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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ボールスプライン
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
F16C29/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041175
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143743
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 容平
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-157826(JP,A)
【文献】特開平04-228917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールの転走溝が長手方向に沿って複数形成されたスプライン軸と、
多数のボールを介して前記スプライン軸に組付けられて、当該スプライン軸に沿って移動自在なスプラインナットと、を備え、
前記スプラインナットは、
前記スプライン軸が挿通する貫通穴を有すると共に、当該貫通穴の内周面には前記スプライン軸の各転走溝に対向する複数の負荷転走溝が形成されたナット本体と、
前記ナット本体の貫通穴の内周面に装着される共に前記ボールの無限循環路となる複数の循環溝が外周面に設けられた保持器と、を備え、
前記循環溝は、前記ボールが荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と保持壁を隔てて平行に設けられた戻し通路と、これら負荷通路と戻し通路の両端を接続する一対の方向転換路とを備え、
前記負荷通路の底部には当該負荷通路を転動するボールが前記スプライン軸の転走溝に接触する負荷開口部が設けられる一方、前記戻し通路の底部には前記負荷開口部の開口幅よりも小さな開口幅を有するスリット状開口が設けられ、前記負荷通路及び前記戻し通路のそれぞれは前記保持器の内周面及び外周面に開放され、前記負荷通路と前記戻し通路を隔てる保持壁は当該保持器の半径方向へ弾性変形可能であることを特徴とするボールスプライン。
【請求項2】
前記保持器に対する複数の循環溝の配置は、互いに隣接する前記循環溝の前記負荷通路同士、前記戻し通路同士が隣接するようになされ、互いに隣接する一対の戻し通路の間に設けられた区画壁の両側に前記スリット状開口が位置していることを特徴とする請求項1記載のボールスプライン。
【請求項3】
前記保持器は、前記循環溝が形成された保持器本体と、前記保持器本体の長手方向の両端に装着されて前記ナット本体と前記保持器本体の隙間を埋める一対のサブキャップとを備え、
前記サブキャップには前記方向転換路の外周側の案内壁となる案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載のボールスプライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種搬送装置や産業用ロボット等の直線案内部あるいはトルク伝達部に利用されるボールスプラインに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のボールスプラインとしては、特許文献1に開示されるものが知られている。この文献に開示されるボールスプラインは、長手方向に沿ってボールの転走溝が形成されたスプライン軸と、前記転走溝を転動する多数のボールと、前記スプライン軸が挿通する貫通穴を有すると共に前記ボールを介して前記スプライン軸に組付けられたスプラインナットと、から構成されている。
【0003】
また、前記スプラインナットは、前記スプライン軸の転走溝と対向する負荷転走溝が前記貫通穴の内周面に設けられたスプラインナットと、前記スプラインナットの貫通穴の内周面に嵌合して前記ボールの無限循環路を形成する略円筒状の保持器と、を備えている。前記保持器は前記スプライン軸と前記スプラインナットの隙間に存在しており、前記スプラインナットの内周面に面した当該保持器の外周面には、前記ボールの無限循環路となる循環溝が設けられている。この循環溝は、前記ボールが前記スプライン軸と前記スプラインナットとの間で荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、この負荷通路と平行に設けられてボールが無負荷状態で転動する戻し通路と、これら負荷通路と戻し通路の端部同士を連結する一対のU字状方向転換路とから構成されている。前記負荷通路においては循環溝の底部にボール直径よりも狭い幅の開口が設けられており、ボールは当該開口を通して前記スプライン軸の転走溝に接触する。また、前記戻し通路及び前記方向転換路はボールが荷重から解放された状態で転走する無負荷通路として構成されており、これら通路の幅はボールの直径よりも大きく形成されている。
【0004】
このため、スプライン軸に沿ってスプラインナットが移動すると、前記負荷通路内のボールは当該負荷通路内を自転しながら移動するが、かかるボールは負荷通路から方向転換路に排出されると、自ら自転して移動することはなく、負荷通路から続けて排出される後続のボールに押されながらリタヘーン通路及び戻し通路の内部を進行することになる。すなわち、前記戻し通路とその両端に位置する一対の方向転換路から構成される無負荷通路内において、ボールは循環方向に沿って隙間なく配列された状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3108723号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記負荷通路から前記無負荷通路へのボールの排出と、前記無負荷通路から前記負荷通路へのボールの進入は完全には同期していないので、無負荷通路内におけるボール列の長さは微小変化を周期的に繰り返している。このため、ボール列の長さの変化に呼応して、前記無負荷通路内に配列されたボールは前後に隣接するボールと強く擦れあうことになり、当該通路内でボール詰まり現象が発生し、ボールの円滑な循環が阻害される懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、無負荷通路内におけるボール詰まり現象の発生を抑えて、前記循環溝内におけるボールの円滑な循環を確保することができ、もってスプライン軸に対するスプラインナットの円滑な運動を達成することが可能なボールスプラインを提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明は、ボールの転走溝が長手方向に沿って複数形成されたスプライン軸と、多数のボールを介して前記スプライン軸に組付けられて、当該スプライン軸に沿って移動自在なスプラインナットと、を備えたボールスプラインである。前記スプラインナットは、前記スプライン軸が挿通する貫通穴を有すると共に、当該貫通穴の内周面には前記スプライン軸の各転走溝に対向する複数の負荷転走溝が形成されたナット本体と、前記ナット本体の貫通穴の内周面に装着される共に前記ボールの無限循環路となる複数の循環溝が外周面に設けられた保持器と、を備えている。そして、前記循環溝は、前記ボールが荷重を負荷しながら転動する負荷通路と、前記負荷通路と保持壁を隔てて平行に設けられた戻し通路と、これら負荷通路と戻し通路の両端を接続する一対の方向転換路とを備え、前記負荷通路の底部には当該負荷通路を転動するボールが前記スプライン軸の転走溝に接触する負荷開口部が設けられる一方、前記戻し通路の底部には前記保持壁の弾性変形を可能とするスリット状開口が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明にボールスプラインによれば、保持器の循環溝を構成する戻し通路の底部にスリット状開口を形成したことにより、当該戻し通路と負荷通路とを隔てる保持壁が外力に対して弾性変形し易いので、前記循環溝内におけるボール詰まり現象の発生を抑えて、ボールの円滑な循環を確保することができ、スプライン軸に対するスプラインナットの円滑な運動を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用されるボールスプラインの実施形態の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】実施形態に係るボールスプラインの保持器を示す斜視図である。
図4】実施形態に係るボールスプラインの保持器を示す側面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】実施形態に係るボールスプラインのスプラインナットの分解斜視図である。
図7】保持器の他の例を示すスプラインナットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明を適用可能なボールスプラインの実施形態の一例を示す斜視図である。このボールスプラインは、外周面の長手方向に沿ってボールの転走溝10が複数形成されたスプライン軸1と、前記スプライン軸が挿通する貫通穴20を有すると共に多数のボールを介して当該スプライン軸1に組み付けられたスプラインナット2と、を備えている。前記スプラインナット2は前記ボールが配列された無限循環路を内蔵しており、前記ボールが前記無限循環路内を循環しながら前記スプライン軸1の転走溝10を転動することで、前記スプラインナット2が当該スプライン軸1の長手方向に沿って自在に移動することが可能となっている。また、前記ボールが前記転走溝の上をスプイラン軸1の長手方向にのみ転動することから、前記ボールスプラインは前記スプライン軸1の周方向に作用するトルクを当該スプライン軸1と前記スプラインナット2の間で伝達することが可能である。
【0012】
図2図1のII-II線断面図である。このボールスプラインでは、前記転走溝10が前記スプライン軸1の外周面に対して6条形成されている。これら転走溝10は2条を1組とし、3組の転走溝10が前記スプライン軸1の中心に対して120度の角度で均等に配置されている。尚、前記転走溝10の条数はこれに限られるものではなく、前記スプラインナット2に必要とされる荷重負荷能力に応じて適宜設計変更することが可能である。
【0013】
また、前記スプラインナット2は、前記スプライン軸1の転走溝10に対向する負荷転走溝21が内周面に形成された略円筒状のナット本体2Aと、前記ナット本体2Aの内周面に装着されて前記ボールの無限循環路を構築するボール保持器3と、前記ボール保持器3に配列された多数のボール4と、を備えている。
【0014】
前記ナット本体2Aの内周面は負荷部22と無負荷部23が周方向に沿って交互に形成されている。前記負荷部22には前記負荷転走溝21が2条ずつ形成されており、前記ボール4は当該負荷転走溝21と前記スプライン軸1の転走溝10との間で荷重を負荷しながら転動する。このため、前記負荷部22と前記スプライン軸1の外周面との距離はボール4の直径よりも僅かに狭く設定されている。また、前記無負荷部23には前記ボール4が無負荷状態で転動する戻し通路が2条ずつ設けられている。このため、前記無負荷部23と前記スプライン軸1の外周面との距離はボール4の直径よりも大きく設定されている。
【0015】
また、前記ナット本体2Aには潤滑剤の供給穴24が複数設けられている。これら供給穴24は前記ナット本体2Aを半径方向へ貫通して前記無負荷部23に開口しており、前記戻し通路を転動するボール4に対して潤滑剤を供給することが可能となっている。
【0016】
次に、前記保持器について説明する。図3は前記保持器3を示す斜視図、図4は前記保持器を示す側面図、図5図4のV-V線断面図である。前記保持器3は前記スプライン軸1が貫通する貫通穴30を有して略円筒状に形成されており、その外周面にはボール4の無限循環路となる循環溝31が形成されている。この実施形態のボールスプラインでは前記保持器3に対して6回路の循環溝31が設けられており、各循環溝31が前記スプライン軸1の転走溝10の夫々に対応している。尚、図3においては前記循環溝31の把握を容易なものとするため、一つの循環溝31にのみボール4を配列した様子を描いている。
【0017】
各循環溝31は、ボール4が前記スプライン軸1と前記ナット本体2Aとの間で荷重を負荷しながら転動する負荷通路31aと、前記負荷通路31aと平行に設けられた戻し通路31bと、これら負荷通路31aと戻し通路31bの両端を接続する一対の方向転換路31cとから構成されている。前記保持器3に対する6回路の循環溝31の配置は、前記負荷通路31a同士、前記戻し通路31b同士が隣接するようになされている。そして、互いに隣接する2条の負荷通路31aが前記ナット本体2Aの負荷部22に対応し、互いに隣接する2条の戻し通路31bが前記ナット本体2Aの無負荷部23に対応している。
【0018】
図4に示すように、前記循環溝31の負荷通路31aの底部には負荷開口部32が設けられており、当該負荷通路31aを転動するボール4は前記負荷開口部32を通して前記スプライン軸1の転走溝10に接触する。これにより、前記負荷通路を転動するボールは前記ナット本体2Aと前記スプライン軸との間で荷重を負荷することが可能となる。また、前記負荷開口部32の開口幅は前記ボール4の直径よりも小さく設定されており、前記スプラインナット2から前記スプライン軸1を抜き取ったとしても、ボール4が前記循環溝31に保持されるようになっている。
【0019】
前記負荷通路31aと前記戻し通路31bは保持壁33によって隔てられており、前記循環溝31に配列されたボール4は前記保持壁33の周囲を循環している。また、図4及び図5に示されるように、互いに隣接する一対の戻し通路31bの間には隣り合う一対の循環溝31を隔てる区画壁34が設けられている。
【0020】
また、各戻し通路31bの底部には、前記戻し通路31b内におけるボール4の転動を円滑化するためのスリット状開口35が形成されている。このスリット状開口35の開口幅は前記負荷開口部32の開口幅よりも小さく設定されており、前記戻し通路31b内のボール4は前記スプライン軸1に接触することなく当該戻し通路31b内を転動する。図5に示されるように、前記戻し通路31bは前記保持壁33を挟んで前記負荷通路31aに隣接する一方、前記区隔壁34を挟んで他の戻し通路31bに隣接しており、前記負荷通路31aの底部には前記負荷開口部32が形成され、前記戻し通路31bの底部にはスリット状開口35が形成されている。このため、前記保持壁33及び前記区隔壁34は外力に対して弾性変形を生じ易く、前記ボール4が配列されている状態では、当該保持器3の半径方向へ変形を生じ易くなっている。
【0021】
図6は前記スプラインナット2の組み立てを示す分解斜視図である。同図に示されるように、前記保持器3は、保持器本体3Aと、前記保持器本体3Aの長手方向の両端に装着される一対のリング状サブキャップ3Bとから構成されている。前記サブキャップ3Bは前記保持器本体3Aの長手方向端部の外周面に対して被さるようにして嵌合する。前記サブキヤップ3Bには前記保持器本体3Aの循環溝31に対応した略U字状の案内溝36が形成されており、当該サブキャップ3Bを前記保持器本体3Aに嵌合させると、かかる案内溝36の内周壁が前記方向転換路31cの外周側の案内壁となる。これにより、前記方向転換路31cの全域においてその深さがボール4の直径よりも僅かに深く設定され、当該方向転換路31c内におけるボール4の整列状態を安定させ、無限循環路におけるボール4の循環を良好なものにすることが可能となっている。
【0022】
図6に示されるように、前記ナット本体2Aの内周面には前記負荷転走溝21が形成された負荷部22が突出しているので、前記保持器本体3Aの両端に前記サブキャップ3Bを装着したままの状態では前記保持器3を前記ナット本体2Aに組付けることはできない。このため、前記スプラインナット2の組み立てにあたっては、まず、前記保持器本体3Aが前記ナット本体2Aの内部に挿入される。この際、前記ナット本体2Aの周方向に対する前記保持器本体3Aの位置決めは前記負荷部22によって行われる。
【0023】
この後、前記ナット本体2Aの両端の貫通穴のそれぞれから前記サブキャップ3Bが挿入され、当該サブキャップ3Bが前記保持器本体3Aの両端部に嵌合する。これによって前記ナット本体2Aの長手方向に対する保持器3の位置決めが完了する。最後に、シールリング5とC形止め輪6をナット本体2Aの貫通穴の口元に装着し、前記スプラインナット2の組み立てが完了する。
【0024】
前記スプラインナット2が前記スプライン軸1に沿って移動する際、前記負荷通路31a内のボール4は前記スプライン軸1の転走溝10と前記ナット本体2Aの負荷転走溝21に接触しており、当該負荷通路3a内を自転しながら移動する。しかし、かかるボール4は負荷通路3aを抜けて方向転換路3cに進入して、当該方向転換路3cで無負荷状態になると、自ら自転して移動することはなく、前記負荷通路3aから続けて排出される後続のボール4に押されながら方向転換路3c及び戻し通路3bの内部を進行する。すなわち、ボール4は後続のボールに押され、隙間なく配列された状態で前記方向転換路3c、前記戻し通路3b及びその先の方向転換路3cを進行する。
【0025】
その一方、前記負荷通路3aから前記方向転換路3cへのボール4の排出と、前記方向転換路3cから前記負荷通路3aへのボール4の進入は完全には同期しておらず、前記一対の方向転換路3c及び前記戻し通路3bに配列されたボール列の長さは前記負荷通路3aに対するボール4の出入りに応じて周期的に変化する。このため、前記保持器3の循環溝31に対してボール4を隙間なく配列している場合、前記戻し通路3b内に前後して配列されたボール4は周期的に強く擦れあって当該戻し通路3b内で千鳥状に配列を乱す懸念がある。
【0026】
本実施形態のボールスプラインでは、前記保持器3に設けられた特定の戻し通路31bに着目した場合、当該戻し通路31bの底部にスリット状開口35が形成されていることから、前述したように、当該戻し通路31bの両側に位置する前記保持壁33及び前記区隔壁34は外力に対して弾性変形し易いといった特徴がある。このため、前記戻し通路31b内でボール4が千鳥状に配列を乱した場合であっても、前記保持壁33及び区隔壁34がボール4に押圧されて前記保持器3の半径方向へ変形し、ボール4とボール4の間に作用する摩擦力の高まりを抑えることが可能である。
【0027】
すなわち、本実施形態のボールスプラインでは、ボール4が前記保持器3の循環溝31内で周期的に強く擦れあっても、当該循環溝31の内部におけるボール詰まりの発生を防止することができ、無限循環路内におけるボール4の循環を円滑化し、ひいては前記スプライン軸1に対する前記スプラインナット2の運動の円滑化を達成することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態のボールスプラインでは、前記保持器3が前記保持器本体3Aと前記一対のサブキャップ3Bに分割されており、当該サブキャップ3Bが前記ナット本体2Aと保持器本体3Aの隙間を埋めて前記方向転換路31cの外周側の案内壁を形成することから、当該方向転換路31cにおけるボール4の整列状態が良好なものとなり、この点においても無限循環路内におけるボール4の循環を円滑化が図られている。特に、スプライン軸1を鉛直方向に沿って配設した場合に、前記方向転換路31c内におけるボール詰まりが解消され、その効果が顕著である。
【0029】
尚、本発明のボールスプラインにおける前記保持器3の実施形態は図1乃至図6に示した例に限定されるものではなく、例えば図7に示すように、前記サブキャップ3Bを複数のリターンピース3Cに分割したものであっても良い。前記リターンピース3Cは前記ナット本体2Aの両端の開口部から当該ナット本体2Aと前記保持器本体3Aの隙間に挿入されるものであり、各リターンピース3Cには保持器本体3Aに設けられた前記方向転換路31cの外周側の案内壁の一部が形成されている。保持器本体3Aに組付けられた前記リターンピース3Cは前記ナット本体2Aの負荷部22の長手方向の両端に位置し、当該保持器本体3Aと前記ナット本体2Aの内周面との隙間を埋めて、前記方向転換路31cにおけるボール4の軌道を整え、前記サブキャップ3Bと同様に無限循環路内におけるボール4の転動の円滑化を達成するものである。
【符号の説明】
【0030】
1…スプライン軸、2…スプラインナット、2A…ナット本体、3…保持器、3A…保持器本体、3B…サブキャップ、4…ボール、31…循環溝、31a…負荷通路、31b…戻し通路、31c…方向転換路、32…負荷開口部、33…保持壁、34…区画壁、35…スリット状開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7