(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】撹拌機
(51)【国際特許分類】
B01F 35/71 20220101AFI20230725BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20230725BHJP
【FI】
B01F35/71
B01F27/80
(21)【出願番号】P 2020017878
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】土井 尚俊
(72)【発明者】
【氏名】長門 琢也
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-300280(JP,A)
【文献】特開2014-188509(JP,A)
【文献】特開2002-045670(JP,A)
【文献】特開2012-115808(JP,A)
【文献】特開平07-144124(JP,A)
【文献】特開平08-025343(JP,A)
【文献】特開2009-288031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/00 - 35/95
B01F 27/00 - 27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する撹拌槽と、上下方向に沿って延びる回転軸に設けられ、前記撹拌槽内の前記被処理物を撹拌する撹拌翼と、前記撹拌槽の底部かつ前記回転軸の下方に配置され、同心状に上下に配設されたステータ及びロータを有し、前記ロータの回転に伴
い、前記被処理物の吸い込み・
剪断・押し出しを行うホモジナイザとを備えた撹拌機において、
前記被処理物の原料を供給する原料供給通路が、前記回転軸内に設けられており、前記原料供給通路の上方側の端部が、前記撹拌槽の外部に配置される原料投入部に連通し、前記原料供給通路の下方側の端部が、前記ホモジナイザ
の中心部に対向し
、
前記原料供給通路は、前記回転軸内に配設された管状体の内部空間で構成され、前記管状体は、前記回転軸に対して上下動可能であることを特徴とする撹拌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、ファインケミカル、食品等の製造工程において、粘性の液体や粉体等の混合、乳化、分散、脱泡等の処理に使用される撹拌機に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、ファインケミカル、食品等の製造工程において、粘性の液体や粉体等の混合、乳化、分散、脱泡等の処理に使用される撹拌機として、被処理物を収容する撹拌槽と、上下方向に沿って延びる回転軸に設けられ、前記撹拌槽内の前記被処理物を撹拌する撹拌翼と、前記撹拌槽の底部かつ前記回転軸の下方に配置され、同心状に上下に配設されたステータ及びロータを有し、前記ロータの回転に伴い、前記被処理物の吸い込み・剪断・押し出しを行うホモジナイザとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているように、この種の撹拌機では、原料は、供給管内を圧送(空気輸送等)され、撹拌槽内へ供給される。そして、撹拌槽内へ供給された原料がホモジナイザに吸い込まれることにより、原料の撹拌槽内への供給が促進される。
【0005】
ところが、実際には、この供給方法では、例えば、原料が撹拌槽内に供給された際に滞留等して原料の供給がスムーズに行われない場合があった。例えば、原料が粉体の場合、撹拌槽内に供給された際にダマを生じることがあった。そのため、撹拌槽内を真空ポンプで陰圧にすることにより、原料の撹拌槽内への供給を更に促進させることが行われていた。しかしながら、製造コスト削減の観点からは、真空ポンプを不要とすることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、撹拌機の撹拌槽への原料供給において、攪拌槽内を陰圧にすることなく、スムーズに原料を攪拌槽内に供給できるようにすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る撹拌機は、被処理物を収容する撹拌槽と、上下方向に沿って延びる回転軸に設けられ、前記撹拌槽内の前記被処理物を撹拌する撹拌翼と、前記撹拌槽の底部かつ前記回転軸の下方に配置され、同心状に上下に配設されたステータ及びロータを有し、前記ロータの回転に伴い、前記被処理物の吸い込み・剪断・押し出しを行うホモジナイザとを備えた撹拌機において、前記被処理物の原料を供給する原料供給通路が、前記回転軸内に設けられており、前記原料供給通路の上方側の端部が、前記撹拌槽の外部に配置される原料投入部に連通し、前記原料供給通路の下方側の端部が、前記ホモジナイザの中心部に対向し、前記原料供給通路は、前記回転軸内に配設された管状体の内部空間で構成され、前記管状体は、前記回転軸に対して上下動可能であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、原料供給通路の下方側の端部が、ホモジナイザの中心部(ロータの回転軸線と交差する部位及びその周辺)に対向している。そして、原料供給通路が設けられている回転軸は、上下方向に沿って延びている。そのため、原料供給通路内の原料は、重力により原料供給通路内を下降することが可能である。原料供給通路内を下降した原料は、原料供給通路の下方側の端部から排出され、ホモジナイザの中心部の近傍に到達する。ホモジナイザの中心部は吸い込み力が特に強いので、ホモジナイザの中心部の近傍に到達した原料は、ホモジナイザのロータ回転に伴い、ホモジナイザの中心部からホモジナイザ内に吸い込まれる。従って、ホモジナイザと原料供給通路の間に原料が滞留することは無く、スムーズに原料を撹拌槽内に供給することが可能である。よって、撹拌槽に原料を供給する際に、撹拌槽内を陰圧にすることを不要にできる。すなわち、本発明に係る撹拌機によれば、撹拌機の撹拌槽への原料供給において、真空ポンプを不要とすることが可能である。
【0009】
上記の構成において、前記原料供給通路が、前記回転軸内に配設された管状体の内部空間で構成されていてもよい。
【0010】
この構成であれば、回転軸内に、原料供給通路を容易に設けることができる。
【0011】
上記の構成において、前記管状体が、前記回転軸に対して上下動可能であってもよい。
【0012】
この構成であれば、原料供給通路の下方側の端部と、ホモジナイザとの間の距離を調節することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撹拌機の撹拌槽への原料供給において、真空ポンプを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る撹拌機の概略縦断面図である。
【
図2】撹拌機の撹拌槽の底部周辺の拡大縦断面図である。
【
図3】ホモジナイザが下降した状態の撹拌機を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る撹拌機の概略縦断面図であり、
図2は、撹拌機の撹拌槽の底部周辺の拡大縦断面図である。この撹拌機1は、被処理物を収容する撹拌槽2と、上下方向に沿って延びる回転軸3に設けられ、撹拌槽2内の前記被処理物を撹拌する撹拌翼4と、撹拌槽2の底部2aかつ回転軸3の下方に配置されたホモジナイザ5とを主要な構成要素として備える。
【0016】
撹拌槽2の底部2aと側部2bとの間には循環パイプ6が配設されている。撹拌槽2内には、内壁に固定されたバッフル7が配置されている。撹拌翼4は、回転軸3を介して、駆動モータ8に回転駆動される。
【0017】
ホモジナイザ5は、同心状に上下に配設されたステータ9及びロータ10を有し、ロータ10の回転に伴
い、前記被処理物の吸い込み・
剪断・押し出しを行う。また、ホモジナイザ5は、
図1に示す高さ位置と
図3に示す高さ位置との間を、上下動可能である。
【0018】
ステータ9は、下向きの櫛歯9aと、櫛歯9aの上端を連続させる環状部9bと、環状部9bの外周に設けられたフランジ部9cを一体に有する。ロータ10は、上向きの櫛歯10aと、櫛歯10aの下端を連続させる円板部10bと、円板部10bの中央から下方に延びる軸部10cを有する。
【0019】
昇降部材11の内部に回転駆動軸12が回転自在に挿通されている。回転駆動軸12の上端部にロータ10の軸部10cが挿入された状態で、ロータ10が回転駆動軸12に対して固定されている。ロータ10は回転駆動軸12と一体に高速回転する。ロータ10の櫛歯10aとステータ9の櫛歯9aが隙間を介して対向する状態で、ステータ9のフランジ部9cが昇降部材11に固定されている。昇降部材11と回転駆動軸12とは一体的に上下動し、シリンダ等の適宜の手段によって上下駆動される。また、回転駆動軸12には、その下方に配置されたモータ(不図示)から回転動力が入力される。
【0020】
図1,2に示すように、ホモジナイザ5が上昇した状態でロータ10が回転すると、ロータ10の回転に伴
い、撹拌槽2内の被処理物がホモジナイザ5の内部に吸い込まれ、さらに遠心力でロータ10の櫛歯10aとステータ9の櫛歯9aの間から押し出され、この時の両櫛歯9a,10aによる剪断作用で被処理物の混合、乳化、分散が促進される。ホモジナイザ5から押し出された被処理物は、撹拌槽2の底部2a外周側から上方に向かって流動し、撹拌翼4で撹拌されて、再びホモジナイザ5に吸い込まれる。
【0021】
一方、
図3に示すように、ホモジナイザ5が下降した状態でロータ10が回転すると、ロータ10の回転に伴
い、被処理物の混合、乳化、分散が促進されると同時に、ホモジナイザ5から押し出された被処理物が、循環パイプ6を介して撹拌槽2の側部2bに戻される。撹拌槽2の側部2bに戻された被処理物は、撹拌翼4で撹拌されて、再びホモジナイザ5に吸い込まれる。あるいは、ホモジナイザ5から押し出された被処理物は、循環パイプ6の一部から分岐した排出管6aから製品として排出される。
【0022】
撹拌翼4の回転軸3には、原料供給管13(管状体)が上下動可能に配設されている。被処理物の原料を供給する原料供給通路Rが、原料供給管13の内部空間で構成されている。原料供給管13の上方側の端部(上端部13a)が、撹拌槽2の外部かつ上方に配置されたホッパ等の原料投入部14に供給用バルブ14aを介して連通されている。換言すると、原料供給管13の上端部13aは、上下方向に沿って延びる連通路Cで原料投入部14に接続されており、連通路Cの途中に供給用バルブ14aが配設されている。原料供給管13の下方側の端部(下端部13b)が、ホモジナイザ5に対し、隙間を介して対向している。なお、ホモジナイザ5のロータ10と回転軸3は、同軸になるように配置されている。
【0023】
詳述すると、回転軸3も管状体であり、その内部空間内に、回転軸3と同軸となるように原料供給管13が配設されている。原料供給管13は、回転軸3の内周の上側と下側に配設されているシール部3aを介して回転軸3に支持されている。シール部3aは、例えば合成樹脂等で形成されている。原料供給管13は、シール部3aの内周に対して摺動することにより、回転軸3に対して上下動することが可能である。原料供給管13は、回転軸3に対し、シリンダ等の適宜の手段によって上下駆動される。原料供給管13の上端部13aは、回転軸3の上端から突出しており、原料供給管13の下端部13bは、回転軸3の下端から突出している。なお、本実施形態では、原料供給管13は、回転軸3と一体的に回転するが、例えば、原料供給管13を転がり軸受等を介して回転軸3に取り付け、原料供給管13が、回転軸3と異なる速度で回転、あるいは回転しないように構成してもよい。
【0024】
原料供給管13の下端部13bの内径Dは、ロータ10の最も内周側の櫛歯10aの内径dより小さい。内径dは、ステータ9の開口部9eの下端の径より小さい。原料供給管13の下端面と、ロータ10の最も内周側の櫛歯10aの上端面との回転軸3の中心軸線に沿った距離Lは、例えば2mm~20mmである。距離Lが2mmより小さい場合、原料供給管13の下端部13bとステータ9との隙間が小さくなり、この隙間を介してロータ10の最も内周側の櫛歯10aの内周へ流入する撹拌槽2内の空気(あるいは供給済みの原料や被処理物)が少なくなることに起因して、原料に対するロータ10による吸引力が不十分になる可能性がある。距離Lが20mmより大きい場合、ロータ10による吸引力が、原料供給管13の下端部13bから排出される原料に十分に及ばない可能性がある。
【0025】
図3に示す状態になるようにホモジナイザ5を下降させる時は、ホモジナイザ5の下降量と下降量が同じになるように、原料供給管13を下降させる。これにより、原料供給管13の下端部13bとホモジナイザ5との距離(距離L)が、ホモジナイザ5が上昇した状態(
図1,2の状態)と同じとなる。
【0026】
空の状態の撹拌槽2への原料の供給は、次のように行う。最初に、原料供給用バルブ14aを閉めた状態で、原料投入部14に所定量の原料を投入する。次に、ホモジナイザ5のロータ10を回転させる。すると、ロータ10の回転に伴い、ホモジナイザ5が撹拌槽2内の空気の吸い込み・押し出しを行う。それから、原料供給用バルブ14aを開状態とする。すると、連通路Cは、上下方向に沿って延びているので、原料投入部14内の原料は、この連通路C内を重力により下降し、上端部13aから原料供給管13内に入る。原料供給管13は上下方向に沿って延びているので、原料供給管13内に入った原料は、重力により原料供給管13内を下降し、原料供給管13の下端部13bから排出され、ホモジナイザ5近傍に到達する。このホモジナイザ5近傍に到達した原料は、ホモジナイザ5のロータ10回転に伴い、ホモジナイザ5内に吸い込まれる。そして、所望量の原料が撹拌槽2内に供給されるまで、この状態を維持し、所望量の原料が撹拌槽2内に供給されたら、原料供給用バルブ14aを閉状態にする。その後、ホモジナイザ5のロータ10の回転を停止する。
【0027】
なお、ホモジナイザ5近傍に到達した原料がホモジナイザ5内に吸い込まれる際には、原料供給管13の下端部13bとステータ9との隙間を介してホモジナイザ5に吸い込まれる撹拌槽2内の空気(あるいは既に供給された原料)の流れも、ホモジナイザ5近傍に到達した原料のホモジナイザ5内への吸い込みに寄与する。
【0028】
以上のように構成された撹拌機1では、原料供給管13の下端部13bが、ホモジナイザ5の中心部(ロータの回転軸線と交差する部位及びその周辺)に隙間を介して対向している。そして、原料供給管13が設けられている回転軸3は、上下方向に沿って延びている。そのため、原料供給管13内の原料は、重力により原料供給管13内を下降することが可能である。原料供給管13内を下降した原料は、原料供給管13の下端部13bから排出され、ホモジナイザ5の中心部の近傍に到達する。ホモジナイザの中心部は吸い込み力が特に強いので、ホモジナイザ5の中心部の近傍に到達した原料は、ホモジナイザ5のロータ10回転に伴い、ホモジナイザの中心部からホモジナイザ5内に吸い込まれる。従って、ホモジナイザ5と原料供給管13の間に原料が滞留することは無く、スムーズに原料を撹拌槽2内に供給することが可能である。よって、撹拌槽2に原料を供給する際に、撹拌槽2内を陰圧にすることを不要にできる。すなわち、本実施形態に係る撹拌機1によれば、撹拌機1の撹拌槽2への原料供給において、真空ポンプを不要とすることが可能である。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回転軸3に対し、原料供給管13が上下動可能に配設されているが、
図1,2の状態で、回転軸3に対して原料供給管13が固定されていてもよい。この場合には、ホモジナイザ5が上昇した状態(
図1,2の状態)で、原料を供給し、ホモジナイザ5が下降した状態(
図3の状態)で原料を供給しないようにすればよい。
【0030】
また、上記実施形態では、撹拌槽2の底部2aと側部2bとの間には循環パイプ6が配設されていたが、循環パイプ6が配設されていなくてもよい。また、上記実施形態では、ホモジナイザ5は、上下動可能であったが、上下動可能でなくてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、撹拌槽2への原料の供給の際に、連通路C及び原料供給管13内で、原料が重力により下降していたが、原料が細かい粉体や粘性が強いもの等の場合、連通路C及び原料供給管13内で原料を圧送(空気輸送等)してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、原料供給通路Rを、原料供給管13の内部空間で構成していたが、例えば、回転軸3の内部空間に原料供給管13を配設せずに、原料供給通路Rを回転軸3の内部空間で構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 撹拌機
2 撹拌槽
2a 底部
3 回転軸
4 撹拌翼
5 ホモジナイザ
9 ステータ
10 ロータ
13 原料供給管(管状体)
14 原料投入部
C 連通路
R 原料供給通路