(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20230725BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20230725BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20230725BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/10 Z
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2020549335
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037790
(87)【国際公開番号】W WO2020067255
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018185206
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄平
(72)【発明者】
【氏名】牧野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】藤原 久嗣
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/098907(WO,A1)
【文献】特開2004-248492(JP,A)
【文献】特開2001-309600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/10
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に沿って延びる中心軸周りに回転するロータと、
前記ロータの径方向外側に位置するステータと、
前記ステータの上側に位置するブラケットと、
前記ブラケットに保持され軸方向と直交する平面に沿って配置される回路基板と、
前記ブラケットに保持され端子接続部において前記回路基板に接続されるバスバーと、
を備え、
前記ブラケットは、
前記回路基板を下側から支持する基板支持部と、
前記基板支持部に対して上側に突出し前記回路基板を囲む壁部と、を有し、
前記壁部には、上端から下側に延びる切欠部が設けられる、
モータ。
【請求項2】
前記端子接続部は、前記回路基板と前記バスバーとを接続する半田部である、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記切欠部は、上側を向く底面を有し、
前記底面は、前記端子接続部の上端より下側に位置する、
請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記壁部は、前記中心軸を囲む筒状であり、
前記端子接続部の周方向位置と前記切欠部の周方向位置とが、互いに重なる、
請求項1~3の何れか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記回路基板を上側から覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記壁部を外側から囲む筒部を有し、
前記壁部の外側面には、軸方向に沿って延び前記筒部の内側面に接触する第1リブが設けられ、
前記第1リブの上端は、前記壁部の上端より下側に位置する、
請求項1~4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記切欠部は、上側を向く底面を有し、
前記第1リブの上端は、前記切欠部の前記底面より下側に位置する、又は軸方向位置が前記切欠部の前記底面と一致する、
請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記カバー部材に支持されるベアリングを備え、
前記ロータは、前記中心軸を中心として軸方向に延び前記ベアリングに支持されるシャフトを有する、
請求項5又は6に記載のモータ。
【請求項8】
前記基板支持部は、
前記回路基板の下面と接触する台座部と、
前記台座部の上面から上側に突出する位置決めピンと、を有し、
前記回路基板には、前記位置決めピンが挿入される位置決め孔が設けられる、
請求項1~7の何れか一項に記載のモータ。
【請求項9】
前記台座部の上面が、軸方向と直交する平坦面である、
請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記基板支持部は、複数の前記位置決めピンを有し、
複数の前記位置決めピンは、前記壁部の内周面に沿って並ぶ、
請求項8又は7に記載のモータ。
【請求項11】
前記位置決めピンは、軸方向と直交する方向を向く外側面が、前記壁部の内周面に繋がり、
前記位置決め孔は、前記回路基板の外縁に開口する切り欠きである、
請求項8~10の何れか一項に記載のモータ。
【請求項12】
前記回路基板を上側から覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記壁部を外側から囲む筒部を有し、
前記壁部の外側面には、軸方向に沿って延び前記筒部の内側面に接触する第1リブが設けられ、
前記位置決めピンは、前記第1リブの近傍に位置する、
請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
前記壁部は、前記中心軸を囲む筒状であり、
前記位置決めピンと前記第1リブとは、前記中心軸を中心とする10°以内に配置される、
請求項12に記載のモータ。
【請求項14】
前記位置決めピンの上端は、前記第1リブの上端より上側に位置する、又は軸方向位置が前記第1リブの上端と一致する、
請求項12又は13に記載のモータ。
【請求項15】
前記壁部の内周面には、周方向に沿って並ぶ複数の第2リブが設けられる、
請求項8~14のいずれか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。本出願は、2018年9月28日に提出された日本特許出願第2018-185206号に基づいている。本出願は、当該出願に対して優先権の利益を主張するものである。その内容全体は、参照されることによって本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板、バスバーおよびこれらを保持するブラケットを有するモータが知られている。例えば、特許文献1には、基板と、ターミナルと、基板およびターミナルを保持する中間ブラケットと、中間ブラケットを覆うエンドカバーと、を有するブラシレスモータが開示されている。特許文献1において、中間ブラケットとエンドカバーとは、それぞれ円筒状の周壁を有し、周壁同士が嵌合することで径方向の位置合わせがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモータにおいて、基板は、中間ブラケットの周壁の内側に配置される。このため、ターミナルと基板とを半田接合する場合、半田ごてなどの半田設備を基板の上面にアクセスする際に周壁に干渉する虞があり、製造工程が煩雑化するという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、バスバーと回路基板の接続工程を容易とすることができるモータの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータの一つの態様は、上下方向に沿って延びる中心軸周りに回転するロータと、前記ロータの径方向外側に位置するステータと、前記ステータの上側に位置するブラケットと、前記ブラケットに保持され軸方向と直交する平面に沿って配置される回路基板と、前記ブラケットに保持され端子接続部において前記回路基板に接続されるバスバーと、を備える。前記ブラケットは、前記回路基板を下側から支持する基板支持部と、前記基板支持部に対して上側に突出し前記回路基板を囲む壁部と、を有する。前記壁部には、上端から下側に延びる切欠部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、バスバーと回路基板の接続工程を容易とすることができるモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1における収容筒部の開口側の部分拡大図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のバスバーアセンブリおよび回路基板の斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のバスバーアセンブリおよび回路基板の平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の端子接続部の断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の第1の位置決めピンの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
各図には、Z軸を示す。各図に適宜示す中心軸Jは、Z軸方向と平行に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向、すなわちZ軸方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
本明細書において、軸方向におけるZ軸方向の正の側を「上側」と呼び、軸方向におけるZ軸方向の負の側を「下側」と呼ぶ場合がある。なお、上下方向、上側および下側とは、単に説明のために用いられる方向であって、モータ使用時の実際の位置関係やモータの姿勢を限定するものではない。
【0012】
<モータ>
図1は、本実施形態のモータ1の断面図である。
本実施形態のモータ1は、ブラシレスモータである。
図1に示すように、モータ1は、ハウジング10と、カバー部材20と、シャフト31を有するロータ30と、ステータ40と、ベアリング51,52と、回路基板70と、バスバーアセンブリ60と、第1の封止部材81と、第2の封止部材82と、を有する。本実施形態において、第1の封止部材81および第2の封止部材82は、Oリングである。以下の説明では、第1の封止部材81を下側Oリング81と呼び、第2の封止部材82を上側Oリング82と呼ぶ。ベアリングは、下側ベアリング51と、上側ベアリング52と、を含む。
【0013】
<ハウジング>
ハウジング10は、ステータ40を収容する。ハウジング10は、ステータ40と下側ベアリング51とを保持する。ハウジング10の材料は、例えば、金属である。ハウジング10は、上側に開口する筒状である。ハウジング10は、収容筒部11と、底部15と、フランジ部16と、を有する。
【0014】
収容筒部11は、中心軸Jを中心とし、軸方向に沿って内径および外径が変化する多段の円筒状である。収容筒部11の板厚は、軸方向に沿って略一様である。収容筒部11は、ステータ40を径方向外側から囲む。
【0015】
図2は、
図1における収容筒部11の開口側の部分拡大図である。
収容筒部11は、径方向内側を向く内周面12を有する。内周面12は、軸方向に並び互いに内径の異なる複数の領域に区画される。内周面12は、上端内周領域12D、第1内周領域12A、第2内周領域12Bおよび第3内周領域12Cを有する。上端内周領域12D、第1内周領域12A、第2内周領域12Bおよび第3内周領域12Cは、上側から下側に向かってこの順で並ぶ。上端内周領域12D、第1内周領域12A、第2内周領域12Bおよび第3内周領域12Cは、この順で内径が小さくなる。
【0016】
上端内周領域12Dは、軸方向から見て内径が第4内径D4の略円形である。第1内周領域12Aは、軸方向から見て内径が第1内径D1の円形である。第1内周領域12Aは、上端内周領域12Dより下側に位置する。第2内周領域12Bは、軸方向から見て内径が第2内径D2の略円形である。第2内周領域12Bは、第1内周領域12Aより下側に位置する。第3内周領域12Cは、軸方向から見て内径が第3内径D3の略円形である。第3内周領域12Cは、第2内周領域12Bより下側に位置する。
【0017】
第1内径D1は、第4内径D4より小さい。第2内径D2は、第1内径D1より小さい。第3内径D3は、第2内径D2より小さい。すなわち、第1内径D1~第4内径D4は、D4>D1>D2>D3の関係を有する。
【0018】
上端内周領域12D、第1内周領域12Aおよび第2内周領域12Bは、径方向におい
てバスバーアセンブリ60の外周面と対向する。一方で、第3内周領域12Cは、径方向においてステータ40の外周面と対向する。ステータ40の外周面は、第3内周領域12Cと嵌合する。本実施形態によれば、収容筒部11の内周面12は、第3内周領域12Cを有し、第3内周領域12Cにおいてステータ40の外周面と嵌合する。このため、ハウジング10に対するステータ40の径方向の位置決めを容易に行うことができる。なお、本明細書において『嵌合する』とは、『対向する』および『接触する』の少なくともいずれか一方の状態を含む。また、『嵌合』は、直接行われてもよく、リブなどを介して間接的に行われてもよい。
【0019】
図1に示すように、底部15は、収容筒部11の下端に位置する。底部15は、収容筒部11の下側の開口を覆う。本実施形態では、収容筒部11の下端は、底部15と、一体に形成される。底部15の平面視中央には、下側ベアリング保持部15aが設けられる。本実施形態において、下側ベアリング保持部15aは、軸方向下側に向かって凹む凹部である。下側ベアリング保持部15aは、内部に下側ベアリング51を保持する。なお、下側ベアリング保持部15a内において、下側ベアリング51と底部15との間には、弾性部材(例えば、予圧ばね)が配置されてもよい。
【0020】
フランジ部16は、収容筒部11の上端に位置する。フランジ部16は、収容筒部11の上端から径方向外側に延びる。本実施形態においてハウジング10は、フランジ部16においてカバー部材20に固定される。
【0021】
<カバー部材>
カバー部材20は、ハウジング10の上側に取り付けられる。カバー部材20は、ステータ40、バスバーアセンブリ60および回路基板70を上側から覆う。また、カバー部材20は、後述するバスバーアセンブリ60のブラケット61の上側に位置する。カバー部材20は、上側ベアリング52を保持する。カバー部材20の材料は、例えば、金属である。カバー部材20は、筒部(以下、カバー筒部)21と、蓋部22と、カバーフランジ部24と、を有する。
【0022】
カバー筒部21は、中心軸Jを中心として軸方向に沿って延びる略円筒状である。カバー筒部21は、下側に開口する。カバー筒部21は、後述するバスバーアセンブリ60の壁部62を径方向外側から囲む。
【0023】
蓋部22は、カバー筒部21の上端に位置する。蓋部22は、カバー筒部21の上側の開口を覆う。蓋部22の平面視中央には、上側ベアリング保持部22aが設けられる。本実施形態において、上側ベアリング保持部22aは、カバー筒部21と蓋部22とによって構成される凹部である。上側ベアリング保持部22aは、内部に上側ベアリング52を保持する。また、上側ベアリング保持部22aの平面視中央(すなわち、蓋部22の平面視略中央)には、蓋部22を軸方向に貫通する中央孔22bが設けられる。中央孔22bには、シャフト31が通される。
【0024】
カバーフランジ部24は、カバー筒部21の下端に位置する。カバーフランジ部24は、カバー筒部21の下端から径方向外側に延びる。また、カバーフランジ部24は、周方向に沿って延びる。本実施形態では、カバーフランジ部24は、平面視において、略環状である。
【0025】
カバー筒部21の外縁には、下側に延びるかしめ部24aが設けられる。すなわち、カバー部材20は、かしめ部24aを有する。カバー部材20がハウジング10の開口に取り付けられる際、かしめ部24aは、ハウジング10のフランジ部16の下面に沿って塑性変形される。これにより、カバー部材20は、ハウジング10に固定される。
【0026】
<ロータ>
ロータ30は、上下方向に沿って延びる中心軸J周りに回転可能である。ロータ30は、シャフト31と、ロータコア32と、ロータマグネット33と、センサマグネット保持
部材35と、センサマグネット34と、を有する。
【0027】
シャフト31は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる柱状である。シャフト31は、下側ベアリング51および上側ベアリング52に回転可能に支持される。シャフト31の上側(+Z側)の端部は、カバー部材20(より詳細には蓋部22)の中央孔22bから外部に突出する。なお、シャフト31は、中実であってもよく、中空であってもよい。
【0028】
センサマグネット保持部材35は、略環状の部材である。センサマグネット保持部材35は、シャフト31の外周面に固定される。センサマグネット保持部材35は、シャフト31とともに中心軸J周りを回転する。なお、センサマグネット保持部材35は、シャフト31の外周面に、例えば、圧入や接着などにより、固定される。
【0029】
センサマグネット34は、略環状であり、周方向に沿ってN極とS極とが交互に配置さ
れる。センサマグネット34は、センサマグネット保持部材35の下面に固定される。センサマグネット34は、センサマグネット保持部材35を介してシャフト31に固定される。センサマグネット34は、シャフト31とともに中心軸J周りを回転する。センサマグネット34は、上側ベアリング52の下側に位置する。また、センサマグネット34は、回路基板70の上側に位置する。センサマグネット34は、回路基板70の回転センサ72と軸方向において対向する。なお、センサマグネット34は、上述に限らず、複数であってもよい。この場合、複数のセンサマグネット34が周方向に配置される。また、センサマグネットは、環状に限られず、他の形状であってもよい。
【0030】
本実施形態において、ロータコア32は、軸方向に延びる筒状である。ロータコア32は、軸方向に貫通し、シャフト31が通る貫通孔を有する。ロータコア32は、シャフト31の外周面に固定される。ロータマグネット33は、ロータコア32に保持される。ロータコア32およびロータマグネット33は、シャフト31と一体となって回転する。なお、本実施形態において、ロータコア32は、複数の電磁鋼板が積層された積層鋼板である。ロータコア32は、圧粉磁心であってもよい。また、ロータマグネットは、ロータコア32の外周面に配置されてもよく、ロータコア32に一部が埋め込まれて保持されてもよい。ロータコア32は、シャフト31に、圧入や接着などにより直接固定されてもよく、樹脂部材や金属部材等を介して間接的に固定されてもよい。
【0031】
<ステータ>
ステータ40は、ハウジング10に収容される。ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置しロータ30と径方向に対向する。ステータ40は、ロータ30を径方向外側から囲む。ステータ40は、ステータコア41と、複数のコイル43と、インシュレータ44と、中継バスバー93と、を有する。
【0032】
本実施形態において、ステータコアは、軸方向に延びる筒状である。ステータコア41の外周面は、ハウジング10の内周面12に嵌合する。より具体的には、ステータコア41の外周面は、内周面12の第3内周領域12Cに嵌合する。より好ましくは、ステータコア41は、ハウジング10に、圧入や接着などにより固定される。これにより、ステータ40は、ハウジング10に対し、位置決めされ、かつ、固定される。
【0033】
ステータコア41は、コアバック部41aと複数のティース部41bとを有する。コアバック部41aは、中心軸Jを中心とする略環状である。ティース部41bは、コアバック部41aの内側面から径方向内側に延びる。複数のティース部41bは、周方向に沿って等間隔に並ぶ。
【0034】
本実施形態において、コイル43は、コイル線43aが巻き回されて構成される。コイル43は、インシュレータ44を介してティース部41bに装着される。複数のコイル43は、モータ1の駆動時に互いに位相がずれた交流電流が流れるU相のコイル、V相のコイルおよびW相のコイルに分類される。U相、V相およびW相のコイル43は、後述する中継バスバー93および相用バスバー91によって、デルタ結線で互いに接続される。本実施形態では、各相において、直列に接続される2つのコイルを1組とするコイル群が構成される。各相において、2つのコイル群が、後述する中継バスバー93を介して、直列に接続される。なお、コイルの数および中継バスバー93の数、接続箇所については、適宜変更されてもよい。また、ステータにおける結線方式は、デルタ結線に代えて、スター結線であってもよい。この場合、バスバーアセンブリは、中継バスバーに代えて、中性点バスバーを有する。また、この場合、中性点バスバーには、U相、V相、W相のコイル43からそれぞれ延び出る3本のコイル線43aが接続される。これにより、中性点バスバーは、U相、V相、W相のコイルを繋ぐ中性点として機能する。
【0035】
インシュレータ44は、ティース部41bに取り付けられる。インシュレータ44は、コイル43とティース部41bとの間に配置される。インシュレータ44の材料は、絶縁性を有する。本実施形態では、インシュレータ44は、絶縁性を有する樹脂である。インシュレータ44は、コイル43とティース部41bとの絶縁を確保する。
【0036】
中継バスバー93は、導電性の部材である。本実施形態では、中継バスバー93は、導電性の金属からなる。中継バスバー93は、ステータコア41の上側でインシュレータ44に支持される。中継バスバー93は、周方向に沿って延びる。上述のように、中継バスバー93は、直列に接続される2つのコイル群同士を接続する。
【0037】
<回路基板>
回路基板70は、ステータ40へ流れる電流を制御する制御部を有する。回路基板70は、好ましくは、軸方向と略直交する平面に沿って配置される。回路基板70は、後述するバスバーアセンブリ60のブラケット61に保持される。回路基板70は、基板本体71と、基板本体71に実装される複数の回転センサ72と、を有する。
【0038】
本実施形態において、基板本体71は、軸方向と直交する平面に沿って延びるリジッド基板である。基板本体71は、中心軸J周りにアーチ状に延びる。基板本体71の径方向内側にはシャフト31が通る。基板本体71は、軸方向において、ステータ40とカバー部材20との間に位置する。基板本体71には、プリント配線(図示略)が設けられる。
【0039】
図3は、バスバーアセンブリ60および回路基板70の斜視図である。
図4は、バスバーアセンブリ60および回路基板70の平面図である。
【0040】
図3に示すように、基板本体71には複数(本実施形態では5つ)の端子接続孔71cおよび複数(本実施形態では3つ)の位置決め孔71d、71eが設けられる。すなわち、回路基板70には、端子接続孔71cおよび位置決め孔71d、71eが設けられる。端子接続孔71cおよび位置決め孔71d、71eは、基板本体71を軸方向に貫通する。端子接続孔71cには、後述するシグナルバスバー92の接続端子92aが挿入される。また、位置決め孔71d、71eには、後述するブラケット61の位置決めピン63A、63Bが挿入される。
【0041】
3つの位置決め孔71d、71eは、2つの第1の位置決め孔71dと1つの第2の位置決め孔71eとに分類される。第1の位置決め孔71dの外形は、平面視で略円形である。また、第2の位置決め孔71eは、回路基板70の外縁に開口する切り欠きである。したがって、第2の位置決め孔71eは、上方向および下方向のみならず径方向外側にも開口する。
【0042】
回転センサ72は、基板本体71の上面71aに取り付けられる。本実施形態において、回転センサ72は、ホール素子である。本実施形態において、回路基板70には、3つの回転センサ72が設けられる。3つの回転センサ72は、周方向に沿って並ぶ。回転センサ72は、センサマグネット34と軸方向に対向する。回転センサ72は、センサマグネット34の中心軸J周りの回転に伴う磁束の変化を検出する。なお、回転センサ72は、磁気抵抗素子などの他の種類のセンサであってもよい。回転センサ72が磁気抵抗素子の場合、回転センサ72の数は1つのみであってもよく、2以上であってもよい。
【0043】
<バスバーアセンブリ>
バスバーアセンブリ60は、ステータ40の上側に位置する。バスバーアセンブリ60は、平面視で略環状である。バスバーアセンブリ60の径方向内側の貫通孔にはシャフト31が通る。
【0044】
バスバーアセンブリ60は、ブラケット61と、複数のバスバーと、を有する。本実施形態において、複数のバスバーは、複数(本実施形態では3つ)の相用バスバー(バスバー)91と、複数(本実施形態では5つ)のシグナルバスバー(バスバー)92と、に分類される。すなわち、モータ1は、ブラケット61と、相用バスバー91と、シグナルバスバー92と、を有する。バスバー、すなわち、複数の相用バスバー91および複数のシグナルバスバー92は、導電性の部材である。本実施形態では、相用バスバー91およびシグナルバスバー92は、導電性の金属からなる。相用バスバー91およびシグナルバスバー92は、例えば、インサート成型によってブラケット61に埋め込まれる。すなわち、相用バスバー91およびシグナルバスバー92は、ブラケット61に保持される。
【0045】
相用バスバー91は、外部装置(図示略)とステータ40とを電気的に接続し、外部装置から供給された駆動電流をステータ40に供給する。本実施形態の3つの相用バスバー91は、U相、V相およびW相を構成するコイル43から延び出るコイル線43aにそれぞれ接続される。相用バスバー91を介しコイル43に供給される駆動電流は、例えば、回転センサ72が検出した値に基づいて算出されるロータ30の回転角に応じて制御される。コイル43に駆動電流が供給されると、ステータ40に磁場が発生し、ステータ40とロータ30との間の磁気的相互作用によって、シャフト31を有するロータ30が回転する。
【0046】
本実施形態において、相用バスバー91は、ブラケット61に、部分的に埋め込まれて保持される。相用バスバー91の第1の端部は、ブラケット61から露出しコイル線43aに接続される。相用バスバー91の第2の端部は、ブラケット61のコネクタ部69に設けられた下向きの開口(図示略)の内側で露出する。コネクタ部69の内側で露出する相用バスバー91の第2の端部には、外部装置(図示略)が接続される。
【0047】
シグナルバスバー92は、外部装置(図示略)と回路基板70とを電気的に接続する。本実施形態において、シグナルバスバー92は、ブラケット61に、部分的に埋め込まれて保持される。シグナルバスバー92の第1の端部には、ブラケット61から露出する接続端子92aが設けられる。接続端子92aは、回路基板70に接続される。これにより、シグナルバスバー92は、回路基板70のプリント配線を介して回路基板70の回転センサ72と電気的に接続される。シグナルバスバー92の第2の端部は、ブラケット61のコネクタ部69に設けられた下向きの開口(図示略)の内側で露出する。コネクタ部69の内側で露出するシグナルバスバー92の第2の端部には、外部装置(図示略)が接続される。
【0048】
図5は、シグナルバスバー92の接続端子92aと回路基板70との接続構造を示す断面図である。
図5に示すように、接続端子92aと回路基板70とは、端子接続部99において互いに接続される。すなわち、シグナルバスバー92は、端子接続部99において回路基板70に接続される。なお、
図3において端子接続部99の図示は省略されている。
【0049】
接続端子92aは、基板本体71の下側から上側に向かって延びて端子接続孔71cに挿入される。接続端子92aの先端は、基板本体71の上側に突出する。端子接続部99は、回路基板70の上面71aに位置する。端子接続部99は、接続端子92aと回路基板70のプリント配線(図示略)とを電気的に接続する。本実施形態において、端子接続部99は、半田部であり、端子接続孔71cに接続端子92aを挿入した状態で、半田ごて等の半田設備を用いて上側から溶融した半田を供給することで設けられる。本実施形態において、端子接続部99は、回路基板70の上面71aに対して上側に盛り上がった形状である。
【0050】
図1に示すように、ブラケット61は、ステータ40の上側に位置する。また、ブラケット61は、カバー部材20の下側に位置する。ブラケット61は、例えば、樹脂製である。ブラケット61は、相用バスバー91、シグナルバスバー92および回路基板70を保持する。
【0051】
図3に示すように、ブラケット61は、本体部64と、基板支持部68と、壁部62と、挿入筒部65と、コネクタ部69と、を有する。本体部64は、中心軸Jを中心とする略環状である。壁部62は、本体部64の上側に位置する。壁部62は、中心軸を囲む。挿入筒部65は、本体部64の下側に位置する。基板支持部68は、本体部64の内周面から径方向内側に突出する。コネクタ部69は、本体部64から径方向外側に延び出る。コネクタ部69には、例えば、外部装置(図示略)のソケット(図示略)が接続される。
【0052】
図2に示すように、本体部64は、ハウジング10の収容筒部11の径方向内側に配置される。本体部64の径方向外側を向く外周面は、収容筒部11の内周面12の上端内周領域12Dと径方向に対向する。本体部64の内部には、相用バスバー91の一部およびシグナルバスバー92の一部が埋め込まれる。本体部64の径方向外側を向く外周面は、収容筒部11の内周面12の上端内周領域12Dと、径方向に接触してもよい。
【0053】
本体部64の上面64aは、カバー部材20のカバーフランジ部24の下面24bと、軸方向に接触する。本体部64の上面64aには、周方向に沿って延びる凹溝64gが設けられる。すなわち、ブラケット61の上面64aには、凹溝64gが設けられる。凹溝64gは、平面視において中心軸Jを中心とする略環状である。凹溝64gの内部には、上側Oリング82が収容される。上側Oリング82は、略環状である。上側Oリング82は、周方向に沿って延びる。上側Oリング82の断面形状は、例えば、略円形である。上側Oリング82は、カバーフランジ部24の下面と接触する。また、上側Oリング82は、凹溝64gの内部において、凹溝64gの底面と凹溝64gの径方向内側を向く面とに接触する。上側Oリング82は、ブラケット61の上面64aとカバーフランジ部24の下面24bとの間に配置される。上側Oリング82は、ブラケット61およびカバーフランジ部24に軸方向両側から挟み込まれて圧縮される。これにより、上側Oリング82は、ブラケット61とカバー部材20との間からモータ1の内部に水分等が浸入することを抑制する。なお、上側Oリング82の断面形状は、円形に限られず、多角形や楕円形状などでもよく、特に限定されるものではない。また、上側Oリング82は、凹溝64gの内部において、凹溝64gの底面と、凹溝64gの径方向内側を向く面および径方向外側を向く面の少なくともいずれか一方と、に接触してもよい。
【0054】
図3に示すように、基板支持部68は、軸方向と略直交する平面に沿って延びる板状である。基板支持部68は、本体部64の径方向内側に配置される。基板支持部68は、回路基板70を下側から支持する。
【0055】
基板支持部68は、複数(本実施形態では3つ)の台座部63C、63Dと、複数(本実施形態では3つ)の位置決めピン63A、63Bと、を有する。3つの台座部63C、63Dは、2つの第1の台座部63Cと1つの第2の台座部63Dとに分類される。同様に、3つの位置決めピン63A、63Bは、2つの第1の位置決めピン63Aと1つの第2の位置決めピン63Bとに分類される。第1の位置決めピン63Aは、第1の台座部63Cの上面から突出する。一方で、第2の位置決めピン63Bは、第2の台座部63Dの上面から突出する。第1の台座部63Cおよび第1の位置決めピン63Aは、壁部62の内周面に対して径方向内側に離間する。一方で、第2の台座部63Dおよび第2の位置決めピン63Bは、壁部62の内周面に連なる。
【0056】
台座部63C、63Dは、基板支持部68の上面に位置し、上面に対して上側に突出する。本実施形態では、台座部63C、63Dは、円柱状の凸部である。複数の台座部63C、63Dは、壁部62の内周面に沿って並ぶ。台座部63C、63Dの上面は、軸方向と略直交する平坦面である。台座部63C、63Dの上面は、回路基板70の下面と接触する。基板支持部68は、台座部63C、63Dの上面において、回路基板70を支持する。なお、台座部63C、63Dは、必ずしも円柱状に限られず、多角柱など他の形状の凸部であってもよい。また、台座部63C、63Dは、中空であってもよい。
【0057】
本実施形態によれば、回路基板70が、軸方向と略直交する平坦面である台座部63C、63Dの上面で支持される。このため、回路基板70を中心軸Jと略直交する平面に沿って、高精度に配置することができる。
【0058】
本実施形態の基板支持部68は、離散的に配置された複数の台座部63C、63Dによって回路基板70を支持する。このため、基板支持部68は、面積の広い1つの面で回路基板70を支持する場合と比較して、回路基板70に反りが生じている場合であっても、回路基板70のがたつきを抑制できる。加えて、基板本体71の下面のうち、台座部63C、63Dと接触しない領域に実装部品(電子部品など)を配置することができる。
【0059】
複数の位置決めピン63A、63Bは、壁部62の内周面に沿って並ぶ。位置決めピン63A、63Bは、回路基板70に設けられた位置決め孔71d、71eに挿入される。より具体的には、第1の位置決めピン63Aは、第1の位置決め孔71dに挿入され、第2の位置決めピン63Bは、第2の位置決め孔71eに挿入される。位置決めピン63A、63Bの上端は、基板本体71の上面71aより上側に突出する。
【0060】
本実施形態によれば、複数の位置決めピン63A、63Bを位置決め孔71d、71eに挿入することで、ブラケット61に対し回路基板70を略水平方向に容易に位置決めすることができる。また、本実施形態によれば、複数の位置決めピン63A、63Bが壁部62の内周面に沿って並ぶため、ブラケット61に対する回路基板70の周方向に沿う位置決め精度を高めることができる。
【0061】
本実施形態において、第1の位置決めピン63Aは、略円柱状である。第1の位置決めピン63Aの外径は、第1の位置決め孔71dの内径より小さい。なお、第1の位置決めピン63Aの形状は、円柱状に限られず、多角柱など他の形状であってもよい。
【0062】
図6は、第1の位置決めピン63Aの断面模式図である。
図6に示すように、第1の位置決めピン63Aの先端には、溶着部63Aaが設けられる。なお、溶着部63Aaは、第2の位置決めピン63Bの先端には設けられない。溶着部63Aaは、熱かしめ工程で成形される。すなわち、溶着部63Aaは、第1の位置決めピン63Aの先端を溶融させ再度固化させる際に成形される。
なお、
図3および
図4において溶着部63Aaの図示は省略されている。
【0063】
本実施形態において、溶着部63Aaは、上側に凸となる略半球状である。平面視において溶着部63Aaは、第1の位置決め孔71dを覆う。溶着部63Aaは、基板本体71の上面71aに接触する。溶着部63Aaは、回路基板70がブラケット61から離脱することを抑制する。
【0064】
図4に示すように、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dは、壁部62の内周面に連なった形状を有する。すなわち、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dは、軸方向と直交する方向を向く外側面が、壁部62の内周面に繋がる。
【0065】
本実施形態によれば、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dは、壁部62を補強するリブとして機能する。このため、ブラケット61の成型時のヒケに伴う、壁
部62の変形を抑制できる。
【0066】
図3に示すように、壁部62は、中心軸Jを中心とする略円筒状である。すなわち、壁部62は、中心軸Jを囲む。壁部62は、本体部64から上側に突出する。すなわち、壁部62は、基板支持部68に対して上側に突出する。壁部62の内周面は、本体部64の内周面と軸方向に沿って連なる。壁部62は、回路基板70を囲む。すなわち、壁部62の径方向内側には、回路基板70が配置される。
【0067】
図2に示すように、壁部62は、カバー部材20のカバー筒部21の内部に挿入される。壁部62の外周面の外径は、カバー筒部21の内周面の内径より小さい。壁部62の外周面は、カバー筒部21の内周面と径方向に対向する。壁部62の外周面は、壁部62をカバー筒部21に挿入する際のガイドとして機能する。本実施形態によれば、壁部62が設けられることで、ブラケット61に対するカバー部材20の位置合わせを容易とすることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、壁部62の外周面およびカバー筒部21の内周面がそれぞれ平面視で略円形である場合について説明した。しかしながら、壁部62がカバー筒部21に挿入可能であれば、壁部62の外周面およびカバー筒部21の内周面の形状は限定されない。
また、本明細書において、「筒部」とは、平面視円形の円筒形状に限定される概念ではなく、例えば角筒形状などを含む概念である。
【0069】
図3に示すように、壁部62には、上端から下側に延びる切欠部62aが設けられる。切欠部62aは、上側を向く底面62aaを有する。底面62aaは、周方向に沿ってアーチ状に延びる。
【0070】
図5に示すように、回路基板70の上面には、シグナルバスバー92と基板本体71とを繋ぐ端子接続部99が設けられる。本実施形態では、端子接続部99は、半田部である。作業者は、シグナルバスバー92と基板本体71とを半田付けする際に、半田ごてを切欠部62aから挿入する。本実施形態によれば、壁部62に切欠部62aが設けられることで、半田ごての回路基板70の上面71aに対するアクセスが容易となる。これにより、シグナルバスバー92と回路基板70との接続工程が容易となり、接続工程の作業性を高めることができる。
【0071】
切欠部62aの底面62aaは、端子接続部99の上端より下側に位置する。このため、接続工程において、半田ごてを切欠部62aに挿入することで端子接続部99へのアクセスがより一層容易となる。これにより、シグナルバスバー92と回路基板70との接続工程の作業性をさらに高めることができる。
【0072】
図4に示すように、端子接続部99の周方向位置と切欠部62aの周方向位置とは、互いに重なる。このため、作業者は、略円筒状の壁部62の径方向外側から、切欠部62aを介し端子接続部99に半田ごてをアクセスさせることができる。したがって、本実施形態によれば、シグナルバスバー92と回路基板70との接続工程の作業性をさらに高めることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、シグナルバスバー92と回路基板70とを接続する端子接続部が半田部である場合について説明した。しかしながら、端子接続部は、他の構造であってもよい。一例として、端子接続部は、プレスフィット構造であってもよい。この場合、シグナルバスバーの接続端子がプレスフィットピンであり、基板本体に設けられた端子接続孔にプレフィットピンを圧入することで、シグナルバスバーと回路基板とを接続する。端子接続部としてプレスフィット構造を採用する場合、接続工程では、冶具を用いて端子接続孔の周囲で回路基板を下側に押し付けて端子接続孔にプレスフィットピンである接続端子を圧入する。したがって、壁部に切欠部をもうけることで、壁部と冶具との干渉を抑制することができる。
このように、ブラケット61に回路基板70を囲む壁部62が設けられる場合、シグナルバスバー92と回路基板70との接続工程において、壁部62が接続工程の作業性を悪化させる虞がある。壁部62に切欠部62aが設けられることで、端子接続部の構成によらず、端子接続部におけるシグナルバスバー92と回路基板70との接続工程を容易とすることができる。
【0074】
図3に示すように、壁部62の外側面には、複数の第1リブ62cが設けられる。第1リブ62cは、本体部64の上面64aから軸方向に沿って上側に延びる。第1リブ62cは、周方向に沿って等間隔で並ぶ。本実施形態において、壁部62には、6つの第1リブ62cが設けられる。第1リブ62cは、壁部62に3つ以上設けられることが好ましい。
【0075】
図2に示すように、第1リブ62cは、カバー筒部21の内側面に接触する。このため、複数の第1リブ62cは、ブラケット61に対するカバー筒部21の径方向の位置合わせを行う。すなわち、本実施形態によれば、壁部62をカバー筒部21に挿入することで、壁部62の中心軸とカバー筒部21の中心軸とを略一致させることが可能となる。
【0076】
壁部62をカバー筒部21に挿入する前の状態で、複数の第1リブ62cの径方向外端を繋ぐ仮想円の直径は、カバー筒部21の内周面の内径より大きい。壁部62をカバー筒部21に挿入することで、第1リブ62cが弾性変形する。したがって、壁部62をカバー筒部21に挿入する工程は、圧入工程となる。本実施形態によれば、ブラケット61に対するカバー部材20の位置ずれを抑制することが可能となり、ブラケット61に対するカバー部材20の位置決め精度を高めることができる。なお、第1リブ62cは、弾性変形するとともに塑性変形していてもよい。
【0077】
本実施形態では、カバー部材20は、上側ベアリング52を支持する。このため、カバー部材20の位置決め精度を高めることで、上側ベアリング52の位置精度を高め、上側ベアリング52に支持されるシャフト31の回転の効率を高めることができる。
【0078】
図5に示すように、第1リブ62cの上端部には、上側に向かうに従い中心軸Jに近づくテーパ面62caが設けられることが好ましい。第1リブ62cの上端部にテーパ面62caが設けられることで、第1リブ62cの上端部がカバー筒部21に引っかかることなく、壁部62をカバー筒部21に挿入することができ、組み立て工程が容易となる。
【0079】
第1リブ62cの上端は、壁部62の上端より下側に位置する。上述したように、壁部62には、上端から下側に延びる切欠部62aが設けられる。このため、壁部62の上端近傍の強度は、下端近傍と比較して低い。第1リブ62cは、カバー筒部21(
図2参照)から径方向内側方向の応力を受けるため、第1リブ62cが壁部62の上端まで延びると、壁部62の上端近傍に損傷が生じる虞がある。本実施形態によれば、第1リブ62cの上端が、壁部62の上端より下側に位置することで、第1リブ62cに径方向内方向の応力が作用した際の壁部62の損傷を抑制できる。
【0080】
本実施形態において、第1リブ62cの上端は、切欠部62aの底面62aaより下側に位置する。壁部62は、軸方向において切欠部62aが設けられる領域の強度が、切欠部62aより下側の強度と比較して低い。本実施形態によれば、第1リブ62cに径方向内方向の応力が作用した際の壁部62の損傷をより一層抑制できる。
なお、第1リブ62cの上端は、軸方向位置が切欠部62aの底面62aaと一致していてもよい。この場合であっても、上述の効果を得ることができる。すなわち、第1リブ62cの上端は、切欠部62aの底面62aaより下側に位置する、又は軸方向位置が切欠部62aの底面62aaと一致する。
【0081】
ここで、
図4を基に、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dと第1リブ62cとの関係について説明する。上述したように、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dの外側面は、壁部62の内周面に繋がる。すなわち、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dは、壁部62を補強する。このため、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dは、第1リブ62cに径方向内方向の応力が作用した際の壁部62の損傷を抑制する。
なお、壁部62の内周面には、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dに加えて、周方向に沿って並ぶ複数の第2リブ62dが設けられる。第2リブ62dは、第2の位置決めピン63Bおよび第2の台座部63Dとともに、壁部62を補強する。
【0082】
本実施形態において、第2の位置決めピン63Bは、第1リブ62cの近傍に位置する。より具体的には、第2の位置決めピン63Bと中心軸Jとを結ぶ直線と、第1リブ62cと第1リブ62cとを結ぶ直線との角度αを約10°以下とすることが好ましい。すなわち、第2の位置決めピン63Bと第1リブ62cとは、中心軸Jを中心とする約10°以内に配置されることが好ましい。第2の位置決めピン63Bと第1リブ62cとをこのように配置することで、第1リブ62cに径方向内側の応力が作用した際の壁部62の損傷を効果的に抑制できる。
【0083】
本実施形態において、第2の位置決めピン63Bの上端は、第1リブ62cの上端より上側に位置する。このため、第1リブ62cに径方向内側の応力が作用した際の壁部62の損傷を効果的に抑制できる。
なお、第2の位置決めピン63Bの上端は、軸方向位置が第1リブ62cの上端と一致していてもよい。この場合であっても、上述の効果を得ることができる。すなわち、第2の位置決めピン63Bの上端は、第1リブ62cの上端より上側に位置する、又は軸方向位置が第1リブ62cの上端と一致していればよい。
【0084】
図2に示すように、挿入筒部65は、本体部64から下側に延びる。挿入筒部65は、中心軸Jを中心として軸方向に沿って延びる略円筒状である。挿入筒部65は、径方向においてステータ40と収容筒部11の内周面12との間に挿入される。
【0085】
挿入筒部65は、径方向外側を向く外周面66を有する。外周面66は、軸方向に並び互いに外径の異なる複数の領域に区画される。外周面66は、上端外周領域66C、中間外周領域66Dおよび下端外周領域66Eを有する。上端外周領域66C、中間外周領域66Dおよび下端外周領域66Eは、上側から下側に向かってこの順で並ぶ。上端外周領域66C、中間外周領域66Dおよび下端外周領域66Eは、この順で外径が小さくなる。
【0086】
本実施形態では、上端外周領域66Cは、軸方向から見て略円形である。上端外周領域66Cは、本体部64の外周面と軸方向に連続する。上端外周領域66Cは、収容筒部11の上端内周領域12Dと径方向に対向する。上端外周領域66Cの外径は、上端内周領域12Dの内径(第4内径D4)より小さい。このため、上端外周領域66Cと上端内周領域12Dとの径方向の間には、微小な隙間が設けられる。
【0087】
本実施形態では、中間外周領域66Dは、軸方向から見て略円形である。中間外周領域66Dは、収容筒部11の第1内周領域12Aと径方向に対向する。中間外周領域66Dの外径は、第1内周領域12Aの内径(第1内径D1)より小さい。このため、中間外周領域66Dと第1内周領域12Aとの間には、隙間が設けられる。
【0088】
中間外周領域66Dと上端外周領域66Cとの間には、第2の段差面66bが設けられる。すなわち、挿入筒部65の外周面66は、第2の段差面66bを有する。第2の段差面66bは、下側を向く。第2の段差面66bは、中間外周領域66Dの上端から径方向外側に延びる。また、第2の段差面66bは、周方向に沿って延びる。
【0089】
第2の段差面66bは、収容筒部11の内周面12に設けられた第3の段差面12aと軸方向に接触する。第3の段差面12aは、内周面12の第1内周領域12Aと上端内周領域12Dとの間に設けられる。すなわち、収容筒部11の内周面12は、第3の段差面12aを有する。第3の段差面12aは、上側を向く。第3の段差面12aは、第1内周領域12Aの上端から径方向外側に延びる。
【0090】
本実施形態によれば、挿入筒部65の第2の段差面66bが収容筒部11の第3の段差面12aと接触することで、ハウジング10に対するブラケット61の軸方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0091】
下端外周領域66Eは、第1外周領域66Aと第2外周領域66Bとを有する。すなわち、挿入筒部65の外周面66は、第1外周領域66Aと第2外周領域66Bとを有する。第1外周領域66Aと第2外周領域66Bとは、軸方向に並ぶ。第2外周領域66Bは、第1外周領域66Aより下側に位置する。
【0092】
第1外周領域66Aは、軸方向から見て略円形である。第1外周領域66Aは、収容筒部11の第1内周領域12Aと径方向に対向する。第1外周領域66Aの外径は、第1内周領域12Aの内径(第1内径D1)より十分に小さい。このため、第1外周領域66Aと第1内周領域12Aとの間には、隙間が設けられる。
【0093】
第1外周領域66Aと第1内周領域12Aとの間には、下側Oリング81が配置される。下側Oリング81は、略環状である。下側Oリング81は、周方向に沿って延びる。下側Oリング81の断面形状は、略円形である。下側Oリング81は、第1外周領域66Aと第1内周領域12Aとの間に挟み込まれて圧縮される。これにより、下側Oリング81は、ブラケット61とハウジング10との間からモータ1の内部に水分等が浸入することを抑制する。なお、下側Oリング81の断面形状は、円形に限られず、矩形を含む多角形や楕円形状などでもよく、特に限定されるものではない。
【0094】
本実施形態の下側Oリング81と上側Oリング82とは、互いに同形状である。下側Oリング81は、第1内周領域12Aに径方向内側から接触する。一方で、上側Oリング82は、凹溝64gの径方向内側を向く面に径方向内側から接触する。第1内周領域12Aの内径と、凹溝64gの径方向内側を向く面の内径とは、略等しい。このため、径方向において、中心軸Jから下側Oリング81までの距離は、中心軸Jから上側Oリング82までの距離と、略同一とすることがことできる。また、本実施形態において、変形前において、下側Oリング81の直径と上側Oリング82の直径は、互いに等しい。
【0095】
本実施形態によれば、下側Oリング81と上側Oリング82とを同形状とすることで、2種類のOリングを用いる必要がなくOリングが1種類となることから、モータ1の部品の種類を削減することができる。また、下側Oリング81と上側Oリング82とを同形状とすることで、組み立て工程において、上側Oリング82と下側Oリング81を作業者等が識別して、それぞれの位置に配置する必要がない。そのため、組立工程を簡易化することができる。
【0096】
下端外周領域66Eと中間外周領域66Dとの間には、第1の段差面66aが設けられる。すなわち、挿入筒部65の外周面66は、第1の段差面66aを有する。第1の段差面66aは、下側を向く。第1の段差面66aは、第1外周領域66Aの上端から径方向外側に延びる。また、第1の段差面66aは、周方向に沿って延びる。下側Oリング81は、第1の段差面66aに下側から接触する。
【0097】
本実施形態によれば、収容筒部11に挿入筒部65を挿入する組み立て工程において、下側Oリング81が第1の段差面66aに接触し、下側Oリング81の上側への移動が制限される。すなわち、本実施形態によれば、第1の段差面66aが設けられることで、下側Oリング81を軸方向に容易に位置決めできる。
【0098】
第2外周領域66Bは、収容筒部11の第2内周領域12Bと径方向に対向する。第2外周領域66Bと第2内周領域12Bとは、互いに嵌合する。これにより、ハウジング10に対するブラケット61の径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0099】
挿入筒部65の外周面66は、下側Oリング81を圧縮する第1外周領域66Aの下側の第2外周領域66Bで収容筒部11に嵌合される。モータ1の組み立て工程において、挿入筒部65は、第1外周領域66Aに下側Oリング81を取り付けた状態で、ハウジング10に挿入される。第2外周領域66Bは、下側Oリング81より下側に位置するため、下側Oリング81が収容筒部11に接触する前に、収容筒部11の内周面12に接触する。このため、下側Oリング81の収容筒部11への接触が開始する段階で、ブラケット61が、ハウジング10に対し径方向に位置合わせされている。結果的に組み立て工程において、下側Oリング81の噛みおよび捻じれが生じることを抑制することができる。
【0100】
図2に示すように、第1内周領域12Aの上端から、下側Oリング81と第1内周領域12Aとの接触部の下端までの軸方向の距離を第1の長さh1とする。また、第2内周領域12Bと第2外周領域66Bとの軸方向の嵌合長さを第2の長さh2とする。
【0101】
第1の長さh1は、組み立て工程において、下側Oリング81が収容筒部11の内周面12に接触しながら移動する距離である。また、第2の長さh2は、組み立て工程において、第2外周領域66Bが収容筒部11の内周面12に接触しながら移動する距離である。
【0102】
本実施形態において、第1の長さh1は、第2の長さh2より小さい。このため、組み立て工程において、第2外周領域66Bが下側Oリング81より先に内周面12に接触する。すなわち、組み立て工程において、下側Oリング81と内周面12との接触する段階で、すでに第2外周領域66Bが内周面12に接触しブラケット61がハウジング10に対し径方向に位置合わせされる。本実施形態によれば、下側Oリング81の噛みおよび捻じれが生じることをより確実に抑制することができる。
【0103】
図3に示すように、第2外周領域66Bには、周方向に沿って並ぶ6つの凸部67が設けられる。凸部67は、第2外周領域66Bにおいて径方向外側に突出する。凸部67は、第2外周領域66Bの下端から上端まで軸方向に沿って延びる。本実施形態において、凸部67は、軸方向に沿ってリブ状に延びる。凸部67の凸部67の径方向外端は、第1外周領域66Aに連なる。すなわち、凸部67の径方向外端を繋ぐ仮想円の直径は、第1外周領域66Aの外径と等しい。
【0104】
凸部67の径方向外端を繋ぐ仮想円の直径は、第2内周領域12Bの内径と同じか大きい。第2外周領域66Bは、凸部67において第2内周領域12Bと嵌合する。一般的な樹脂成型等の成型方法において、筒状部分の外周面の外径を、全周にわたって高精度に成型することは困難である。本実施形態によれば、径方向外側に突出する凸部67で収容筒部11の内周面12に嵌合する。凸部67は、周方向に沿って離散的に配置されるため、径方向外端の位置精度を高めやすい。結果的に、ハウジング10に対するブラケット61の径方向の位置決め精度を高めることができる。
【0105】
本実施形態において、第2外周領域66Bは、6つの凸部67を有する。第2外周領域66Bは、3つ以上の凸部67を有することが好ましい。また、3つ以上の凸部67は、周方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。これにより、凸部67と第2内周領域12Bとが嵌合した状態で、ハウジング10に対するブラケット61の径方向の位置決め精度を高めることができる。
【0106】
本開示の実施形態は、電動ブレーキ、電動クラッチ、電動パワーステアリング装置などの各種車載用モータ、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
【0107】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0108】
1…モータ、10…ハウジング、11…収容筒部、12…内周面、12a…第3の段差面、12A…第1内周領域、12B…第2内周領域、12C…第3内周領域、16…フランジ部、20…カバー部材、21…カバー筒部(筒部)、24…カバーフランジ部、24b…下面、30…ロータ、31…シャフト、40…ステータ、51…下側ベアリング(ベアリング)、52…上側ベアリング(ベアリング)、61…ブラケット、62…壁部、62a…切欠部、62aa…底面、62c…第1リブ、62d…第2リブ、63A,63B…位置決めピン、63C…台座部、64a,71a…上面、64g…凹溝、65…挿入筒部、66…外周面、66a…第1の段差面、66b…第2の段差面、66A…第1外周領域、66B…第2外周領域、67…凸部、68…基板支持部、70…回路基板、71d,71e…位置決め孔、81…下側Oリング(第1の封止部材)、82…上側Oリング(第2の封止部材)、91…相用バスバー(バスバー)、92…シグナルバスバー(バスバー)、99…端子接続部、D1…第1内径、D2…第2内径、D3…第3内径、J…中心軸