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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 50/04 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B65D50/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019094593
(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公開番号】P2020189643
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190068
【氏名又は名称】伸晃化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 政希
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上坊寺 貴大
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05579934(US,A)
【文献】国際公開第2017/143084(WO,A1)
【文献】特開2018-111533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0120896(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/000-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に着脱可能に装着されるねじ式の内キャップと、
前記内キャップを覆うように前記内キャップに取り付けられた外キャップとを備え、
前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に回転できない第1状態から、前記外キャップに対して前記内キャップに向かう所定の大きさの力を加えた押圧状態でない限り、前記外キャップが前記内キャップに対して緩め方向に相対的に回転する第2状態へ、不可逆的に移行可能なキャップであって、
前記内キャップは、中心軸を中心とする円筒形状の第1周壁を備え、
前記内キャップの複数の歯は、前記第1周壁の上端部の径方向外側表面から径方向外向きに突出し、
前記内キャップの複数の突起は、前記内キャップの複数の歯の下方に配置され、前記第1周壁の径方向内側表面から径方向内向きに突出し、
前記外キャップは、前記中心軸を中心とする円筒形状の第2周壁と、前記第2周壁の径方向内側表面から径方向内向きに突出した内周リブとを備え、
前記外キャップの複数の歯は、前記内周リブの下方に配置され、前記第2周壁の径方向内側表面から径方向内向きに突出し、
前記外キャップの複数の突起は、前記内周リブの上方に配置され、
前記第1状態において、前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に回転できないように互いに嵌め合わされ、
前記第2状態において、前記内キャップに設けられた複数の突起の上を、前記外キャップに設けられた複数の突起が滑ることで、前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に緩め方向に回転
前記キャップは、前記第1状態において、前記外キャップを前記内キャップに向かって所定の大きさで押した場合に、前記外キャップの前記内周リブが前記内キャップの歯を乗り越えることによって、前記第2状態へ不可逆的に移行する、
キャップ。
【請求項2】
前記内キャップの複数の突起は、周方向に対して傾斜した第1傾斜部をそれぞれ備え、
前記外キャップの複数の突起は、周方向に対して前記第1傾斜部と逆向きに傾斜した第2傾斜部をそれぞれ備え、
前記第2状態において前記外キャップに緩め方向の力を加えた場合、前記外キャップの前記第2傾斜部は、前記内キャップの前記第1傾斜部に接触し、その後、前記内キャップの前記第1傾斜部の上を滑って乗り越え、これにより、前記容器に対して前記内キャップを相対的に緩め方向に回転させることができず、
前記第2状態において前記外キャップに下向きの力を加えつつ緩め方向の力を加えた場合、前記外キャップの前記第2傾斜部は、これに接触した前記内キャップの前記第1傾斜部を押し、これにより、緩め方向の力が前記内キャップに伝わり、前記内キャップを前記容器に対して相対的に緩め方向に回転させて開栓できる、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記内キャップの複数の突起は、前記第1傾斜部に周方向に対向して配置され、周方向に対して垂直に延びた第1垂直部を更に備え、
前記外キャップの複数の突起は、前記第2傾斜部に周方向に対向して配置され、周方向に対して垂直に延びた第2垂直部を更に備え、
前記第2状態において前記外キャップに締め方向の力を加えた場合、前記外キャップの前記第2垂直部は、前記内キャップの前記第1垂直部に接触してこれを締め方向に押し、前記内キャップを前記容器に対して相対的に締め方向に回転させて閉栓できる、
請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記内キャップ及び前記外キャップは、径方向に突出するとともに周方向に並んだ複数の歯をそれぞれ備え、
前記内キャップの複数の歯と前記外キャップの複数の歯とは、前記第1状態において互いに噛み合う、
請求項1~3のいずれかに記載のキャップ。
【請求項5】
容器に着脱可能に装着されるねじ式の内キャップと、
前記内キャップを覆うように前記内キャップに取り付けられた外キャップとを備え、
前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に回転できない第1状態から、前記外キャップに対して前記内キャップに向かう所定の大きさの力を加えた押圧状態でない限り、前記外キャップが前記内キャップに対して緩め方向に相対的に回転する第2状態へ、不可逆的に移行可能なキャップであって、
前記第1状態において、前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に回転できないように互いに嵌め合わされ、
前記第2状態において、前記内キャップに設けられた複数の突起の上を、前記外キャップに設けられた複数の突起が滑ることで、前記外キャップが前記内キャップに対して相対的に緩め方向に回転し、
前記内キャップは、
中心軸を中心とする円筒形状の第1周壁と、
前記第1周壁の上端部の径方向外側表面から径方向外向きに突出した複数の外歯と、
平面視において中空の多角形の形状を有し、径方向内側に径方向内向きに突出して前記複数の歯と噛み合う複数の内歯を有する噛合部と、
前記複数の外歯と前記複数の内歯とを連結する連結部とを備え、
前記外キャップは、
平面視において前記多角形の形状を有する天板部と、
前記天板部の周縁から下方に延びた多角柱形状の第2周壁と、
前記第2周壁の径方向内側表面から径方向内向きに突出した突出部とを備え、
前記第1状態において、前記外キャップの前記突出部は、前記内キャップの噛合部の上に乗り、
前記外キャップを前記内キャップに向かって所定の大きさで押した場合に、前記連結部が破断して、前記噛合部と前記外キャップとが下方に移動することによって、第2状態へ不可逆的に移行する
ャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関し、特に、チャイルドレジスタンス機能を無効状態から有効状態へ切り換えることができるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器、特に医薬品容器に封をするキャップにおいて、子供が簡単にキャップを取り外して容器を開栓し、容器の内容物を誤って摂取することを防ぐチャイルドレジスタンス(CR)機能を有するキャップが知られている。例えば、特許文献1は、内蓋に対して外蓋を押しながら回さない限り開栓できない安全蓋を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたCR機能を有する安全蓋は、開栓動作の手順が煩雑であり、また、開栓のためにある程度強い力が必要であるため、特に高齢者にとっては使い勝手が良くない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、CR機能を無効状態から有効状態へ切り換えることができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、容器に着脱可能に装着されるねじ式の内キャップと、内キャップを覆うように内キャップに取り付けられた外キャップとを備えるキャップを提供する。キャップは、外キャップが内キャップに対して相対的に回転できない第1状態から、外キャップに対して内キャップに向かう所定の大きさの力を加えた押圧状態でない限り、外キャップが内キャップに対して緩め方向に相対的に回転する第2状態へ、不可逆的に移行可能である。キャップは、第1状態において、外キャップが内キャップに対して相対的に回転できないように互いに嵌め合わされ、第2状態において、内キャップに設けられた複数の突起の上を、外キャップに設けられた複数の突起が滑ることで、外キャップが内キャップに対して相対的に緩め方向に回転する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、CR機能を無効状態から有効状態へ切り換えることができるキャップを得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るキャップの分解斜視図である。
図2】内キャップの平面図である。
図3】内キャップの底面図である。
図4】内キャップを図2のIV-IV方向に見た片側断面図である。
図5】外キャップの斜視図である。
図6】外キャップの平面図である。
図7】外キャップの底面図である。
図8】外キャップを図6のVIII-VIII方向に見た片側断面図である。
図9】容器と、容器に取り付けられた初期状態のキャップとを示す斜視図である。
図10図9の容器及びキャップの平面図である。
図11図10の容器及びキャップをXI-XI方向に見た片側断面図である。
図12図11のキャップをXII-XII方向に見た端面図である。
図13図12の外キャップの歯及びラチェット爪と、内キャップの歯及びラチェット歯と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。
図14】容器と、容器に取り付けられたCR状態のキャップとを示す斜視図である。
図15図14の容器及びキャップの平面図である。
図16図15の容器及びキャップをXVI-XVI方向に見た片側断面図である。
図17図16のキャップをXVII-XVII方向に見た端面図である。
図18図17の外キャップの歯及びラチェット爪と、内キャップの歯及びラチェット歯と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。
図19】CR機能を説明するための図である。
図20】CR機能を説明するための図である。
図21】CR機能を説明するための図である。
図22】本発明の第2実施形態に係るキャップの分解斜視図である。
図23】容器と、容器に取り付けられた初期状態のキャップとを示す斜視図である。
図24図23の容器及びキャップの平面図である。
図25図24の容器及びキャップをXXV-XXV方向に見た片側断面図である。
図26図25のキャップをXXVI-XXVI方向に見た端面図である。
図27】容器と、容器に取り付けられたCR状態のキャップとを示す斜視図である。
図28図27の容器及びキャップの平面図である。
図29図28の容器及びキャップをXXIX-XXIX方向に見た片側断面図である。
図30図29のキャップをXXX-XXX方向に見た端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るキャップについて、図面を参照して説明する。各実施形態において、同一の構成には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0010】
<第1実施形態>
[1.構造]
[1-1.概要]
図1は、本発明の第1実施形態に係るキャップ1の分解斜視図である。キャップ1は、内キャップ2と外キャップ3とを備える。内キャップ2は、外キャップ3の中に周方向に回転可能に嵌め込まれる。
【0011】
図1には、説明の便宜のため、中心軸Cを示している。本明細書では、中心軸Cに平行な方向を軸方向と、軸方向に垂直な方向を径方向と、中心軸を中心とする円周方向を周方向と呼ぶ。軸方向について、紙面に向かって上向きの方向を正とする。軸方向の正方向を上方向、軸方向の負方向を下方向とも呼ぶ。周方向については、容器9に対してキャップ1を回転させた場合にねじが進んでキャップ1が締まる(閉じる)相対的な方向を「締め方向」と、締め方向と反対向きであってねじが後退してキャップ1が緩む(開く)相対的な方向を「緩め方向」と呼ぶ。本明細書及び添付の図面では、容器9に対して相対的に時計回り(右回り)に回した場合に締まる右ねじ式のキャップ1が示されている。
【0012】
[1-2.内キャップ]
以下、図1~4を参照して内キャップ2の構造について説明する。図2及び図3は、それぞれ内キャップ2の平面図及び底面図である。図4は、内キャップ2を図2のIV-IV方向に見た片側断面図である。図4の左半分は内キャップ2の側面図であり、右半分は断面図である。
【0013】
内キャップ2は、中心軸Cを中心とする円板形状の天板部201と、天板部201の周縁から上方に延びた円筒形状の第1周壁202とを備える。第1周壁202の上端部付近の径方向外側表面には、径方向外向きに突出した複数の歯203が形成されている。歯203は、周方向に配列されている。複数の歯203は、平面視において平歯車様の構成を有する。内キャップ2の歯203は、後述の初期状態において、外キャップ3の歯304と噛み合う。
【0014】
天板部201の表面には、上向きに突出した複数のラチェット歯204が形成されている。ラチェット歯204は、周方向に配列されている。ラチェット歯204は、第1周壁202の径方向内側表面に接触しており、言い換えれば、第1周壁202の径方向内側表面から径方向内向きに突出している。
【0015】
各ラチェット歯204は、緩め方向に、天板部201に対して垂直な側面である第1垂直部205を備える。また、各ラチェット歯204は、締め方向に、第1傾斜部206を備える。第1傾斜部206の天板部201からの高さは、締め方向に進むに連れて漸次減少している。内キャップ2のラチェット歯204は、後述の外キャップ3のラチェット爪306と協働して、ラチェット機構を構成する。内キャップ2のラチェット歯204は、ラチェット機構の歯として機能する。
【0016】
内キャップ2の天板部201の下には、容器9の口部の雄ねじ(図示せず)に嵌め合わされる雌ねじ209が形成されている。
【0017】
[1-3.外キャップ]
以下、図1及び図5~8を参照して外キャップ3の構造について説明する。図5は、外キャップ3の斜視図である。図6及び図7は、それぞれ外キャップ3の平面図及び底面図である。図8は、外キャップ3を図6のVIII-VIII方向に見た片側断面図である。図8の左半分は外キャップ3の側面図であり、右半分は断面図である。
【0018】
外キャップ3は、中心軸Cを中心とする円板形状の天板部301と、天板部301の周縁から下方に延びた円筒形状の第2周壁302とを備える。図8に示すように、外キャップ3の第2周壁302の径方向内側表面には、径方向内向きに突出した内周リブ303が形成されている。後述の初期状態において、外キャップ3の内周リブ303は、内キャップ2の歯203の上に乗る(図11参照)。
【0019】
外キャップ3の第2周壁302の径方向内側表面には、内周リブ303より下方に、径方向内向きに突出した複数の歯304が形成されている。歯304は、周方向に配列されている。複数の歯304は、平面視において内歯車様の構成を有する。外キャップ3の歯304は、後述の初期状態において、内キャップ2の歯203と噛み合う。
【0020】
外キャップ3は、天板部301の裏面から下方に延びた円筒形状の壁305を更に備える。壁305の径方向外側表面と第2周壁302の径方向内側表面との間には隙間がある。外キャップ3は、天板部301の裏面から下方に延びた複数のラチェット爪306を更に備える。ラチェット爪306は、周方向に配列されている。ラチェット爪306は、外キャップ3の壁305の径方向外側表面に接触しており、言い換えれば、壁305の径方向外側表面から径方向外向きに突出している。
【0021】
各ラチェット爪306は、締め方向に、天板部301に対して垂直な側面である第2垂直部307を備える。また、各ラチェット爪306は、緩め方向に、第2傾斜部308を備える。天板部301の裏面から第2傾斜部308までの距離は、緩め方向に進むに連れて漸次減少している。外キャップ3のラチェット爪306は、内キャップ2のラチェット歯204と協働して、ラチェット機構を構成する。外キャップ3のラチェット爪306は、ラチェット機構の爪又は歯止めとして機能する。
【0022】
[2.動作]
図9~21を参照して、上記のように構成されたキャップ1の動作について説明する。キャップ1の状態は、使用者の操作によって、CR機能が無効である初期状態(「CR無効状態」又は「第1状態」と呼ぶ場合もある。)からCR機能が有効であるCR状態(「CR有効状態」又は「第2状態」と呼ぶ場合もある。)へ切り換わることができる。
【0023】
[2-1.初期状態]
図9は、容器9と、容器9に取り付けられた初期状態のキャップ1とを示す斜視図である。図10は、図9の容器9及びキャップ1の平面図である。図11は、図10の容器9及びキャップ1をXI-XI方向に見た片側断面図である。図12は、図11のキャップ1をXII-XII方向に見た端面図である。図13(a)は、図12の外キャップ3の歯304と、内キャップ2の歯203と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。図13(b)は、外キャップ3のラチェット爪306と、内キャップ2のラチェット歯204と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。図13では、紙面に向かって左方向が締め方向であり、右方向が緩め方向である。
【0024】
図11に示すように、初期状態においては、外キャップ3の内周リブ303は、内キャップ2の歯203の上に乗っている。また、図12及び図13(a)に示すように、初期状態においては、外キャップ3の歯304は、内キャップ2の歯203と噛み合っている。したがって、初期状態においては、外キャップ3は、内キャップ2に対して相対的に回転しない。言い換えれば、初期状態においては、外キャップ3は、内キャップ2と共に回転することはできるが、内キャップ2と独立に回転することはできない。
【0025】
したがって、外キャップ3に緩め方向の力が加えられると、外キャップ3の歯304と内キャップ2の歯203とを介して、緩め方向の力が内キャップ2に伝わり、内キャップ2が容器9に対して緩め方向に回転する。使用者は、容器9を固定してキャップ1の外キャップ3に緩め方向の力を加えることにより、キャップ1を容器9から取り外すことができる。
【0026】
一方、初期状態において、外キャップ3に締め方向の力が加えられると、外キャップ3の歯304と内キャップ2の歯203とを介して、締め方向の力が内キャップ2に伝わり、内キャップ2が容器9に対して締め方向に回転する。使用者は、容器9を固定してキャップ1の外キャップ3に締め方向の力を加えることにより、キャップ1を容器9に締め付け、閉栓動作を行うことができる。
【0027】
初期状態において、外キャップ3に下方向の力を加えると、外キャップ3の内周リブ303が内キャップ2の歯203を乗り越えて下方に移動し、キャップ1はCR状態に移行する。外キャップ3の下方への移動は、内キャップ2の第1周壁202及び歯203の上端が外キャップ3の天板部301の裏面に接触することにより終了する。
【0028】
初期状態からCR状態への移行により、外キャップ3の歯304の下端は、図13(a)に示した、内キャップ2を基準とする初期高さ(又は第1高さ)L0から、CR高さ(又は第2高さ)L1まで下降する。外キャップ3の歯304の下端の初期高さL0とCR高さL1との差は、初期状態における外キャップ3の天板部301の裏面と、内キャップ2の第1周壁202及び歯203の上端との差に等しい(図11参照)。
【0029】
図13(b)には外キャップ3のラチェット爪306と、内キャップ2のラチェット歯204とを示している。初期状態からCR状態への移行により、外キャップ3のラチェット爪306の下端は、内キャップ2を基準とする初期高さ(又は第1高さ)M0から、CR高さ(又は第2高さ)M1まで下降する。
【0030】
キャップ1を初期状態からCR状態に切り換えるために必要な外キャップ3への下方向の力は、キャップ1が意図せずCR状態に切り換わってしまうことを防止するために、ある程度大きな力であるように設計されてもよい。もっとも、この下方向の力は、通常の大人であれば加えることができる大きさである。例えば、この下方向の力は、通常の大人がキャップ1に体重を掛けながら手で押すことによって実現される程度の大きさの力である。例えば、キャップ1を初期状態からCR状態に切り換えるために必要な外キャップ3への下方向の力の大きさは、50N~300Nであり、例えば100N又は200Nである。
【0031】
[2-2.CR状態]
図14は、容器9と、容器9に取り付けられたCR状態のキャップ1とを示す斜視図である。図15は、図14の容器9及びキャップ1の平面図である。図16は、図15の容器9及びキャップ1をXVI-XVI方向に見た片側断面図である。図17は、図16のキャップ1をXVII-XVII方向に見た端面図である。図18(a)は、図17の外キャップ3の歯304と、内キャップ2の歯203と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。図18(b)は、外キャップ3のラチェット爪306と、内キャップ2のラチェット歯204と、を周方向に切断した断面を径方向外側から見た図である。
【0032】
CR状態の図16と初期状態の図11とを比較してわかるように、初期状態と異なり、CR状態においては、内キャップ2の歯203は、外キャップ3の内周リブ303より上方にある。内キャップ2の第1周壁202及び歯203の上端は、外キャップ3の天板部301の裏面に接触している。
【0033】
CR状態の図17及び図18(a)と初期状態の図12及び図13(a)とを比較してわかるように、初期状態と異なり、CR状態においては、外キャップ3の歯304と、内キャップ2の歯203とは、噛み合っていない。また、図13(b)と比較すると、図18(b)では、外キャップ3のラチェット爪306の下端が、内キャップ2のラチェット歯204の上端より下にある。したがって、CR状態においては、内キャップ2に対して外キャップ3が相対的に周方向に回転すると、外キャップ3のラチェット爪306が内キャップ2のラチェット歯204に接触する。
【0034】
CR状態においては、外キャップ3の歯304と内キャップ2の歯203とが噛み合っていないため、外キャップ3に緩め方向の力が加えられても、その力が外キャップ3の歯304を介して内キャップ2の歯203に伝わることはない。
【0035】
CR状態においては、外キャップ3に緩め方向の力が加えられると、外キャップ3が内キャップ2に対して相対的に緩め方向に移動する。この移動により、外キャップ3のラチェット爪306が緩め方向に移動する。例えば、外キャップ3のラチェット爪306は、図18(b)に示した位置から緩め方向に移動し、図19(b)に示すように内キャップ2のラチェット歯204に接触する。
【0036】
図19(b)では、外キャップ3のラチェット爪306の第2傾斜部308は、内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206に接触している。この状態において、外キャップ3に緩め方向の力が加えられると、ラチェット爪306の第2傾斜部308を介して、一定の緩め方向の力が内キャップ2に伝わる。内キャップ2は、容器9にねじ作用によってしっかりと締め付けられているため、容器9に対して内キャップ2を相対的に緩め方向に回転させるためにはある程度強い力が必要である。しかし、この必要な緩め方向の力が内キャップ2に伝わる前に、外キャップ3のラチェット爪306は、図20(b)に示したように内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206を上る。図20(b)に示した状態から外キャップ3に緩め方向の力が更に加えられると、外キャップ3のラチェット爪306は、内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206を乗り越え、図21(b)に示した状態になる。図21(b)に示した状態は、図18(b)に示した状態と同様の状態である。
【0037】
このように、外キャップ3に緩め方向の力が加えられると、外キャップ3及び内キャップ2は、図18~20に示した状態を繰り返す。したがって、容器9に対して内キャップ2を相対的に緩め方向に回転させるには至らず、容器9は開栓されない。
【0038】
開栓するためには、図19(b)のように外キャップ3のラチェット爪306の第2傾斜部308が内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206に接触している状態において、外キャップ3に下向きの力を加えながら、緩め方向の力を加える。すなわち、図19(b)に示した状態において外キャップ3に緩め方向の力を加えると、上記の通り、外キャップ3のラチェット爪306は、内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206を上ろうとする。この上昇動作を防ぐのに十分な下向きの力を上方から加えた押圧状態では、外キャップ3に緩め方向に力を加えると、容器9に対して内キャップ2を相対的に緩め方向に回転させるために必要な緩め方向の力が、内キャップ2に伝わる。したがって、内キャップ2が緩め方向に回転し、容器9を開栓することができる。
【0039】
以上のような下向きの力を上方から加えつつ外キャップ3を緩め方向に回転させる動作は、子供が容易に行うことができない複雑なものである。したがって、本実施形態によるキャップ1を用いることにより、CR機能を達成できる。
【0040】
さらに、開栓に必要な下向きの力は、子供が容易に加えることができない程度の一定の大きさの力であることが好ましい。このように設計することにより、より高いCR機能を達成できる。開栓のために必要な下向きの力は、外キャップ3のラチェット爪306の第2傾斜部308及び内キャップ2のラチェット歯204の第1傾斜部206の傾斜角度及び材質などによって決定される。
【0041】
一方、CR状態において、外キャップ3に締め方向の力が加えられると、外キャップ3のラチェット爪306の第2垂直部307が、内キャップ2のラチェット歯204の第1垂直部205を締め方向に押す(例えば図18(b)参照)。これにより、内キャップ2が容器9に対して締め方向に回転する。使用者は、容器9を固定してキャップ1の外キャップ3に締め方向の力を加えることにより、キャップ1を容器9に締め付け、閉栓動作を行うことができる。
【0042】
一度キャップ1がCR状態になると、外キャップ3に対して内キャップ2を下方に移動させようとしても、外キャップ3の内周リブ303の上部が内キャップ2の歯203の下端に当たるため(図16参照)、容易に初期状態に戻すことはできない。
【0043】
[3.効果等]
以上のように、本実施形態に係るキャップ1は、外キャップ3が内キャップ2に対して相対的に回転できない初期状態からCR状態へ、不可逆的に移行可能である。CR状態では、外キャップ3に対して上から所定の大きさの力が加えられない限り、外キャップ3は、内キャップ2に対して緩め方向に相対的に回転する。
【0044】
キャップ1は、初期状態からCR状態へ移行可能であるため、使用者の家庭環境に応じた使用方法を選択できる。例えば、CR機能が不要な使用者は、初期状態のままキャップ1を使用し、CR機能が必要な使用者は、キャップ1の外キャップ3を上から押し込んでCR状態に切り換えて使用する。CR状態への切換えは、医師や薬剤師等の操作者が行い、操作者がCR状態のキャップ1を患者等の使用者に交付してもよい。
【0045】
また、キャップ1は、初期状態からCR状態へ不可逆的に移行可能である。すなわち、CR状態から初期状態へは容易には戻らない。したがって、意図せずにキャップ1が初期状態に戻り、子供がキャップ1を開けてしまうという事態は起こらない。
【0046】
例えば蓋を押し込んだ場合にCRが有効な状態から無効な状態に切り換わる安全蓋においては、子供が誤って蓋を押し込んだ場合や事故によって蓋が押し込まれた場合にCRが無効な状態となり、子供がキャップ1を開けてしまうという事態が生じ得る。しかしながら、本実施形態に係るキャップ1は、初期状態からCR状態へ不可逆的に移行可能であるため、上記のような事態は生じない。
【0047】
<第2実施形態>
第1実施形態では、初期状態において外キャップ3の内周リブ303が内キャップ2の歯203の上に乗り(図11参照)、外キャップ3の歯304が内キャップ2の歯203と噛み合う例について説明した(図12及び図13(a)参照)。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0048】
図22は、本発明の第2実施形態に係るキャップ11の分解斜視図である。キャップ11は、内キャップ12と外キャップ13とを備える。内キャップ12は、外キャップ13の中に下方から嵌め込まれる。
【0049】
内キャップ12の第1周壁202の上端部付近の径方向外側表面には、径方向外向きに突出した複数の歯203aが形成されている。内キャップ12の歯203aは、周方向に配列されている。複数の歯203aは、平面視において平歯車様の構成を有する。
【0050】
内キャップ12の歯203aの周囲には、平面視において中空の八角形の形状を有する噛合部207が形成されている。噛合部207の径方向内側には、径方向内向きに突出した複数の歯203bが形成されている。歯203bは、周方向に配列されている。複数の歯203bは、平面視において内歯車様の構成を有する。歯203bは、初期状態において、歯203aと噛み合う。
【0051】
内キャップ12の噛合部207と歯203aとは、連結部208(図25参照)によって連結されている。連結部208は、噛合部207を軸方向に押すことにより破断できる薄肉部である。
【0052】
外キャップ13は、平面視において八角形の形状を有する天板部301aと、天板部301aの周縁から下方に延びた八角柱形状の第2周壁302aとを備える。
【0053】
図23は、容器9と、容器9に取り付けられた初期状態のキャップ11とを示す斜視図である。図24は、図23の容器9及びキャップ11の平面図である。図25は、図24の容器9及びキャップ11をXXV-XXV方向に見た片側断面図である。図26は、図25のキャップ11をXXVI-XXVI方向に見た端面図である。
【0054】
図25に示すように、外キャップ13には、天板部301aの裏面から下方に延びた突出部303aが形成されている。突出部303aは、外キャップ13の第2周壁302aの径方向内側表面に接触しており、言い換えれば、第2周壁302aの径方向内側表面から径方向内向きに突出している。
【0055】
図25に示すように、初期状態においては、外キャップ13の突出部303aは、内キャップ12の噛合部207の上に乗っている。また、図26に示すように、初期状態においては、内キャップ12の八角形形状の噛合部207と、外キャップ13の八角形形状の天板部301aとが周方向に噛み合っている。したがって、初期状態においては、外キャップ13は、内キャップ12に対して相対的に回転しない。言い換えれば、初期状態においては、外キャップ13は、内キャップ12と共に回転することはできるが、内キャップ12と独立に回転することはできない。
【0056】
したがって、初期状態において外キャップ13に緩め方向の力が加えられると、緩め方向の力が内キャップ12に伝わり、内キャップ12が容器9に対して緩め方向に回転する。使用者は、容器9を固定してキャップ1の外キャップ13に緩め方向の力を加えることにより、キャップ1を容器9から取り外すことができる。
【0057】
初期状態において、外キャップ13に下方向の力を加えると、外キャップ13の突出部303aを介して、内キャップ12の噛合部207に下方向の力が加わる。これにより、内キャップ12の連結部208が破断し、内キャップ12の噛合部207及び外キャップ13が下方に移動し、キャップ11はCR状態に移行する。
【0058】
図27は、容器9と、容器9に取り付けられたCR状態のキャップ11とを示す斜視図である。図28は、図27の容器9及びキャップ11の平面図である。図29は、図28の容器9及びキャップ11をXXIX-XXIX方向に見た片側断面図である。図30は、図29のキャップ11をXXX-XXX方向に見た端面図である。
【0059】
図29及び図30に示すように、CR状態においては、内キャップ12の噛合部207が落下しており、内キャップ12の歯203bは、歯203aと噛み合っていない。したがって、外キャップ13に緩め方向の力が加えられても、その力が内キャップ12の歯203a及び歯203bを介して内キャップ2に伝わることはない。
【0060】
一方、CR状態においては、第1実施形態と同様に、外キャップ13のラチェット爪306の下端が、内キャップ12のラチェット歯204の上端より下にある。したがって、CR状態においては、内キャップ12に対して外キャップ13が相対的に周方向に回転すると、図19(b)と同様に、外キャップ13のラチェット爪306が内キャップ12のラチェット歯204に接触する。
【0061】
CR状態における開栓動作については第1実施形態で述べたものと同様である。
【0062】
図示の例では、八角形形状を有する内キャップ12及び外キャップ13について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、内キャップ12及び外キャップ13は、平面視において三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形形状を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 キャップ
2 内キャップ
3 外キャップ
9 容器
201 天板部
202 第1周壁
203 歯
204 ラチェット歯
205 第1垂直部
206 第1傾斜部
207 噛合部
208 連結部
301 天板部
302 第2周壁
303 内周リブ
304 歯
305 壁
306 ラチェット爪
307 第2垂直部
308 第2傾斜部
図1
図2
図3
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図5
図6
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図26
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図28
図29
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