(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ボビンレスチーズ染色方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/00 20060101AFI20230725BHJP
D06B 5/16 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
D06P5/00 A
D06B5/16
(21)【出願番号】P 2020093261
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518461539
【氏名又は名称】山崎 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】山崎 徹
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-024481(JP,A)
【文献】実開昭49-015278(JP,U)
【文献】実開平01-119087(JP,U)
【文献】特開昭50-004386(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102230260(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/00-7/00
D06B 5/00-5/26,
23/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿糸又は綿混糸を対象とするチーズ染色方法であって、
キャリアの
ステージ上に立設させたスピンドルと同一の直径を有する芯材の外側に原糸を捲いて複数のチーズを形成し、
キャリアのステージ上に立設させたスピンドルの上方からチーズのみを下方へスライドさせ、芯材の外周側の位置からスピンドルの外周側の位置へチーズを移動させて、スピンドルに対してチーズを装着するとともに、
スピンドルの上に
、スピンドルと同一の直径を有する延長材を装着し、この延長材に対して同様にチーズを装着し、
スピンドル及び延長材に装着したチーズの全体を、スピンドルと同じ高さとなるまで下方へ向かって押圧して圧縮し、
圧縮後、延長材を取り外し、最上段のチーズの上にエンドキャップを取り付けてチーズを圧縮状態で固定し、
各スピンドルにチーズを装着したキャリアを染色機内にセットして染色工程を実施することを特徴と
し、
円錐状部分の下縁部がスピンドルと同一の直径を有する円錐形状又は円錐台形状のガイドを、スピンドル又は延長材の上端部に装着した状態で、スピンドルに対するチーズの装着作業、又は、延長材に対するチーズの装着作業を行うことを特徴とするボビンレスチーズ染色方法。
【請求項2】
綿糸又は綿混糸を対象とするチーズ染色方法であって、
キャリアの
ステージ上に立設させたスピンドルと同一の直径を有する芯材の外側に原糸を捲いて複数のチーズを形成し、
キャリアのステージ上に立設させたスピンドルの上に
、スピンドルと同一の直径を有する延長材を装着し、延長材の上方からチーズのみを下方へスライドさせ、芯材の外周側の位置からスピンドルの外周側及び延長材の外周側の位置へチーズを移動させて、スピンドル及び延長材に対してチーズを装着し、
スピンドル及び延長材に装着したチーズの全体を、スピンドルと同じ高さとなるまで下方へ向かって押圧して圧縮し、
圧縮後、延長材を取り外し、最上段のチーズの上にエンドキャップを取り付けてチーズを圧縮状態で固定し、
各スピンドルにチーズを装着したキャリアを染色機内にセットして染色工程を実施することを特徴と
し、
円錐状部分の下縁部がスピンドルと同一の直径を有する円錐形状又は円錐台形状のガイドを、スピンドル又は延長材の上端部に装着した状態で、スピンドルに対するチーズの装着作業、又は、延長材に対するチーズの装着作業を行うことを特徴とするボビンレスチーズ染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原糸を先捲きして形成したチーズを染色機内にセットして染色を行うチーズ染色方法に関し、特に、先捲きボビンを使用せずにチーズ染色を実施することができ、また、綿糸や綿混糸等の短繊維の糸を対象とする場合であっても、問題なく適用することができるボビンレスチーズ染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糸の染色方法として、従来より「チーズ染色法」と呼ばれる方法が広く実施されている。従来のチーズ染色法は、
図5に示すように、ボビン21(先捲きボビン)の周りに原糸を捲きつけてチーズ23を形成し、キャリアのステージ26上に多数立設させた各スピンドル25を中心軸として(チーズ23の内側のボビン21が、スピンドル25の外周側に位置するように)、多数のチーズ23をキャリアのステージ26上に積み上げ、これらを染色機内にセットし、染色機内で染液を循環させて糸を均一に染める方法である。
【0003】
尚、チーズ染色法には、チーズにおける糸密度の不均一さに起因する染色ムラを解消するとともに、染色工程の効率化を図ること等を目的として、チーズをボビンの軸線方向へ圧縮して染色を行う方法(圧縮チーズ染色法)も知られている(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2には、チーズ染色法において、スピンドル25の外周側に配置される各ボビン21の間に、ポリテトラフルオロエチレン製のパッキン27(
図5参照)を配置することが開示されている。このようなパッキン27を使用すると、染色工程においてスピンドル25から供給される染液が、上下に隣接するボビン21同士の間から漏出することを防止することができ、綿糸等の短繊維の糸を対象として低浴比で(染色機内に導入する染液の浴比を1:6.0~9.6程度に設定して)染色を行った場合でも、染色ムラ等の問題を好適に回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-066544号公報
【文献】特開2017-071878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のチーズ染色法においては、
図6に示すような円筒形のボビン21が使用されている。このボビン21は、染色機内において高温に加熱された染液と接触することになるため、相応の耐熱性と耐久性を有するプラスチックによって形成されており、また、染液を通過させるための多数の貫通穴21aを形成するための多数の抜型を付帯した複雑な金型の中に原料樹脂を射出することによって製造されているため、他の同種のプラスチック成形品と比較して単価が高く設定されており、初期導入時等において一度に大量に購入すると、相応の費用がかかることになる。
【0007】
尚、この種のボビンは、基本的には繰り返し何度も使用することができる(より具体的には、染色工程の終了後、洗浄工程、及び、検査(損傷の有無及び染液の付着残留の有無等の検査)を実施した後、次回以降の染色工程において再び使用することができる)が、当然のことながら、劣化して適正に使用することができなくなったもの(或いは、耐用年数を経過したもの)は、最終的に産業廃棄物として処分されることになる。そして、染色工場において常時一定数のボビンを確保するためには、廃棄された分と同数のボビンを新たに購入して補充する必要がある。
【0008】
従って、この種のボビンを継続的に使用してチーズ染色を実施する染色工場においては、毎年、相当数のボビンを産業廃棄物として処分するための費用と、新品を補充購入するための費用を負担する必要がある。また、大量のプラスチック製品を廃棄処理する場合、有害ガスの発生、或いは、二酸化炭素排出量の増加等により、地球環境に悪影響を与えかねないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術における課題を解決しようとするものであって、先捲きボビンに関するすべての費用を削減することができ、加工コストを大幅に縮減することができ、かつ、従来方法と比較して染色性が格段に向上し、品質不良の発生率を大幅に低減することができるボビンレスチーズ染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るボビンレスチーズ染色方法は、キャリアのスピンドルの直径と同一の、又は、スピンドルの直径±2mm以内の直径を有する芯材の外側に原糸を捲いて複数のチーズを形成し、スピンドルの上方からチーズのみを下方へスライドさせ、芯材の外周側の位置からスピンドルの外周側の位置へチーズを移動させて、スピンドルに対してチーズを装着するとともに、スピンドルの上に延長材を装着し、この延長材に対して同様にチーズを装着し、スピンドル及び延長材に装着したチーズの全体を、スピンドルと同じ高さとなるまで下方へ向かって押圧して圧縮し、圧縮後、延長材を取り外し、最上段のチーズの上にエンドキャップを取り付けてチーズを圧縮状態で固定し、各スピンドルにチーズを装着したキャリアを染色機内にセットして染色工程を実施することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係るボビンレスチーズ染色方法は、キャリアのスピンドルの直径と同一の、又は、スピンドルの直径±2mm以内の直径を有する芯材の外側に原糸を捲いて複数のチーズを形成し、スピンドルの上に延長材を装着し、延長材の上方からチーズのみを下方へスライドさせ、芯材の外周側の位置からスピンドルの外周側及び延長材の外周側の位置へチーズを移動させて、スピンドル及び延長材に対してチーズを装着し、スピンドル及び延長材に装着したチーズの全体を、スピンドルと同じ高さとなるまで下方へ向かって押圧して圧縮し、圧縮後、延長材を取り外し、最上段のチーズの上にエンドキャップを取り付けてチーズを圧縮状態で固定し、各スピンドルにチーズを装着したキャリアを染色機内にセットして染色工程を実施することを特徴としている。
【0012】
尚、円錐形状又は円錐台形状のガイドを、スピンドル又は延長材の上端部に装着した状態で、スピンドルに対するチーズの装着作業、又は、延長材に対するチーズの装着作業を行うことが好ましい。また、スピンドルの上端部、又は、延長材の上端部の内側に嵌合できる凸部が下端部に形成され、円錐状部分の下縁部が、スピンドルの直径と同一の、又は、スピンドルの直径±2mm以内の直径を有するガイドを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るボビンレスチーズ染色方法は、綿糸や綿混糸等の短繊維の糸を対象とする場合であっても、従来のチーズ染色法において不可欠であった先捲きボビンを使用することなくチーズ染色を実施することができ、先捲きボビンに関するすべての費用(導入費用、洗浄費用、廃棄費用、補充費用等)を削減することができ、その結果、染色加工のコストを大幅に縮減することができ、更に、ボビンの廃棄処理に伴って発生し得る有害ガスの発生、及び、二酸化炭素排出量の増加等の問題を好適に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係る方法においては、スピンドル等への装着後においてチーズを圧縮することにより、キャリア上において上下に隣接するチーズ同士の密着性が高くなり、染色性が格段に向上し、染色ムラ等の品質不良の発生率を大幅に低減することができる。
【0015】
更に、従来のチーズ染色法においては、先捲きボビンを使用することにより、窓開き(ボビン開口部から染液がリークし、染色ムラの原因となる)、或いは、噛み込み(ボビン下端部と上端部に原糸が挟まれ、染色できない糸が発生する)といった品質不良が生じていたが、本発明に係る方法においては、先捲きボビンを使用しないため、そのような品質不良の問題は、全く生じない。
【0016】
また、従来のチーズ染色法においては、染色工程においてスピンドルから供給される染液が、上下に隣接するボビン同士の間から漏出することによって、染色ムラ等の問題が生じており、これを回避するために、
図5に示すように、上下に隣接するボビン21の間に、ポリテトラフルオロエチレン製のパッキン27を配置することも行われていたが、本発明に係る方法においては、先捲きボビンを使用しないため、染液の漏出が発生することはなく、従って、そのようなパッキンは不要である。
【0017】
更に、本発明に係る方法による場合、染色工程後に実施される乾燥工程において、チーズの中心部を通過する熱風が、ボビンによって邪魔されることなく、糸に直接作用するため、乾燥効率の向上が期待でき、乾燥工程の所要時間を大幅に短縮することができ、また、本発明に係る方法による場合、基本的に後捲きが不要となるため、その分だけ染色加工コストを縮減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係るボビンレスチーズ染色方法の説明図であって、芯材1の側面、及び、チーズ3等の断面を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るボビンレスチーズ染色方法の説明図であって、チーズ3をスピンドル5に装着する手順を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るボビンレスチーズ染色方法の説明図であって、チーズ3をスピンドル5に装着する手順を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るボビンレスチーズ染色方法の説明図であって、チーズ3をスピンドル5に装着する手順を示す図である。
【
図5】
図5は、従来のチーズ染色方法の説明図であって、スピンドル25の側面、及び、チーズ23等の断面を示す図である。
【
図6】
図6は、従来のチーズ染色方法において使用されるボビン21の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に沿って、本発明の実施形態について説明する。本発明に係る「ボビンレスチーズ染色方法」は、次のような要領で実施される。まず、
図1(1)に示すような円筒状の芯材1を用意する。本実施形態においては、芯材1として、染色機内にセットされるキャリアのステージ上のスピンドルの直径と同一(±2mm以内)の直径を有する紙製の管状材が使用されている。この芯材1をワインダー(図示せず)にセットし、芯材1の外側に原糸を捲いていき、
図1(2)に示すようなチーズ3を形成する。
【0020】
次に、チーズ3をスピンドルに装着する。具体的には、
図2(1)に示すように、円筒状のスピンドル5の先端(上端部5a)に、円錐形状(又は、円錐台形状)のガイド2を装着する。このガイド2の下端部には、スピンドル5の上端部5aの内側に嵌合できる凸部2aが形成されており、この凸部2aをスピンドル5の上端部5aの内側に嵌合させることにより、ガイド2をスピンドル5に対して安定的に装着できるように、かつ、容易に着脱できるようになっている。尚、ガイド2の円錐状部分の下縁部2b(ガイド2をスピンドル5に装着した場合に、上端部5aと接する部分)は、スピンドル5の直径と同一(±2mm以内)の直径を有している。
【0021】
スピンドル5にガイド2を装着したら、
図2(2)に示すように、チーズ3の内側の芯材1の下端1aをガイド2の上端に被せて(ガイド2の上端を芯材1内に進入させて)、この状態からチーズ3のみを、スピンドル5の上方から下方(スピンドル5側)へスライドさせて、
図2(3)に示すように、チーズ3を、芯材1の外周側の位置から、スピンドル5の外周側の位置へ移動させる。そして、チーズ3の全体がスピンドル5の外周側の位置まで移動したら、ガイド2の上に残った芯材1を除去して回収する。
【0022】
尚、上述した通り本実施形態においては、芯材1として、スピンドル5(及び、ガイド2の円錐状部分の下縁部2b)と同一の直径を有するものが使用されているため、芯材1の外周側の位置からスピンドル5の外周側の位置へ、チーズ3を問題なく移動させることができる。
【0023】
この作業を繰り返し、一本のスピンドル5に対して複数個のチーズ3を積み上げるように装着する。そして、
図3(1)に示すように、スピンドル5と同じ高さ(或いは、それよりも僅かに低い高さ)までチーズ3が積み上げられ、それ以上チーズ3を装着できない状態となったら、
図3(2)に示すように、スピンドル5の上に(スピンドル5とガイド2の間に)、延長材4(スピンドル5と同一の直径(±2mm以内)を有する)を装着し、この延長材4に対して同様にチーズ3の装着作業を繰り返し、スピンドル5に装着したチーズ3の上に、更にチーズ3を積み上げる。
【0024】
図3(3)に示すように、スピンドル5及び延長材4の全体と同じ高さ(或いは、それよりも僅かに低い高さ)までチーズ3が積み上げられ、それ以上チーズ3を装着できない状態となったら、セット機(図示せず)を使用して、
図4(1)示すように、スピンドル5と同じ高さとなるまで(
図4(1)において破線で示す位置から実線で示す位置まで、或いは、それよりも僅かに低い高さとなるまで)チーズ3の全体を下方へ向かって押圧し、圧縮する。
【0025】
圧縮後、延長材4を取り外し、
図4(2)に示すように、最上段のチーズ3の上にエンドプレート8を被せ、最後にエンドキャップ9をスピンドル5の上端に螺着させ、しっかりと締め付けて、チーズ3を圧縮状態で固定する。これをキャリアのステージ6上のすべてのスピンドル5に対して行った後、キャリア(及び、スピンドル5に装着したチーズ3)を高圧染色機内にセットし、染色機内で染液を循環させて染色工程を実施する。
【0026】
染色工程が終了したら、各チーズ3をスピンドル5から取り外し、遠心脱水機による脱水工程、高圧チーズ乾燥機による乾燥工程、及び、編地検査を実施する。
【0027】
従来のチーズ染色法においては、染色工程の終了後にスピンドルから取り外したチーズは、ボビンの外側に糸が捲かれた状態となっているが、本実施形態においては、スピンドル5から取り外した時点でチーズの中心部は空洞となっている。このため、必要に応じて(出荷或いは保管の際に)、チーズの中心部に紙管を挿入する。
【0028】
以上に説明したように、本発明に係る方法によれば、従来のチーズ染色法において不可欠であった先捲きボビンを使用することなくチーズ染色を実施することができ、先捲きボビンの導入費用、洗浄費用、廃棄費用、補充費用等をすべて削減することができる。また、乾燥工程の所要時間を大幅に短縮することができるほか、染色工程後の後捲きが基本的に不要であるため、従来のチーズ染色法を実施する場合と比較して、染色加工コストを大幅に縮減することができる。
【0029】
また、従来のチーズ染色法では、
図5に示すように、スピンドル25に対するチーズ23の装着後において、チーズ23とスピンドル25との間にボビン21が介在しているため、装着後のチーズ23を圧縮することはできなかったが、本発明に係る方法では、チーズ3の装着後において、チーズ3とスピンドル5との間にボビンは介在していないため、
図4に示すように、スピンドル5及び延長材4に装着されたチーズ3を問題なく圧縮することができる。
【0030】
更に、本発明に係る方法によれば、スピンドルに装着したチーズ同士の密着性が高くなり、染色性が格段に向上し、綿糸や綿混糸等の短繊維の糸を対象とする場合であっても、品質不良(上下のボビン同士の間からの染液の漏出に起因する染色ムラ、窓開き、噛み込み、角ムラ、ボビン割れに起因する欠陥等)の発生率を大幅に低減することができる。
【0031】
より具体的には、従来のチーズ染色における品質不良の発生率は通常3~5%であったが、本発明に係る方法によれば、発生率を0.3%程度に抑えることができるということが、本発明の発明者が行った実験により確認されている。また、本発明に係る方法を実施する場合の消費エネルギーについて検証してみたところ、ボビンを使用する従来のチーズ染色方法と比較して、都市ガス燃料については約50%、電力については約40%縮減できることが確認されており、エネルギーコスト、及び、二酸化炭素排出量の大幅な削減を実現できる。
【0032】
更に、ボビンを使用する従来のチーズ染色方法において、綿糸等の短繊維の糸を対象として、低浴比で(染色機内に導入する染液の浴比を1:6.0~9.6程度に設定して)染色を行うと、
図5に示すような特殊なパッキン27を使用しない限り、上下に隣接するボビン21同士の間から染液が漏出して、染色ムラ等の問題が生じてしまうという問題があったが、本発明に係る方法による場合、綿糸等の短繊維の糸を対象とする場合でも、染色機内に導入する染液の浴比を1:6.0~9.6程度の低浴比に設定して、問題なく染色を行うことができる(染色ムラ等の問題を好適に回避して、一般的な浴比で染色を行った場合と同様の品質で染色を行うことができる)。その結果、染液、染色助剤、及び、用水の使用量とそのコストを大幅に(40%以上)削減できるほか、排水処理費についても低減することができる。
【0033】
また、チーズ3を圧縮して(約70%)染色を行うことにより、生産性を1.4倍程度向上させることができ、従って、単位生産量あたりの所要時間を短縮することができ、操業時間の短縮も可能となる。
【0034】
尚、上記実施形態においては、最初に、延長材4を使用せずにスピンドル5に対するチーズ3の装着作業を行い、スピンドル5と同じ高さまでチーズ3を積み上げた後、スピンドル5の上に延長材4を取り付けて、スピンドル5に装着したチーズ3の上に更にチーズ3を積み上げているが、最初からスピンドル5の上に延長材4を取り付けた状態で、それらのスピンドル5及び延長材4に対してチーズ3の装着作業を行ってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1:芯材、
1a:下端、
2:ガイド、
2a:凸部、
2b:円錐状部分の下縁部、
3,23:チーズ、
4:延長材、
5,25:スピンドル、
5a:上端部、
6,26:ステージ、
8,28:エンドプレート、
9,29:エンドキャップ、
21:ボビン、
21a:貫通穴、
27:パッキン