(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】試料の測定装置、測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20230725BHJP
G01J 3/51 20060101ALI20230725BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01J3/51
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2019217786
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-09-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、チーム型研究(CREST)、「トポロジカル材料科学に基づく革新的機能を有する材料・デバイスの創出」、「人工グラフェンに基づくトポロジカル状態創成と新規特性開発」、「トポロジカルフォトニクスの光通信デバイス応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】395023060
【氏名又は名称】株式会社東京インスツルメンツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 智宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祥
(72)【発明者】
【氏名】河村 賢一
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148075(WO,A1)
【文献】特開2006-275568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202414(US,A1)
【文献】特開2014-236127(JP,A)
【文献】Siying Peng,Probing the Band Structure of Topologoical Silicon Photonic Lattices in the Visible Spectrum,PHYSICAL REVIEW LETTER,Amerircan Physical Society,2019年03月,117401-1~6
【文献】J. M. van den Broek,Inverse-Woodpile Photonic Band Gap Crystals with a Cubic Diamond-like Structure Made from Single-Crystalline,Advanced Functional Materials,Vol.22,2012年,p.25-31
【文献】岡田祥,光トポロジーを利用したSi基板上における光渦スプリッタに関する研究,信学技報,Vol.119, No230,日本,電子情報通信学会,2019年10月,p.113-118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01J 3/00 - G01J 3/51
G02F 1/015
G01J 1/02 - G01J 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物である試料にブロードバンド光を照射する照射光学系と、
前記試料から反射された反射光のフーリエ面を撮像する赤外線カメラを有する撮像光学系と、
前記赤外線カメラによって撮像されたフーリエ面の画像からフォトニックバンドギャップ画像を生成する画像生成部を有する制御部と、
を備え、
前記撮像光学系は、前記赤外線カメラで撮像される反射光の波長をスイープにより変更する波長可変フィルタを有することを特徴とする試料の測定装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記波長可変フィルタの透過波長を変更させて、赤外領域における任意波長の回析パターンを示すハイパースペクトルフーリエ画像をそれぞれの波長ごとに生成する波長可変フィルタ制御部と、
複数の前記ハイパースペクトルフーリエ画像を方向および波長にて解析してプロットしたフォトニックバンドギャップ画像に変換する解析部とを有することを特徴とする請求項1に記載の試料の測定装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、フォトニックバンドギャップ画像を生成する際、前記フーリエ面の画像を所定の波長間隔で連続して取込むことを特徴とする請求項1または2に記載の試料の測定装置。
【請求項4】
記試料が載置される載置台に正対する対物レンズと、前記対物レンズを前記試料に対して、近接または離反させる焦点調整機構と、前記焦点調整機構によって、対物レンズとともに移動する筐体とをさらに備え、
前記筐体の内部には、前記照射光学系または、前記撮像光学系の少なくとも一部が収容されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の試料の測定装置。
【請求項5】
前記照射光学系の光路に設けられて、前記試料から反射された反射光を、前記撮像光学系へ分光する第1ビームスプリッタが設けられていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の試料の測定装置。
【請求項6】
第2ビームスプリッタと、可視光カメラとを有する観察光学系をさらに備え、
前記第2ビームスプリッタは、前記撮像光学系の光路に設けられて、前記波長可変フィルタの前段の反射光を分光し、
前記可視光カメラは、前記第2ビームスプリッタから分光された可視光を撮像するとともに、
前記制御部には、前記可視光カメラで撮像された前記試料の実像を表示可能とする実像表示部が設けられていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の試料の測定装置。
【請求項7】
波長可変フィルタの透過波長を変更させて、赤外領域における任意波長の回析パターンを示すハイパースペクトルフーリエ画像をそれぞれの波長ごとに生成することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
試料から取得した複数のハイパースペクトルフーリエ画像を少なくとも方向および波長にて解析してプロットしたフォトニックバンドギャップ画像に変換することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニックバンド構造を有する試料の測定装置、測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォトニックバンド構造を有する試料のバンドギャップ特性を測定する装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
このようなものでは、フォトニックバンド構造を有する試料にプリズムを介してビームを入射し、試料からの反射光を測定する。
そして、測定した反射スペクトルの入射角度依存性からフォトニックバンド構造を示すフォトニックバンドギャップ画像を作成している。
なお、他のフォトニックバンド構造を有する試料を測定する方法としては、エリプソメータを用いて、様々な方向から散乱してきた光を受光側のプローブの位置を移動させて変更するものが知られている。このようなものでは、測定された角度と強度とをプロットして、フォトニックバンドギャップ画像を作成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来の測定装置では、入射ビームの入射角度を変更したり、異なる角度と強度とを多数測定して、測定者がフォトニックバンドギャップ画像としてプロットしなければならない。
このため、フォトニックバンドギャップ画像から、バンドギャップ等の必要な情報を得るために手間がかかり、効率的に測定結果を利用することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、フォトニックバンド構造を示す画像を短時間で得られる試料の測定装置、測定方法およびプログラムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る試料の測定装置は、被測定物である試料にブロードバンド光を照射する照射光学系と、試料から反射された反射光のフーリエ面を撮像する赤外線カメラを有する撮像光学系と、赤外線カメラによって撮像されたフーリエ面の画像からフォトニックバンドギャップ画像を生成する画像生成部を有する制御部と、を備え、撮像光学系は、赤外線カメラで撮像される反射光の波長をスイープにより変更する波長可変フィルタを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォトニックバンド構造を示す画像を短時間で得られる試料の測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の測定装置の構成を示す模式的な一部断面を含む側面図である。
【
図2】本実施形態の測定装置で、撮像光学系の配置を示す模式的な側面図である。
【
図3】本実施形態の測定装置で撮像されたフーリエ面の画像の一例を示す平面図である。
【
図4】本実施形態の測定装置で撮像されたフーリエ面の画像からフォトニックバンドギャップ画像を得る処理の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の測定装置1は、平坦な上面を有する基台2と、被測定物である試料Fを載置する載置台3と、載置台3に載置された試料Fにブロードバンド光を照射する照射光学系4と、を備えている。
【0010】
本実施形態の試料の測定装置1は、基台2の上面に載置台3を載せるXYステージ10を設けている。XYステージ10は、基台2の上面でXY方向(水平方向)に載置台3を移動させる。
【0011】
照射光学系4は、筐体13の外部に設けられるハロゲンランプ光源14と、ハロゲンランプ光源14から入光する照射光を、鉛直方向に屈折させる屈折レンズ16と、屈折レンズ16で屈折された照射光を通すことにより完全な平行光線に照射光を近づけるコリメートレンズ17とを有している。
そして、コリメートレンズ17からの照射光は、第1ビームスプリッタ18を透過して対物レンズ9から載置台3の上に載置された試料Fに照射される。
本実施形態の第1ビームスプリッタ18および対物レンズ9は、筐体13に設けられている。そして、第1ビームスプリッタ18および対物レンズ9は、照射光学系4と後述する撮像光学系5および観察光学系15とによって共用されている。
【0012】
また、測定装置1は、試料Fから反射された反射光のフーリエ面を撮像する赤外線カメラ6を有する撮像光学系5と、赤外線カメラ6の撮像面6aによって撮像されたフーリエ面の画像からフォトニックバンドギャップ画像を生成する制御部7と、を備えている。
【0013】
このうち、撮像光学系5の撮像を行う光路上には、第1ビームスプリッタ18からの反射光の分光を入射させる第1フローライトレンズ22と、第1フローライトレンズ22を通過した反射光の光軸を鉛直上方に向ける反射鏡23と、可変絞りを有する可変アパーチャ24と、第2フローライトレンズ25とを有している。
そして、試料Fの反射光は、第1ビームスプリッタ18からの分光となり、第1フローライトレンズ22、反射鏡23、可変アパーチャ24、第2フローライトレンズ25から、第2ビームスプリッタ19を透過して、撮像部20に入光する。
【0014】
撮像部20内には、赤外線カメラ6および波長可変フィルタ30が設けられている。波長可変フィルタ30は、赤外線カメラ6で撮像される反射光をスイープにより所望の波長の反射光を通過させるように変更することができる。
本実施形態の波長可変フィルタ30は、制御部7に接続されている。制御部7には、画像生成部8、波長可変フィルタ制御部40および解析部50が設けられている。
【0015】
このうち、画像生成部8には、プログラムとしてサンプル位置制御ソフトウエア(
図4参照)8fが設けられていて、撮影に適切となる位置まで載置台3または対物レンズ9を筐体13とともに移動させることができる。
【0016】
また、波長可変フィルタ制御部40は、プログラムとして波長可変フィルタ制御ソフトウエア(
図4参照)40fを有している。波長可変フィルタ制御部40は、波長可変フィルタ制御ソフトウエア(
図4参照)40fを用いて、波長可変フィルタ30を通過する波長を可変させる。そして、撮像面6aに各波長のハイパースペクトルフーリエ画像を投影する制御している。
【0017】
さらに、解析部50には、プログラムとしてフォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア(
図4参照)50fが設けられている。フォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fは、複数のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)を方向および波長にて解析する。そして、解析結果をプロットしてフォトニックバンドギャップ画像(
図4参照)100に変換する。
【0018】
本実施形態の測定装置1では、XYステージ10に隣接して、基台2から上方に支持台11が突設されている。支持台11には、焦点調整機構12を介して箱状の筐体13が片持ち支持されている。そして、焦点調整機構12は、制御部7による制御で筐体13を上下方向に移動させる。これにより、焦点調整機構12は、筐体13の下部に装着された対物レンズ9を上下方向に移動させて焦点を調整するように構成されている。
【0019】
さらに、本実施形態では、試料Fの実像を撮像する観察光学系15が筐体13内に設けられている。観察光学系15には、撮像光学系5の光路に設けられた第2ビームスプリッタ19からの分光が入射する撮像レンズ26と、CMOSカメラ27とが設けられている。
撮像レンズ26は、分光された光をCMOSカメラ27に結像させる。
また、CMOSカメラ27は、制御部7と接続されている。制御部7は、CMOSカメラ27を通じて可視光域で観察される試料Fの様子を試料の実像としてモニタ28に表示させることができる。
【0020】
さらに、第2ビームスプリッタ19を通過した光は、撮像部20内に入光する。撮像部20内には、撮像光学系として、赤外線カメラ6と、赤外線カメラ6の前段に設けられて撮像される反射光の波長をスイープにより変更可能とする波長可変フィルタ30とを有している。そして、赤外線カメラ6の前面に設けられた撮像面6aに到達した反射光の画像は、フーリエ面の画像データとして制御部7に送られる。
【0021】
そして、制御部7の波長可変フィルタ制御部40では、
図4に示す波長可変フィルタ制御ソフトウエア40fにより、赤外線カメラ6を通じて各波長の光が入力する前段で、波長可変フィルタ制御部40が波長可変フィルタ30を透過する透過光の透過波長を変更する。
このため、赤外線カメラ6で撮像されるハイパースペクトルフーリエ画像λは、それぞれの波長ごと(λ1,…)に生成される。ハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)は、赤外領域における任意波長の回析パターンを示すことが知られている。
【0022】
図2は、試料Fから、赤外線カメラ6の撮像面6aまでの構成を簡略化して示している。
波長可変フィルタ30から赤外線カメラ6の撮像面6aまでは、テンセントリック光学系である。
図3は、撮像面6aで捉えられたハイパースペクトルフーリエ画像の一例λを示している。ハイパースペクトルフーリエ画像λでは、逆格子空間(K-Γ-M)におけるパワー分布に偏りが生じていることがわかる。
赤外領域における任意の回析パターンを得た後、それを基に分析可能な全ての波長に対し、ハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)が撮像される。
【0023】
すなわち、第2ビームスプリッタ19によって、撮像光学系5から可視光域の試料Fの様子が分光される。そして、CMOSカメラ27を接続する制御部7は、実像表示部としてのモニタ28に、フーリエ面の画像とともに試料Fの実像を映し出す。
このように、本実施形態の試料の測定装置1では、撮像光学系5で赤外光によって撮像している同じ試料Fを、観察光学系15を用いて可視光域で観察することができる。このため、XYステージ10および焦点調整機構12を用いて、試料Fと対物レンズ9との位置関係を容易に調整して、正確な測定を行うことができる。
【0024】
次に、本実施形態の試料の測定装置1の作用効果を
図4に示す模式図を用いて説明する。
本実施形態の試料の測定装置1では、まず試料Fを載置台3の上に載置する(
図1参照)。
そして、ハロゲンランプ光源14による照光を開始すると、屈折レンズ16により屈折されて、コリメートレンズ17および第1ビームスプリッタ18を通過した照射光は、対物レンズ9を介して水平に配置される載置台3へ垂直で、かつ平行なブロードバンド光として照射される。
【0025】
この際、観察光学系15(
図1参照)のCMOSカメラ27が載置台3の上に置かれた試料Fを捉えると、画像生成部8のプログラムであるサンプル位置制御ソフトウエア8fは、試料Fの位置が測定に適切な位置となるように、水平面内でX方向およびY方向の二次元の調整をXYステージ10で、また、上下方向の調整を焦点調整機構12で行うように駆動を制御する。
本実施形態の測定装置1では、実像表示部としてのモニタ28に、赤外線カメラ6で捉えたフーリエ面の画像とともに実像の試料Fを映し出すことができる。このため、XYステージ10および焦点調整機構12を用いた試料Fと対物レンズ9との位置関係の調整は、測定者の手動による調整の他、画像生成部8にプログラムされたサンプル位置制御ソフトウエア8fを用いて容易に行うことができる。
【0026】
赤外線カメラ6の前段には、波長可変フィルタ30が設けられている。波長可変フィルタ制御部40(
図1参照)に設けられた波長可変フィルタ制御ソフトウエア40fは、波長可変フィルタ30を制御する。そして、複数の波長ごとに試料Fを赤外線カメラ6が撮像できるように、透過波長を変更させながら、それぞれの波長ごとに生成されるハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)45を撮像する。
【0027】
従来のハイパースペクトルフーリエ画像λでは、逆格子空間(K-Γ-M)におけるパワー分布に偏りが生じていることまでは視認できる。しかしながら、バンドギャップ(Band gap、禁止帯、禁制帯)が存在するのか、どの位置に存在するのかまで測定者がハイパースペクトルフーリエ画像λを見て確認することは困難であった。
そこで、このようにして得られた複数のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)45を、解析部50のプログラムであるフォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fによって解析する。
本実施形態の試料の測定装置1では、ハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)を撮像しながら、直接、フォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fによって解析を行える。このため、撮影と個別に解析する場合に比して高速で処理を行える。
【0028】
特に、本実施形態の試料の測定装置1では、波長可変フィルタ30が赤外線カメラ6の前段に設けられている。波長可変フィルタ30は、撮像される反射光の波長をスイープにより変更する。このため、連続的に異なる波長のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)45が撮影される。
したがって、一度の撮影で複数の異なる波長のハイパースペクトルフーリエ画像45が充分なサンプル量(例えば、
図4に示すフーリエ画像(λ1,…)45等)となるように、多数撮影することが可能となる。そして、撮影とほぼ同時に制御部7(
図1参照)では、解析部50によって解析の演算処理が可能となり、さらに高速でフォトニックバンドギャップ画像100を生成することができる。
【0029】
図4に示すように、解析は、複数のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)を方向および波長を変えて取込むことにより行われる。そして、解析結果が二次元にプロットされてフォトニックバンドギャップ画像100に変換される。
本実施形態のフォトニックバンドギャップ画像100では、横軸に波数がまた縦軸に周波数がそれぞれ設定されている。本実施形態のフォトニックバンドギャップ画像100では、ある周波数で3本のバンド線E1,E2,E3が顕在化している。
本実施形態のフォトニックバンドギャップ画像100では、プロットされたバンド線E1,E2と、バンド線E3との中間部に空白部が存在する。測定者は、この空白部の存在によって、この部分にバンドギャップが生じていることを容易に判別できる。
【0030】
上述してきたように、本実施形態の試料の測定装置1によれば、フォトニックバンド構造を有する試料Fを載置台3の上に置くだけで、短時間でフォトニックバンド構造を示すフォトニックバンドギャップ画像100(
図4参照)を、モニタ28の画面を通じて見ることができる。
このため、従来のように試料Fや試料Fが置かれる基板を徐々に傾けて複数の測定を行う必要がなくなり、光路の角度の調整等も簡便化されて、フォトニックバンドの測定が容易にしかも高速で行えるようになった。
【0031】
また、赤外線カメラ6を用いて赤外光(約900~1700nm)を測定する。このため、試料Fの分子振動による吸収の多い帯域を用いなくてもよいため、効率良く撮影できる。
そして、制御部7に設けられた画像生成部8、波長可変フィルタ制御部40、および解析部50は、試料Fの位置合わせから、波長可変フィルタ30の透過波長を変更させて、赤外領域における任意波長の回析パターンを示すハイパースペクトルフーリエ画像λをそれぞれの波長ごとに生成(λ1,…)し、複数のハイパースペクトルフーリエ画像を方向および波長にて解析してプロットしたフォトニックバンドギャップ画像100に変換するまで、一連の処理を同時に行う。
このように、制御部7にて、撮影から生成されたハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)の解析まで行える。したがって、フォトニックバンドギャップ画像100に変換して表示するまでの時間を短縮することができる。
【0032】
さらに、本実施形態の試料の測定装置1では、画像生成部8によってフォトニックバンドギャップ画像が生成される際、フーリエ面の画像が所定の波長間隔で連続して取込まれる。
このため、さらにフォトニックバンドギャップ画像100に変換されるまでの時間を短縮することができる。
しかも、第1ビームスプリッタ18および第2ビームスプリッタ19の光軸は、XYステージ10の駆動により、照射光の光軸と一致するように容易に調整できる。このため、
図3に示すように、観察するフーリエ面の画像は、中心から六角形の各頂点に向けて広がる放射状の各線にて区切られた領域は、ほぼ均等となる。
したがって、
図1に示す解析部50では、バンドギャップの解析を行う際に、この領域の一つをさらに二等分(K-Γ-M)した範囲でフォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fを用いて高速で解析する。
【0033】
そして、本実施形態の試料の測定装置1は、対物レンズ9とともに移動する筐体13に、載置台3の試料Fに正対する対物レンズ9や、対物レンズ9を試料Fに対して、近接または離反させる焦点調整機構12等、照射光学系4または、撮像光学系5の少なくとも一部の光学機器が収容されている。
このため、基台2の上方に大半の光学機器が集約されて、測定装置1を小型化することができる。また、本実施形態の試料の測定装置1では、制御部7、モニタ28及びハロゲンランプ光源14が筐体13の外に設けられている。このため、プログラムの変更等、メンテナンスが容易におこなえる。
【0034】
また、赤外線カメラ6は、可視光を捉えることなく赤外域光(約900~1700nm)を測定することができる。しかも、
図1に示すように、赤外線カメラ6に至るまでの第1ビームスプリッタ18、第1フローライトレンズ22、光軸を鉛直上方に向ける反射鏡23、可変アパーチャ(絞り)24、第2フローライトレンズ25、第2ビームスプリッタ19等の光学機器は、筐体13の内部に収容されている。
このため、外乱光の影響が減少して、サンプルの測定精度が向上し、さらに高速でかつ、正確にフォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fによって解析することができる。
【0035】
また、筐体13内の照射光学系4の光路には、第1ビームスプリッタ18が設けられている。第1ビームスプリッタ18は、試料Fから反射された反射光を、撮像光学系5へ分光する。
このため、試料Fの直上で、側方の撮像光学系5へ反射された測定光を用いて、正確なハイパースペクトルフーリエ画像λ(
図3参照)を生成できる。
【0036】
さらに、測定装置1は、観察光学系15に、第2ビームスプリッタ19と、可視光カメラとしてのCMOSカメラ27とを設けている。
第2ビームスプリッタ19は、撮像光学系5の光路に設けられて、波長可変フィルタ30の前段で反射光を分光している。
そして、CMOSカメラ27は、第2ビームスプリッタ19から分光された可視光を撮像する。制御部7には、CMOSカメラ27で撮像された試料Fの実像が実像表示部としてのモニタ28に表示される。
このため、測定者は、モニタ28の画面を用いて、試料Fの実像と、ハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)(
図3参照)とを見比べながら、画像の中心を合わせる等の位置調整やピント合わせの作業を行える。したがって、測定の作業効率を良好なものとすることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の試料の測定装置1を用いた測定方法では、試料Fに照射した可視光のうち、赤外線領域の反射光をハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)として捉え、異なる波長の多数のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)からフォトニックバンドギャップ画像100(
図4参照)をプロットすることを特徴としている。
このため、試料Fの撮像から、プロットによるフォトニックバンドギャップ画像100(
図4参照)の描画まで円滑にかつ、迅速に処理を行える。
図4に示すフォトニックバンドギャップ画像100では、3本のバンド線E1,E2,E3が得られる。これにより、プロットされたバンド線E1,E2と、バンド線E3との中間部には、空白部が存在している。測定者は、この部分にバンドギャップが生じていることを容易に判別できる。
【0038】
本実施形態の試料Fの測定方法では、波長可変フィルタ制御ソフトウエア40fが波長可変フィルタ30の透過波長を変更させて、赤外領域における任意波長の回析パターンを示すハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)がそれぞれの波長ごとに生成される。
このため、従来のように、試料Fの角度を変えて入射ビームの入射角度を変更したり、異なる角度と強度とを多数測定する必要がなくなり、短時間でハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)の収集を行える。
【0039】
また、本実施形態の試料Fの測定方法では、フォトニックバンドギャップ解析ソフトウエア50fが複数のハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)を少なくとも方向および波長にて解析してプロットする。これにより、ハイパースペクトルフーリエ画像(λ1,…)は、フォトニックバンドギャップ画像100に変換される。
したがって、従来のように測定者が試料Fの角度等を変えながら、フォトニックバンドギャップ画像としてプロットしなければならないものと比べて、短時間でフォトニックバンドギャップ画像100の描画が終了する。
このため、二次元にプロットされたフォトニックバンドギャップ画像100を用いて、直ちにバンドギャップ等の必要な情報を得ることが可能となった。よって、効率的に測定を行い、測定結果を利用することができる。
【0040】
以上、本実施形態に係るフォトニックバンド構造を有する試料の測定装置について詳述してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0041】
例えば、本願発明の実施形態の試料の測定装置1では、照射光学系4の光路が鉛直になるように設けられている。しかしながら、特にこれに限らず、照射光学系4の光路は、鉛直軸から傾いていたり、あるいは、基台2の上面に沿って水平方向に設けられる等、どのような方向の光路となるように機器を配置してもよい。
すなわち、試料Fに十分な照射光を照射できる照射光学系4を有して、試料Fから撮像および観察に十分な反射光を得られる構成であればよく、さらに好ましくは、試料Fに照射光を垂直に照射した際の反射光を撮像できる撮像光学系5であればなおよい。
【0042】
また、本実施形態の試料の測定装置1は、主に撮像光学系5の機器を筐体13の内部に収容しているが、特にこれに限らず、例えば、筐体13の内部に制御部7及びハロゲンランプ光源14を収容し、モニタ28を支持台11の外側面等に配置してもよい。すなわち、各部材の配置が本実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 測定装置
2 基台
3 載置台
4 照射光学系
5 撮像光学系
6 赤外線カメラ
7 制御部
8 画像生成部
30 波長可変フィルタ
40 波長可変フィルタ制御部
50 解析部
F 試料