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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】培養容器及び観察システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020216121
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101812
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀年
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/069452(WO,A1)
【文献】特開2008-064574(JP,A)
【文献】特表平08-510331(JP,A)
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2013, Vol. 3, No. 2133, pp. 1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側端面から入射された測定光を内部にて全反射させて導波する導波基材と、
前記導波基材の表面に立設されると共に内側に細胞培養空間を形成する囲壁と
を備え
前記細胞培養空間に臨む前記導波基材の表面は、細胞が接着される面であり、
前記導波基材の屈折率は、培養液又は空気よりも前記細胞に近い1.46~1.6程度である、
養容器。
【請求項2】
前記囲壁は、前記測定光を遮蔽する遮蔽部を備える請求項1記載の培養容器。
【請求項3】
前記囲壁は、
前記導波基材と異なる材料によって形成されると共に前記導波基材に着脱可能に接続された基部と、
前記基部の表面に設けられた前記遮蔽部としての遮蔽コーティングと
を有する請求項2記載の培養容器。
【請求項4】
前記導波基材の底面に分散して複数設けられると共に前記導波基材を下方から支持する支持脚を備える請求項1~3いずれか一項に記載の培養容器。
【請求項5】
前記側端面の前記測定光が入射される位置と異なる位置に設けられると共に前記測定光を反射する反射部を備える請求項1~4いずれか一項に記載の培養容器。
【請求項6】
1つの前記導波基材に対して前記囲壁が複数設けられている請求項1~5いずれか一項に記載の培養容器。
【請求項7】
前記囲壁は、各々が前記細胞培養空間を形成する収容部を複数備える請求項1~5いずれか一項に記載の培養容器。
【請求項8】
請求項1~7いずれか一項に記載の培養容器と、
前記培養容器の前記導波基材に入射する前記測定光を射出する光源部と
を備える観察システム。
【請求項9】
前記培養容器の前記導波基材の前記表面及び前記表面に対向する底面が平面とされており、
前記光源部は、前記側端面に入射する前記測定光の光軸が、前記導波基材の前記表面及び前記底面に対して傾斜するように配置されている
請求項8記載の観察システム。
【請求項10】
前記細胞培養空間を観察する観察部を備える請求項8または9記載の観察システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器及び観察システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料を観察する基本的な観察方法として、明視野観察と暗視野観察とが挙げられる。明視野観察は、試料に対して均一な照明光(測定光)を照射し、試料を透過した光を観察する方法である。これに対し、暗視野観察は、試料に対して斜め方向から測定光を照射し、試料で生ずる散乱光や反射光を観察する方法である。培養容器内で培養中の接着細胞(培養容器に接着しながら増殖する細胞)に対して明視野観察を行うとコントラストが低くなる。このため、接着細胞を観察する場合には、暗視野観察を行うのが望まれる。なお、以下の特許文献1,2には、暗視野観察が可能な暗視野光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-248216号公報
【文献】特開2018-081134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、上記特許文献1,2に開示された暗視野光学系を用いて、培養容器中の細胞の暗視野観察を行おうとした場合には、斜め方向から培養容器に入射した測定光が培養容器の内部を伝わって培養容器全体に拡がってしまう。この結果、培養容器の様々な部位から測定光が漏出し、このような漏出光が観察の妨げとなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、光学系を用いて高コントラストな細胞の観察を可能とする培養容器及び観察システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による培養容器は、側端面から入射された測定光を内部にて全反射させて導波する導波基材と、上記導波基材の表面に立設されると共に内側に細胞培養空間を形成する囲壁とを備えるという構成を採用する。
【0007】
本発明の一態様による培養容器は、上記囲壁が、上記測定光を遮蔽する遮蔽部を備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の一態様による培養容器は、上記囲壁が、上記導波基材と異なる材料によって形成されると共に上記導波基材に着脱可能に接続された基部と、上記基部の表面に設けられた上記遮蔽部としての遮蔽コーティングとを有するという構成を採用する。
【0009】
本発明の一態様による培養容器は、上記導波基材の底面に分散して複数設けられると共に上記導波基材を下方から支持する支持脚を備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明の一態様による培養容器は、上記側端面の上記測定光が入射される位置と異なる位置に設けられると共に上記測定光を反射する反射部を備えるという構成を採用する。
【0011】
本発明の一態様による培養容器は、1つの上記導波基材に対して上記囲壁が複数設けられているという構成を採用する。
【0012】
本発明の一態様による培養容器は、上記囲壁が、各々が上記細胞培養空間を形成する収容部を複数備えるという構成を採用する。
【0013】
本発明の一態様による観察システムは、上記第1~第7いずれかの発明である培養容器と、上記培養容器の上記導波基材に入射する上記測定光を射出する光源部とを備えるという構成を採用する。
【0014】
本発明の一態様による観察システムは、上記培養容器の上記導波基材の上記表面及び上記表面に対向する底面が平面とされており、上記光源部が、上記側端面に入射する上記測定光の光軸が、上記導波基材の上記表面及び上記底面に対して傾斜するように配置されているという構成を採用する。
【0015】
本発明の一態様による観察システムは、上記細胞培養空間を観察する観察部を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定光が導波基材の内部を全反射しながら導波される。細胞培養空間で培養される接着細胞は、気体である空気や液体である培養液と比較すると屈折率が導波基材と近い。このため、細胞培養空間に接着細胞がある場合には、導波基材の内部を導波される測定光の一部が接着細胞の内部に屈折入射し、接着細胞と導波基材との界面あるいは接着細胞の内部で測定光が散乱される。したがって、接着細胞を局所的に光らせることが可能となる。よって、本発明によれば、光学系を用いて高コントラストな細胞の観察が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態における培養容器の斜視図である。
図2】(a)が本発明の第1実施形態の培養容器の平面図であり、(b)が(a)のA-A断面図である。
図3】本発明の第1実施形態における培養容器に対して測定光を入射させた場合の模式図である。
図4】(a)が本発明の第2実施形態における培養容器の平面図であり、(b)が(a)のB-B断面図である。
図5】(a)が本発明の第3実施形態における培養容器の平面図であり、(b)が(a)のC-C断面図である。
図6】(a)が本発明の第4実施形態における培養容器の平面図であり、(b)が(a)のD-D断面図である。
図7】本発明の第5実施形態における培養容器の平面図である。
図8】本発明の第6実施形態における培養容器の平面図である。
図9】本発明の第7実施形態における培養容器の分解斜視図である。
図10】本発明の第8実施形態における培養容器の分解斜視図である。
図11】本発明の第9実施形態における観察システムの概略構成を示す模式図である。
図12】本発明の第10実施形態における観察システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る培養容器及び観察システムの一実施形態について説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
(概要)
【0019】
本発明の実施形態は、接着細胞を局所的に光らせることによって、光学系を用いて高コントラストな細胞の観察を可能とする培養容器及び観察システムを実現するものである。つまり、本発明の実施形態は、測定光を全反射しながら導波する導波基材を備え、細胞培養空間にて接着細胞に対して局所的に測定光の一部が入射されるようにすることで、接着細胞を局所的に光らせることを実現するものである。細胞培養空間で培養される接着細胞は、気体である空気や液体である培養液と比較すると屈折率が導波基材と近い。このため、細胞培養空間に接着細胞がある場合には、導波基材の内部を導波される測定光の一部が接着細胞の内部に入射し、接着細胞と導波基材との界面あるいは接着細胞の内部で測定光が散乱される。したがって、接着細胞が局所的に光ることとなる。
【0020】
培養容器内で培養中の接着細胞を観察する場合に、対象を透過した光を観察する明視野での観察ではコントラストが低くなる。このため、明視野での接着細胞の観察は、細胞の境界が不明瞭となり、非染色の細胞を観察するには不向きである。位相差顕微鏡は、このような接着細胞をコントラスト良く観察する方法の1つであり、位相膜と減光フィルタを有する位相差光学系を備える。ただし、位相差顕微鏡では、培養容器の溶液の縁部では位相差の効果が弱まるか得られなくなるため、コントラストが良い位相差画像が得られる領域が容器の中心部に限定されてしまう。
【0021】
上述の特許文献1や特許文献2等には、対象物の高コントラストな画像を得る方法として、暗視野光学系が開示されている。暗視野光学系は、受光系の観察方向に対して斜め方向から観察対象に測定光を入射し、観察対象の内部での散乱光を観察することによって、画像を得る手法である。このような暗視野光学系によれば、位相差画像によらずにコントラストが良く対象物となる接着細胞を観察することが可能となる。しかしながら、暗視野光学系を培養容器中の細胞画像の観察に適用しようとした場合に、斜め方向から培養容器に入射した測定光が培養容器の内部を伝わって培養容器全体に拡がってしまうと、培養容器の様々な部位から測定光が漏出する。このような漏出光が観察の妨げとなる可能性がある。
【0022】
本発明の実施形態では、側端面から入射された測定光を内部にて全反射させて導波する導波基材と、導波基材の表面に立設されると共に内側に細胞培養空間を形成する囲壁とを備える。これによって、接着細胞が導波基材に接着している箇所で局所的に、測定光が導波基材から細胞培養空間に屈折入射し細胞内で散乱する。したがって、本発明の実施形態によれば、顕微鏡や等倍率でのカメラ等の光学装置を用いて接着細胞をコントラスト良く観察することが可能となる。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態の培養容器1の斜視図である。また、図2(a)は本第1実施形態の培養容器1の平面図であり、図2(b)は(a)のA-A断面図である。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、導波基材2から囲壁3が突出する方向を上方向とする。ただし、培養容器1の保管時等の載置姿勢は、説明の便宜上設定した上方向が必ずしも重力方向における上方向と一致する必要はない。
【0024】
本実施形態の培養容器1は、接着細胞X(培養容器1に接着しながら増殖する細胞)の培養を行うための容器であり、導波基材2に測定光を導入しカメラ等の受光系を用いることで、高コントラストな接着細胞Xの観察を行うことが可能となる。この培養容器1は、図1及び図2に示すように、導波基材2と、囲壁3とを備えている。
【0025】
導波基材2は、上面2a(表面)と底面2bとが平行に対向配置された板状の部材である。本実施形態において導波基材2は、平面視の形状が長方形である。なお、平面視において導波基材2の長辺に沿った方向を説明の便宜上左右方向と称し、平面視において導波基材2の短辺に沿った方向を説明の便宜上前後方向と称する。
【0026】
本実施形態においては、導波基材2の平面視形状が長方形であるため、導波基材2は、側端面2cとして、左側端面2c1、右側端面2c2、前側端面2c3、及び後側端面2c4を有している。各々の側端面2cは、平面である。
【0027】
本実施形態においては、左側端面2c1は、外部から測定光Lが入射される入射端面である。このような左側端面2c1は、測定光Lが入射する際に散乱することを抑制するために、他の側端面2c(右側端面2c2、前側端面2c3、及び後側端面2c4)よりも平坦化(表面粗さを小さく)されていても良い。
【0028】
また、本実施形態において導波基材2の上面2a及び底面2bは平面である。ただし、上面2a及び底面2bのいずれかあるいは両方を湾曲面や凹凸面であることも可能である。導波基材2の上面2aは、接着細胞Xが接着される面である。なお、囲壁3によって囲まれた空間が細胞培養空間Kとされており、細胞培養空間Kに臨む上面2aの一部領域に接着細胞Xが接着される。また、導波基材2の上面2aは、囲壁3の接続面である。本実施形態においては、囲壁3が導波基材2に対して接着あるいは融着等によって接続されている。
【0029】
このような導波基材2は、入射端面とされた左側端面2c1から入射された測定光Lを内部で全反射させながら右側端面2c2に向けて導波する導波路として機能する。測定光Lとしては、レーザ光が用いられる。導波基材2の上面2aから底面2bまでの寸法(すなわち厚さ寸法)は、測定光Lの全体が入射可能な範囲であれば、培養容器1の取扱性や囲壁3の支持に求められる強度を確保することが可能な前提において、任意に設定することができる。
【0030】
また、測定光Lは、測定可能範囲広げるため、平面状に広がるラインレーザ光であることが好ましい。このため、培養容器1の前後方向の幅寸法は、例えば測定光Lの前後方向のライン長よりも大きくすることが好ましい。
【0031】
このように測定光Lの導波路として機能する導波基材2は、測定光Lに対して透明な材料によって形成されており、例えばガラスやポリスチレンによって形成することができる。例えば、測定光Lとしては、ピーク波長が520nmのレーザ光を用いる。このため、導波基材2は、このようなレーザ光の測定光Lを導波可能な材料によって形成されている。
【0032】
なお、培養容器1で培養される接着細胞の細胞膜の屈折率は1.46~1.6程度である。これに対して、導波基材2は、培養液や空気よりも接着細胞の細胞膜に近い屈折率である。例えば、導波基材2をガラスによって形成した場合の屈折率は1.52、導波基材2をポリスチレンによって形成した場合の屈折率は1.59となる。
【0033】
囲壁3は、軸芯Laが中心である円筒状部材であり、導波基材2の上面2aに立設されている。囲壁3は、軸芯Laが導波基材2の上面2aの法線方向と平行となるように導波基材2に対して姿勢設定されており、下端が導波基材2の上面と接続され、上端が開放端である。
【0034】
本実施形態において囲壁3は、導波基材2と別体として形成され、形成された後に導波基材2に対して接続される。このような囲壁3は、接着剤を介して導波基材2に接続されたり、溶着によって導波基材2に接続されたりする。このため、囲壁3は、導波基材2から剥離することも可能である。つまり、本実施形態において、囲壁3は、導波基材2に対して着脱可能である。このように囲壁3が導波基材2に対して着脱可能であることによって、例えば囲壁3を設けずに導波基材2を使用することも可能となる。
【0035】
図2(b)に示すように、囲壁3は、基部3aと、遮蔽コーティング3b(遮蔽部)とを有している。基部3aは、例えば樹脂によって形成されており、導波基材2と異なる材料によって形成することが可能である。このような基部3aは、囲壁3の強度部材として機能する主材であり、導波基材2に対して接続されている。
【0036】
遮蔽コーティング3bは、測定光Lを遮蔽可能な膜部材であり、基部3aの表面に被覆して設けられている。遮蔽コーティング3bは、測定光Lを遮蔽することによって、導波基材2から囲壁3の基部3aに進入した測定光Lが囲壁3から細胞培養空間Kに漏出することを防止する。
【0037】
なお、本実施形態においては、導波基材2との接続面を除いて基部3aの全体を覆うように遮蔽コーティング3bが設けられている。しかしながら、囲壁3に進入した測定光Lが囲壁3から細胞培養空間Kに漏出することが抑制できれば良いため、遮蔽コーティング3bは、囲壁3の内壁面のみに設けることも可能である。
【0038】
また、基部3aと導波基材2との間に測定光Lの基部3aへの進入を防止する遮蔽部を設けるようにしても良い。このような場合は、遮蔽部は、導波基材2から基部3aへの進入を防止し、これによって囲壁3から細胞培養空間Kに測定光Lが漏出することを防止する。このため、基部3aと導波基材2との間に遮蔽部を設けることで、上述の遮蔽コーティング3bを設けない構成であることも可能である。
【0039】
この他、囲壁3の全体を、測定光Lが透過しない着色樹脂や金属によって形成し、導波基材2から基部3aへの進入を防止しても良い。この場合には、囲壁3が、上述のように基部3aと遮蔽コーティング3bとに分かれておらず、囲壁3そのものが遮光部として機能する。
【0040】
導波基材2と囲壁3とが異なる材料によって形成されている場合には、例えば導波基材2と囲壁3とは別々に形成されて後に接合することができる。このような場合には、例えば先に形成された基部3aに対して遮蔽コーティング3bを被膜形成し、その後、接着剤あるいは溶着等によって囲壁3を導波基材2と接続する。
【0041】
また、導波基材2に対して、先に基部3aを接続し、その後に基部3aの表面に遮蔽コーティング3bを形成することも可能である。このような場合には、例えば、基部3aを導波基材2と同一材料によって一体的に形成し、その後に基部3aの表面に遮蔽コーティング3bを形成することも可能である。
【0042】
また、本実施形態では囲壁3の上端面3cは、導波基材2の上面2a及び底面2bと平行である。このため、導波基材2の上面2a及び底面2bが水平となるように導波基材2を姿勢設定することによって、囲壁3の上端面3cも水平となる。この結果、囲壁3の上端面3cに、細胞培養空間Kを上方から閉じる蓋を容易に載置することが可能となる。
【0043】
図3は、このような本実施形態の培養容器1に対して測定光Lを入射させた場合の模式図である。導波基材2と空気及び培養液との屈折率の差は大きい。このため、図3に示すように、導波基材2の入射端面である左側端面2c1から導波基材2の内部に入射した測定光Lは、導波基材2の上面2aと底面2bとで全反射されながら、導波基材2の右側端面2c2に向かって導波される。
【0044】
このように測定光Lは、導波基材2の内部を全反射しながら進行する。ここで、囲壁3に囲まれた細胞培養空間Kに接着細胞Xが存在すると、接着細胞Xの屈折率が空気や培養液よりも導波基材2と近いため、測定光Lの一部が接着細胞Xに進入する。このように接着細胞Xに進入した測定光Lは、接着細胞Xの内部、接着細胞Xと導波基材2との界面で散乱する。この結果、接着細胞Xの上部から見ると、導波基材2の内部を進行する測定光Lは視認されず、接着細胞Xが局所的に視認可能となる。
【0045】
したがって、本実施形態の培養容器1を用いて、接着細胞Xの上部から観察することで、接着細胞Xをコントラスト良く視認することが可能となる。よって、本実施形態の培養容器1によれば、光学系を用いた顕微鏡にて、接着細胞Xをコントラスト良く観察することが可能である。
【0046】
また、導波基材2の内部を進行する測定光Lの一部は、囲壁3の基部3aに進入する。ただし、このように囲壁3の基部3aに進入した測定光Lは、遮蔽コーティング3bによって遮られる。このため、測定光Lの一部が、囲壁3から細胞培養空間Kに進入することが防止される。
【0047】
なお、測定光Lの導波基材2の内部における上面2aとの反射回数が多いほど、測定光Lが接着細胞Xに入射する機会を増やすことができる。このため、測定光Lが全反射する条件を脱しない範囲で、測定光Lの反射回数が多いことが好ましい。したがって、測定光Lは、図3に示すように、導波基材2の上面2a及び底面2bに対して光軸L1が傾いた状態で導波基材2に入射されることが好ましい。例えば、上面2a及び底面2bと測定光Lの光軸L1との角度αは、4°程度であることが好ましい。
【0048】
以上のような本実施形態の培養容器1は、左側端面2c1から入射された測定光Lを内部にて全反射させて導波する導波基材2と、導波基材2の上面2aに立設されると共に内側に細胞培養空間Kを形成する囲壁3とを備えている。
【0049】
このような本実施形態の培養容器1によれば、測定光Lが導波基材2の内部を全反射しながら導波される。細胞培養空間Kで培養される接着細胞Xは、気体である空気や液体である培養液と比較すると屈折率が導波基材2と近い。このため、細胞培養空間Kに接着細胞Xがある場合には、導波基材2の内部を導波される測定光Lの一部が接着細胞Xの内部に入射し、接着細胞Xと導波基材2との界面あるいは接着細胞Xの内部で測定光Lが散乱される。したがって、接着細胞Xを局所的に光らせることが可能となる。よって、本実施形態の培養容器1によれば、光学系を用いて高コントラストな接着細胞Xの観察が可能となる。
【0050】
また、本実施形態の培養容器1においては、囲壁3が、測定光Lを遮蔽する遮蔽コーティング3bを備えている。このような本実施形態の培養容器1によれば、測定光Lの一部が囲壁3から細胞培養空間Kに漏出することを防止することができる。したがって、細胞培養空間Kの接着細胞Xをよりコントラスト良く観察することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の培養容器1においては、囲壁3が、導波基材2と異なる材料によって形成されると共に導波基材2に着脱可能に接続された基部3aと、基部3aの表面に設けられた遮蔽コーティング3bとを有している。このような本実施形態の培養容器1によれば、囲壁3を導波基材2と別体であるため、囲壁3の材料選択や形状を導波基材2と切り離して設計することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0053】
図4(a)は本実施形態の培養容器1Aの平面図であり、図4(b)は(a)のB-B断面図である。図4に示すように、本実施形態の培養容器1Aは、導波基材2の底面2bに分散して複数の設けられた支持脚4を備えている。本実施形態において、導波基材2の平面視形状は長方形状である。支持脚4は、このような平面視が長方形状の導波基材2の4隅の各々に設けられている。
【0054】
各々の支持脚4は、導波基材2の底面2bから下方に向けて突出されており、本実施形態では円柱状である。なお、支持脚4は、角柱状、円筒形状、角筒形状であることも可能である。これらの支持脚4は、本実施形態の培養容器1Aが床面上に設置された場合に、床面に対して下面が直接的に当接され、導波基材2及び囲壁3を下方から支持する。これらの支持脚4が床面に当接されることによって、導波基材2の底面2bと床面とが接触すること防止することができる。
【0055】
導波基材2の底面2bと床面と接触した場合には、もし床面を形成する材料が導波基材2と屈折率が近いと、導波基材2の底面2bから床面を形成する部材に測定光Lが漏出し、光の利用効率が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態の培養容器1Aによれば、導波基材2の底面2bが他の部材と接触することを防止できるため、導波基材2の底面2bから測定光Lが漏出することを抑制することが可能となる。
【0056】
各々の支持脚4の導波基材2の底面2bから下方への突出量は同一である。このため、全ての支持脚4の底面2bを水平な床面に当接されることによって、導波基材2を上面2a及び底面2bが水平となるように配置することが可能となる。
【0057】
これらの支持脚4は、例えば測定光Lが進入しない有色樹脂によって形成することができる。また、支持脚4は、測定光Lが進入する透明な材料によって形成することも可能である。このような場合には、支持脚4から漏出した測定光Lが接着細胞Xの観察を阻害する迷光となることを防止するため、測定光Lを遮蔽するコーティングで支持脚4の表面を覆うことが望ましい。
【0058】
以上のように本実施形態の培養容器1Aは、導波基材2の底面2bに分散して複数設けられると共に導波基材2を下方から支持する支持脚4を備えている。このため、導波基材2の底面2bが他の部材と接触して、他の部材に測定光Lが漏出することを防止することができる。このため、本実施形態の培養容器1Aによれば、測定光Lが漏出することで接着細胞Xの観察が妨げられること、測定光Lが漏出することで測定光Lの利用効率が低下することを防止することが可能となる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図5を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0060】
図5(a)は本実施形態の培養容器1Bの平面図であり、図5(b)は(a)のC-C断面図である。図5に示すように、本実施形態の培養容器1Bは、導波基材2の右側端面2c2に外側から当接して設けられる反射板5が設けられている。
【0061】
反射板5は、測定光Lを反射可能な鏡面を有する部材であり、導波基材2の内部で導波され導波基材2の右側端面2c2から導波基材2の外部に出ようとする測定光Lを反射して導波基材2の内部に戻す。このような反射板5は、本実施形態においては、導波基材2の入射端面である左側端面2c1に対向する右側端面2c2の全面を覆うように設けられている。ただし、前側端面2c3あるいは後側端面2c4を覆うように反射板5を設置するようにしても良い。
【0062】
また、このような本実施形態の培養容器1Bにおいては、反射板5で反射した測定光Lが導波基材2を導波され、その一部が接着細胞Xに入射して散乱することとなる。このため、導波基材2の内部での迷光を避けるため、右側端面2c2及び反射板5の反射面は、入射端面である左側端面2c1と同程度に平滑であることが好ましい。
【0063】
また、このように反射板5を設置した場合には、反射板5によって反射された測定光Lと、入射端面である左側端面2c1から入射された測定光Lとが同一の導波基材2の内部にて導波される。このため、導波基材2の左右方向の長さ寸法は、反射板5によって反射された測定光Lと、入射端面である左側端面2c1から入射された測定光Lとによって、導波基材2の内部で干渉縞が生じないように設定することが好ましい。
【0064】
以上のように本実施形態の培養容器1Bは、測定光Lが入射される位置(本実施形態では左側端面2c1)と異なる位置に設けられると共に測定光Lを反射する反射板5を備えている。このため、反射板5を設けない場合には、導波基材2を抜けていた測定光Lを再び導波基材2に戻して接着細胞Xの観察に用いることが可能となる。したがって、本実施形態の培養容器1Bによれば、測定光Lの利用効率を高めることが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、板状の反射板5を備える構成について説明した。しかしながら、他の形状の反射部を反射板5に代えて設置することも可能である。例えば、ブロック体からなる反射部を右側端面2c2に当接させて右側端面2c2を覆うように設けることも可能である。
【0066】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0067】
図6(a)は本実施形態の培養容器1Cの平面図であり、図5(b)は(a)のD-D断面図である。この図に示すように、本実施形態においては、平面視形状が矩形状の囲壁6を備えている。
【0068】
囲壁6は、軸芯Laが中心である角筒状部材であり、導波基材2の上面2aに立設されている。囲壁6は、軸芯Lbが導波基材2の上面2aの法線方向と平行となるように導波基材2に対して姿勢設定されており、下端が導波基材2の上面と接続され、上端が開放端である。
【0069】
本実施形態において囲壁6は、平面視において、矩形状である。このような矩形における一辺は、導波基材2の側端面2cと平行である。例えば、囲壁6の左側の一辺は、導波基材2の左側端面2c1と平行である。また、囲壁6の右側の一辺は、導波基材2の右側端面2c2と平行である。また、囲壁6の前側の一辺は、導波基材2の前側端面2c3と平行である。また、囲壁6の後側の一辺は、導波基材2の後側端面2c4と平行である。ただし、囲壁6の上述の各々の辺は、導波基材2の側端面2cに対して傾斜していても良い。
【0070】
このような囲壁6は、導波基材2と別体として形成され、形成された後に導波基材2に対して接続される。このような囲壁6は、接着剤を介して導波基材2に接続されたり、溶着によって導波基材2に接続されたりする。このため、囲壁6は、導波基材2から剥離することも可能である。つまり、本実施形態において、囲壁6は、導波基材2に対して着脱可能である。このように囲壁6が導波基材2に対して着脱可能であることによって、例えば囲壁6を設けずに導波基材2を使用することも可能となる。
【0071】
図6(b)に示すように、囲壁6は、基部6aと、遮蔽コーティング6b(遮蔽部)とを有している。基部6aは、例えば樹脂によって形成されており、導波基材2と異なる材料によって形成することが可能である。このような基部6aは、囲壁6の強度部材として機能する主材であり、導波基材2に対して接続されている。
【0072】
遮蔽コーティング6bは、測定光Lを遮蔽可能な膜部材であり、基部6aの表面に被覆して設けられている。遮蔽コーティング6bは、測定光Lを遮蔽することによって、導波基材2から囲壁6の基部6aに進入した測定光Lが囲壁6から細胞培養空間Kに漏出することを防止する。
【0073】
なお、本実施形態においては、導波基材2との接続面を除いて基部6aの全体を覆うように遮蔽コーティング6bが設けられている。しかしながら、囲壁6に進入した測定光Lが囲壁6から細胞培養空間Kに漏出することが抑制できれば良いため、遮蔽コーティング6bは、囲壁6の内壁面のみに設けることも可能である。
【0074】
また、基部6aと導波基材2との間に測定光Lの基部6aへの進入を防止する遮蔽部を設けるようにしても良い。このような場合は、遮蔽部は、導波基材2から基部6aへの進入を防止し、これによって囲壁6から細胞培養空間Kに測定光Lが漏出することを防止する。このため、基部6aと導波基材2との間に遮蔽部を設けることで、上述の遮蔽コーティング6bを設けない構成であることも可能である。
【0075】
この他、囲壁6の全体を、測定光Lが透過しない着色樹脂や金属によって形成し、導波基材2から基部6aへの進入を防止しても良い。この場合には、囲壁6が、上述のように基部3aと遮蔽コーティング6bとに分かれておらず、囲壁6そのものが遮光部として機能する。
【0076】
導波基材2と囲壁6とが異なる材料によって形成されている場合には、例えば導波基材2と囲壁6とは別々に形成されて後に接合することができる。このような場合には、例えば先に形成された基部6aに対して遮蔽コーティング6bを被膜形成し、その後、接着剤あるいは溶着等によって囲壁6を導波基材2と接続する。
【0077】
また、導波基材2に対して、先に基部6aを接続し、その後に基部6aの表面に遮蔽コーティング6bを形成することも可能である。このような場合には、例えば、基部6aを導波基材2と同一材料によって一体的に形成し、その後に基部6aの表面に遮蔽コーティング6bを形成することも可能である。
【0078】
また、本実施形態では囲壁6の上端面6cは、導波基材2の上面2a及び底面2bと平行である。このため、導波基材2の上面2a及び底面2bが水平となるように導波基材2を姿勢設定することによって、囲壁6の上端面6cも水平となる。この結果、囲壁6の上端面6cに、細胞培養空間Kを上方から閉じる蓋を容易に載置することが可能となる。
【0079】
このように本実施形態の培養容器1Cでは、囲壁6の平面視形状が矩形状である。このため、左右方向における最大寸法と、前後方向における最大寸法とを同一とした場合に、平面視形状が円形状の囲壁と比較して、細胞培養空間Kを広く確保することが可能となる。
【0080】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0081】
図7は、本実施形態の培養容器1Dの平面図である。この図に示すように、本実施形態の培養容器1Dは、導波基材2の上面2aに対して、多数の囲壁3が設けられている。これらの囲壁3は、左右方向及び前後方向に格子状に等間隔で配列されている。
【0082】
本実施形態においては、左右方向に4つの囲壁3が配列され、前後方向に3つの囲壁3が配列され、合計で12個の囲壁3が導波基材2の上面2aに対して設けられている。このため、本実施形態の培養容器1Dは、12個の細胞培養空間Kを有している。なお、囲壁3の数は、12個に限定されるものではない。例えば、24個の囲壁3を備える構成を採用することも可能である。
【0083】
これらの囲壁3は、導波基材2の上面2aからの突出量(すなわち高さ寸法)が、例えば、全て同一である。このため、全ての囲壁3の上端開口を、単一の板状の蓋で閉じることが可能となっている。
【0084】
なお、細胞培養空間Kの各々の容積を確保するために、本実施形態の培養容器1Dのように複数の囲壁3を備える場合には、囲壁3の大きさを上記第1実施形態と同様とし、導波基材2の大きさを上記第1実施形態よりも大きくする。
【0085】
このような本実施形態の培養容器1Dにおいては、単一の導波基材2に対して複数の囲壁3が設けられている。このため、複数の細胞培養空間Kを備えることができ、接着細胞Xを区分けして培養することが可能となる。
【0086】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、図8を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態あるいは上記第4実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0087】
図8は、本実施形態の培養容器1Eの平面図である。この図に示すように、本実施形態の培養容器1Eは、導波基材2の上面2aに対して、多数の囲壁6が設けられている。これらの囲壁6は、左右方向及び前後方向に格子状に等間隔で配列されている。
【0088】
本実施形態においては、左右方向に4つの囲壁6が配列され、前後方向に3つの囲壁6が配列され、合計で12個の囲壁6が導波基材2の上面2aに対して設けられている。このため、本実施形態の培養容器1Dは、12個の細胞培養空間Kを有している。なお、囲壁6の数は、12個に限定されるものではない。例えば、24個の囲壁6を備える構成を採用することも可能である。
【0089】
これらの囲壁6は、導波基材2の上面2aからの突出量(すなわち高さ寸法)が、例えば、全て同一である。このため、全ての囲壁6の上端開口を、単一の板状の蓋で閉じることが可能となっている。
【0090】
なお、細胞培養空間Kの各々の容積を確保するために、本実施形態の培養容器1Dのように複数の囲壁6を備える場合には、囲壁6の大きさを上記第1実施形態と同様とし、導波基材2の大きさを上記第1実施形態よりも大きくする。
【0091】
このような本実施形態の培養容器1Dにおいては、単一の導波基材2に対して複数の囲壁6が設けられている。このため、複数の細胞培養空間Kを備えることができ、接着細胞Xを区分けして培養することが可能となる。
【0092】
また、囲壁6の平面視形状が矩形状である。このため、左右方向における最大寸法と、前後方向における最大寸法とを同一とした場合に、平面視形状が円形状の囲壁と比較して、細胞培養空間Kを広く確保することが可能となる。したがって、単一の導波基材2の上面2aにおいて細胞培養空間Kを広く確保することが可能となる。
【0093】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について、図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0094】
図9は、本実施形態の培養容器1Fの分解斜視図である。この図に示すように、本実施形態の培養容器1Fは、導波基材2と、囲壁7とを備えている。
【0095】
本実施形態において囲壁7は、平面視において円形状の複数の収容部7aを有している。これらの収容部7aは、左右方向及び前後方向に格子状に等間隔で配列されている。本実施形態においては、左右方向に4つの収容部7aが配列され、前後方向に3つの収容部7aが配列され、合計で12個の収容部7aが囲壁7に対して設けられている。なお、収容部7aの数は、12個に限定されるものではない。例えば、24個の収容部7aを備える構成を採用することも可能である。
【0096】
これらの収容部7aは、囲壁7が導波基材2の上面に接続された状態で、細胞培養空間Kを形成する。つまり、収容部7aの内部が細胞培養空間Kである。このように、本実施形態においても、囲壁7が囲むことによって、導波基材2の上面2aの一部に細胞培養空間Kが形成されている。
【0097】
囲壁7は、例えば測定光Lが内部に進入することができない材料によって形成されている。このように囲壁7を測定光Lが内部に進入することができない材料によって形成することによって、導波基材2から囲壁7に測定光Lが進入し、囲壁7から接着細胞Xの観察の妨げとなる光の漏出を防止することができる。
【0098】
なお、囲壁7を、強度部材となる基部と、基部の表面を覆うと共に測定光Lを遮蔽する遮蔽コーティングを備える構成であることも可能である。このような構成であることによって、基部に導波基材2から測定光Lの一部が進入しても、遮蔽コーティングで遮蔽されることによって基部に進入した測定光が細胞培養空間Kに漏出することを防止することが可能となる。
【0099】
このような本実施形態の培養容器1Fにおいては、囲壁7が、各々が細胞培養空間Kを形成する収容部7aを複数備えている。このため、単一の囲壁7を導波基材2に接着することによって、一度に多数の細胞培養空間Kを形成することが可能となる。
【0100】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について、図10を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0101】
図10は、本実施形態の培養容器1Gの分解斜視図である。この図に示すように、本実施形態の培養容器1Gは、導波基材2と、囲壁8とを備えている。
【0102】
本実施形態において囲壁8は、平面視において矩形状の複数の収容部8aを有している。これらの収容部8aは、左右方向及び前後方向に格子状に等間隔で配列されている。本実施形態においては、左右方向に4つの収容部8aが配列され、前後方向に3つの収容部8aが配列され、合計で12個の収容部8aが囲壁8に対して設けられている。なお、収容部8aの数は、12個に限定されるものではない。例えば、24個の収容部8aを備える構成を採用することも可能である。
【0103】
これらの収容部8aは、囲壁8が導波基材2の上面に接続された状態で、細胞培養空間Kを形成する。つまり、収容部8aの内部が細胞培養空間Kである。このように、本実施形態においても、囲壁8が囲むことによって、導波基材2の上面2aの一部に細胞培養空間Kが形成されている。
【0104】
囲壁8は、例えば測定光Lが内部に進入することができない材料によって形成されている。このように囲壁8を測定光Lが内部に進入することができない材料によって形成することによって、導波基材2から囲壁8に測定光Lが進入し、囲壁8から接着細胞Xの観察の妨げとなる光の漏出を防止することができる。
【0105】
なお、囲壁8を、強度部材となる基部と、基部の表面を覆うと共に測定光Lを遮蔽する遮蔽コーティングを備える構成であることも可能である。このような構成であることによって、基部に導波基材2から測定光Lの一部が進入しても、遮蔽コーティングで遮蔽されることによって基部に進入した測定光が細胞培養空間Kに漏出することを防止することが可能となる。
【0106】
このような本実施形態の培養容器1Gにおいては、囲壁8が、各々が細胞培養空間Kを形成する収容部8aを複数備えている。このため、単一の囲壁7を導波基材2に接着することによって、一度に多数の細胞培養空間Kを形成することが可能となる。
【0107】
また、本実施形態の培養容器1Gにおいては、各々の収容部8aの平面視形状が矩形状である。このため、左右方向における最大寸法と、前後方向における最大寸法とを同一とした平面視円形状の収容部と比較して、細胞培養空間Kを広く確保することが可能となる。したがって、単一の導波基材2の上面2aにおいて細胞培養空間Kを広く確保することが可能となる。
【0108】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について、図11を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0109】
図11は、本実施形態の観察システム10の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態の観察システム10は、培養容器1と、光源部11とを備えている。
【0110】
光源部11は、測定光Lを射出するレーザ光射出装置である。光源部11は、図11に示すように、導波基材2の左側端面2c1と対向するようにして、培養容器1の側方に配置されている。このような光源部11は、測定光Lが導波基材2の内部で全反射する条件を満たす範囲で、測定光Lの光軸L1が導波基材2の上面2aと底面2bに対して傾斜するように測定光Lを射出する。
【0111】
このような本実施形態の観察システム10においては、測定光Lを射出する光源部11を備えている。接着細胞Xの観察に適した測定光Lを射出するように予め光源部11に対して出力等を設定しておくことが可能となる。このため、測定光Lの調整を短時間で完了することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態の観察システム10においては、培養容器1の導波基材2の上面2a及び底面2bが平面とされており、光源部11が、導波基材2の左側端面2c1に入射する測定光Lの光軸L1が、導波基材2の上面2a及び底面2bに対して傾斜するように配置されている。このため、測定光Lの導波基材2の内部における上面2aとの反射回数が多くすることができ、測定光Lが接着細胞Xに入射する機会を増やすことができる。
【0113】
また、本実施形態の観察システム10においては、例えば、培養容器1の設置位置を規定するステージを備え、光源部11をステージに対して直接的にあるいは間接的に固定する構成でも可能である。このような構成を採用することによって、培養容器1が予め規定された位置に容易に載置することができ、また載置された培養容器1に対する光源部11の姿勢を観察に適した姿勢に正確に定めることが可能となる。このため、例えば、確実に測定光Lを、培養容器1の導波基材2の上面2a及び底面2bに対して光軸L1が所望の傾斜角度となるように、射出することが可能となる。
【0114】
なお、本実施形態においては、培養容器1を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。培養容器1に代えて、上記第2実施形態の培養容器1A、上記第3実施形態の培養容器1B、上記第4実施形態の培養容器1C、上記第5実施形態の培養容器1D、上記第6実施形態の培養容器1E、上記第7実施形態の培養容器1F、あるいは、上記第8実施形態の培養容器1Gを備える構成を採用することも可能である。
【0115】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について、図12を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第9実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0116】
図12は、本実施形態の観察システム20の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態の観察システム20は、培養容器1と、光源部11と、光学系21(観察部)とを備えている。
【0117】
光学系21は、細胞培養空間Kの全体あるいは一部を拡大して観察可能な光学系であり、培養容器1の上方に配置されている。この光学系21は、接着細胞Xで分散された測定光Lを受光し、結像することによって観察者による観察あるいはカメラ等による撮像を可能とするものである。なお、光学系21は、培養容器1中の接着細胞Xを観察可能であることを前提として、設置位置や撮像方向が限定されるものではない。つまり、光学系21は、培養容器1に対して様々な位置に設置することが可能であると共に様々な方向から接着細胞Xを撮像することが可能である。
【0118】
このように、本実施形態の観察システム10は、光学系21を備えている。このため、外部の光学系を用いることなく、細胞培養空間Kで培養されている接着細胞Xの観察を行うことが可能となる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0120】
1……培養容器、1A~1G……培養容器、2……導波基材、2a……上面(表面)、2b……底面、2c……側端面、2c1……左側端面(入射端面)、2c2……右側端面、2c3……前側端面、2c4……後側端面、3……囲壁、3a……基部、3b……遮蔽コーティング(遮光部)、4……支持脚、5……反射板(反射部)、6……囲壁、6a……基部、6b……遮蔽コーティング(遮光部)、7……囲壁、7a……収容部、8……囲壁、8a……収容部、10……観察システム、11……光源部、20……観察システム、21……光学系(観察部)、K……細胞培養空間、L……測定光、L1……光軸、X……接着細胞


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12