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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】抽出装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20230725BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20230725BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230725BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20230725BHJP
【FI】
H04N23/60 500
G06T7/20 300Z
H04N7/18 K
H04N23/60 300
H04N23/73
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022501745
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003386
(87)【国際公開番号】W WO2021166604
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020024112
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】石寺 永記
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-115236(JP,A)
【文献】特開2017-034455(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014430(WO,A1)
【文献】特開2008-230282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
G06T 7/20
H04N 7/18
H04N 23/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
を有し、
混雑状況を示す混雑状況情報を取得する混雑状況情報取得部を有し、
前記抽出部は、取得した前記混雑状況情報に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定する
抽出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、被写体ぶれが生じるようにシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データを取得する
抽出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、外部装置が前記画像データを送信する枚数を示すフレームレートに応じたシャッタースピードで撮影した前記画像データを取得する
抽出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記抽出部は、被写体ぶれにより生じる、明度が所定値以上となる輝点の筋を移動軌跡として抽出する
抽出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の抽出装置であって、
背景の明度または色を示す背景情報を取得する背景情報取得部を有し、
前記抽出部は、取得した前記背景情報に基づいて移動軌跡の抽出対象を決定し、前記画像データのうち、決定した抽出対象となる移動軌跡を抽出する
抽出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の抽出装置であって、
抽出した移動軌跡のうち、同一の前記軌跡抽出対象により生じる移動軌跡を統合する統合部を有する
抽出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、複数のシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データを取得し、
前記抽出部は、取得した前記画像データのうちより遅いシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データ中の前記軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づいて移動軌跡を抽出する
抽出装置。
【請求項8】
情報処理装置が、
外部装置から画像データを取得し、
取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出し、
混雑状況を示す混雑状況情報を取得し、
移動軌跡を抽出する際、取得した前記混雑状況情報に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定する
抽出方法。
【請求項9】
情報処理装置に、
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
混雑状況を示す混雑状況情報を取得する混雑状況情報取得部と、
を実現させ、
前記抽出部は、取得した前記混雑状況情報に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置、抽出方法、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データに基づいて、人物の軌跡を抽出することが知られている。
【0003】
画像データに基づく軌跡抽出について記載された文献としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1によると、短期変化抽出部は、2時刻の入力画像の差分から、画像上で短期に変化した部分を抽出して、抽出結果に基づいて代表点などを抽出する。また、軌跡抽出部は、短期変化抽出部の出力である代表点の時系列から移動軌跡を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-14302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IPカメラなどでは、1秒間に出力する画像枚数を示すフレームレートが予め定められている場合がある。また、被写体ぶれの抑制などのため、画像データは短い露光時間で取得されることが一般的である。
【0006】
上記のようにして画像データを取得すると、フレームレートで限られる時間内の一瞬だけ露光するため、各画像データの取得タイミングの間に、画像データに反映されない露光していない時間が生じることになる。その結果、被写体の移動状況などによっては、例えば、取得した画像データ間において被写体の位置がとびとびになる、同様の特徴を有する他の被写体と重なるなどにより見かけ上移動していないように見える、などの事情が生じることがあった。その結果、特許文献1に記載のような画像データに基づく移動軌跡の抽出処理において、移動軌跡の抽出が困難になることがあった。
【0007】
このように、画像データから移動軌跡の抽出を容易に行うことが難しい場合がある、という課題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、画像データから移動軌跡の抽出を容易に行うことが可能な抽出装置、抽出方法、記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の一形態である抽出装置は、
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
を有する
という構成をとる。
【0010】
また、本発明の他の形態である抽出方法は、
情報処理装置が、
外部装置から画像データを取得し、
取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する
という構成をとる。
【0011】
また、本発明の他の形態である記録媒体は、
情報処理装置に、
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
を実現するためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のように構成されることにより、画像データから移動軌跡の抽出を容易に行うことが可能な抽出装置、抽出方法、記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態におけるシステムの構成の一例を示す図である。
図2図1で示すカメラの構成の一例を示すブロック図である。
図3】設定部による処理の一例を説明するための図である。
図4図1で示す抽出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5】被写体ぶれの一例を模式的に示し、移動軌跡抽出部が抽出する移動軌跡の一例を示している。
図6】抽出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】抽出装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
図8】抽出装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
図9】抽出装置の他の構成の一例を示すブロック図である。
図10】本発明の第2の実施形態における抽出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図11】本発明の第2の実施形態における抽出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を図1から図9までを参照して説明する。図1は、システム100の構成の一例を示す図である。図2は、IPカメラ200の構成の一例を示すブロック図である。図3は、設定部210による処理の一例を説明するための図である。図4は、抽出装置300の構成の一例を示すブロック図である。図5は、被写体ぶれの一例を模式的に示しており、移動軌跡抽出部352が抽出する移動軌跡の一例を示している。図6は、抽出装置の動作の一例を示すフローチャートである。図7から図9は、抽出装置300の他の構成の一例を示すブロック図である。
【0015】
第1の実施形態では、IPカメラ200が撮影した画像データに基づいて、軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出装置300を有するシステム100について説明する。後述するように、IPカメラ200は、撮影した画像データにおいて被写体ぶれ(モーションブラー)を生じさせるように、シャッタースピードが設定されている。例えば、IPカメラ200は、フレームレートに応じたシャッタースピードが設定されている。また、抽出装置300は、IPカメラ200が撮影した、被写体ぶれが生じている画像データに基づいて、移動軌跡を抽出する。例えば、上記のようにして取得した画像データにおいては、軌跡抽出対象の輝点が一本の筋状に撮影される。そこで、抽出装置300は、画像データ中において被写体ぶれにより生じる筋を移動軌跡として抽出する。
【0016】
なお、軌跡抽出対象は、例えば、人物や車両などである。本実施形態においては、一例として、軌跡抽出対象が人である場合について説明する。軌跡抽出対象は、上記例示した以外であっても構わない。
【0017】
図1は、システム100全体の構成例を示している。図1を参照すると、システム100は、例えば、IPカメラ200と抽出装置300とを有している。図1で示すように、IPカメラ200と抽出装置300とは、例えば、ネットワークなどを介して互いに通信可能なよう接続されている。
【0018】
IPカメラ200は、画像データを撮影する、ネットワークに接続された撮像装置である。例えば、IPカメラ200は、所定箇所に予め設置されており、軌跡抽出対象である人を含む画像データを撮影する。なお、IPカメラ200は、ネットワークカメラなどとも呼ばれうる。
【0019】
図2は、IPカメラ200の構成の一例を示している。図2を参照すると、IPカメラ200は、例えば、設定部210と、撮影部220と、送信部230と、を有している。
【0020】
なお、IPカメラ200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と記憶装置とを有している。例えば、IPカメラ200は、記憶装置に格納されたプログラムを演算装置が実行することで、上述した各処理部を実現する。
【0021】
設定部210は、撮影部220が画像データを撮影する際のシャッタースピードを設定する。つまり、設定部210は、画像データを撮影する際の露光時間を設定する。
【0022】
本実施形態において、設定部210は、IPカメラ200が1秒間に出力する画像枚数を示すフレームレートに基づいて、シャッタースピードを設定する。例えば、設定部210は、フレームレートで規定される限りにおいて最大限シャッタースピードが遅くなるように、シャッタースピードを設定する。
【0023】
図3は、IPカメラ200のフレームレートが5fps(frame per second)と設定されている場合の設定部210によるシャッタースピードの設定の一例を示している。図3で示すように、フレームレートが5fpsと設定されている場合、撮影部220は、1秒間に5枚の画像データを撮影する。つまり、撮影部220は、1/5=0.2秒で1枚の画像データを撮影する。設定部210は、上記フレームレートで規定される限りにおいて最大限シャッタースピードが遅くなるように、撮影部220の撮影間隔に応じたシャッタースピードを設定する。つまり、設定部210は、フレームレートに応じて、画像データの撮影間に露光していない時間が出来る限り生じないように、シャッタースピードを設定する。図3で示す場合、上記のように、IPカメラ200のフレームレートが5fpsと設定され、撮影部220が0.2秒で1枚の画像データを撮影する。そのため、設定部210は、フレームレートで規定される限りにおいて最大限シャッタースピードが遅くなるように、シャッタースピードを0.2秒と設定する。
【0024】
例えば、上述したように、設定部210は、フレームレートに応じたシャッタースピードの設定を行う。なお、設定部210は、上記例示した以外の処理を行うよう構成しても構わない。例えば、設定部210は、IPカメラ200のフレームレートが変更された場合に、変更されたフレームレートに応じてシャッタースピードの再設定を行うよう構成しても構わない。また、設定部210は、必ずしもフレームレートに基づいてシャッタースピードを設定しなくても構わない。例えば、設定部210は、撮影した画像データにおいて軌跡抽出対象に被写体ぶれが生じるように、予め定められたシャッタースピードを設定しても構わない。
【0025】
撮影部220は、設定部210により設定されたシャッタースピードで画像データを撮影する。また、撮影部220は、画像データを撮影する際、画像データを撮影する際の日時を示す情報を取得して、撮影した画像データに対応づけることが出来る。
【0026】
送信部230は、撮影部220が撮像した画像データを含む情報を抽出装置300に対して送信する。
【0027】
例えば、以上のように、IPカメラ200は、設定部210が設定したシャッタースピードで画像データを撮像する。
【0028】
抽出装置300は、画像データ中において軌跡抽出対象が移動した移動軌跡を抽出する情報処理装置である。図4は、抽出装置300の構成の一例を示している。図4を参照すると、抽出装置300は、主な構成要素として、例えば、操作入力部310と、画面表示部320と、通信I/F部330と、記憶部340と、演算処理部350と、を有している。
【0029】
操作入力部310は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなる。操作入力部310は、抽出装置300を操作するオペレータの操作を検出して、演算処理部350に出力する。
【0030】
画面表示部320は、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)などの画面表示装置からなる。画面表示部320は、演算処理部350からの指示に応じて、画像情報341に含まれる画像データや、移動軌跡情報342などを画面表示することが出来る。
【0031】
通信I/F部330は、データ通信回路からなる。通信I/F部330は、通信回線を介して接続された各種装置との間でデータ通信を行う。例えば、抽出装置300は、通信I/F部330を介して、IPカメラ200から画像データを取得するなどIPカメラ200との間で通信を行う。
【0032】
記憶部340は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置である。記憶部340は、演算処理部350における各種処理に必要な処理情報やプログラム343を記憶する。プログラム343は、演算処理部350に読み込まれて実行されることにより各種処理部を実現する。プログラム343は、通信I/F部330などのデータ入出力機能を介して外部装置や記録媒体から予め読み込まれ、記憶部340に保存されている。記憶部340で記憶される主な情報としては、例えば、画像情報341と、移動軌跡情報342と、がある。
【0033】
画像情報341は、IPカメラ200が撮影した画像データを含んでいる。例えば、画像情報341では、画像データをIPカメラ200が撮影した日時を示す情報と、画像データと、が対応づけられている。画像情報341には、複数フレームの画像データを含むことが出来る。
【0034】
移動軌跡情報342は、後述する移動軌跡抽出部352が抽出した移動軌跡を示す情報を含んでいる。移動軌跡抽出部352による移動軌跡の抽出処理については、後述する。
【0035】
演算処理部350は、MPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有する。演算処理部350は、記憶部340からプログラム343を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム343とを協働させて各種処理部を実現する。演算処理部350で実現される主な処理部としては、例えば、画像取得部351と、移動軌跡抽出部352と、出力部353と、がある。
【0036】
画像取得部351は、通信I/F部330を介して接続されたIPカメラ200から、IPカメラ200が撮影した画像データを取得する。そして、画像取得部351は、取得した画像データを画像情報341として記憶部340に格納する。例えば、画像取得部351は、画像データと、画像データをIPカメラ200が撮影した日時を示す情報と、を対応付けて画像情報341として記憶部340に格納することが出来る。
【0037】
移動軌跡抽出部352は、画像情報341に含まれる画像データから軌跡抽出対象である人の移動軌跡を抽出する。
【0038】
図5は、被写体ぶれの一例を模式的に示しており、移動軌跡抽出部352が抽出する移動軌跡の一例を示している。図5で示すように、シャッタースピードを遅くして撮影した画像データにおいては、被写体ぶれが生じており、軌跡抽出対象である人の顔、Yシャツの襟、手などの輝点が一本の筋状に撮影される。つまり、背景、スーツ、髪などと比較して明度の高くなる顔、Yシャツの襟、手などの輝点が一本の筋状に撮影される。そこで、移動軌跡抽出部352は、画像データ中において被写体ぶれにより生じる筋を移動軌跡として抽出する。例えば、移動軌跡抽出部352は、画像データ中の明度に基づいて、移動軌跡を抽出する。具体的には、例えば、移動軌跡抽出部352は、画像データ内において、所定値以上の明度を有し、かつ、隣接する領域において明度の差が所定範囲内となる筋を、移動軌跡として抽出する。例えば、図5の場合、移動軌跡抽出部352は、軌跡抽出対象である人の顔、Yシャツの襟、手に相当する部位がぶれることで形成される筋を、移動軌跡として抽出する。
【0039】
例えば、以上のように、移動軌跡抽出部352は、シャッタースピードを遅くして撮影した画像データにおいて、所定値以上の明度を有する輝点に着目することで、移動軌跡を抽出する。そして、移動軌跡抽出部352は、抽出した移動軌跡を示す情報を、抽出元となる画像データと紐づけて、移動軌跡情報342として記憶部340に格納する。
【0040】
なお、移動軌跡抽出部352は、上述したように、1枚の画像データに基づいて移動軌跡を抽出するほかに、抽出した移動軌跡の明度や位置などの特徴に基づいて、複数の画像データにおける移動軌跡を抽出するよう構成しても構わない。上述したように、設定部210は、画像データの撮影間に露光していない時間が出来る限り生じないように、シャッタースピードを設定している。そのため、撮影時間が隣接する画像データ間において、軌跡抽出対象の位置が大幅に変わる事態を抑制することができ、その結果、移動軌跡抽出部352は、複数の画像データにおいて容易に移動軌跡を抽出することが出来る。
【0041】
出力部353は、画像情報341に含まれる画像データや移動軌跡情報342に含まれる移動軌跡などを出力する。例えば、出力部353は、画像情報341に含まれる画像データや移動軌跡情報342に含まれる移動軌跡などを画面表示部320に表示させたり、通信I/F部330を介して外部装置に対して送信したりすることが出来る。
【0042】
以上が、抽出装置300の構成の一例である。
【0043】
続いて、図6を参照して、抽出装置300の動作の一例について説明する。
【0044】
図6を参照すると、抽出装置300の画像取得部351は、通信I/F部330を介して接続されたIPカメラ200から、IPカメラ200が撮影した画像データを取得する(ステップS101)。IPカメラ200の撮影部220は、設定部210によりフレームレートに応じて設定されたシャッタースピードで画像データを撮影している。そのため、画像取得部351は、フレームレートに応じたシャッタースピードで撮影された画像データを取得する、ということが出来る。
【0045】
移動軌跡抽出部352は、画像情報341に含まれる画像データから軌跡抽出対象が移動した移動軌跡を抽出する(ステップS102)。例えば、移動軌跡抽出部352は、画像データ内において、所定値以上の明度を有し、かつ、隣接する領域において明度の差が所定範囲内となる区間を、移動軌跡として抽出する。そして、移動軌跡抽出部352は、抽出した移動軌跡を示す情報を、抽出元となる画像データと紐づけて、移動軌跡情報342として記憶部340に格納する。
【0046】
以上が、抽出装置300の動作の一例である。
【0047】
このように、抽出装置300は、移動軌跡抽出部352を有している。また、抽出装置300は、IPカメラ200から画像データを取得するよう構成されている。このような構成によると、移動軌跡抽出部352は、IPカメラ200においてシャッタースピードが出来る限り遅くなるよう設定された状態で撮影した画像データに基づいて、移動軌跡を取得することが出来る。その結果、移動軌跡抽出部352は、画像データにおいて生じる被写体ぶれを利用して移動軌跡を抽出することが可能となる。これにより、移動軌跡抽出部352は、1枚の画像データに基づいて容易に移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0048】
また、抽出装置300は、設定部210によりフレームレートに応じて設定されたシャッタースピードで撮影された画像データを取得するよう構成されている。このような構成によると、移動軌跡抽出部352は、撮影間隔に出来る限り空きが生じないように撮影された画像データに基づいて、移動軌跡を抽出することが出来る。その結果、撮影時間が隣接する画像データにおいて軌跡抽出対象の位置が大幅に変わる事態を抑制することが出来るため、移動軌跡抽出部352は、複数の画像データに基づいて容易に移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態で説明した方法によると、被写体ぶれが生じた画像を取得することが可能となる。つまり、本実施形態で説明した方法によると、人の目、鼻、口などの顔認証を行う際に特徴点となる箇所が被写体ぶれによりぶれている画像データを取得することが出来る。その結果、個人情報に配慮した画像データを取得することが可能となり、個人情報に配慮した画像データに基づいて軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0050】
なお、抽出装置300は、図4で例示した以外の構成を有しても構わない。
【0051】
例えば、図7は、抽出装置300の他の構成例を示している。図7を参照すると、抽出装置300は、図4を参照して説明した構成の他に、背景情報取得部354を有することが出来る。
【0052】
背景情報取得部354は、背景画像における色や明度(例えば、平均値)などの背景情報を取得する。なお、本実施形態においては、背景画像の抽出方法については、特に限定しない。抽出装置300は、例えば複数の画像データに基づいて背景画像を抽出するなど、既知の方法を用いて背景画像を抽出するよう構成することが出来る。
【0053】
また、抽出装置300が背景情報取得部354を有する場合、移動軌跡抽出部352は、背景画像と軌跡抽出対象との色差や明度差に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定するよう構成することが出来る。例えば、本実施形態においては、所定値以上の明度を有する輝点に着目して移動軌跡を抽出する場合について説明した。しかしながら、例えば、背景画像や移動軌跡周辺における明度が高い場合などにおいては、輝点に着目するよりも明度の低い箇所に注目する方が背景との明度差が大きくなり、抽出する移動軌跡として好ましくなる。そこで、移動軌跡抽出部352は、背景情報取得部354が取得した背景情報に基づいて、明度の高い筋を移動軌跡として抽出するか、または、明度の低い筋を移動軌跡として抽出するか、を決定することが出来る。このように、抽出装置300は、背景情報取得部354を有するとともに、背景情報取得部354が取得した背景情報に基づいて、移動軌跡の抽出対象を決定するよう構成することが出来る。
【0054】
また、図8は、抽出装置300の他の構成例を示している。図8を参照すると、抽出装置300は、図4を参照して説明した構成の他に、混雑状況取得部355を有することが出来る。
【0055】
混雑状況取得部355は、画像データ中に含まれる軌跡抽出対象である人以外の人の数などに応じた混雑状況を示す混雑状況情報を取得する。例えば、混雑状況取得部355は、画像データから検出した人の数や抽出した移動軌跡の数などに基づいて、画像データが撮影する領域の混み具合を示す混雑状況情報を取得する。混雑状況取得部355は、外部装置などからIPカメラ200設置箇所のイベント情報などを取得することで、混雑状況情報を取得しても構わない。
【0056】
また、抽出装置300が混雑状況取得部355を有する場合、移動軌跡抽出部352は、混雑状況情報に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定するよう構成することが出来る。一般論として、移動軌跡抽出部352が抽出する移動軌跡としては、長くて細い筋であるほど望ましい。つまり、(周囲長/面積の平方根)の値が大きいほど、抽出対象となる移動軌跡として好ましい。特に、混雑状況などによっては、太い筋の場合(面積の大きい移動軌跡である場合)、軌跡抽出対象以外の移動軌跡と重なってしまい、的確な抽出を行うことが出来ないおそれがある。そこで、移動軌跡抽出部352は、混雑状況情報などに基づいて、移動軌跡として抽出する対象となる移動軌跡の面積を制限することが出来る。例えば、移動軌跡抽出部352は、混雑状況情報が示す混雑の状況がよりひどくなればなるほど、抽出対象となる筋の面積(太さ)を小さく(細く)することが出来る。このように、抽出装置300は、混雑状況取得部355を有するとともに、混雑状況取得部355が取得した混雑状況情報に基づいて、移動軌跡の抽出対象を決定するよう構成しても構わない。
【0057】
また、図9は、抽出装置300の他の構成例を示している。図9を参照すると、抽出装置300は、図4を参照して説明した構成の他に、軌跡統合部356を有することが出来る。
【0058】
例えば、本実施形態の場合、移動軌跡抽出部352は、軌跡抽出対象である人の顔、Yシャツの襟、手などの筋を移動軌跡として抽出するとした。このように、移動軌跡抽出部352は、一人の軌跡抽出対象から複数の移動軌跡を抽出することがある。そこで、軌跡統合部356は、移動軌跡抽出部352が抽出した移動軌跡のうち同一の人物の移動軌跡と判断される移動軌跡を統合する。例えば、同一の人物の移動軌跡がある程度平行になるものと想定される。そこで、軌跡統合部356は、移動軌跡が平行な関係にあると評価できるか否かに基づいて、移動軌跡の統合を行う。軌跡統合部356は、移動軌跡の統合を行う際、移動軌跡の位置関係を示す情報などを加味しても構わない。
【0059】
抽出装置300は、上記例示したうちのいずか一つ、または、組み合わせた構成を有することが出来る。抽出装置300は、例えば、画像データ中の人物の中から軌跡抽出対象を特定する特定部を有するなど、上記例示した以外の構成を有しても構わない。
【0060】
また、本実施形態においては、1台の情報処理装置により抽出装置300としての機能を実現する場合について説明した。しかしながら、抽出装置300としての機能は、例えば、ネットワークを介して接続された複数台の情報処理装置により実現されても構わない。
【0061】
また、本実施形態においては、軌跡抽出対象が人である場合について説明した。しかしながら、上述したように、軌跡抽出対象は車両などの人以外であっても構わない。なお、軌跡抽出対象が車両である場合、移動軌跡抽出部352は、ヘッドライトやテールライトなどの筋を移動軌跡として抽出することが出来る。
【0062】
また、本実施形態においては、設定部210がフレームレートに基づいてシャッタースピードを設定する場合について説明した。設定部210によるフレームレートに基づくシャッタースピードの設定は、常に行われても構わないし、必ずしも常に行われなくても構わない。例えば、フレームレートが5fpsである場合、1秒間に撮影する5枚の画像データのうちの4枚の画像データをフレームレートに基づくシャッタースピードで撮影し、残りの1枚を被写体ぶれが生じないようなシャッタースピードで撮影しても構わない。このように、設定部210は、被写体ぶれが生じないようなシャッタースピードと、被写体ブレが生じるようなシャッタースピードと、を含む少なくとも2種類のシャッタースピードを設定するよう構成しても構わない。このような構成により、被写体ブレが生じるようなシャッタースピードで画像データを撮影した期間において容易な移動軌跡の抽出を実現しつつ、顔認証などによる認証処理を行うことを可能とすることが出来る。
【0063】
また、例えば、抽出装置300は、IPカメラ200のフレームレートやシャッタースピードを制御するよう構成しても構わない。例えば、抽出装置300は、IPカメラ200に対して、フレームレートを指示するフレームレート指示情報やシャッタースピードを指示するシャッタースピード情報を送信することが出来る。例えば、IPカメラ200や設定部210は、受信したフレームレート情報やシャッタースピード情報に基づいて、フレームレートやシャッタースピードを設定することが出来る。
【0064】
また、本実施形態においては、IPカメラ200が可視光の画像データを取得する場合について説明した。しかしながら、本発明は、可視光以外の例えば赤外線画像データなどに対しても適用可能である。
【0065】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図10図11を参照して説明する。図10図11は、抽出装置400の構成の一例を示している。
【0066】
図10は、抽出装置400のハードウェア構成の一例を示している。図10を参照すると、抽出装置400は、一例として、以下のようなハードウェア構成を有している。
・CPU(Central Processing Unit)401(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)402(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)403(記憶装置)
・RAM403にロードされるプログラム群404
・プログラム群404を格納する記憶装置405
・情報処理装置外部の記録媒体410の読み書きを行うドライブ装置406
・情報処理装置外部の通信ネットワーク411と接続する通信インタフェース407
・データの入出力を行う入出力インタフェース408
・各構成要素を接続するバス409
【0067】
また、抽出装置400は、プログラム群404をCPU401が取得して当該CPU401が実行することで、図11に示す取得部421や抽出部422としての機能を実現することが出来る。なお、プログラム群404は、例えば、予め記憶装置405やROM402に格納されており、必要に応じてCPU401がRAM403などにロードして実行する。また、プログラム群404は、通信ネットワーク411を介してCPU401に供給されてもよいし、予め記録媒体410に格納されており、ドライブ装置406が該プログラムを読み出してCPU401に供給してもよい。
【0068】
なお、図10は、抽出装置400のハードウェア構成の一例を示している。抽出装置400のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、抽出装置400は、ドライブ装置406を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。
【0069】
取得部421は、外部装置から画像データを取得する。例えば、取得部421は、IPカメラなどの外部装置から、被写体ぶれが生じるようにシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データを取得する。
【0070】
抽出部422は、取得部421が取得した画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する。
【0071】
このように、抽出装置400は、取得部421と抽出部422とを有している。このような構成により、抽出部422は、取得部421が取得した画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出することが出来る。その結果、1枚の画像データに基づいて容易に移動軌跡を抽出することが可能となる。
【0072】
なお、上述した抽出装置400は、当該抽出装置400に所定のプログラムが組み込まれることで実現できる。具体的に、本発明の他の形態であるプログラムは、抽出装置400に、外部装置から画像データを取得する取得部421と、取得部421が取得した画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部422と、を実現するためのプログラムである。
【0073】
また、上述した抽出装置400により実行される抽出方法は、抽出装置400が、外部装置から画像データを取得し、取得した画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する、という方法である。
【0074】
上述した構成を有する、プログラム、又は、抽出方法、の発明であっても、上記抽出装置と同様の作用・効果を有するために、上述した本発明の目的を達成することが出来る。
【0075】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における抽出方法などの概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0076】
(付記1)
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
を有する
抽出装置。
(付記2)
付記1に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、被写体ぶれが生じるようにシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データを取得する
抽出装置。
(付記3)
付記1または付記2に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、外部装置が前記画像データを送信する枚数を示すフレームレートに応じたシャッタースピードで撮影した前記画像データを取得する
抽出装置。
(付記4)
付記1から付記3までのいずれか1項に記載の抽出装置であって、
前記抽出部は、被写体ぶれにより生じる、明度が所定値以上となる輝点の筋を移動軌跡として抽出する
抽出装置。
(付記5)
付記1から付記4までのいずれか1項に記載の抽出装置であって、
背景の明度または色を示す背景情報を取得する背景情報取得部を有し、
前記抽出部は、取得した前記背景情報に基づいて移動軌跡の抽出対象を決定し、前記画像データのうち、決定した抽出対象となる移動軌跡を抽出する
抽出装置。
(付記6)
付記1から付記5までのいずれか1項に記載の抽出装置であって、
混雑状況を示す混雑状況情報を取得する混雑状況情報取得部を有し、
前記抽出部は、取得した前記混雑状況情報に基づいて、移動軌跡として抽出する対象を決定する
抽出装置。
(付記7)
付記1から付記6までのいずれか1項に記載の抽出装置であって、
抽出した移動軌跡のうち、同一の前記軌跡抽出対象により生じる移動軌跡を統合する統合部を有する
抽出装置。
(付記8)
付記1から付記7までのいずれか1項に記載の抽出装置であって、
前記取得部は、複数のシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データを取得し、
前記抽出部は、取得した前記画像データのうちより遅いシャッタースピードを設定して撮影した前記画像データ中の前記軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づいて移動軌跡を抽出する
抽出装置。
(付記9)
情報処理装置が、
外部装置から画像データを取得し、
取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する
抽出方法。
(付記10)
情報処理装置に、
外部装置から画像データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記画像データから、当該画像データ中の軌跡抽出対象に生じている被写体ぶれに基づく、前記軌跡抽出対象の移動軌跡を抽出する抽出部と、
を実現するためのプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【0077】
なお、上記各実施形態及び付記において記載したプログラムは、記憶装置に記憶されていたり、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていたりする。例えば、記録媒体は、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び、半導体メモリ等の可搬性を有する媒体である。
【0078】
以上、上記各実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることが出来る。
【0079】
なお、本発明は、日本国にて2020年2月17日に特許出願された特願2020-024112の特許出願に基づく優先権主張の利益を享受するものであり、当該特許出願に記載された内容は、全て本明細書に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0080】
100 システム
200 IPカメラ
210 設定部
220 撮影部
230 送信部
300 抽出装置
310 操作入力部
320 画面表示部
330 通信I/F部
340 記憶部
341 画像情報
342 移動軌跡情報
343 プログラム
350 演算処理部
351 画像取得部
352 移動軌跡抽出部
353 出力部
354 背景情報取得部
355 混雑状況取得部
356 軌跡統合部
400 抽出装置
401 CPU
402 ROM
403 RAM
404 プログラム群
405 記憶装置
406 ドライブ装置
407 通信インタフェース
408 入出力インタフェース
409 バス
410 記録媒体
411 通信ネットワーク
421 取得部
422 抽出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11