(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】レバー組付構造
(51)【国際特許分類】
E05B 3/00 20060101AFI20230725BHJP
E05B 63/14 20060101ALI20230725BHJP
E05B 79/12 20140101ALI20230725BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20230725BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20230725BHJP
F16B 21/12 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E05B3/00 E
E05B63/14 A
E05B79/12
B61D19/00 C
F16C11/04 D
F16C11/04 T
F16C11/04 N
F16B21/12 E
(21)【出願番号】P 2019232811
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】大野 修平
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-45604(JP,U)
【文献】実開平1-123219(JP,U)
【文献】実開昭50-376(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 3/00
E05C 9/00
E05B 63/14
E05B 79/12
B61D 19/00
F16C 11/04
F16B 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動装置(2)の作動軸(8)に連動レバー(18)を同行回転可能に組付けるためのレバー組付構造であって、
作動軸(8)には、位置決め溝(22)と抜止溝(23)が周回状に形成されており、両溝(22・23)の間には非円形断面のレバー軸部(24)が形成されており、
連動レバー(18)は、位置決め溝(22)に係合する位置決めレバー(26)と、レバー軸部(24)に外嵌して作動軸(8)の動作を受継ぐ受動レバー(27)と、両レバー(26・27)のいずれか一方に固定される連結具(28)とを備えており、
位置決めレバー(26)と受動レバー(27)には非円形の軸穴(29・30)が形成されており、各レバー(26・27)の軸穴(29・30)をレバー軸部(24)に外嵌させた状態において、位置決めレバー(26)のレバー中心軸線(P1)の指向方向と、受動レバー(27)のレバー中心軸線(P2)の指向方向とは、所定の位相角度分だけ異なる方向に向くように設定されており、
位置決めレバー(26)を位置決め溝(22)内で前記位相角度分だけ回動させたとき、当該位置決めレバー(26)が位置決め溝(22)と係合して、作動軸(8)の軸心方向へ移動不能に位置決めされるように構成されており、
位置決め溝(22)に位置決めされた位置決めレバー(26)と、レバー軸部(24)に外嵌された受動レバー(27)とが連結具(28)を介して同行回転可能に連結されるとともに、これら位置決めレバー(26)と受動レバー(27)とが、抜止溝(23)に係合された抜止具(35)により作動軸(8)に抜止保持されていることを特徴とするレバー組付構造。
【請求項2】
受動レバー(27)と抜止具(35)との間のレバー軸部(24)に、連動レバー(18)の軸心方向の遊動を規制する座金体(38)が配置されている請求項1に記載のレバー組付構造。
【請求項3】
座金体(38)が、抜止具(35)で受け止められる平座金(39)と、同座金(39)と受動レバー(27)の間に配置されて、受動レバー(27)および位置決めレバー(26)を位置決め溝(22)の溝壁に向って押付け付勢する弾性座金(40)とで構成されている請求項2に記載のレバー組付構造。
【請求項4】
抜止具が、抜止溝(23)に貫通形成したピン穴(34)に着脱されるスナップピン(35)で形成されている請求項1から3のいずれかひとつに記載のレバー組付構造。
【請求項5】
作動軸(8)が断面四角状の角軸で形成されており、
位置決め溝(22)と抜止溝(23)は断面円形に形成されて、各溝(22・23)の溝底の直径が作動軸(8)の対辺長さと同じかこれより小さく設定されており、
位置決めレバー(26)を位置決め溝(22)に装着した状態において、位置決めレバー(26)の軸穴(29)の対向辺部が、作動軸(8)の隅部に臨む4個の溝壁(22a)で受止められて、位置決めレバー(26)が作動軸(8)の軸心方向へ位置決めされるようになっている請求項1から4のいずれかひとつに記載のレバー組付構造。
【請求項6】
受動レバー(27)の厚みが位置決めレバー(26)の厚みより大きく設定され、
位置決め溝(22)の溝幅が受動レバー(27)の厚みより小さく設定されている請求項1から5のいずれかひとつに記載のレバー組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動装置の作動軸にレバーを組付けるためのレバー組付構造に関する。作動装置の具体例としては、鎖錠状態と解錠状態に切換えることができる錠装置や、ロック状態とロック解除状態に切換えることができるロック装置などを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
この種のレバー組付構造が適用される錠装置の具体例としては、例えば特許文献1の二段二連錠装置を挙げることができる。特許文献1の二段二連錠装置は、側面引戸の中段部に配置される上側開錠装置と、側面引戸の下部に配置される下側開錠装置と、両錠装置を連動可能に連結する第1リンク機構、および第2リンク機構などで構成される。両開錠装置の作動軸である回動軸部には、レバーである従動部材が取り付けられている。
【0003】
従来の作動軸(回動軸部)にレバー(従動部材)を組付けるためのレバー組付構造を
図10および
図11に示す。このレバー組付構造は、各錠の作動軸51に固定されるレバー52と、各レバー52に固定した連結ピン53を連結するロッド(図示していない)などで構成される。レバー52は、角軸からなる作動軸51に外嵌装着されて、同軸51に固定されるボス54で位置決めされ、割ピン55で抜止される。そのために、作動軸51にはスプリングピン56用のピン穴57と、割ピン55用のピン穴58が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10および
図11に示す従来のレバー組付構造では、各ピン穴57・58の形成位置や、レバー52の厚み、あるいはボス54の軸心方向の長さなどにばらつきがあるため、作動軸51に装着したレバー52を正しく位置決めすることができず、上錠または下錠を施錠し、あるいは解錠するとき、レバー52が厚み方向へガタつくことが避けられない。また、ボス54と割ピン55でレバー52の軸心方向の動きを規制するので、上錠または下錠の交換や補修を行う場合には、割ピン55とスプリングピン56を作動軸51から取り外したのち、ロッド、レバー52、ボス54などを取外し、再度組付ける必要があり、一連の作業が繁雑で多くの手間を要する不利がある。
【0006】
本発明は、レバーを作動軸に対してがたつきのない状態で正しく位置決めでき、しかも作動装置の交換や補修を行う際の連動構造の取外しや再組立てを、より少ない手間で迅速に行うことができるレバー組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作動装置2の作動軸8に連動レバー18を同行回転可能に組付けるためのレバー組付構造を対象とする。作動軸8には、位置決め溝22と抜止溝23が周回状に形成されており、両溝22・23の間には非円形断面のレバー軸部24が形成されている。連動レバー18は、位置決め溝22に係合する位置決めレバー26と、レバー軸部24に外嵌して作動軸8の動作を受継ぐ受動レバー27と、両レバー26・27のいずれか一方に固定される連結具28とを備えている。位置決めレバー26と受動レバー27には非円形の軸穴29・30が形成されている。各レバー26・27の軸穴29・30をレバー軸部24に外嵌した状態において、位置決めレバー26のレバー中心軸線P1の指向方向と、受動レバー27のレバー中心軸線P2の指向方向とは、所定の位相角度分だけ異なる方向に向くように設定されている。位置決めレバー26を位置決め溝22内で前記位相角度分だけ回動させたとき、当該位置決めレバー26が位置決め溝22と係合して作動軸8の軸心方向へ移動不能に位置決めされるように構成されている。そして、位置決め溝22に位置決めされた位置決めレバー26と、レバー軸部24に外嵌された受動レバー27とが連結具28を介して同行回転可能に連結されるとともに、これら位置決めレバー26と受動レバー27とが、抜止溝23に係合された抜止具35により作動軸8に抜止保持されていることを特徴とする。
【0008】
受動レバー27と抜止具35の間のレバー軸部24に、連動レバー18の軸心方向の遊動を規制する座金体38が配置されている。
【0009】
座金体38は、抜止具35で受け止められる平座金39と、同座金39と受動レバー27の間に配置されて、受動レバー27および位置決めレバー26を位置決め溝22の溝壁22aに向って押付け付勢する弾性座金40とで構成されている。
【0010】
抜止具35は、抜止溝23に貫通形成したピン穴25に着脱されるスナップピン35で形成されている。
【0011】
作動軸8は断面四角状の角軸で形成されている。位置決め溝22と抜止溝23は断面円形に形成されて、各溝22・23の溝底の直径が作動軸8の対辺長さと同じかこれより小さく設定されている。位置決めレバー26を位置決め溝22に装着した状態において、位置決めレバー26の軸穴29の対向辺部が、作動軸8の隅部に臨む4個の溝壁22aで受止められて、位置決めレバー26が作動軸8の軸心方向へ位置決めされるようになっている。
【0012】
受動レバー27の厚みが位置決めレバー26の厚みより大きく設定されている。位置決め溝22の溝幅が受動レバー27の厚みより小さく設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、連動レバー18を作動装置2の作動軸8に組付けるレバー組付構造において、作動軸8に位置決め溝22と抜止溝23とレバー軸部24を形成し、連動レバー18を位置決めレバー26と受動レバー27とで構成した。そのうえで、位置決め溝22に位置決めされた位置決めレバー26と、レバー軸部24に外嵌された受動レバー27とが同行回転可能に連結されるとともに、両レバー26・27が抜止溝23に係合した抜止具35により作動軸8に抜止保持されるようにした。
【0014】
こうしたレバー組付構造によれば、レバー軸部24に外嵌された受動レバー27を、位置決め溝22に位置決めされた位置決めレバー26で支持することができるので、作動軸8に対して、両レバー26・27からなる連動レバー18を正しく位置決めした状態で組み付けることができる。さらに、抜止溝23に係合装着した抜止具35で連動レバー18を受止めて抜止保持するので、作動装置2を使用するとき、位置決めレバー26や受動レバー27ががたつくことを防止できる。また、従来はボスをスプリングピンでハンドル軸に固定したのち、レバーをハンドル軸に係合して割りピンで抜止する必要があったが、こうしたレバー組付構造に比べて、一連の組立作業をより少ない手間で簡単に行うことができる。さらに、作動装置2の交換や補修を行う際には、抜止具35を抜止溝23から取外し、連結具28による拘束を解除して位置決めレバー26と受動レバー27とを作動軸8から分離すればよいので、連動構造の取外しや再組立てを、より少ない手間で迅速に行うことができる。
【0015】
受動レバー27と抜止具35との間のレバー軸部24に座金体38が配置されていると、抜止具35で連動レバー18を直接受止めて抜止保持する場合に比べて、受動レバー27と座金体38の接触面積を大きくして、作動装置2を使用するとき、受動レバー27が傾動し、あるいは遊動しようとすることをさらに確実に規制できる。
【0016】
座金体38が、抜止具35で受け止められる平座金39と、同座金39と受動レバー27の間に配置されて、受動レバー27および位置決めレバー26を位置決め溝22の溝壁に向って押付け付勢する弾性座金40とで構成されていると、作動装置2を使用するとき、位置決めレバー26および受動レバー27が傾動ないし遊動しようとすることを、弾性座金40の弾性力で確実に規制して、各レバー26・27ががたつくことを解消できる。また、位置決め溝22や抜止溝23の形成位置や、位置決めレバー26および受動レバー27の厚みにばらつきがあるような場合でも、弾性座金40が弾性変形することで集積誤差を吸収できる。
【0017】
抜止具がスナップピン35で形成されていると、工具を使用する必要もなくスナップピン35をピン穴25に迅速に着脱することが可能となる。これによれば、割ピンを用いた従来の抜止構造に比べて、各レバー26・27の作動軸8に対する組付けや、分解および再組み立てをより少ない手間で迅速に行うことができる。
【0018】
作動軸8が断面四角状の角軸で形成されており、位置決め溝22と抜止溝23は断面円形に形成されて、各溝22・23の溝底の直径が作動軸8の対辺長さと同じかこれより小さく設定されていると、位置決めレバー26を位置決め溝22に装着した状態において、位置決めレバー26の軸穴29の対向辺部が、作動軸8の隅部に臨む4個の溝壁22aで確りと受止められる。したがって、より安定した状態で位置決めレバー26を作動軸8に固定することができる。
【0019】
受動レバー27の厚みが位置決めレバー26の厚みより大きく設定され、位置決め溝22の溝幅が受動レバー27の厚みより小さく設定されていると、仮に受動レバー27を位置決め溝22に組付けようとしても、その溝幅が受動レバー27の厚みより小さいので、受動レバー27を位置決め溝22に組付けることはできない。従って、受動レバー27が誤って位置決め溝22に組付けられることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1に係るレバー組付構造の実施例を示す分解斜視図である。
【
図2】実施例1に係るレバー組付構造が適用される2連錠の正面図である。
【
図6】(a)は
図5におけるB-B断面図であり、(b)は
図5におけるC-C線断面図である。
【
図7】(a)~(d)はレバーの組み付け手順を示す説明図である。
【
図8】実施例2に係るレバー組付構造の斜視図である。
【
図9】実施例2に係るレバー組付構造の横断平面図である。
【
図10】従来のレバー組付構造を示す分解斜視図である。
【
図11】従来のレバー組付構造を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例1)
図1ないし
図7に本発明に係るレバー組付構造の実施例を示す。
図2は、本実施例に係るレバー組付構造が適用される2連錠の連動構造を示しており、符号1は鉄道車両等の運転室に設けられるドアパネルであり、その上下2個所に上錠装置(作動装置)2と下錠装置(従動装置)3が配置されて、両錠装置2・3が第1連動ロッド(連動ロッド)4と第2連動ロッド(連動ロッド)5で連動可能に連結されている。ドアパネル1は引違い開閉するドア構造と、揺動開閉するドア構造のいずれであってもよい。
【0022】
上錠装置2は、ドアパネル1の室内側に装着される上錠内ユニット2Aと、ドアパネル1の室外側に装着される上錠外ユニット2Bと、上錠内ユニット2Aに組付けられた内ハンドル6Aおよびサムターンレバー7Aと、上錠外ユニット2Bに組付けられた外ハンドル6Bおよびシリンダー錠7Bと、内外のハンドル6A・6Bを連動可能に連結するハンドル軸(作動軸)8と、サムターンレバー7Aとシリンダー錠7Bを連動可能に連結するサムターン軸9などを備える。内外いずれか一方のハンドル6A・6Bを揺動操作すると、上錠内ユニット2Aの戸枠側端面から進出しているデッドボルト10を退入させて、このデッドボルト10を鎖錠状態から解錠状態に切換えることができる。また、サムターンレバー7A、あるいはシリンダー錠7Bに差し込んだキー(図示していない)を切換え操作することにより、上錠内ユニット2Aの内部に設けたロック機構を、デッドボルト10の退入を阻止するロック状態と、デッドボルト10の退入を許すアンロック状態に切換えることができる。なお、デッドボルト10が出退するとき、下錠装置3のデッドボルト15も同時に出退する。
【0023】
下錠装置3は、基本的に上錠装置2と同様の構造になっており、下錠内ユニット3Aと、下錠外ユニット3Bと、下錠内ユニット3Aのハンドル11Aと、下錠外ユニット3Bのハンドル11Bおよびシリンダー錠12と、内外のハンドル11A・11Bを連動可能に連結するハンドル軸(作動軸)13と、シリンダー錠12に連結された錠軸14などを備える。内外いずれか一方のハンドル11A・11Bを揺動操作すると、下錠内ユニット3Aの戸枠側端面から進出しているデッドボルト15と上錠内ユニット2Aのデッドボルト10を退入させて、鎖錠状態から解錠状態に切換えることができる。あるいは、シリンダー錠12に差し込んだキー(図示していない)を切換え操作することにより、下錠内ユニット3Aの内部に設けたロック機構を、デッドボルト15の退入を阻止するロック状態と、デッドボルト15の退入を許すアンロック状態に切換えることができる。以上のように、下錠装置3は、下錠内ユニット3Aのサムターンレバーが省略してある点が上錠装置2と異なっている。
【0024】
上下の錠装置2・3を連動可能に連結するために、ハンドル軸8・13のそれぞれに連動レバー18・19を固定し、両レバー18・19を第1連動ロッド4で連結している。また、サムターン軸9と錠軸14のそれぞれに、連動レバー20・21を固定し、両レバー20・21を第2連動ロッド5で連結している。以下に、連動レバー18・19をハンドル軸8・13に組付けるためのレバー組付構造の詳細を説明する。なお、各連動レバー18・19の各ハンドル軸8・13に対する組付構造は共通しているので、以下では、連動レバー18のハンドル軸8に対する組付構造のみを説明して、連動レバー19のハンドル軸13に対する組付構造の説明は省略する。
【0025】
図1、
図4、および
図5に示すように、ハンドル軸8は断面が正方形状のステンレス製の角軸からなり、その軸心方向の中途部に位置決め溝22と抜止溝23とが周回状に形成されている。また、両溝22・23の間には、連動レバー18を連結するためのレバー軸部24が形成されている。位置決め溝22および抜止溝23は断面円形に形成されており、各溝22・23の溝底の直径はハンドル軸8の対辺長さと同じに設定されている。抜止溝23には、後述するスナップピン35を装着するためのピン穴25が貫通状に形成されている。
【0026】
連動レバー18は、位置決め溝22に係合する位置決めレバー26と、レバー軸部24に外嵌してハンドル軸8の動作を受継ぐ受動レバー27と、位置決めレバー26に固定される連結ピン(連結具)28とを備えている。位置決めレバー26および受動レバー27は、ステンレス板材にプレス加工を施して花弁状に形成されており、各レバー26・27の大径縁側の中央にレバー軸部24に外嵌する正方形状の軸穴29・30が形成されている。位置決めレバー26のレバー中心軸線P1の指向方向と受動レバー27のレバー中心軸線P2の指向方向とが一致する正対姿勢としたとき、軸心方向から見て位置決めレバー26の軸穴29が菱形となるのに対して、受動レバー27の軸穴30は正方形となるように形成されている。換言すれば、位置決めレバー26のレバー中心軸線P1の指向方向と受動レバー27のレバー中心軸線P2の指向方向とが一致する正対姿勢としたとき、位置決めレバー26の軸穴29と受動レバー27の軸穴30とは異なる姿勢状態(45度の角度ずれを有する状態)となるように構成されている。受動レバー27の小径縁側の中央には、連結ピン28用のピン穴31が形成されている。連結ピン28には、受動レバー27のピン穴31と係合する連結軸32が形成されており、同軸32の端部に連続する段落軸部に、スナップピン35を装着するためのピン穴34が貫通状に形成されている。
【0027】
上記のように、位置決めレバー26と受動レバー27は、同形同大の花弁状に形成するが、その厚みは受動レバー27が2mmと厚く設定され、位置決めレバー26は1.5mmと薄く設定されている。また、位置決め溝22の溝幅と抜止溝23の溝幅は、各レバー26・27の厚みの違いに対応した余裕寸法を含む溝幅に設定されている。こうしたレバー組付構造によれば、仮に受動レバー27を位置決め溝22に組付けようとしても、その溝幅が受動レバー27の厚みより小さいので、受動レバー27を位置決め溝22に組付けることはできない。したがって、受動レバー27が誤って位置決め溝22に組付けられることを確実に防止できる。
【0028】
ハンドル軸8に取付けた連動レバー18をがたつきのない状態で保持固定することを目的として、受動レバー27とピン穴25に装着したスナップピン(抜止具)35の間のレバー軸部24には座金体38が配置されている。座金体38は、スナップピン35で受け止められる平座金39と波形ばね(弾性座金)40で構成されている。座金体38を連動レバー18と共にハンドル軸8に取付けて、スナップピン35で保持固定した状態では、弾性変形している波形ばね40が、受動レバー27および位置決めレバー26を位置決め溝22の溝壁22a(
図6参照)に向って押付け付勢している。したがって、使用時に連動レバー18が軸心方向へ遊動し、がたつき音が発生するのを座金体38で確実に規制できる。また、位置決め溝22や抜止溝23の形成位置や、位置決めレバー26および受動レバー27の厚みにばらつきがあるような場合でも、波形ばね40が弾性変形することで集積誤差を吸収できる。
【0029】
連動レバー20・21は、それぞれ段違い状に折曲げられたレバーからなり、サムターン軸9および錠軸14に対して、
図8で説明した従来のレバー組付構造によって組付けられている。具体的には、サムターン軸9および錠軸14に外嵌装着したボス43で連動レバー20・21を位置決めし、各軸9・14に固定した割りピン44で各レバー20・21の移動を規制している。ボス43は図示していないスプリングピンで各軸9・14に固定されている。
【0030】
次に、連動レバー18をハンドル軸8に取付ける際の手順を説明する。まず、
図7(a)に示すように、位置決めレバー26の軸穴29をハンドル軸8に外嵌し、位置決め溝22までスライド移動させる。このとき、位置決めレバー26の軸穴29がハンドル軸8の軸心方向から見て菱形となっているため、レバー軸部24を通過するときの位置決めレバー26のレバー中心軸線P1は、水平面に対して斜め下向き(あるいは斜め上向き)に45度傾いている。同様にして受動レバー27の軸穴30をハンドル軸8に外嵌するが、受動レバー27の軸穴30はハンドル軸8の軸心方向から見て正方形となっているため、受動レバー27のレバー中心軸線P2は水平となり、両レバー26・27のレバー中心軸線P1・P2の指向方向には、所定の位相角度分(45度)のずれがある。換言すれば、各レバー26・27の軸穴29・30をレバー軸部24に外嵌させた状態において、位置決めレバー26のレバー中心軸線P1の指向方向と、受動レバー27のレバー中心軸線P2の指向方向とは、所定の位相角度分(45度)だけ異なる方向に向いている。この状態から位置決めレバー26を位置決め溝22内で上向きに回動させることにより、レバー中心軸線P1を水平方向に向けることができるので、両レバー中心軸線P1・P2を一致させることができる。次に、ピン穴31を連結ピン28の連結軸32に係合しながら、軸穴30をレバー軸部24に装着することにより、位置決めレバー26を受動レバー27で水平に保持して、両レバー26・27を外郭形状どうしが一致する状態で重合状に連結して、両レバー26・27をハンドル軸8に組むことができる(
図7(b)および
図7(c)参照)。
【0031】
各レバー26・27をハンドル軸8に組んだのち、
図7(c)および
図7(d)に示すように波形ばね40と平座金39を記載順にハンドル軸8に組み、波形ばね40を弾性変形させながら、スナップピン35をピン穴25に装着する。これにより、位置決めレバー26と受動レバー27をハンドル軸8に対して軸心方向へ位置決めし、さらに両レバー26・27の軸心方向の遊動を規制した状態で抜止固定できる。
【0032】
以上のようにして位置決めレバー26と受動レバー27とが組まれたハンドル軸8は、上錠内ユニット2Aと上錠外ユニット2Bとともにドアパネル1に組付けられる。なお、連動レバー19は、連動レバー18と同様に位置決めレバー26と受動レバー27とで構成されており、ハンドル軸13に対して同じ手順で組み付けられる。また、位置決めレバー26と受動レバー27が組まれたハンドル軸13は、下錠内ユニット3Aと下錠外ユニット3Bとともにドアパネル1に組付けられる。上錠装置2や下錠装置3の交換や補修を行う際には、スナップピン35を指先でつまんで抜止溝23から取外し、第1連動ロッド4を連結ピン28から分離して、位置決めレバー26と受動レバー27とをハンドル軸8から分離すればよい。したがって、連動構造の取外しや再組立てを、より少ない手間で迅速に行うことができる。
【0033】
以上のようなレバー組付構造によれば、連動レバー18を、位置決めレバー26と受動レバー27で構成し、レバー軸部24に係合した受動レバー27を位置決め溝22に係合した位置決めレバー26で支持して位置決めするので、連動レバー18をハンドル軸8に対して正しく位置決めした状態で組むことができる。さらに、抜止溝23に係合装着したスナップピン35で連動レバー18を受止めて抜止保持するので、上錠装置2を使用するとき、位置決めレバー26や受動レバー27ががたつくことを防止できる。また、従来はボスをスプリングピンでハンドル軸に固定したのち、レバーをハンドル軸に係合して割りピンで抜止する必要があったが、こうしたレバー組付構造に比べて、一連の組立作業をより少ない手間で簡単に行うことができる。さらに、上錠装置2の交換や補修を行う際には、スナップピン35を抜止溝23から取外し、受動レバー27を連結ピン28から分離しながら、位置決めレバー26と受動レバー27をハンドル軸8から分離すればよいので、連動構造の取外しや再組立てを、より少ない手間で迅速に行える。従来、不可欠であったボスやスプリングピンを省略できる分だけ、レバー組付構造の全体コストを削減できる利点もある。
【0034】
受動レバー27とスナップピン35の間のレバー軸部24に座金体38を配置するようにしたので、スナップピン35で連動レバー18を直接受止めて抜止保持する場合に比べて、受動レバー27と座金体38の接触面積を大きくして、上錠装置2を使用するとき、受動レバー27が傾動し、あるいは遊動しようとするのをさらに確実に規制できる。
【0035】
抜止具はスナップピン35で形成するようにしたので、工具を使用する必要もなくスナップピン35をピン穴25に迅速に着脱できる。したがって、割ピンを用いた従来の抜止構造に比べて、各レバー26・27のハンドル軸8に対する組付けや、分解および再組み立てをより少ない手間で迅速に行うことができる。
【0036】
断面正方形の角軸からなるハンドル軸8に、溝底の直径がハンドル軸8の対辺長さと同じかこれより小さく設定された、断面円形の位置決め溝22と抜止溝23とを形成したので、位置決めレバー26を位置決め溝22に装着した状態において、位置決めレバー26の軸穴29の対向辺部を、ハンドル軸8の隅部に臨む4個の溝壁22aで確りと受止めることができ、より安定した状態で位置決めレバー26をハンドル軸8に固定できる。
【0037】
(実施例2)
図8および
図9は実施例2に係るレバー組付構造を示している。実施例2に係る連動レバー18は、実施例1の連動レバー18と同様に、位置決めレバー26と受動レバー27で構成するが、受動レバー27を階段状に折り曲げて、連結ピン28の端部に連続する段落軸部にピン穴34を形成するようにした。この実施例では、段落軸部の基端部がピン穴31で支持されるようにした。こうしたレバー組付構造によれば、第1連動ロッド4を上錠装置2および下錠装置3から充分に離れた位置で連結ピン28に連結できる。また、受動レバー27が階段状に折り曲げてあるので、位置決めレバー26と明確に識別することができ、従って、位置決めレバー26と受動レバー27が、誤ってハンドル軸8に組付けられるのをさらに確実に防止できる。他は実施例1のレバー組付構造と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
上記の実施例で説明したレバー組付構造は、下記の2連錠の連動構造に適用することができる。
開閉自在なドアパネル1の上下に上錠装置2と下錠装置3が配置されており、
上錠装置2および下錠装置3は、それぞれドアパネル1の内外に配置される上錠内ユニット2Aおよび上錠外ユニット2Bと、下錠内ユニット3Aおよび下錠外ユニット3Bで構成されており、
各錠ユニット2A・2B・3A・3Bは、内外のハンドル6A・6B・11A・11Bと、内外の錠ユニット2A・2B・3A・3Bの間で内外のハンドル6A・6B・11A・11Bを連動可能に連結する上下のハンドル軸8・13を備えており、
上下のハンドル軸8・13に装着した上下の連動レバー18・19の連結ピン28が、連動ロッド4で連動可能に連結された2連錠の連動構造。
【0039】
上記以外に、ハンドル軸8の断面は正方形である必要はなく、長方形や5角以上の多角形、あるいはD形、太鼓形、楕円形などであってもよい。また、丸軸の中途部に非円形断面の軸部が形成されており、そこに位置決め溝22と抜止溝23とレバー軸部24とが形成されていてもよい。位置決めレバー26と受動レバー27は連結ピン28以外に、ボルトおよびナットで連結してあってもよい。弾性座金40は波形ばね以外に、皿ばね、歯付座金、ばね座金などの市販されている座金を使用してもよい。
【0040】
抜止具は、スナップピン35以外に、優弧状の操作リングと抜止溝23の対向面を抱持する一対の抱持腕を備えたダルマ形の抜止ピンであってもよい。また、スナップピン35の代わりに割りピンを使用すると、抜止溝23を省略できる分だけコストを削減できる。サムターン軸9および錠軸14に対する連動レバー20・21の取付構造は、ハンドル軸8・13に対する連動レバー18・19の取付構造と同じであってもよい。位置決め溝22や抜止溝23は旋削加工で形成するが、その加工精度が十分に高い場合には、波形ばね40あるいは座金体38は省略することができる。位置決めレバー26と受動レバー27は同形同大である必要はなく、両レバー26・27の外形は異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
2 上錠装置(作動装置)
6A 内ハンドル
6B 外ハンドル
8 ハンドル軸(作動軸)
18 連動レバー
22 位置決め溝
23 抜止溝
24 レバー軸部
26 位置決めレバー
27 受動レバー
28 連結ピン(連結具)
29 軸穴
35 スナップピン(抜止具)
38 座金体
39 平座金
40 波形ばね(弾性座金)