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特許7318876エステル結合で薬物が固定されたリガンドを含有する超音波造影剤を活用した超音波誘導薬物送達体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】エステル結合で薬物が固定されたリガンドを含有する超音波造影剤を活用した超音波誘導薬物送達体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20230725BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20230725BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20230725BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K47/60
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/61
A61K47/62
A61K47/68
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022513987
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2020011512
(87)【国際公開番号】W WO2022045398
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】522078417
【氏名又は名称】サムユク ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SAHMYOOK UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】815,Hwarang-ro,Nowon-gu Seoul 01795,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】322013166
【氏名又は名称】エヌ トゥー ビー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】N TO B CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】5002-ho,815,Hwarang-ro,Nowon-gu Seoul 01795,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン ファン
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/200043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/60
A61K 9/127
A61K 47/24
A61K 47/61
A61K 47/62
A61K 47/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及び、PEG化(PEGylation)されたリン脂質を含み、
前記リガンドは、両性物質であり、
前記両性物質は、疎水性アルキル及びPEG(polyethylene glycol)がエステル結合によって結合されたものであり、
前記疎水性アルキルは、鎖状の炭素数5乃至30のアルキル基であって、前記PEGは
【化1】
の(x=6乃至50)である
ことを特徴とする超音波誘導薬物送達体。
【請求項2】
前記リン脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ホスファチジルコリン(PC)及び卵黄ホスファチジルコリン(EPC)からなる群から選択されるいずれか1つ以上である
請求項1に記載の薬物送達体。
【請求項3】
前記薬物送達体は直径0.2乃至10μmのマイクロ又はナノバブル(microbubbles or nanobubbles)を形成するものである
請求項1に記載の薬物送達体。
【請求項4】
前記薬物送達体は超音波(ultrasonic wave)照射によるバブルの崩壊及びエステル結合の加水分解促進で薬物放出が加速化することを特徴とする
請求項1に記載の薬物送達体。
【請求項5】
前記薬物送達体はリガンド又はリン脂質の表面に、標的の疾患と関連して発現される収容体に特異的に結合する抗体又は抗体断片又はアプタマーである標的化剤(標的化物質)が追加的に導入されたものである
請求項1に記載の薬物送達体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の薬物送達体を含む
ことを特徴とする薬物送達用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の薬物送達用組成物をヒトを除く個体に投与するステップ;及び、
前記組成物が投与された部位に超音波を照射して薬物を放出させるステップを含む
ことを特徴とする疾患の予防又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含む超音波誘導薬物送達体;上記薬物送達体を含む薬物送達用組成物;上記組成物をヒトを除く個体に投与するステップ及び上記組成物が投与された部位に超音波を照射して薬物を放出させるステップを含む疾患の予防及び治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システム(Drug delivery system)は標的部位に薬物を選択的に送達して長時間の間有効血中濃度を疾病によって最適化することによって治療効能及び効果を極大化し、薬物副作用の極小化することを目的とする。かかる薬物送達システムの標的送達効率を上げるために、多様な標的リガンドを結合させるか、近赤外線照射によって薬物放出速度を制御するか、又は超音波によって浸透能力を向上させるなどの薬物送達の極大化を図る研究が多方面で行われており、依然として目的部位に適量の薬物放出を調節するための優れた薬物送達技術開発が求められているのが現状である。
【0003】
よって、本発明の発明者らは適量の薬物を高い効率で放出させて薬物の効果を極大化できる薬物送達システムを開発するために鋭意努力した結果、エステル結合によって薬物が結合されたリガンド(リン脂質、生体物質又は両性物質)、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含む超音波誘導薬物送達体がマイクロ/ナノバブルを形成し、超音波を照射したとき、バブルの崩壊及びエステル結合の加水分解を促進して薬物放出が加速化することを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前述した問題及びそれと関連する他の問題を解決することを目的とする。
【0005】
本発明の一つの例示的な目的は、エステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含む超音波誘導薬物送達体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の例示的な目的は、上記薬物送達体を含む、薬物送達用組成物を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の例示的な目的は、上記組成物をヒトを除く個体に投与するステップ及び上記組成物が投与された部位に超音波を照射して薬物を放出させるステップを含む疾患の予防又は治療方法を提供することにある。
【0008】
本明細書に開示された発明の技術的思想によって達成しようとする技術的課題は以上で言及した問題点を解決するための課題に限定されず、言及していない他の課題は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを具体的に説明すれば次のとおりである。なお、本出願で開示された各々の説明及び実施形態は各々の他の説明及び実施形態にも適用され得る。すなわち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、以下に述べられた具体的な叙述によって本出願の範疇が限定されると見なされるべきではない。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、エステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含む超音波誘導薬物送達体を提供する。上記リガンドはリン脂質、生体物質又は両性物質であることができ、本発明で上記エステル結合によって薬物が結合されたリガンドは製造後、リン脂質と共にマイクロ/ナノバブルの界面に選択的に付着され得る。
【0011】
本発明で用語「生体物質(biomaterial)」は器官系と相互作用する物質、表面、構造物をすべて含むものであって、本発明の生体物質はエステル結合によって薬物又は蛍光染料と結合できる化学構造、例えば、ヒドロキシ基(hydroxy group)又はカルボキシ基(carboxy group)を含み、マイクロ/ナノバブル形態の薬物送達体の形成に適した構造であり得る。具体的には、上記生体物質はタンパク質又は生体適合性高分子であることができ、例えば、上記タンパク質はゼラチン(gelatin)、コラーゲン(collagen)、フィブリン(fibrin)、グルテン(gluten)、エラスチン(elastin)又はアルブミン(bovine serum albumin(BSA)、human serum albumin(HSA))であることができ、より具体的にはアルブミンであり得るが、特にこれに限定されない。また、上記生体適合性高分子はアルギン酸(alginic acid)、ペクチン(pectin)、キチン(chitin)、カラゲニン(carrageenin)、ジェランガム(gellan gum)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、デキストラン(dextran)、poly(caprolactone)(PCL)、poly(lactic acid)(PLA)、poly(glycolic acid)(PGA)、poly(vinyl alcohol)(PVA)、poly(acrylic acid)(PAA)又はヒアルロン酸(hyaluronic acid)などであることができ、より具体的にはヒアルロン酸を意味し得るが、特にこれに限定されない。
【0012】
本発明で特にヒアルロン酸にエステル結合で連結された薬物は生理的な条件(pH7.1乃至7.4)では加水分解反応が非常に緩やかに進められて放出された薬物が効果を示すことができないが、薬物送達体の投与後、投与部位に超音波を照射した場合は物理的な刺激と上昇した高温/高圧によって加水分解反応が加速化して薬物放出速度が10-100倍以上になり目的の部位に有意な効果を示すに十分な程度に薬物を排出できる。
【0013】
本発明で用語「両性物質」は1つの物質又は化合物内に親水性(hydrophilic)部分と疎水性(hydrophobic)部分をすべて含む物質又は化合物を意味するものであって、具体的には疎水性部分であるアルキルと親水性部分であるPEG(polyethylene glycol)がエステル結合によって結合されたものであり得る。より具体的には、上記疎水性アルキルは鎖状の炭素数5乃至30のアルキル基であることができ、上記PEGは
【0014】
【化1】
【0015】
の化学式構造(x=6乃至50)であり得る。また、本発明の両性物質はエステル結合によって薬物又は蛍光染料と結合できる化学構造、例えばヒドロキシ基(hydroxy group)又はカルボキシ基(carboxy group)を有するものであって、マイクロ/ナノバブル形態の薬物送達体の形成に適した構造であり得る。
【0016】
本発明で特に両性物質にエステル結合で連結された薬物は生理的な条件(pH7.1乃至7.4)では加水分解反応が非常に緩やかに進められて放出された薬物が効果を示すことができないが、薬物送達体の投与後、投与部位に超音波を照射した場合は物理的な刺激と上昇した高温/高圧によって加水分解反応が加速化して薬物放出速度が10-100倍以上になり目的の部位に有意な効果を示すに十分な程度に薬物を排出できる。
【0017】
本発明で用語「リン脂質(phospholipid)」は生体膜の主要成分でリンを含む脂質の一種であって、グリセロールに2つの脂肪酸と1つのリン酸基が結合されている構造を有する。リン酸基に結合された有機物の種類によって種類が異なり、脂肪酸が結合された方向は疎水性を示しリン酸基が結合された方向は親水性を示す。
【0018】
具体的には、本発明で上記リン脂質はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ホスファチジルコリン(PC)及び卵黄ホスファチジルコリン(EPC)からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることができ、より具体的にはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)又はジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)であることができるが、特にこれに限定されない。
【0019】
本発明で特にリン脂質にエステル結合で連結された薬物は生理的な条件(pH7.1乃至7.4)では加水分解反応が非常に緩やかに進められて放出された薬物が効果を示すことができないが、薬物送達体の投与後、投与部位に超音波を照射した場合は物理的な刺激と上昇した高温/高圧によって加水分解反応が加速化して薬物放出速度が10-100倍以上になり目的の部位に有意な効果を示すに十分な程度に薬物を排出できる。
【0020】
本発明で用語「超音波」は周波数が20kHzを越える音波であって、本発明の目的上、マイクロ/ナノバブル薬物送達体に照射されてバブルを崩壊させ物理的な刺激と高温/高圧を発生させて薬物又は蛍光染料の放出を容易にすることができる限り特に限定されないが、例えば集束超音波を意味し得る。
【0021】
また、本発明の薬物送達体はエステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含むものであって、直径0.2乃至10μmのマイクロ又はナノバブル(microbubbles or nanobubbles)を形成することができ、上記薬物送達体に超音波を照射した場合は物理的な刺激とバブルの崩壊による高温/高圧の発生及びこれによるリガンド-薬物間のエステル結合加水分解の促進で薬物放出が加速化することを特徴とする。
【0022】
本発明で「薬物」は化合物、タンパク質医薬、ペプチド医薬、遺伝子治療用核酸分子、ナノ粒子、機能性化粧品有効性分又は美容学的に使用される有効性分をすべて含む意味であることができ、本発明の目的上、上記リガンドとエステル結合によって結合され得る限り、特にこれに限定されない。具体的には、本発明で薬物は上記薬物送達体を構成するリガンドのヒドロキシ基(hydroxy group)又はカルボキシ基(carboxy group)とエステル結合によって直接結合されるか、又は通常の技術者がリガンド及び薬物間のエステル結合を可能にする当業界の適切なリンカー(linker)化合物を導入することによって結合されるものであり得る。
【0023】
本発明の薬物が疎水性薬物の場合、リン脂質の方向による親水性/疎水性性質の差によって薬物が薬物送達体の内部にも担持されることでき、本発明の薬物送達体は大半の疎水性薬物を安定して担持して送達することが可能な特徴がある。
【0024】
より具体的には、上記薬物は、例えば、抗がん剤、抗炎症薬、鎮痛剤、抗関節炎剤、鎮痙剤、抗うつ薬、抗精神病薬、精神安定剤、抗不安薬、麻薬拮抗剤、抗パーキンソン薬、コリン性アゴニスト、血管新生阻害剤、免疫抑制剤、抗ウィルス剤、抗生剤、食欲抑制剤、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、ホルモン剤、冠状血管、脳血管又は末梢血管拡張薬、避妊薬、抗血栓薬、利尿剤、抗高血圧薬、心血管疾患治療剤、美容成分(例えば、シワ改善薬、皮膚老化抑制剤及び皮膚美白剤)などを含むが、これに限定されない。例えば、上記薬物は、ドキソルビシン(doxorubicin)、パクリタキセル(paclitaxel)、ビンクリスチン(vincristine)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ビンブラスチン(vinblastine)、アクチノマイシン-D(actinomycin-D)、ドセタキセル(docetaxel)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、ビサントレン(bisantrene)、ホモハリングトニン(homoharringtonine)、グリベック(Gleevec;STI-571)、シスプラチン(cisplatin)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、アドリアマイシン(adriamycin)、メトトレキサート(methotrexate)、ブスルファン(busulfan)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、メルファラン(melphalan)、ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard)、ニトロソウレア(nitrosourea)又はカンプトテシン(Camptothecin)などの薬物であることができるが、特にこれに限定されない。
【0025】
また、上記薬物送達体はリガンド又はリン脂質表面に標的化剤(標的化物質)を追加的に導入することができ、これによって超音波照射による薬物放出の効率をより高めることができる。本発明で上記「標的化剤」は標的に対して特異的な分子であって、特定の標的に対して特異的な抗体又は抗体断片、又はアプタマーであり得る。上記標的化剤は器官、組織、細胞をはじめとした、収容体を含む標的物に特異的に結合するように考案される。したがって、上記標的化剤が特定の疾患と関連して発現される収容体に特異的に結合して本発明の薬物送達体が標的物に特異的に結合でき、エステル結合で結合された薬物が放出されて標的物内に送達され得る。
【0026】
上記目的を達成するための本発明の他の1つの様態は上記薬物送達体を含む、薬物送達用組成物を提供する。上記用語の生体物質、両性物質、リン脂質、超音波及び薬物は前述のとおりである。
【0027】
上記目的を達成するための本発明のさらに他の一態様は、上記組成物をヒトを除く個体に投与するステップ及び上記組成物が投与された部位に超音波を照射して薬物を放出させるステップを含む疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0028】
本発明で用語「個体」は疾患の予防又は治療のために本発明の薬物送達体又は薬物送達用組成物を投与できるヒトを含む全ての動物を意味し、具体的にはヒトを含む全ての哺乳動物であり得るが、特にこれに限定されない。
【0029】
本発明で用語「投与」は上記薬物送達体又は薬物送達用組成物を適切な方法で個体に導入することを意味し、投与経路は目的部位に到達できる限り、任意の一般的な経路を通じて投与され得る。具体的には、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与され得るが、特にこれに限定されない。
【0030】
本発明で用語「疾患」は脳腫瘍を含む多様な脳疾患及び人体内の全ての悪性腫瘍(がん)を意味する場合があり、特にこれに限定されない。具体的は、上記がんは偽粘液腫、肝内胆管がん、肝芽腫、肝臓がん、甲状腺がん、結腸がん、精巣がん、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔がん、口唇がん、菌状息肉症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞がん、上皮性卵巣がん、卵巣胚細胞腫、男性乳がん、脳腫瘍、下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆のうがん、胆道がん、大腸がん、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜悪性黒色腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ファーター膨大部がん、膀胱がん、腹膜がん、副甲状腺がん、副腎がん、副鼻腔がん、非小細胞肺がん、非ホジキンリンパ腫、舌がん、星状細胞腫、小細胞肺がん、小児脳がん、小児リンパ腫、小児白血病、小腸がん、髄膜腫、食道がん、神経膠腫、神経芽細胞腫、腎盂がん、腎臓がん、心臓がん、十二指腸がん、悪性軟部腫瘍、悪性骨腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼悪性腫瘍、外陰がん、尿管がん、尿道がん、原発不明がん、胃リンパ腫、胃がん、胃カルチノイド腫瘍、消化管間質がん、ウィルムス腫瘍、乳がん、肉腫、陰茎がん、咽頭がん、妊娠性絨毛性腫瘍、子宮頚がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、前立腺がん、転移性骨がん、転移性脳がん、縦隔腫瘍、直腸がん、直腸カルチノイド腫瘍、膣がん、脊髄がん、前庭神経鞘腫、膵臓がん、唾液腺がん、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃がん、扁平上皮細胞がん、肺腺がん、肺がん、肺扁平上皮細胞がん、皮膚がん、肛門がん、横紋筋肉腫、喉頭がん、胸膜がん又は胸線がんであり得るが、特にこれに限定されない。
【発明の効果】
【0031】
本発明でエステル結合によって薬物が結合されたリガンド、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質を含む、超音波誘導薬物送達体はマイクロ/ナノバブルを形成でき、超音波を照射したとき、バブルの崩壊及びエステル結合の加水分解を促進して薬物放出が加速化し、目的の部位に高い効率で薬物を送達することを特徴とする。
【0032】
ただし、本明細書に開示された技術の一実施例による効果は以上で言及したものに限定されず、言及していない他の効果は以下の記載から通常の技術者に明確に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の各々の薬物送達体に超音波を照射した場合、高温及び高圧の発生によってリン脂質及び薬物間のエステル結合の加水分解が促進されて薬物放出が加速化する過程を示した模式図である。
図2】本発明の薬物送達体でリン脂質と薬物(paclitaxel)又はモデル薬物(Fluorescein、Cyanine 5、Rhodamine B)がエステル結合によって連結された化学構造を示した図である。
図3】本発明でエステル結合によって薬物(paclitaxel)が結合されたリン脂質の合成方法を概略的に示した図である。
図4】本発明でエステル結合によってモデル薬物(Rhodamine B)が結合されたリン脂質の合成方法を概略的に示した図である。
図5】本発明でエステル結合によって薬物(methotrexate)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)の合成方法を概略的に示した図である。
図6】本発明でエステル結合によってモデル薬物(fluorescein)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)の合成方法を概略的に示した図である。
図7】本発明の薬物送達体で生体物質(ヒアルロン酸、HA)と薬物(methotrexate、paclitaxel、doxorubicin)又はモデル薬物(rhodamine B)がエステル結合によって連結された化学構造を示した図である。
図8】本発明の薬物送達体でタンパク質(アルブミン)の3次元構造及び薬物(doxorubicin)又はモデル薬物(methotrexate)がエステル結合によって連結された構造を示した図である。
図9】Aは本発明でエステル結合によって薬物(methotrexate)が結合された生体物質(ヒアルロン酸、HA)の合成方法を概略的に示した図であって、Bは合成前/後の生体物質のNMRとUV-vis分析データである。
図10】Aは本発明でエステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質(ヒアルロン酸、HA)の合成方法を概略的に示した図であって、Bは合成前/後の生体物質のNMRとUV-vis分析データである。
図11】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(実験群、MB-ERPL)とアミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(対照群、MB-AFPL)に対する光学顕微鏡及び共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)写真を示した図である。
図12】エステル結合によってモデル薬物(fluorescein)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(実験群、MB-EFPA)とアミド結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(対照群、MB-ARPA)に対する光学顕微鏡及び共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)写真を示した図である。
図13】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体(実験群、MB-ERHA)とアミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合された生体物質及びヒアルロン酸なしでモデル薬物(Nile Red)を含む薬物送達体(対照群)に対する光学顕微鏡及び共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)写真を示した図である。
図14】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(実験群、MB-ERPL)、アミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(対照群1、MB-AFPL)、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質のみを含む薬物送達体(対照群2、MB)のマイクロバブルに基づく造影剤の大きさをDLS粒度分析器によって分析した結果を示した図である。
図15】エステル結合によってモデル薬物(fluorescein)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(実験群、MB-EFPA)とアミド結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(対照群、MB-ARPA)、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質のみを含む薬物送達体(対照群2、MB)のマイクロバブルに基づく造影剤の大きさをDLS粒度分析器によって分析した結果を示した図である。
図16】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体(実験群、MB-ERHA)、アミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合された生体物質を含む薬物送達体(対照群1、MB-AFHA)及びヒアルロン酸なしでモデル薬物(nile Red)を含む薬物送達体(対照群2、MB-NR)のマイクロバブルに基づく造影剤の大きさをDLS粒度分析器によって分析した結果を示した図である。
図17】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質(対照群、ERPL)のみが溶解された溶液とエステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質がマイクロバブルと共に製造された薬物送達体(実験群、MB-ERPL)に超音波を照射したときのモデル薬物の放出量をUV-vis分析によって比較した結果を示した図である。
図18】エステル結合によってモデル薬物(fluorescein)が結合された両性物質(対照群、EFPA)のみが溶解された溶液とエステル結合によってモデル薬物(fluorescein)が結合された両性物質がマイクロバブルと共に製造された薬物送達体(実験群、MB-EFPA)に超音波を照射したときのモデル薬物の放出量をUV-vis分析によって比較した結果を示した図である。
図19】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質(対照群、ERHA)のみが溶解された溶液とエステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質がマイクロバブルと共に製造された薬物送達体(実験群、MB-ERHA)に超音波を照射したときのモデル薬物の放出量をUV-vis分析によって比較した結果を示した図である。
図20】アガロースゲルに対してエステル結合によって薬物が結合されたリガンド(リン脂質、両性物質又は生体物質)を含む薬物送達体(実験群)とアミド結合によって薬物が結合されたリガンドを含む薬物送達体(対照群)に対して超音波を照射したときの薬物の拡散有無実験を示した模式図である。
図21】エステル結合によって薬物が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(実験群、MB-EFPA)とアミド結合によって薬物が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(対照群、MB-EMPA)に対して超音波を照射したときの薬物の拡散程度を共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)で確認した結果を示した図である。
図22】エステル結合によって薬物が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体(実験群)とアミド結合によって薬物が結合された生体物質を含む薬物送達体(対照群)に対して超音波を照射したときの薬物の拡散程度を共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)で確認した結果を示した図である。
図23】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質とモデル薬物のin-vitro生体毒性試験の結果を示した図である。
図24】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(実験群、MB-ERPL)とアミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(対照群、MB-AFPL)の超音波照射有無によるin-vitro細胞吸収を比較した結果を示した図である。
図25】エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質を含む薬物送達体(実験群、MB-ERHA)とアミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合された生体物質を含む薬物送達体(対照群、MB-AFHA)の超音波照射有無によるin-vitro細胞吸収を比較した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例
【0035】
実施例1:マイクロバブル薬物送達体製造
【0036】
1-1:エステル結合によってモデル薬物が結合されたリン脂質を含む薬物送達体の製造
【0037】
PEGが結合されたリン脂質DSPE-PEG(2000)1-10mgとリン脂質(DSPC)5-30mgの適切な比率の混合物とエステル結合で薬物が結合されたリン脂質1-10mgを30mLバイアルに入ったクロロホルム(chloroform)2-5mLに分散及び溶解させる。混合された溶液が入ったバイアルを回転濃縮機を活用して有機溶媒を除去して不透明なリン脂質フィルムがコーティングされたバイアルを作る。フィルムがコーティングされたバイアルに塩化ナトリウム(0.9%)水溶液3-5mLと液相気体(2H,3H-Decafluoropentane)1mLを入れてtip sonicatorを活用して超音波を0.5-2分間当ててマイクロバブル薬物送達体を製造する。製造された水溶液を徐々に冷却させた後、残存物が残っている上層部の溶液を除去して沈殿されたマイクロバブル薬物送達体を回収する。このように製造されたマイクロバブル溶液はNTA、DLS、Confocal、SEMによって確認する。
【0038】
その結果、エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(実験群、MB-ERPL)の場合は直径1-3μmのマイクロバブルを形成し、負電荷を有するDSPE-PEG(2000)によって表面電荷は負の値(-20.1mV)を示した。
【0039】
また、アミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合されたリン脂質を含む薬物送達体(対照群、MB-AFPL)の場合は1-3μmを有するマイクロバブルを形成し、同様に負電荷を有するDSPE-PEG(2000)によって表面電荷は約-20.4mVを示した。
【0040】
なお、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質のみを含むマイクロバブル(MB)の場合は1-5μm直径のマイクロバブルを形成し、表面電荷は相対的に小さい約-23mVを示した。
【0041】
1-2:エステル結合によってモデル薬物が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体の製造
【0042】
PEGが結合されたリン脂質DSPE-PEG(2000)1-10mgとリン脂質(DSPC)5-30mgの適切な比率の混合物とエステル結合で薬物が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)1-10mgを30mLバイアルに入ったクロロホルム(chloroform)2-5mLに分散及び溶解させる。混合された溶液が入ったバイアルを回転濃縮機を活用して有機溶媒を除去して不透明なリン脂質フィルムがコーティングされたバイアルを作る。フィルムがコーティングされたバイアルに塩化ナトリウム(0.9%)水溶液3-5mLと液相気体(2H,3H-Decafluoropentane)1mLを入れてtip sonicatorを活用して超音波を0.5-2分間当ててマイクロバブル薬物送達体を製造する。製造された水溶液を徐々に冷却させた後、残存物が残っている上層部の溶液を除去して沈殿されたマイクロバブル薬物送達体を回収する。このように製造されたマイクロバブル溶液はNTA、DLS、Confocal、SEMによって確認する。
【0043】
その結果、エステル結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(実験群、MB-EFPA)の場合は直径1-3μmのマイクロバブルを形成し両性物質(緑色)は選択的にバブルの表面に構成されたことを確認し、負電荷を有するDSPE-PEG(2000)によって表面電荷は負の値(-19.8mV)を示した。
【0044】
また、アミド結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体(対照群、MB-ARPA)の場合は1-3μmを有するマイクロバブルを形成し両性物質(赤色)は選択的にバブルの表面に構成されたことを確認し、同様に負電荷を有するDSPE-PEG(2000)によって表面電荷は約-19.5mVを示した。
【0045】
なお、リン脂質及びPEG化(PEGylation)されたリン脂質のみを含むマイクロバブル(MB)の場合は1-5μm直径のマイクロバブルを形成し、表面電荷は相対的に小さい約-23mVを示した。
【0046】
1-3:エステル結合によってモデル薬物が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体の製造
【0047】
PEGが結合されたリン脂質DSPE-PEG(2000)1-10mgとリン脂質(DSPC)5-30mgの適切な比率の混合物を30mLバイアルに入ったクロロホルム(chloroform)2-5mLに分散及び溶解させる。エステル結合で薬物が結合された生体物質(ヒアルロン酸、HA)1-10μgを40%エタノール水溶液1-3mLに分散及び溶解させた後、製造されたリン脂質溶液に混合する。混合された溶液が入ったバイアルを回転濃縮機を活用して有機溶媒及び水を除去して不透明なリン脂質フィルムがコーティングされたバイアルを作る。フィルムがコーティングされたバイアルに塩化ナトリウム(0.9%)水溶液3-5mLと液相気体(2H,3H-Decafluoropentane)1mLを入れてtip sonicatorを活用して超音波を0.5-2分間当ててマイクロバブル薬物送達体を製造する。製造された水溶液を徐々に冷却させた後、残存物が残っている上層部の溶液を除去して沈殿されたマイクロバブル薬物送達体を回収する。このように製造されたマイクロバブル溶液はNTA、DLS、Confocal、SEMによって確認する。
【0048】
その結果、エステル結合によってモデル薬物(rhodamine B)が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体(実験群、MB-ERHA)の場合は直径1-3μmのマイクロバブルを形成し負電荷を有するヒアルロン酸(HA-RhB、赤色)は選択的にバブルの表面に構成されたことを確認し、負電荷を有するDSPE-PEG(2000)とヒアルロン酸によって表面電荷は負の値(-28mV)を示した。
【0049】
また、アミド結合によってモデル薬物(Fluorescein)が結合された生体物質を含む薬物送達体(対照群、MB-AFHA)の場合は1-3μmを有するマイクロバブルを形成し負電荷を有するヒアルロン酸(HA-Fluorescine、緑色)は選択的にバブルの表面に構成されたことを確認し、同様に負電荷を有するDSPE-PEG(2000)とヒアルロン酸によって表面電荷は約-29mVを示した。
【0050】
なお、ヒアルロン酸なしで蛍光染料(nile Red)が添加されたマイクロバブルの場合は1-5μm直径のマイクロバブルを形成し疎水性のnile Redの存在によってバブルの均一度が低下したことを確認した。また、リング(ring)の形状に見えるバブルはnile Redがバブルの表面にのみ存在するが、nile Redが液相気体に溶解され得るので大半が球形状に観察され、DSPE-PEGが負電荷を帯びるため表面電荷は負の値を有するが、ヒアルロン酸がないため相対的に小さい約-23mVを示した。
【0051】
実施例2:造影剤を活用したマイクロバブル薬物送達体の製造
【0052】
塩化ナトリウム(0.9%)水溶液5mLにエステル結合で薬物が結合されたリン脂質、両性物質(疎水性アルキル-PEG)又は生体物質(ヒアルロン酸、HA)1-10mgを溶解する。薬物が溶解された塩化ナトリウム溶液を注射器に込めてSonoVueパウダーが入った容器にゴム栓を通して注入した後、ボルテックスミキサーを活用して20秒以上激しく攪拌して混ぜる(SonoVueパウダー:Sulphur hexafluoride、Macrogol 4000、Distearoylphosphatidylcholine、Dipalmitoylphosphatidylglycerol Sodium、Palmitic acid)。
【0053】
実施例3:超音波照射による薬物放出実験
【0054】
2つの透析膜(dialysis membrane)袋内にPBSに分散されている実験群(エステル結合によって赤色モデル薬物が結合されたリン脂質、両性物質又は生体物質を含む薬物送達体)と対照群(マイクロバブルなしで分散されたリン脂質、両性物質又は生体物質)溶液をそれぞれ担持した。各々の物質が担持された透析膜袋をPBS溶液が入ったビーカーに入れた後、超音波を照射した。実験群は10、30又は60秒を照射した後、ビーカー内の放出された薬物の濃度を分析し、対照群は60秒を十分に照射した後、放出された薬物の濃度を分析した。
【0055】
3-1:エステル結合によってモデル薬物が結合されたリン脂質を含む薬物送達体
【0056】
その結果、マイクロバブルがない対照群は超音波照射によって少量の薬物が放出されたが、マイクロバブルと共に製造された実験群は対照群に比べて3倍以上の薬物放出が確認された(図17)。
【0057】
3-2:エステル結合によってモデル薬物が結合された両性物質(疎水性アルキル-PEG)を含む薬物送達体
【0058】
マイクロバブルがない対照群は超音波照射によって少量の薬物が放出されたが、マイクロバブルと共に製造された実験群は対照群に比べて5倍以上の薬物放出が確認された(図18)。
【0059】
3-3:エステル結合によってモデル薬物が結合された生体物質(ヒアルロン酸)を含む薬物送達体
【0060】
マイクロバブルがない対照群は超音波照射によって少量の薬物が放出されたが、マイクロバブルと共に製造された実験群は対照群に比べて10倍以上の薬物放出が確認され、このような放出速度は超音波照射時間に依存することを観測した(図19)。
【0061】
実施例4:超音波照射による薬物拡散実験
【0062】
親水性アガロースゲルで構成されたチャンネル内にPBSに分散されている実験群(エステル結合によってモデル薬物が結合された両性物質又は生体物質を含む薬物送達体)と対照群(アミド結合によってモデル薬物が結合された両性物質又は生体物質を含む薬物送達体)溶液を注入した。その後、溶液が注入されたチャンネル上に超音波を照射してマイクロバブルを崩壊させ、それによる各々のモデル薬物の親水性アガロースゲルへの拡散有無及び程度を確認した。
【0063】
4-1:エステル結合によってモデル薬物が結合された両性物質を含む薬物送達体
【0064】
その結果、超音波照射による物理的な刺激とマイクロバブルの崩壊によって発生した局所的な高温/高圧によって薬物送達体内のエステル結合の加水分解反応が加速化して実験群では結合されていた緑色モデル薬物(fluorescein)が速やかに放出され、放出されたモデル薬物が親水性のアガロースゲル内に浸透して分散されることを共焦点分析器で確認した。
【0065】
それに対して、対照群でアミド結合で固定された赤色モデル薬物(rhodamine B)の場合、超音波照射による高温/高圧にもアミド結合がほぼ分解されないので薬物を放出できず両性物質(疎水性アルキル-PEG)に付着されて巨大分子に維持され、よって、親水性のアガロースゲル内への浸透性が弱いことを確認した(図21)。
【0066】
4-2:エステル結合によってモデル薬物が結合された生体物質を含む薬物送達体
【0067】
超音波照射による物理的な刺激とマイクロバブルの崩壊によって発生した局所的な高温/高圧によって薬物送達体内のエステル結合の加水分解反応が加速化して実験群では結合されていた赤色モデル薬物(rhobmine B)が速やかに放出され、放出されたモデル薬物が親水性のアガロースゲル内へ浸透して分散されることを共焦点分析器で確認した。
【0068】
それに対して、対照群でアミド結合で固定された緑色モデル薬物(Fluorescein)の場合、超音波照射による高温/高圧にもアミド結合がほぼ分解されないので薬物を放出できず生体物質(ヒアルロン酸)に付着されて巨大分子に維持され、よって、親水性のアガロースゲル内への浸透性が弱いことを確認した(図22)。
【0069】
実施例5:In-vitro細胞実験
【0070】
5-1:エステル結合によってモデル薬物(rhobmine B)が結合された生体物質に対する細胞毒性試験
【0071】
エステル結合によってモデル薬物(rhobmine B)が結合された生体物質(HA-RhB)とモデル薬物をU-251 MG細胞に添加して最終濃度を1nM、0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μMにそれぞれ合わせた後、24時間の間細胞を培養した。その後、細胞培養液とテトラゾリウム塩誘導体で構成された溶液を添加して細胞の生存率を測定して各物質のin-vitro細胞毒性を確認した。その結果、free rhobmine Bの場合、低い濃度では毒性がほぼ観測されなかったが、1μM以上の濃度では毒性が観察できた。それに対して、エステル結合によってモデル薬物が結合された生体物質(HA-RhB)は遥かに高濃度である100μMから毒性が観察できた。これは生体適合性に優れたヒアルロン酸プラットフォームの特性によって製造された薬物送達体の優れた生体適合性を示したものである(図23)。
【0072】
5-2:超音波照射による細胞内吸収程度の分析
【0073】
実験群(エステル結合によって赤色モデル薬物(rhobmine B)が結合されたリン脂質又は生体物質を含む薬物送達体)と対照群(アミド結合によって緑色モデル薬物(Fluorescein)が結合されたリン脂質又は生体物質を含む薬物送達体)溶液を使用して超音波照射の有無によるin-vitro細胞内吸収程度を分析した。実験群と対照群はU-251 MG細胞に共に添加され、細胞に吸収されなかった物質の除去のために観察前に細胞培養液を新しく入れ替えて共焦点顕微鏡で観察した。
【0074】
5-2-1:エステル結合によって赤色モデル薬物が結合されたリン脂質を含む薬物送達体
【0075】
その結果、超音波を照射する前は実験群と対照群はいずれも遅い細胞吸収を示すため、赤色と緑色の蛍光色がほぼ現れなかったが、超音波照射による物理的な刺激とマイクロバブルの崩壊によって発生した局所的な高温/高圧によって実験群薬物送達体内ではエステル結合の加水分解反応が加速化して結合されていた赤色モデル薬物(rhobmine B)が速やかに放出されて細胞に吸収されることを共焦点分析器で確認した。
【0076】
それに対して、対照群でアミド結合で固定された緑色モデル薬物(Fluorescein)の場合、超音波照射によるバブル崩壊による高温/高圧にもアミド結合がほぼ分解されないので薬物を放出できずリン脂質に付着されて巨大分子に維持され、よって、細胞吸収が依然として徐々に進行することを共焦点分析器で確認した(図24)。
【0077】
5-2-2:エステル結合によって赤色モデル薬物が結合された生体物質を含む薬物送達体
【0078】
超音波を照射する前は高分子ヒアルロン酸マイクロバブルプラットフォームによって実験群と対照群はいずれも遅い細胞吸収を示すため、赤色と緑色の蛍光色がほぼ現れなかったが、超音波照射による物理的な刺激とマイクロバブルの崩壊によって発生した局所的な高温/高圧によって実験群薬物送達体内ではエステル結合の加水分解反応が加速化して結合されていた赤色モデル薬物(rhobmine B)が速やかに放出されて細胞に吸収されることを共焦点分析器で確認した。
【0079】
それに対して、対照群でアミド結合で固定された緑色モデル薬物(Fluorescein)の場合、超音波照射によるバブル崩壊による高温/高圧にもアミド結合がほぼ分解されないので薬物を放出できず生体物質(ヒアルロン酸)に付着されて巨大分子に維持され、よって、細胞吸収が依然として徐々に進行することを共焦点分析器で確認した(図25)。
図1
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