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特許7318897ペプチド、組成物、及びグレリン分泌促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ペプチド、組成物、及びグレリン分泌促進剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230725BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230725BHJP
   C07K 5/113 20060101ALI20230725BHJP
   C07K 5/103 20060101ALI20230725BHJP
   C07K 5/117 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230725BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230725BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230725BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K5/113
C07K5/103
C07K5/117
A61K38/07
A61K38/08
A61K38/10
A61P1/14
A23L33/18
C12N15/09 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021516218
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2020017565
(87)【国際公開番号】W WO2020218450
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019086211
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「米を活用した次世代介護食品の社会実装のための技術基盤開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】596175810
【氏名又は名称】公益財団法人かずさDNA研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】390019987
【氏名又は名称】亀田製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】大日向 耕作
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄基
(72)【発明者】
【氏名】中戸 絢也
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】尾高 清乃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 諒子
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189963(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/092851(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150548(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109402095(CN,A)
【文献】特表2010-522543(JP,A)
【文献】特開2016-027001(JP,A)
【文献】特表2012-507273(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01332760(EP,A1)
【文献】特開2005-082489(JP,A)
【文献】特開2013-227309(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号1から7のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチド
【請求項2】
配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列からなり、かつ、ズブチリシン消化物である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペプチドを含み、食欲不振の治療、予防、又は改善に用いられる組成物。
【請求項4】
前記食欲不振が、グレリン分泌の低下によってもたらされる食欲不振である、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬品である請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
飲食品である請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項7】
配列番号1から7のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるペプチドを含むグレリン分泌促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、組成物、及びグレリン分泌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾患等やストレスがもたらす症状のひとつとして食欲不振が知られる。食欲不振が長期にわたって続く場合、栄養状態が悪化し、疾患等の重篤化をもたらし得る。また、高齢者では疾患を発症していなくとも食欲不振が認められ、生活の質(QOL)の低下が惹起され得る。
【0003】
例えば、特許文献1には、食欲不振等のグレリン分泌が関与する症状の予防及び治療を目的とした、所定の化合物を含むグレリン分泌促進剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-227309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、食欲不振を治療、予防、又は改善できる機能性素材に対するさらなるニーズがある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、食欲不振を治療、予防、又は改善できる新規ペプチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のアミノ酸配列からなるペプチドによれば上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
<1> 以下の(1)から(3)のいずれかに記載のペプチド。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち4個以上9個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち4個以上12個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド
【0009】
<2> 配列番号3から7のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる、<1>に記載のペプチド。
【0010】
<3> 配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列からなり、かつ、ズブチリシン消化物である、<1>に記載のペプチド。
【0011】
<4> <1>から<3>のいずれかに記載のペプチド、又は前記ペプチドをアミノ酸配列の一部として含むタンパク質を含み、食欲不振の治療、予防、又は改善に用いられる組成物。
【0012】
<5> 前記食欲不振が、グレリン分泌の低下によってもたらされる食欲不振である、<4>に記載の組成物。
【0013】
<6> 医薬品である<4>又は<5>に記載の組成物。
【0014】
<7> 飲食品である<4>又は<5>に記載の組成物。
【0015】
<8> <4>から<7>のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、食欲不振を治療、予防、又は改善する方法。
【0016】
<9> 以下の(1)から(3)のいずれかに記載のペプチドを含むグレリン分泌促進剤。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち4個以上9個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち4個以上12個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食欲不振を治療、予防、又は改善できる新規ペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】米胚乳タンパク質の酵素消化物がグレリン分泌活性に及ぼす影響を示す図である。
図2】本発明のペプチドがグレリン分泌活性に及ぼす影響を示す図である。
図3】本発明のペプチドがグレリン分泌活性及びグレリン合成関連遺伝子の発現に及ぼす影響を示す図である。
図4】本発明のペプチドが細胞内cAMP濃度に及ぼす影響を示す図である。
図5】本発明のペプチドがマウスの摂食行動、及び、血清中グレリン濃度に及ぼす影響を示す図である。
図6】本発明のペプチドがマウスの摂食行動に及ぼす影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0020】
<本発明のペプチド>
本発明のペプチドは、以下の(1)から(3)のいずれかに記載のペプチドである。なお、以下、アミノ酸配列は、N末端を左端に置き、N末端からC末端にかけて記載する。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列(QAFEPIRSV)のうち4個以上9個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列(TNPWHSPRQGSF)のうち4個以上12個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチド
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド
【0021】
本発明において、「配列番号1(又は2)に記載のアミノ酸配列のうちn個の連続するアミノ酸残基からなるペプチド」とは、配列番号1(又は2)に記載のアミノ酸配列から、該配列における順序を維持して選択されるn個のアミノ酸残基からなるペプチドを意味する。
例えば、「配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち4個の連続するアミノ酸残基からなるペプチド」としては、「QAFE」からなるペプチド、「AFEP」からなるペプチド、「FEPI」からなるペプチド等が挙げられる。
【0022】
本発明者らは、各種ペプチド混合物の一斉分析情報や、食欲不振に影響を及ぼす既知のペプチドの構造-活性相関情報に基づき検討した結果、食欲不振の治療等に対して効果を示す新規ペプチド、すなわち、上記ペプチドを発見した。
なお、配列番号1及び2に記載のアミノ酸配列は、いずれも、「ズブチリシン(subtilisin)」(サブチリシン、サチライシンとも呼ばれる。)による、米胚乳タンパク質の酵素消化物である。
【0023】
本発明のペプチドは、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドであってもよく、その部分ペプチドであってもよい。
【0024】
本発明のペプチドが配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドの部分ペプチドである場合、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、好ましくは4個以上8個以下、より好ましくは4個以上5個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチドが好ましい。
【0025】
本発明のペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドの部分ペプチドである場合、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、好ましくは4個以上10個以下、より好ましくは4個以上8個以下の連続するアミノ酸残基からなるペプチドが好ましい。
【0026】
本発明のペプチドが配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるペプチドの部分ペプチドである場合、好ましい配列として以下が挙げられる。
配列番号3で表されるアミノ酸配列(QAFE)からなるペプチド
配列番号4で表されるアミノ酸配列(PIRSV)からなるペプチド
【0027】
本発明のペプチドが配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるペプチドの部分ペプチドである場合、好ましい配列として以下が挙げられる。
配列番号5で表されるアミノ酸配列(TNPW)からなるペプチド
配列番号6で表されるアミノ酸配列(HSPR)からなるペプチド
配列番号7で表されるアミノ酸配列(QGSF)からなるペプチド
【0028】
本発明のペプチドは、配列番号1又は2に記載のアミノ酸配列からなり、かつ、ズブチリシン消化物であってもよい。
【0029】
本発明者らによるさらなる検討の結果、本発明のペプチドは、グレリン分泌を促進することで食欲向上効果をもたらし、食欲不振の治療や予防の効果を奏し得ることが見出された。
【0030】
本発明のペプチドは、化学合成や、天然のタンパク質(米胚乳タンパク質)又はポリペプチドの加水分解によって得られる。
【0031】
化学合成の方法としては、公知のペプチド合成法が挙げられる。具体的には、ペプチド合成に通常用いられる方法である液相法又は固相法が挙げられる。さらに具体的には、Fmoc法、Boc法等が挙げられる。合成されたペプチドは、精製してもよい。精製方法としては、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を用いた方法が挙げられる。
【0032】
加水分解の方法としては、加水分解酵素を用いた方法、強酸又は強塩基を用いた方法等が挙げられる。
【0033】
加水分解酵素を用いた方法においては、動物、植物又は微生物由来の加水分解酵素(ズブチリシン等)を使用できる。加水分解酵素としては、食品として用いることができる微生物(例えば、パン酵母、ビール酵母等の食用酵母)等を用いてもよい。
【0034】
加水分解酵素を用いた加水分解の条件としては、特に限定されないが、用いる酵素に応じてpHを適切な値に調整し、30~40℃程度の温度下にて、30分~48時間反応させてもよい。得られた反応液から本発明のペプチドを精製して用いてもよい。加水分解した対象が食品素材である場合は、そのまま、又は、他の食品素材に添加して食品として供することもできる。
【0035】
強酸を用いた方法においては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等を用いることができる。強塩基を用いた方法においては、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)を用いることができる。
【0036】
強酸又は強塩基を用いた加水分解の条件としては、特に限定されないが、強酸又は強塩基の存在下で、水中で、1~100℃の温度下にて、30分~48時間反応させてもよい。加水分解の反応生成物は、pHを調製した後、そのまま使用してもよく、精製により本発明のペプチドを単離して使用してもよい。
【0037】
各種方法によって得られたペプチドのアミノ酸配列は、エドマン分解法でC-末端からアミノ酸配列を読み取るプロテインシークエンサー、GC-MS等で分析できる。
【0038】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、少なくとも本発明のペプチドを含む。本発明の組成物は、本発明のペプチドからなるものであってもよく、その他の成分を含んでいてもよい。本発明の組成物に含まれるペプチドは、本発明のペプチドをアミノ酸配列の一部として含むタンパク質であってもよい。
【0039】
本発明のペプチドを摂取することにより、食欲不振を治療、予防、又は改善できる。したがって、本発明の組成物は、食欲不振の治療、予防、又は改善のために好ましく使用できる。
【0040】
本発明において、「食欲不振」とは、食欲の減少や摂食量の減少を意味する。本発明によれば、グレリン分泌の低下によってもたらされる食欲不振を特に良好に治療、予防、又は改善できる。
【0041】
本発明において、「治療」とは、例えば、食欲不振の治癒等を意味する。「予防」とは、例えば、食欲不振の抑制又は遅延等を意味する。「改善」とは、例えば、食欲不振の緩和、軽減等を意味する。
【0042】
本発明の組成物は、任意の形態に調製でき、医薬品や飲食品として調製してもよい。
【0043】
本発明の組成物を医薬品として調製する場合、経口投与剤又は非経口投与剤として調製できる。本発明の組成物は、例えば、本発明のペプチド単独で、又は、担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、以下の製剤として調製できる;タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠等)、カプセル、トローチ、粉末、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、ペースト、クリーム、注射剤(アミノ酸輸液、電解質輸液等の輸液に配合する場合を含む)、腸溶性の錠剤、カプセル剤、徐放性製剤等。
【0044】
担体、希釈剤又は賦形剤としては、製剤分野において常用され、かつ本発明のペプチドと反応しない物質が用いられる。例えば、以下のものが挙げられる;乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等。
【0045】
本発明の組成物を飲食品として調製する場合、任意の形態に調製でき、例えば、以下のものが挙げられる;飲料類(コーヒー、ココア、ジュース、清涼飲料、ミネラル飲料、茶飲料、緑茶、紅茶、烏龍茶、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料等)、ガム、グミ、ゼリー、キャンディ、クッキー、クラッカー、ビスケット、氷菓(アイスクリーム、アイスキャンディ、シャーベット、かき氷等)、レトルト食品、ゼリー状食品(ゼリー、寒天、ゼリー状飲料等)等。
【0046】
本発明の飲食品は、いわゆる健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、機能性表示食品、病者用食品・病者用組合せ食品(厚生労働省、特別用途食品の一種)又は高齢者用食品(厚生労働省、特別用途食品の一種)として調製してもよい。
【0047】
本発明の組成物における、本発明のペプチドの量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。例えば、組成物に対して、本発明のペプチドを、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは1.00質量%以上配合してもよい。また、組成物に対して、本発明のペプチドを、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下配合してもよい。なお、上記の値は、本発明の組成物に本発明のペプチド以外のペプチドが含まれる場合、本発明のペプチドの量に換算したものである。
【0048】
本発明の組成物における、本発明のペプチド以外の成分の量は、該成分の種類、組成物の形態、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
【0049】
本発明の組成物の投与方法は特に限定されず、経口投与、又は非経口投与(注射等)のいずれであってもよい。本発明の効果が奏されやすいという観点から、本発明の組成物は経口投与されることが好ましい。
【0050】
本発明の組成物の投与量は、投与方法、投与対象の状態や年齢等により異なるが、例えば、本発明のペプチドの量に換算して、成人1日あたり、好ましくは0.01mg/kg~500mg/kg、より好ましくは0.05mg/kg~100mg/kg、さらに好ましくは0.1mg/kg~30mg/kgである。上記範囲内において、投与量が多いほど、本発明の効果がより奏されやすい傾向にある。
【0051】
本発明の組成物の製造方法としては、得ようとする形態に応じて、公知の方法を採用できる。
【0052】
<食欲不振を治療、予防、又は改善する方法>
本発明の組成物を対象に投与することで、食欲不振を治療、予防、又は改善することができる。
【0053】
投与方法は、組成物の形態に応じて適宜選択することができる。
【0054】
投与回数、投与間隔、投与量は、投与対象の状態(症状、年齢、体重等)に応じて適宜選択することができる。
【0055】
投与対象としては特に限定されず、ヒト、ヒト以外の哺乳類(イヌ、ネコ、家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)等)等が挙げられる。
【0056】
<グレリン分泌促進剤>
上記のとおり、本発明のペプチドはグレリン分泌促進効果を有する。したがって、本発明のペプチドは、グレリン分泌促進剤として有効である。
【0057】
本発明のグレリン分泌促進剤は、少なくとも本発明のペプチドを含み、本発明のペプチドからなるものであってもよく、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分を含む場合、本発明のペプチドの作用を阻害しなければ任意の成分を配合することができ、例えば、上記<本発明の組成物>の項で挙げた成分を配合してもよい。
【実施例
【0058】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<試験1>
(ペプチドの作製-1)
精製した米胚乳タンパク質、及び各種消化酵素を水に溶解させ、質量比が米胚乳タンパク質:酵素=100:1、かつ、米胚乳タンパク質の終濃度が20mg/mlとなるように混合し、酵素反応を行い、ペプチドを各種酵素消化物として得た。
【0060】
使用した消化酵素、及び反応条件は以下のとおりである。下記反応時間の経過後、各試料をボイル(100℃、10分間)し、酵素反応を停止した。
(1)ズブチリシン(商品名「T1426」、Sigma-Aldrich社製):反応温度37℃、反応時間5時間、反応pH7.5
(2)スミチーム(商品名「スミチームFP」、新日本化学社製):反応温度:50℃、反応時間:5時間、反応pH7.5
(3)サーモリシン(商品名「Thermolysin」、Seikagaku社製):反応温度37℃、反応時間5時間、反応pH7.0~7.5
【0061】
(グレリン分泌活性の評価-1)
上記(ペプチドの作製-1)で得られたペプチドを、以下の試験に供し、各ペプチドがグレリン分泌に与える影響を評価した。ペプチド投与によってグレリン分泌が促進されるほど、該ペプチドが高い食欲促進効果を有することを意味する。
【0062】
グレリン分泌細胞(MGN3-1)を96ウェルプレートへ1×10cells/wellとなるように播種し、オクタン酸ナトリウム/DMEM培地中で、37℃で24時間培養した。培養後、細胞をDPBSで洗浄した。バッファー溶液として調製した各ペプチド100μL(ペプチド濃度1又は10mg/mL)を細胞へ添加し、さらに37℃で4時間培養した。なお、バッファーとしては、DMEM中50μM オクタン酸ナトリウムを用いた。
【0063】
また、以下の全ての試験において、特段の記載がない限り、ペプチドの代わりにバッファーのみを添加した点以外は上記同様に培養したものを対照として用意した。
【0064】
培養後、培地試料を回収し遠心分離処理により上清を得た。上清に1N HClを10μL添加し、下記グレリン濃度測定の実施をするまで-80℃で保存した。
【0065】
各培地試料中のグレリン濃度をELISAキット(商品名「Ghrelin (Acylated) EIAKit A05117」、Bertin Pharma社製)を用いて測定した。その結果を図1に示す。なお、図1の結果は、対照の測定値に対する相対値として示した。
【0066】
図1に示されるとおり、ズブチリシン消化物、スミチーム消化物、及びサーモリシン消化物は、それぞれグレリン分進効果を有することがわかった。
特に、ズブチリシン消化物及びスミチーム消化物は、濃度依存的に顕著なグレリン分泌促進効果を有することがわかった。
【0067】
<試験2>
(ペプチドの作製-2)
上記(グレリン分泌の評価-1)の結果を踏まえ、グレリン分泌促進効果与するズブチリシン消化物中のペプチドをスクリーニングし、以下の2種のペプチドを候補として特定した。そこで、これらのペプチドを、Fmoc法による合成、次いで、逆相HPLCによる精製によって作製した。なお、以下、「配列番号nで表されるアミノ酸配列からなるペプチド」を、単に「配列番号nのペプチド」ともいう。
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列(QAFEPIRSV)からなるペプチド
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列(TNPWHSPRQGSF)からなるペプチド
【0068】
(グレリン分泌活性の評価-2)
上記2種のペプチドを用いて、上記(グレリン分泌活性の評価-1)と同様の方法で、各ペプチドがグレリン分泌に与える影響を評価した。その結果を図2に示す(n=4)。なお、本例においては、ペプチド濃度が0.01、0.1又は1mMであるペプチド溶液を使用した。
【0069】
図2に示されるとおり、配列番号1又は2のペプチドは、いずれもグレリン分泌促進効果を有することがわかった。特に、ペプチド濃度が1mM以上であるとその効果が顕著だった。
【0070】
<試験3>
上記(ペプチドの作製-2)で作製した、配列番号1のペプチドを用いて、グレリン分泌促進効果の作用を検証した。具体的には、配列番号1のペプチドの投与が、細胞内外のグレリン濃度に及ぼす影響、及び、グレリン合成関連遺伝子発現に及ぼす影響を検証した。
【0071】
(グレリン分泌活性の評価-3)
配列番号1のペプチドを用いて、上記(グレリン分泌活性の評価-1)と同様の方法で、ペプチドがグレリン分泌(細胞内のグレリン濃度)に与える影響を評価した。その結果を図3Aに示す(n=4~5)。
【0072】
(グレリン合成関連遺伝子発現の評価)
上記(グレリン分泌活性の評価-1)における培養完了後の細胞中の、グレリン合成に関連する3種の遺伝子(Preproghrelin、GOAT、及びPC3)の発現量を、以下の方法で測定した。まず、「RNeasy Mini Kit」(QIA-GEN社製)、及び「Takara PrimeScript RT Master Mix」(タカラバイオ社製)を用いて細胞からmRNAを抽出した。次いで、「LightCycler 96 System」(Roche Diagnostic社製)、及び「THUNDERBIRD qPCR Mix」(東洋紡社製)を用いて、cDNAを増幅させ、mRNA発現量を測定した。その結果を図3B(Preproghrelin)、図3C(GOAT)、図3D(PC3)に示す(それぞれ、n=4~5)。
【0073】
図3Aに示されるとおり、配列番号1のペプチドの投与により、細胞内のグレリン濃度は減少する傾向にあった。なお、配列番号1のペプチドの投与により、細胞外のグレリン濃度が増加した(データは示していない。)。
【0074】
図3B~Dに示されるとおり、グレリン合成関連遺伝子の発現量は、いずれも配列番号1のペプチドの投与による変化が認められなかった。
【0075】
以上の結果から、配列番号1のペプチドは、グレリン合成を促進するのではなく、細胞外へのグレリン分泌を促進することで、グレリン分泌促進効果をもたらすことがわかった。
【0076】
<試験4>
上記<試験3>の結果を踏まえ、配列番号1のペプチドによるグレリン分泌促進効果の作用を検証した。具体的には、配列番号1のペプチドの投与が、細胞内cAMP濃度及び細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度に与える影響を検証した。
【0077】
なお、ノルアドレナリンは、細胞内のcAMP濃度及び細胞内カルシウムイオン濃度の増加を介して、グレリンの分泌を促進することが知られる。そこで、以下の試験では、陽性対照としてノルアドレナリンを用いたものも用意した。
【0078】
(細胞内cAMP濃度の評価)
グレリン分泌細胞(MGN3-1)を0.5mM IBMXを含むKrebs-Ringer-HEPESバッファーに溶解させ、37℃、30分インキュベートした後に、細胞内のcAMPを「HitHunter cAMP Assay for small molecules」(DiscoveRx社製)を用いて定量した。その結果を図4に示す。
【0079】
(細胞内カルシウムイオン濃度の評価)
「Calcium Kit II-Fluo 4」(同仁化学研究所)を使用し、マルチプレートリーダー(BMG LABTECH GmbH社製、λex=485nm,λem=520nm)を用いて測定した。
【0080】
図4に示されるとおり、配列番号1のペプチドは、細胞内cAMP濃度に影響を及ぼさなかった。また、配列番号1のペプチドは、細胞内カルシウムイオン濃度にも影響を及ぼさなかった(データは示していない。)。このことは、配列番号1のペプチドがノルアドレナリンとは異なる経路を介してグレリンの分泌を促進することを示唆する。
【0081】
<試験5>
配列番号1のペプチドをマウスに投与し、in vivoにおける効果を検証した。具体的には、配列番号1のペプチドの投与がマウスの摂食行動、及び血清中グレリン濃度に及ぼす影響を検証した。
【0082】
(マウスの摂食行動の評価-1)
マウス(ddYマウス、11週齢の雄)に、生理食塩水に溶解させた配列番号1のペプチド(1mg/kg)を単回経口投与した。次いで、あらかじめ秤量した飼料(商品名「CE-2」、日本クレア社製)を摂食させ、摂食4時間後に残った飼料重量を測定した。
また、配列番号1のペプチドの代わりに生理食塩水を単回経口投与した点以外は上記同様の試験を対照試験として行った。
マウスに給餌した飼料重量と、摂食4時間後に残った飼料重量との差を摂食量(g/4時間)として特定した。その結果を図5A(n=10~11)に示す。
【0083】
(マウスの血清中グレリン濃度の評価)
マウス(ddYマウス、11週齢の雄)に、生理食塩水に溶解させた配列番号1のペプチド(0.3mg/kg)を投与した。次いで、投与1時間後にマウスの眼窩静脈から採血し、1120×g、10分間、4℃で遠心分離し、上清を1N HClで酸性化した後、アシル化グレリン酵素免疫測定キットを用いて血清中グレリン濃度(pg/ml)を測定した。その結果を図5B(n=5~7)に示す。
【0084】
図5Aに示されるとおり、配列番号1のペプチドは、マウスの摂食量を増加させ、食欲促進効果を示した。また、図5Bに示されるとおり、配列番号1のペプチドを投与することにより、血清中グレリン濃度を増加させた。
【0085】
<試験6>
上記(ペプチドの作製-2)で作製した配列番号1及び2のペプチド、並びにこれらの部分ペプチド(配列番号3~7のペプチド)を、Fmoc法による合成、次いで、逆相HPLCによる精製によって作製した。次いで、これらの各ペプチドをマウスに投与し、in vivoにおける効果を検証した。具体的には、各ペプチドの投与がマウスの摂食行動に及ぼす影響を検証した。
【0086】
本例で用いたペプチドは以下の7種である。
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列(QAFEPIRSV)からなるペプチド
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列(TNPWHSPRQGSF)からなるペプチド
(3)配列番号3で表されるアミノ酸配列(QAFE)からなるペプチド
(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列(PIRSV)からなるペプチド
(5)配列番号5で表されるアミノ酸配列(TNPW)からなるペプチド
(6)配列番号6で表されるアミノ酸配列(HSPR)からなるペプチド
(7)配列番号7で表されるアミノ酸配列(QGSF)からなるペプチド
【0087】
(マウスの摂食行動の評価-2)
マウス(ddYマウス、7週齢の雄を購入し1週間以上順化して使用)に、生理食塩水に溶解させた各ペプチド(1mg/kg)を単回経口投与した。次いで、あらかじめ秤量した飼料(商品名「CE-2」、日本クレア社製)を摂食させ、摂食2時間後に残った飼料重量を測定した。
また、各ペプチドの代わりに生理食塩水を単回経口投与した点以外は上記同様の試験を対照試験として行った。
マウスに給餌した飼料重量と、摂食2時間後に残った飼料重量との差を摂食量(g/2時間)として特定した。この結果に基づき、各群における摂取量を、対照の摂取量を「100」とした場合の相対値として算出した。その結果を図6(n=7~18、* 対照に対してP<0.05)に示す。
【0088】
図6に示されるとおり、いずれのペプチドもマウスの摂食量を増加させ、食欲促進効果を示した。このような効果は、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドだけではなく、その部分ペプチドにおいても認められた。
特に、配列番号3、5、6又は7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、対照と比較して、飼料摂取量が有意に増加した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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