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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】O/W乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230725BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230725BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/362
A61K8/365
A61K8/72
A61K8/81
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018245411
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105112
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友美子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智則
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-226318(JP,A)
【文献】特表2014-500285(JP,A)
【文献】特開2001-114731(JP,A)
【文献】Violet Rose Body Cream, Natura Siberica, 2018年3月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022.10.28], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:5496933
【文献】Moisturizing Cream, Apicia, 2017年8月, Mintel GNPD [online],[検索日 2022.10.28], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:4959815
【文献】Night Cream, Aldi, 2018年7月, Mintel GNPD [online], [検索日 2022.10.28], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:5855341
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有し、成分(A)を0.1~5.5重量%、及び成分(C)を0.1~3.5重量%含有するO/W乳化化粧料。
成分(A):有機酸脂肪酸グリセリドであって、前記有機酸脂肪酸グリセリドは、脂肪酸モノグリセリド1モルに対し、有機酸が0.1~0.5モルのエステル反応物であり、有機酸がクエン酸もしくはコハク酸であり、且つ構成する脂肪酸が炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸である有機酸脂肪酸モノグリセリド。
成分(B):1種又は2種以上のpH調整剤。
成分(C):水溶性増粘剤。
【請求項2】
成分(A)強熱残分が合計3重量%以下である請求項1記載のO/W乳化化粧料。
【請求項3】
成分(B)がクエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸及びコハク酸ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1又は2記載のO/W乳化化粧料。
【請求項4】
成分(C)の水溶性増粘剤が粘土鉱物、天然高分子及びカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1~3いずれか記載のO/W乳化化粧料。
【請求項5】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有し、成分(A)を0.1~5.5重量%、及び成分(C)を0.1~3.5重量%含有する工程を有する、請求項1記載のO/W乳化化粧料の製造方法。
成分(A):有機酸脂肪酸グリセリドであって、前記有機酸脂肪酸グリセリドは、脂肪酸モノグリセリド1モルに対し、有機酸が0.1~0.5モルのエステル反応物であり、有機酸がクエン酸もしくはコハク酸であり、且つ構成する脂肪酸が炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸である有機酸脂肪酸モノグリセリド。
成分(B):1種又は2種以上のpH調整剤。
成分(C):水溶性増粘剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機酸と脂肪酸モノグリセリドのエステル反応によって得られる特定の有機酸脂肪酸モノグリセリド、pH調整剤及び水溶性増粘剤を含有し、経時安定性に優れ、のびが良く、保湿感が持続するO/W乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
O/W乳化化粧料は、肌の保湿に重要な水性及び油性成分を配合でき、乳液、クリーム、美容液など多岐に応用できる。さらにその使用感や性状も広範囲にアレンジできるため汎用性の高い剤型である。しかしO/W乳化化粧料は長期間の保存で分離しやすく、性状も変化しやすい。O/W乳化化粧料が分離しないよう連続相の粘性を高くするためには、高級アルコールや水溶性増粘剤を多量に配合する必要があり、O/W乳化化粧料のべたつきやのびの悪さ、流動性や硬さの経時的な上昇の原因となっていた。そのため経時安定性の向上と良好な使用感の両立は長年の課題であった。
【0003】
これらの改善策として有機酸脂肪酸モノグリセリドを用いた化粧料がある。これはのびが良く、保湿感が持続する感触が得られる一方で、有機酸脂肪酸モノグリセリドの分解によりO/W乳化化粧料の経時安定性が損なわれてしまうことが課題であった。そのため飽和脂肪酸モノ/ジグリセリドとクエン酸のエステル化合物を用い、高級アルコールを併用した技術(例えば、特許文献1。)や、ステアリン酸モノグリセリドとクエン酸のエステル化合物を用い、ヒドロゲルを併用した技術(例えば、特許文献2。)が開発されたが、これらはのびが良く、保湿感の持続に優れた、経時安定性の良い乳化物を与えるとされているが、経時安定性はO/W乳化化粧料の外観を確認するのみであり、性状の経時変化については言及されておらず、不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-501009号公報
【文献】特表2004-522765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はのびが良く、保湿感が持続しかつ分離せず、pHや硬度等の経時安定性に優れたO/W乳化化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意努力した結果、有機酸と脂肪酸モノグリセリドからなる有機酸脂肪酸モノグリセリド、pH調整剤及び水溶性増粘剤を含有するO/W乳化化粧料が良好な使用感と経時安定性が両立できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち本発明の詳細は以下の通りである。
(1)下記成分(A)、(B)、(C)を含有するO/W乳化化粧料。
成分(A):脂肪酸モノグリセリド1モルに対し、有機酸が0.05~1.5モル付加した有機酸脂肪酸グリセリドであって、構成する脂肪酸が炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸である有機酸脂肪酸モノグリセリド。
成分(B):1種又は2種以上のpH調整剤。
成分(C):水溶性増粘剤。
(2)下記成分(D)を1種又は2種以上含有する前記(1)記載のO/W乳化化粧料。
成分(D):グリセリンと炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸とのエステルである脂肪酸モノグリセリド。
(3)成分(A)を構成する脂肪酸が、炭素数18の飽和又は不飽和脂肪酸でありかつ構成する有機酸がクエン酸もしくはコハク酸である、前記(1)又は(2)記載のO/W乳化化粧料。
(4)成分(D)を構成する脂肪酸が、少なくとも1種以上の炭素数18の飽和又は不飽和脂肪酸で構成される前記(1)~(3)いずれか記載のO/W乳化化粧料。
(5)成分(A)及び(D)の強熱残分が合計3重量%以下である前記(1)~(4)いずれか記載のO/W乳化化粧料。
(6)成分(B)がクエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上である前記(1)~(5)いずれか記載のO/W乳化化粧料。
(7)成分(C)の水溶性増粘剤が粘土鉱物、天然高分子、カルボキシビニルポリマーから選択される1種又は2種以上である前記(1)~(6)いずれか記載のO/W乳化化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の特定の有機酸脂肪酸モノグリセリド、pH調整剤及び水溶性増粘剤を含有するO/W乳化化粧料はのびが良く、保湿感が持続しかつ、分離抑制やpH及び硬度等の経時安定性に優れているという利点があり、使用感の良さと経時安定性の良さが両立したO/W乳化化粧料を提供する事が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
(成分A)
本発明の有機酸脂肪酸モノグリセリドはグリセリンに脂肪酸と有機酸がエステル結合したものであり、通常有機酸と脂肪酸モノグリセリドのエステル反応によって得られる。
本発明の有機酸脂肪酸モノグリセリドを構成する有機酸は、特に限定されるものではないが、クエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸等が挙げられるが、化粧料の使用感の点からクエン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、クエン酸、コハク酸がより好ましい。また、脂肪酸モノグリセリド1モルに対する有機酸の付加モル数は、0.05~1.5モルが好ましく、0.1~0.5モルがより好ましい。
【0009】
本発明の有機酸脂肪酸モノグリセリドを構成する脂肪酸は、特に限定されるものではないが、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられ、スキンケア用途の使用ではミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が好ましく、さらにO/W乳化化粧料の経時安定性の点からステアリン酸、オレイン酸がより好ましい。
【0010】
有機酸脂肪酸モノグリセリドの配合割合は、O/W乳化化粧料の総量を基準として0.1~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。この範囲で用いると肌へののびの良さと保湿感の持続を充分に感じることができ、これより多いとべたつきや重さを感じやすくなってしまう。
【0011】
(成分B)
本発明のpH調整剤は、化粧料に通常用いることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クエン酸、コハク酸、リン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リン酸、炭酸等の酸性物質、そのナトリウム塩又はカリウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リジン、アルギニン等の塩基性物質が挙げられ、クエン酸、コハク酸、リン酸、酒石酸、乳酸、及びそのナトリウム塩が好ましく、有機酸脂肪酸モノグリセリドの分解を防ぎ、O/W乳化化粧料のpHを適正な範囲に保ち、経時安定性を向上させる目的から、クエン酸、コハク酸及びそのナトリウム塩がより好ましい。
【0012】
本発明のpH調整剤は前述された成分からなる群より選択される1種又は2種以上を組合せて用いる事ができる。2種以上用いる場合は、クエン酸、コハク酸及びそのナトリウム塩と水溶性増粘剤の中和に用いる塩基性物質と併用しても良い。
本発明のpH調整剤の配合割合はO/W乳化化粧料を10重量%含んだ水溶液でのpHを4.5~6.5に調整するに適した量であれば良く、水溶性増粘剤の中和にも同時に用いる事ができる。
【0013】
(成分C)
本発明の水溶性増粘剤は、化粧料に通常用いることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、粘土鉱物、天然高分子、半合成高分子、合成高分子等が挙げられ、粘土鉱物はタナクラクレイ、ヘクトライト、ベントナイト等、天然高分子はカラギーナン、寒天、キサンタンガム、グアーガム、クインスシード、ジェランガム、セルロース、ペクチン、ローカストビーンガム等、半合成高分子はヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等、合成高分子はアクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの水溶性増粘剤は本発明のO/W乳化化粧料において、経時での著しい硬度上昇を抑制する。またこれらの水溶性増粘剤のうち主鎖となる高分子鎖にアルキル鎖を導入したものがある。アルキル鎖が導入された水溶性増粘剤は、本発明においてO/W乳化化粧料の経時安定性試験で硬度の上昇が起こりやすい傾向がみられた。従って、本発明に用いる水溶性増粘剤は粘土鉱物、天然高分子、合成高分子が好ましく、化粧料の硬度の経時安定性のため、粘土鉱物、天然高分子、カルボキシビニルポリマーから1種又は2種以上を混合して用いる事がより好ましく、ベントナイト、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマーのいずれか又は混合して用いる事が最も好ましい。合成高分子の中でアクリル酸を骨格に持つ、酸型のものは水酸化カリウム等の塩基性物質にて中和して用いるか、あらかじめ中和されている製品を用いても良い。
【0014】
本発明の水溶性増粘剤の配合割合は剤型及び使用感に応じて、任意の割合で配合できるが、O/W乳化化粧料の総量を基準として0.1~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がより好ましい。この範囲で用いると硬度の経時安定性が向上し、かつべたつきのない使用感となる。
【0015】
(成分D)
本発明の脂肪酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に脂肪酸1分子がエステル結合したものである。
本発明の脂肪酸モノグリセリドを構成する脂肪酸は、特に限定されるものではないが、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられ、スキンケア用途の使用ではミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が好ましく、さらに有機酸脂肪酸モノグリセライドのO/W乳化化粧料中での安定性を確保する目的ではステアリン酸、オレイン酸がより好ましい。
【0016】
本発明の脂肪酸モノグリセリドは、1種又は2種以上を組合せて用いる事ができる。そのうち少なくとも1種は、前述のステアリン酸、オレイン酸を用いた脂肪酸モノグリセリドであることがより好ましい。
【0017】
本発明の脂肪酸モノグリセリドの配合割合は、肌へののびのよさ、化粧料の粘性及び硬さの観点からO/W乳化化粧料の総量を基準として0.1~10重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。この範囲より多くなると、硬度が高くなりすぎ、化粧料として適した使用感にならない。
【0018】
本発明の有機酸脂肪酸モノグリセリドと脂肪酸モノグリセリドは、硬度の経時安定性の点より、両成分の強熱残分を合計して3重量%以下にすることが好ましい。これより高いと経時で硬度の上昇が起こりやすくなってしまう。
本発明のO/W乳化化粧料には、本発明の効果に悪影響を与えない限度において、通常の化粧料に用いられる成分を使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、炭化水素油、エステル油、エーテル油、シリコーン油、トリグリセライド、植物油、ワックス、脂肪酸等の油性成分、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤、エタノール、多価アルコール等の水性成分、防腐剤、酸化防止剤、色素、香料、紫外線吸収剤、殺菌剤、美白剤、血行促進剤等の有効成分などが挙げられる。
【0019】
本発明のO/W乳化化粧料は通常の方法に従って調製することができ、特に限定されるものではないが、例えば、精製水に有機酸脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸モノグリセリド、界面活性剤、保湿剤等を加え、加熱したものに、油相成分をホモミキサーにて撹拌しながら乳化し、撹拌を続けながら水溶性増粘剤を加え、均一にした後、冷却し、O/W乳化化粧料を得る事ができる。
【0020】
本発明のO/W乳化化粧料の剤型は、特に限定されるものではないが、例えば、乳液状、クリーム状、美容液状等が挙げられる。
本発明のO/W乳化型化粧料の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、保湿を目的としたスキンケア、ボディケア製品の他、化粧下地、ファンデーション、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム等として適用する事ができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0021】
本発明の実施例及び比較例の組成とその評価結果を表1~9に示す。なお実施例等における数値は全量を100%としたときの重量%を示す。実施例等の調製方法、評価方法を以下に示す。
【0022】
(実施例1~42及び比較例1~9)
表1~5の配合割合に従い、水相、成分(A)、成分(D)をビーカーに量り込み、約80℃でよく撹拌し、均一分散させた相(I)を得た。油相を約80℃に加温し、均一混合させた。相(I)をホモミキサーにて6000rpmで撹拌させながら、油相を添加し乳化させた。その後成分(B)、成分(C)を加え、さらにホモミキサーにて6000rpmで撹拌を継続し、均一な溶液を得た。得られた溶液を手撹拌にて室温付近まで冷却し、本発明品1~42及び比較品1~9を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
本発明品1~42及び比較品1~9を用いて、以下に示す使用感及び経時安定性の評価を行い、その結果を表6~9に示した。なお本発明品1~42及び比較品1~9はすべて分離をしておらず、均一な外観だった。
【0029】
<使用感の評価>
試験例1(のびの良さ)
本発明品1~42及び比較品1~9を用いて、のびの良さを専門パネラー10名により評価を行った。O/W乳化化粧料を前腕内部に0.3g滴下し、もう片方の人差し指と中指を用いて、円を描くように伸ばし、塗布した。乳化化粧料をのばし始めから最初の3秒間で抵抗の有無を確認し、以下の基準で評価をした。
+:パネラー6名以上が抵抗なしと評価した
-:パネラー6名以上が抵抗ありと評価した
【0030】
試験例2(保湿感の持続性)
本発明品1~42及び比較品1~9を用いて、保湿感の持続性を専門パネラー10名により評価を行った。のびの良さと同様にO/W乳化化粧料を前腕内部に0.3g塗布し、充分馴染ませた。20分後に再度、塗布した箇所にもう一方の手の人差し指と中指を押し当て、水平方向に動かした際に、保湿感の有無を確認し、以下の基準で評価をした。
+:パネラー6名以上が保湿感ありと評価した
-:パネラー6名以上が保湿感なしと評価した
【0031】
<経時安定性の評価>
試験例3(pHの変化)
調製直後の本発明品1~42及び比較品1~9を用いて、それぞれの10重量%水溶液にし、25℃でpHを測定した。次に、50mLのスクリュー瓶に50g入れて50℃で1ヶ月保存した本発明品1~42及び比較品1~9を同条件でpHを測定し、以下の式(1)にてpHの変化率を算出し、以下の基準で評価をした。pHの測定は卓上型pHメータF-52(堀場製作所株式会社製)を用いた。
pHの変化率=50℃で1ヵ月保存した後に測定したpH/調製直後に測定したpH 式(1)
+:pHの変化率0.8以上1.2未満(pHの経時安定性が高い)
-:pHの変化率0.79以下もしくは1.2以上(pHの経時安定性が低い)
【0032】
試験例4(硬度の変化)
調製直後の本発明品1~42及び比較品1~9を用いて、25℃における硬度を測定した。次に、50mLのスクリュー瓶に50g入れて50℃で1ヶ月保存した実施例1~42及び比較例1~9を同条件で硬度を測定し、以下の式(2)にて硬度の変化率を算出し、以下の基準で評価をした。硬度の測定はFUDOHレオメーターRTC-3002D(株式会社レオテック製)を用い、アダプターは圧縮丸型(直径11.3mm)、アダプターの降下速度6cm/min.にて行った。
硬度の変化率=50℃で1ヵ月保存した後に測定した硬度/調製直後に測定した硬度 式(2)
++:硬度の変化率0.9以上1.3未満(硬度の経時安定性がとても高い)
+:硬度の変化率1.3以上1.5未満(硬度の経時安定性が高い)
-:硬度の変化率1.5以上(硬度の経時安定性が低い)
【0033】
試験例5(総合評価)
試験例1~4の結果を勘案し以下の基準で、本発明品1~42及び比較品1~9の総合評価を行った。
5:使用感に優れ、経時安定性は特に優れている。
4:経時安定性及び使用感に優れている。
3:経時安定性又は使用感のうちどちらかはあまり良くないが、問題なく使用できる範囲である。
2:経時安定性及び使用感ともにあまり良くないが、問題なく使用できる範囲である。
1:経時安定性及び使用感ともに劣る。
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
表6~8に示すように、有機酸脂肪酸モノグリセリド、pH調整剤、水溶性増粘剤を含有する本発明品1~42のO/W乳化化粧料は、のびが良く、保湿感の持続性を有し、経時安定性も外観のみならず、pH、硬度の変化が少なく優れていた。また、ステアリン酸モノグリセリド又はオレイン酸モノグリセリドを配合した本発明品17及び21~32の経時安定性は特に優れていた。一方、表9に示すように、有機酸脂肪酸モノグリセリドを含有しない比較品1と2は、のびが悪く、保湿感が感じられず、pH調整剤と水溶性増粘剤を同時に配合しない比較品3~8は本発明品1~42と比較し、pH又は硬度の経時安定性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の脂肪酸モノグリセリド、pH調整剤、水溶性増粘剤を用いたO/W乳化化粧料はのびが良く、保湿感が持続しかつ経時安定性に優れているという利点があり、使用感と経時安定性の良さが両立したO/W乳化化粧料を提供する事が可能となる。これは幅広いスキンケア・ボディケア製品に利用でき、産業上貢献大である。