(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】粉塵抑制システム
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
(21)【出願番号】P 2019122468
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】503116073
【氏名又は名称】鈴健興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康修
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-303526(JP,A)
【文献】特開2003-172033(JP,A)
【文献】特開平06-280403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E01H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によって作業対象物の作業箇所に対して粉塵の発生を抑制可能な流体を放出する1台以上の流体放出機を有する粉塵抑制システムであって、
前記流体放出機は、前記流体を放出する放出ノズルと、該放出ノズルに連通して支持する第1回転側ボディと該第1回転側ボディを回転可能に支持する第1固定側ボディとを備える第1スイベルジョイント構造体と、第1支持部と該第1支持部に直線移動可能に支持される第1可動部とを備える第1電動直動機構と、該第1可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記第1回転側ボディを回転変位させる第1回転機構と、を備え、
前記流体放出機は、更に、
支持部材と、
前記放出ノズルと、前記第1電動直動機構と、前記第1回転機構と、第2支持部と該第2支持部に直線移動可能に支持される第2可動部とを備える第2電動直動機構と、を支持し、前記支持部材の支持軸に対して回転可能な回転部材と、
前記第2可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記回転部材を前記支持部材に対して回転移動させる第2回転機構と、
を備え、
前記支持軸と前記第1スイベルジョイント構造体の回転軸とは直交している
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1回転側ボディには第1レバー部が設けられ、
前記第1回転機構は、前記第1可動部と前記第1レバー部とを連結する第1連結部を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項3】
請求項
1または2において、
前記第2回転機構が、前記第2可動部の先端に設けられ該第2可動部の移動方向に沿って螺旋形状とされた第1外歯歯車と、該第1外歯歯車と嵌合する開口形状を中心軸に有して該第1外歯歯車の直線移動で回転し、かつ前記支持軸に固定された固定歯車と噛合する第2外歯歯車と、を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項4】
請求項
1または2において、
前記支持軸には第2レバー部が設けられ、
前記第2回転機構は、前記第2可動部と前記第2レバー部とを連結する第2連結部を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項5】
請求項
1または2において、
前記第2回転機構は、前記第2可動部に取り付けられたベース部材と、該ベース部材上で該第2可動部の移動方向に沿って所定の張力で保持される紐状部材と、該紐状部材と係合する外周に設けられた溝部を有し前記支持軸に固定されたプーリと、を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項6】
請求項
5において、
前記紐状部材は、前記溝部の全周回りに配置され、交差する形態とされている
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項7】
請求項
3乃至
6のいずれかにおいて、
前記流体放出機は、前記回転部材に支持され、前記第1スイベルジョイント構造体に連通して支持する第2回転側ボディと、前記支持軸に配置され、該第2回転側ボディを回転可能に支持する第2固定側ボディと、を備える第2スイベルジョイント構造体を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項8】
請求項
1乃至
7のいずれかにおいて、
前記流体放出機は、更に、第3支持部と該第3支持部に直線移動可能に支持される第3可動部とを備える第3電動直動機構と、該第3可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記放出ノズルからの前記流体の放出量を制限する開閉弁を開閉させる第3回転機構と、を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項9】
請求項
8において、
前記開閉弁の開閉軸には第3レバー部が設けられ、
前記第3回転機構は、前記第3可動部と前記第3レバー部とを連結する第3連結部を備える
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項10】
請求項
9において、
前記第3電動直動機構と前記第3回転機構と前記開閉弁とは前記回転部材に支持されている
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項11】
請求項
8乃至
10のいずれかにおいて、
前記第1支持部の端部、前記第2支持部の端部および前記第3支持部の端部は、回動可能に軸支されている
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項12】
請求項
11において、
前記第1電動直動機構、前記第2電動直動機構および前記第3電動直動機構は、前記回転部材内で同一方向に配置されている
ことを特徴とする粉塵制御システム。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれかにおいて、
前記流体は水あるいは泡状物を含む
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項14】
請求項1乃至
13のいずれかにおいて、
前記遠隔操作は、1台の送信機から複数の前記流体放出機に対してなされる
ことを特徴とする粉塵抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木作業や建設作業、解体作業などが行われる作業現場は、その作業の性質上、作業によって粉塵等(以降、粉塵と称す)が発生することが多い。特に、建築物(解体対象物)の(全部または一部の)解体作業においては作業箇所における粉塵の発生が避けられない。粉塵に対する対策を怠れば、作業環境の悪化もさることながら、粉塵が周囲に飛散し現場周辺で生活する住民に不快感、場合によっては健康被害を与えることにもなる。そこで、解体作業に伴う粉塵の飛散を抑制するための様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1に示す流体放出機を有する粉塵抑制システムは、特に、遠隔操作で流体放出機の放出ノズルの方向を2つの回転装置で制御し、かつ流体の放出量を開閉弁で制御することで、作業現場の作業箇所に、流体を効率的かつ的確に放出するようにしている。
【0004】
このため、特許文献1の流体放出機を用いることで、解体作業に伴う粉塵の飛散を抑制するための散水する作業者も不要にできる。つまり、解体作業を行う作業機械の近傍に作業者を配置する必要なく、作業者を粉塵に曝すことも抑制でき、作業現場において節水をしながら作業者の作業環境をより安全にすることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1で示す流体放出機では、放出ノズルに接続されている配管が屈曲可能とされていることで、放出ノズルの回転傾斜が可能となっている。しかし、逆に、配管内の流体の圧力状態が変わると、放出ノズルの方向を制御するための回転装置にかかる負荷が大きく変動する。つまり、特許文献1で示す流体放出機では、その負荷の変動を見越して回転装置の出力を相応に確保しておく必要があった。よって、特許文献1で示す流体放出機の構成では、低消費電力化の更なる要求があっても、充分には対応できないおそれが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、流体放出機から所定の作業箇所に流体を的確に放出可能としながら、かつ更なる低消費電力化の可能な粉塵抑制システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、遠隔操作によって作業対象物の作業箇所に対して粉塵の発生を抑制可能な流体を放出する1台以上の流体放出機を有する粉塵抑制システムであって、前記流体放出機が、前記流体を放出する放出ノズルと、該放出ノズルに連通して支持する第1回転側ボディと該第1回転側ボディを回転可能に支持する第1固定側ボディとを備える第1スイベルジョイント構造体と、第1支持部と該第1支持部に直線移動可能に支持される第1可動部とを備える第1電動直動機構と、該第1可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記第1回転側ボディを回転変位させる第1回転機構と、を備え、前記流体放出機が、更に、支持部材と、前記放出ノズルと、前記第1電動直動機構と、前記第1回転機構と、第2支持部と該第2支持部に直線移動可能に支持される第2可動部とを備える第2電動直動機構と、を支持し、前記支持部材の支持軸に対して回転可能な回転部材と、前記第2可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記回転部材を前記支持部材に対して回転移動させる第2回転機構と、を備え、前記支持軸と前記第1スイベルジョイント構造体の回転軸とが直交していることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本発明においては、第1回転機構が、第1可動部の直線移動を回転運動に変換し、第1回転側ボディを回転変位させる。即ち、流体の圧力変動は、第1回転側ボディの回転軸方向にかかる状態となるので、第1スイベルジョイント構造体の回転軸周りではあまりその圧力変動の影響が出ない。このため、第1回転側ボディを回転させる第1電動直動機構の出力について流体の圧力変動に対する許容範囲を必要最小限にすることが可能となる。同時に、放出ノズルを回転させるのが第1電動直動機構なので、回転装置のように放出ノズルの方向を制限するためのリミットスイッチを別に設けなくてもよく、低コスト化が可能となる。
【0010】
なお、前記第1回転側ボディには第1レバー部が設けられ、前記第1回転機構が、前記第1可動部と前記第1レバー部とを連結する第1連結部を備える場合には、第1回転機構を簡素な構成とすることができ、小型化と低コスト化とが可能となる。
【0011】
そして、前記流体放出機は、更に、支持部材と、前記放出ノズルと、前記第1電動直動機構と、前記第1回転機構と、第2支持部と該第2支持部に直線移動可能に支持される第2可動部とを備える第2電動直動機構と、を支持し、前記支持部材の支持軸に対して回転可能な回転部材と、前記第2可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記回転部材を前記支持部材に対して回転移動させる第2回転機構と、を備え、前記支持軸と前記第1スイベルジョイント構造体の回転軸とは直交している。そのため、放出ノズルを支持部材に対して、2方向で制御することが可能となる。同時に、第2電動直動機構で回転部材を回転させるので、回転部材の範囲を制限するためのリミットスイッチを別に設けなくてもよく、低コスト化が可能となる。
【0012】
なお、前記第2回転機構が、前記第2可動部の先端に設けられ該第2可動部の移動方向に沿って螺旋形状とされた第1外歯歯車と、該第1外歯歯車と嵌合する開口形状を中心軸に有して該第1外歯歯車の直線移動で回転し、かつ前記支持軸に固定された固定歯車と噛合する第2外歯歯車と、を備える場合には、第2可動部の移動方向を回転部材の回転軸と同一の方向とすることができ、組み立てを容易にすることができる。
【0013】
なお、前記支持軸には第2レバー部が設けられ、前記第2回転機構が、前記第2可動部と前記第2レバー部とを連結する第2連結部を備える場合には、第2回転機構を簡素な構成とすることができ、小型化と低コスト化とが可能となる。
【0014】
なお、前記第2回転機構が、前記第2可動部に取り付けられたベース部材と、該ベース部材上で該第2可動部の移動方向に沿って所定の張力で保持される紐状部材と、該紐状部材と係合する外周に設けられた溝部を有し前記支持軸に固定されたプーリと、を備える場合には、第2回転機構による回転部材の回転トルクを一定とすることができるとともに、第2回転機構で実現できる回転部材の回転量を大きくすることができる。
【0015】
なお、前記紐状部材が、前記溝部の全周回りに配置され、交差する形態とされている場合には、紐状部材がプーリの全周に巻き付いていることとなるので、ベース部材の移動でより確実にプーリを相対的に回転させることができる。
【0016】
なお、前記流体放出機が、前記回転部材に支持され、前記第1スイベルジョイント構造体に連通して支持する第2回転側ボディと、前記支持軸に配置され、該第2回転側ボディを回転可能に支持する第2固定側ボディと、を備える第2スイベルジョイント構造体を備える場合には、流体の圧力変動が、第2回転側ボディの回転軸方向にかかる状態となるので、第2スイベルジョイント構造体の回転軸周りではあまりその圧力変動の影響が出ない。このため、第2回転側ボディを回転させる第2電動直動機構の出力について流体の圧力変動に対する許容範囲を必要最小限にすることが可能となる。
【0017】
なお、前記流体放出機が、更に、第3支持部と該第3支持部に直線移動可能に支持される第3可動部とを備える第3電動直動機構と、該第3可動部の直線移動を回転運動に変換し、前記放出ノズルからの前記流体の放出量を制限する開閉弁を開閉させる第3回転機構と、を備える場合には、個々の流体放出機で、流体の放出と遮断とを制御することができる。
【0018】
なお、前記開閉弁の開閉軸には第3レバー部が設けられ、前記第3回転機構が、前記第3可動部と前記第3レバー部とを連結する第3連結部を備える場合には、第3回転機構を簡素な構成とでき、かつ開閉軸との軸合わせを簡単に行うことが可能となる。つまり、小型化と低コスト化とが可能となる。
【0019】
なお、前記第3電動直動機構と前記第3回転機構と前記開閉弁とが前記回転部材に支持されている場合には、支持部材に直接的に支持されている部材を少なくでき、支持部材が容易に交換可能となる。同時に、回転部材における第1電動直動機構、第2電動直動機構および第3電動直動機構の配置を効率的に行うことも可能となり、小型化と軽量化を更に促進することができる。
【0020】
なお、前記第1支持部の端部、前記第2支持部の端部および前記第3支持部の端部が、回動可能に軸支されている場合には、第1電動直動機構、第2電動直動機構および第3電動直動機構の取り付けを容易にすることができる。
【0021】
なお、前記第1電動直動機構、前記第2電動直動機構および前記第3電動直動機構が、前記回転部材内で同一方向に配置されている場合には、第1電動直動機構、第2電動直動機構および第3電動直動機構に対する外部環境変化による性能劣化の要因に対してまとめて対応することができる。例えば、第1電動直動機構、第2電動直動機構および第3電動直動機構に流入するおそれのある水分を効果的に遮断することができる。同時に、より小型化と軽量化を推進することができる。
【0022】
なお、前記流体が水あるいは流体を含む場合には、粉塵の飛散を効果的に低減することができる。
【0023】
なお、前記遠隔操作が、1台の送信機から複数の前記流体放出機に対してなされる場合には、流体放出機の操作者を最小限に抑えることができ、かつ複数の流体放出機を効率的に使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、流体放出機から所定の作業箇所に流体を的確に放出可能としながら、かつ更なる低消費電力化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る粉塵抑制システムを作業現場に用いた一例を示す側面図
【
図2】
図1の粉塵抑制システムの模式図(流体放出機の正面図(A)、流体放出機の側面図(B)、圧送機構の模式図(C))
【
図3】
図2の流体放出機を示す図(ケーシング等を透明視した際の正面図(A)、ケーシング等を透明視した際の背面図(B))
【
図4】
図2の流体放出機の詳細構成図(放出ノズル周辺の構成を示す側面図(A)、回転部材を回転させる第1、第2外歯歯車を示す底面図(B)、開閉弁周辺の構成を示す側面図(C))
【
図5】本発明の第2実施形態に係る流体放出機の模式図(流体放出機の正面図(A)、流体放出機の側面図(B)、流体放出機のフレーム体の一部を示す枠体の形状を示す図(C))
【
図6】
図5の流体放出機を示す図(ケーシング等を透明視した際の上面図(A)、ケーシング等を透明視した際の下面図(B))
【
図7】
図5の流体放出機の詳細構成図(放出ノズル周辺の構成を示す側面図(A)、回転部材を回転させる第2回転機構を示す底面図(B)、開閉弁周辺の構成を示す側面図(C))
【
図8】本発明の第3実施形態に係る流体放出機の模式図(流体放出機の正面図(A)、流体放出機の側面図(B))
【
図9】
図8の流体放出機を示す図(ケーシング等を透明視した際の上面図(A)、ケーシング等を透明視した際の下面図(B))
【
図10】
図8の流体放出機の詳細構成図(放出ノズル周辺の構成を示す側面図(A)、開閉弁周辺の構成を示す側面図(B))
【
図11】
図8の流体放出機の詳細構成図(回転部材を回転させる第2回転機構を示す底面図(A)、回転部材を回転させる第2回転機構を示す側面図(B)、第2回転機構のプーリとワイヤとの関係を示す側面図(C))
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の一例を詳細に説明する。
【0027】
最初に、本実施形態に係る粉塵抑制システムが使用される作業現場について説明する。
【0028】
作業現場100には、
図1に示す如く、周囲に足場106が組まれ、足場106の外側に養生シート108が取り付けられている。足場106の内側の作業現場100には作業対象物である建築物104が位置している。建築物104では、後述する粉塵抑制システム120の流体放出機122から散布された流体BBの被覆した部分(包囲部分)である作業箇所102が、作業機械110で解体される。作業機械110は、例えば、無限軌道で方向自在に移動可能とされている。作業機械110には運転室112が設けられている。運転室112から、アーム体114の先端に設けられた作業アタッチメント116と、無限軌道と、を自在に操作することができる(運転室112で、作業者あるいは遠隔操作されたロボットが操作する)。本実施形態では、作業アタッチメント116は圧砕機であり、作業機械110はいわゆる「クラッシャー」とされている。なお、運転室112に持ち込まれた送信機(不図示)で流体放出機122を遠隔制御することができる(送信機は、運転室の外部で、操作されていてもよい)。なお、作業箇所102は、作業アタッチメント116が建築物104に直接的に接する部分を含むとともに、作業アタッチメント116による解体によって粉塵が直接的に発生する箇所をいう。流体BBは、水でもよいし、気泡を含む流動性のある泡状物を含むことができる。
【0029】
次に、本発明に係る粉塵抑制システム120の概略構成について説明する。
【0030】
粉塵抑制システム120は、
図1に示す如く、1台以上の流体放出機122と、圧送機構170と、を有している。流体放出機122は、遠隔操作によって建築物104の作業箇所102に対して粉塵の発生を抑制可能な流体BBを放出する。例えば、流体放出機122は、
図3(A)、(B)に示す如く、放出ノズル140と、第1スイベルジョイント構造体138と、第1電動直動機構148と、第1回転機構149と、を備える。ここで、放出ノズル140は、流体BBを放出する。第1スイベルジョイント構造体138は、放出ノズル140に連通して支持する第1回転側ボディ138Bと、第1回転側ボディ138Bを回転可能に支持する第1固定側ボディ138Aと、を備える。第1電動直動機構148は、第1支持部148Cと、第1支持部148Cに直線移動可能に支持される第1可動部148Dと、を備える。第1回転機構149は、第1可動部148Dの直線移動を回転運動に変換し、第1回転側ボディ138Bを回転変位させる。圧送機構170は、
図2(C)に示す如く、流体放出機122に高圧水あるいは泡状物の成分を圧送する。圧送機構170は、水あるいは泡状物の成分を貯蔵するタンク部170Bと、水あるいは泡状物の成分を圧縮するポンプ部170Aと、を備える。なお、タンク部170Bとポンプ部170A、ポンプ部170Aと流体放出機122はそれぞれ、樹脂製のフレキシブル配管T1、T2で連結されている。
【0031】
なお、流体放出機122を遠隔操作する図示せぬ送信機は、携帯可能な形状とされており、流体BBを放出する放出ノズル140の方向を上下左右方向に変更し、且つ流体BBの放出量を制御できるようにされている。本実施形態では、1台の送信機で、最大で16台の流体放出機122を遠隔操作可能としている。
【0032】
以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0033】
流体放出機122は、
図3(A)、(B)に示す如く、流路構成体128と、支持部材126と、回転部材124と、第2回転機構153と、を備える。
【0034】
前記流路構成体128は、
図3(A)、(B)に示す如く、流体導入口128Aと、第2スイベルジョイント構造体130と、L型配管132、136と、開閉弁134と、第1スイベルジョイント構造体138と、放出ノズル140と、を備える。流体導入口128Aからは、圧送機構170から圧送される流体BBがフレキシブル配管T2を介して導入される。第2スイベルジョイント構造体130は、支持部材126の支持軸126Aに固定される第2固定側ボディ130Aと、回転部材124に固定され、第2固定側ボディ130Aの中心軸(回転軸Rz)周りに回転可能とされた第2回転側ボディ130Bと、を備える(即ち、流路構成体128のうち、流体導入口128Aと、第2固定側ボディ130Aとが支持部材126に支持され、第2回転側ボディ130B、L型配管132、136、開閉弁134、第1スイベルジョイント構造体138及び放出ノズル140が回転部材124に支持・固定されている)。L型配管132、136は、L字型の鋼材からなる配管であり、L型配管132は、第2回転側ボディ130Bと開閉弁134とに接続されている。開閉弁134は、例えばボール弁であり、開閉軸134Aの(回転軸Rbを中心とした)回転により、流体BBの放出量を制御する。L型配管136は、開閉弁134と第1スイベルジョイント構造体138に接続されている(即ち、流体放出機122は、回転部材124に支持され、第1スイベルジョイント構造体138に連通して支持する第2回転側ボディ130Bと、支持軸126Aに配置され、第2回転側ボディ130Bを回転可能に支持する第2固定側ボディ130Aと、を備える第2スイベルジョイント構造体130を備える構成となっている)。第1スイベルジョイント構造体138は、L型配管136に接続される第1固定側ボディ138Aと、第1固定側ボディ138Aの中心軸(回転軸Rn)周りに回転可能とされた第1回転側ボディ138Bと、を備える。放出ノズル140は、第1回転側ボディ138Bに取り付けられている。このため、支持軸126Aの中心軸(回転軸Rz)と第1スイベルジョイント構造体138の回転軸Rnとは直交している構成となっている。
【0035】
前記支持部材126は、
図3(A)、(B)に示す如く、鉄棒を放射状に組み合せたベース部126Bと、第2スイベルジョイント構造体130を介して回転部材124を支持する支持軸126Aと、を備える。
【0036】
前記回転部材124は、
図3(A)、(B)に示す如く、支持部材126の支持軸126Aに対して回転可能とされている。回転部材124には、
図2(A)、(B)で示す如く(
図3(A)、(B)では破線で示す)、直方体形状のケーシング142が取り付けられている(これに限らず、円筒形状のケーシングなどにしてもよい)。回転部材124は、板状鋼材で枠形状としたフレーム体144の内側に、放出ノズル140と、第1電動直動機構148と、第1回転機構149と、第2電動直動機構152と、第3電動直動機構160と、第3回転機構162と、制御装置164と、電源166と、を支持している。
【0037】
第1、第2及び第3電動直動機構148、152、160は、
図3(A)、(B)に示す如く、取り付け部148A、152A、160Aと、モータ部148B、152B、160Bと、第1、第2及び第3支持部148C、152C、160Cと、第1、第2及び第3可動部148D、152D、160Dと、を備える。取り付け部148A、152A、160Aは図示せぬ貫通孔を有し、それぞれ、第1、第2及び第3支持部148C、152C、160Cの端部に設けられている。これにより、第1、第2及び第3電動直動機構148、152、160をフレーム体144に取り付けた1本の支持ロッド146に軸支させることができる。即ち、1本の支持ロッド146という簡素な構成により、第1支持部148Cの端部、第2支持部152Cの端部及び第3支持部160Cの端部が、回動可能に軸支されている構成となっている。同時に、第1電動直動機構148、第2電動直動機構152及び第3電動直動機構160は、回転部材124内で同一方向に配置されている構成である。
【0038】
モータ部148B、152B、160Bには、例えば電動モータが収納されている。そして、第1、第2及び第3支持部148C、152C、160Cには例えばボールねじが収納されており、電動モータの回転がボールねじの回転に変換される。第1、第2及び第3可動部148D、152D、160Dはそれぞれ、ボールねじの回転によって、移動軸On、Or、Ob方向に直線移動可能とされている。
【0039】
第1回転機構149は、
図4(A)に示す如く、第1可動部148Dと第1スイベルジョイント構造体138の第1回転側ボディ138Bに設けられた第1レバー部149Dとの間に、板状の第1連結部149Aを備え、それぞれピン149B、149Cで連結されている。つまり、第1回転側ボディ138Bには第1レバー部149Dが設けられ、第1回転機構149は、第1可動部148Dと第1レバー部149Dとを連結する第1連結部149Aを備える構成となっている。
【0040】
第3回転機構162は、
図4(C)に示す如く、第3可動部160Dの直線移動を回転運動に変換し、放出ノズル140からの流体BBの放出量を制限する開閉弁134を開閉させる。具体的には、第3回転機構162は、開閉弁134の開閉軸134Aに設けられた第3レバー部162Aと第3可動部160Dとがピン162Bで連結された構成となっている。即ち、本実施形態では、開閉弁134の開閉軸134Aには第3レバー部162Aが設けられ、第3回転機構162は、第3可動部160Dと第3レバー部162Aとを連結するピン162B(第3連結部)を備える構成となっている。このため、第3可動部160Dの移動で、移動軸Obは、支持ロッド146周りで揺動回転することとなる。
【0041】
なお、
図3(A)、(B)では、制御装置164と電源166とが破線で示されている。制御装置164は、無線部、処理部及び駆動部を備えている。無線部は図示せぬ送信機からの信号を受信する。処理部は、無線部の制御と無線部で受信した信号をデコードして制御信号として駆動部に出力する。駆動部は、制御信号に応じた駆動信号で、第1、第2及び第3電動直動機構148、152、160を駆動制御する。電源166は、例えば、充電池(外部電源を直流電源に変換する電源アダプターでもよい)であり、流体放出機122で使用する全ての電力を供給する。
【0042】
前記第2回転機構153は、
図3(A)、(B)、
図4(B)に示す如く、第2可動部152Dの直線移動を回転運動に変換し、回転部材124を支持部材126に対して回転移動させる構成となっている。具体的には、第1回転機構149は、第1外歯歯車154と、第2外歯歯車156と、固定歯車158と、を備える。第1外歯歯車154は、取り付け部154Aを介して、第2可動部152Dの先端に設けられている。そして、第1外歯歯車154は、第2可動部152Dの移動方向(移動軸Or)に沿って螺旋形状とされている。ここで、第2外歯歯車156は、第1外歯歯車154と嵌合する開口形状を中心軸に有して第1外歯歯車154の直線移動で回転する構成となっている。つまり、第1外歯歯車154の外形形状の断面は、
図4(B)に示す如く、断面の基本形状が円形状(開口形状156Bの内面156BAに対応する形状)である。そして、その外周上に4回対称で、4つの円弧状の歯形(内面156BBに対応する歯形)を備えている(これに限らず、2つ以上の円弧状の歯形であればよいし、円弧状でなく他の形状の歯形でもよい)。さらに、
図3(A)、(B)で示すように、4つの円弧状の歯形の螺旋軌跡Trと移動軸Orとなす角度は、鋭角(45度以下)にされていることが望ましい。そして、4つの円弧状の歯形の螺旋軌跡Trは、第2可動部152Dの可動範囲で、移動軸Or周りで大きくても360度以下(の回転角度)とされている。第2外歯歯車156の開口形状は、中心軸に設けられており、第1外歯歯車154が移動軸Orに沿って摺動可能であるように、第1外歯歯車154の外形形状よりも若干大きく形成されている。第2外歯歯車156の外形形状は平歯車であり、第2外歯歯車156は支持軸126Aに固定された固定歯車158と噛合する。つまり、固定歯車158も平歯車とされている。なお、符号144Aは、第2外歯歯車156の位置を安定させ、かつ回転可能であるようにフレーム体144に設けられた押さえ部144Aである。
【0043】
このように、本実施形態では、第1回転機構149が、第1可動部148Dの直線移動を回転運動に変換し、第1回転側ボディ138Bを回転変位させる。即ち、流体BBの圧力変動は、第1回転側ボディ138Bの回転軸Rn方向にかかる状態となるので、第1スイベルジョイント構造体138の回転軸Rn周りではあまりその圧力変動の影響が出ない。このため、第1電動直動機構148の出力について流体BBの圧力変動に対する許容範囲を必要最小限にすることが可能となる。同時に、放出ノズル140を回転させるのが第1電動直動機構148なので、回転装置のように放出ノズル140の方向を制限するためのリミットスイッチを別に設けなくてもよく、低コスト化が可能である。
【0044】
また、本実施形態では、第1回転側ボディ138Bには第1レバー部149Dが設けられ、第1回転機構149が、第1可動部148Dと第1レバー部149Dとを連結する第1連結部149Aを備える。このため、第1回転機構149を簡素な構成とすることができ、小型化と低コスト化とが可能である。なお、これに限らず、他の構成でもよく、例えば、第1回転機構をラックとピニオンとを使用して構成してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、流体放出機122は、更に、支持部材126と、放出ノズル140と、第1電動直動機構148と、第1回転機構149と、第2電動直動機構152と、を支持し、支持部材126の支持軸126Aに対して回転可能な回転部材124と、回転部材124を支持部材126に対して回転移動させる第2回転機構153と、を備え、支持軸126Aと第1スイベルジョイント構造体138の回転軸とは直交している。このため、放出ノズル140を支持部材126に対して、2方向で制御することが可能である。同時に、第2電動直動機構152で回転部材124を回転させるので、回転部材124の範囲を制限するためのリミットスイッチを別に設けなくてもよく、低コスト化が可能である。なお、これに限らず、例えば第2電動直動機構がなく、回転部材が支持部材に対して回転する構成でなくてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、第2回転機構153が、第1外歯歯車154と、第1外歯歯車154と嵌合する開口形状156Bを中心軸に有して第1外歯歯車154の直線移動で回転し、かつ支持軸126Aに固定された固定歯車158と噛合する第2外歯歯車156と、を備える。このため、第2可動部152Dの移動軸Or方向を回転部材124の回転軸(回転軸Rz)と同一方向とすることができ、組み立てを容易にすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、流体放出機122が、回転部材124に支持される第2回転側ボディ130Bと、支持軸126Aに配置される第2固定側ボディ130Aとを備える第2スイベルジョイント構造体130を備える。このため、流体BBの圧力変動が、第2回転側ボディ130Bの回転軸Rz方向にかかる状態であって、第2スイベルジョイント構造体130の回転軸Rz周りではあまりその圧力変動の影響が出ない。このため、第2回転側ボディ130Bを回転させる第2電動直動機構152の出力について流体BBの圧力変動に対する許容範囲を必要最小限にすることが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、流体放出機122が、更に、第3電動直動機構160と、放出ノズル140からの流体BBの放出量を制限する開閉弁134を開閉させる第3回転機構162と、を備える。このため、1つの圧送機構170に対して、複数の流体放出機122が接続されていても、個々の流体放出機122で、流体BBの放出と遮断とを制御することができる。あるいは、圧送機構170のほうで流体BBを圧送状態のままで流体BBの放出量の制御をしなくても、個々の流体放出機122で、放出量を制御することができる。なお、これに限らず、開閉弁がなくてもよいし、開閉弁があっても第3電動直動機構で制御しなくてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、開閉弁134の開閉軸134Aには第3レバー部162Aが設けられ、第3回転機構162が、第3可動部160Dと第3レバー部162Aとを連結するピン162Bを備える。このため、第3回転機構162を簡素な構成とでき、かつ開閉軸134Aとの軸合わせを簡単に行うことが可能である。つまり、小型化と低コスト化とが可能である。なお、これに限らず、第3回転機構を他の構成、例えば、ラックとピニオンとで構成するようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、第3電動直動機構160と第3回転機構162と開閉弁134とは回転部材124に支持されている。このため、支持部材126に直接的に支持されている部材を少なくでき、支持部材126が容易に交換可能である。同時に、回転部材124における第1電動直動機構148、第2電動直動機構152および第3電動直動機構160の配置を効率的に行うことも可能であり、小型化と軽量化を更に促進することができる。なお、これに限らず、第3電動直動機構、第3回転機構、開閉弁の少なくともいずれかが支持部材で支持されていてもよい。その場合には、支持部材に支持された部材の重量により、より重心を低くでき、転倒しにくい流体放出機とすることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1支持部148Cの端部、第2支持部152Cの端部および第3支持部160Cの端部が、回動可能に軸支されている。このため、第1電動直動機構148、第2電動直動機構152および第3電動直動機構160の取り付けを容易にすることができる。なお、これに限らず、第1支持部の端部、第2支持部の端部および第3支持部の端部のいずれかだけが軸支されていてもよいし、いずれも軸支されなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、第1電動直動機構148、第2電動直動機構152および第3電動直動機構160は、回転部材124内で同一方向に配置されている。このため、第1電動直動機構148、第2電動直動機構152、および第3電動直動機構160に対する外部環境変化による性能劣化の要因に対してまとめて対応することができる。具体的には、第1、第2および第3可動部148D、152D、160Dと第1、第2および第3支持部148C、152C、160Cとの隙間のある方向を同一方向へ向けることができ、それらの隙間から第1電動直動機構148、第2電動直動機構152および第3電動直動機構160に流入するおそれのある水分を効果的に遮断することができる。本実施形態では、第1、第2および第3支持部148C、152C、160CがZ方向において上であり、第1、第2および第3可動部148D、152D、160Dがその下に配置されるので、特別な対策を取らなくても、水分の入り込みを効果的に防止することができる。同時に、より小型化と軽量化を推進することができる。なお、これに限らず、第1、第2および第3可動部が第1、第2および第3支持部よりも上に配置されてもよい。この場合には、全ての機構に対して一括して同じ対策を取ることができ効率的である。勿論、第1電動直動機構、第2電動直動機構および第3電動直動機構のいずれかは、回転部材内で異なる方向に配置されていてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、流体BBが水あるいは流体を含む。このため、流体BBが水の場合には、粉塵の飛散を効果的に低減することができるとともに、流体BBを放出できる範囲を広くでき、流体放出機122の構成を泡状物である場合に比べて簡素にすることができる。また、流体BBが泡状物の場合には、粉塵の飛散を効果的に低減することができるとともに、水を使用する量を大幅に削減でき、粉塵だけでなく臭気も効果的に防止することが可能である。なお、流体BBが泡状物である場合に、圧送機構170が単に水を送り、泡状物の原液が流体放出機122の近傍に配置されているような構成であってもよい。
【0054】
また、本実施形態では、遠隔操作が、1台の送信機から複数の流体放出機122に対してなされる。このため、流体放出機122の操作者を最小限に抑えることができ、かつ複数の流体放出機122を効率的に使用することができる。なお、これに限らず、1台の送信機で1台の流体放出機を操作するようにしてもよい。
【0055】
従って、本実施形態によれば、流体放出機122から所定の作業箇所102に流体BBを的確に放出可能としながら、かつ更なる低消費電力化が可能となる。
【0056】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0057】
例えば、第1実施形態では、第2回転機構153が第1外歯歯車154と第2外歯歯車156と固定歯車158とを備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図5(A)、(B)、(C)、
図6(A)、(B)、
図7(A)、(B)、(C)に示す第2実施形態の如くであってもよい。第2実施形態では、支持軸226Aには第2レバー部253Dが設けられ、第2回転機構253が、第2可動部252Dと第2レバー部253Dとを連結する第2連結部253Aを備えている。なお、第2実施形態では、流体放出機222が異なるだけなので、符号上1桁を変更して、流体放出機222に係る部分以外の説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、流体放出機222は、
図6(A)、(B)に示す如く、流路構成体228と、支持部材226と、回転部材224と、第2回転機構253と、を備える。
【0059】
前記流路構成体228は、
図6(A)、(B)に示す如く、流体導入口228Aと、第2スイベルジョイント構造体230と、開閉弁234と、第1スイベルジョイント構造体238と、放出ノズル240と、を備える。第2スイベルジョイント構造体230は、支持部材226の支持軸226Aに固定される第2固定側ボディ230Aと、回転部材224に固定され、第2固定側ボディ230Aの中心軸(回転軸Rz)周りに回転可能とされた第2回転側ボディ230Bと、を備える。ここで、第2回転側ボディ230Bは、直方体形状とされて、開閉弁234へ連通する流路、開閉弁234を構成する流路、開閉弁234から第1スイベルジョイント構造体238への流路及び第1固定側ボディと一体となされている。開閉弁234は、例えばボール弁であり、開閉軸234Aの(回転軸Rbを中心とした)回転により、流体BBの放出量を制御する(即ち、本実施形態でも、流体放出機222は、回転部材224に支持され、第1スイベルジョイント構造体238に連通して支持する第2回転側ボディ230Bと、支持軸226Aに配置され、第2回転側ボディ230Bを回転可能に支持する第2固定側ボディ230Aと、を備える第2スイベルジョイント構造体230を備える構成となっている)。第1スイベルジョイント構造体238は、上述した第2回転側ボディ230Bと一体とされた第1固定側ボディと、第1固定側ボディの中心軸(回転軸Rn)周りに回転可能とされた第1回転側ボディ238Bと、を備える。放出ノズル240は、第1回転側ボディ238Bに取り付けられている。このため本実施形態でも、支持軸226Aの中心軸(回転軸Rz)と第1スイベルジョイント構造体238の回転軸Rnとは直交している構成となっている。
【0060】
前記回転部材224は、
図5(A)、(B)に示す如く、支持部材226の支持軸226Aに対して回転可能とされている。回転部材224には、
図5(A)、(B)で示す如く(
図6(A)、(B)では破線で示す)、直方体形状のケーシング242が取り付けられている(ただし、第1実施形態のY方向で短くZ方向に長い縦型形状とは異なり、Z方向で短くX方向あるいはY方向に長い横型形状となっている)。回転部材224は、板状鋼材でコの字形状としたフレーム体244と、枠形状としたフレーム体244A(
図5(C)に概略形状を示す、
図6(A)、(B)では破線で示す)の内側に、放出ノズル240と、第1電動直動機構248と、第1回転機構249と、第2電動直動機構252と、第3電動直動機構260と、第3回転機構262と、制御装置264と、電源266と、を支持している。なお、第2回転側ボディ230Bは、
図6(A)、(B)に示す如く、枠形状としたフレーム体244B(
図5(C)に概略形状)を介して、フレーム体244に固定されている。
【0061】
第1、第2及び第3電動直動機構248、252、260は、
図6(A)、(B)に示す如く、取り付け部248A、252A、260Aと、モータ部248B、252B、260Bと、第1、第2及び第3支持部248C、252C、260Cと、第1、第2及び第3可動部248D、252D、260Dと、を備える。取り付け部248A、252A、260Aは図示せぬ貫通孔を備え、それぞれ、第1、第2及び第3支持部248C、252C、260Cの端部に設けられている。取り付け部248A、252A、260Aは、支持ロッド246A、246B、246Cを介して軸固定部245A、245B、245Cに支持されている。そして、軸固定部245A、245B、245Cは、フレーム体244を構成する同一平板上に固定されている。即ち、第1支持部248Cの端部、第2支持部252Cの端部および第3支持部260Cの端部が、回動可能に軸支されている構成となっている。同時に、第1電動直動機構248、第2電動直動機構252及び第3電動直動機構260は、回転部材224内で同一方向に配置されている構成である。
【0062】
第1回転機構249は、
図7(A)に示す如く、第1可動部248Dと第1スイベルジョイント構造体238の第1回転側ボディ238Bに設けられた第1レバー部249Eとの間に、取り付け部249Aと延在部249Cとが一体となった第1連結部を備え、それぞれとピン249B、249Dで連結されている。つまり、本実施形態でも、第1回転側ボディ238Bには第1レバー部249Eが設けられ、第1回転機構249は、第1可動部248Dと第1レバー部249Eとを連結する第1連結部を備える構成となっている。
【0063】
第3回転機構262は、
図7(C)に示す如く、第3可動部260Dの直線移動を回転運動に変換し、放出ノズル240からの流体BBの放出量を制限する開閉弁234を開閉させる。具体的には、第3回転機構262は、第3可動部260Dと開閉弁234の開閉軸234Aに設けられた第3レバー部262Eとの間に、取り付け部262Aと延在部262Cとが一体となった第3連結部を備え、それぞれとピン262B、262Dで連結している。即ち、本実施形態でも、開閉弁234の開閉軸234Aには第3レバー部262Eが設けられ、第3回転機構262は、第3可動部260Dと第3レバー部262Eとを連結する第3連結部を備える構成となっている。
【0064】
前記第2回転機構253は、
図6(B)、
図7(B)に示す如く、第2連結部253Aと第2レバー部253Dとを備える。第2連結部253Aは、第2可動部252Dと第2レバー部253Dとの間に位置し、それぞれとピン253B、253Cで連結されている。第2レバー部253Dは、支持軸226Aに固定される第2固定側ボディ230Aに設けられている。即ち、第2回転機構253は、第2可動部252Dの直線移動を回転運動に変換し、第2支持部252Cが固定されている回転部材224を支持部材226に対して回転移動させる構成となっている。
【0065】
よって、本実施形態では、第2回転機構253を簡素な構成とすることができ、小型化と低コスト化とが可能である。
【0066】
また、本実施形態では、第1、第2及び第3電動直動機構248、252、260は水平方向に並べられ、回転部材224はZ方向に短く、X方向あるいはY方向に長くされている。このため、液体放出機222の重心を第1実施形態よりも低くでき、更に転倒を防止することができる。同時に、回転部材224の上面にソーラーセル等を設定して流体放出機222の発電機として、電源266に充電する形態であってもよい。
【0067】
なお、第2実施形態では、支持軸226Aには第2レバー部253Dが設けられ、第2回転機構253が、第2可動部252Dと第2レバー部253Dとを連結する第2連結部253Aを備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8(A)、(B)、
図9(A)、(B)、
図10(A)、(B)、
図11(A)、(B)、(C)に示す第3実施形態の如くであってもよい。なお、第3実施形態では、第2実施形態の流体放出機222と同じようにXY方向に長い横型形状(
図8(A)、(B))であり、実質的には、第2回転機構353が第1、第2実施形態の第2回転機構153、253とは異なるだけなので、符号上1桁を変更して、第2回転機構353に係る部分以外の説明をなるべく省略する。
【0068】
本実施形態では、流体放出機322は、
図8(A)、(B)、
図9(A)、(B)に示す如く、流路構成体328と、支持部材326と、回転部材324と、第2回転機構353と、を備える。
【0069】
前記流路構成体328は、第1実施形態で示した流路構成体128と同様の構成となっている(第2実施形態で示した流路構成体228と同様の構成であってもよい)。つまり、流路構成体328は、
図9(A)、(B)に示す如く、流体導入口328Aと、第2スイベルジョイント構造体330と、L型配管332、336と、開閉弁334と、第1スイベルジョイント構造体338と、放出ノズル340と、を備える。第2スイベルジョイント構造体330は、支持部材326の支持軸326Aに固定される第2固定側ボディ330Aと、回転部材324に固定され、第2固定側ボディ330Aの中心軸(回転軸Rz)周りに回転可能とされた第2回転側ボディ330Bと、を備える。L型配管332は、第2回転側ボディ330Bと開閉弁334とに接続されている。開閉弁334は、例えばボール弁であり、開閉軸334Aの(回転軸Rbを中心とした)回転により、流体BBの放出量を制御する。L型配管336は、開閉弁334と第1スイベルジョイント構造体338に接続されている。第1スイベルジョイント構造体338は、L型配管336に接続される第1固定側ボディ338Aと、第1固定側ボディ338Aの中心軸(回転軸Rn)周りに回転可能とされた第1回転側ボディ338Bと、を備える。放出ノズル340は、第1回転側ボディ338Bに取り付けられている。このため、支持軸326Aの中心軸(回転軸Rz)と第1スイベルジョイント構造体338の回転軸Rnとは直交している構成となっている。
【0070】
前記回転部材324は、
図8(A)、(B)に示す如く、支持部材326の支持軸326Aに対して回転可能とされている。回転部材324には、
図8(A)、(B)で示す如く(
図9(A)、(B)では破線で示す)、直方体形状のケーシング342が取り付けられている(第2実施形態と同様に、回転部材324はZ方向で短くX方向あるいはY方向に長い横型形状となっている)。回転部材324は、板状鋼材で枠形状としたフレーム体344の内側に、第1電動直動機構348と、第1回転機構349と、第2電動直動機構352と、第3電動直動機構360と、第3回転機構362と、制御装置364と、電源366と、を支持している。
【0071】
第1、第2及び第3電動直動機構348、352、360は、
図9(A)、(B)に示す如く、取り付け部348A、352A、360Aと、モータ部348B、352B、360Bと、第1、第2及び第3支持部348C、352C、360Cと、第1、第2及び第3可動部348D、352D、360Dと、を備える。取り付け部348A、352A、360Aは、支持ロッド346と保持部344Aを介してフレーム体344に支持されている。即ち、第1支持部348Cの端部、第2支持部352Cの端部および第3支持部360Cの端部が、回動可能に軸支されている構成となっている。同時に、第1電動直動機構348、第2電動直動機構352及び第3電動直動機構360は、回転部材324内で同一方向に配置されている構成である。ただし、第2電動直動機構352のみが、第2回転機構353を効果的に配置・駆動させるため、第1電動直動機構348、第3電動駆動機構360とは、モータ部352Bと第2支持部352CとのZ方向の位置関係を逆にしている(必ずしも、このような位置関係を保たなくてよい)。
【0072】
第1回転機構349は、
図10(A)に示す如く、第1可動部348Dと第1スイベルジョイント構造体338の第1回転側ボディ338Bに設けられた第1レバー部349Dとの間に、板状の第1連結部349Aを備え、それぞれピン349B、349Cで連結されている。なお、第1実施形態の第1回転機構149との相違は、次の点にある。放出ノズル340と第1レバー部349Dの角度関係が180度ではなく90度であること。また、第1連結部349Aは、第1可動部348Dの根元側に折り返すのではなく伸ばされた形態で、第1レバー部349Dと連結されていること。
【0073】
第3回転機構362は、
図10(A)、(B)に示す如く、第3可動部360Dの直線移動を回転運動に変換し、放出ノズル340からの流体BBの放出量を制限する開閉弁334を開閉させる。具体的には、第1実施形態と同様に、第3回転機構362は、開閉弁334の開閉軸334Aに設けられた第3レバー部362Aと第3可動部360Dとがピン362Bで連結された構成となっている。このため、第3可動部360Dの移動で、移動軸Obは、支持ロッド346周りで揺動回転することとなる。
【0074】
前記第2回転機構353は、
図11(A)、(B)に示す如く、ベース部材353Dと、金属製のワイヤ(紐状部材:樹脂製・金属製チェーンやベルトでもよい)353Hと、プーリ353Iと、を備える。ベース部材353Dは、移動軸Or方向で第2可動部352Dよりも長い板状部材である。ベース部材353Dの一端は、取り付け部353Aを介して、第2可動部352Dに取り付けられている。なお、取り付け部353Aは、ピン353Bにより第2可動部352Dに取り付けられている。ベース部材353Dのもう一端は、ベース部材353Dの下面に固定されたスライダ部353Cを介して、第2支持部352Cの側面352CAで移動可能に支持されている。スライダ部353Cの側面352CAに当接する面は、側面352CAに倣い、側面352CAと嵌合する形状となっている。このため、ベース部材353Dの方向と移動を安定させることができる(これに限らず、スライダ部353Cがなくてもよい)。
【0075】
図11(B)に示す如く、ベース部材353Dの上面のピン353Bの位置には、ワイヤ353Hの一端を取り付けるための保持部353Eが取り付けられている。ワイヤ353Hのもう一端は、フック353Gを介して、ベース部材353Dのもう一端に設けられた止め部353Fに取り付けられている。フック353Gの一端は、ワイヤ353Hを吊持可能とするU字形状とされており、もう一端はナットNTが螺合可能な螺子とされている。このため、第2可動部352Dの移動軸Orは、フック353Gと保持部353Eとを結ぶ直線の方向と一致している。そして、止め部353Fの外側からナットNTをフック353Gの螺子の部分に螺合させることで、プーリ353Iを経由し、保持部353Eとフック353Gとの間に配置されたワイヤ353Hの張力を自在に調整することができる。即ち、ワイヤ353Hは、ベース部材353D上で第2可動部352Dの移動軸Orに沿って所定の張力で保持されている状態となる。ここで、所定の張力は、ワイヤ353Hにたるみが出ない状態で、プーリ353Iを相対回転(回転部材324を支持部材326に対して回転)させることができる張力をいうものとする。
【0076】
ここで、プーリ353Iは、
図11(A)に示す如く、第2スイベルジョイント構造体330の第2固定側ボディ330Aに固定されている。プーリ353Iは、半径Rの円盤形状であり、2つの溝部Tr1、Tr2を外周全てに備えている(
図11(B)、(C);ただし、止め部353Jの設けられた一箇所で溝部Tr1、Tr2が1つになっている)。2つの溝部Tr1、Tr2それぞれでワイヤ353Hが係脱することで、ワイヤ353H同士の引っかかりが防止され、プーリ353Iの相対的な回転をスムーズに実現している。つまり、プーリ353Iは、ワイヤ353Hと係合する外周の設けられた溝部Tr1、Tr2を有し支持軸326Aに固定されている状態である。なお、ワイヤ353Hは、溝部Tr1、Tr2の全周回りに配置され、交差する形態とされている。
【0077】
なお、プーリ353Iとベース部材353D(即ち、第2電動直動機構352)との位置関係は、
図11(A)に示す如く、保持部353Eとフック353Gとを結ぶ直線がプーリ353Iの接線となるようにされている。このため、ワイヤ353Hの必要長さを最小とすることができ、ワイヤ353Hの不用意なたるみを防止することができる。
【0078】
よって、本実施形態では、第2回転機構353による回転部材324の回転トルクを一定とすることができるとともに、第2回転機構353で実現できる回転部材324の回転量を大きくすることができる。本実施形態では、ワイヤ353Hは、プーリ353Iに1巻きであったが、巻き数が多い(ワイヤ353Hとプーリ353Iとが係合している距離が長い)ほど、回転部材324の回転量を増やすことができる。
【0079】
また、本実施形態では、ワイヤ353Hが、溝部Tr1、Tr2の全周回りに配置され、交差する形態とされている。即ち、ワイヤ353Hがプーリ353Iの全周に巻き付いており、更に、ワイヤ353Hが止め部353Jでプーリ353Iに固定されている。このため、ベース部材353Dの移動でより確実にプーリ353Iを相対的に回転させることができる。なお、これに限らず、ワイヤが、溝部Tr1、Tr2の一部のみに係合しているだけでもよいし、ワイヤが止め部でプーリに固定されていなくてもよい。
【0080】
なお、本実施形態の第2回転機構353の構成を、第1回転機構や第3回転機構に適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、流体放出機が足場に配置され、圧送機構が地面に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、流体放出機は作業対象物(地面を含む)の上に単に置いてあるだけでもよいし、圧送機構も流体放出機と同じ位置に隣り合わせに配置されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、作業機械として所謂「クラッシャー」を例に説明しているが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、杭打ち機、杭抜き機、ブルドーザー、トラクターショベル、パワーショベル、バックホー、ドラグライン、クラムシェル、クローラドリル、アースドリル、クレーン、ロードカッター、ブレーカー等に適用しても同様の効果を得ることができる。要するに、土木作業や建設作業、解体作業において、粉塵が発生し得る作業を行う作業機械に対して幅広く適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、土木作業や建設作業、解体作業などの粉塵の発生する作業現場において利用できるが、特に固体構造物の解体作業、補修作業等に好適である。
【符号の説明】
【0084】
100…作業現場
102…作業箇所
104…建築物(作業対象物)
106…足場
108…養生シート
110…作業機械
112…運転室
114…アーム体
116…作業アタッチメント
120…粉塵抑制システム
122、222、322…流体放出機
124、224、324…回転部材
126、226、326…支持部材
126A、226A、326A…支持軸
126B、226B、326B…ベース部
128、228、328…流路構成体
128A、228A、328A…流体導入口
130、230、330…第2スイベルジョイント構造体
130A、230A、330A…第2固定側ボディ
130B、230B、330B…第2回転側ボディ
132、136、332、336…L型配管
134、234、334…開閉弁
134A、234A、334A…開閉軸
138、238、338…第1スイベルジョイント構造体
138A、338A…第1固定側ボディ
138B、238B、338B…第1回転側ボディ
140、240、340…放出ノズル
142、242、342…ケーシング
144、244、244A、244B、344…フレーム体
144A…押さえ部
146、246A、246B、246C、346…支持ロッド
148、248、348…第1電動直動機構
148A、152A、154A、160A、248A、249A、252A、260A、262A、348A、352A、360A、353A…取り付け部
148B、152B、160B、248B、252B、260B、348B、352B、360B…モータ部
148C、248C、348C…第1支持部
148D、248D、348D…第1可動部
149、249、349…第1回転機構
149A、349A…第1連結部
149B、149C、162B、249B、249D、253B、253C、262B、262D、349B、349C、353B、362B…ピン
149D、249E、349D…第1レバー部
152、252、352…第2電動直動機構
152C、252C、352C…第2支持部
152D、252D、352D…第2可動部
153、253、353…第2回転機構
154…第1外歯歯車
156…第2外歯歯車
156B…開口形状
156BA、156BB…内面
158…固定歯車
160、260、360…第3電動直動機構
160C、260C、360C…第3支持部
160D、260D、360D…第3可動部
162、262、362…第3回転機構
162A、262E、362A…第3レバー部
164、264、364…制御装置
166、266、366…電源
170…圧送機構
170A…ポンプ部
170B…タンク部
249C、262C…延在部
245A、245B、245C…軸固定部
253A…第2連結部
253D…第2レバー部
344A、353E…保持部
352CA…側面
353C…スライダ部
353D…ベース部材
353F、353J…止め部
353G…フック
353H…ワイヤ
353I…プーリ
BB…流体
NT…ナット
Ob、On、Or…移動軸
Rb、Rn、Rz…回転軸
T1、T2…フレキシブル配管
Tr…螺旋軌跡
Tr1、Tr2…溝部