる第1数量以上の荷物が1つの棚段に格納されている場合は、当該棚段から第1数量の荷物を出庫するとともに、当該棚段の残りの荷物よりも先に、別の棚段から当該オーダーに含まれる第1数量の荷物を出庫するように、入出庫台車を動作させる指示を出力してもよい。
この自動倉庫では、同じ棚段の荷物を連続して出庫するのではなく、別の棚段の入出庫台車を動かすことで、複数の棚段に対応する複数の入出庫台車が同時に荷物を出庫できる。その結果、自動倉庫の出庫効率が向上する。
【0012】
コントローラは、出庫動作指示出力手段をさらに有していてもよい。
出庫動作指示出力手段は、1つのオーダーに含まれる荷物をまとめて出庫する際に、出庫動作中以外の棚段に格納された荷物だけのオーダーの出庫動作指示を、出庫動作中の棚段に格納された荷物を含むオーダーよりも先に出庫するように、入出庫台車を動作させる指示を出力してもよい。
この自動倉庫では、1つのオーダーに含まれる荷物をまとめて出庫する際に、出庫動作中以外の棚段に格納された荷物だけのオーダーに含まれる荷物が優先的に出庫される。この場合、上記の2つのオーダーに含まれる荷物は互いに別の棚段に格納されているので、一方のオーダーに含まれる荷物の出庫動作が他方のオーダーに含まれる荷物の出庫動作に影響することがない。以上の結果、自動倉庫の出庫効率が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自動倉庫では、出庫効率が上がるように入庫位置が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る自動倉庫の模式的側面図。
図2】自動倉庫の模式的部分平面図。
図3】自動倉庫の模式的部分平面図。
図4】自動倉庫の制御構成を示す機能ブロック図。
図5】自動倉庫の荷物の入庫位置が決定された一状態を示す模式図。
図6】自動倉庫の荷物の入庫位置が決定された一状態を示す模式図。
図7】昇降装置と入庫用コンベヤ及び出庫用コンベヤとの間での荷物の移載を示す模式的平面図。
図8】自動倉庫における出庫動作の一例を示す模式図
図9】第2実施形態に係る自動倉庫の入庫状態及び出庫動作の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫全体の説明
図1図3を用いて、第1実施形態に係る自動倉庫100を説明する。図1は、第1実施形態に係る自動倉庫の模式的側面図である。図2及び図3は、自動倉庫の模式的部分平面図である。以下の説明では、図1の左右方向を第1方向(矢印Y)といい、図1の紙面奥行き方向を第2方向(矢印X)といい、図1の上下方向が鉛直方向(矢印Z)である。
自動倉庫100は、ラック1と、複数の搬送車3と、入庫ステーション7と、出庫ステーション9と、入庫用昇降装置11、出庫用昇降装置13とを備える。
【0016】
一対のラック1と搬送車3は、ユニット4を構成しており、自動倉庫100は複数のユニット4を有している。ユニット4の番号等を「系統」で表すことがあり、また、ユニット4は、一種の自動倉庫ユニットである。
ユニット4において、荷物は、搬入コンベヤ(図示せず)から入庫ステーション7に搬入される。また、ユニット4において、荷物は、出庫ステーション9から搬出コンベヤ(図示せず)に搬出される。搬出コンベヤの行き先は、荷物を出荷先ごとに集め、トラックなどで出荷する仕分エリア、あるいは荷物から商品をピッキングするピッキングエリアなどである。
【0017】
(2)ラック
ラック1は、複数の棚段21を有しており、各棚段21に荷物が入庫され、又は、各棚段21に保管された荷物が出庫される。ラック1の各棚段21は、第1方向に長く延びており、複数の間口22を有している。各間口22は、荷物Wが置かれる棚段21の単位であり、第1方向に同じ長さを有している。
棚段21は、搬送車3及びレール5(後述)に対して第2方向の両側に配置されている。
【0018】
各間口22には、複数の荷物Wが収納可能である。なお、間口22のそれぞれは別体であってもよく、一体に形成されていてもよい。つまり、棚段21を構成する1枚の棚板が区分されることで複数の間口22が棚段21に形成されていてもよい。
荷物Wは、ケース、トレイ、段ボール、折りたたみコンテナ等であり、例えば商品を収納している。
【0019】
(3)搬送車
複数の搬送車3(入出庫台車の一例)は、それぞれ、各棚段21の対応する高さにおいて、第1方向に沿って走行可能である。具体的には、第1方向に直線状に延びるレール5が各棚段21に対応する高さに敷設されており、搬送車3はレール5上を第1方向に往復走行できる。つまり、搬送車3はシャトル台車である。
搬送車3は、例えば、荷物Wを1個ずつ搬送する。
また、搬送車3は、搬送車移載装置15を有しており、対応する棚段21の間口22との間で第2方向に荷物Wを移載可能となっている。搬送車移載装置15は、例えば、リアフック式である。ただし、搬送車移載装置の種類は限定されない。
【0020】
(4)昇降装置
入庫用昇降装置11は、ラック1と入庫ステーション7との間に配置され、昇降台53と、昇降機構55を有する。昇降台53は、荷物Wが載置される装置であり、入庫ステーション7と入庫用コンベヤ23(後述)との間で荷物Wを移載する昇降台コンベヤ57を有している。昇降台53には、第1方向に並んで2個の荷物Wが載置可能である。昇降機構55は、公知の技術であり、支柱56に沿って昇降台53を複数の棚段21に沿って昇降する。また、各棚段21には、入庫用昇降装置11に対して第1方向に隣接する部分に、入庫用コンベヤ23が設けられている。そのため、両方のコンベヤが連動して動作することで、荷物Wの受け渡しが行われる。なお、入庫用コンベヤ23は、荷物保管用のバッファコンベヤとして機能する。
【0021】
出庫用昇降装置13は、ラック1と出庫ステーション9との間に配置され、昇降台63と、昇降機構65とを有する。昇降台63は、荷物Wが載置される装置であり、出庫ステーション9と出庫用コンベヤ25(後述)との間で荷物Wを移載する昇降台コンベヤ67を有している。昇降台63には、第1方向に並んで2個の荷物Wが載置可能である。昇降機構65は、公知の技術であり、支柱66に沿って昇降台63を複数の棚段21に沿って昇降する。また、各棚段21には、出庫用昇降装置13に対して第1方向に隣接する部分に、出庫用コンベヤ25が設けられている。そのため、両方のコンベヤが連動して動作することで、荷物Wの受け渡しが行われる。なお、出庫用コンベヤ25は、荷物保管用のバッファコンベヤとして機能する。
【0022】
(5)入庫ステーション及び出庫ステーション
入庫ステーション7は、ラック1の第1方向一方側に配置されている。入庫ステーション7は、ラック1に収納されるべき荷物Wを搬入コンベヤ(図示せず)から受け取る。入庫ステーション7は、ステーションコンベヤ7aを有している。
【0023】
出庫ステーション9は、ラック1の第1方向反対側に配置されている。出庫ステーション9は、ラック1から取り出された荷物Wを受け取る。入庫ステーション7は、ステーションコンベヤ9aを有している。
なお、入庫ステーション及び出庫ステーションの位置及び数は特に限定されない。
【0024】
(6)自動倉庫の制御構成
図4を用いて、自動倉庫100の制御構成を説明する。図4は、自動倉庫の制御構成を示す機能ブロック図である。
自動倉庫100は、コントローラ51を有している。
【0025】
コントローラ51は、自動倉庫100における荷物Wの保管及び入出庫を管理する装置である。コントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。
コントローラ51は、地上コントローラであり、上位コントローラ(図示せず)から入庫、出庫などの指令を受信し、実行結果を報告する。コントローラ51は、1つのコンピュータシステムで実現されてもよいし、複数のコンピュータシステムで実現されてもよい。
【0026】
コントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで各所制御動作を行ってもよいし、一部の制御動作をコントローラ51に含まれるハードウェアで実現してもよい。
【0027】
コントローラ51は、オーダー取得部83と、入庫位置決定部85と、出庫動作指示出力部89とを有している。
オーダー取得部83は、上位コントローラから複数のオーダーを取得する。各オーダーは、複数個の荷物Wをまとめて出庫する指令を含んでいる。
なお、「オーダー」とは、例えば、顧客の注文に基づいており、1~複数個の荷物が含まれる。1のオーダー分の荷物は、まとめて顧客に発送するため、自動倉庫100からまとめて出庫される。
【0028】
入庫位置決定部85は、オーダーに含まれた荷物Wの入庫位置を決定する。具体的には、入庫位置決定部85は、1つのオーダーに含まれる荷物Wを格納する棚段21の数の上限値を記憶するとともに、荷物入庫時に、1つのオーダーに含まれる荷物Wを上限値以下の複数の棚段21に分散させて入庫位置を決定する。言い換えると、1つのオーダーに含まれる複数の荷物Wの入庫位置は、棚段21の上限値の数又はそれ未満の数の棚段21に分散させられ、つまり入庫位置が設定される棚段21の数は上限値を超えない。なお、「1つのオーダーに含まれる荷物Wを格納する棚段21の数の上限値」とは、棚段21の全数より少ない数であり、オーダーごとに任意に設定可能である。
なお、入庫対象の棚段21の数の上限値は、例えば、全段から複数個を移載した時の出庫用昇降装置13の能力の平均値が、搬送車3が出庫用昇降装置13と最も離れた間口22に入出庫したときの複合能力の平均値の何台分になるかを算出し、その段数数とする。
入庫位置決定部85は、荷物入庫時に、1つのオーダーに含まれる荷物Wのうちの2個(収納単位個数)の荷物Wを、1つの棚段21ごとに入庫位置を決定する。なお、上記の収納単位個数は、昇降台53の載置可能個数に対応している。
【0029】
出庫動作指示出力部89は、荷物出庫時に、複数の棚段21においてそれぞれ搬送車3を並行して動作させる出庫動作指示を各搬送車3に出力する。
【0030】
コントローラ51には、入庫用昇降装置11、出庫用昇降装置13、入庫ステーション7、出庫ステーション9、複数の搬送車3、複数の入庫用コンベヤ23、複数の出庫用コンベヤ25が接続されている。コントローラ51は、これら装置を制御可能である。
コントローラ51には、図示しないが、荷物Wの大きさ、形状及び位置を検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0031】
(7)荷物の格納位置を決定する制御動作
コントローラ51のオーダー取得部83は、同一オーダー内の最初の荷物Wが自動倉庫100に入庫されるときに、上位コントローラから入庫指令を受信する。入庫指令はオーダー(荷合わせグループの情報)を含んでおり、オーダーの行き先、まとめて出庫される複数の荷物WのID等のデータを含んでいる。
【0032】
コントローラ51の入庫位置決定部85は、オーダーに含まれる全ての荷物Wの格納位置を予約する。具体的には、同一オーダーの荷物は、複数の棚段21に分散して保管される。本実施形態とは異なって同一オーダーの荷物Wを1つの棚段21に集中して保管する場合、出庫用昇降装置13が搬送車3を待つ時間が長くなる。
さらに具体的には、入庫位置決定部85は、1つのオーダーに含まれる荷物Wのうちの2個の荷物Wを、1つの棚段21ごとに入庫位置を決定する。言い換えると、1つのオーダーに含まれる全ての荷物Wの入庫位置が、各棚段21に2個ずつ、予め決定される。
なお、入庫位置決定部85は、荷物Wの入庫先となる棚段21の数が前記上限値以下となるよう設定する。
さらに具体的には、入庫位置決定部85は、同一オーダー内の荷物Wを複数の連続する棚段21に入庫させるように入庫位置を決定する。さらに、入庫位置決定部85は、第1オーダーの荷物Wが入庫される複数の棚段21を第1オーダー用棚段として決定し、次に第2オーダーに含まれた荷物が入庫される複数の棚段21を第1オーダー用棚段21に並んだ位置に第2オーダー用棚段21として決定する。したがって、第1オーダー用棚段21と第2オーダー用棚段21が重複しにくい。
【0033】
図5を用いて、上記のように入庫位置が決定された自動倉庫の一状態を説明する。図5は、自動倉庫の荷物の入庫位置が決定された一状態を示す模式図である。
この実施形態では、各オーダーの荷物Wが格納される棚段21の数の上限値は5に設定されている。第1オーダーに含まれる荷物Aは、第1~第5段に2個ずつ予約されている。第2オーダーに含まれている荷物Bは、第6~第10段に2個ずつ予約されている。
この場合、第1オーダーに含まれる荷物Aは、5段の棚段21に分散されている。また、第2オーダーに含まれる荷物Bは、5段の棚段21に分散されている。この例では、第1オーダーに含まれる荷物Aが入庫された棚段21と第2オーダーに含まれる荷物Bが入庫された棚段21は重複していないので、両方の棚段21において搬送車3が荷物を出庫できる。
以上を言い換えると、この実施形態では、第1の荷合わせグループの荷物Wが入庫された棚段21以外の棚段21において、搬送車3が第2位の荷合わせグループの出庫を行うことができる。
【0034】
図6を用いて、上記のように入庫位置が決定された自動倉庫の一状態を説明する。図6は、自動倉庫の荷物の入庫位置が決定された一状態を示す模式図である。
第1オーダーに含まれる荷物Aは、第1段に4個、第2段に3個、第3~第5段に2個ずつ予約されている。第2オーオーダーに含まれている荷物Bは、第6段に3個、第7~第10段に2個ずつ予約されている。
このように各オーダーにおいて棚段21の数×収納単位個数を超えた荷物Wは、最初に収納された棚段21に入庫される。例えば、図6の例では、荷物Aは2個ずつ第1~第5段に入庫された後に、2個の荷物Aが第1段に入庫され、最後の1個の荷物Aが第2段に入庫される。なお、「棚段21の数×収納単位個数」は、例えば、棚段21の数が4であり収納単位個数が2の場合、8になる。
【0035】
(8)入庫動作
荷物Wは、各地の倉庫や問屋から送られてきて到着した順に、自動倉庫100に格納される。
コントローラ51は、上記制御動作により決定された割り当てに従って、各構成要素の動作を制御することで、荷物Wをラック1の棚段21の所定の間口22に入庫する。
以下、実際に荷物Wが到着したときに、荷物Wが予約した位置に格納される動作を具体的に説明する。
【0036】
最初に、入庫用昇降装置11の昇降台53の昇降台コンベヤ57が、入庫ステーション7のステーションコンベヤ7aの位置まで移動する。
次に、ステーションコンベヤ7aが、2個の荷物Wを入庫用昇降装置11の昇降台コンベヤ57に搬送する。
【0037】
次に、昇降台53が、荷物Wを入庫すると決定した棚段21に対応する位置まで昇降する。
次に、昇降台53の昇降台コンベヤ57が、2個の荷物Wを入庫用コンベヤ23に搬送する。この実施形態では、2個の荷物Wは、1個ずつの別の棚段21に入庫される。
【0038】
次に、搬送車3が、入庫用コンベヤ23まで移動して1個の荷物Wを積み込み、次に第1方向に走行して荷物Wを棚段21の目的の間口22に下ろす。
【0039】
(9)出庫動作
オーダーに含まれる荷物Wがそろうと(荷合わせグループが完成すると)、荷合わせ完了の順番にしたがって、荷物Wが出庫される。つまり、オーダー内の荷物Wを保管している各棚段21の搬送車3が出庫用コンベヤ25まで荷物を搬送し、出庫用昇降装置13がオーダー内の荷物Wがある各棚段21に昇降台63を停止させ、2個ずつ出庫用のステーションコンベヤ9aまで搬送する。
具体的には、コントローラ51の出庫動作指示出力部89は、搬送車3を動作させる出庫動作指示を各搬送車3に出力する。このとき、複数の棚段21において搬送車3が同時に並列して動作し、それにより1つのオーダーの複数の荷物Wが連続して出庫される。したがって、自動倉庫100の出庫効率が向上する。
【0040】
各棚段21での動作を下記に説明する。
最初に、搬送車3が、第1方向に走行して棚段21の荷物Wのある目的の間口22の前まで走行して1個の荷物Wを積み込み、次に出庫用コンベヤ25まで移動して1個の荷物Wを下ろす。この動作は2回行われる。
次に、出庫用昇降装置13の昇降台63が、荷物を出庫すると決定した棚段21に対応する位置まで昇降する。
【0041】
次に、コントローラ51の移載指示出力部87が、1つのオーダーに含まれる荷物Wのうちの同じ棚段21に格納された2個の荷物Wを昇降台63へ同時に移載させる移載指示を出力する。この結果、出庫用コンベヤ25が、図7に示すように、2個の荷物Wを、昇降台63の昇降台コンベヤ67に同時に搬送する。図7は、昇降装置と入庫用コンベヤ及び出庫用コンベヤとの間での荷物の移載を示す模式的平面図である。
【0042】
次に、昇降台63が、出庫ステーション9のステーションコンベヤ9aの位置まで昇降する。
最後に、昇降台63の昇降台コンベヤ67が、2個の荷物Wを出庫ステーション9のステーションコンベヤ9aに搬送する。
【0043】
この実施形態では、出庫用昇降装置13は、前述のように、昇降台63を複数の棚段21に停止させることで、荷物Wを2個一括して出庫する。したがって出庫効率が良い。さらに、出庫用昇降装置13は、オーダーの最後の荷物Wを出庫する際に、昇降台63に空きのスペースがあり、かつ他のオーダーの出庫される荷物Wがある場合に、当該オーダーの最後の荷物Wと前記他のオーダーの荷物Wとを一括して出庫する。
【0044】
この実施形態では、出庫動作指示出力部89は、1オーダーに含まれる2個以上の荷物Wが1つの棚段21に格納されている場合は、当該棚段21から2個の荷物を出庫するとともに、当該棚段21の残りの荷物W(例えば、3個目、4個目)よりも先に、別の棚段21から当該オーダーに含まれる2個の荷物Wを出庫するように、搬送車3を動作させる指示を出力する。このように、同じ棚段21の荷物Wを連続して出庫するのではなく、別の棚段21の搬送車3を動かすことで、複数の棚段21に対応する搬送車3が同時に荷物Wを出庫できる。その結果、自動倉庫100の出庫効率が向上する。
【0045】
図8を用いて、上記のように出庫動作が行われる自動倉庫100の一状態を説明する。図8は、自動倉庫における出庫動作の一例を示す模式図である。この例では、荷物Aは、(1)~(7)の順番で出庫される。
詳細には、第1オーダーに含まれる荷物Aに関して、第1段に格納された2個の荷物A(図8での(1))が出庫されると、次に、第1段の残りの2個の荷物A(図8での(6))よりも先に、例えば第2段に格納された2個の荷物A(図8での(2))が出庫される。
【0046】
(10)実施形態の効果
前述のように、1つのオーダーの荷物Wは、複数の棚段21に分散され、その棚段21の数の上限値が決められている。したがって、昇降台63による同時搬送の可能性を高めることができる。つまり、本発明とは異なって1つのオーダーに含まれている荷物が全段に入庫される自動倉庫では当該荷合わせグループの荷物以外のオーダーの荷物の出庫動作ができないが、本発明では当該荷合わせグループの荷物Wが入庫された棚段21以外の棚段21において搬送車3が別の荷合わせグループの出庫を行うことができる。つまり、搬送車3の搬送効率が高くなる。
【0047】
2.第2実施形態
第1実施形態では、オーダーにおいて荷物がそろったものから順番に出庫動作を行っていた。しかし、1番、2番、3番の順番で荷物がそろった3つのオーダーがあった場合、2番目のオーダーに含まれる荷物が1番目のオーダーに含まれる荷物を搬送する搬送車が動作している棚段に保管されており、かつ、3番目のオーダーに含まれる荷物が1番目のオーダーに含まれる荷物を搬送する搬送車が動作している棚段以外に保管されている場合は、3番目のオーダーに含まれる荷物は、2番目のオーダーに含まれる荷物より先に出庫搬送されてもよい。
【0048】
図9を用いて、そのような実施例として第2実施形態を説明する。図9は、第2実施形態に係る自動倉庫の入庫状態及び出庫動作の一例を示す模式図である。なお、第2実施形態の自動倉庫の基本的構成及び動作は第1実施形態と同じである。
下記の順番でオーダーの荷合わせが完了したとする(荷合わせグループが完成したとする)。
第1オーダー:第1~第5段に格納された荷物A
第2オーダー:第3~第7段に格納された荷物B
第3オーダー:第6~第10段に格納された荷物C
【0049】
出庫動作指示出力部89は、第1オーダーに含まれる荷物Aをまとめて出庫する際に、第3オーダーの荷物Cの出庫を第2オーダーの荷物Bの出庫より先に出庫するように出庫動作指示を出力する。なぜなら、第2オーダーの荷物Bは出庫動作中の棚段21に格納されており、第3オーダーの荷物Cは出庫動作中以外の棚段21に格納されているからである。なお、第2オーダーの出庫決定は、第1オーダーの荷物を出庫する前であってもよいし、第1オーダーの出庫中でもよい。
【0050】
この自動倉庫100では、前述のように、第1オーダーの荷物Aをまとめて出庫する際に、第3オーダーの荷物Cが優先的に出庫される。この場合、上記の2つのオーダーに含まれる荷物A、Cは互いに別の棚段21に格納されているので、第3オーダーの荷物Cの出庫動作と第1オーダーの荷物Aの出庫動作とが互いに影響しない。したがって、自動倉庫100の出庫効率が向上する。
【0051】
言い換えると、出庫開始の順番を変更することで、あるオーダーの荷物を出庫する際、出庫中の棚段21以外で完結する別のオーダーの荷物Wの出庫も開始できる。つまり、異なるオーダーを干渉させずに並行して出庫できる。
ただし、荷物Wの個数が多いオーダーは、出庫順序を追い越され続け、出庫するまでに時間がかかるおそれがある。そのような問題を解決するために、自動倉庫100内の荷合わせ完了後に一定時間を経過したオーダーは、それ以上の追い抜きなしで出庫を開始するように出庫期限を設けてもよい。
【0052】
3.実施形態の共通事項
上記第1~第2実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
自動倉庫(例えば、自動倉庫100)は、ラックと、入出庫台車と、昇降装置と、コントローラとを備えている。
ラック(例えば、ラック1)は、荷物を格納可能な複数の棚段(例えば、棚段21)を有する。
入出庫台車(例えば、搬送車3)は、各棚段に配置されて棚段に沿って走行するとともに、棚段に荷物を入庫及び棚段から荷物を出庫する。
昇降装置(例えば、出庫用昇降装置13)は、荷物が載置可能な昇降台(例えば、昇降台63)と、昇降台を複数の棚段に沿って昇降させる昇降機構(例えば、昇降機構65)とを有する。
コントローラ(例えば、コントローラ51)は、オーダー取得手段と、入庫位置決定手段とを備えている。
オーダー取得手段(例えば、オーダー取得部83)は、複数個の荷物をまとめて出庫するオーダーを取得する。
入庫位置決定手段(例えば、入庫位置決定部85)は、1つのオーダーに含まれる荷物を格納する棚段の数の上限値を記憶するとともに、荷物入庫時に、1つのオーダーに含まれる荷物を上限値以下の複数の棚段に分散させて入庫位置を決定する。
【0053】
この自動倉庫では、1つのオーダーに含まれる荷物は、複数の棚段に分散され、その棚段の数の上限値が決められている(例えば、図5を参照)。したがって、昇降台による同時搬送の可能性を高めることができる。つまり、本発明とは異なって1つのオーダーに含まれている荷物が全段に入庫されている場合は当該オーダーの荷物以外のオーダーの荷物の出庫動作ができないが、本発明では当該オーダーの荷物が入庫された棚段以外の棚段において搬送車が別のオーダーの出庫を行うことができる。つまり、入出庫台車の搬送効率が高くなる。
【0054】
4.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0055】
1オーダーの荷物が格納される棚段の数の上限値は、自動倉庫において、固定でもよいし、変動でもよい。また、上限値はオーダーごとに個別に設定されてもよい。例えば荷物Wの数が多いオーダーは棚段の数の上限値を大きくしてもよい。
入庫位置決定部が1つのオーダーに含まれる荷物を1つの棚段ごとに入庫位置を決定する場合の荷物の数は、定められていなくてもよい。
前記実施形態では昇降装置は1オーダーに含まれる複数の荷物を同時に搬送していたが、昇降装置が搬送する荷物は1つでもよい。
昇降装置の数や位置は限定されない。また、入出庫兼用の昇降装置が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、荷物を保管する複数の棚段に対応して、荷物を搬送する搬送車を設けた自動倉庫に広く適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 :ラック
3 :搬送車
3a :車輪
4 :ユニット
5 :レール
7 :入庫ステーション
7a :ステーションコンベヤ
9 :出庫ステーション
9a :ステーションコンベヤ
11 :入庫用昇降装置
13 :出庫用昇降装置
15 :搬送車移載装置
21 :棚段
22 :間口
23 :入庫用コンベヤ
25 :出庫用コンベヤ
51 :コントローラ
53 :昇降台
55 :昇降機構
56 :支柱
57 :昇降台コンベヤ
63 :昇降台
65 :昇降機構
66 :支柱
67 :昇降台コンベヤ
83 :オーダー取得部
85 :入庫位置決定部
89 :出庫動作指示出力部
100 :自動倉庫
W :荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9