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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】シート防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/00 20060101AFI20230725BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E04D5/00 D
E04D5/14 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019210051
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021080767
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】古屋 勝利
(72)【発明者】
【氏名】中村 修治
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-165881(JP,A)
【文献】特開2013-32694(JP,A)
【文献】特開2011-252345(JP,A)
【文献】特開昭60-3349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
E04D 5/14
E04D 11/00
E04D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体が有する床部と、該床部から立設する壁部とを防水シートで覆い、前記躯体に防水を施すシート防水構造であって、
前記床部に敷設された敷設部材と、
前記敷設部材の前記床部との反対側に配置された第1配置部材と、
前記壁部に配置された第2配置部材と、
前記第1配置部材と前記敷設部材とを介して前記床部を覆うとともに、前記第2配置部材を介して前記壁部を覆う前記防水シートとを備え、
前記第2配置部材は、前記敷設部材の端面と前記壁部との間隙に位置する間隙部を有し、
前記防水シートは、前記第1配置部材の前記敷設部材との反対側において前記第1配置部材に接合する第1の部分と、前記間隙部において前記第2配置部材に接合する第2の部分とを備えるシート成形体を有することを特徴とするシート防水構造。
【請求項2】
前記第2配置部材は、前記間隙から露出する露出部を有し、
前記シート成形体は、前記露出部において前記第2配置部材に接合する第3の部分を備える請求項1に記載のシート防水構造。
【請求項3】
前記シート成形体において、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分は、それぞれ、シート状をなし、
前記第2の部分と前記第3の部分とは、平面状をなして接合され、
前記第1の部分は、前記第2の部分と前記第3の部分との接合部から立設するように接合されている請求項2に記載のシート防水構造。
【請求項4】
前記第2配置部材の高さ方向において、
前記第2の部分と前記第3の部分とが前記第2配置部材に接合している領域の幅は、40mm以上である請求項2または3に記載のシート防水構造。
【請求項5】
前記壁部は、その厚さ方向に開口する窓部、または、その途中に形成された継ぎ目としての目地部を備え、
前記第2配置部材は、前記窓部または前記目地部と前記床部との間の領域に位置する前記壁部に対応して配置されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート防水構造。
【請求項6】
前記第1の部分は、前記第2の部分との接合部側において、前記第1配置部材と接合していない請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシート防水構造。
【請求項7】
前記第1配置部材は、前記敷設部材の前記床部との反対側に配置され、前記第1の部分と接合する接合部と、前記敷設部材の端面と前記壁部との前記間隙に配置され、前記敷設部材の端面に係合する係合部とを有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の躯体(構造体)において、防水シート(樹脂シート)を敷設施工したシート防水構造が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このシート防水構造では、例えば、躯体が備える壁部および床部の少なくとも一部を防水シートで覆う構成をなしているが、防水シートの壁部への固定は、壁部の下端および上端に、それぞれの形状に対応して設けられた、L字状をなす配置部材(鋼板)を配置した状態で固定ビス等を用いて固定し、さらに、これら配置部材において、配置部材の上面と防水シートとの下面とを接合することで、配置部材を介して壁部と防水シートとが接合されることにより実施される。また、防水シートの床部への固定は、複数の円盤状をなす固定ディスク(鋼板)を、所定の間隔で床部に固定ビス等を用いて固定し、さらに、これら固定ディスクにおいて、固定ディスクの上面と防水シートとの下面とを接合することで、固定ディスクを介して床部と防水シートとが接合されることにより実施される。これにより、躯体に雨水等に対する防水が施されるとともに、風等に対して防水シートが引き剥がされることなく躯体に固定される。
【0004】
このようなシート防水構造を、躯体における断熱性の向上を図ることを目的に、床部に断熱材が敷設された構成をなし、さらに、壁部が、その厚さ方向に開口する窓部、または、その途中に形成された継ぎ目としての目地部を備える構成をなす躯体に対して適用した場合、断熱材ならびに窓部または目地部の存在により、壁部において、床部と窓部または目地部との間の領域が狭くなる。その結果、この領域すなわち壁部と床部との境界部近傍に配置された配置部材と防水シートとの間において、十分な接合強度を得ることができないことに起因して、シート防水構造を用いた躯体に対する防水が十分に施されないと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-70877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、床部と壁部との境界部に配置された配置部材において、壁部側で露出する領域が狭くなったとしても、防水シートと配置部材との間での接合を確保して、躯体に対する防水を確実に施すことができるシート防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(7)に記載の本発明により達成される。
(1) 躯体が有する床部と、該床部から立設する壁部とを防水シートで覆い、前記躯体に防水を施すシート防水構造であって、
前記床部に敷設された敷設部材と、
前記敷設部材の前記床部との反対側に配置された第1配置部材と、
前記壁部に配置された第2配置部材と、
前記第1配置部材と前記敷設部材とを介して前記床部を覆うとともに、前記第2配置部材を介して前記壁部を覆う前記防水シートとを備え、
前記第2配置部材は、前記敷設部材の端面と前記壁部との間隙に位置する間隙部を有し、
前記防水シートは、前記第1配置部材の前記敷設部材との反対側において前記第1配置部材に接合する第1の部分と、前記間隙部において前記第2配置部材に接合する第2の部分とを備えるシート成形体を有することを特徴とするシート防水構造。
【0008】
(2) 前記第2配置部材は、前記間隙から露出する露出部を有し、
前記シート成形体は、前記露出部において前記第2配置部材に接合する第3の部分を備える上記(1)に記載のシート防水構造。
【0009】
(3) 前記シート成形体において、前記第1の部分、前記第2の部分および前記第3の部分は、それぞれ、シート状をなし、
前記第2の部分と前記第3の部分とは、平面状をなして接合され、
前記第1の部分は、前記第2の部分と前記第3の部分との接合部から立設するように接合されている上記(2)に記載のシート防水構造。
【0010】
(4) 前記第2配置部材の高さ方向において、
前記第2の部分と前記第3の部分とが前記第2配置部材に接合している領域の幅は、40mm以上である上記(2)または(3)に記載のシート防水構造。
【0011】
(5) 前記壁部は、その厚さ方向に開口する窓部、または、その途中に形成された継ぎ目としての目地部を備え、
前記第2配置部材は、前記窓部または前記目地部と前記床部との間の領域に位置する前記壁部に対応して配置されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシート防水構造。
【0012】
(6) 前記第1の部分は、前記第2の部分との接合部側において、前記第1配置部材と接合していない上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシート防水構造。
【0013】
(7) 前記第1配置部材は、前記敷設部材の前記床部との反対側に配置され、前記第1の部分と接合する接合部と、前記敷設部材の端面と前記壁部との前記間隙に配置され、前記敷設部材の端面に係合する係合部とを有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシート防水構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、床部と壁部との境界部に配置された配置部材において、壁部側で露出する領域が狭くなったとしても、防水シートと配置部材との間での接合を確保することができるため、防水シートを用いた躯体に対する防水を、確実に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】躯体に施工された本発明のシート防水構造の第1実施形態を部分的に取り出した部分断面斜視図である。
図2図1に示すシート防水構造のA-A線縦断面図である。
図3図1に示すシート防水構造が備える主要部分を示す分解斜視図である。
図4】躯体に施工された本発明のシート防水構造の第2実施形態を部分的に取り出した部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のシート防水構造を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明のシート防水構造10は、躯体100が有する床部101と、この床部101から立設する壁部102とを防水シート20で覆い、躯体100に防水を施すものであり、床部101に敷設された敷設部材80と、敷設部材80の床部101との反対側に配置された配置部材50(第1配置部材)と、壁部102に配置された配置部材55(第2配置部材)と、配置部材50と敷設部材80とを介して床部101を覆うとともに、配置部材55を介して壁部102を覆う防水シート20とを備え、配置部材55は、敷設部材80の端面と壁部102との間隙150に位置する間隙挿入部561を有し、防水シート20は、配置部材50の敷設部材80との反対側において配置部材50に接合する第1の部分21と、間隙150において配置部材55に接合する第2の部分22とを備えるシート成形体25を有する。
【0018】
これにより、シート防水構造10において、敷設部材80の端面と壁部102との間隙150に位置する間隙挿入部561を配置部材55が有し、さらに、この間隙150において、配置部材55が備える間隙挿入部561にシート成形体25が備える第2の部分22が接合している。
【0019】
そのため、例えば、壁部102が、その厚さ方向に開口する窓部105、または、その途中に形成された継ぎ目としての目地部を備え、これにより、壁部102における、窓部105または目地部と床部101との間の領域106が狭くなったとしても、間隙150において、シート成形体25と配置部材55との接合巾を確保することができる。したがって、シート成形体25すなわち防水シート20により、躯体100に対する防水を確実に施すことができる。
【0020】
以下、本発明のシート防水構造10について詳述する。
<シート防水構造>
<<第1実施形態>>
本実施形態では、屋上やベランダのような躯体100(構造体)において、躯体100が有する壁部102が、その厚さ方向に開口する窓部105を備え、この壁部102における、窓部105と床部101との間の領域106に、本発明のシート防水構造10が適用された場合について説明する。
【0021】
図1は、躯体に施工された本発明のシート防水構造の第1実施形態を部分的に取り出した部分断面斜視図、図2は、図1に示すシート防水構造のA-A線縦断面図、図3は、図1に示すシート防水構造が備える主要部分を示す分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1では、説明の便宜上、シート防水構造の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。
【0022】
躯体100は、床部101と、この床部101の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた壁部102とを有している。また、壁部102は、図1に示すように、その厚さ方向に貫通して開口する窓部105を有している。そして、窓部105は、窓としての機能を発揮させるために、窓枠108と、窓枠108に装着された光透過性を有する窓部材(図示せず)とを備え、この窓枠108は、その縁部において、バックアップ材107aとシーリング材107bとを介して、壁部102に配置された配置部材55に対して液密に設置されており、これにより、窓部105における防水性が確保されている。
【0023】
シート防水構造10は、本実施形態では、この躯体100、すなわち窓部105を有する壁部102と、底部を構成する床部101とに対して施工されたものであり、防水シート20と、敷設部材80と、配置部材50(第1配置部材)と、配置部材55(第2配置部材)と、を有している。
【0024】
敷設部材80は、その全体形状が平板状をなし、床部101に敷設されている。この敷設部材80は、例えば、断熱材81と、この断熱材81の上面を被覆する被覆材82とを有する積層体で構成される。このように、敷設部材80を、断熱材81を備えるものとすることにより、躯体100における断熱性の向上が図られる。
【0025】
断熱材81としては、通常、建物の断熱に用いられる断熱材が使用され、例えば、発泡ポリスチレン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム等で構成される断熱層が挙げられる。
【0026】
また、被覆材82としては、例えば、ポリエチレン製の織布からなる絶縁クロスシート、ガラス繊維製の防火用シート、ピンホール検査用のアルミ箔ラミネートシート等や、人の歩行を可能にする目的で、歩行用ボードとして、繊維強化セメント板、石こうボード製品、木質系セメント板等の高剛性板が挙げられる。
【0027】
すなわち、本実施形態では、断熱性を有する断熱材81と、その上に敷設された絶縁クロスシート、防火用シート、アルミ箔ラミネートシートもしくは高剛性板等で構成される被覆材82との積層体により、敷設部材80が構成される。
【0028】
なお、敷設部材80は、上記のような積層体で構成される場合の他、断熱材81または被覆材82の単体で構成される単層体であってもよい。
【0029】
また、この敷設部材80は、床部101に敷設したとき、その壁部102側の端面の厚さが、その一端から他端に向かって、漸減するものであってもよい。敷設部材80をかかる構成をなすものとすることで、敷設部材80の前記端面側を、雨水等の水が流れる流路として構成することができる。
【0030】
ここで、図1、2に示すように、床部101に敷設部材80が敷設された躯体100において、配置部材50は、壁部102と床部101上の敷設部材80との境界部103の近傍で、固定ビス60を用いて敷設部材80を介して床部101に固定され、また、配置部材55は、固定ビス60を用いて壁部102に固定されており、この状態で、防水シート20は、配置部材50、配置部材55および敷設部材80とともに床部101と壁部102とを覆っており、これにより、躯体100の防水性が確保される。
【0031】
換言すれば、日光や雨水には防水シート20が晒されることとなり、躯体100すなわち壁部102と床部101とが直接的に日光や雨水に晒されることが防止されるため、躯体100の防水性が確保される。また、配置部材50、55および固定ディスク(図示せず)の上面と防水シート20との下面とが接合されており、これにより、配置部材50、55および固定ディスクを介して床部101および壁部102と防水シート20とが接合され、その結果、風等に対して防水シート20が引き剥がされることなく躯体100に固定される。
【0032】
上記のように、躯体100すなわち壁部102と床部101とを、敷設部材80、配置部材50、55等とともに、防水シート20で被覆することにより、躯体100の防水性が確保されるが、本実施形態では、防水シート20は、窓部105と床部101との間の領域106に位置する壁部102に対応して被覆するものとして、シート成形体25を有しており、これを用いて、配置部材50と配置部材55との双方に接合している。そのため、壁部102が、窓部105を備え、これにより、壁部102における、窓部105と床部101との間の領域106が狭くなったとしても、敷設部材80の端面と壁部102との間に画成される間隙150において、シート成形体25と配置部材55との接合を確保することができる。したがって、シート成形体25すなわち防水シート20による、躯体100に対する防水を確実に施すことができる。
【0033】
以下、壁部102における、窓部105と床部101との間の領域106の防水に関与する各部の構成について、順次、説明する。
【0034】
配置部材50(第1配置部材)は、前述の通り、壁部102と床部101上の敷設部材80との境界部103の近傍に配置され、固定ビス60を用いて、敷設部材80を介して床部101に固定されるものである。
【0035】
この配置部材50は、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とからなり、それぞれ全体形状が長方形状をなす頂部51と立ち下がり面52とを有し、それぞれの長辺において、ほぼ90°に湾曲して接合されることで、その側面形状がL字状をなしている。
【0036】
これら頂部51および立ち下がり面52は、それぞれ、境界部103近傍に配置する際に、敷設部材80の上面および間隙150側の端面に対応するように位置設定され、本実施形態では、このような構成の配置部材50が、敷設部材80の上面と間隙150側の端面とが重なる1辺に沿うように配置されている。
【0037】
すなわち、配置部材50では、立ち下がり面52が敷設部材80の間隙150側の端面に係合するようにして、頂部51が敷設部材80の上面に配置されている。
【0038】
この配置部材50には、貫通孔が設けられ、この貫通孔を挿通する固定ビス60が敷設部材80を介して床部101に固定されることで、床部101に配置部材50が固定されている。そして、配置部材50は、その頂部51において、シート成形体25と接合しており、これにより、シート成形体25が躯体100に固定される。
【0039】
このような配置部材50において、頂部51が、シート成形体25(後述する第1の部分21)と接合する接合部を構成し、立ち下がり面52が、敷設部材80の端面に係合する係合部を構成する。
【0040】
このように、配置部材50を、接合部としての頂部51の他に、係合部としての立ち下がり面52を備えるものとすることで、配置部材50が敷設部材80上において位置ズレするのを、的確に抑制または防止することができる。また、立ち下がり面52により、敷設部材80の端面の少なくとも一部を被覆することができる。そのため、この被覆された領域において、敷設部材80と防水シート20(シート成形体25)とが、直接、接触するのを、確実に防止することができる。したがって、防水シート20に可塑剤が含まれる場合には、防水シート20から敷設部材80への可塑剤の移行が確実に防止されるため、この可塑剤の移行に伴う、防水シート20および敷設部材80の変質・劣化を的確に抑制または防止することができる。
【0041】
なお、配置部材50を、立ち下がり面52において敷設部材80に係合する必要がない場合には、配置部材50は、この立ち下がり面52が省略されたもの、すなわち頂部51単独で構成されるものであってもよい。
【0042】
また、配置部材50は、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。このように、金属板の表面を、樹脂で構成された樹脂層で被覆することで、金属板の腐食を確実に防止することができる。さらに、この樹脂層により、頂部51の上面において、防水シート20の下面に対して頂部51を確実に接合することができる。
【0043】
この配置部材50が備える金属板および樹脂層のうち、この金属板は、例えば、ステンレス鋼板、防錆処理鋼板、アルミ板、銅板等で構成されるが、防錆処理鋼板であるのが好ましい。これにより、配置部材50を優れた強度を有するものとすることができる。
【0044】
また、金属板の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上、3mm以下程度であるのが好ましく、0.3mm以上、2.5mm以下程度であるのがより好ましい。
【0045】
また、樹脂層は、樹脂で構成されるものであり、この樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。すなわち、後述する防水シート20を構成する樹脂と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層と防水シート20との密着性を向上させることができる。さらに、ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させることができるとともに、金属板の腐食をより確実に防止することができる。
【0046】
また、樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.03mm以上、2mm以下程度であるのが好ましく、0.1mm以上、0.7mm以下程度であるのがより好ましい。
【0047】
さらに、この樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート20の構成材料で挙げる可塑剤、安定化剤等の他の材料が含まれていてもよい。
【0048】
配置部材55(第2配置部材)は、前述の通り、壁部102と床部101上の敷設部材80との境界部103の近傍に配置され、固定ビス60を用いて、壁部102に固定されるものである。
【0049】
この配置部材55は、配置部材50と同様に、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とからなる。そして、壁部102の内面の形状に対応して形成され、全体形状が長方形状をなす側部56と、壁部102の頂面の形状に対応して形成された窓内配置部57とを有しており、それぞれの端部において、ほぼ90°に湾曲して接合されることで、側部56および窓内配置部57が、それぞれ、壁部102の内面および頂面に対応して配置し得るようになっている。
【0050】
これら側部56および窓内配置部57は、それぞれ、境界部103近傍に配置する際に、壁部102の内面および窓部105の底面に対応するように位置設定され、本実施形態では、このような構成の配置部材55が、壁部102の内面と窓部105の底面とが重なる1辺に沿うように配置されている。すなわち、配置部材55では、窓内配置部57が窓部105の底面に係合するようにして、側部56が壁部102の内面に対応して配置されている。
【0051】
このような配置部材55において、側部56は、その下側に位置する領域の一部が、敷設部材80(敷設部材)の端面と壁部102との間隙150に位置する間隙挿入部561と、この間隙150から露出する露出部562とを有している。
【0052】
この配置部材55には、貫通孔が設けられ、この貫通孔を挿通する固定ビス60が壁部102に固定されることで、壁部102に配置部材55が固定されている。そして、配置部材55は、その側部56において、シート成形体25と接合しており、これにより、シート成形体25が躯体100に固定される。
【0053】
また、配置部材55は、配置部材50と同様に、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。このように、金属板の表面を、樹脂で構成された樹脂層で被覆することで、金属板の腐食を確実に防止することができる。さらに、この樹脂層により、側部56の上面において、防水シート20の下面に対して側部56を確実に接合することができる。
【0054】
この配置部材55が備える金属板および樹脂層は、それぞれ、前述した配置部材50で挙げた金属板および樹脂層と同様のもので構成することができる。
【0055】
防水シート20は、配置部材50、配置部材55、敷設部材80および固定ディスク(図示せず)等とともに、床部101と壁部102とを覆うものであり、防水シート20の下面と、配置部材50、配置部材55および固定ディスクの上面とが接合されている。
【0056】
これにより、日光や雨水には防水シート20が晒され、躯体100が直接的に日光や雨水に晒されることが防止されることから、躯体100の防水性が確保される。また、台風、突風等の強風下において、防水シート20が風に煽られたとしても、防水シート20が躯体100から吹き飛ばされるのを的確に抑制または防止することができる。
【0057】
このような防水シート20は、樹脂材料を含有する樹脂シートで構成される。
樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート20の溶剤溶着性や熱融着性を優れたものとすることができる。
【0058】
なお、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、アクリルもしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0059】
また、樹脂材料には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等が含まれてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート20をより優れた柔軟性を有するものとすることができる。
【0060】
なお、可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、DIBP(ジイソブチルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)のようなフタル酸エステル系可塑剤、DOA(ジ-2-エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジ-2-エチルヘキシルセバセート)のような脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、エチレングリコールのベンゾエート類のような芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、およびTOTM(トリオクチルトリメリテート)のようなトリメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、安定化剤としては、例えば、グリシン亜鉛等が挙げられ、この場合の安定化助剤としては、例えば、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
【0062】
以上のことから、防水シート20は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する塩化ビニル系樹脂シートで構成されることが好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0063】
なお、防水シート20は、前記樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。
【0064】
この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられるが、防水シート20を、このような繊維層を備えるものとすることにより、防水シート20の強度(引き裂き強度や引っ張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)を向上させることができる。
【0065】
また、防水シート20の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、3mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上、3mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、床部101と壁部102とを、防水シート20により確実に覆うことができる。また、防水シート20が風で煽られることに起因して、この防水シート20に応力が作用したとしても、早期に防水シート20に亀裂が生じるのを的確に抑制することができる。
【0066】
この防水シート20は、本発明では、窓部105または目地部と床部101との間の領域106を被覆するものとして、シート成形体25を有している。このシート成形体25を用いることより、窓部105および敷設部材80の存在により領域106の縦幅が狭くなっていたとしても、後に詳述する通り、間隙150において、シート成形体25と配置部材55との接合を確保することができる。したがって、シート成形体25すなわち防水シート20により、躯体100に対する防水を確実に施すことができる。
【0067】
シート成形体25は、本実施形態では、3つのシート状をなす部材である第1の部分21と第2の部分22と第3の部分23とが接合されたもの(成形体)であり、配置部材50および配置部材55を覆うように用いられ、境界部103の近傍に配置された配置部材50および配置部材55に対応した形状をなしている。
【0068】
より具体的には、第1の部分21、第2の部分22および第3の部分23は、それぞれ、シート状をなす長方形状に形成されており、頂部51、間隙挿入部561および露出部562の形状に対応して設けられている。
【0069】
このような、第1の部分21、第2の部分22および第3の部分23において、第2の部分22と第3の部分23とは、その接合体の全体形状が平面状をなすように、互いの長辺を接合部として接合されており、さらに、第1の部分21は、第2の部分22と第3の部分23との接合部から立設するように接合されている。
【0070】
これにより、シート成形体25は、その側面形状がT字状をなし、このシート成形体25で壁部102の領域106を被覆する際に、第1の部分21の下面で配置部材50の頂部51と接合し、また、第2の部分22の壁部102側の側面で配置部材55(側部56)の間隙挿入部561と接合し、さらに、第3の部分23の壁部102側の側面で配置部材55(側部56)の露出部562と接合することができる。
【0071】
このようにT字状をなすシート成形体25を用いることにより、第2の部分22の壁部102側の側面で、配置部材55(側部56)において、間隙150に位置する間隙挿入部561と接合させることが可能となる。したがって、窓部105および敷設部材80の存在により領域106の縦幅が狭くなっていたとしても、間隙150において、第2の部分22と配置部材55が備える間隙挿入部561との接合を確保することができる。よって、シート成形体25と配置部材55とが接合する接合領域を十分に確保することができることから、風等に対してシート成形体25が引き剥がされるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、シート成形体25(防水シート20)を用いた躯体100に対する防水を、確実に施すことができる。
【0072】
また、かかる構成のシート成形体25を用いることで、配置部材55の高さ方向すなわち縦幅方向において、シート成形体25の第2の部分22と第3の部分23とが配置部材55に接合している領域の幅は、40mm以上であることが好ましく、50mm以上80mm以下であることがより好ましい。これにより、風等に対してシート成形体25が配置部材55から引き剥がされるのをより的確に抑制または防止することができる。
【0073】
なお、第2の部分22単独で、シート成形体25が配置部材55に接合している領域の幅を、40mm以上確保し得る場合には、配置部材55における露出部562およびシート成形体25における第3の部分23のうちの少なくとも一方の形成を省略して、露出部562と第3の部分23との間の接合を省略することもできる。露出部562と第3の部分23との間の接合を省略したとしても、第2の部分22単独で前記領域の幅を40mm以上確保し得ることから、風等に対してシート成形体25が配置部材55から引き剥がされるのをより的確に抑制または防止することができる。なお、シート成形体25における第3の部分23の形成が省略された場合、領域106において露出する、露出部562または壁部102は、シート成形体25に対して別体として形成された防水シート20を用いて被覆されていればよい。
【0074】
ただし、配置部材55において露出部562を形成して、露出部562と第3の部分23とが接合する構成とすることで、配置部材55とシート成形体25との間での接合を確実に確保することができる。
【0075】
また、シート成形体25を用いることで、第1の部分21は、配置部材50の頂部51と接合するが、第2の部分22との接合部側の縁部において、頂部51(配置部材50)と接合していないことが好ましい。これにより、シート防水構造10が施工された躯体100上に人が歩行すること等により、シート防水構造10に荷重が掛かったとしても、第1の部分21と第2の部分22との接合部付近において、亀裂が生じるのを的確に抑制または防止することができる。なお、第1の部分21を、第2の部分22との接合部側の縁部において、頂部51と接合しないものとするには、前記縁部に対応する位置の頂部51に目地テープを貼付することが好ましい。これにより、第1の部分21と頂部51との間に目地テープが介在して、前記縁部において、第1の部分21と頂部51とが接合するのを、確実に防止することができる。
【0076】
<<第2実施形態>>
次に、躯体100に対して本発明のシート防水構造10が施された第2実施形態について説明する。
【0077】
図4は、躯体に施工された本発明のシート防水構造の第2実施形態を部分的に取り出した部分縦断面図である。
【0078】
以下、躯体100に施工された本発明のシート防水構造10の第2実施形態について、前述した躯体100に施工された本発明のシート防水構造10の第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0079】
図4に示す躯体100は、壁部102の構成が異なる以外は、図1~3に示す躯体100と同様である。
【0080】
すなわち、第1実施形態の躯体100では、壁部102の厚さ方向に開口する窓部105を備え、この壁部102における、窓部105と床部101との間の領域106に、シート防水構造10が適用されたが、第2実施形態の躯体100では、この躯体100が有する壁部102が、その途中に形成された継ぎ目としての目地部109を備え、この壁部102における、目地部109と床部101との間の領域106にシート防水構造10が適用されている。
【0081】
このような第2実施形態の躯体100に本発明のシート防水構造10を適用した際にも、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態で説明した、シート防水構造10と躯体100と同様である。
【0083】
以上、本発明のシート防水構造について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0084】
例えば、本発明のシート防水構造において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 シート防水構造
20 防水シート
21 第1の部分
22 第2の部分
23 第3の部分
25 シート成形体
50 配置部材
51 頂部
52 立ち下がり面
55 配置部材
56 側部
561 間隙挿入部
562 露出部
57 窓内配置部
60 固定ビス
80 敷設部材
81 断熱材
82 被覆材
100 躯体
101 床部
102 壁部
103 境界部
105 窓部
106 領域
107a バックアップ材
107b シーリング材
108 窓枠
109 目地部
150 間隙
図1
図2
図3
図4