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  • 特許-容器処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】容器処理装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/02 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B65B55/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020175378
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066825
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】595012121
【氏名又は名称】株式会社加藤製缶鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勉
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0159485(US,A1)
【文献】特開2011-136740(JP,A)
【文献】特開2006-207993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水が噴霧される容器たる処理対象物を搬送する透水構造の搬送装置と、
この搬送装置の上方から処理対象物に処理水を噴霧するノズル装置と、
該搬送装置を搬送方向に緩分断するように区画された複数の処理区間において搬送装置の下方で各処理区間の処理水を回収する複数の処理水区間貯留槽とを具え、
処理水区間貯留槽に回収した処理水をノズル装置に供給して搬送装置上の処理対象物に噴霧して、処理対象物に対し目的の処理を行った後、搬送装置から流下した作用済みの処理水を処理水区間貯留槽によって回収し、処理水を循環使用するようにした容器処理装置であって、
この容器処理装置は、複数の処理水区間貯留槽に回収・貯留した処理水を集める一基の恒温熱水タンクを別途具え、この一基の恒温熱水タンクから熱水を前記複数の処理水区間貯留槽の全部または一部に供給するものであり、この熱水の供給量を調節することにより、処理水区間貯留槽に回収・貯留された処理水の温度と貯留量とを一定に維持する構成であることを特徴とする容器処理装置。
【請求項2】
前記恒温熱水タンクの容量は、一基の処理水区間貯留槽の容量の3倍~4倍であることを特徴とする請求項1記載の容器処理装置。
【請求項3】
前記恒温熱水タンクの容量は、全ての処理水区間貯留槽の総容量の0.4倍~0.5倍であることを特徴とする請求項1または2記載の容器処理装置。
【請求項4】
前記容器処理装置は、恒温熱水タンクに貯留された熱水を加熱する熱交換器を具え、
この熱交換器で加熱された熱水は、再度、恒温熱水タンクに戻されるものであり、これにより恒温熱水タンクに貯留された熱水温度の維持・管理を図る構成であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の容器処理装置。
【請求項5】
前記熱交換器において熱水を加熱する加熱源は蒸気であり、また熱交換後の加熱作用済みの蒸気は、気液混合状態で恒温熱水タンクに送り込まれる構成であることを特徴とする請求項4記載の容器処理装置。
【請求項6】
前記恒温熱水タンクに送り込む蒸気によって、恒温熱水タンクに貯留された熱水を撹拌する構成であることを特徴とする請求項5記載の容器処理装置。
【請求項7】
前記複数の処理水区間貯留槽には、各々オーバーフロー管が設けられ、このオーバーフロー管の後段側には更に一基の処理水集約タンクが接続され、オーバーフロー管によって回収された処理水は、処理水集約タンクに集められ、なお且つ処理水集約タンクに貯留された処理水は、前記恒温熱水タンクに送り込まれる構成であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の容器処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り飲料等の製造工程中で殺菌処理等を行うパストライザを代表的な一例とする容器処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、飲料を充填した容器は、最終的な箱詰め等の流通に向けた工程に先立ち、パストライザ等の殺菌装置を通過して目的とする処理を受ける。一般的には、内容物たる飲料を充填して、蓋締等の封緘が完了した容器を、パストライザにおける透水構造を具えた搬送装置に移送し、ここで処理水である温熱水を容器に噴霧し、加熱殺菌するものである。
このとき一般的には、一連の搬送ラインを有するパストライザは、搬送方向において複数の処理区間に緩区画されて成り、一または複数の処理区間(区画)毎に、噴霧する処理水の温度を変えて、容器ないしは内容物の昇温、一定の殺菌温度の維持、冷却を図るようにしている。
ここで処理対象物作用である容器に作用させる処理水は、処理区間毎に、搬送装置の下方に設けられた各々の処理水区間貯留槽に落下・回収され、その後、処理水区間貯留槽からポンプアップされて、上方のノズル装置から、再び搬送装置上の容器に噴霧されるものであり、処理水は、言わば循環利用されている。
【0003】
ところで、このような処理水の循環利用において、当然ながら容器を加温または冷却した処理水は、容器との熱交換によって、処理水温度が、低下または上昇することは免れない。また噴霧作用に伴う処理水の蒸発等により、回収できる処理水の減少も免れない。
このようなことから従来は、それぞれの処理水区間貯留槽毎に、加熱用の加温装置が設けられていた。具体的には処理水区間貯留槽内の処理水中で蒸気を噴出させて(いわゆる直吹き)、処理水の温度低下分、加熱されることがあった。また、各々の処理水区間貯留槽の処理水の貯留量が減少した場合には、別途、冷水を供給するとともに、蒸気の直吹き等の加温装置を作動させて、所望温度の処理水が規定量得られるようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、加温にあたって蒸気を直吹きするときには、処理水との間に潜熱交換も含まれ、希望する温度に設定することが難しく、更には温度域の著しく異なる補水用の新水(例えば上水)を補充するとなると、温度設定の困難さが、一層顕著になる。このため多くの場合、処理水の温度は、設定温度に対して上昇・下降が繰り返され、比較的長時間安定しない状態となってしまう(いわゆるハンチング現象)。
また、蒸気の直吹きによる加温手法では、主に蒸気噴出付近の処理水温度が高くなり易く、同一槽内の処理水を、均一な設定温度に安定化させるのが難しかった(いわゆる温度ムラの発生)。このようなことから、実際の現場では、処理水を全体的に所望温度に均一に維持することは、極めて難しいものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2020-017936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、各々の処理水区間貯留槽への加熱補水源を一元化し、各々の処理水区間貯留槽に貯留される処理水の温度と貯留量とを、より確実に一定に維持できるようにした、新規な容器処理装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の容器処理装置は、
処理水が噴霧される容器たる処理対象物を搬送する透水構造の搬送装置と、
この搬送装置の上方から処理対象物に処理水を噴霧するノズル装置と、
該搬送装置を搬送方向に緩分断するように区画された複数の処理区間において搬送装置の下方で各処理区間の処理水を回収する複数の処理水区間貯留槽とを具え、
処理水区間貯留槽に回収した処理水をノズル装置に供給して搬送装置上の処理対象物に噴霧して、処理対象物に対し目的の処理を行った後、搬送装置から流下した作用済みの処理水を処理水区間貯留槽によって回収し、処理水を循環使用するようにした容器処理装置であって、
この容器処理装置は、複数の処理水区間貯留槽に回収・貯留した処理水を集める一基の恒温熱水タンクを別途具え、この一基の恒温熱水タンクから熱水を前記複数の処理水区間貯留槽の全部または一部に供給するものであり、この熱水の供給量を調節することにより、処理水区間貯留槽に回収・貯留された処理水の温度と貯留量とを一定に維持する構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の容器処理装置は、請求項1記載の要件に加え、
前記恒温熱水タンクの容量は、一基の処理水区間貯留槽の容量の3倍~4倍であることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の容器処理装置は、請求項1または2記載の要件に加え、
前記恒温熱水タンクの容量は、全ての処理水区間貯留槽の総容量の0.4倍~0.5倍であることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の容器処理装置は、請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記容器処理装置は、恒温熱水タンクに貯留された熱水を加熱する熱交換器を具え、
この熱交換器で加熱された熱水は、再度、恒温熱水タンクに戻されるものであり、これにより恒温熱水タンクに貯留された熱水温度の維持・管理を図る構成であることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の容器処理装置は、請求項4記載の要件に加え、
前記熱交換器において熱水を加熱する加熱源は蒸気であり、また熱交換後の加熱作用済みの蒸気は、気液混合状態で恒温熱水タンクに送り込まれる構成であることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の容器処理装置は、請求項5記載の要件に加え、
前記恒温熱水タンクに送り込む蒸気によって、恒温熱水タンクに貯留された熱水を撹拌する構成であることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載の容器処理装置は、請求項1から6のいずれか1項記載の要件に加え、
前記複数の処理水区間貯留槽には、各々オーバーフロー管が設けられ、このオーバーフロー管の後段側には更に一基の処理水集約タンクが接続され、オーバーフロー管によって回収された処理水は、処理水集約タンクに集められ、なお且つ処理水集約タンクに貯留された処理水は、前記恒温熱水タンクに送り込まれる構成であることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、各々の処理水区間貯留槽に回収された処理水の加熱補水源として恒温熱水タンクの熱水を一元化して供給するため、各々の処理水区間貯留槽内の処理水の温度と貯留量とを安定的に維持することができる。
なお従来は、例えば各処理区間によって設けられた処理水区間貯留槽ごとに、蒸気と冷水(上水)を送り、処理水を各槽ごと個別に調節する手法であったが、これでは比較的長い時間安定しないことが多かった(いわゆるハンチング現象)。この点、本発明は、このようなハンチング現象を防止し、より短時間で処理水の温度と貯留量とを所望の値に落ち着かせることができる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、恒温熱水タンクの容量と、一基の処理水区間貯留槽の容量との比を具体的なものとする。すなわち本願では一基の恒温熱水タンクから熱水を各々の処理水区間貯留槽に供給して、各々の処理水区間貯留槽内の処理水を加温するため、恒温熱水タンクも相応の容量を必要とするが、本発明ではこの恒温熱水タンクの容量が具体的なものとなる。
【0016】
また請求項3記載の発明によれば、恒温熱水タンクの容量と、全ての処理水区間貯留槽との総容量との比を具体的なものとする。
【0017】
また請求項4記載の発明によれば、恒温熱水タンク内の熱水(処理水)は、熱交換器で加温された後、再び恒温熱水タンクに戻されるため、熱水温度の維持・管理が行い易く、熱水をより安定的に一定温度に維持することができる。
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、熱交換器において熱水の加熱源となる蒸気の廃熱を極めて有効に利用することができる。
【0019】
また請求項6記載の発明によれば、恒温熱水タンク内に貯留された熱水は、熱交換後にここに導入された蒸気によって効率的に撹拌される。このため恒温熱水タンク内の処理水温度が、より均一に維持される。また、この蒸気は熱交換後の蒸気であるから、蒸気の徹底した有効利用が図れる。
【0020】
また請求項7記載の発明によれば、各々の処理水区間貯留槽にオーバーフロー管を設けるため、各処理水区間貯留槽に回収される処理水を、より適宜の貯留量に維持し易い構造となる。また処理水区間貯留槽からオーバーフローした処理水についても、一基の処理水集約タンクにまとめてから、恒温熱水タンクに送り込む構造であるため、オーバーフローした処理水についても効率的な循環利用が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の容器処理装置の一例であるパストライザを骨格的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例
【0023】
以下、本発明の容器処理装置1について説明する。なお、説明にあたっては、容器処理装置1としてパストライザ(以下、容器処理装置と同じ符号「1」を付す)を例に挙げて説明する。因みに、パストライザ1以外の容器処理装置1としては、殺菌を伴わない容器加熱装置やパストクーラ等が挙げられる。
【0024】
パストライザ1は、上述したように例えば飲料を充填・密封したペットボトル等の容器を処理対象物Tとし、このものに加熱処理ないしは冷却処理を施して、飲料の殺菌等の安定化処理を行う設備装置である。このパストライザ1は、幅1.0~2.3m、長さ数m~十数m程度の工場設備であり、一例として図1に示すように、大別してペットボトル等の処理対象物Tを搬送する搬送系の装置と、処理媒体となる処理水Wの供給系装置とを具え、処理水Wの供給系装置は、搬送系の装置を上下から挟むように設けられている。
すなわち、パストライザ1は、処理水Wが噴霧される処理対象物Tを搬送する透水構造の搬送装置2と、この搬送装置2の上方から処理対象物Tに処理水Wを噴霧するノズル装置3と、該搬送装置2を搬送方向において緩分断するように区画された複数の処理区間において搬送装置2の下方で各処理区間の処理水Wを回収する処理水区間貯留槽4とを具えて成るものである。ここでノズル装置3に供給される処理水Wは、処理水区間貯留槽4に貯留された処理水Wが循環利用される。すなわち、処理水区間貯留槽4に落下・回収された処理水Wは、ノズル装置3に送られ、搬送装置2上の処理対象物Tにスプレーされて、処理対象物Tに対し目的の処理が行われる。またその後、搬送装置2から流下した作用済みの処理水Wを、再度、処理水区間貯留槽4によって回収し、再びノズル装置3に供給するものである。
【0025】
ここで上記「緩分断」について説明する。
上述したように搬送装置2は、搬送方向において複数の処理区間に緩分断されて成り、ここでの緩分断とは、隣り合う処理区間の間に、両区間を確実に遮断する境界壁や間仕切りを設けずに、連続した処理区間が連通状態となることを指す。もちろんパストライザ1内、すなわち複数の処理区間が連続して形成される一連の処理空間は、外部とは遮断されるように形成され、処理区間の相違は、主として処理対象物Tにスプレーする処理水Wの温度が異なるものである。ただし、ここでの「緩分断」には、例えば隣り合う処理区間の境界部にウォーターカーテン(いわゆる水膜)やエアカーテン等を形成して、処理区間相互の連通状態を完全には遮断しないが、簡易的な分断を図る手法は包含されるものとする。
以下、搬送装置2、ノズル装置3、処理水区間貯留槽4について説明する。
【0026】
搬送装置2は、容器等の処理対象物Tを安定的に微速(例えば1分間に250mm~1000mm)で搬送すべく、搬送面が平滑で、且つ処理水Wの流下を許容できるように(いわゆる透水構造)、例えば樹脂製のコンベヤ要素を組み合わせて構成され、全体として無端軌道を描くベルト状に形成される。
この搬送装置2は、装置架台に対して支持されるとともに、搬送方向上流側にターンスプロケット21を具え、下流側に駆動スプロケット22を具えて成る。
【0027】
処理対象物Tは、搬送装置2による搬送を受けながら、その搬送位置に応じて受ける実質的な処理、つまりパストライザ1によって処理対象物Tが受ける処理温度が異なるものであり、以下、これについて説明する。
パストライザ1は、一例として上記図1に示すように、処理対象物Tの搬送方向に見て、直列状に三つの処理ゾーンに区画されて成り、これを搬送方向上流側から昇温ゾーンZ1、殺菌ゾーンZ2、冷却ゾーンZ3とする。
以下、各処理ゾーンについて説明する。
【0028】
昇温ゾーンZ1は、処理対象物Tの温度(製品温度)を、例えば常温状態から目的の殺菌温度まで徐々に上昇させて行く処理ゾーンであり、ここでは更に三つの処理区間に区画されており、これを搬送方向上流側から第一予備加熱区間Z11、第二予備加熱区間Z12、加熱区間Z13とする。なお、それぞれの処理区間ごとに、ノズル装置3と処理水区間貯留槽4とが設けられており、これらを区別して示す場合には、第一予備加熱区間Z11のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3A」、「4A」とする。また、第二予備加熱区間Z12のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3B」、「4B」とする。また、加熱区間Z13のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3C」、「4C」とする。
【0029】
殺菌ゾーンZ2は、昇温ゾーンZ1において目的の殺菌温度まで上昇させた処理対象物Tを、適宜の時間、当該温度に維持して、実質的な殺菌を行う処理ゾーンであり、ここでは二つの処理区間に区画されており、これを搬送方向上流側から第一殺菌区間Z21、第二殺菌区間Z22とする。ここでも処理区間ごとに、ノズル装置3と処理水区間貯留槽4が設けられており、これらを区別して示す場合には、第一殺菌区間Z21のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3D」、「4D」とする。また、第二殺菌区間Z22のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3E」、「4E」とする。
なお、図中符号「(・・・)Z2n」で示した区間は、殺菌ゾーンZ2のn番目の処理区間である「第n殺菌処理区間」を示しており、これは殺菌ゾーンZ2を三つ以上の複数の処理区間で構成し得ることを示している。
【0030】
冷却ゾーンZ3は、実質的な殺菌を終えた処理対象物Tを、常温程度まで徐々に冷まして行く処理ゾーンであり、ここでは三つの処理区間に区画されており、これを搬送方向上流側から、第一徐冷区間Z31、第二徐冷区間Z32、冷却区間Z33とする。ここでもそれぞれの処理区間ごとに、ノズル装置3と処理水区間貯留槽4が設けられており、これらを区別して示す場合には、第一徐冷区間Z31のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3F」、「4F」とする。また、第二徐冷区間Z32のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3G」、「4G」とする。また、冷却区間Z33のノズル装置3と処理水区間貯留槽4を各々「3H」、「4H」とする。
【0031】
各処理区間における処理水Wの作用温度は、一例として図中に示した通りであり、各ノズル装置3A~3Hの上方に示した数値が、各ノズル装置3A~3Hからスプレーされる処理水Wの噴霧温度の一例である。
なお、昇温ゾーンZ1及び殺菌ゾーンZ2においては、各ノズル装置3A~3Eから放出された処理水Wは、各々の処理水区間貯留槽4A~4Eに回収・貯留される時点では、処理対象物Tを加熱した分、数度低下し、各々の処理水区間貯留槽4A~4Eに示した数値のようになるが、この数値はあくまでも一例である。
また、冷却ゾーンZ3においては、各ノズル装置3F~3Hから放出された処理水Wは、各々の処理水区間貯留槽4F~4Hに回収・貯留される時点では、処理対象物Tから熱を奪った分、数度上昇し、各々の処理水区間貯留槽4F~4Hに示した数値のようになるが、この数値もあくまでも一例である。
【0032】
また、処理対象物Tは、このような処理区間を通過することに伴い、温度が刻々と変化して行くものであり、以下、この製品温度の変化の一例について説明しておく。
処理対象物Tは、例えば図1に併せ示すように、第一予備加熱区間Z11の搬送装置2の入口付近で5℃、第一予備加熱区間Z11の搬送終端部及び第二予備加熱区間Z12の搬送開始部で20℃、第二予備加熱区間Z12の搬送終端部及び加熱区間Z13の搬送開始部で35℃となる。
また、加熱区間Z13の搬送終端部で65℃となり、殺菌ゾーンZ2の搬送中、すなわち第一殺菌区間Z21、第二殺菌区間Z22の搬送中は、この65℃の温度で維持される。なお、加熱区間Z13では、処理対象物Tの温度を65℃とするために、これよりも高温である72℃の処理水Wを吹き付けるようにしている。
そして、処理対象物Tは、冷却ゾーンZ3の搬送中に製品温度が下げられるものであり、例えば第一徐冷区間Z31の入口で65℃、第一徐冷区間Z31の搬送終端部及び第二徐冷区間Z32の搬送開始部で56℃、第二徐冷区間Z32の搬送終端部及び冷却区間Z33の搬送開始部で44℃となり、冷却区間Z33の搬送終端部つまり搬送装置2の出口付近で38℃となる。
【0033】
また、パストライザ1(搬送装置2)の各処理ゾーンを構成する処理区間の数は、適宜、増減させることが可能である。具体的には、処理対象物Tのサイズや性状、あるいは殺菌温度・殺菌時間等によって適宜増減し得るものであり、例えば昇温ゾーンZ1を一つの予備加熱区間と加熱区間との二区間で構成することが考えられるし、あるいは殺菌ゾーンZ2を三つの殺菌区間で構成すること等も考えられる。
【0034】
次に、ノズル装置3について説明する。
ノズル装置3は、各々の処理水区間貯留槽4からポンプPで汲み上げた処理水Wを、処理対象物Tにスプレー状に吹き付けるものであり、一例として上記図1に骨格的に示すように、全体として各処理区間において、搬送方向に見て数本から十数本程度のノズルパイプ31を、それぞれ搬送方向を横切るように垂下状態に配置して成る。
なお、このノズルパイプ31についても、処理区間ごとに区別する場合には、末尾に符号(副記号)A~Hを付して区別する。
【0035】
次に、処理水区間貯留槽4について説明する。
処理水区間貯留槽4は、各処理区間において各々のノズル装置3A~3Hから放出された処理水Wを、搬送装置2の下方で受けて、回収する区間ごとの貯留槽である。なお、各々の処理水区間貯留槽4に回収・貯留された処理水Wは、ポンプPで汲み上げられ、その温度に適した処理水Wとして各ノズル装置3に供給される(いわゆる循環利用)。
【0036】
また、このような循環利用にあたり、各々の処理水区間貯留槽4A~4Hに回収・貯留された処理水Wが、目的の温度よりも低いまたは高いことがあり得る。このため各々の処理水区間貯留槽4A~4Hには、貯留した処理水Wを目的の温度に加熱するための加温装置たる恒温熱水供給装置5と、目的の温度に低下させるための冷水供給装置6とが設けられる。ここで本発明においては、各々の処理水区間貯留槽4A~4Hに供給する加熱補水源を一元化したものであり、これにより各々の処理水区間貯留槽4の処理水Wの水温と貯留量とを安定的に維持するようにしたものであり、これが大きな特徴である。
なお、上述した恒温熱水供給装置5と冷水供給装置6とを処理水区間貯留槽4A~4Hごとに区別する場合には、末尾符号A~Hを付して区別する。
【0037】
このような恒温熱水供給装置5(5A~5H)としては、例えば図1に示すように、高温状態の処理水Wである熱水を貯留する恒温熱水タンク5Tを具える。そして、この恒温熱水タンク5Tから熱水を、各々の処理水区間貯留槽4の全部または一部に供給し、この熱水の供給量を調節することにより、各々の処理水区間貯留槽4内の処理水Wを所望温度に維持し、また各々の処理水区間貯留槽4における処理水Wの貯留量を、一定量に維持するものである。
このため恒温熱水供給装置5は、恒温熱水タンク5Tから各々の処理水区間貯留槽4に熱水を移送する熱水供給管51を具える。ここで熱水供給管51は、途中で各々の処理水区間貯留槽4に分岐するように構成され、この分岐した熱水供給管51を処理水区間貯留槽4A~4Hごとに区別する場合には、末尾符号A~Hを付して区別する。
また各々の熱水供給管51A~51Hには、熱水バルブ51Vが設けられ、これを開放させて熱水の供給が行われるものである。また、この熱水バルブ51Vの開放時間や開放量によって、熱水の供給量を調整することができる。
【0038】
次に恒温熱水タンク5T内の熱水の温度管理について説明する。
まず図中符号52はプレートヒータ等を適用した熱交換器であり、図中符号53はボイラである。熱交換器52には、恒温熱水タンク5Tから熱水(処理水W)が送り込まれ、ここでボイラ53から供給される蒸気Sとの熱交換が図られて、熱水を一定温度に加温するように構成される。もちろん蒸気Sとの熱交換によって加温された熱水は、再度、恒温熱水タンク5Tに戻される。このように恒温熱水タンク5Tに貯留された熱水は、ボイラ53から供給された蒸気Sとの熱交換によって一定温度、例えば98℃を維持するように温度管理されている。
また熱交換後の蒸気Sは、恒温熱水タンク5Tに気液接触状態で送り込まれる構成となっている。これは熱交換後の蒸気Sの廃熱を利用して恒温熱水タンク5Tに貯留された熱水の加温(または温度低下防止)を図るとともに、送り込んだ蒸気Sによって、恒温熱水タンク5T内の熱水を効率的に撹拌するためである(いわゆる温度ムラの防止)。このため、蒸気Sとしては水分を含んだ、湿り蒸気が好ましく、これにより恒温熱水タンク5T内の熱水の負荷(温度変化や容量変化など)を極力抑えることができる。
【0039】
また、上述した各々の処理水区間貯留槽4A~4Hには、オーバーフロー管41A~41Hが設けられており(以下、OF管とする)、処理水区間貯留槽4A~4Hの処理水Wが一定高さ以上にならないように構成されている。なお、各々のOF管41A~41Hから回収された処理水Wは、その下流側(後段側)に設けられた処理水集約タンク42にまとめて回収される。また、処理水集約タンク42内の処理水Wは、上述した恒温熱水タンク5Tに送られる構成となっている。
【0040】
ここで恒温熱水タンク5Tの容量は一例として5m3 であり、一基の処理水区間貯留槽4の容量は一例として1.3m3 である。このため恒温熱水タンク5Tの容量は、一基の処理水区間貯留槽4の容量に対し、3倍~4倍の大容量を有するものである。
また本実施例では、全ての処理水区間貯留槽4の総容量は10.4m3 (1.3×8)であり、このため恒温熱水タンク5Tの容量は、全ての処理水区間貯留槽4の総容量に対し、0.4倍~0.5倍となる。
また処理水集約タンク42の容量は一例として2m3 であり、恒温熱水タンク5Tの容量は、処理水集約タンク42の容量に対し、約2.5倍の容量を有する。
【0041】
次に、冷水供給装置6について説明する。
冷水供給装置6(6A~6H)は、各々の処理水区間貯留槽4A~4Hに貯留された処理水Wを冷却する装置であり、その具体的手法としては、例えば各々の処理水区間貯留槽4A~4Hに、図示を省略する冷却水源からの給水管61A~61Hを接続する手法が挙げられる。この場合、処理水Wの温度を下げるには、例えば当該給水管61A~61H中に設けた給水バルブ61Vを開放させるとともに、ポンプ(図示略)を稼働させて、冷却水源から冷却水を処理水区間貯留槽4A~4Hに導入し、適宜の温度に冷却する。なお、冷却水としては、例えば水道水(上水)が挙げられる。
【0042】
次に、上述した処理水区間貯留槽4からノズル装置3に処理水Wを供給する経路について説明する。各々の処理水区間貯留槽4A~4Hに貯留された処理水Wは、上述したように、その温度に応じてスプレーすべき処理区間のノズル装置3を選択してスプレーするように構成されている。
具体的には、本実施例では昇温ゾーンZ1における第一予備加熱区間Z11の処理水区間貯留槽4Aに貯留された処理水Wが、約33℃となり、冷却ゾーンZ3における第二徐冷区間Z32のノズルパイプ31Gに移送され、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けられる。一方、冷却ゾーンZ3における第二徐冷区間Z32の処理水区間貯留槽4Gに貯留された処理水Wが、約35℃となり、昇温ゾーンZ1における第一予備加熱区間Z11のノズルパイプ31Aに移送され、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けられる。なお、このような異なる処理区間同士、つまり昇温ゾーンZ1の第一予備加熱区間Z11と、冷却ゾーンZ3の第二徐冷区間Z32との間で、処理水Wを循環利用する形態を相互循環と称する。
【0043】
また、本実施例では別の相互循環も構成されている。具体的には、昇温ゾーンZ1の第二予備加熱区間Z12と、冷却ゾーンZ3の第一徐冷区間Z31との相互循環である。より詳細には、昇温ゾーンZ1における第二予備加熱区間Z12の処理水区間貯留槽4Bに貯留された処理水Wが、約48℃となり、冷却ゾーンZ3における第一徐冷区間Z31のノズルパイプ31Fに移送され、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けられる。一方、冷却ゾーンZ3における第一徐冷区間Z31の処理水区間貯留槽4Fに貯留された処理水Wが、約50℃となり、昇温ゾーンZ1における第二予備加熱区間Z12のノズルパイプ31Bに移送され、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けられる。
なお、相互循環における各処理区間の組み合わせは変更することもあり得、例えば昇温ゾーンZ1が、一つの予備加熱区間(第一予備加熱区間Z11)と、加熱区間Z13との二区間で構成された場合などが想定される。
【0044】
また、本実施例では、回収した処理水Wを同一処理区間内のノズル装置3に戻すように移送する循環利用も行っており、これを自己循環と称し、上記相互循環と区別している。
自己循環は、昇温ゾーンZ1の加熱区間Z13、殺菌ゾーンZ2の第一殺菌区間Z21及び第二殺菌区間Z22、冷却ゾーンZ3の冷却区間Z33において実施されている。すなわち、これらの処理区間では、同じ処理区間内の処理水区間貯留槽4(4C・4D・4E・4H)に貯留された処理水Wを、同処理区間内のノズルパイプ31(31C・31D・31E・31H)に戻し、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けるようにしている。
なお、相互循環及び自己循環ともに、処理水区間貯留槽4から処理水Wを汲み上げる作用は、循環回路中に組み込まれたポンプPが担うものである。
【0045】
パストライザ1は、以上のような基本構造を有するものであって、以下、このようなパストライザ1を適用して処理対象物Tを加熱殺菌する際の基本的な処理態様について説明する。
処理対象物Tは、一例として図1に示すように、搬送装置2の搬送面上に正立姿勢で載置されながら、搬送方向上流の入口側から搬送方向下流の出口側に向けて搬送される。その搬送速度は、例えば250mm/min~1000mm/min程度のほぼ一定の速度であり、この搬送過程で処理対象物Tは、各処理区間で定められた温度の処理水Wが上方からスプレーされて(吹き付けられて)、目的の処理が施される。以下、処理ゾーンごとに説明する。
【0046】
(1)昇温ゾーン
処理対象物Tは、まず昇温ゾーンZ1で、殺菌に必要な温度まで徐々に加熱される。具体的には、第一予備加熱区間Z11で所定の時間、35℃の処理水Wによる予備加熱を受ける。次いで第二予備加熱区間Z12で所定の時間、50℃の処理水Wによる予備加熱を受ける。次いで加熱区間Z13で所定の時間、72℃の処理水Wによる加熱を受ける。なお、各々の処理水区間貯留槽4A~4Cに回収される処理水Wの温度は、いずれも上記温度よりも数度低下して回収され、例えば処理水区間貯留槽4Aでは33~34℃、処理水区間貯留槽4Bでは48~49℃、処理水区間貯留槽4Cでは70~71℃程度である。因みに、各々の処理水区間貯留槽4A~4Cに貯留された処理水Wの温度が、次のスプレーに供する温度よりも低い場合には、恒温熱水供給装置5A~5Cからの熱水供給によって適宜加温するものであり、処理水Wの温度が、次のスプレーに供する温度よりも高い場合には、冷水供給装置6A~6Cによって適宜冷却するものであり、各ノズルパイプ31G・31F・31Cには、常に同じ温度の処理水Wが供給される。
また、このような昇温ゾーンZ1の搬送中に、処理対象物Tの製品温度は上昇するものであり、例えば第一予備加熱区間Z11の入口付近で5℃、第一予備加熱区間Z11の搬送終端部及び第二予備加熱区間Z12の搬送開始部で20℃、第二予備加熱区間Z12の搬送終端部及び加熱区間Z13の搬送開始部で35℃、加熱区間Z13の搬送終端部で65℃となる。
【0047】
(2)殺菌ゾーン
その後、処理対象物Tは、殺菌ゾーンZ2に搬送され、ここで適宜の時間・適宜の高温状態で保持され、所望の殺菌が実質的に施される。具体的には、第一殺菌区間Z21で所定の時間、65℃の処理水Wによる殺菌を受ける。次いで第二殺菌区間Z22で所定の時間、65℃の処理水Wによる殺菌を受ける。なお、殺菌ゾーンZ2における各々の処理水区間貯留槽4D・4Eに回収される処理水Wの温度は、いずれも上記温度より数度低下するものであり、例えばいずれの処理水区間貯留槽4D・4Eにおいても63~64℃程度となる。もちろん、ここでも各々の処理水区間貯留槽4D・4Eに貯留された処理水Wの温度が、次のスプレーに供する温度よりも低い場合には、恒温熱水供給装置5D・5Eからの熱水供給によって適宜加温するものであり、各ノズルパイプ31D・31Eには、常に同じ温度の処理水Wが供給される。
また、このような殺菌ゾーンZ2の搬送中、具体的には第一殺菌区間Z21の搬送開始部から第二殺菌区間Z22の搬送終端部に至るまで、処理対象物Tは、製品温度が65℃に維持され、実質的な殺菌が施される。
【0048】
(3)冷却ゾーン
その後、処理対象物Tは、冷却ゾーンZ3に搬送され、ここで殺菌直後の高温状態が、徐々に冷却されて行く。具体的には第一徐冷区間Z31で所定の時間、48℃の処理水Wによる徐冷を受ける。次いで第二徐冷区間Z32で所定の時間、33℃の処理水Wによる徐冷を受ける。次いで冷却区間Z33で所定の時間、28℃の処理水Wによる冷却を受ける。なお、各々の処理水区間貯留槽4F~4Hに回収される処理水Wの温度は、いずれも上記温度よりも数度上昇し、例えば処理水区間貯留槽4Fでは49~50℃、処理水区間貯留槽4Gでは34~35℃、処理水区間貯留槽4Hでは29~30℃程度となる。もちろん、ここでも各々の処理水区間貯留槽4F~4Hに貯留された処理水Wの温度が、次のスプレーに供する温度よりも低い場合には、恒温熱水供給装置5F~5Hによって適宜加温するものであり、次のスプレーに供する温度よりも高い場合には、冷水供給装置6F~6Hによって適宜冷却するものであり、各ノズルパイプ31B・31A・31Hには、常に同じ温度の処理水Wが供給される。
また、このような冷却ゾーンZ3の搬送中に、処理対象物Tは、製品温度が徐々に下降して行くものであり、例えば第一徐冷区間Z31の搬送開始部で65℃、第一徐冷区間Z31の搬送終端部及び第二徐冷区間Z32の搬送開始部で56℃、第二徐冷区間Z32の搬送終端部及び冷却区間Z33の搬送開始部で44℃となり、冷却区間Z33の搬送終端部つまり出口付近で38℃まで冷却される。
【0049】
本実施例では、上述したように昇温ゾーンZ1と冷却ゾーンZ3との間で処理水Wを相互循環させている。具体的には、まず一つ目の相互循環として、昇温ゾーンZ1における第一予備加熱区間Z11の処理水区間貯留槽4Aに貯留された処理水Wを、冷却ゾーンZ3における第二徐冷区間Z32のノズルパイプ31Gに移送し、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けている。一方、冷却ゾーンZ3における第二徐冷区間Z32の処理水区間貯留槽4Gに貯留された処理水Wを、昇温ゾーンZ1における第一予備加熱区間Z11のノズルパイプ31Aに移送し、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けている。
また、二つ目の相互循環として、昇温ゾーンZ1における第二予備加熱区間Z12の処理水区間貯留槽4Bに貯留された処理水Wを、冷却ゾーンZ3における第一徐冷区間Z31のノズルパイプ31Fに移送し、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けている。一方、冷却ゾーンZ3における第一徐冷区間Z31の処理水区間貯留槽4Fに貯留した処理水Wを、昇温ゾーンZ1における第二予備加熱区間Z12のノズルパイプ31Bに移送し、ここから処理対象物Tに向けて吹き付けている。
【0050】
このような相互循環を行うのは、第一予備加熱区間Z11の処理水区間貯留槽4Aに貯留された処理水Wの温度が、第二徐冷区間Z32で処理対象物Tに吹き付ける処理水Wの温度とほぼ同じであり、また第二徐冷区間Z32の処理水区間貯留槽4Gに貯留された処理水Wの温度が、第一予備加熱区間Z11で処理対象物Tに吹き付ける処理水Wの温度とほぼ同じであり、処理水Wの温度として、互いに適しているためである。
また、第二予備加熱区間Z12の処理水区間貯留槽4Bに貯留された処理水Wの温度は、第一徐冷区間Z31で処理対象物Tに吹き付ける処理水Wの温度とほぼ同じであり、また第一徐冷区間Z31の処理水区間貯留槽4Fに貯留された処理水Wの温度は、第二予備加熱区間Z12で処理対象物Tに吹き付ける処理水Wの温度とほぼ同じであり、処理水Wの温度として、互いに適しているため、上記のような二組の相互循環が構成されている。
そして、このような相互循環を図ることにより、恒温熱水供給装置5によって行われる熱水による処理水Wの加熱や、冷水供給装置6による冷却を行って、処理水Wの温度を調整する場合でも、使用するエネルギーを節約することができる。なお、このような処理水Wの相互循環利用を交流と称することもある。
【0051】
また、本発明では適宜の処理水区間貯留槽4に回収された処理水Wの温度を加温するにあたり、一元化された恒温熱水タンク5Tから熱水を供給して、処理水Wの加温を図るものであり、以下これについて更に説明する。
通常、処理水区間貯留槽4は複数存在し、ここに回収された処理水Wの温度と所望温度との差(温度差)も種々異なることが想定される。このため各々の処理水区間貯留槽4によって熱水の供給量が異なる。一般的には、上昇させる温度差が小さい場合には、熱水供給量も少量となり、上昇させる温度度が大きい場合には、熱水供給量も多くなる。
ここで処理水Wは温度だけが所望の値から相違するのではなく、噴霧に伴う蒸発等によって貯留量が減少してしまう場合もあり得るが、本発明では熱水を供給するため、処理水Wの加温だけでなく、不足した処理水Wを補い、貯留量の増加も図ることができる。もちろん、供給した熱水では、まだ減少した処理水Wが補えないような場合には、給水を併せて行うことができ、これには例えば上記冷水供給装置6から上水(冷水)を供給するものである。因みに、このような冷水供給を行う場合には、供給する冷水分を含めて(冷水加温分を含めて)、恒温熱水タンク5Tから処理水区間貯留槽4に適量の熱水を供給することが好ましい。
以上述べたように、本発明では各々の処理水区間貯留槽4A~4Hへの加熱補水源を恒温熱水タンク5Tの熱水に一元化したものであり、これにより各々の処理水区間貯留槽4を個々に制御していた従来に比べ、いわゆるハンチング現象が抑制でき、処理水Wの温度と貯留量とをより確実に制御できるようになったものである。
【0052】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、昇温ゾーンZ1及び冷却ゾーンZ3を、ともに三つの区間で形成したが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。具体的には、例えば昇温ゾーンZ1及び冷却ゾーンZ3を四つ以上の区間で形成することも可能であるし、あるいは昇温ゾーンZ1を二つの区間で形成することも可能である。また、上述した基本の実施例では、相互循環を二組形成したが、特に上記処理区間の数などに応じて、相互循環は一組だけ設けるようにしても構わない。
【0053】
また、上述した基本の実施例では、恒温熱水タンク5T内の熱水(処理水W)を加温するにあたり、蒸気Sとの熱交換により熱水を加温し、温度を一定値に維持する構成であったが、熱水を加熱する熱交換媒体は、必ずしも蒸気Sに限定されるものではなく、他の媒体、例えば高温液体(必ずしも水でなくてもよい)を適用することもできる。ただし、この高温液体が処理水Wとは異なる性状の場合には、熱交換後の媒体を恒温熱水タンク5Tに戻す構成は採らないものである。
また、先に述べた基本の実施例では、熱交換器52としてプレートヒータを例示したが、他の熱交換器も適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 容器処理装置(パストライザ)
2 搬送装置
3 ノズル装置(3A~3H)
4 処理水区間貯留槽(4A~4H)
5 恒温熱水供給装置(5A~5H)
5T 恒温熱水タンク
6 冷水供給装置

Z1 昇温ゾーン
Z11 第一予備加熱区間(末尾符号A)
Z12 第二予備加熱区間(末尾符号B)
Z13 加熱区間(末尾符号C)

Z2 殺菌ゾーン
Z21 第一殺菌区間(末尾符号D)
Z22 第二殺菌区間(末尾符号E)
Z2n 第n殺菌区間

Z3 冷却ゾーン
Z31 第一徐冷区間(末尾符号F)
Z32 第二徐冷区間(末尾符号G)
Z33 冷却区間(末尾符号H)

21 ターンスプロケット
22 駆動スプロケット

31 ノズルパイプ(31A~31H)

41 オーバーフロー管(OF管)(41A~41H)
42 処理水集約タンク

51 熱水供給管(51A~51H)
51V 熱水バルブ
52 熱交換器
53 ボイラ

61 給水管(61A~61H)
61V 給水バルブ

T 処理対象物
W 処理水
P ポンプ
S 蒸気
図1