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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】基材の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230725BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20230725BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20230725BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20230725BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230725BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/66
C11D1/02
C11D3/04
C09J7/38
C09J133/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022118573
(22)【出願日】2022-07-26
【審査請求日】2023-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 辰矢
(72)【発明者】
【氏名】古野 寛之
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201748(JP,A)
【文献】特開2010-012636(JP,A)
【文献】特開2011-072867(JP,A)
【文献】特開昭58-207393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 17/08
C11D 1/66
C11D 1/02
C11D 3/04
C11D 7/00
B29B 17/00
C09J 7/38
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布量10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体から基材を分離回収する方法であって、
前記積層体を脱離液に浸漬して粘着シートを脱離させる工程を含み、
前記脱離液が、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤、及び、消泡剤を含有することを特徴とする、
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した場合のゲル分率が50~100%である粘着剤層を有する前記積層体からの基材の分離回収方法。
【請求項2】
前記消泡剤が、エマルション型シリコーン系化合物、自己乳化型シリコーン系化合物、及び、非シリコーン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の基材の分離回収方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤のうち少なくともいずれか一方を含む、請求項1に記載の基材の分離回収方法。
【請求項4】
前記粘着剤層が、アクリル系共重合体を含む粘着剤層であり、前記アクリル系共重合体はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを含有するモノマー混合物の共重合体であり、前記アクリル系共重合体の酸価が0.1~150mgKOH/gである、請求項1~3のいずれか1項に記載の基材の分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトル、その他プラスチック製品を含む一般廃棄物または産業廃棄物の排出量は増加の一途を辿り、廃棄物の処理は重要な環境問題となっている。
上記プラスチック製品としては、プラスチックフィルムを使用した食品包装パッケージ等が挙げられ、このような食品包装パッケージには、粘着剤層を含むシートが貼付され、積層体となっている場合がある。このような複層構成の食品包装パッケージは、異種の材料が複数混合しているため、このままではマテリアルリサイクルができないという問題がある。
このような複層構成の包装材のマテリアルリサイクルについて、例えば、特許文献1には、所定の酸価を有するポリウレタン樹脂を含む粘着剤層を備える積層体をアルカリ水溶液で処理することで、粘着剤層等を脱離させ、基材を分離回収する技術が開示されている。
また特許文献2には、塩基性pHであり、且つカチオン系又はアニオン系の界面活性剤を含む洗浄溶液を用いて、フィルムからインクを除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-090627号公報
【文献】特表2015-520684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の脱離工程において、生産性を向上させるために、アルカリ水溶液に対する包装材の処理量を増やすと、脱離性が低下し、さらに、脱離した成分が細かく分散されてプラスチック基材に再付着してしまうという課題が発生する。そしてこのような基材をリサイクルして得られる成形用材料は、異物による外観低下や物理性状の低下を引き起こす。
また、脱離液に、特許文献2に記載の界面活性剤を含有させると、脱離工程で泡が生じる。そして発生した泡は、粘着剤層より溶出した成分(特に親油性の高い成分)を抱え込んでミセルを形成し、脱離液の液面に浮上する。一方、比重が小さい基材を用いた場合は同様に脱離液の液面に浮上するため、脱離した成分と基材とが脱離液の液面に密集し、さらに基材への再付着が悪化するという課題がある。
さらに、食品用トレーなどの包装材においては、値札シールなどが人為的に剥がされてしまうことを防ぐため、基材に対する強固な粘着力が必要となる。そのため一般に粘着剤層の塗布量は10~100g/mであるが、このような比較的厚みのある粘着剤層を有する包装材をリサイクルする場合、上記のような課題がさらに顕著になる傾向がある。
したがって本発明の課題は、塗布量が10~100g/mである粘着剤層を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体においても、粘着シートの脱離性に優れ、さらに、脱離した成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した基材の分離回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る基材の分離回収方法は、塗布量10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体を、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤及び消泡剤を含有する脱離液に浸漬し、粘着シートを脱離させる工程を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る基材の分離回収方法は、前記消泡剤が、エマルション型シリコーン系化合物、自己乳化型シリコーン系化合物、及び非シリコーン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る基材の分離回収方法は、前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
本発明の一態様に係る基材の分離回収方法は、前記粘着剤層がアクリル系共重合体を含み、前記アクリル系共重合体はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを含有するモノマー混合物の共重合体であり、前記アクリル系共重合体の酸価が0.1~150mgKOH/gであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、粘着シートの脱離性に優れ、さらに脱離した成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した基材の分離回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを含む。モノマーはエチレン性不飽和二重結合を有する単量体である。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0008】
本発明は、塗布量10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体を脱離液に浸漬し、粘着シートを脱離させる工程を含む、基材の分離回収方法であって、脱離液が、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤及び消泡剤を含有することを特徴とする。
当該脱離液は、塩基性化合物及びHLB値が7以上の界面活性剤を含有することで、粘着シートの脱離を促進し、さらに、脱離成分(例えば、粘着剤層に由来する粘着剤成分)が脱離した基材に再付着することを抑制できるため、汚れのない基材を回収できる。
消泡剤は、脱離工程において界面活性剤により発生する泡を抑制することができるが、消泡剤は一般的に親油性が極めて高くHLB値が1~3程度と小さいため、HLB値が7以上の界面活性剤とは逆に、脱離性を低下させてしまう傾向にある。
しかしながら、本願は、HLB値が7以上の界面活性剤と消泡剤とを組み合わせて用いることで、脱離液に対する積層体の量を増やした場合においても、優れた脱離性と再付着性との両立を達成することができる。これは、泡の発生が抑制され、さらに、脱離液中において消泡剤が粘着剤層より脱離した成分と親和して安定化した状態となっているため、界面活性剤による脱離性向上を損なうこと無く、優れた再付着性を発揮するものと推察される。
【0009】
<分離回収方法>
本発明の基材の分離回収方法は、塗布量10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体を、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤及び消泡剤を含有する脱離液に浸漬し、粘着シートを脱離させる工程を含む。
本発明において「脱離」とは、粘着剤層が脱離液により溶解又は膨潤し剥離することにより、粘着シート基材が積層体から脱離することを指し、粘着剤層が溶解して脱離する場合と、粘着剤層が溶解しなくとも、中和・膨潤等により剥離して脱離する場合、の両方の形態を含む。
【0010】
本発明は、粘着シート脱離後の基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的としているため、基材から、粘着シートをできる限り多く除去した態様が好適である。具体的には、基材の表面における粘着剤層と支持体を有する粘着シートの除去率は、脱離前の粘着シートの面積に対して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
脱離液に浸漬し、粘着シートを脱離させた後の基材回収工程は、比重差分離やサイズ分離など支持材や基材の材質に合わせて自由に選択することができる。
【0011】
<脱離液>
脱離液は、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤、及び、消泡剤を含有し、且つ粘着剤層を膨潤・溶解させるものであればよく、環境面及び回収されたポリオレフィン基材を用いた再生材料の性状維持の観点から、水溶液が好ましい。これらの脱離液は加温されていてもよい。
【0012】
[塩基性化合物]
上述のとおり、本発明に用いる脱離液は、塩基性化合物を含む必要がある。
上記塩基性化合物は特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)が好適に用いられる。より好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうち少なくともいずれか1種である。
【0013】
脱離液中の塩基性化合物の含有量は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは2~15質量%の範囲である。上記範囲内にあると、脱離液は、後述する粘着剤層を溶解又は膨潤により粘着シートを脱離させて基材を回収するのに充分な塩基性を保持することができる。
【0014】
[HLB値が7以上の界面活性剤]
HLB値が7以上の界面活性剤は、主に、粘着シートの脱離性を向上させる役割を担う。これは、HLB値が7以上の界面活性剤の作用により、脱離液の表面張力が下がり、粘着剤層中に浸透しやすくなり、脱離性が促進するためと考えられる。また、脱離した脱離成分や基材の表面にHLB値が7以上の界面活性剤が吸着することで、粘着剤成分の再付着を防止すると考えられる。
【0015】
また、分離回収において脱離液に対する積層体の量を増やしていくと、積層体及び分離した基材は脱離した粘着シートを巻き込んだ状態でカールする傾向にあり、脱離液に浸漬したとしても、粘着剤層等をきれいに除去することは困難である。しかしながら、脱離液がHLB値7以上の界面活性剤を含むことで、積層体及び分離した基材表面に界面活性剤が吸着し、カールが抑制される。その結果、脱離性が向上し再付着を抑えることができる。
【0016】
HLB値とは界面活性剤の水及び油への親和性に関する指標値であり、親水基を持たない物質のHLB値を0、親水基のみを有する物質のHLB値を20として等分したものである。HLBの概念は1949年にAtlas Powder Companyのウィリアム・グリフィンによって提唱され、計算によって決定する方法がいくつか提案されているが、本発明においてHLB値は、グリフィン法により次式から求めることができる。
式) HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の
分子量)]
【0017】
界面活性剤中に含まれる親水基としては、例えば、水酸基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
【0018】
本発明における界面活性剤のHLB値は、7以上であることが重要である。HLBが7以上であることで、上述したように優れた脱離性と再付着性とを発揮する。界面活性剤のHLB値は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。また界面活性剤のHLB値は、好ましくは20以下、より好ましくは19以下、さらに好ましくは17以下である。HLB値が20以下であると、消泡性に優れるため好ましい。
【0019】
HLB値が7以上の界面活性剤の種類としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性が挙げられ、要求特性に応じて適宜好適な種類、配合量を選択して使用することができる。脱離性や発泡性の観点から、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤のうち少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
また、界面活性剤は、アルキレンオキサイド(以下、AOともいう)を付加した構造であることで、脱離性や再付着性が良好となるため好ましい。
【0020】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、HLB値が7以上であれば特に制限されないが、好ましくは、アルキレンオキサイドが付加したアルキレンオキサイド付加物である。より好ましくは、活性水素を有するアルコール類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物(アルコール系ノニオン性界面活性剤)、アミン類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物(アミン系ノニオン性界面活性剤)、若しくは脂肪酸類にアルキレンオキサイドを付加して得られる化合物(脂肪酸系ノニオン性界面活性剤)である。上記付加は、ランダム付加又はブロック付加のいずれであってもよい。また、アルキレンオキサイドの炭素数は、好ましくは炭素数2~4である。
ノニオン性界面活性剤としてより好ましくは、アルコール類に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加したアルコール系ノニオン性界面活性剤である。
【0021】
〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕
アルコール系ノニオン性界面活性剤としては、例えば、総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、又は、総炭素数8~12のアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールは、飽和若しくは不飽和のいずれであってもよい。
上記総炭素数8~24の第1級若しくは第2級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
また、アルコール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドを必須とするのが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~100モル、より好ましくは2~50モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
【0022】
〔アミン系ノニオン性界面活性剤〕
アミン系ノニオン性界面活性剤としては、総炭素数8~36の飽和又は不飽和の第1級又は第2級アミンのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。アミンとしては、2-エチルヘキシルアミン、ジ2-エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、テトラデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、オレイルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。また、アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数は上述する〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕の項の記載と同様である。
【0023】
〔脂肪酸系ノニオン性界面活性剤〕
脂肪酸系ノニオン性界面活性剤としては、構造は特に制限されないが、例えば、総炭素数10~24の高級脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物や、前記した総炭素数が10~24の飽和若しくは不飽和の高級脂肪酸とグリセリンとのエステルからなる油脂、さらには、前記した油脂と2~10の多価アルコールとの混合物のアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。上記総炭素数10~24の高級脂肪酸は、飽和若しくは不飽和のいずれであってもよい。
上記総炭素数10~24の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の飽和高級脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和高級脂肪酸、が挙げられる。2~10価の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖等が挙げられる。アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数は、上述する〔アルコール系ノニオン性界面活性剤〕の項の記載と同様である。
【0024】
(アニオン性界面活性剤)
HLB値が7以上のアニオン性界面活性剤として好ましくは非石鹸系であり、例えば、スルホン酸系アニオン性界面活性剤、硫酸エステル系アニオン性界面活性剤、カルボン酸系アニオン性界面活性剤、リン酸エステル系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
〔スルホン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記スルホン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルメチルタウリン、スルホコハク酸ジエステル、スルホン酸のアルキレンオキサイド付加物、およびこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、およびラウリルドデシルフェニルエーテルジスルホン酸等を用いることができる。
【0025】
〔硫酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記硫酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(アルキルエーテル硫酸エステル)、硫酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸等を用いることができる。
【0026】
〔カルボン酸系アニオン性界面活性剤〕
上記カルボン酸系アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、カルボン酸のアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、およびポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸等を用いることができる。
【0027】
〔リン酸エステル系アニオン性界面活性剤〕
上記リン酸エステル系アニオン性界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル(アルキルエーテルリン酸エステル)、リン酸エステルのアルキレンオキサイド付加物、及びこれらの塩が挙げられる。具体例としては、オクチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、トリデシルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル等を用いることができる。
【0028】
HLB値が7以上のアニオン性界面活性剤は、炭素数2~24のアルキル基又は炭素数2~24のアルケニル基を有することが好ましく、より好ましくは、炭素数8~18のアルキル基を有するものである。当該アルキル基又は当該アルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0029】
また、HLB値が7以上のアニオン性界面活性剤がアルキレンオキサイド付加物である場合、該アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、アルコール類又はアルキルフェノール1モルに対し、好ましくは1~12モル、より好ましくは1~8モルである。上記範囲であると、特に脱離性に優れるため好ましい。
【0030】
上述するアニオン性界面活性剤を構成する塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でもアニオン性界面活性剤として好ましくは、脱離性及び再付着性の観点から、スルホン酸塩タイプ、リン酸塩タイプであり、より好ましくは、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等である。
【0031】
(カチオン性界面活性剤)
HLB値が7以上のカチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等を用いることができる。
【0032】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体が挙げられる。
【0033】
これらのHLB値が7以上の界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。脱離液中のHLB値が7以上の界面活性剤の含有量は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%の範囲であり、より好ましくは0.3~5質量%の範囲である。0.1質量%以上であると脱離性や再付着性に優れるため好ましく、10質量%以下であると消泡性の観点で好ましい。
【0034】
[消泡剤]
消泡剤は、上述のHLB値が7以上の界面活性剤と組み合わせて用いることで、脱離性及び再付着性を低下させることなく良好な消泡性を発現し、界面活性剤による発泡を抑制することができる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、非シリコーン系化合物が挙げられる。
【0035】
(シリコーン系化合物)
上記シリコーン系化合物としては、例えば、エマルション型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶剤型が挙げられる。
【0036】
エマルション型は、シリコーンオイルコンパウンドを活性剤で乳化させてO/W型のエマルションとしたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製の「FC2913」、「SILFOAM SE47」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-015」、「BYK-1640」、エボニック・ジャパン製の「TEGO Foamex 1488」が挙げられる。
【0037】
自己乳化型は、水で希釈、混合することでエマルション状態となる有効成分100%のシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KS-540」、「X-50-1176」、旭化成ワッカーシリコーン製の「SILFOAM SD670」、「SILFOAM SD850」が挙げられる。
【0038】
オイル型は、溶剤や添加剤を含まない100%シリコーンオイルの消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「AK350」、「AK12500」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-1770」が挙げられる。
【0039】
オイルコンパウンド型とは、シリコーンオイルにシリカ粒子を配合したシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、旭化成ワッカーシリコーン製「SILFOAM SC370」、「PULPSIL22274VP」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-017」、「BYK-018」が挙げられる。
【0040】
溶剤型は、シリコーンオイルを溶剤に溶解させたシリコーン系消泡剤であり、例えば、信越化学工業製の「KM-89」、「KM-98」、ビックケミー・ジャパン製の「BYK-019」、「BYK-025」が挙げられる。
【0041】
(非シリコーン系化合物)
上記非シリコーン系化合物としては、例えば、脂肪酸エステル系化合物、ウレア樹脂系化合物、パラフィン系化合物、ポリオキシアルキレングリコール系化合物、アクリルエステル共重合物、エステル系重合物、エーテル系重合物、アミド系重合物、ミネラルオイルの乳化タイプ、ポリシロキサンアダクト、フッ素系化合物、ビニル系重合物、アセチレンアルコール、アクリル系共重合体、特殊ビニル系ポリマー、エチレングリコール、高級アルコール(オクチルアルコール、シクロヘキサノール等)が挙げられる。
【0042】
消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脱離液中の消泡剤の含有量は、脱離液の質量を基準として、好ましくは0.01~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.03~3質量%の範囲である。0.01質量%以上であると消泡性に優れ、5質量%以下であると脱離性や再付着性に優れる。
【0043】
耐アルカリ性が良好であり、上記HLB7以上の界面活性剤と組み合わせたときに、脱離性や再付着性を低下させにくいという観点から、消泡剤として好ましくは、エマルション型シリコーン系化合物、自己乳化型シリコーン系化合物、及び非シリコーン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0044】
脱離液は、積層体の端部分から浸透して粘着剤層に接触し、溶解又は膨潤することで、基材と粘着剤層を分離する。したがって効率的に脱離工程を進めるために、積層体は、裁断又は粉砕され、脱離液に浸漬する際に、断面に粘着剤層が露出している状態であることが好ましい。このような場合、より短時間で粘着シートを脱離することができる。
【0045】
積層体を浸漬する時の脱離液の温度は、好ましくは25~100℃、より好ましくは30~100℃、特に好ましくは30~90℃の範囲である。脱離液への浸漬時間は、好ましくは1分間~24時間、より好ましくは1分間~12時間、好ましくは1分間~6時間の範囲である。脱離液の使用量は、積層体の質量に対して、好ましくは5~10万倍量、より好ましくは10~1万倍の範囲であり、脱離効率を向上させるために、脱離液の撹拌又は循環等を行うことが好ましい。回転速度は、好ましくは80~5000rpm、より好ましくは80~4000rpmである。
【0046】
積層体から、粘着シートを脱離し回収した後、得られた基材を水洗・乾燥する工程を経て、リサイクル基材を得ることができる。
【0047】
<積層体>
本発明に用いる積層体は、塗布量10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせたものである。
【0048】
(基材)
基材としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セロハン等の樹脂材料からなるプラスチックフィルム、ポリエチレン不織布、ポリエステル不織布、ビニロン不織布等が挙げられる。前記基材は、単独または複数の積層体であっても良い。また、前記基材上には、商品名等の表示や装飾、美観を付与するための印刷層や、当該印刷層を保護したり、光沢などの意匠性を付与したりするためのオーバーコート層を設けてもよい。脱離性や分離回収後のリサイクル性の観点から、印刷層やオーバーコート層は含まないことが好ましい。
【0049】
(粘着シート)
粘着シートは、塗布量が10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する。粘着剤層の塗布量は、好ましくは、10~50g/m、より好ましくは、10~25g/mである。なお、本発明において、粘着シートは積層体から脱離する脱離層である。
【0050】
粘着シートは、後述する粘着剤組成物を支持体上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、後述する粘着剤組成物を剥離ライナー上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、支持体を貼り合わせることで形成できる。
【0051】
[支持体]
支持体は、紙、プラスチック、ゴム、発泡体、繊維、不織布、ガラス、金属、木材等が挙げられる。これらの中でも紙、プラスチックが好ましい。紙の支持材としては、例えば、上質紙、コート紙、感熱紙等が使用できる。また紙にサイズ剤を定着させる方法により酸性紙、中性紙がある。プラスチックの支持材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド等がある。支持体は、単一素材または積層体であっても良い。又、前記支持体は、裏面(粘着剤層を直接貼り合わせた面の反対面)に剥離処理、または帯電防止処理をすることができる。支持体の厚さは、一般的に10μm~200μmであり、20μm~80μmが好ましい。
【0052】
[剥離ライナー]
剥離ライナー(セパレータと称されることもある。) としては、従来公知のものを特に限定なく用いることができる。例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤によって適当な基材(例えば、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等の樹脂フィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル系共重合体等の樹脂をコートした紙) の少なくとも一方の面を処理してなる剥離ライナーを好ましく使用することができる。
【0053】
[塗工方式]
塗工の方式は、公知の手法を用いることができ、コンマコーター、リバースコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアチャンバーコーター、カーテンコーター等の各種公知のコーティング装置により、支持体もしくは剥離性ライナー上に塗布し、乾燥されることによって、本発明の粘着シートを得ることができる。また、その際剥離ライナーなどに粘着剤組成物を塗布した後、80℃~120℃で乾燥することが好ましい。乾燥温度を80℃以上とすることで、適当な時間で粘着シートを得ることができ、120℃以下とすることで、支持体または剥離ライナーの熱劣化を防止することができる。
【0054】
<粘着剤層>
本発明における粘着剤層は、脱離液による溶解・剥離等により基材を分離する役割を担う。粘着剤層に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル系共重合体、ウレタン系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリアミド系共重合体等が挙げられるが、アクリル系共重合体を含むことが好ましい。
【0055】
また、本発明における粘着剤層は、180°ピール試験において、粘着力が3N/25mm以上であることが、再剥離しない食品包装パッケージ用途として好ましい。
180°ピール試験方法は、次の通りである。粘着剤層と支持体を含むシートを幅25mm・縦100mmの大きさに準備し、23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を基材に貼り付け、2kgロールで1往復圧着する。24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす。
【0056】
また、本発明における粘着剤層は、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した場合のゲル分率が50~100%であることが好ましく、70~100%がより好ましい。本発明において「脱離」とは、粘着剤層が溶解して基材が脱離する場合と、粘着剤層が溶解しなくとも、中和・膨潤等により剥離し、基材が脱離する場合、の両方の形態を含むが、後者の膨潤による剥離が大半を占める状態にすることで、脱離した粘着剤層の表面積を小さく抑え、界面活性剤による再付着防止効果を高めることができる。
【0057】
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した際のゲル分率の測定方法は、次の通りである。粘着剤組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに乾燥膜厚が約100μmとなるように塗工後、23℃で7日間乾燥させる。次に、200メッシュ金網の重量を測定する(その重量をMとする)。上記で作製粘着シートを5cm×5cmの大きさに切断し、200メッシュ金網に貼り合わせた試験片の重量を測定する(その重量をAとする)。なお200メッシュはJIS G-3555で規定されたメッシュである。イオン交換水98質量部に対して水酸化ナトリウムを2質量部加えて作成した水酸化ナトリウム水溶液50mlの中に試験片を浸漬させ、60℃で1日放置する。その後取り出し、イオン交換水で洗浄した後、100℃にて20分間乾燥させ、重量を測定する(その重量をTとする)。
続いて試験片からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを取り出し、酢酸エチルを用い、粘着剤層を除去し、PETフィルムの重量を測定する(その重量をKとする)。得られた数値を下記式(1)に代入してゲル分率を求める。
式(1)
(T-M-K)×100/(A-M-K)
【0058】
(アクリル系共重合体)
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートのモノマー混合物を重合した共重合体である。(メタ)アクリレートのモノマーとしては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート、アルキル基を有する(メタ)アクリレート、エチレングリコール鎖またはプロピレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートおよび水酸基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられ、脱離性の観点からカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0059】
また、アクリル系共重合体の酸価は、0.1~150mgKOH/gであることが好ましい。アクリル系共重合体の酸価が0.1~150mgKOH/gであることで、粘着物性と脱離性の両立がより容易になる。
【0060】
[カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート]
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)は、例えば(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。粘着性能とコストの面から(メタ)アクリル酸の使用が好ましい。
【0061】
[アルキル基を有する(メタ)アクリレート]
アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
[エチレングリコール鎖またはプロピレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート]
エチレングリコール鎖またはプロピレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0063】
[水酸基を有する(メタ)アクリレート]
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリルレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0064】
[その他モノマー]
上記以外のモノマーも他(メタ)アクリレートと共重合性のあるものであれば使用できる。その他モノマーとしては、例えば、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の自己架橋性モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、等のエポキシ基含有モノマー、アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N- ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のイミド基含有モノマー、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のその他ビニルモノマー、等が挙げられる。
【0065】
(アクリル系共重合体の製造)
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートのモノマー混合物を重合した共重合体である。重合の方法は、溶液重合や乳化重合等、通常の重合法が挙げられる。
【0066】
[乳化重合での製造]
アクリル系共重合体は、例えば、乳化重合にて得ることができる。
まずモノマーを混合し、均一な混合溶液とする。この混合溶液はそのままで重合に供しても良いし、水および界面活性剤の一部又は全量を加えて攪拌し、乳化液とした後に重合に供しても良い。
【0067】
これらの混合溶液又は乳化液を調製後、重合開始剤の存在下で重合を行うが、その方法としては混合溶液又は乳化液を全量反応容器に仕込んで重合を開始しても良く、一部を反応容器に仕込んで重合を開始した後にさらに数回に分けて分割添加しても良く、一部を反応容器に仕込んで重合を開始した後に残りを連続滴下しても良く、あるいはあらかじめ水および必要に応じて界面活性剤の一部又は全量を反応容器に仕込んでおき、全量を連続滴下しても良い。混合溶液を用いて重合する場合にはあらかじめ反応容器に界面活性剤の全量および水の一部又は全量を仕込んでおくことが好ましい。
【0068】
重合開始剤の添加方法としては、あらかじめ全量を反応容器に仕込んでおいても良く、昇温後に全量を添加しても良く、一部を反応容器に仕込んでおき重合を開始した後にさらに数回に分けて分割添加しても良く、一部を反応容器に仕込んでおき重合を開始した後に残りを連続滴下しても良く、あるいは全量を連続滴下しても良い。重合開始剤を分割添加又は連続滴下する場合には、単独で反応容器内に分割添加又は連続滴下しても良く、混合溶液又は乳化液と混合された状態にて分割添加または連続滴下されても良い。なおこれらの手法により重合開始剤を添加した後、反応率を高める目的で1回又は2回以上重合開始剤を追加添加しても良い。このようにして、本発明の共重合体(A)を得ることができる。
【0069】
乳化重合で使用する界面活性剤は、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から適宜選択することが好ましい。また、界面活性剤はラジカル重合性の官能基を有する反応性界面活性剤であってもよいし、ラジカル重合性の官能基を有さない非反応性界面活性剤であってもよく、両者を併用することもできる。
【0070】
界面活性剤の中で、反応性界面活性剤は、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を1個以上有するアニオン性の界面活性剤である。例えば、スルホコハク酸エステル系界面活性剤、アルキルフェノールエーテル系界面活性剤等が挙げられる。
【0071】
非反応性アニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0072】
非反応性ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類; ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシ多環フェニルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独または2種類以上使用できる。
【0073】
前記界面活性剤のなかでも、良好な重合安定性が得られるため反応性または非反応性のアニオン性界面活性剤を使用するのが好ましい。界面活性剤はモノマー混合物100質量部に対して0.5~3質量部使用することが好ましい。
【0074】
乳化重合には重合開始剤が使用される。重合開始剤は水溶性、油溶性の何れでも良いが、油溶性開始剤を用いる際はあらかじめ水混和性溶剤に溶解させて用いることが必要であり、このような所作が不要な水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。
【0075】
水溶性重合開始剤は、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレ-ト、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕等が挙げられる。これらの中でも、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0076】
水溶性重合開始剤は、モノマー混合物100質量部に対して、0.01~1.0質量部を使用することが好ましく、0.02~0.5質量部がより好ましい。0.01~1.0質量部であることで重合反応性をより向上できる。
【0077】
さらに水溶性重合開始剤は、レドックス系重合開始剤(酸化剤と還元剤を併用する)を使用することができる。酸化剤は、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパ-オキサイド、ベンゾイルパ-オキサイド、キュメンハイドロパ-オキサイド、p-メタンハイドロパ-オキサイド等が挙げられる。また、還元剤は、例えば亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0078】
レドックス系重合開始剤は、酸化剤と還元剤をそれぞれモノマー混合物100質量部に対して、0.01~1.0質量部を使用することが好ましく、0.02~0.5質量部がより好ましい。0.01~1.0質量部であることで重合反応性より向上できる。
【0079】
乳化重合の際、必要に応じてpHを調整するため、緩衝剤を使用できる。緩衝剤としては、乳化重合の反応溶液のpH緩衝作用を有するものであれば特に制限されない。緩衝剤は、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
緩衝剤は、モノマー混合物100質量部に対して、5質量部未満使用することが好ましく、3質量部未満がより好ましい。
【0081】
乳化重合の際、分子量を調整するため、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤は、例えばチオール基や水酸基を有する化合物が一般に知られている。チオール基を有する化合物としては、例えばラウリルメルカプタン、2-メルカプトエチルアルコール、ドデシルメルカプタン、およびメルカプトコハク酸等のメルカプタン、メルカプトプロピオン酸n-ブチル、およびメルカプトプロピオン酸オクチル等のメルカプトプロピオン酸アルキル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のメルカプトプロピオン酸アルコキシアルキル等が挙げられる。また、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、t-ブチルアルコール、およびベンジルアルコール等のアルコールも挙げられる。連鎖移動剤は、単独または2種類以上併用できる。
連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~7.5質量部が好ましく、0.03~3.0質量部がより好ましい。
【0082】
さらに、任意成分として中和剤、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤、および顔料分散体などの公知の添加剤を配合することができる。
【0083】
中和剤の配合量は、アクリル系共重合体のpHを調整するため、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~5質量部配合することが好ましい。0.1~5質量部の配合により、アクリル系共重合体のpHを調整でき、アクリル系共重合体の貯蔵安定性が高まる。
【0084】
レベリング剤の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~1質量部配合することが好ましい。0.1質量部以上配合することにより、塗工時のレベリング性が向上し、ハジキや収縮を抑えることができる。1質量部以下に配合することにより、粘着剤層を形成した際の粘着力と再剥離性の低下を抑えることができる。
【0085】
防腐剤の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~1質量部配合することが好ましい。0.1質量部以上配合することにより、水性粘着剤の腐敗や菌発生を抑えることができる。1質量部以下に配合することにより、粘着剤層を形成した際の粘着力と再剥離性の低下を抑えることができる。
【0086】
消泡剤の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~1質量部配合することが好ましい。0.1質量部以上配合することにより、水性粘着剤の塗工時の泡立ちを抑え、泡立ちによるハジキを抑えることができる。1質量部以下に配合することにより、粘着剤層を形成した際の粘着力と再剥離性の低下を抑えることができる。
【0087】
増粘剤の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~5質量部配合することが好ましい。0.1質量部以上配合することにより、水性粘着剤を増粘させることができ、塗工時の収縮やハジキを抑えることができる。5質量部以下に配合することにより、粘着剤層を形成した際の粘着力と再剥離性の低下を抑えることができる。
【0088】
顔料分散体は、粘着剤層に隠ぺい性や発色性が必要な場合に用いる。顔料分散体の配合量は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~5質量部配合することが好ましい。0.1質量部以上配合することにより、粘着剤層の隠ぺい性や発色性を高めることができる。5質量部以下に配合することにより、粘着剤層を形成した際の粘着力と再剥離性の低下を抑えることができる。
【0089】
[溶液重合での製造]
アクリル系共重合体は、モノマー混合物に重合開始剤を加え、溶液重合することでも得ることができる。前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0090】
溶液重合は、モノマー混合物100質量部に対して重合開始剤を0.001~1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃~90℃程度の温度で6時間~20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用して共重合体の分子量を適宜調整することができる。
【0091】
溶液重合で用いられる連鎖移動剤は、例えばn-ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、グリシジルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、及びハイドロキノン等が挙げられる。連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~1質量部程度を使用できる。
【0092】
溶液重合で用いられる重合開始剤は、アゾ系化合物及び有機過酸化物が一般的である。
アゾ系化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)等が挙げられる。
【0093】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0094】
(硬化剤)
本発明における粘着剤層は、さらに硬化剤を含むことができる。硬化剤は、例えば、チタンキレート化合物、アルミキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、酸化亜鉛、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、ヒドラジド系化合物等が挙げられる。硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
硬化剤は、アクリル系共重合体100質量部に対して0.01~10質量部配合することが好ましく、0.03~8質量部がより好ましい。0.01~10質量部の配合により、基材との密着性および凝集力がより向上する。
【0095】
(粘着付与樹脂)
本発明における粘着剤層は、さらに粘着付与樹脂を含んでもよい。粘着付与樹脂は、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、またはこれらを用いたエマルション型が挙げられる。これらの粘着付与樹脂を含むことで、粘着力をより向上できる。
【0096】
ロジン系粘着付与樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が好ましい。これらの中でも粘着力及び透明性がより向上するためロジンエステル、及び変性ロジンエステルが好ましい。なお、ロジンエステル及び変性ロジンエステルには、エステル化に用いたアルコールなどの水酸基の一部が未反応で残存している場合もある。エステル化に用いるアルコールは、メタノールなどの単官能アルコール、エチレングリコールなどの2官能アルコール、グリセリンなどの3官能アルコール、及びペンタエリスリトールなどの4官能アルコールが挙げられるが、アクリル系共重合体との相溶性を考慮すると3官能以下のアルコールが好ましい。
【0097】
合成炭化水素系粘着剤付与樹脂は、例えば、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0098】
粘着付与樹脂の軟化点は、0~160℃が好ましく、0~120℃がより好ましく、0~100℃がさらに好ましい。粘着付与樹脂の軟化点が0~160℃であることで粘着物性と脱離性の両立が容易となる。なお、軟化点は、JISK5902に規定されている乾球法にしたがって測定した軟化温度である。
【0099】
粘着付与樹脂は共重合体(A)100質量部に対して10~50質量部使用することが好ましく、15~40質量部がより好ましい。粘着付与樹脂を10~50質量部用いることで粘着物性と脱離性の両立が容易となる。
【実施例
【0100】
以下に、実施例をもって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、水、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0101】
なお、アクリル系共重合体の酸価の測定は、次の方法により行なった。
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中にアクリル系共重合体1gを精密に量り採り、水またはトルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した後、0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。酸価(単位:mgKOH/g)は次式により求めた。なお、酸価は乾燥した試料の数値とした。
酸価={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
S:試料の採取量(g)
a:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0102】
<アクリル系共重合体の製造>
[製造例1-1](共重合体(A-1)の製造)
n-ブチルアクリレート88部、メタクリル酸12部に、連鎖移動剤としてtert-ドデシルメルカプタン2.5部を溶解した。さらに、アニオン系界面活性剤としてニューコール707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩の水溶液、有効成分30%、日本乳化剤社製)6.7部、開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液5.6部をイオン交換水35部に溶解してから加えて攪拌し乳化物を得た。これを滴下ロートに入れた。
撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオ
ン水を72.5部仕込み、フラスコ内部の空気を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液2.4部を添加した。5分後、上記滴下ロートから上記乳化物を3時間かけて滴下した。
内温を80℃に保ったまま、さらに撹拌しながら80℃にて4時間熟成した後冷却し、共重合体(A-1)を得た。
【0103】
[製造例1-2~8](共重合体(A-2~8)の製造)
モノマー、界面活性剤、開始剤の種類及び配合量を表1記載に変えた以外は、[製造例1-1]と同様にして、共重合体(A-2~8)を得た。
【0104】
【表1】
【0105】
[製造例1-9](共重合体(A-9)の製造)
撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、窒素雰囲気下、n-ブチルアクリレート94.9部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、アクリル酸5部、酢酸エチル100部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.005部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、共重合体(A-9)溶液を得た。
【0106】
[製造例1-10~17](共重合体(A-10~17)の製造)
モノマー、開始剤の種類及び配合量を表2記載に変えた以外は、[製造例1-9]と同様にして、共重合体(A-10~17)を得た。
【0107】
【表2】
【0108】
表1、2の略号を以下に記載する。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MEA:メトキシエチルアクリレート
AM-90G:新中村化学工業社製、NKエステルAM-90G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート)
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
S-710:JNC社製、サイラエースS-710(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)
707SF;日本乳化剤社製、ニューコール707SF(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩の水溶液、有効成分30%)
KH-10:第一工業製薬社製、アクアロンKH-10((ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩)
APS:過硫酸アンモニウム
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0109】
<粘着シートの製造>
[製造例2-1](粘着シート(B-1)の製造)
共重合体(A-1)30部、及び共重合体(B-1)70部を混合した後、消泡剤としてアデカネートB-940(ADEKA社製)0.3部、レベリング剤としてぺレックスOT-P(花王社製)0.2部、防腐剤としてレバナックスFX-360(昌栄化学社製)0.05部を加え、さらにアルカリ増粘剤及びアンモニア水によりpH調整(堀場製作所 pHメーター D-52にて測定)及び粘度調製を行い、pH8.0、粘度2,000mPa(BL型粘度計♯4-12rpm)の粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、乾燥後の塗布量が15g/mになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで120秒間乾燥した後、支持材として感熱紙(リコー社製、150LA-1)と貼り合わせて粘着シート(B-1)を得た。
【0110】
[製造例2-2~11](粘着シート(B-2~11)の製造)
組成および配合量を表3記載の通りに変更した以外は[製造例2-1]と同様にして、粘着シート(B-2~11)を得た。
【0111】
【表3】
【0112】
[製造例2-12](粘着(B-12)の製造)
共重合体(A-9)100部に対し、硬化剤としてアルミキレートA(川研ファインケミカル社製、アルミニウムトリスアセチルアセトネート)を0.5部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分30%に調整して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、乾燥後の塗布量が15g/mになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで120秒間乾燥した後、支持材として感熱紙(リコー社製、150LA-1)と貼り合わせて、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで、粘着シート12(B-12)を得た。
【0113】
[製造例2-13~27](粘着シート(B-13~27の製造)
組成および配合量を表4-1、4-2(以下表4)記載の通りに変更した以外は[製造例2-12]と同様にして、粘着シート(B-13~27)を得た。
【0114】
【表4-1】
【0115】
【表4-2】
【0116】
表3、4の略号を以下に記載する。
SN-385NS:ハリマ化成社製、ハリエスターSN-385NS(ロジン系エマルション、ベース樹脂軟化点85℃)
A-75:荒川化学工業社製、スーパーエステルA-75(ロジンエステル、軟化点70~80℃)
アルミキレートA:川研ファインケミカル社製、アルミキレートA(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)
TETRAD-X:三菱ガス化学社製、TETRAD-X(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)
TDI/TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(不揮発分37.5%)
【0117】
表3、4の支持体について、以下に記載する。
感熱紙:リコー社製、150LA-1(紙厚82±9μm)
コート紙:王子製紙社製、ミラーコートゴールド(炭酸カルシウムを含むキャストコート紙、坪量84.9g/m
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm
PP:ポリプロピレンフィルム、厚み40μm
【0118】
<脱離液の製造>
[製造例3-1](脱離液(C-1)の製造)
界面活性剤としてPOEアルキルエーテルA(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、POE付加数;4、HLB;9.7)1部、消泡剤としてBYK-1650(ビックケミー・ジャパン製、シリコーン系エマルション型消泡剤、固形分濃度27.5%)0.1部、水酸化ナトリウム2部、水96.9部を配合し、ディスパーで撹拌して、脱離液(C-1)を得た。
【0119】
[製造例3-2~28]((脱離液(C-2~23、C’-1~5)の製造)
組成および配合量を表5、6記載の通りに変更した以外は[製造例3-1]と同様にして、脱離液(C-2~23、C’-1~5)を得た。
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
表5、6の略号および材料を以下に記載する。
[界面活性剤]
(ノニオン性界面活性剤)
POEアルキルエーテルA:ポリオキシエチレン(POE)ラウリルエーテル、POE付加数;4、HLB;9.7
POEアルキルエーテルB:POEラウリルエーテル、POE付加数;12、HLB;15.3
POEアルキルエーテルC:POEステアリルエーテル、POE付加数;12、HLB;13.9
POEアルキルエーテルD:POEオレイルエーテル、POE付加数;13、HLB;13.6
POEアセチレンジオールA:POE付加数;1.3、HLB;4.0
POEアセチレンジオールB:POE付加数;30、HLB;17
(アニオン性界面活性剤)
ラウリル硫酸ナトリウム:HLB;>20
POEアルキルエーテルリン酸A:POEアルキルエーテルリン酸、アルキル炭素数;12~15、POE付加数;4、HLB;13.3
POEアルキルエーテルリン酸B:POEラウリルエーテルリン酸、POE付加数;4、HLB;10.0
(カチオン性界面活性剤)
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:HLB;8.9
[消泡剤]
BYK-018:ビックケミー・ジャパン社製、シリコーン系オイルコンパウンド型、固形分濃度>97%
BYK-1770:ビックケミー・ジャパン製、シリコーン系オイル型、固形分濃度>96%
TEGO Foamex 1448:エボニック・ジャパン社製、シリコーン系エマルション型、固形分率24%、主要剤:水
KM-89:信越化学工業製、シリコーン系エマルジョン型、固形分濃度34%、主溶剤;水
KS-540:信越化学工業製、シリコーン系自己乳化型、固形分濃度100%、
BYK-015:ビックケミー・ジャパン製、固形分濃度>97%
BYK-1640:ビックケミー・ジャパン製、非シリコーン系、固形分濃度62%、主溶剤;水
【0123】
<積層体の製造>
(積層体(D-1)の製造)
23℃、相対湿度50%雰囲気下、粘着シート(B-2)から剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み200μm)に貼り付け、2kgロールで1往復圧着することで、積層体(D-1)を得た。
【0124】
(積層体(D-2~29)の製造)
粘着シートおよび基材を表7-1~7(以下表7)記載のものに変更した以外は、積層体(D-1)と同様にして、積層体(D-2~29)を得た。
【0125】
表7-1~7の基材について以下に記載する。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み200μm
PS:ポリスチレンフィルム、厚み100μm
PP:ポリプロピレンフィルム、厚み100μm
不織布:旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ社製、タイベック1073D ハードタイプ(ポリエチレン製不織布)
【0126】
<基材の分離回収>
[実施例1]
1000mLのステンレスビーカーに、脱離液(C-4)を400g、上記で製造した積層体(D-1)を1cm×1cmの大きさに切り出した試験片12gを入れ、80℃、2000rpmの条件で撹拌した。
10メッシュのステンレスメッシュを用いて脱離液を濾過し、メッシュ上に残ったPET基材を水洗、乾燥させることで基材を分離回収した。
【0127】
[実施例2~6、8~23、25~52、比較例1~5]
積層体および脱離液を表7記載のものに変更した以外は実施例1と同様の工程で基材の分離回収を行なった。
【0128】
[実施例7]
1000mLのステンレスビーカーに、脱離液(C-4)を400g、製造した積層体(D-7)を1cm×1cmの大きさに切り出した試験片12gを入れ、80℃、2000rpmの条件で撹拌した。
脱離液面付近に浮いている脱離後の基材を掬い取り、水洗、乾燥させることで基材を分離回収した。
【0129】
[実施例24]
積層体および脱離液を表7記載のものに変更した以外は実施例7と同様の工程で分離回収を行なった。
【0130】
各実施例の、積層体を脱離液に浸漬して粘着剤層を脱離させる工程において、下記の評価を行なった。結果を表7に示す。
【0131】
<評価方法>
(消泡性)
撹拌開始10分後に撹拌を一時中断し、液面(気泡上部)の高さを目視で観察し、以下の基準で評価した。高さはビーカーに記載の容量目盛りを指し、数値が大きいほど、液面が高い、即ち泡が多く発生していることを表す。
A(優):撹拌中の液面(気泡上部)の高さが500mL未満
B(良):撹拌中の液面(気泡上部)の高さが500mL以上、700mL未満
C(可):撹拌中の液面(気泡上部)の高さが700mL以上、900mL未満
D(不可):撹拌中の液面(気泡上部)の高さが900mL以上
【0132】
(脱離性)
撹拌開始15分、30分、1時間経過時に、各々、試験片を回収し、水洗・乾燥した。1枚ずつFT-IRと目視で支持体と基材を選別し、基材を10枚サンプリングした。各基材の表裏3ヶ所、計30ヶ所について、FT-IRを用いて粘着剤の吸収ピークの有無を確認し、以下の基準で評価した。
A(優):撹拌開始15分後に回収した基材において、粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が5ヶ所未満。
B(良):撹拌開始30分後に回収した基材において、初めて、粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が5ヶ所未満となる。
C(可):撹拌開始1時間後に回収した基材において、初めて、粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が5ヶ所未満となる。
D(不可):撹拌開始1時間後に回収した基材において、粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が6ヶ所以上。
【0133】
(再付着性)
脱離性評価において、30ヶ所中25ヶ所以上で粘着剤層の吸収ピークが確認されなくなった時点から更に60分間撹拌を行った。その後試験片を回収し、水洗、乾燥した。1枚ずつFT-IRと目視で支持体と基材を選別し、基材を10枚サンプリングした。各基材の表裏3ヶ所、計30ヶ所について、FT-IRを用いて粘着剤の吸収ピークの有無を確認した。
脱離性評価において、評価結果がDとなる比較例については、再付着性の評価が困難であると判断し、実施しなかった。
A(優):粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が5ヶ所未満。
B(良):粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が5ヶ所以上8ヶ所未満。
C(可):粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が8ヶ所以上10ヶ所未満。
D(不可):粘着剤層の吸収ピークが確認された箇所が10ヶ所以上。
【0134】
【表7-1】
【0135】
【表7-2】
【0136】
【表7-3】
【0137】
【表7-4】
【0138】
【表7-5】
【0139】
【表7-6】
【0140】
【表7-7】
【0141】
上記の評価結果より、本発明の脱離液であれば、積層体から粘着シートを容易に脱離させ、粘着剤層の再付着が少ない良質な基材を回収することができることが示された。
【要約】
【課題】塗布量が10~100g/mである粘着剤層と支持体を有する粘着シートと基材とを貼り合わせた積層体においても粘着シートの脱離性に優れ、さらに、脱離した成分の再付着が抑制された、プラスチックリサイクルに適した基材の分離回収方法を提供すること。
【解決手段】上記課題は、前記積層体を脱離液に浸漬して粘着シートを脱離させる工程を含み、前記脱離液が、塩基性化合物、HLB値が7以上の界面活性剤、及び、消泡剤を含有することを特徴とする、基材の分離回収方法により解決することができる。
【選択図】なし