(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】壁面取付ユニット
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20230725BHJP
D06F 57/12 20060101ALI20230725BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E04F13/08 H
D06F57/12 Z
F16B43/00 Z
(21)【出願番号】P 2019162572
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2018215135
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592179137
【氏名又は名称】株式会社アルテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧瀬 伸一
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304224(JP,A)
【文献】特開2016-099002(JP,A)
【文献】特開2002-250327(JP,A)
【文献】特開平11-082454(JP,A)
【文献】実開昭54-142760(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02131084(EP,A2)
【文献】中国実用新案第2646461(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に締結具により取付部材を締め込んで取り付けるようにした壁面取付ユニットであって、前記取付部材における壁面側の第一面部と反壁面側の第二面部との間に内部空間を備え且つ該内部空間を通し前記締結具を締め込み方向に貫通せしめる挿入孔を第一面部と第二面部の夫々に穿設し、これら第一面部と第二面部との間で前記締結具に貫通螺着される受け部材を共回りしないよう前記内部空間に収容せしめ、前記締結具を前記壁面に対し締め込むにつれ前記受け部材が相対的に前記締結具の締結頭部側へ移動して該締結頭部との間で前記第二面部が挟圧保持されるよう構成する一方、前記受け部材に前記締結具のねじ山より小径で且つねじ溝より大径の螺合孔を開口した補強板を装備し且つ該補強板の少なくとも前記螺合孔周囲が前記締結具の一側面から見たねじ山の向きに沿う傾斜状態を成すように前記補強板を保持部材により抱持し、該保持部材の反壁面側に前記第二面部に圧接する押圧面を形成したことを特徴とする壁面取付ユニット。
【請求項2】
保持部材を半割り状の一対の分割ピースにより分割構成し、該各分割ピース相互の対向面に、補強板を差し込み固定するための保持溝と、前記各分割ピース相互を嵌め合わせにより係合連結する係合部とを形成したことを特徴とする請求項1に記載の壁面取付ユニット。
【請求項3】
保持部材を補強板より一回り大きな外形を持つ単一ピースにより構成し、該単一ピースの少なくとも表裏何れかの面に、前記補強板を嵌め込み固定するための嵌合凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の壁面取付ユニット。
【請求項4】
締結具の締め込み方向に対し所定の段差を持つ互いに平行な一対の平坦部と、該各平坦部相互を斜めに繋ぐ傾斜部とによりクランク状に補強板を形成し、前記傾斜部に螺合孔を開口したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の壁面取付ユニット。
【請求項5】
複数枚の補強板をまとめて保持部材により抱持し且つ前記各補強板を
締結具のねじ溝に個別に嵌まり込むように配置したことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の壁面取付ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に締結具により取付部材を締め込んで取り付けるようにした壁面取付ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物干等の支持部材を壁面に配置する際には、ブラケット等の取付部材を壁面に取り付けて該取付部材を介し支持部材を配置するようにしている。より具体的には、
図13に示す如く、ブラケット等の取付部材1を壁面2に取り付けるにあたり、挿入孔3を備えた取付部材1を壁面2に配し、前記挿入孔3にタッピングボルト4を通して壁面2に締結することにより取付部材1を壁面2に固定するようにしている。
【0003】
ここで、壁面2が外壁の場合には、外に面する外壁材5と、該外壁材5の内側に位置する下地材6とにより壁面2が構成されるが、このような場合には、タッピングボルト4をインパクトドライバー等の電動工具を用いて外壁材5から下地材6へ締め込むようにしている。
【0004】
ただし、インパクトドライバー等の電動工具を用いてタッピングボルト4を締結する場合、該タッピングボルト4を壁面2に対し締め込み過ぎて該壁面2に応力集中による破損を招いてしまう虞れがあり、特に壁面2の外壁材5と下地材6の間に通気層が備えられている場合には、壁面2に破損が生じる可能性が一層高まってしまうという懸念があった。
【0005】
そこで、本発明者は、
図14に示す如く、取付部材1を壁面2側の第一面部7と反壁面2側の第二面部8との間に内部空間9を備えた中空構造とし、この内部空間9を通し前記タッピングボルト4を締め込み方向に貫通せしめる挿入孔10,11を第一面部7と第二面部8の夫々に穿設し、これら第一面部7と第二面部8との間で前記タッピングボルト4に貫通螺着される受け部材12を共回りしないよう前記内部空間9に収容せしめた壁面取付ユニットを創案するに到った(下記の特許文献1を参照)。
【0006】
即ち、斯かる壁面取付ユニットによれば、
図15に示す如く、前記タッピングボルト4を前記壁面2に対し締め込むにつれ前記受け部材12が相対的に前記タッピングボルト4のボルトヘッド13側へ移動して該ボルトヘッド13との間で前記第二面部8が挟圧保持されることになり、これによりタッピングボルト4の締め込み量が規定されて過剰な締め込みが防止される。
【0007】
しかも、前記受け部材12により第二面部8におけるタッピングボルト4の締め込みによる応力集中が緩和されると共に、前記取付部材1自体も第一面部7の広い面積で押し付けられることになって前記タッピングボルト4の締め込み箇所に局所的に応力が作用することもなくなる。
【0008】
この結果、インパクトドライバー等の電動工具を用いてタッピングボルト4を締結したり、壁面2の外壁材5と下地材6の間に通気層14が備えられていたりしても、前記タッピングボルト4の過剰な締め込みによる壁面2の破損を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の如き壁面取付ユニットを採用するにあたり、例えば、受け部材12を金属部品の一体成形品とし且つこれに雌ねじ加工を施してタッピングボルト4との貫通螺着を図らせようとすると、その雌ねじ加工に費用がかかって大幅なコスト増加を招く一方、雌ねじ加工に手間がかかって生産性の低下も避けられなくなる。
【0011】
そこで、本発明者は、
図16に示す如く、薄い金属板からなる補強板15に螺合孔16を開口し、この補強板15の複数枚を樹脂製の枠組17によりまとめて受け部材12’とし、これにより安価で生産性の高い受け部材12’を実現することを考えついたが、このような受け部材12’を実際に試作してみると、補強板15の螺合孔16にタッピングボルト4がねじ込まれる際にかじり(噛み込みによる固着)を生じ易いという課題があることが判った。
【0012】
即ち、取付部材1の内部空間9に共回りしないよう収容される受け部材12’は、最終的な締め込み完了時に第二面部8への圧接が均等に行われるようタッピングボルト4に対し直交する姿勢で保持されているため、補強板15の螺合孔16に対し前記タッピングボルト4のねじ山が全周に亘り常に同じ向きに傾斜した状態で噛み合うことになり、きっかけとして相互に軽微な噛み込みが生じただけでも、前記タッピングボルト4を締め込み続けることで益々強固な噛み込みとなってかじりを生じてしまうものと考えられた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、タッピングボルト等の締結具にかじりを生じさせることなく円滑に締め込んで壁面への取付部材の良好な取り付けを実現し得る壁面取付ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、壁面に締結具により取付部材を締め込んで取り付けるようにした壁面取付ユニットであって、前記取付部材における壁面側の第一面部と反壁面側の第二面部との間に内部空間を備え且つ該内部空間を通し前記締結具を締め込み方向に貫通せしめる挿入孔を第一面部と第二面部の夫々に穿設し、これら第一面部と第二面部との間で前記締結具に貫通螺着される受け部材を共回りしないよう前記内部空間に収容せしめ、前記締結具を前記壁面に対し締め込むにつれ前記受け部材が相対的に前記締結具の締結頭部側へ移動して該締結頭部との間で前記第二面部が挟圧保持されるよう構成する一方、前記受け部材に前記締結具のねじ山より小径で且つねじ溝より大径の螺合孔を開口した補強板を装備し且つ該補強板の少なくとも前記螺合孔周囲が前記締結具の一側面から見たねじ山の向きに沿う傾斜状態を成すように前記補強板を保持部材により抱持し、該保持部材の反壁面側に前記第二面部に圧接する押圧面を形成したことを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明においては、保持部材を半割り状の一対の分割ピースにより分割構成し、該各分割ピース相互の対向面に、補強板を差し込み固定するための保持溝と、前記各分割ピース相互を嵌め合わせにより係合連結する係合部とを形成することが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、保持部材を補強板より一回り大きな外形を持つ単一ピースにより構成し、該単一ピースの少なくとも表裏何れかの面に、前記補強板を嵌め込み固定するための嵌合凹部を形成することも可能である。
【0017】
更に、本発明においては、締結具の締め込み方向に対し所定の段差を持つ互いに平行な一対の平坦部と、該各平坦部相互を斜めに繋ぐ傾斜部とによりクランク状に補強板を形成し、前記傾斜部に螺合孔を開口するようにしても良い。
【0018】
また、本発明においては、複数枚の補強板をまとめて保持部材により抱持し且つ前記各補強板を締結具のねじ溝に個別に嵌まり込むように配置することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の壁面取付ユニットによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0020】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、補強板を保持部材により抱持してなる安価で生産性の高い構造の受け部材を採用しながらも、締結具にかじりを生じさせることなく円滑に締め込んで壁面への取付部材の良好な取り付けを実現することができる。
【0021】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、各分割ピース相互の保持溝に補強板を差し込み固定しながら前記各分割ピースを嵌め合わせるだけで簡単に補強板を保持部材により抱持させることができ、しかも、前記各分割ピース相互の嵌め合わせを係合部の係合連結により確実に保持することができる。
【0022】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、単一ピースにおける嵌合凹部に補強板を嵌め込むだけで簡単に補強板を保持部材により抱持させることができ、該保持部材を単一ピースのみで構成することができて部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0023】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、補強板をプレス加工により簡単に且つ安価なコストで製作することができ、従来構造からの改良に伴う受け部材のコスト増加や生産性の低下を大幅に抑制することができる。
【0024】
(V)本発明の請求項5に記載の発明によれば、補強板を複数枚に増やすだけで簡便に固定強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の壁面取付ユニットの一実施例を示す断面図である。
【
図2】
図1の取付部材を取り付け終えた状態を示す断面図である。
【
図5】
図1の一方の分割ピースの詳細を示す斜視図である。
【
図7】
図1の他方の分割ピースの詳細を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII方向の矢視図である。
【
図9】本発明に用いる保持部材の別の例を示す斜視図である。
【
図10】
図9の保持部材から補強板を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図11】
図9の保持部材及び補強板を中間部で破断した斜視図である。
【
図12】
図11の保持部材及び補強板を側方から見た断面図である。
【
図14】本発明者が創案した更なる従来例を示す断面図である。
【
図15】
図14の取付部材を取り付け終えた状態を示す断面図である。
【
図16】本発明者が創案した
図14の受け部材の構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1及び
図2は本発明の壁面取付ユニットの一実施例を示すもので、本実施例においては、前述した
図14及び
図15の従来例の場合と略同様に、壁面2にタッピングボルト4(締結具)により取付部材1を締め込んで取り付けるようにしたもので、取付部材1を壁面2側の第一面部7と反壁面2側の第二面部8との間に内部空間9を備えた中空構造とし、この内部空間9を通し前記タッピングボルト4を締め込み方向に貫通せしめる挿入孔10,11を第一面部7と第二面部8の夫々に穿設し、これら第一面部7と第二面部8との間で前記タッピングボルト4に貫通螺着される受け部材18を共回りしないよう前記内部空間9に収容せしめた構造としてあり、前記タッピングボルト4を前記壁面2に対し締め込むにつれ前記受け部材18が相対的に前記タッピングボルト4のボルトヘッド13(締結頭部)側へ移動して該ボルトヘッド13との間で前記第二面部8が挟圧保持されるようになっている。
【0028】
ただし、前記受け部材18においては、前記タッピングボルト4のねじ山より小径で且つねじ溝より大径の螺合孔19を開口した補強板20を複数枚装備しており、
図3及び
図4に示す如く、これら各補強板20は、タッピングボルト4の締め込み方向に対し所定の段差を持つ互いに平行な一対の平坦部21,22と、該各平坦部21,22相互を斜めに繋ぐ傾斜部23とにより、折り曲げ角が大きくて比較的緩やかなクランク状(
図4参照)を成すように形成されており、このように形成した前記補強板20の傾斜部23に螺合孔19が開口されるようになっている。
【0029】
また、前記各補強板20は、
図5~
図8に示す如き半割り状の一対の分割ピース24,25により分割構成された樹脂製の保持部材26により前記螺合孔19周囲が抱持されるようになっており、前記各分割ピース24,25相互の対向面に、前記各補強板20を差し込み固定するための保持溝27,28と、前記各分割ピース24,25相互を嵌め合わせにより係合連結する係合部29,30とが形成されている。
【0030】
そして、このような保持部材26により抱持される前記各補強板20は、タッピングボルト4を螺合孔19に貫通螺着させて受け部材18の姿勢を前記タッピングボルト4と直交する状態とした時に、傾斜部23が前記タッピングボルト4の一側面から見たねじ山の向きに沿う傾斜状態を成すようにしてあり、前記保持部材26の反壁面2側には、前記第二面部8に圧接する押圧面31が形成されている。
【0031】
ここで、前記各補強板20を前記保持部材26により抱持してなる受け部材18は、全体として矩形状に形成されており、これより僅かに外形寸法の大きな矩形状を成す前記取付部材1の内部空間9の外縁部に対し少なくとも二辺(
図1及び
図2の場合は図面に対し直角な方向に相対する奥側と手前側の図示のない二辺)が沿うように係止されることで前記受け部材18の共回りが阻止されるようにしてある。
【0032】
尚、ここに図示している例においては、取付部材1を取り付けた状態における固定強度の向上を図る観点から複数枚の補強板20をまとめて保持部材26により抱持するようにしているが、この際、各補強板20は、前記タッピングボルト4のねじ溝に個別に嵌まり込むような配置としてある。
【0033】
而して、壁面2にタッピングボルト4により取付部材1を締め込んで取り付けるにあたり、取付部材1の内部空間9に収容されている受け部材18は、前記内部空間9の外縁部に対し係止されることで共回りが阻止され、前記タッピングボルト4に対し直交する姿勢に保持されるが、前記補強板20における螺合孔19のある傾斜部23が前記タッピングボルト4の一側面から見た時にねじ山の向きに沿う傾斜状態を成す一方、180°反対の側面から見た時にはねじ山の向きとは逆向きの傾斜状態を成し、夫々の中間の側面から見た時には何れの向きにも傾斜しない状態を成すようになっている。
【0034】
この結果、前記タッピングボルト4のねじ山は、その回転位置ごとに次々と向きを変える傾斜部23の螺合孔19に対し噛み合うことになり、該螺合孔19と前記タッピングボルト4のねじ山との間で軽微な噛み込みが生じたとしても、前記タッピングボルト4を締め込み続けると、その噛み込みを緩和する向きに前記傾斜部23の向きが変化し、これにより軽微な噛み込みが直ぐに解けてかじり発生が未然に回避されることになる。
【0035】
尚、これ以降の作動については従前通りであり、前記タッピングボルト4を前記壁面2に対し締め込むにつれ前記受け部材18が相対的に前記タッピングボルト4のボルトヘッド13側へ移動して該ボルトヘッド13との間で前記第二面部8が挟圧保持され、これによりタッピングボルト4の締め込み量が規定されて過剰な締め込みが防止される。
【0036】
しかも、前記受け部材18により第二面部8にタッピングボルト4の締め込みによる応力集中が緩和されると共に、前記取付部材1自体も第一面部7の広い面積で押し付けられることになって前記タッピングボルト4の締め込み箇所に局所的に応力が作用することもなくなる。
【0037】
従って、上記実施例によれば、補強板20を保持部材26により抱持してなる安価で生産性の高い構造の受け部材18を採用しながらも、タッピングボルト4にかじりを生じさせることなく円滑に締め込んで壁面2への取付部材1の良好な取り付けを実現することができる。
【0038】
また、特に本実施例にあっては、各分割ピース24,25相互の保持溝27,28に各補強板20を差し込み固定しながら前記各分割ピース24,25を嵌め合わせるだけで簡単に各補強板20を保持部材26により抱持させることができ、しかも、前記各分割ピース24,25相互の嵌め合わせを係合部29,30の係合連結により確実に保持することができる。
【0039】
更に、本実施例に示しているような補強板20は、プレス加工により簡単に且つ安価なコストで製作することができ、従来構造からの改良に伴う受け部材18のコスト増加や生産性の低下を大幅に抑制することができる。
【0040】
また、本実施例では、複数枚の補強板20をまとめて保持部材26により抱持し且つ前記各補強板20をタッピングボルト4のねじ溝に個別に嵌まり込むように配置しているが、このように補強板20を複数枚に増やすだけで簡便に固定強度の向上を図ることができる。
【0041】
図9~
図12は本発明に用いる保持部材の別の例を示すもので、ここに図示している例では、補強板20より一回り大きな外形を持つ矩形状の単一ピースで構成した保持部材26’(保持部材26’と単一ピースは実質的に同一であるため単一ピースには新たな符号は付していない)としており、該保持部材26’の表裏両面には、前記補強板20を嵌め込み固定するための嵌合凹部32が夫々形成されている。
【0042】
ここで、前記保持部材26’の表裏を区画している仕切壁33は、前記補強板20の緩やかなクランク状の折れ曲がりに対応した形状を成しており、このような保持部材26により抱持される前記各補強板20は、タッピングボルト4を螺合孔19に貫通螺着させて受け部材18の姿勢を前記タッピングボルト4と直交する状態とした時に、傾斜部23が前記タッピングボルト4の一側面から見たねじ山の向きに沿う傾斜状態を成すようにしており、前記保持部材26’の反壁面2側の外周囲には、前記第二面部8に圧接する押圧面31’が枠状に形成されている。
【0043】
更に、前記保持部材26’にあっては、前記各嵌合凹部32における前記各補強板20がクランク状に折れ曲がる向きに対峙している一方の側壁の中央に掛止片34が形成されている一方、他方の側壁の両端には掛止爪35が形成されていて、該掛止爪35に前記補強板20の一辺を引っ掛けた状態とし、該一辺に対向する他辺を前記掛止片34を撓ませつつ該掛止片の34の奥まで押し込むことで、該掛止片34が撓む前の状態に復帰して前記補強板20の他辺をしっかりと押さえ、該補強板20が前記仕切壁33にぴったり重なった状態で固定されるようになっている(特に
図11及び
図12を参照)。
【0044】
また、取付部材1を取り付けた状態における固定強度の向上を図る観点から二枚の補強板20を前記保持部材26’の表裏に嵌め込んでいるが、この際、前記仕切壁33の厚みは、表裏の補強板20が前記タッピングボルト4のねじ溝に個別に嵌まり込む配置となるように設定してある。
【0045】
尚、前記保持部材26’の仕切壁33の中央には、前記各補強板20の螺合孔19同士を開通せしめる貫通孔36が開口しているが、前記各補強板20の螺合孔19に対するタッピングボルト4のねじ山の良好な螺合を阻害しないよう前記貫通孔36を前記各補強板20の螺合孔19より相対的に大きな径で開口させておくと良い。
【0046】
而して、このような保持部材26’を採用すれば、嵌合凹部32に補強板20を嵌め込むだけで簡単に補強板20を保持部材26’により抱持させることができ、該保持部材26’を単一ピースのみで構成することができて部品点数の削減によるコストダウンを図ることができる。
【0047】
ただし、前記保持部材26’を軟性の樹脂で形成した上で敢えて前記貫通孔36を前記各補強板20の螺合孔19より相対的に小さな径で開口させておき、前記タッピングボルト4を前記各補強板20の螺合孔19に対し雌ねじを刻むかのように塑性変形させて締め込むことも可能である。
【0048】
このようにした場合には、前記保持部材26’における仕切壁33の貫通孔36に対し前記タッピングボルト4が隙間無く緊密に螺着した状態となるので、該タッピングボルト4が前記仕切壁33を貫通している部分における止水性能が大幅に高められるという付帯的な効果が得られる。
【0049】
尚、本発明の壁面取付ユニットは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、締結具は必ずしもタッピングボルトに限定されず、例えば、壁面の材質に応じて木ねじ等を採用しても良いこと、また、補強板は一枚であっても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 取付部材
2 壁面
4 タッピングボルト(締結具)
7 第一面部
8 第二面部
9 内部空間
10 挿入孔
11 挿入孔
13 ボルトヘッド(締結頭部)
18 受け部材
19 螺合孔
20 補強板
21 平坦部
22 平坦部
23 傾斜部
24 分割ピース
25 分割ピース
26 保持部材
26’ 保持部材
27 保持溝
28 保持溝
29 係合部
30 係合部
31 押圧面
31’ 押圧面
32 嵌合凹部