IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティー オブ ハワイの特許一覧 ▶ グッドマン テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ナノフォレストの連続生産
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/15 20060101AFI20230725BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B32B37/15
B01J19/12 Z
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2023501441
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 US2021041188
(87)【国際公開番号】W WO2022011320
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/049,885
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517325098
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ハワイ
(73)【特許権者】
【識別番号】522300123
【氏名又は名称】グッドマン テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガハセミ-ネジャード,モハマド,ナギ
(72)【発明者】
【氏名】グダパティ,ヴァムシ エム.
(72)【発明者】
【氏名】タエブ,ポーリア
(72)【発明者】
【氏名】ミネイ,ブレンデン エム.
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン,ウィリアム,エー.
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517531(JP,A)
【文献】特表2009-537339(JP,A)
【文献】特表2013-541125(JP,A)
【文献】特開2010-285344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0018012(US,A1)
【文献】米国特許第04561602(US,A)
【文献】特開昭49-071254(JP,A)
【文献】特表2008-531456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノフォレストの連続生産方法であって、
送りロールから第1の炉に可撓性基材を巻き出すステップと、
前記基材が前記第1の炉内の第1の成長ゾーンを通過する際に、前記基材の表面上に第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤを含む第1のナノフォレストを成長させるステップであって、前記第1のナノチューブ又は前記第1のナノワイヤが前記基材の表面に対して略垂直に配向される、ステップと、
第1の冷却ゾーン内で前記第1のナノフォレストを冷却するステップと、
前記第1のナノチューブ又は前記第1のナノワイヤを含む折り畳み層を形成するナノフォレストを、ローラを介して巻き取るステップであって、前記折り畳み層において、前記第1のナノチューブ又は前記第1のナノワイヤが前記基材の表面に対して略平行に配向されるステップと、
第2の成長ゾーンを通過する際に、前記折り畳み層上に第2のナノチューブ又は第2のナノワイヤを含む第2のナノフォレストを成長させるステップであって、前記第2のナノチューブ又は前記第2のナノワイヤが前記基材の表面に対して略垂直に配向される、ステップと、
前記第2のナノフォレストを第2の冷却ゾーン内で冷却するステップと、
前記第1のナノフォレスト及び前記第2のナノフォレストを含む前記基材を第1の巻取りロールに巻き取るステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記第1のナノチューブ又は前記第1のナノワイヤが、炭素、BN、Si、CuO、又はZnOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可撓性基材の張力を維持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の平行な基材上で同時に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の平行な基材が互いに対して垂直又は水平に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の冷却ステップと、前記ナノフォレストをローラを介して巻き取るステップとの間に、
前記第1のナノフォレストを含む前記基材を、第2の巻取りロール上に巻き取るステップと、
前記第2の巻取りロールから前記第1のナノフォレストを含む前記基材を巻き出すステップと
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の成長ゾーンが第2の炉に配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のナノフォレストを含む前記基材を、第2の巻取りロール上に巻き取る前記工程中に前記第1のナノフォレストを含む前記基材の隣接する層の間に第1のセパレータを挿入するステップと、
前記第2の巻取りロールから前記第1のナノフォレストを含む前記基材を巻き出す前記工程中に前記第1のセパレータを除去するステップと、
前記第1のナノフォレスト及び前記第2のナノフォレストを含む前記基材を、第1の巻取りロール上に巻き取る前記工程中に、前記第1のナノフォレスト及び前記第2のナノフォレストを含む前記基材の隣接する層の間に第2のセパレータを挿入するステップと
を更に含む、請求項6の方法。
【請求項9】
巻出し速度、巻取り速度、基材張力、前駆体流量、キャリアガス流量、炉温度、及び予熱器温度からなる群から選択される1つ又は複数のパラメータを制御するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記成長工程中に前記第1のナノフォレストの厚さを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の炉が運転中は密閉されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記送りロールの基材がなくなった場合、
前記送りロールを収容する筐体と前記炉との間のエアロックを閉じるステップと、
新しい送りロールを装填するステップと、
前記送りロール上の基材と前記新しい送りロール上の基材とを接合するステップと、
前記筐体をパージするステップと、
前記エアロックを開くステップと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の巻取りロールが満杯である場合、
前記第1の巻取りロールを収容する筐体と前記第1の炉との間のエアロックを閉じるステップと、
前記第1の巻取りロールを取り外すステップと、
新しい空の巻取りロールを前記第1の巻取りロールの代わりに装填するステップと、
前記筐体をパージするステップと、
前記エアロックを開くステップと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が繊維、織物、又は可撓性金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記成長工程が前記基材の両面上に前記ナノフォレストを成長させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノフォレストを前記基材から分離するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ナノフォレストを連続生産するシステムであって、
キャリアガス供給部と、
前駆体供給部と、
予熱器と、
第1の成長ゾーンを備えた炉と、
ステッピングモータと、
前記炉に可撓性基材を供給する送りロールと、
前記第1の成長ゾーンを通過する前記基材上に前駆体を堆積させるための第1のシャワーヘッドと、
第1の冷却ゾーンと、
前記第1の成長ゾーン内で成長したナノフォレストを、前記基材に対して略垂直に配向された状態から、前記基材に対して略平行に配向された状態に折り畳むための1対のローラと、
第2の成長ゾーンと、
前記第2の成長ゾーンに前駆体を注入するための第2のシャワーヘッドと、
第2の冷却ゾーンと
ナノフォレスト被覆基材を受け取るための巻取りロールと
を備える、システム。
【請求項18】
前記ナノフォレスト被覆基材の隣接する層の間にセパレータを挿入するためのセパレータロールを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記セパレータがポリイミドフィルムを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記ナノフォレストがナノチューブ又はナノワイヤを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記ナノチューブ又は前記ナノワイヤが、炭素、BN、Si、CuO、又はZnOを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記可撓性基材の張力を維持するためのテンショナーを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
第2の基材上に前記基材と平行にナノフォレストを同時に成長させるための追加の送りロール及び追加の巻取りロールを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
複数のセンサと、複数のアクチュエータと、巻出し速度、巻取り速度、基材張力、前駆体流量、キャリアガス流量、炉温度、予熱器温度、ナノフォレスト密度、及びナノフォレスト厚さからなる群から選択される1つ又は複数のパラメータのフィードバック制御を行うためのコントローラとを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項25】
前記炉が運転中は密閉されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
前記送りローラ用の気密な第1のハウジングと、
前記第1のハウジングと前記炉との間の第1のエアロックと、
前記巻取りローラ用の気密な第2のハウジングと、
前記第2のハウジングと前記炉との間の第2のエアロックと
を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1のハウジング及び前記第2のハウジングが少なくとも部分的に透明材料を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記炉が化学気相成長(CVD)炉である、請求項17に記載のシステム。
【請求項29】
前記炉が石英、サファイア、又はホウケイ酸塩製の覗き窓を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項30】
前記基材が繊維、織物、又は可撓性金属を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項31】
前記基材の両面上にナノフォレストを成長させるように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項32】
前記第2の成長ゾーンが前記第1の炉に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記第1のセパレータ及び/又は前記第2のセパレータがポリイミドフィルムを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の炉が運転中に密閉され、前記第2の巻取りロールが満杯である場合、
前記第2の巻取りロールを収容する筐体と前記第1の炉との間のエアロックを閉じるステップと、
前記第2の巻取りロールを取り外すステップと、
新しい空の巻取りロールを前記第2の巻取りロールの代わりに装填するステップと、
前記筐体をパージするステップと、
前記エアロックを開くステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の成長ゾーンが前記第1の炉内又は第2の炉内にある、請求項17に記載のシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月9日に出願された米国仮特許出願第63/049,885号、発明の名称「Large Scale Continuous Production of Nanoforests(ナノフォレストの大規模連続生産)」の出願の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブナノフォレストの大量生産に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明は、いくつかの刊行物及び参考文献を参照することができることに留意されたい。
【0004】
本明細書におけるこのような刊行物の議論は、科学的原理のより完全な背景のために行われ、このような刊行物が特許性の決定のための先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0005】
カーボンナノチューブ(CNT)の優れた特性は、構造配置、格子構造の完全性、キラリティー、直径、長さ、純度などの様々なパラメータに強く依存する。これらの発見以来、多くの合成手法が導入され、そのうちのいくつかは効率的な成長法として広く利用されている。カーボンナノチューブは、通常、アーク放電、レーザアブレーション、化学気相成長(CVD)の3つの主要な手法によって合成されるが、これら技術のそれぞれは異なる成長パラメータと条件が必要である。CNTの成長メカニズムは研究者にはよく知られておらず、様々な成長理論が示唆されている。一般に、CNTの成長には、炭素源、触媒粒子、及びCNTが成長することができる特定の大気条件の3つが最も重要な要素である。CNTの実際の成長メカニズムは全ての手法で略同じであり、最も一般的な理論は、金属触媒粒子が基材上で浮遊している(弱い相互作用)か、又は支持されている(強い相互作用)かのいずれかであることを示唆している。例えば、前駆体(即ち、炭素源)と触媒を液体の形で混合し、これを適切な大気条件が存在する反応領域に導入すると(液体注入法)、最初に、重い金属粒子が堆積/沈殿し、次いで分解された反応性原子状炭素が金属触媒粒子に拡散又は溶解する。過飽和状態になると、それらは、最初に、フラーレンドームを形成し、次いで炭素円柱内に延びてCNTを生成することが多い。
【0006】
化学気相成長(CVD)手法は、CNTを製造する非常に簡単で経済的な方法の1つである。一般に、炭化水素と金属触媒粒子(気相内)との混合物(例えば、Ar又はArとHの混合物)は、不活性ガス流を介して、基材を含む石英管炉内に導入される。触媒粒子の存在下で炭化水素源を十分に高い温度(炭化水素源のタイプにより600~1200℃)で熱分解し、基材表面に堆積させた触媒粒子上にCNTを成長させる。
【0007】
CVD合成手法は、炭素源として様々な炭化水素(例えば、CO、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、エチレン、ベンゼン、アセチレン、メタン、エタノール、カンファー及びナフタレン)及び気体、液体又は固体の形態の触媒(例えば、Fe、Ni、Co、Moなどの遷移金属、及びそれらの合金)に対応して、様々なタイプの基材(例えば、ガラス、Si、SiO、石英、SiC、マイカ、アルミナ)上にCNTを成長させることができる。それはまた、CNTが、主な成長パラメータ(即ち、炭化水素、触媒、及び温度)に応じて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT)、及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などの様々な構造的配置で、及び様々な形態(例えば、粉末、薄膜又は厚膜、直線状又はコイル状、配向した膜又は絡み合った膜)で成長することも可能にする。一般に、CVDの方が成長パラメータの制御がしやすい。基材の形態及びテクスチャ特性は、合成されたCNTの収率及び品質に大きく影響する。触媒粒径が成長したCNTの直径を決定することが実証されている。SWCNTの成長には、一般的に、約2nm未満の寸法を有する触媒粒子を使用する必要があり、DWCNTの成長には、一般的に、約4nmの寸法を有する触媒粒子を使用する必要があるが、より大きな触媒粒子を使用すると、一般的に、MWCNT形成につながる。図1は、CVD処理の前に触媒粒子が基材の表面に堆積される単純なCVDシステムの概略図を示す。
【0008】
SWCNTの高品質の成長は、触媒として金属銅粒子(CVD処理の前に700℃で空気中で焼成)を使用して達成されており、これは通常、SWCNTの成長における汚染物質と考えられていた。非強磁性触媒としてのCuは、SWCNT成長に対して高い触媒活性を有し、これはFe又は他の遷移金属の非存在下でのSWCNTの磁気特性の研究に大いに役立つことができる。高度に活性化された貴金属超薄(即ち、直径約3nm以下)ナノ粒子(例えば、Au、Ag、Pt及びPd)を触媒として使用したSWCNTのCVD成長が実証されている。触媒粒子を活性化するために、大気加熱とCVD処理との間に空気に曝さずに、CVD処理の開始直前に空気中で800℃で熱処理(大気加熱)した。SWCNTのランダムなネットワークと水平に配向したアレイの成長が観察された。更に、CVD処理における触媒粒子の触媒活性寿命を向上させ、不純物のないSWCNTをより効率的に合成するために、成長温度でナノチューブを損傷することなく触媒粒子の表面から非晶質炭素を選択的に除去する弱い酸化剤として、ごく少量の水蒸気を制御して使用することができる。水アシストCVDの結果として、高さ2.5mmまでの超高密度で垂直に配向したSWCNTフォレストの大量の成長が観察され(約10分のCVD処理による)、SWCNTを触媒粒子から容易に分離して高純度CNTを得ることができる(即ち、99.98%超)。水刺激成長により、他のCVD成長システムでもMWCNTの合成効率を高めることができることが示唆された。
【0009】
CNTは、その優れた材料特性のために、有効な補強材料として使用される最良の候補の1つである。炭化ケイ素(SiC)繊維やクロス上に、カーボンナノチューブをナノブラシやナノフォレストのように垂直方向(厚さ方向)に成長させる最新の手法を用いて3D多機能階層型ナノ複合材を製造した。このナノフォレスト層を使用して、優れた厚さ方向特性を有する真に3D積層ナノ複合材を作製した。更に、ナノ複合材は、機械的特性の向上だけでなく、熱膨張係数、導電率、熱伝導率、及び構造減衰の操作及び制御などの多機能性を有する。3D積層ナノ複合材の、破壊靱性GIC、GIIC、曲げ弾性率、曲げ強度、曲げ靱性、減衰、熱膨張係数、厚さ方向の熱伝導率、及び厚さ方向の電気伝導率などの材料特性は、それぞれ、約348%、54%、5%、140%、424%、514%、-62%、51%、及び10E+6向上できる。これらの結果は、繊維クロスの上に放射状に配向したCNT補強材を追加することで、積層複合材の厚さ方向の材料特性及び多機能性を改善するためのソリューション案の有効性を示している。CNTは、ガラス、ケブラー、及び炭素などの一般的に使用される繊維構造上で直接成長することも示された。CNTが繊維及び繊維クロス上で成長すると、複合材製造のための従来の湿式レイアップ手法で使用されるのと同じマトリックス含浸、レイアップ積層、及び硬化の手順を使用して、優れた厚さ方向特性及び多機能性を有する3D階層型ナノ複合材を開発することができる。カーボンナノチューブは、複合材及び階層型ナノ複合材において補強材として使用されるあらゆるタイプの繊維上で成長するという傾向はない。CNT成長の主な基準は、基材がその上に又はその一部として酸化物層を有することである。したがって、CNTは、SiC繊維内のSi-O-C化学によってSiC繊維上で容易に成長する。酸化物が存在しない繊維の場合、プレセラミックポリマーを使用してSiCを薄くコーティングし、次いで適切な厚さと手法で熱分解すると、CNTを成長させることができる。この手法は、酸化物層が本質的に存在しない繊維、即ち、炭素繊維、ケブラー繊維、及びガラス繊維において有効である。
【0010】
図2に示すように、横方向ナノフォレスト技術(TNT)又は「ナノフォレストI」(NF I)では、CNTフォレストが繊維又は織物プライの表面に成長し、隣接するプライはVelcro(登録商標)のように互いに絡まり合うことができる。図3にその顕微鏡写真を示すNF Iは、垂直配向CNTナノフォレスト(VA CNT NF)の一例である。NF Iは、積層体の横方向に補強されたプライ間の弱く、かつマトリックスに富む部分を埋める。これにより、層間破壊靭性、硬度、層間剥離耐性、面内及び面外機械特性、減衰、熱弾性挙動、熱及び電気伝導性などが飛躍的に向上した3Dナノ複合材が得られ、多機能な構造体となる。VA CNT NF用NF I技術が数ミリメートルの長さを有するナノチューブに対応していることは、注目に値する。この長さは、図2に示すように、積層体のプライ間の距離に及ぶのに十分な長さである。しかしながら、この長さは、NF I技術を使用して最良の結果を得るために最適化する必要がある。
【0011】
液体ベース(フェロセンとキシレン)のCVDアプローチを採用し、多層CNT(MWCNT)を繊維表面に対して垂直方向に成長させ、図2Aの工程1を完了し、NF Iを確立した。工程2では、ナノフォレストされた織物をプリプレグにしたり、湿式レイアップで直接使用することができる。工程3では、圧力と温度(金型、オートクレーブなど)を用いて、複合積層体を強化する。面外横特性の改善に加えて、面内特性も物理的及び構造的に両方で改善されるが、その程度は横特性よりも低いことに留意すべきである。横減衰係数、曲げ弾性率、曲げ強度、及び曲げ靭性は、それぞれ約615%、105%、140%、及び525%向上した。破壊靱性並びに熱伝導率及び電気伝導率が大幅に向上し、熱膨張係数(CTE)も減少した。プレセラミックポリマーを用いて、NF Iと非常に低い添加量のナノ材料で連続繊維セラミック複合材(CFCC)を作製したところ、曲げ強度(約40%)、曲げ靭性(約60%)、及び弾性率(約20%)が大幅に向上した。NF Iは、ナノチューブからマイクロファイバー、マクロ複合材に至るまで、階層的な多機能ナノ複合材を生成し、様々な分野で特性を向上させる。
【0012】
CNTベースのナノフォレストII(NF II)、又はプリプレグ&湿式レイアップ技術としてのナノテープ、新しいクラスのナノ補強材は、マノア(Manoa)のハワイ大学ハワイアンナノテクノロジー研究所(HNL)で開発され、図4Aに示されている。これを利用して、補強(強化及びより強固に)した。a)樹脂(熱硬化性、熱可塑性、プレセラミックポリマーなど、あらゆる種類のポリマー)の性能より高い性能を有するナノ複合材を製造するための樹脂、b)図4Bに示すように、通常の連続繊維複合材(炭素、ガラス、ケブラー、スペクトラ、炭化ケイ素、アルミナなどの任意のタイプの繊維材料又はそれらのハイブリッド/組合せ)内、及び湿式レイアップ又はプリプレグベースのポリマー(熱硬化性、熱可塑性、又はプレセラミックポリマーなど、任意のタイプのポリマー)のいずれかのための、その任意の種類の繊維構造(一方向性、2D織物、3D三軸/編組など、又は任意の組合せ)にそれを挟み込むことによる複合材システムで、高性能な階層型(ナノテープから超極細繊維、マクロ複合材までボトムアップで製造するため)、多機能型(多くの異なる特性を改善するため)ナノ複合材を製造する、c)2つの被着体を接合するための接着剤内、d)局所的に補強して、強化及びより強固にするために、接合部や切り抜き部(孔など)、及び複合材用に機械的締結具が必要な場所やその周囲で応力集中する領域を局所的に補強して、強化及びより強固にする。
【0013】
配向ナノテープ(NF II)技術は、室温硬化、オートクレーブ硬化、圧縮成形、樹脂トランスファー成形(RTM)、開放型又は閉鎖型真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、反応射出成形(RIM)、構造反応射出成形(SRIM)、弾性リザーバ成形(ERM)、シート成形コンパウンド(SMC)、手動又は自動の湿式レイアップ又はプリプレグロールラッピング、共硬化サンドイッチ構造、引抜き成形、手動又は自動の湿式レイアップ又はプリプレグのテープ積層、インサイチュ(オンライン強化)熱可塑性複合材テープ積層、インサイチュ(オンライン強化)熱可塑性複合材テープ積層によるフィラメント巻き、ダイヤフラム成形、合わせ型成形、液圧成形、熱成形などであっても、平面、曲面、輪郭、多曲面など、任意の幾何学的形状についても、ポリマー複合材製造手法の大部分に適用可能である。これは、局所的(即ち、特性を局所的に改善する必要がある特定の領域周辺)に適用することも、全体的(即ち、構造全体、構造内のどこでも特性を改善する必要がある)に適用することもできる。
【0014】
NF IIを含む構造の特性改善は、物理的、化学的、機械の静的(強度、剛性、歪み、靱性など)、機械の動的(疲労、衝撃、減衰など)、電気的、熱的など、様々な分野で可能である。これらの特性改善は、繊維の配向及び開発されたナノテープNF IIに応じて、等方性も異方性もあり得る。更に、用途に応じて、表面上及び/又は複合材内での開発されたナノテープNF IIの被覆は、部分被覆(即ち、局所的に)又は完全被覆(即ち、全体的に)であり得る。更に、用途に応じて、ある材料特性が必要とされる/所望される場合、ナノテープNF IIの一部を金属(例えば、アルミニウム箔)やポリマー(熱可塑性フィルム)の薄層で置換することができる。
【0015】
層状構造内でのNF IIの交互配置は、順次、全ての層の間に配置することも、又はある周期の層と交互に配置することも、又は一部の層内だけに配置することもできる(例えば、図4Bを参照)。図5は、図6に示すように、複合層内で交互配置されるようにロール状に巻いたり水平に配向させることができるNF IIとして、多層CNT(MWCNT)の垂直に配向した高密度アレイの写真を示す。NF IIから得られたナノ複合材の物理的特性及び機械的特性の両方における特性改善は、上記のNF Iのものと非常に類似し得る。
【0016】
カーボンナノチューブの成長のための様々な方法が上記で記載されている。例えば、NF IIの生産には、その簡便さと、CNTの長さ、配向、成長パターンなどの重要な成長パラメータの実質的な制御が可能なことから、CVD成長手法を選択することができる。それはまた、様々なタイプの基材の使用を可能にする。図7は、MWCNTの成長のための一般的なCVDシステムの概略図を示す。同システムは、不活性キャリアガス源10と、前駆体/触媒溶液を注入するためのシリンジポンプ30と、1つ又は複数の温度コントローラ70と基材90が配置される圧力逃し弁40を備える石英管80とを備える反応器としての高温炉60と、前駆体-触媒混合物を気化させる予熱器50と、前駆体-触媒蒸気を石英管の内側の反応ゾーンに運ぶ不活性キャリアガス流量を制御するためのガス流量計又は質量流量コントローラ20と、バブラー100と、排気ライン110とを備える。最初に、CNTを堆積/成長させる基材(例えば、石英、ケイ素、酸化ケイ素、並びに鋼などのいくつかの金属材料)を成長ゾーン内の石英管内に配置する。CNTはあらゆる種類の材料の上で成長することはできないが、基材の上に触媒の極く薄い層を堆積させ、CNTの成長反応を触媒することは可能である。シリンジポンプには、例えば、約1グラムのフェロセン(例えば、98%から、シグマアルドリッチ社製)を約100mlのキシレン(例えば、フィッシャーサイエンティフィック社製)に溶解してなる前駆体触媒溶液を充填し、予熱ゾーンに注入する最適な溶液供給量に設定する。石英管のエンドキャップを封止した後、不活性ガス(例えば、アルゴン又はアルゴン-水素の混合物)を大流量で石英管に導入し(数分間)、管炉内にトラップされた空気をフラッシュパージする。炉の温度が約400℃に達した時点で、不活性ガスの流量を、CNTが最も成長しやすい最適な流量(例えば、30~60CC/分、但し、この値は炉及び基材のサイズに応じて変化し得る)まで減らすことが好ましい。同時に、予熱器を起動し、前駆体触媒溶液の蒸発温度(即ち、フェロセン-キシレン混合物については180~190℃)に到達するように設定する。予熱器及び石英管炉が設定温度(例えば、予熱器については180~190℃、CVD炉については770℃)に達すると、前駆体溶液はシリンジポンプを使用して最適な供給量で二重管式石英反応器に連続的に供給される。液体供給物は、毛細管を通過し、石英炉に入る前に約180℃に予熱される。この温度で、毛細管を出る前駆体溶液は直ちに気化され、純粋なアルゴンガス又は約15%の水素と混合されたアルゴンガスの流れによって炉の反応ゾーンに掃引される。石英管の内径及び長さは、一般的には、それぞれ少なくとも約50mm及び1メートルである。成長ゾーンでは、重い金属粒子が最初に堆積し、次いで、前駆体が分解して反応性の原子状炭素が基材上の金属触媒粒子上に堆積し、その中に拡散して、垂直に配向した高密度アレイCNTが形成される。CVD反応時間は、所望のCNT長さに依存する(例えば、長さが約50~500μmのCNTでは30分間、又は炉の条件や処理のパラメータによってこれらの値は変動する)。最後に、予熱器及び炉を停止し、流動する不活性ガス環境で室温まで冷却し、その後、生成したCNTを取り出す。
【0017】
上に列挙したアルゴンガス流量、石英管炉温度、予熱器温度、石英管内での基材の位置、及びフェロセン-キシレン注入流量などの成長パラメータは、炉や基材のサイズ、構成、及び条件に応じて最適化して、所望のCNTナノフォレストを得ることができる。図8は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の成長に使用される、かなり小さいCVDシステム(即ち、2インチの石英管炉)を示す。例えば、上に列挙した成長パラメータは、図8に示すシステムで得られたものであり、異なる装置やシステムに対して調整することが可能である。6インチCVD炉などの他の寸法のCVD炉も、CNTナノフォレストの成長に使用することができる。
【0018】
上述のように、CVDシステムを使用して、酸化ケイ素、鋼、SiC繊維、又は異なるパターンや構造を有するプレセラミックコーティング繊維などの基材上に、最長約7mmの垂直に配向した高密度アレイCNTナノフォレストを首尾よく成長させることができる。図9は、図8に示したシステムで約1時間のCVD処理を行った後、1インチ×1インチの寸法の一般的な酸化ケイ素基材にNF IIが成長したものを示す。この試料上のCNTの長さは約1mmである。
【0019】
CVD処理の期間及び炉の条件に応じて、様々な長さのCNTを得ることができる。CNTの成長は、触媒粒子の触媒活性が中断されない限り続くと考えられる。日立社製S-800電界放出走査型電子顕微鏡(SEM)及びZeiss社製(LEO912)エネルギーフィルタ透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、CVDで成長したCNTの特徴、配向、構造、及びサイズを研究及び検査した。図3は、垂直に配向したCNTナノフォレストのSEM画像を示す。各画像の右下隅には、適切なスケールバーが印刷されている。Zeiss社製(LEO912)エネルギーフィルタ付きTEMを使用して、個々のCNTからの画像が得られ、図10A及び図10Bに示されており、CNT(MWCNT)の平均直径は、約40~60nmと測定される。
【0020】
複合材の主な利点は、その高い比強度や剛性に加えて、特定の荷重条件に合わせて調整できること、即ち、荷重や応力が存在する場所に荷重伝達繊維を配置できることである。繊維は通常、縦方向には非常に強いが、横方向には弱い。したがって、それらを使用して構造用複合材を製造すると、最終製品は厚さ方向に弱くなる。更に、複合材の中間層にはマトリックス材料のみが含まれており、繊維特性と比較すると弱い。この弱点は、様々な荷重条件下で複合材の層間破壊(層間剥離など)につながることが多い。この問題を克服するために、3D縫合及び3D編組などの3D複合材が提案されている。3D編組繊維構造の使用は、いくつかの特定の用途と幾何学的形状に限定される。縫合に関しては、もう一度厚さを決定してから縫合を行う必要がある。この場合、繊維は直交し得るが、縫合の後工程は、構造を設計して縫合する厚さを決定してから行うことで、厚さ方向の繊維を提供することができる。更に、縫合により厚さ方向特性をある程度改善することができるが、面内特性が低下してしまう。更に、従来の複合材では多機能性に欠ける。
【発明の概要】
【0021】
本発明の一実施形態は、ナノフォレストの連続生産方法であって、本方法は、送りロールから第1の炉に可撓性基材を巻き出すステップと、基材が第1の炉内の第1の成長ゾーンを通過する際に、基材上に第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤを含む第1のナノフォレストを成長させるステップと、第1の冷却ゾーン内で第1のナノフォレストを冷却するステップと、ナノフォレスト被覆基材を第1の巻取りロールに巻き取るステップとを含む。本方法は、好ましくは、巻取り工程中に、ナノフォレスト被覆基材の隣接する層の間にセパレータ、例えば、ポリイミドフィルムを挿入することを含む。第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤは、好ましくは、炭素、BN、Si、CuO又はZnOを含む。本方法は、好ましくは、可撓性基材の張力を維持することを含む。本方法は、任意選択的に、互いに対して垂直又は水平に配置することができる複数の平行な基材上で同時に行ってもよい。本方法は、好ましくは、巻出し速度、巻取り速度、基材張力、前駆体流量、キャリアガス流量、炉温度、及び予熱器温度からなる群から選択される1つ又は複数のパラメータを制御することを含む。請求項1に記載の方法は、成長工程中に第1のナノフォレストの厚さを測定することを含むことが好ましい。第1の炉は、運転中は密閉されている。送りロールの基材がなくなった場合、本方法は、好ましくは、送りロールを収容する筐体と炉との間のエアロックを閉じるステップと、新しい送りロールを装填するステップと、送りロール上の基材と新しい送りロール上の基材とを接合するステップと、筐体をパージするステップと、エアロックを開くステップとを含む。巻取りロールが満杯である場合、本方法は、好ましくは、巻取りロールを収容する筐体と炉との間のエアロックを閉じるステップと、巻取りロールを取り外すステップと、新しい巻取りロールを装填するステップと、筐体をパージするステップと、エアロックを開くステップとを更に含む。基材は、好ましくは、繊維、織物、又は可撓性金属を含む。成長工程は、任意選択的に、基材の両面上にナノフォレストを成長させることを含む。本方法は、好ましくは、ナノフォレストを基材から分離するステップを更に含む。
【0022】
第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤは、任意選択的に、基材の表面に対して実質的に垂直に配向される。この場合、本方法は、好ましくは、冷却工程の後に、第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤを含む折り畳み層を形成するナノフォレストを巻き取るステップであって、折り畳み層において、第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤは、基材の表面に対して略平行に配向されるステップと、第1の炉内の第2の成長ゾーンを通過する際に、折り畳み層上に第2のナノチューブ又は第2のナノワイヤを含む第2のナノフォレストを成長させるステップであって、第2のナノチューブ又は第2のナノワイヤは、基材の表面に対して略垂直に配向されるステップと、第2のナノフォレストを第2の冷却ゾーン内で冷却するステップとを含む。又は、本方法は、代替的に任意選択的に、巻取り工程の後に、ナノチューブ又はナノワイヤを含む折り畳み層を形成するために、ローラを介して第1の巻取りロールからナノフォレスト被覆基材を巻き出すステップであって、折り畳み層において、第1のナノチューブ又は第1のナノワイヤは、基材の表面に対して略平行に配向されるステップと、第2の炉内の第2の成長ゾーンを通過する際に、折り畳み層上に第2のナノチューブ又は第2のナノワイヤを含む第2のナノフォレストを成長させるステップであって、第2のナノチューブ又は第2のナノワイヤは、基材の表面に対して略垂直に配向されるステップと、第1のナノフォレストを第2の冷却ゾーン内で冷却するステップと、ナノフォレスト被覆基材を第2の巻取りロール上に巻き取るステップとを含む。後者の実施形態では、第2の炉は、任意選択的に第1の炉と同じであり、本方法は、好ましくは、第1の巻取り工程中にナノフォレスト被覆基材の隣接する層の間に第1のセパレータを挿入するステップと、第2の巻出し工程の後にセパレータを除去するステップと、第2の巻取り工程中に、ナノフォレスト被覆基材の隣接する層の間に第2のセパレータを挿入するステップとを含む。
【0023】
本発明の別の実施形態は、ナノフォレストを連続生産するシステムであって、本システムは、キャリアガス供給部と、前駆体供給部と、予熱器と、第1の成長ゾーンを備えた炉と、ステッピングモータと、炉に可撓性基材を供給する送りロールと、第1の成長ゾーンを通過する基材上に前駆体を堆積させるための第1のシャワーヘッドと、第1の冷却ゾーンと、ナノフォレスト被覆基材を受け取るための巻取りロールとを備える。本システムは、好ましくは、ナノフォレスト被覆基材の隣接する層の間にセパレータ、例えば、ポリイミドフィルムを挿入するためのセパレータロールを備える。ナノフォレストは、好ましくは炭素、BN、Si、CuO又はZnOを含むナノチューブ又はナノワイヤを含むのが好ましい。本システムは、好ましくは、可撓性基材の張力を維持するためのテンショナーを備える。本システムは、任意選択的に、第2の基材上に基材と平行にナノフォレストを同時に成長させるための追加の送りロール及び追加の巻取りロールを備える。ナノフォレストが垂直ナノフォレストである場合、本システムは、好ましくは、第1の成長ゾーン内で成長したナノフォレストを、基材に対して略垂直に配向された状態から、基材に対して略平行に配向された状態に折り畳むための1対のローラと、第2の成長ゾーンと、第2の成長ゾーンに前駆体を注入するための第2のシャワーヘッドと、第2の冷却ゾーンとを更に備える。本システムは、好ましくは、複数のセンサと、複数のアクチュエータと、巻出し速度、巻取り速度、基材張力、前駆体流量、キャリアガス流量、炉温度、予熱器温度、ナノフォレスト密度、及びナノフォレスト厚さからなる群から選択される1つ又は複数のパラメータのフィードバック制御を行うためのコントローラとを備える。炉は、運転中は密閉されていることが好ましく、その場合、本システムは、送りローラ用の気密な第1のハウジングと、第1のハウジングと炉との間の第1のエアロックと、巻取りローラ用の気密な第2のハウジングと、第2のハウジングと炉との間の第2のエアロックとを備えることが好ましい。第1のハウジングと第2のハウジングは、好ましくは、少なくとも部分的に透明材料を含む。炉は、好ましくは化学気相成長(CVD)炉である。炉は、好ましくは石英、サファイア、又はホウケイ酸塩製の覗き窓を備える。基材は、好ましくは、繊維、織物、又は可撓性金属を含む。本システムは、任意選択的に、基材の両面上にナノフォレストを成長させるように構成される。
【0024】
本発明の目的、利点及び新規な特徴、並びに更なる適用範囲は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明に部分的に記載され、部分的には以下を検討することによって当業者に明らかになり、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される手段及び組合せによって実現及び達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の様々な実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の特定の実施形態を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1】カーボンナノチューブを成長させるためのガス注入手法を利用する単純な化学気相成長システムの概略図である。
図2A】NF I技術の概略図である。
図2B】裸布とNF Iを有する布を示す。
図3】CVDを使用して成長させたCNT NFを形成する多層CNT(MWCNT)の垂直に配向した高密度アレイの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4A】基材上に成長させたNF IIを示す図である。
図4B】NFII技術の概略図である。
図5】MWCNTの垂直に配向した高密度アレイの写真である。
図6】ナノフォレスト(NF)カーボンナノチューブ(CNT)を含まない複合材の2つのプライ間の層間距離(約50ミクロン)を示す(左の画像)。挿入図は、層間距離が水平に配向したCNTナノフォレスト(HA-CNT-NF)で充填されたナノ複合材(例えば、NF II)を示す。右側の画像は、HA-CNT-NF内の配向した水平カーボンナノチューブと比較した単一の炭素繊維の寸法(直径)を示す。
図7】多層カーボンナノチューブの成長のための液体注入手法を利用する一般的な化学気相成長システムの概略図である。
図8】多層カーボンナノチューブの成長のための2インチCVD炉を備える化学蒸着システムの図面である。
図9】略1時間のCVD処理後に1インチ×1インチの酸化ケイ素基材上に成長したCNT NFを示す。
図10A】CVDによって合成された個々のMWCNTのTEM画像を示す。
図10B】CVDによって合成された個々のMWCNTの別のTEM画像を示す。
図11】大量生産のための単一の基材上に垂直に積み重ねられたVA-CNT-NF NF IIの概略図である。
図12A】2つの一般的な別々のVA-CNT-NF NF IIの写真である。
図12B】フィルム積層複合材として繊維織物間に交互配置されるマトリックスフィルム上の縁部に互いに隣接して配置された2つの一般的なVA-CNT-NF NF IIの写真である。
図13】本発明のナノテープNF II及び/又はNF IIIを大量に製造するために、4枚の縫合部をより多くの枚数に拡張することができる方法を示す概略図である。
図14】本発明のスプールツースプール装置を示す大規模連続CVD炉システムの立体モデルである。
図15】本発明のCVD炉内の繊維トウ配置及びガス流入口を示す図14の立体モデルの詳細である。
図16】多層カーボンナノチューブナノフォレストのバッチ成長に使用される6インチCVD炉を備えたCVDシステムの写真である。
図17図14及び図15による所定の位置にT型継手を設置した、大規模スプールツースプール連続NF生産に使用される2インチ炉システムの側面の写真である。
図18A】長さ2フィートの炭素テープ上でのCNTの連続成長のSEM画像で、テープの始点から6インチの位置で撮影した。
図18B】長さ2フィートの炭素テープ上でのCNTの連続成長のSEM画像で、テープの始点から12インチの位置で撮影した。
図18C】長さ2フィートの炭素テープ上でのCNTの連続成長のSEM画像で、テープの始点から18インチの位置で撮影した。
図18D】長さ2フィートの炭素テープ上でのCNTの連続成長のSEM画像で、テープの始点から24インチの位置で撮影した。
図19図14及び図15の代替設計としてのNF I、NF II、及びNF IIIの大規模スプールツースプール連続生産のための端部継手の立体モデル概略図である。
図20図14及び図15による所定の位置にT型継手を設置した連続NF(NF I、NF II、NF III)成長用の6インチ炉システムの側面の写真である。
図21】静的/バッチモードで実行された6インチ炉内で4インチのSiO上でのCNT成長運転を示す写真である。
図22A】6インチ炉内で成長させたCNTの上面図を示すSEM画像である。
図22B図22Aに示す成長したCNTの側面図を示すSEM画像である。
図23】二点間で(即ち、上から下へ)均一で一貫したNF厚さを示すSEM画像である。
図24】湿式レイアップアプローチのためにガラス繊維織物に配置された高品質NF IIを示す写真である。
図25】プリプレグレイアップアプローチのためのプリプレグシステム上の基材からの高品質NF IIの転写を示す写真である。
図26図14及び図15に示すように、複数のスプールを有する多層基材を使用して大規模スプールツースプール連続処理の生産速度を向上させることができることを示唆する、剛性基材及び可撓性基材のための二段重ねの基材構成を示す図面である。
図27】垂直に配向したCNTナノフォレストVA-CNT-NFを成長させるかHA-CNT-NFの上に配置して、直交特性を改善するNF III技術の概略図である。代替的に、VA-CNT-NFを下に、HA-CNT-NFを上に配置することも可能である。NFのどちらかが、完全に水平に配向している状態、又は完全に垂直に配向している状態から逸脱していてもよく、即ち、互いに対して90°以外の角度であってもよい。
図28A】ロールツーロール処理を利用する大型連続CVD炉システムの切断正面図を示す。
図28B】ロールツーロール処理を利用する大型連続CVD炉システムの立体モデル正面図を示す。
図28C】ロールツーロール処理を利用する大型連続CVD炉システムの立体モデル背面図を示す。
図29】NF I及びNFII(及びそれらの対応するNF Ill、又はそれらの任意の組合せ)の連続生産のための、本発明のスマート/インテリジェントマジックボックス添加剤(SIMBA)システムの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)からNF IIを作製するために、最初に、カーボンナノチューブの成長に適した薄い触媒層を用いて、又は用いずに、適した基材を調製する(触媒層は、約20nmの層厚を有するFe、Ni、Coであり得る)。次いで、基材をCVD炉内に配置し、炭素源液体(キシレンなど)の適切な混合物をCVD炉に導入する。基材がまだ触媒層を含まない場合、フェロセンなどの適切な触媒材料もCVD炉に導入される。本明細書及び特許請求の範囲の全体で使用される場合、「基材」という用語は、基材、繊維、及び織物を含む。比は、キシレン100mlに対してフェロセン1grが好ましい。混合物を適切な温度(好ましくは約750℃)及び流動条件でCVD炉に供給して、適切な基材上に適切な高さのVA-CNT-NF又はNF IIを成長させた後、不活性ガス、例えば、アルゴン又はアセチレン下で約4時間、室温まで冷却する。次いで、基材をCVD炉から取り出し、VA-CNT-NFを基材から除去し、必要に応じて複合材上に転写する(例えば、湿式レイアップ若しくはプリプレグ、又は接着剤層内)。
【0027】
この処理は、大量生産に使用することもできる。「ナノテープ」をリニアヤード単位で(例えば、幅3ヤードのロールを何ヤードもあるロールに換えて)大量生産を行うために、水平分配することによって、即ち、CVD炉の多数の管(例えば、S本の管)と各管内の多数のウェハ(例えば、管あたりM枚の基材/ウェハ)を有することによって、ある特定の面積(例えば、基材のサイズとCVD炉の管の直径に基づいてR平方インチ)を有する個々のナノテープを同時に大量生産することが可能である。代替的に、垂直積層、即ち、VA-CNT-NF NF IIを成長させる時間の間、炭素源(キシレン)と触媒(フェロセン)溶液を成長温度で交互に供給し、次いで炉をオフにするが不活性ガスArのみを好ましくは約30分間通過させることによって、VA-CNT-NF NF IIを単一の基材上で互いに重ねて成長させる方法を用いてもよい。次いで、この2つのガス流とそれに対応する温度及び流れ条件を交互に変えて、この処理を繰り返すことで、例えば、約60分ごとに、1つのVA-CNT-NF NF II層が生成され、N*60分の変化回数で、N個のVA-CNT-NF NF IIの積層体が生成される。積層体全体は、ミリメートルオーダの高さを有することができる。所望のNが達成されると、炉を止め、好ましくは、不活性ガス(例えば、Ar)だけを、略室温に達するまで(約4時間)積層体上に流す。次に、基材上の多数のVA-CNT-NF NF IIの積層体を炉から取り出し、薬液中で触媒層をエッチングすると、NF IIの間にある触媒層が溶解し、NF IIが浮き上がる。このようにして、N個のVA-CNT-NF NF IIの積層体は互いに分離され、すぐに利用できるようになる。この方法では、CVD炉の1回の運転で生成される面積は、R*S*M*N平方インチとなる。図11は、単一の基材/ウェハ上に垂直方向の積層を、一般的な積層体について概略的に示しているが、基材がSiでSiOコーティング、触媒層がFeの場合であるが、この方法は、この特定の基材だけに限定されるものではなく、他の基材を使用することも可能である。大量生産ルーチンで生産された個々のピースは、互いに隣接して「積み重ね」て、及び「縫い合わせ」て連続した幅広く長いNF IIナノテープのロールを生産することができる。図12Aは、連続したロールを作成するために互いに隣接して「積み重ね」た、及び「縫い合わせ」た2つの典型的な別々のVA-CNT-NF NF IIの写真を示す。図12Bは、フィルム積層複合材として繊維織物間に交互配置されるマトリックスフィルム上の縁部に互いに隣接して配置された2つの典型的なVA-CNT-NFs NF IIの写真を示す。図13は、大量のナノテープNF IIなどを生成するために、4枚の「縫合部」をより多くの枚数に拡張する方法を概略的に示している。
【0028】
NF IIは、代替的に、バッチ生産によって水平に大量生産することができ、次いで、折り畳んでVA-CNT-NFをHA-CNT-NFに変換し、次いで、VA-CNT-NFをHA-CNT-NFの上に成長させてNF IIIをバッチ生産し、次いで、図12A図12B及び図13と同様に配置して、大量生産バッチ連続NF IIIを生産することができる。
【0029】
上述のように、大規模NF IIは、固定バッチ処理で製造することができる。しかしながら、NF IIの商業的成立にとって重要なCNTの成長とその回収を達成するために、連続的に移動する基材に関する研究は行われていない。NF IIのナノテープは、上述のように本質的に「縫い合わせ」て連続したテープを形成できるが、テープの製造に使用されるバッチ処理では、この技術は非常にコストと労力がかかる。
【0030】
本発明の実施形態は、好ましくは生産システムにスケールアップできる完全に不活性な環境において、好ましくは管炉を通して基材を連続的に、大規模に、好ましくはスプールからスプールに供給するためのCVD炉システムの新規設計を含む。本システムは、可撓性金属箔及び繊維又は繊維テープ/織物など、様々な可撓性基材を使用できるように容易に構成されるのが好ましい。本システムの柔軟性によって、この技術が商業的に実現可能であることが好ましい。
【0031】
図14は、本システムの立体モデルを示しており、好ましくは、両端のT字部分220、230のいずれかの側で密閉されたシャフト又はロール200、210に取り付けられた、好ましくは1つ又は複数のステッピングモータ(図示せず)によって制御される張力調整システムを備える。このメカニズムは、CVDシステム内を通る基材のスプールツースプール移動を制御することができる。管炉の両端のT字部分には、炉の両端での基材の動きの検査ができるように、ホウケイ酸塩製の覗き窓が備えられることが好ましい。炉のシャフト、覗き窓、及びエンドキャップは、真空封止用のOリングやフィッティングで封止することが好ましい。
【0032】
図15は、図14に示す連続処理用クローズドシステム炉の立体モデルを基材フィードスルー端部から見た切断図であり、基材250がシャフト又はロール200に巻き取られている状態を示す。基材フィードスルーは、好ましくは、プラグアンドプレイメカニズムを介してT型継手内のシャフト及びコンピュータに接続されたモータによって制御される。モータは、フィードスルー方式の制御のほか、シャフト間の基材にかかる張力を維持するためにも使用される。ガス及び前駆体入口260は、好ましくは、流れを基材250の上に直接導くステンレス鋼管を含む。非常に大規模なシステムでは、ガス及び前駆体入口260を一連の「シャワー」に置き換えて、キシレン及びフェロセンを連続的かつ分散したシステムとして供給することができる。CVD炉内の連続フィードスルーシステムに可撓性基材を通すことにより、ナノフォレストの連続成長を達成することができる。管炉内のバッチ処理について確立された処理パラメータを使用し、更に改良して、連続的に移動する基材上での最適な成長を確立することができる。
【0033】
図16は、CNT NFのバッチ成長用の一般的な6インチCVD炉を示す。軽量エンドキャップ240は、設計を容易にするために平坦であることが好ましい。図17の炉は、ナノフォレストの連続的なロールツーロール(又はスプールツースプール)製造用に、図14及び図15に基づいてT型継手として特注設計されたエンドキャップを用いて修正された2インチバッチCVD炉を示す。シリンジポンプ410は、前駆体供給ライン400を介してアルミニウム箔によって断熱された予熱器420に前駆体を圧送する。前駆体は、炉460に入ると気化する。モータ440は、ロールハウジング(T型継手)430の内部で送りロールの軸を回転させる。炉460内の温度は、温度制御システム450を使用して設定され、その結果、炉内でCNT NFが連続的に製造される。可撓性プラスチック管402、404は、アルゴンガス及び水素ガスを前駆体供給ライン400に運ぶ。
【0034】
T型継手の内部には、基材材料の巻取りメカニズムを内蔵したシリンダが設置されていることが好ましい。T型継手の他端は、好ましくは別のシリンダを有し、CVD炉の石英管に結合され、炉の中央を基材が走行する。各T型継手内部のスプール、好ましくは、互いに対し協調して、所定の角度(例えば、1ステップ当たり約1.8度)でステップ運動するステッピングモータによって駆動され、好ましくは所定の保持トルク(例えば、約90Ncm)を有し、好ましくはNEMA23フォームファクターを有する。このモータにより、基材を所定のきざみで(例えば、約0.4mm)炉内に送り込むことができる。したがって、材料は、成長を可能にする必要がある場合、石英管内を非常にゆっくりとした速度で「這わせる」こともできるし、又は、材料は、所望のナノフォレスト成長に応じて数秒で炉内を循環させることも可能である。両方のステッピングモータは、任意選択的に、Arduino Uno及びDual Stepper Motor Shieldによって駆動される。Arduinoはコンピュータに接続することができ、LabViewに作成されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して制御することができる。別の実施形態では、1つのステッピングモータだけで両方のシャフトを駆動することができ、モータは、一方の端のT型継手内のシャフトと、もう一方の端のT型継手のもう一方のシャフトとに取り付けられており、駆動モータが動作し、テンショナーが基材に張力を与えるように、シャフトをテンショナーに取り付けることができる。ガス流コントローラはまた、Arduinoによって制御することができるため、処理全体を自動化し、簡単なGUIを介して容易に制御又は変更することが可能である。連続して移動する基材上での成長を実証するために、炭素繊維トウ、テープ、及び織物が図17の連続CVD炉システム内で走行された。織物の長さ方向に均一なCNT成長が得られた。織物は、成長を可能にするために、成長ゾーンでの時間を一定に保つように走行された。CNTの成長を特徴付けるために、2フィートの炭素繊維テープを1.5インチごとに切断した。図18A図18Dは、6インチ間隔で撮影した始点から終点までの炭素テープ上のCNT成長の画像を示す。
【0035】
図14及び図15のT型継手の代替設計が図19に示されている。CVD炉用の図19のエンドキャップアセンブリ270は、移動する可撓性基材上にカーボンナノチューブを連続処理で成長させるために特別に設計されている。このアセンブリは、溶接されたガス継手(図示せず)及び密封されたアクセスポート280を有する主ハウジングからなり、電動スプール290を受け入れるように構成される。アクセスポート280は、内部ハウジングの保守又は変更のためのアクセスを提供する。アクセスポートを封止し、エンドキャップアセンブリ270を炉の石英管300の端部に封止するために、好ましくは定格475°Fの消耗シリコーンガスケットを使用することが好ましい。スプール290は、好ましくは、モジュール式要素であり、アクセスポート280を通って、又は図19に示す正方形の開口部の一方又は両方を通って側面からハウジング内に水平に滑り込むことができ、これらは運転中は閉じられ、好ましくはボルトで固定される。スプールに取り付けられた外部ステッピングモータ(図示せず)は、好ましくは、炉を通って基材材料を引き込むのに必要な回転を与える。処理後、エンドキャップユニットを取り外すことなく、スプールを簡単に取り外すことができる。
【0036】
より大規模な成長及び生産を実証するために、2インチの連続設計と同様に、6インチの連続システムを製造及び組み立てた。図20は、T型継手310及びスプール320を示す6インチ連続CVDシステムの装置の側面図である。静的/バッチSiOウェハ上での均一なCNT成長を、図20のシステムを使用して実証した。図21は、6インチ炉内での4インチSiOウェハ上でのCNT成長運転を示す。図22A図22Bは、6インチ炉のウェハのSEM写真であり、2インチ炉と同様のCNT成長を示す。図23は、4インチウェハ上の2点間で一貫した成長を示す。元の結果の一貫性及び再現性を実証するために、展開可能複合材ブーム(DCB、Deployable Composite Boom)の試料を製造し、Cycom977-3樹脂シート(60.2gsm)及びASTM D 5528-01によるAS4平織炭素織物(3k、200GSM)を使用して試験した。改良型ナノ複合材には、6インチ炉内での4インチSiOウェハ上に成長させたCNTを使用した。2インチ炉で製造されたDCB試料の破壊靱性値の元の改善率は148%であったが、新しい6インチ炉からの試料の改善率は145%であった。
【0037】
図24は、湿式レイアップ法のためにガラス繊維織物上に置かれた高品質NF IIを示す図である。図25は、プリプレグレイアップ法のためのプリプレグシステム上の基材からの高品質NF IIの転写を示しており、教科書は縮尺のために示されている。図26は、二段重ねの剛性基材構成でバッチ式NF成長に成功した例を示す。これは、商業的なスプールツースプール運転中において、複数の可撓性基材上での同時連続NF成長にも拡張することができ、基材は、垂直に積み重ねられた構成、横に並んだ構成、又は任意の構成にある複数対のロール又はスプールの間に延びることができる。即ち、1つだけの基材/スプールシステムの代わりに、複数のスプールによって同時に駆動される複数の基材上で、NFを合成することができる。また、基材を縦に重ねるだけでなく、水平層ごとに同じスプールで、幅の狭い基材を隣り合わせに走行させることも可能である。
【0038】
同様の方法で、NF1は大規模なスプールツースプール生産を用いて製造することができるが、NF IIの場合、基材が好ましくはNF IIを成長させることができる可撓性の薄い金属である点、及びNF II成長基材は、基材/NFII層の間に連続した薄い分離紙/フィルム/シートを挟んで巻き取ることができるという点が異なる。更に、NF IIについては、前述のように、CVD処理中に少量の水蒸気を使用することで、NF IIを基材から分離し、触媒粒子を基材上に残すことができる。しかしながら、NF Iの場合、好ましくは、基材は、最初にプレセラミックポリマーの非常に薄い層でコーティングされ、それが硬化して熱分解し、次いで、コーティングされた繊維は、好ましくは同じスプールツースプール連続処理を受ける。NF IIの場合と同様に、基材/NF I層間の連続した薄い分離紙/フィルム/シートを使用すべきである。また、好ましくは、繊維基材とNF Iとの間の結合を確実に強固にするために、NF IのCVD処理中に水蒸気を使用しないことが好ましい。
【0039】
本発明の方法の一実施形態は、以下の工程を含む。
1.炉の運転開始
2.真空-掃引/パージ
3.アルゴン流量を平衡に設定
4.オーブン温度を設定し、約750℃まで保持
5.シャワー供給ラインを200℃に予熱
6.供給注入量を最適化
7.約10~20ミクロンの成長を達成するために、ホットゾーン成長において基材を約5~10分間維持(これはプリプレグ使用のための最適な長さ/厚さ)
8.ウェブ/基材を冷却ゾーンに移動
9.完成品を剥離ライナーで巻取り
【0040】
ナノフォレストIII(NF III)としても知られる直交ナノフォレストがバッチ製造されている。図27に示す実施形態では、垂直配向カーボンナノチューブナノフォレスト(VA-CNT-NF)480は、基材、繊維、又は織物490上にある水平配向カーボンナノチューブナノフォレスト(HA-CNT-NF)485上で成長する。この「3D直交ナノテープ」技術は、プリプレグ(又は湿式レイアップ)複合材に組み込むことで、直交する特性を改善することができる。いくつかの実施形態では、最初にHA-CNT-NFナノテープ(NF II又は更にはNF Iから製造することができる)から開始することができ、次いで、その上にVA-CNT-NFを(繊維/織物上又は基材上のいずれかで)直接成長させるのではなく、基材上でVA-CNT-NFを別々に成長させて基材から取り除き、繊維/織物上又は基材上のいずれかにあるFIA-CNT-NF上に配置する。代替的に、図27に示すように、FIA-CNT-NFを下に、VA-CNT-NFを上にするのではなく、VA-CNT-NFを下に、HA-CNT-NFを上にする逆の構成を作り出すこともできる。NF III内でのHA-CNT-NFとVA-CNT-NFの配向は、完全な水平配向及び/又は完全な垂直配向から逸脱する場合があり、即ち、互いの相対角度が90度以外である場合であって、これはいくつかの特定の用途にとって望ましい場合がある。NF IIIは[HA-CNT-NF、VA-CNT-NF]nとして図27に概略的に示されているが、ここでn=1であり、このnは1、2、3などとすることができる。又は、NF IIIは[VA-CNT-NF、HA-CNT-NF]nとすることができ、n=1、2、3などである。このアプローチは、任意のタイプのカーボンナノチューブ(即ち、SWCNT、DWCNT、又はMWCNT)、任意のナノチューブ材料(例えば、Zn-ONT、BN-ONT、その他)、又は任意のナノワイヤ(Si-ONW、CuO-ONW、ZnO-ONWなど)に使用することができるが、ここで、「ONT」は直交ナノチューブを表し、「ONW」は直交ナノワイヤを表す。NF III中のHA-CNT-NF(HA)及びVA-CNT-NF(VA)の配列は、HA/VA/HA/VA/など、VA/HA/VA/HA/など、HA/HA/VA/VA/など、又はVA/VA/HA/HA/などのように、交互及び/又は反復であり得る。
【0041】
ある実験では、DCBモードI破壊靭性試験においてT650-35/RM-1100プリプレグシステムにNF IIIを転写したところ、GICがNF IIIを転写しないプリプレグと比較して27%改善された。T300炭素織物上にCNT-NF Iを成長させ、次いで、AFR-PE-4を含浸させてプリプレグ化したNF I付きT650-35/AFR-PE-4システムでは、同じ試験で11%の改善が達成された。NFIII、補強材としてのその使用、及びそのバッチ式製造に関するより詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/US2021/015588号に見出すことができる。
【0042】
NF IIIの大規模なスプールツースプール生産のために、NF II又はNF Iのいずれかの大規模なスプールツースプール生産を使用することができ、次いで試料をNF IIIに変換することができる。基材の端部巻取りスプールから取られた大規模スプールツースプール処理で製造されたNF 1又はNF IIを出発材料として使用することができる。炉を出た後、NF I又はNF IIは、分離シートと共に、好ましくは、ローラを通過してVA-CNT-NFをHA-CNT-NFに折り畳む。その後、HA-CNT-NFの巻取りスプール(分離紙/フィルム/シートを除去した後)は、好ましくは出発スプールとして使用され、HA-CNT-NF上でNF 1又はNF II(即ち、VA-CNT-NF)成長の大規模なスプールツースプール生産を行い、その結果、NF IIIの大規模なスプールツースプール生産となる。
【0043】
本発明の例示的な二段階システムを図28A図28Cに示す。本システムは、例えば、繊維/織物上に直接成長するNF I、及び基材上に成長するNF IIなど、様々な種類の連続ロールツーロールナノフォレストを製造することが好ましいが、図示のシステムはNF IIIを生成するように構成された二段階システムである。本システムは、以下でより詳細に説明する自動制御システムを使用し、オペレータの安全のためにクローズドシステムであることが好ましい。本システムは、好ましくは、ロールハウジング505、510を囲む、例えば、プレキシガラスのような透明材料500、第1段のアルゴン及び水素シリンダ520、第2段のアルゴン及び水素シリンダ525、第1段の前駆体供給部530、第2段の前駆体供給部535、第1段の予熱器540、第2段の予熱器545、1つ又は複数の第1段の噴射シャワーヘッド550、1つ又は複数の第2段の噴射シャワーヘッド555、送りロール560、巻取りロール565、セパレータロール570(ナノフォレスト層/基材層と交互に配置して、それらが巻取りロールによって巻き取られる際に分離された状態に保つカプトン(Kapton)などの材料を保持するためのもの)、平坦化ローラ580、図29に示す制御システムに基づいてロール及びローラを回転するための1つ又は複数のステッピングモータ590、を備える。送りロール560は、好ましくは、可撓性基材の張力を維持するためにテンショナー装置に接続され、一方、巻取りロール565は、好ましくは、ステッピングモータ590に接続される。このシステムでは、VA-CNT-NFは、上述のように、第1段成長ゾーン600で基材585上に成長し、第1段冷却ゾーン610で冷却され、平坦化ローラ580(いくつかの実施形態では圧延機に類似)によって平坦化されて水平ナノフォレスト又はHA-CNT-NFになる。次いで、別のVA-CNT-FNは第2段成長ゾーン620でHA-CNT-NF上に成長し、第2段冷却ゾーン630で冷却され、得られたNF IIIは、炉を出た後に巻取りロール565によって巻き取られる。ロール及び基材は、任意の幅とすることができ、図28Aでは、図28B及び図28Cよりも幅が狭い。ロールは、好ましくは、乾燥繊維ロール、乾燥織物ロール、プリプレグロール、及びカプトンフィルムロールなどの任意のタイプの基材ロールを受け入れる。図28A図28Cに示すシステムの一般的な実験室寸法は、長さ約6フィート、幅約30インチ、高さ約30インチであり、幅約12インチの基材に対応することができる。しかしながら、これらの寸法は、材料やシステムの必要性に応じて、同じ又は異なる比率で、線形又は非線形の比率で、一般性を損なわないように拡大又は縮小することができる。
【0044】
本発明の連続処理は、好ましくは以下の特徴を有する。
・100%クローズドチャンバ
・ロールツーロール(スプールツースプール)
・複数のCVD用シャワーヘッドの使用
・剥離/分離フィルム/シート/紙
・調整器を備えたガス流コントローラ
・調整器を備えた液体流コントローラ
・注入システム
・シャワーヘッド
・予熱器及びコントローラシステム
・加熱要素及び断熱防火ブロック
・モータ及びコントローラシステム
・センサ及びアクチュエータ
・ローラ
・アルゴンシリンダ及び水素シリンダ(又は場合によりアセチレンなどの別のガス)
・必要な付属品
・ウェブ上及び複数層上で成長
・部位別加熱のためのプラズマ/CVD
・NF II及びNF III用の薄く可撓性のある全ての金属上での成長
・NF I及びNF III用の全ての繊維上での成長(薄いプレセラミックコーティングあり及びなし)
・プリプレグ及び湿式レイアップ用のNF II(及びNF III)
・湿式レイアップ用のNF I(及びNF III)
・ロール中に基材及びナノフォレストの損傷を回避するための大型コアスプール(最小曲げ半径を超える)。
【0045】
このような連続処理では、現在産業界で使用されているオープンシステムとは異なり、クローズドシステムであることが好ましい。クローズドシステムは、炉内のより安全でより制御された環境を提供しながら、連続ロールツーロール(スプールツースプール)製造を可能にする。また、リール、原料及び加工材料、並びに炉が全て完全に密閉されているため、ガス、ヒューム、熱、ナノ材料及び/又は基材の破片の漏出が少なく、ヒュームやナノ材料の吸入の可能性も低く、作業者にとって安全な運転を提供する。ナノ材料、化学物質、ガス、及び処理副産物の作業環境への漏出、及び作業者の曝露を最小限に抑えられるか、又は排除される。クローズドシステムは、システム内の偶発的な誤動作を制限し、作業者及び環境を保護し、安全な運転を提供する。クローズドシステムは、複数のシャワーヘッド及び複数の供給/巻取りスプールの組込みを可能にし、処理量を向上させながら、運転コスト、労力、及び材料供給の点で有利である。産業におけるCNT成長のための従来の一般的な連続システムは、既存の開放型炉設計を取り入れたものである。
【0046】
本発明のシステムは、以下の構成要素又は特性のうちの1つ又は複数を使用することができる。
・シャワーヘッド-複数のヘッド、可変流量、バランスのとれた処理、ウェブ/基材からの距離など。CNT前駆体溶液をCNT成長用基材上に噴霧することができるシャワーヘッドを備えた噴霧器の使用。噴霧器付きシャワーヘッドを複数(炉内に横列及び縦列にして)併用することで、CNT成長面積及び処理量を適切にかつ大幅に向上させることができる。シャワーヘッドは、好ましくは、図29によるインサイチュ成長監視QC手法からのフィードバックに基づいて、サーボ制御されたモータを介して任意の方向に移動することができる。
・インサイチュ厚さ測定用のレーザ(NFの長さ/厚さは、特に、プリプレグシステム用に最適化されることが好ましい)。
・フィードバックループ制御-速度、流量、温度、複数のループ、クローズドシステムの特定の領域でガスを閉じ込めるための「エアナイフ」。
・片面又は両面でのNF成長-垂直ウェブ及び/又は水平シャワーヘッド。
・連続処理を可能にするためにシステムをパージすることなく、完全な筐体内に原料を入れ、完全な筐体から完成品を取り出すためのエアロック、対「バッチ&パージ」。エアロックにより、システムを汚染したりガスを排出したりすることなく、材料を筐体に出し入れすることが可能にする。原料を挿入したり完成した材料を取り出すための外扉を備えた材料装填取り出し区画を備えるエアロックは、好ましくは、外気を安全にパージして、制御された雰囲気に置換することができる密封隔離ゾーンを備え、その後、内扉が開いて材料の出し入れが可能になるが、好ましくは2つの扉が同時に開かれることがないようにする。生産ラインの送り出し端部と巻取り端部に配置された自動ロールツーロール(スプールツースプール)移送ステーション(図14及び図15を参照)により、中断することなく連続運転し、原材料装填及び完成品取り出しの手段を提供する。移送ステーションは、筐体又はエアロック内に配置される、通常、ロール処理に使用される自動ウェブ接合機能とロール移送機能を備えたマルチロールタレットであってもよく、更に、クローズドシステムの内外で未加工品及び完成品を移送するための機械手段を提供するものである。自動ロール接合では、走行ロールがなくなると、機械が、材料切れとなるウェブロール、即ち、基材ロールの端部を新しい基材ロールの先端に自動的に接合する。
・多機能性:CVD炉は、好ましくは多機能性が可能であり、即ち、複数の機能を単一のゾーンで一度に実行することができる。例えば、単一のゾーンは、CNT成長、分離手段、CNTの巻取りなどの順序で複数の機能を実行することができる。1つのゾーンに複数の機能を持たせることは、機能ごとに複数のゾーンを設けるよりも、(1)費用便益に加えて炉のスペースを節約し、(2)機械の柔軟性と能力が向上し、(3)処理時間を短縮できるだけでなく、基材を複数ゾーンシステムに通す複雑さが増す。
・筐体:筐体は、当然ながら、内部の機器や外部の人員及び施設を危険から守り、それにより運転の安全性を確保するのに適している。アクティブセンサ及び計装は、何か問題が発生した場合に警告及び/又は処理の安全停止を自動的にトリガすることによって、処理を安全に保つために(及び製品品質管理のために)使用することができる。このようなセンサは、圧力、温度、及び酸素、水素、有毒物質などを含むガスのガス検出器を含むことができるが、これらに限定されない。筐体は、感電の危険を減らすために電気的に接地することができ、移動する処理材料(例えば、ウェブ/基材)が、「シャワーヘッド」などの処理装置の部分に電気的に引き寄せられたり反発したりする場合があるので、静電気が蓄積しないように構築することができる。筐体は、圧力のバランスをとり、空気(酸素)の侵入を防ぐことで、火災や爆発のリスクを低減し、火災や爆発の際には、適切な安全対策と措置で爆発を封じ込めることによって、含まれていたり収容されている人員や建物への危険を低減するのに当然適している。この保護措置は、筐体上の圧力逃し弁を使用することによって強化することができる。完全な筐体は、当然ながら、機器の不正使用、損傷、破壊又は盗難を防止する。筐体は、アクセスポート、エンドキャップ、エアロック、及び/又は扉に、鍵や他の固定装置を取り付けることで、より安全にすることができる。完全な筐体は、クローズドシステム全体の雰囲気を制御し、原料が空気及び湿度をパージし(即ち、脱気)、そして制御された雰囲気を完全に吸収することができるため、より高品質で、清潔な、より均一な、及び/又は純度の高い処理済み材料を得ることができる
・材料:シート(NF IIをベースにしたNF IIとNF IIIの場合)対繊維(NF IをベースにしたNF IとNF IIIの場合)-シート、ベルト、箔、繊維、及びCNTを成長させることができる任意の材料は、同じ装置で同様に処理することができる。材料は、炉の内外に供給するために、スプール上に巻き取ることができることが好ましい。
・処理の柔軟性:複数の基材は、同じ機械で交互に(及び/又は垂直構成及び水平構成の両方で並列に)又は順次に(及び/又は直列に)走行させることができる。本機は、材料供給速度、供給位置、ガス流量、温度、処理速度、処理時間、成長量、及び「ラン」と「ラン」の間の「ラン」を含む処理パラメータを変更することによって、異なる材料及び/又は異なる処理を並行して又は順番に自動的に実行するようにプログラムすることができる。CVD炉内の繊維構造上に成長したままのCNT NF I(及び/又はNF IをベースにしたNF III)を、冷却ゾーンに自動的に送ことができる。冷却ゾーン内で必要な温度に達した後、インサイチュIRヒータ及びローラを使用して、NF I(及び/又はNF IをベースにしたNF III)を用いて繊維構造上に樹脂フィルム/紙/シートを転写するためにインライン転写を行うことができる。繊維構造は、任意の織り方/ハーネス及び任意の繊維材料であり得る。出てくる材料は、レシピドリブンで作られ、NF I(及び/又はNF IをベースにしたNF III)を有する単なる繊維構造である。代替的に、CVD炉内の箔/テープ上の成長したままのCNT NF II(及び/又はNF IIをベースにしたNF III)を冷却ゾーンに送ることができる。テープが周囲温度に達すると、NF II(及び/又はNF IIをベースにしたNF III)を用いてテープに、樹脂フィルム/紙/シートや集塵(テフロン(登録商標))フィルムのみを、インサイチュ赤外線ヒータとローラ加圧でインライン転写することができる。この処理は、箔の材料とは無関係である。炉から出てくるNF II(及び/又はNF IIをベースにしたNF III)材料は、レシピドリブンで作られ、テフロン(登録商標)フィルムの間にプレーンなNF II(及び/又はNF IIをベースにしたNF III)又はNF IIフィルム(及び/又はNF IIをベースにしたNF III)が埋め込まれたプリプレグであり得る。本システムは、好ましくは、可撓性金属箔のロールツーロールでの大規模(例えば、最大54インチ幅×500ヤードロール)連続生産に適しており、実行可能である。NF Iはいくらかの表面処理を必要とするが、NF IIは表面処理を必要とせず、様々な繊維、例えば、ガラス、炭素又はケブラーの湿式レイアップ又はプリプレグに使用することができる。NF II(及びそのNF III)は、局所的な用途(例えば、耐雷、EMIシールド、熱伝導体及び電気伝導体、並びに接着接合及びボルト接合などの複合接合領域)に優れた技術である。
・品質/工程管理:成長処理の連続オンラインインサイチュ監視、例えば、レーザを使用して成長、厚さ、及び品質を監視及び制御したり、又は他のインライン厚さ測定ツールを使用することができる。基材上のウェブをウェブ横断方向(織物、繊維、テープ/基材)にスキャンするか、又は、測定レーンを横切って複数の固定ゲージを配置し、2つのゲージシステムを用いて正味のCNT成長を、例えば、総厚(織物/基材+CNT成長分)から基準厚(織物/基材のみ)を差し引いて計算する、連続インラインのリアルタイム厚さ又は密度測定システム。厚さゲージや密度ゲージは、CNTの成長厚さ又は密度を表示するために、コンピュータベースのデータ取得及び制御システムと組み合わせて、レーザ、電離放射線、又は他の非接触、非破壊手段を使用することができる。これにより、製品の均一性や品質が向上し、スクラップが少なくなる。
【0047】
本発明のスマート/インテリジェント「Magic Box」Additive(SIMBA)システムの実施形態は、好ましくは、厚さ又は他のパラメータ測定から計算された正味のCNT成長厚さ又はCNT成長密度をレシピベースのコンピュータ制御システムに供給する閉ループフィードバック制御システムを備える。レシピベースのソフトウェアにより、ガスの質量流量、ライン速度、温度、時間、及び他の重要なパラメータを含む重要な処理パラメータを設定される。レシピは、システムの設定及び起動を制御し、これらの処理実行パラメータは、ソフトウェアレシピに格納される。厚さ測定システムからのフィードバックは、レシピベースのシステムが補正出力応答を提供できるようにする入力を提供し、その結果、より高い処理量、より均一な品質、及びより少ない労力が得られる。図29に示すように、SIMBAシステムは、以下のサブシステムのうちの1つ又は複数を備えてもよい。
【0048】
センサは、好ましくは、品質保証(QA)/品質管理(QC)のための処理条件を感知/測定する。処理条件が不適切である場合、これらのセンサ信号は、問題を修正するためのフィードバック信号を提供する。これらのセンサは図29に示されており、4つの主要なセンサが特定されている(図29の4つのセンサの各々は、必要なパラメータを完全に感知するために1つ又は複数のセンサで構成されていることに留意されたい)。図29では、左から右に向かって、センサは、(1)不活性ガス及び他のキャリアガスの状態を感知/測定するガスセンサと、(2)2つのセンサセットを備える液体/気体センサである。第1の組は、フィードイン注入された液体混合物の状態(例えば、流量、液体比、ガス比、温度など)を感知/測定する。第2の組は、注入された液体混合物から炉内で生成された炭素源及び触媒ガスの条件(例えば、ガスの種比)を感知/測定する。(3)2組のセンサを備える速度/温度センサ。第1の組は、テープ/基材の速度を感知/測定する。第2の組は、様々な場所で炉の温度を感知/測定する。(4)a)厚さの成長速度、及びb)ナノフォレストの最終厚さ(即ち、NF I、NF II及びそのNF III)を測定することができる厚さセンサ。(5)その他のセンサ(本明細書では説明されていないが、本発明のSIMBAシステムと互換性がある他のタイプを含む)。データは「QA/QC用センサデータ(Sensor Data for QA/QC)」ハブに送信され、フィードバック信号としてコントローラに送信される。
【0049】
図29に示すように、全てのセンサデータは、処理のためにコントローラに送信されるが、コントローラは、好ましくは、信号をアクチュエータ改善ハブに送信し、感知された問題を修正するためのコントローラの決定に基づいて、センサによって感知された問題を修正するのに適切なアクチュエータに信号を送信する。コントローラは、このような処理のために開発された最適な経験的処理データに基づいて調整され、最適な経験則は最適なレシピとして機能する。
【0050】
アクチュエータは、センサ(ガス、液体/ガス、速度/温度、及び厚さ)が感知した問題を修正するために、コントローラとアクチュエータ改善ハブから受信する信号に基づいて是正措置を講じる。これらのアクチュエータは、図29に示すように、3つの主要なアクチュエータ(フィードインガス、フィードイン液、モータ&ヒータ)が特定されている(各アクチュエータは、検出された問題/パラメータを完全に修正するために、1つ又は複数のアクチュエータで構成される場合がある)。図29では、左から右に、アクチュエータは、(1)不活性ガス及び他のキャリアガスの状態(例えば、流量、温度、比率など)を制御するためのフィードインガスアクチュエータと、(2)2組のアクチュエータを備えるフィードイン液/ガスアクチュエータである。第1の組は、フィードイン注入された液体混合物の条件(例えば、流量、液体比、温度など)を制御する。第2の組は、キャリアガスの条件を制御する。(3)2組のアクチュエータを備えるモータ/ヒータアクチュエータ。第1の組は、モータ/テープの速度を制御し、それによってNFの成長速度及び最終的な厚さを制御する。第2の組は、各所の炉内温度を制御する。NF I(及び/又はそのNF III)の成長前に基材を事前コーティングするなど他の連続処理では、追加のセンサとアクチュエータが必要になる場合がある。
【0051】
新素材の処理は、センサベースのコンピュータ制御アクティブフィードバック制御システムを利用することによって半自動化することができ、所望のパラメータ(例えば、成長厚さ)を指定すると、ガス流量、材料輸送速度、チャンバ温度などの様々なパラメータが、コントローラからアクチュエータへの信号によって自動的に最適化される。
【0052】
筐体に石英の覗き窓を備えてもよく、科学的な目的又は品質管理上の目的で、隔離された反応ゾーンよりも良好な方法でプロセスを観察することができる場合がある。特殊な覗き窓により、分光計(例えば、ラマン、IR及び/又はUV-Vis)などの外部計装機器を、QA、学習、又はプロセス制御の理由で処理中に利用することが可能になる。例えば、ラマンシステムを使用して、成長中のCNTの品質をインサイチュで特徴付けることができる。収集された情報に基づいて、フィードバックシステムにより、ガスの質量流量制御、前駆体注入速度、及び成長ゾーンの温度を修正して、成長中のCNTの品質を制御することができる。
【0053】
NF I(及び/又はそのNF III)の場合、使用する繊維やテープに関係なく、単工程コーティング処理を使用することが好ましい。この処理では、CVD SiOC又はポリマーSiOCコーティング(即ち、プレセラミックポリマー)を施し、液体注入手法を使用してCNT成長のためのコーティングへの触媒粒子のシーディング(seeding)を開始する。この処理は、基材がCVD炉に供給される前に複数の工程を経る既存の手法と比較すると、効率的である。
【0054】
原料の複数のリール/スプール及び加工材料の巻取りリール/スプールを筐体内に収容することができ、水平及び垂直の両方の構成で、材料の並列「バルク処理」をより速く、したがってより経済的にすることができる。複数のリール/スプールは、異なる材料を保持することができる。例えば、炭素繊維の1つのロール及び/又はスプール、銅箔の1つのロール及び/又はスプール、並びに炭化ケイ素織物の1つのロール及び/又はスプールを、同じ炉で同時に通すことができる。
【0055】
原料が処理ゾーンに入る前にあらかじめ空気と湿度を除去し、制御された雰囲気内で浸透させるので、反応ゾーンに入る前の「浸漬時間」が不要となり、処理速度が速くなる可能性がある。
【0056】
リール及び/又はスプール、原料及び加工材料、並びに炉は完全に密閉されており、吸い込む可能性のあるガス、ヒューム、熱、ナノ材料及び/又は基材の破片などの漏出が低減されるので、運転は作業者にとってより安全である。
【0057】
処理に合わせて、完全な筐体を加熱又は冷却でき、加圧又は排気でき、及び/又はガス、ヒューム又は蒸気を充満させることができるため、処理の柔軟性が非常に高い。
【0058】
完全な筐体システムは、全ての繊細な機器を密閉しているため、可搬化及び/又は簡単に出荷可能/輸送可能にすることができる。
【0059】
基材材料を雰囲気制御された筐体から出すことなく、複数の反応ゾーンでの複数の処理を順次実行することができる。これにより、複雑な多段処理を筐体内の1つの順次処理又は並列処理で達成することができる。
【0060】
複数の反応ゾーンを垂直に「積み重ね」、ローラガイドを使用して材料を「Z折り」するように移動させて、制御された雰囲気の筐体内で材料をあるゾーンから次のゾーンに渡すことで設置面積を削減することができ、非常に効率的な設置面積をもたらす。
【0061】
筐体内部のリールで連結され、上下に積み重ねられた多数(X)の連続反応ゾーンに材料を通過させ、各ゾーンの終了時にUターンして次のゾーン(上、下、横)に材料を戻すことができるようにすることによって、より速い材料処理速度及び高い生産率を達成することができる。したがって、組み合わされた反応ゾーンの総処理長は、単一のゾーンの倍数(X)となる。したがって、雰囲気制御された筐体から出ることなく、単一の処理ゾーンの処理速度のX倍で同等の材料反応時間(T)を達成できるため、処理コストが低減され、処理ユニットの処理能力が増加する。
【0062】
モジュール性完全な筐体は、サイズや種類の異なるリール/スプールを含む異なる材料処理ユニットの脱着、及び筐体内の1つ又は複数の処理ゾーン内で処理のタイプや順序の設定を可能にすることによってモジュール式に構築することができるので、プロセスと構成の柔軟性が大幅に向上する。同様に、更に、処理の柔軟性を高めるために、又は処理の規模及び/又は速度を高めるために、筐体を順番に互いに接続してもよい。
【0063】
大気品質完全なクローズドシステムは、処理中、処理前、又は処理後に制御された方法で制御された大気(又はガス)を放出、パージ、又は注入して、処理の柔軟性を作り出し、大気品質が処理要件に従って維持又は適切に変更されることを保証することができる。
【0064】
アンブレラフード完全なクローズドシステムは、制御された雰囲気を安全にパージし、処理ゾーン間でのこのような雰囲気の混合を防ぐために、「アンブレラフード(Umbrella Hood)」として機能する筐体内の独自の制御された雰囲気を持つ複数の異なる処理ゾーンを使用する個々の処理ゾーンを囲むことができる。
【0065】
なお、明細書及び特許請求の範囲において、「約(about)」又は「約(approximately)」とは、引用された数値の20%以内を意味する。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「官能基」への言及は、1つ又は複数の官能基を指し、「方法」への言及は、当業者によって理解及び認識されるであろう同等の工程及び方法への言及などを含む。
【0066】
本発明は、開示された実施形態を特に参照して詳細に説明されているが、他の実施形態も同じ結果を達成することができる。本発明の変形及び修正は、当業者には明らかであり、このような全ての修正及び均等物を網羅することを意図している。上記で引用した全ての特許及び刊行物の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【要約】
ナノフォレストを連続的に、大規模に、商業的に実現可能な方法で生産するための方法及び装置。繊維や織物などの可撓性基材を炉に通すロールツーロール方式。前駆体を成長ゾーンに導入し、基材上にナノチューブやナノワイヤの垂直又は水平なナノフォレストを成長させる。基材速度、基材張力、炉温度、前駆体流量、ナノフォレスト厚さ、及びナノフォレストなどのパラメータに対して、フィードバック制御を有するセンサ及びアクチュエータが具備される。炉は、環境及び安全のために密閉されることが好ましい。送りロールと巻取りロールは、エアロックを介して炉に取り付けられるハウジング内に配置されており、これにより、炉の状態を維持したまま、業界周知の手法でロールの迅速な装填及び取り出しが可能になる。炉は、平坦化ローラ及び第2の成長ゾーンを包含して、水平ナノフォレスト上に成長した垂直ナノフォレストを含む直交ナノフォレストの製造を可能にすることができる。
【選択図】図28A
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21
図22A-22B】
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29