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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6566 20140101AFI20230725BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20230725BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20230725BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20230725BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/617
H01M50/10
H01M50/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018224022
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020087833
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 幹生
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-272768(JP,A)
【文献】特開2013-241524(JP,A)
【文献】特開2001-319697(JP,A)
【文献】特開2012-221802(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142674(WO,A1)
【文献】特開2014-084168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6566
H01M 50/10
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 10/617
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を収容する電池ケースであって、
上面と下面と4つの側面とを有し、前記複数の電池を前記下面上に配置して収容するケース本体であって、前記複数の電池を冷却する冷却媒体を前記ケース本体に導入する少なくとも1つの冷却媒体導入口と、前記冷却媒体を前記ケース本体から排出する少なくとも1つの冷却媒体排出口とを有する、ケース本体と、
前記下面上に設けられ、前記冷却媒体導入口から前記ケース本体の内部に導入された前記冷却媒体を前記冷却媒体排出口に導く複数の冷却媒体流路を画定するとともに、前記複数の冷却媒体流路の各々において前記複数の電池の一部を配置する電池配置領域を画定する少なくとも1つの隔壁と、
を備え、
前記少なくとも1つの隔壁は、前記複数の冷却媒体流路の各々について、前記電池配置領域の下流の冷却媒体が、他の冷却媒体流路における前記電池配置領域の上流に導入されないように設けられており、
前記複数の冷却媒体流路の少なくとも1つにおいて、前記ケース本体の前記側面から離れた位置に、前記隔壁から独立して配置された整流部材をさらに備え、
前記ケース本体前記隔壁および前記整流部材がビーズ発泡体で構成され
前記隔壁および前記整流部材が前記ケース本体と一体に形成されていることを特徴とする電池ケース。
【請求項2】
前記冷却媒体流路の各々を密閉する流路密閉部材をさらに備える、請求項1に記載の電池ケース。
【請求項3】
前記側面の内面に設けられた整流部材をさらに備える、請求項1または2に記載の電池ケース。
【請求項4】
前記4つの側面のうちの一方の対向する2つの側面の内面が、他方の対向する2つの側面の内面の垂直な方向に対して傾斜している、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケースおよび組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車には、動力源として複数の二次電池(以下、単に「電池」とも言う。)で構成された組電池が用いられている。こうした電池において、充放電の過程で化学反応熱や内部抵抗によるジュール熱が発生するが、電池が過熱されると、十分な性能が得られないばかりでなく、電池が損傷して発火する虞もある。そのため、これら組電池を電池ケースに収容し、冷却空気などの冷却媒体を電池ケース内に導入して電池を冷却するのが一般的である。
【0003】
上記組電池に用いられる電池としては、略平板状のリチウムイオン電池などが使用されており、冷却媒体による電池の冷却を効率的に行うために、電池の広い面(長手方向側面)同士を所定の隙間を空けて対向させて配置し、電池間の隙間に冷却媒体を流通させて電池を冷却している。そして、これら組電池の冷却は、組電池を構成する複数の電池を均一に、かつ、効率的に冷却することが必要である。そこで、これまで、様々な電池冷却構造が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数の平板状電池を隙間を空けて一次元的に配置し、平板状電池の間に空気を導くことにより、複数の電池を均一に冷却することができる電池冷却構造が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、冷却空気の通路を遮断する流れ制御板を配置し、この流れ制御板に電池間の隙間に沿う方向に延在するスリットを設けることにより、電池が膨張して電池間の隙間が狭くなった場合にも、電池を均一に冷却することができる電池冷却構造電が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-254627号公報
【文献】特開2012-150977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車においては、1回の充電によって走行可能な距離を伸ばすことが強く要求されており、自動車に搭載される電池の数は益々増加する傾向にある。こうした状況の下で、多数の電池を特許文献1および2に記載されたように一次元的に配置して組電池を構成するのは現実的ではない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、多数の電池を効率的に冷却することができる電池ケースおよび組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
【0010】
[1]
複数の電池を収容する電池ケースであって、
前記複数の電池を収容するケース本体であって、前記複数の電池を冷却する冷却媒体を前記ケース本体に導入する少なくとも1つの冷却媒体導入口と、前記冷却媒体を前記ケース本体から排出する少なくとも1つの冷却媒体排出口とを有する、ケース本体と、
前記冷却媒体導入口から前記ケース本体の内部に導入された前記冷却媒体を前記冷却媒体排出口に導く複数の冷却媒体流路を画定するとともに、前記複数の冷却媒体流路の各々において前記複数の電池の一部を配置する電池配置領域を画定する少なくとも1つの隔壁と、
を備え、
前記少なくとも1つの隔壁は、前記複数の冷却媒体流路の各々について、前記電池配置領域の下流の冷却媒体が、他の冷却媒体流路における前記電池配置領域の上流に導入されないように設けられていることを特徴とする電池ケース。
【0011】
[2]
前記ケース本体および前記隔壁の少なくとも一方が樹脂で構成されている、前記[1]に記載の電池ケース。
【0012】
[3]
前記樹脂はビーズ発泡体で構成されている、前記[2]に記載の電池ケース。
【0013】
[4]
前記少なくとも1つの隔壁のうちの少なくとも1つが、前記電池配置領域に設定された電池を配列する電池配列方向に沿って延在し、かつその延在方向が前記電池配列方向に対して傾斜して延在する部分を有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の電池ケース。
【0014】
[5]
前記ケース本体の側面の少なくとも1つの内面が、前記電池配置領域に設定された電池を配列する電池配列方向に沿って延在し、かつその延在方向が前記電池配列方向に対して傾斜して延在する部分を有する、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の電池ケース。
【0015】
[6]
前記複数の冷却媒体流路の少なくとも1つにおいて整流部材をさらに備える、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の電池ケース。
【0016】
[7]
複数の電池と、
前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の電池ケースと、
を備え、
前記複数の電池は、前記電池ケースにおける前記複数の冷却媒体流路上の電池配置領域に分散して配置されており、各電池配置領域において、前記電池は設定された前記電池配列方向に沿って配列されていることを特徴とする組電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多数の電池を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による電池ケースの一例を示す図である。
図2図1に示した電池ケースのA-A断面図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図である。
図3】(a)は図1に示した電池ケースにおける電池の配置例を示す図であり、(b)は流路密閉部材の一例を示す図である。
図4図1に示した電池ケースにおける電池の別の配置例を示す図である。
図5】本発明による電池ケースの別の例の断面図である。
図6図5に示した電池ケースにおける電池の配置例を示す図である。
図7図1および2に示した電池ケースの変形例の断面図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図である。
図8図1および2に示した電池ケースの別の変形例の断面図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図である。
図9図8に示した電池ケースにおける電池の配置例を示す図である。
図10】本発明による電池ケースのさらに別の例の断面図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図である。
図11図10に示した電池ケースにおける電池の配置例を示す図である。
図12図10に示した電池ケースにおける電池の別の配置例を示す図である。
図13】本発明による電池ケースのさらにまた別の例の断面図であり、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図である。
図14図13に示した電池ケースにおける電池の配置例を示す図である。
図15】整流部材をさらに備える電池ケースにおける電池の配置例を示す図である。
図16】実施例1の電池ケースにおける流路の要所の寸法を示す図である。
図17】実施例2の電池ケースにおける流路の要所の寸法を示す図である。
図18】実施例3の電池ケースにおける流路の要所の寸法を示す図である。
図19】実施例4の電池ケースにおける流路の要所の寸法を示す図である。
図20】実施例5の電池ケースにおける整流部材の詳細を示す図である。
図21】実施例1の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
図22】実施例2の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
図23】実施例3の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
図24】実施例4の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
図25】実施例5の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
図26】比較例の電池ケースの冷却性能を示す図であり、(a)は電池ケース内の冷却媒体の流速分布、(b)は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明による電池ケースは、複数の電池を収容するケース本体であって、上記複数の電池を冷却する冷却媒体をケース本体に導入する少なくとも1つの冷却媒体導入口と、冷却媒体を前記ケース本体から排出する少なくとも1つの冷却媒体排出口とを有する、ケース本体と、冷却媒体導入口からケース本体の内部に導入された冷却媒体を冷却媒体排出口に導く複数の冷却媒体流路を画定するとともに、複数の冷却媒体流路の各々において上記複数の電池の一部を配置する電池配置領域を画定する少なくとも1つの隔壁とを備える。ここで、上記少なくとも1つの隔壁は、複数の冷却媒体流路の各々について、電池配置領域の下流の冷却媒体が、他の冷却媒体流路における電池配置領域の上流に導入されないように設けられていることを特徴とする。
【0020】
上述のように、電気自動車などに搭載する組電池を、多数の電池を一次元的に並べて構成するのは現実的ではない。そこで、本発明者は、多数の電池を電池ケースの内部に配置して組電池を構成し、電池ケースの内部に冷却媒体としての冷却空気を導入して冷却性能を評価した。
【0021】
その結果、後述する実施例に示すように、多数の電池を二次元的に並べただけでは、電池を冷却した後の加熱された加熱空気と電池を冷却する前の冷却空気とが混合され、電池を効率的に冷却できないことが判明した。また、冷却空気は流れやすい部分のみに流れ、電池を均一に冷却できないことも分かった。
【0022】
そこで、本発明者は、多数の電池を効率的に冷却できる電池ケースについて鋭意検討した。その結果、本発明者は、電池ケースの内部に少なくとも1つの隔壁を設けて、電池を冷却する冷却媒体が流通する冷却媒体流路を複数設け、各冷却媒体流路に設定された電池配置領域に電池を分散して配置し、複数の冷却媒体流路の各々が、電池配置領域の下流の冷却媒体が他の冷却媒体流路における電池配置領域の上流に導入されないように構成することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0023】
図1は、本発明による電池ケースの一例を示している。この図に示した電池ケース1は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの複数の電池を収容するケース本体10を備える。ケース本体10は、複数の電池を冷却する空気などの冷却媒体をケース本体10に導入する少なくとも1つの冷却媒体導入口11と、冷却媒体をケース本体10から排出する少なくとも1つの冷却媒体排出口12とを有する。図示例のケース本体10は、4つの側面10a、10b、10c、10d、上面10eおよび下面10fで構成された略直方体形状のケース本体であり、1つの冷却媒体導入口11と、1つの冷却媒体排出口12とを有する。ケース本体10は、複数の部材、例えば2つの部材で構成することができる。
【0024】
図2は、図1に示した電池ケースのA-A断面図を示しており、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図をそれぞれ示している。図2(a)および(b)に示すように、電池ケース1は、ケース本体10の内部に、冷却媒体導入口11からケース本体10の内部に導入された冷却媒体を冷却媒体排出口12に導く複数の冷却媒体流路を画定する少なくとも1つの隔壁を備える。図示例の電池ケース1は、ケース本体10の内部に2つの隔壁13、14を備える。
【0025】
これらの隔壁13、14は、それぞれ3つの平板状の部材で構成されており、第1の隔壁13の第1の部材13aおよび第3の部材13cは、ケース本体10の第1の側面10aおよび第3の側面10cに対して略平行に配置されている。また、第1の隔壁13の第2の部材13bは、ケース本体10の第2の側面10bおよび第4の側面10dに対して略平行に配置されている。
【0026】
このように構成された第1の隔壁13、ケース本体10の第1の側面10a、第3の側面10cおよび第4の側面10dによって、第1の冷却媒体流路F1が画定されており、該第1の冷却媒体流路F1上に第1の電池配置領域A1が画定されている。第1の電池配置領域A1は、該第1の電池配置領域A1に設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置することが可能な寸法を有している。
【0027】
同様に、第2の隔壁14の第1の部材14aおよび第3の部材14cは、ケース本体10の第1の側面10aおよび第3の側面10cに対して略平行に配置されている。また、第2の隔壁14の第2の部材14bは、ケース本体10の第2の側面10bおよび第4の側面10dに対して略平行に配置されている。
【0028】
このように構成された第2の隔壁14、第1の隔壁13、ケース本体10の第1の側面10aおよび第3の側面10cによって、第2の冷却媒体流路F2が画定されており、該第2の冷却媒体流路F2上に第2の電池配置領域A2が画定されている。第2の電池配置領域A2は、該第2の電池配置領域A2に設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置することが可能な寸法を有している。
【0029】
また、第2の隔壁14、ケース本体10の第1の側面10a、第2の側面10bおよび第3の側面10cによって、第3の冷却媒体流路F3が画定されており、該第3の冷却媒体流路F3上に第3の電池配置領域A3が画定されている。第3の電池配置領域A3は、該第3の電池配置領域A3に設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置することが可能な寸法を有している。
【0030】
こうして、上記隔壁13、14およびケース本体10の側壁10a、10b、10cおよび10dにより、ケース本体10の内部には、冷却媒体導入口11から導入された冷却媒体が冷却媒体排出口12から排出される3つの冷却媒体流路F1、F2、F3が画定されており、各冷却媒体流路F1、F2、F3上に1つの電池配置領域A1、A2、A3が画定されている。
【0031】
そして、各冷却媒体流路F1、F2、F3は、電池配置領域A1、A2、A3を通過した冷却媒体が、他の冷却媒体流路F1、F2、F3における電池配置領域A1、A2、A3の上流側に導入されないように構成されている。
【0032】
このように、本発明による電池ケースにおいては、少なくとも1つの隔壁によって複数の冷却媒体流路が設けられ、電池が複数の冷却媒体流路上の電池配置領域に分散されて配置されるように構成されている。また、少なくとも1つの隔壁は、複数の冷却媒体流路の各々について、電池配置領域の下流の冷却媒体が、他の冷却媒体流路における電池配置領域の上流に導入されないように設けられている。これにより、多数の電池を効率的に冷却することができる。
【0033】
なお、図2に示した電池ケース1においては、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の上流側の流路の幅(すなわち、ケース本体10の第1の側面10と第1の隔壁13の第1の部材13aとの間の間隔)Wu2が、第3の冷却媒体流路F3の第3の電池配置領域A3の上流側の流路の幅(すなわち、ケース本体10の第1の側面10と第1の隔壁13の第1の部材13aとの間の間隔)Wu3よりも大きく構成されている。
【0034】
すなわち、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の上流側の流路には、第2の電池配置領域A2に配置された電池を冷却する冷却媒体のみならず、第3の電池配置領域A3に配置された電池を冷却するための冷却媒体も流通する。
【0035】
そのため、第2の冷却媒体流路F2の幅Wu2を第3の冷却媒体流路F3の幅Wu3よりも大きく構成することにより、各電池配置領域A1、A2、A3に電池を配置した際に、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の上流側の流路の圧力損失と、第3の冷却媒体流路F3の第3の電池配置領域A3の上流側の流路の圧力損失との差を小さくすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0036】
同様に、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の下流側の流路には、第2の電池配置領域A2に配置された電池を冷却した冷却媒体のみならず、第1の電池配置領域A1に配置された電池を冷却した冷却媒体も流通する。そのため、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の下流側の流路の幅(すなわち、ケース本体10の第3の側面10cと第2の隔壁14の第3の部材14cとの間の間隔)Wd2が、第3の冷却媒体流路F1の第1の電池配置領域A1の下流側の流路の幅(すなわち、ケース本体10の第3の側面10cと第1の隔壁13の第3の部材13cとの間の間隔)Wd1よりも大きく構成されている。
【0037】
これにより、各電池配置領域A1、A2、A3に電池を配置した際に、第2の冷却媒体流路F2の第2の電池配置領域A2の下流側の流路の圧力損失と、第1の冷却媒体流路F1の第1の電池配置領域A1の下流側の流路の圧力損失との差を小さくすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0038】
さらに、各電池配置領域A1、A2、A3に電池を配置して冷却媒体導入口11から冷却媒体を導入した際に、冷却媒体導入口11から冷却媒体排出口12までの冷却媒体流路の長さは、冷却媒体流路F1、F2、F3のいずれを経由した場合にも同程度となるように構成されている。そのため、冷却媒体の冷却能の電池配置領域A1、A2、A3間の差を低減して、電池をより均一に冷却することができる。
【0039】
ケース本体10を構成する材料は、複数の電池を収容し、電池を冷却するのに十分な強度を有するものであれば特に限定されないが、近年電池の軽量化が求められていることから、ケース本体10を樹脂で構成することが好ましい。
【0040】
上記樹脂は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテルなどを用いることができる。中でも、難燃性であり、100℃を超える高温下でも高い剛性を有することから、樹脂としてポリフェニレンエーテルを用いることが好ましい。
【0041】
また、上記樹脂はビーズ発泡体で構成することが好ましい。これにより、より一層の軽量化を図ることができるとともに、発泡ポリプロピレンなどと同様のプロセスによって、ケース本体10を形成することができる。具体的には、例えば2つの部材で構成された金型にビーズ発泡体を充填して圧力を印加し、蒸気により金型を加熱してビーズ発泡体を溶解させた後、金型を冷却することにより、ケース本体10を構成する部材を形成することができる。
【0042】
なお、ケース本体10を樹脂で構成する場合、樹脂の表面に強度の高い金属板などを配置して、ケース本体10の剛性を高めるようにしてもよい。
【0043】
また、隔壁13、14を構成する材料については、冷却媒体の流通に対して十分な強度を有するものであれば特に限定されないが、樹脂で構成することが好ましい。これにより、各冷却媒体流路F1、F2、F3を熱的に独立させることができ、他の冷却媒体流路の電池配置領域に配置された電池の影響を低減することができる。樹脂としては、上述のケース本体10に利用可能な樹脂を用いることができる。
【0044】
ケース本体10および隔壁13、14の双方を樹脂で構成する場合、両者を一体に構成することができる。例えば、ケース本体10の内部に隔壁13、14が形成されるような金型を用意し、上述のように金型にビーズ発泡体を充填して圧力を印加し、金型を加熱してビーズ発泡体を融解させた後、金型を冷却することにより、ケース本体10と隔壁13、14とを一体に形成することができる。
【0045】
図3(a)は、図1および2に示した電池ケース1における電池の配置例(すなわち、組電池)を示している。図3(a)に示した電池ケース1においては、各電池配置領域A1、A2、A3に対して設定された数の箱型の電池B1、B2、B3が、設定された隙間を空けて配置されている。
【0046】
第1の隔壁13の第1の部材13aに隣接する電池B1は、その長手方向側面が第1の部材13と略平行となるように配置されており、ケース本体10の第3の側面10cに隣接する電池B1は、その長手方向側面が第3の側面10cと略平行となるように配置されている。
【0047】
また、第2の隔壁14の第1の部材14aに隣接する電池B2は、その長手方向側面が第1の部材14aと略平行となるように配置されており、第2の隔壁14の第3の部材14cに隣接する電池B2は、その長手方向側面が第3の部材14cと略平行となるように配置されている。
【0048】
さらに、ケース本体10の第1の側面10aに隣接する電池B3は、その長手方向側面が第1の側面10aと略平行となるように配置されており、第2の隔壁14の第3の部材14cに隣接する電池B3は、その長手方向側面が第3の部材14cと略平行となるように配置されている。
【0049】
そして、第1の電池配置領域A1に配置された複数の電池B1は、その配列方向D1がケース本体10の第4の側面10dおよび第1の隔壁13の第2の部材13bに対して略平行に配置されている。同様に、第2の電池配置領域A2に配置された複数の電池B2および第3の電池配置領域A3に配置された複数の電池B3についても、その配列方向D2、D3が、第1の隔壁13の第2の部材13b、第2の隔壁14の第2の部材14b、ケース本体10の第2の側壁10bに対して略平行に配置されている。
【0050】
なお、本明細書において、「電池の配列方向」とは、電池配置領域に配置された複数の電池において、隣接する2つの電池の中心間を通る直線の方向を意味している。そのため、ある隣接する2つの電池の配列方向と、別の隣接する2つの電池の配列方向とが異なってもよい。例えば、「複数の電池B1は、その配列方向D1がケース本体10の第4の側面10dに対して略平行に配置されている」場合、複数の電池B1における隣接する2つの電池間の配列方向D1の全てが第4の側面10dに対して略平行となるように、複数の電池B1が配置されていることを意味している。
【0051】
また、電池B1、B2、B3の上面には電極が設けられており、電池B1、B2、B3の上方には、例えば図3(b)に示すような流路密閉部材15が配置されている。この流路密閉部材15は、電池B1、B2、B3の電極および上面部分のみを露出するように構成されており、流路密閉部材15により、電池B1、B2、B3間や電池B1、B2、B3と隔壁13、14との間、隔壁13、14とケース本体10の側面10a、10b、10c、10dとの間に設けられた各流路が密閉され、各流路を流通する冷却媒体が、電池B1、B2、B3の上面側を経由して他の流路に流れ込まないように構成されている。
【0052】
このように電池が配置された電池ケース1(すなわち、組電池)の内部に冷却媒体導入口11から冷却媒体を導入すると、導入された冷却媒体の一部が第1の冷却媒体流路F1に流れ込む。第1の冷却媒体流路F1に流れ込んだ冷却媒体は、第1の電池配置領域A1に配置された電池B1間、電池B1と第1の隔壁13の第1の部材13aとの間、または電池B1とケース本体10の第3の側面10cとの間を流れて電池B1を冷却する。そして、第1の電池配置領域A1を通過した冷却媒体は、ケース本体10の第3の側面10cに沿って流れ、冷却媒体排出口12から排出される。
【0053】
一方、第1の冷却媒体流路F1に流れ込んだ残りの冷却媒体の一部が第2の冷却媒体流路F2に流れ込み、その残りは第3の冷却媒体流路F3に流れ込む。第2の冷却媒体流路F2に流れ込んだ冷却媒体は、第2の電池配置領域A2に配置された電池B2間、電池B2と第1の隔壁13の第3の部材13cとの間、または電池B2と第2の隔壁14の第1の部材14aとの間を流れて電池B2を冷却する。そして、第2の電池配置領域A2を通過した冷却媒体は、第1の冷却媒体流路F1を通過した冷却媒体と合流し、ケース本体10の第3の側面10cに沿って流れ、冷却媒体排出口12から排出される。
【0054】
同様に、第3の冷却媒体流路F3に流れ込んだ冷却媒体は、第3の電池配置領域A3に配置された電池B3間、電池B3とケース本体10の第1の側面10aとの間、または電池B3と第2の隔壁14の第3の部材14cとの間を流れて電池B3を冷却する。そして、第3の電池配置領域A3を通過した冷却媒体は冷却媒体排出口12から排出される。こうして複数の電池を効率的に冷却することができる。
【0055】
図4は、図1および2に示した電池ケース1における電池の別の配置例(すなわち、組電池)を示している。図4に示した電池ケース1においては、第1の電池配置領域A1に配置された複数の電池B1は、その配列方向D1がケース本体10の第4の側面10dに対して傾斜するように配置されており、電池B1を冷却する前の冷却媒体の流路の幅が徐々に減少するように構成されている。
【0056】
同様に、第2の電池配置領域A2に配置された複数の電池B2および第3の電池配置領域A3に配置された複数の電池B3についても、その配列方向D2、D3が、それぞれ第1の隔壁13の第2の部材13b、第2の隔壁14の第2の部材14bに対して傾斜するように配置されている。その結果、電池B2、B3を冷却する前の冷却媒体の流路の幅が徐々に減少するように構成されている。
【0057】
このように電池B1、B2、B3を配置することによって、電池をその配列方向D1、D2、D3がケース本体10の第2の側面10b、第4の側面10d、第1の隔壁13の第2の部材13bおよび第2の隔壁14の第2の部材14bに対して平行となるように配置した場合に比べて、各冷却媒体流路の圧力損失をより均一にすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0058】
なお、図4に示した構成による効果は、図5に示す電池ケース2によっても奏することができる。すなわち、図5にその断面図を示した電池ケース2においては、第1の隔壁23の第2の部材23bが第1の部材23aに垂直な方向に対して傾斜しており、第2の隔壁24の第2の部材24bが第2の部材24の第1の部材24aに垂直な方向に対して傾斜している。また、ケース本体20の第2の側面20bの内面および第4の側面20dの内面が、ケース本体20の第1の側面20aの内面および第3の側面20cの内面の垂直な方向に対して傾斜するように構成されている。
【0059】
このように構成された電池ケース2に複数の電池を収容する場合、図6に示すように、第1の電池配置領域A1に配置された複数の電池B1は、その配列方向D1が第1の隔壁23の第1の部材23aに垂直な方向に対して略平行になるように配置する。同様に、第2の電池配置領域A2に配置された複数の電池B2および第3の電池配置領域A3に配置された複数の電池B3についても、その配列方向D2、D3が、第2の隔壁24の第1の部材23a、第2の隔壁24の第3の部材24cに垂直な方向に対して略平行になるように配置する。
【0060】
このように電池が配置された電池ケース2に冷却媒体を導入すると、図3(a)に示したように、電池をその配列方向D1、D2、D3がケース本体10の第2の側面10b、第4の側面10d、第1の隔壁23の第2の部材23bおよび第2の隔壁24の第2の部材24bに対して略平行となるように配置した場合に比べて、各冷却媒体流路の圧力損失をより均一にすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0061】
図7は、図1および2に示した電池ケースの変形例を示しており、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図をそれぞれ示している。この図に示した電池ケース3と、図1および2に示した電池ケース1との相違点は、電池ケース3においては、ケース本体30の第1の側面30aに冷却媒体導入口31が設けられており、第3の側面30cに冷却媒体排出口32が設けられている点のみである。後述する実施例に示すように、この図に示した電池ケース3についても、電池ケース1を用いた場合と同程度に電池を冷却することができる。
【0062】
図8は、図1および2に示した電池ケースの別の変形例を示しており、(a)は斜視断面図、(b)は平面断面図をそれぞれ示している。この図にその断面図を示した電池ケース4においては、第1の隔壁43の第2の部材43bが、第1の部材43aに垂直な方向に対して傾斜しており、また第2の隔壁44の第2の部材44bが、第2の部材44の第1の部材44aに垂直な方向に対して傾斜している。また、ケース本体40の第2の側面40bの内面および第4の側面40dの内面が、ケース本体40の第1の側面40aの内面および第3の側面40cの内面の垂直な方向に対して傾斜している。
【0063】
このように構成された電池ケース4に複数の電池を収容する場合、図9に示すように、第1の電池配置領域A1に配置された複数の電池B1は、その配列方向D1が第1の隔壁43の第1の部材43aに垂直な方向に対して略平行になるように配置する。同様に、第2の電池配置領域A2に配置された複数の電池B2および第3の電池配置領域A3に配置された複数の電池B3についても、その配列方向D2、D3が、第2の隔壁44の第1の部材44a、第2の隔壁44の第3の部材44cに垂直な方向に対して略平行になるように配置する。このように電池を配置することにより、電池をその配列方向D1、D2、D3が第1の隔壁43の第2の部材43bおよび第2の隔壁44の第2の部材44bに対して略平行に配置した場合に比べて、各冷却媒体流路の圧力損失をより均一にすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0064】
図10は、本発明による電池ケースのさらに別の例の断面図を示している。この図にその断面図を示した電池ケース5は、ケース本体50を備え、該ケース本体50は、1つのガス導入口51と2つの冷却媒体排出口52、53とを有する。図示例においては、冷却媒体導入口51はケース本体50の第1の側面50aの中央に設けられており、冷却媒体排出口52、53は、第1の側面50aに対向する第3の側面50cの両端部に設けられている。
【0065】
また、電池ケース5は、ケース本体50の内部に、4つの隔壁54、55、56、57を備える。これら4つの隔壁54、55、56、57のうち、第1の隔壁54および第2の隔壁55は、3つの平板状の部材で構成されており、第1の隔壁54の第1の部材54aおよび第3の部材54cは、ケース本体50の第1の側面50aと略平行に配置されており、第2の部材54bは、ケース本体50の第4の側面50dと略平行に配置されている。このように構成された第1の隔壁54と、ケース本体50の第1の側面50aおよび第4の側面50dとによって、第1の冷却媒体流路F1が画定されており、該冷却媒体流路F1上に電池配置領域A1が画定されている。該電池配置領域A1は、設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置されるような寸法を有している。
【0066】
同様に、第2の隔壁55の第1の部材55aおよび第3の部材55cは、ケース本体50の第1の側面50aと略平行に配置されており、第2の部材55bは、ケース本体50の第2の側面50bと略平行に配置されている。このように構成された第2の隔壁55と、ケース本体50の第1の側面50aおよび第2の側面50bとによって、第2の冷却媒体流路F2が画定されており、該冷却媒体流路F2上に電池配置領域A2が画定されている。該電池配置領域A2は、設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置されるような寸法を有している。
【0067】
上記第1の隔壁54および第2の隔壁55は、図10に示すように、第1の隔壁54の第1の部材54aの端部と、第2の隔壁55の第1の部材55aの端部との間には隙間を空けて左右対称に配置されている。
【0068】
これに対して、第3の隔壁56および第4の隔壁57は、2つの平板状の部材で構成されており、第3の隔壁56の第1の部材56aはケース本体50の第3の側面50cと略平行に配置されており、第2の部材56bはケース本体50の第4の側面50dと略平行に配置されている。このように構成された第3の隔壁56と、上述のように構成された第1の隔壁54とによって、第3の冷却媒体流路F3が画定されており、該冷却媒体流路F3上に電池配置領域A3が画定されている。該電池配置領域A3は、設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置されるような寸法を有している。
【0069】
同様に、第4の隔壁57の第1の部材57aはケース本体50の第3の側面50cと略平行に配置されており、第2の部材57bはケース本体50の第2の側面50bと略平行に配置されている。このように構成された第4の隔壁57と、上述のように構成された第2の隔壁55とによって、第4の冷却媒体流路F4が画定されており、該冷却媒体流路F4上に電池配置領域A4が画定されている。該電池配置領域A4は、設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置されるような寸法を有している。
【0070】
上記第3の隔壁56および第4の隔壁57についても、第3の隔壁56の第1の部材56aの端部と、第4の隔壁57の第1の部材57aの端部との間には隙間を空けて左右対称に配置されている。なお、第3の隔壁56の第1の部材56aの端部と、第4の隔壁57の第1の部材57aの端部との間の隙間の大きさは、第1の隔壁54の第1の部材54aの端部と、第2の隔壁55の第1の部材55aの端部との間の隙間の大きさと同じである。
【0071】
また、上述のように構成された第3の隔壁56と、第4の隔壁57と、ケース本体50の第3の側面50cとによって、第5の冷却媒体流路F5が画定されており、該冷却媒体流路F5上に電池配置領域A5が画定されている。該電池配置領域A5は、設定された数の電池を設定された隙間を空けて配置されるような寸法を有している。なお、第5の冷却媒体流路F5は、上記電池配置領域A5の下流において、2つに分岐されており、一方は第1の冷却媒体排出口52に、他方は第2の冷却媒体排出口53に向かっている。
【0072】
なお、図10に示すように、複数の冷却媒体流路F1、F2、F3、F4、F5の少なくとも1つにおける適切な位置に整流部材を設けて、冷却媒体の流れを整流させるように構成してもよい。これにより、電池をより均一に冷却することができる。図10においては、ケース本体50の第3の側面50c内面の中央に整流部材58が設けられている。
【0073】
このように、図10に例示した電池ケース5においても、複数の電池を5つの冷却媒体流路F1、F2、F3、F4、F5の電池配置領域A1、A2、A3、A4、A5に分散して配置し、各冷却媒体流路F1、F2、F3、F4、F5について、電池配置領域A1、A2、A3、A4、A5を通過した冷却媒体が、他の冷却媒体流路F1、F2、F3、F4、F5の上流側に導入されないように構成されている。そのため、全ての電池を一次元的に配置して冷却する場合に比べて、電池を効率的に冷却することができる。
【0074】
図11は、図10に示した電池ケース5における電池の配置例(すなわち、組電池)を示している。図11に示した電池ケース5においては、各電池配置領域A1、A2、A3、A4、A5には、設定された数の電池B1、B2、B3、B4、B5が設定された隙間を空けて配置されている。
【0075】
第1の電池配置領域A1に配置された複数の電池B1は、その配列方向D1がケース本体50の第4の側面50d、および第1の隔壁54の第2の部材54bに対して略平行に配置されている。同様に、第2の電池配置領域A2に配置された複数の電池B2についても、その配列方向D2が、第2の隔壁55の第2の部材55b、およびケース本体50の第2の側壁50bに対して略平行に配置されている。
【0076】
また、第3の電池配置領域A3に配置された複数の電池B3は、その配列方向D3が第1の隔壁54の第2の部材54bに対して略平行に配置されている。同様に、第4の電池配置領域A4に配置された複数の電池B4は、その配列方向D4が、第2の隔壁55の第2の部材55bに対して略平行に配置されている。さらに、第5の電池配置領域A5に配置された複数の電池B5は、その配列方向D5が第3の隔壁56の第1の部材56aおよび第4の隔壁57の第1の部材57aに対して略平行に配置されている。
【0077】
上述のように複数の電池が配置された電池ケース5(すなわち、組電池)の冷却媒体導入口51から冷却媒体を導入すると、導入された冷却媒体の一部が第1の冷却媒体流路F1および第2の冷却媒体流路F2のそれぞれに流れ込み、残りは第1の隔壁54の第1の部材54aと第2の隔壁55の第1の部材55aとの間の隙間を通過する。
【0078】
第1の冷却媒体流路F1に流れ込んだ冷却媒体は、第1の電池配置領域A1に配置された電池B1間、電池B1と第1の隔壁の第3の部材54cとの間、または電池B1とケース本体50の第1の側面50aとの間を流れて電池B1を冷却する。そして、第1の電池配置領域A1を通過した冷却媒体は、ケース本体50の第4の側面50dに沿って流れ、第1の冷却媒体排出口52から排出される。
【0079】
同様に、第2の冷却媒体流路F2に流れ込んだ冷却媒体は、第2の電池配置領域A2に配置された電池B2間、電池B2と第2の隔壁55の第3の部材55cとの間、または電池B2とケース本体50の第1の側面50aとの間を流れて電池B2を冷却する。そして、第2の電池配置領域A2を通過した冷却媒体は、ケース本体50の第2の側面50bに沿って流れ、第2の冷却媒体排出口53から排出される。
【0080】
一方、第1の隔壁54の第1の部材54aと第2の隔壁55の第1の部材55aとの間の隙間を通過した冷却媒体の一部が第3の冷却媒体流路F3および第4の冷却媒体流路F4のそれぞれに流れ込み、残りは第3の隔壁56の第1の部材56aと第4の隔壁57の第1の部材57aとの間の隙間を通過する。
【0081】
第3の冷却媒体流路F3に流れ込んだ冷却媒体は、第3の電池配置領域A3に配置された電池B3間、電池B3と第1の隔壁54の第1の部材54aとの間、または電池B3と第3の隔壁56の第1の部材56aとの間を流れて電池B3を冷却する。そして、第3の電池配置領域A3を通過した冷却媒体は、第1の冷却媒体流路F1からの冷却媒体と合流し、第1の冷却媒体排出口52から排出される。
【0082】
同様に、第4の冷却媒体流路F4に流れ込んだ冷却媒体は、第4の電池配置領域A4に配置された電池B4間、電池B4と第2の隔壁55の第1の部材55aとの間、または電池B4と第4の隔壁57の第1の部材57aとの間を流れて電池B4を冷却する。そして、第4の電池配置領域A4を通過した冷却媒体は、第2の冷却媒体流路F2からの冷却媒体と合流し、第2の冷却媒体排出口53から排出される。
【0083】
一方、第3の隔壁56の第1の部材56aと第4の隔壁57の第1の部材57aとの間の隙間を通過し、第5の冷却媒体流路F5に流れ込んだ冷却媒体は、第5の電池配置領域A5に配置された電池B5間、電池B5と第3の隔壁56の第2の部材56bとの間、または電池B5と第4の隔壁57の第2の部材57bとの間を流れて電池B5を冷却する。そして、第5の電池配置領域A5を通過した冷却媒体は、整流部材58によって2つに分岐され、一方は第1の冷却媒体排出口52から、他方は第2の冷却媒体排出口53からそれぞれ排出される。
【0084】
図12は、図10に示した電池ケース5における電池の別の配置例(すなわち、組電池)を示している。図12に示した電池ケース5においては、図4の場合と同様に、各電池配置領域A1、A2、A3、A4、A5に配置された複数の電池B1、B2、B3、B4、B5のそれぞれは、その配列方向D1、D2、D3、D4、D5が隣接するケース本体50の側面および/または隣接する隔壁の部分に対して傾斜するように配置されており、電池B1を冷却する前の冷却媒体の流路の幅が徐々に減少するように構成されている。
【0085】
このように電池B1、B2、B3、B4、B5を配置することによって、電池をその配列方向D1、D2、D3、D4、D5が隣接するケース本体50の側面および/または隣接する隔壁の部分に対して略平行となるように配置した場合に比べて、各冷却媒体流路の圧力損失をより均一にすることができ、電池をより均一に冷却することができる。
【0086】
なお、図12に示したような、電池の配列方向D1、D2、D3、D4、D5を隣接するケース本体50の側面および/または隣接する隔壁の部分にに対して傾斜させた場合の効果は、図13にその断面図を示す電池ケース6のように、隔壁64、65の第2の部材64b、65b、およびケース本体60の第2の側面60bの内面の部分および第4の側面60dの内面の部分を、第1の隔壁64の第1の部材64aに垂直な方向に対して傾斜させることによっても得ることができる。
【0087】
また、図13に示した電池ケース6においては、第1の隔壁64の第1の部材64aの端部と、第2の隔壁65の第1の部材65aの端部との間の隙間の大きさは、第3の隔壁66の第1の部材66aの端部と、第4の隔壁67の第1の部材67aの端部との間の隙間の大きさよりも大きく構成されている。これにより、各冷却媒体流路F1、F2、F3、F4、F5の圧力損失をより均一にして、電池をより均一に冷却することができる。
【0088】
図14は、図13に示した電池ケース6における電池の配置例(すなわち、組電池)を示している。図14に示した電池ケース6においては、電池B1、B2、B3、B4は、その配列方向D1、D2、D3、D4がケース本体60の第1の側面60aの内面に垂直な方向に対して傾斜するように配置されている。このように、図14においては、第1の隔壁64の第2の部材64bおよび第2の隔壁65の第2の部材65bがケース本体60の第1の側面60aに垂直な方向に対して傾斜しているのみならず、電池の配列方向D1、D2、D3、D4についても、ケース本体60の第1の側面60aに垂直な方向に対して傾斜している。
【0089】
また、電池B5については、図12の場合と同様に、その配列方向D5が隔壁66、67の第2の部材66b、67bに垂直な方向に対して傾斜するように配列されており、中央の電池を境に電池の傾斜方向D5が変化している。
【0090】
図15においては、図13に示した電池ケース6における第5の流路F5に、2つの部材で構成された整流部材69が設けられた電池ケース6を示しており、整流部材69によって、冷却媒体の流れを整流させて、電池をより均一に冷却することができる。
【0091】
以上、本発明による電池ケースによって電池を効率的に冷却することができ、電池の性能を十分に発揮できることについて説明したが、電池の性能は、適正温度よりも高い場合のみならず、低い場合にも発揮することはできない。このような場合には、冷却媒体に代えて、加熱媒体(例えば、加熱空気)を冷却媒体導入口から導入することにより、電池を効率的に加熱することができる。よって、本発明による電池ケースは、電池を冷却する場合に限定されない。
【実施例
【0092】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0093】
(実施例1)
図5に示した電池ケース2に、図6に示したように電池を配置した。電池ケース2における流路の要所の寸法は図16に示すとおりとした。また、配置する電池は、長手方向の寸法が200mm、短手方向の寸法が90mmの箱型(直方体)とし、隣り合う電池同士の隙間の間隔が5mmとなるように配置した。
【0094】
幅が62mmの冷却媒体導入口11には、電池間の5mmの隙間を流れる冷却媒体32本分(第1の冷却媒体流路F1:11本、第2の冷却媒体流路F2:10本、第3の冷却媒体流路F3:11本)の冷却媒体が流れる。これに対して、第1の冷却媒体流路F1が分岐した後の流路では21本分の冷却媒体が流れるため、流路の圧力損失を均一にすべく、流路の幅が52.8mmとした。同様の目的で、第2の冷却媒体流路F2が分岐した後の流路の幅は40mmとした。
【0095】
また、分岐後の各流路では、入口の幅を40mm、最下流の電池での幅を15mmとすることにより、電池間の各隙間の流路の圧力損失が均一になるように構成した。ただし、分岐した第2の冷却媒体流路F2の入口の幅は、第1および第3の冷却媒体流路F1、F3の電池配置領域A1、A3に配置される電池が10個であるのに対して、電池配置領域A2に配置される電池は9個であるため、38.9mmとした。
【0096】
各冷却媒体流路F1、F2、F3の電池配置領域A1、A2、A3の下流側の流路についても、上流側の流路と同様に、流路の圧力損失が均一になるように、図16に示すような寸法で構成した。
【0097】
なお、ケース本体10の内部において、冷却媒体の流れ方向が変化するケース本体10の角部は、半径10mmのR形状とし、冷却媒体の流れが乱されないように構成した。
【0098】
(実施例2)
実施例1と同様に、電池ケースに電池を配置した。ただし、電池ケースとしては、図8に示した電池ケース4を用い、図9に示すように電池を配置した。電池ケース4の寸法は図17に示すとおりである。その他の条件は実施例1と全て同じである。
【0099】
(実施例3)
実施例1と同様に、電池ケースに電池を配置した。ただし、電池ケースとしては、図10に示した電池ケース5を用い、図11に示すように電池を配置した。電池ケース5の寸法は図18に示すとおりとした。また、配置する電池は、長手方向の寸法が200mm、短手方向の寸法が90mmの箱型(直方体)とし、隣り合う電池同士の隙間の間隔が5mmとなるように配置した。冷却媒体導入口51の幅は84.8mmとし、図17に示すように、内部の流路の幅を40mmとした。
【0100】
(実施例4)
実施例3と同様に、電池ケースに電池を配置した。ただし、電池ケースとしては、図13に示した電池ケース6を用い、図14に示したように電池を配置した。電池ケース6の寸法は図19に示すとおりとした。
【0101】
本実施例においては、各電池間の隙間を流れる冷却媒体の流速が等しくなるように流路を設計した。冷却媒体導入口61の幅を84.8mmとした場合、冷却媒体導入口61には、5mmの電池間の隙間を流れる冷却媒体72本分の冷却媒体が流れる。第1の冷却媒体流路F1および第2の冷却媒体流路F2が分岐した後(すなわち、第1の隔壁54の第1の部材54aの端部と第2の隔壁55の第1の部材55aの端部と間の隙間)には、電池間の5mmの隙間の50本分の冷却媒体が流れ、第3の隔壁56の第1の部材56aの端部と第4の隔壁57の第1の部材57aの端部と間の隙間には28本分の冷却媒体が流れる。そのため、流路の圧力損失を均一にするために、第1の隔壁54の第1の部材54aの端部と第2の隔壁55の第1の部材55aの端部と間の隙間は76.8mmとし、第3の隔壁56の第1の部材56aの端部と第4の隔壁57の第1の部材57aの端部と間の隙間は62.8mmとした。同様の目的で、各流路の幅が図19に示すように設定した。
【0102】
(実施例5)
実施例4と同様に、電池ケースに電池を配置した。ただし、電池ケースとしては、整流部材69を有する図15に示した電池ケース6を用い、図14に示したように電池を配置した。すなわち、図10に示した電池ケース5においては、冷却媒体導入口51から真っ直ぐに進行する冷却媒体は、第5の冷却媒体流路F5に配置された電池に突き当たり、左右にその流れの向きを変えるが、冷却媒体が電池に突き当たった際に、冷却媒体の流れが乱れる虞がある。そこで、図13に示した電池ケース6のように、冷却媒体が電池に突き当たる付近に整流部材69を配置することによって、冷却媒体の流れの乱れを抑制し、冷却媒体の左右への流れをよりスムーズにすることができる。
【0103】
整流部材69の形状としては、大きなR形状とし、流れの進行方向を直角に曲げられることが好ましい。さらに、整流部材69の背後にも冷却媒体を流通させることができるよう、整流部材69を2つの部材で構成し、これらの間に隙間を設けることが好ましい。そこで、本実施例では、図20に示すように、整流部材69を2つの部材69a、69bで構成し、各部材69a、69bに対して、冷却媒体の流れを曲げるR形状としてR80の形状を付与した。また、2つの部材69a、69bの間には10mmの隙間を設けた。その他の条件は実施例4と全て同じである。
【0104】
(比較例)
実施例3と同様に、電池ケースに電池を配置した。ただし、電池ケースとしては、図10に示した電池ケース5から、隔壁54、55、56、57を除去したものを用いた。その他の条件は実施例3と全て同じである。
【0105】
<電池の冷却性能の評価>
流体シミュレーションにより、実施例1~5および比較例について、電池ケースの冷却性能を評価した。具体的には、ナビエストークス有限要素法により電池ケースに配置された電池の冷却のシミュレーションを行い、電池ケース内の各流路における冷却媒体の流速分布および温度分布を求めた。その際、冷却媒体としては温度296.15Kの空気を用い、冷却媒体導入口から1m/秒の速度で流入させた。また、電池の表面発熱量を375W/m2とし、電池、隔壁、ケース本体の熱伝導率をゼロに設定した。このように、各部材の熱伝導率をゼロに設定することにより、冷却媒体への熱拡散のみによる冷却性能を評価することができる。
【0106】
実施例1~5および比較例について、電池ケース内の冷却媒体の流速分布および温度分布を図21~26にそれぞれ示す。ここで、(a)図は冷却媒体の流速分布、(b)図は冷却媒体の温度分布をそれぞれ示している。また、(b)図には、電池の長手方向側面の最高温度が最も低い電池の部分L、および最高温度が最も高い電池の部分Hが示されている。なお、この評価において、電池の短手方向側面の温度は、電池内部の熱伝導率をゼロとして設定して計算した都合上、解析誤差が大きくなるため、考慮していない。
【0107】
図21~25から明らかなように、実施例1~5については、全ての冷却媒体流路について、配置された電池間を流れる冷却媒体の流速が同様であり、電池が均一に冷却されていることが分かる。
【0108】
これに対して、比較例については、図26から明らかなように、各冷却媒体流路の下流に配置された電池については、電池を冷却する前の冷却媒体が他の流路において電池を冷却した後の冷却媒体と混合されてしまい、電池が効率的に冷却されていないことが分かる。また、冷却媒体は流れやすい流路を流れ、電池が均一に冷却されていないことが分かる。
【0109】
表1は、実施例1~5、比較例について、電池ケース内の電池の表面最高温度の最小値、最大値、最大値と最小値との差を示している。表1から明らかなように、実施例1~5と比較例とを比較すると、電池の表面最高温度の最小値についてはあまり差はないものの、比較例の最大値は3000Kを超えており、電池の冷却が不均一であることが分かる。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例1と実施例2とを比較すると、電池の表面最高温度の最大値、最小値および最大値と最小値との差はほぼ同じであり、図5に示した電池ケース2と図8に示した電池ケース4とでは、冷却媒体導入口および冷却媒体排出口の位置が異なっているものの、冷却性能はほぼ同程度であることが分かる。
【0112】
また、実施例3と実施例4とを比較すると、電池の表面最高温度の最小値は同程度であるものの、最大値については、実施例3については1000Kを超えているのに対して、実施例4では500Kに満たず、実施例4の方が、流路の圧力損失を均一にして電池をより均一に冷却できていることが分かる。
【0113】
さらに、実施例4と実施例5とを比較すると、実施例5の方が最大値と最小値との差が小さく、整流部材69によって冷却媒体を2つの流路により良好に分岐して、電池をより均一に冷却できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、多数の電池を効率的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0115】
1,2,3,4,5,6 電池ケース
10,20,30,40,50,60 ケース本体
10a,20a,30a,40a,50a,60a 第1の側面
10b,20b,30b,40b,50b,60b 第2の側面
10c,20c,30c,40c,50c,60c 第3の側面
10d,20d,30d,40d,50d,60d 第4の側面
10e 上面
10f 下面
11,21,31,41,51,61 冷却媒体導入口
12,22,32,42,43,52,53,62,63 冷却媒体排出口
13,14,23,24,33,34,43,44,54,55,56,57,64,65,66,67 隔壁
15 流路密閉部材
13a,14a,23a,24a,33a,34a,43a,44a,54a,55a,56a,57a,64a,65a,66a,67a 第1の部材
13b,14b,23b,24b,33b,34b,43b,44b,54b,55b,56b,57b,64b,65b,66b,67b 第2の部材
56c,66c 第3の部材
57c,67c 第4の部材
58,68,69 整流部材
1,A2,A3,A4,A5 電池配置領域
1,B2,B3,B4,B5 電池
1,D2,D3,D4,D5 電池配列方向
1,F2,F3,F4,F5 冷却媒体流路
図1
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