(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】表示画面プロテクタ
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20230725BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20230725BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20230725BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C03C21/00 101
B32B17/06
C03C27/12 D
G09F9/00 302
(21)【出願番号】P 2018525680
(86)(22)【出願日】2016-11-16
(86)【国際出願番号】 US2016062128
(87)【国際公開番号】W WO2017087432
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ジェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ,ジョシュア マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ペザンスキー,ジョナサン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】レイマン,ケヴィン バリー
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン,アナンサナラヤナン
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-34107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C03B23/00-35/26
C03B40/00-40/04
C03C1/00-23/00
C03C27/00-29/00
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスの表示画面を覆う大きさの第1の強化された
ガラス基板を備えたデバイス表示画面プロテクタであって、前記第1の強化された
ガラス基板が、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ
(t)と、15μm以下の層の圧縮応力深さ(DOL)
の値と、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力(CT)値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する、デバイス表示画面プロテクタ。
【請求項2】
前記第1の強化された
ガラス基板が、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される、強化されたガラス基板であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項3】
前記第1の強化されたガラス基板が、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ
(t)、及び500MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、並びに2μm~12μmの範囲の層の
圧縮応力深さ
(DOL)の値を有する、化学的に強化されたガラス基板を備えたアフターマーケット画面プロテクタであることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項4】
前記第1の強化されたガラス基板に接着した第2のガラス基板をさらに含み、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する前記表面が外面であり、前記第1の強化されたガラス基板が、前記第2のガラス基板と接触する内面を有し、前記第1の強化されたガラス基板の前記外面及び内面が、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ(t)を画成することを特徴とする、請求項2又は3に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項5】
前記第1の強化されたガラス基板が
、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力(CS)値、及び2μm~15μmの範囲の層の
圧縮応力深さ(DOL)の値を有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項6】
前記第1の強化された
ガラス基板のCS/CT比が、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であり、前記DOLが10マイクロメートル以下であることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項7】
前記第1の強化された
ガラス基板のt/DOL及びCS/CTの比がいずれも、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項8】
前記画面プロテクタは、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~15μmの範囲の層の圧縮
応力深さ
(DOL)の値を有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項9】
前記第1の強化されたガラス基板が、アルミナ、B
2O
3、及びアルカリ金属酸化物を含み、かつ、3配位を有するホウ素カチオンを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項10】
前記第1の強化されたガラス基板が、少なくとも3重量キログラム(kgf)(約29.4N)のビッカース亀裂開始閾値を有することを特徴とする、請求項9に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項11】
前記第1の強化された
ガラス基板が、0.025mm~0.6mmの範囲の厚さ
(t)を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項12】
前記第1の強化された
ガラス基板が、0.025mm~0.6mmの範囲の厚さ
(t)を有し、前記表面が、少なくとも5Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【請求項13】
電子デバイスの表示画面の保護方法であって、前記電子デバイスの画面を、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ
(t)と、15μm以下の層の圧縮応力深さ(DOL)
の値と、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する第1の強化された
ガラス基板で覆う工程を含む、方法。
【請求項14】
前記電子デバイスがカバーガラスを含み、前記第1の強化された
ガラス基板がアフターマーケットガラス画面プロテクタであり、前記
覆う工程が、接着剤を用いて、前記第1の強化されたガラス基板を前記カバーガラスに貼り付ける工程を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の強化された
ガラス基板が、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~15μmの範囲の層の
圧縮応力深さ
(DOL)の値を有する、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の強化された
ガラス基板が、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~12μmの範囲の層の
圧縮応力深さ
(DOL)の値を有する、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の強化されたガラス基板が、接着剤を用いて第2のガラス基板に積層されて、前記電子デバイスの前記画面を覆う積層カバーガラスをもたらす、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前面、裏面、及び側面を有する筐体、
前記筐体の内部に少なくとも部分的に設けられている電気部品、
前記筐体の前記前面にある又はそれに隣接している
ディスプレイ、及び
前記
ディスプレイの上に配置された、請求項1~12のいずれか一項に記載の表示画面プロテクタ
を備えている、デバイス。
【請求項19】
前記
ディスプレイの上に配置されたカバーガラスをさらに備えており、前記表示画面プロテクタが、前記カバーガラスの上に配置されていることを特徴とする、請求項18に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2016年6月16日出願の米国仮特許出願第62/350969号、2016年4月8日出願の米国仮特許出願第62/319884号、及び2015年11月19日出願の米国仮特許出願第62/257449号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、デバイス表示画面プロテクタ、及びデバイスの表示画面を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子デバイス、例えば、携帯電話及びタブレットなどのハンドヘルド電子デバイスは、典型的にはガラス基板であり、典型的にはカバーガラスと称される、カバー基板を備えている。しかしながら、電子デバイスのカバーガラスの破損は、永続的な問題である。カバーガラスの破壊及び破損は、デバイスが動的又は静的負荷に供される場合にガラスの曲げによって生じる曲げ破壊、並びに、カバーガラスがアスファルト、コンクリート等の粗い表面に落下する場合のガラス表面における鋭い圧痕を原因とする損傷の導入によって生じる鋭い接触破壊を原因としうる。
【0004】
ガラス及び電子デバイスの製造業者は、鋭い接触破壊に対する耐性を提供するため、及び/又は、鋭い接触破壊を防止するための改善について研究してきた。幾つかの提案された改善策には、カバーガラスのコーティング、並びに、デバイスの落下時にカバーガラスが直接地面に接触するのを防止するベゼルが含まれる。しかしながら、審美的及び機能的要件の制約に起因して、デバイスの落下時にカバーガラスと地面との接触を完全に防ぐことは非常に困難である。また、カバーガラスの製造に用いられる、強イオン交換されたガラス上のハードコーティングは、その曲げ強度性能を悪化さる場合があることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの電子デバイスについて、カバーガラスのサバイバビリティの改善をもたらすために、電子デバイスの表示画面を保護する、画面プロテクタ及び方法を提供することは、望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、電子デバイスの表示画面を覆う大きさの第1の強化された基板を備えたデバイス表示画面プロテクタに関し、該第1の強化された基板は、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する。
【0007】
本開示の別の態様は、電子デバイスの表示画面を保護する方法に関し、該方法は、電子デバイスの画面を、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する、第1の強化された基板で覆う工程を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、前面、裏面、及び側面を有する筐体;筐体の内部に少なくとも部分的に設けられている電気部品;筐体の前面又はそれに隣接した表示;及び、表示の上に配置された本明細書に記載される表示画面プロテクタを備えたデバイスに関する。
【0009】
本明細書に取り込まれてその一部を構成する添付の図面は、以下に記載される幾つかの実施形態を例証するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】複数の亀裂を有する表面を有する画面プロテクタの一実施形態の断面図
【
図2A】強化された第1の基板の一実施形態を示す図
【
図3】ともに積層された
図2A及び2Bの基板を示す図
【
図4】第2の基板に貼り付けられた
図2Aの強化された外部基板を示す図
【
図5】ハンドヘルドデバイスに貼り付けられた、
図2Aの強化された外部基板を備えたデバイスを示す図
【
図6】湾曲したカバー基板を有するハンドヘルドデバイスに貼り付けられた強化された外部基板を備えたデバイスを示す図
【
図7】ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値データを示すグラフ
【
図10】タンブリング後における、滑らかな表面での平面落下破壊高さのデータを示すグラフ
【
図11】180グリットのアルミナサンドペーパー表面での平面落下破壊高さのデータを示すグラフ
【
図12】180グリットのアルミナサンドペーパー表面での30度の角度の落下破壊高さのデータを示すグラフ
【
図13】本明細書に開示される強化された基板のいずれかを組み込む、例示的な電子デバイスの平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の開示に記載される構造又は処理工程の詳細に限られないことが理解されるべきである。ここに提供される本開示は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することが可能である。
【0012】
本開示の実施形態は、例えば、ハンドヘルドデバイス又はハンドヘルド電子デバイスなどの電子デバイスの表示画面を覆うように寸法決めされかつ構成された第1の強化されたガラス基板を含む、デバイス表示画面プロテクタを提供する。
【0013】
本明細書に記載される1つ以上の実施形態は、電子デバイス用の筐体の一部分に関係する。ある実施形態では、筐体は、本明細書でさらに説明されるように中央張力値及びヌープ引っ掻き耐性値を有する強化されたガラス基板でありうる、外側部材を含みうる。強化されたガラス基板は、電子デバイス用の筐体の他の部分に対して固定することができる。電子デバイスはポータブルであってよく、幾つかの事例では、ハンドヘルドでありうる。1つ以上の実施形態によれば、「ハンドヘルドデバイス」とは、表示画面を有するポータブル電子デバイスのことを指す。このようなハンドヘルドデバイスの非限定的な例としては、携帯電話、読取デバイス、音楽デバイス、視聴デバイス、及びナビゲーションデバイスが挙げられる。このようなデバイスの非限定的な例としては、iPhone(登録商標)、Nook(登録商標)、iPod(登録商標)、iPad(登録商標)、Droid(登録商標)、Kindle(登録商標)、及びGPSナビゲーションシステムがある。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される画面プロテクタ及び強化されたガラス基板はまた、比較的大きいフォームファクタ電子デバイス(例えば、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ディスプレイ、モニタ、テレビ等)を含むがこれらに限られない他の電子デバイス用のディスプレイの被覆に用いることもできる。
【0014】
本明細書で用いられる基板は、非晶質基板又はガラスセラミック基板などのガラスをベースとした基板でありうる。1つ以上の実施形態に従う非晶質基板は、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、及びアルカリアルミノボロシリケートガラスから選択されうる。1つ以上の実施形態では、基板はガラスであり、該ガラスを、例えば、加熱強化されたテンパードガラス、又は化学的に強化されたガラスなどに強化することができる。1つ以上の実施形態では、強化されたガラス基板は、化学的に強化されたガラスの表面から、0.5μm~50μmの深さ範囲の層の圧縮応力深さ(DOL)まで、化学的に強化されたガラス内に延在するCSを有する圧縮応力(CS)層を有している。1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、Corning Gorilla(登録商標)ガラスなどの化学的に強化されたガラス基板である。
【0015】
強化されたガラス基板では、表面に圧縮応力(CS)が存在し、かつ、ガラスの中央に張力(中央張力又はCT)が存在する、応力プロファイルが存在する。1つ以上の実施形態によれば、画面プロテクタは、熱的に強化されても、化学的に強化されてもよく、あるいは、熱的強化と化学的強化の組合せであってもよい。本明細書で用いられる場合、「熱的強化」とは、基板の強度を改善するために熱処理された基板のことを指し、「熱的強化」には、例えばテンパードガラス及び加熱強化されたガラスなど、テンパード基板及び加熱強化された基板が含まれる。テンパードガラスは、ガラス内に、より高い表面圧縮及び/又はエッジ圧縮を生じる、加速された冷却プロセスを伴う。表面圧縮の程度に影響を与える因子には、風冷温度、容積、及び、少なくとも10,000ポンド/平方インチ(psi)(約68.95MPa)の表面圧縮を生じる他の変数が含まれる。テンパードガラスは、典型的には、アニールした又は未処理のガラスより4~5倍強い。加熱強化されたガラスは、テンパードガラスよりも低い示差冷却(differential cooling)によって生成され、これは、結果的に、表面に、より低い圧縮強度を生じ、加熱強化されたガラスは、アニールした又は未処理のガラスのほぼ2倍強い。
【0016】
化学的に強化されたガラス基板では、ガラスネットワークが著しく緩和されうる温度未満の温度において、より小さいイオンをより大きいイオンと置換することによって、ガラスの表面全体にわたってイオンの分布が生じ、結果的に応力プロファイルがもたらされる。取り込まれる大量のイオンによって、表面に圧縮応力(CS)が生じ、かつ、ガラスの中央に張力(中央張力又はCT)が生じる。圧縮応力は、以下の近似的関係(等式1)で、中央張力に関係する:
【0017】
【0018】
式中、厚さは、強化されたガラス基板の全厚であり、DOLは、交換の深さである。交換の深さは、強化されたガラス又はガラスセラミック基板内における、イオン交換プロセスによって促進されたイオン交換が生じる深さ(すなわち、ガラス基板の表面からガラス又はガラスセラミック基板の内部領域までの距離)として説明することができる。特に指定しない限り、中央張力CT及び圧縮応力CSは、本明細書では、メガパスカル(MPa)で表されるが、厚さ及び層の深さDOLは、ミリメートル又はμm(マイクロメートル)で表される。CTは、3つのパラメータ、すなわちCS、DOL、及び厚さによって決まることが認識されよう。一例として、例えば30MPa以下のCT値を維持するためには、DOLが増加するにつれて、CSを低下させる必要がある、若しくは、CTを30MPa以下に維持するために、厚さを増加させる必要がある。CS及びDOLは、有限会社折原製作所(日本国所在)製造のFSM-6000などの市販の機器を使用する、表面応力計(FSM)などの当技術分野で知られている手段を使用して測定される。表面応力の測定は、ガラスの複屈折に関する応力光学係数(SOC)の正確な測定、並びに、材料屈折率に依拠する。SOCは、次に、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、名称を「ガラスの応力-光学係数の測定のための標準試験方法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」とするASTM規格C770-16に記載される手順C(ガラスディスク法)に準拠して測定される。
【0019】
これより
図1を参照すると、第1の強化された基板10を含む画面プロテクタの断面図の例示的な実施形態が示されている。第1の強化された基板10は、複数の亀裂を有するように示されており、表面下損傷によって第1の強化された基板10の破壊がいかにして生じうるかが例証されている。第1の強化された基板10は、表面における圧縮応力領域60、及び中央張力領域80を有する。層の圧縮深さは、
図1では基板10のそれぞれの側にDOLとして示されている。ガラスの中央張力領域80内には及んでいない、第1の強化された基板10の圧縮応力領域60内の小さい亀裂50が、ガラスの中央張力領域80内へと侵入する大きい亀裂90とともに示されている。特徴、すなわち小さい亀裂50及び大きい亀裂90のサイズは、概念を説明するために誇張されていることが認識されよう。損傷がDOLを超えて延在する場合、かつ、中央張力の大きさが十分に高い場合には、傷は、材料の臨界応力拡大レベルに達するまで伝播し、最終的にはガラスを破壊する。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、CTは、同じ圧縮応力の大きさ及び圧縮応力のDOLを維持しつつ、化学的に強化されたガラス基板の厚さを変更することによって変動させることができる。1つ以上の実施形態では、CTを変動させるために、一定の所望の厚さにおいて、CS及び/又はDOLを低下させてもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、第1の強化されたガラス基板は、デバイスのユーザに晒される外面55を有し、該外面55は、例えば、デバイスのユーザが該デバイスを落とした時など、鋭い接触損傷の影響を受けやすい。1つ以上の実施形態によれば、第1の強化された基板10は、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、又は化学的に強化かつ熱的に強化されたガラス基板でありうる。「熱的強化」には、上述のテンパードガラス及び加熱強化されたガラスが含まれる。1つ以上の実施形態によれば、「化学的強化」とは、典型的にはイオン交換によって、表面がイオンで処理されて、ガラス基板内に圧縮応力が生じたガラスのことを指す。
【0022】
第1の強化されたガラス基板は、さまざまな異なるプロセスを使用して提供されうる。例えば、例示的なガラス基板の成形方法には、フロートガラス法、並びに、フュージョンドロー及びスロットドローなどのダウンドロー法が含まれる。フロートガラス法で調製されたガラス基板は、滑らかな表面によって特徴づけることができ、均一な厚さは、溶融金属、典型的にはスズ床の上に溶融ガラスを浮かべることによって製造される。例となるプロセスでは、溶融スズ床の表面に供給される溶融ガラスがフロートガラスリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるにつれて、温度は、ガラスリボンがスズからローラ上へと持ち上げることができる固体ガラス基板へと凝固するまで、徐々に低下する。ひとたび浴から出ると、ガラス基板はさらに冷却され、アニールされて、内部応力が低下する。
【0023】
ダウンドロー法は、比較的清潔な表面を有する、均一な厚さを有するガラス基板を生成する。ガラス基板の平均曲げ強度は、表面傷の量及び大きさによって制御されることから、接触が最小限に抑えられた清潔な表面は、より高い初期強度を有する。この高強度ガラス基板が次にさらに強化(例えば化学的に)されると、結果的に得られる強度は、ラップ及び研磨されている表面を有するガラス基板のものよりも高くなりうる。ダウンドローガラス基板は、約2mm未満の厚さへと延伸することができる。加えて、ダウンドローガラス基板は、費用のかかる研削及び研磨をせずに、その最終的な用途に使用することができる、非常に平らで滑らかな表面を有する。
【0024】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融ガラス原材料を受け入れるためのチャネルを有するドロータンクを使用する。チャネルは、該チャネルの両側にチャネルの長さに沿って上部が開放されている堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスは堰から溢れ出る。重力に起因して、溶融ガラスは、2つの流れるガラスフィルムとして、ドロータンクの外面を流れ落ちる。ドロータンクのこれらの外面は、それらがドロータンクの下方のエッジで接合するように、下方かつ内向きに延在する。2つの流れるガラスフィルムは、このエッジで接合して融着し、単一の流れるガラス基板を形成する。フュージョンドロー方法は、チャネル上を流れる2つのガラスフィルムがともに融着することから、結果的に得られるガラス基板の外面のいずれも、装置のいずれかの部分と接触しないという利点を提供する。よって、フュージョンドローガラス基板の表面特性は、このような接触の影響を受けない。
【0025】
スロットドロー法は、フュージョンドローの方法とは異なっている。スロットドロー法では、溶融原材料ガラスはドロータンクに供給される。ドロータンクの底部は、スロットの長さに延在するノズルを有する開放スロットを有する。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続した基板としてアニール領域内へと下方に延伸される。
【0026】
幾つかの実施形態では、ガラス基板に用いられる組成物は、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、及びSnO2を含む群から選択される、0~2モル%の少なくとも1つの清澄剤とともにバッチ化される。
【0027】
ひとたび成形されると、ガラス基板は、強化されて、強化ガラス基板を形成し、第1の強化された基板10を提供することができる。ガラスセラミック基板も、ガラス基板と同じ方法で強化することができることに留意すべきである。本明細書で用いられる場合、用語「強化された基板」とは、例えば、ガラス又はガラスセラミック基板の表面において、より大きいイオンをより小さいイオンとイオン交換することによって、化学的に強化されているガラス基板又はガラスセラミック基板のことを表しうる。しかしながら、上述のように、熱テンパリング又は加熱強化などの当技術分野で知られている熱強化方法を使用して、強化されたガラス基板を形成することができる。幾つかの実施形態では、基板は、化学的強化プロセスと熱的強化プロセスの組合せを使用して強化されうる。
【0028】
本明細書に記載される強化された基板は、イオン交換プロセスによって化学的に強化されてもよい。典型的にはガラス又はガラスセラミック基板を所定の時間、溶融塩浴に浸漬することによるイオン交換プロセスでは、ガラス又はガラスセラミック基板の表面又はその近くのイオンが、塩浴中の、より大きい金属イオンと交換される。一実施形態では、溶融塩浴の温度は約360~450℃であり、所定の時間は約2~約14時間である。ガラス又はガラスセラミック基板へのより大きいイオンの取り込みは、表面近くの領域又は基板の表面及びそれに隣接した領域に圧縮応力を生成することによって基板を強化する。対応する引張応力が、基板の表面からある距離における一又は複数の中央領域内に誘起されて、圧縮応力の均衡が保たれる。この強化プロセスを使用するガラス又はガラスセラミック基板は、化学的に強化された又はイオン交換されたガラス又はガラスセラミック基板として、より詳細に説明することができる。
【0029】
一例において、強化されたガラス又はガラスセラミック基板のナトリウムイオンは、硝酸カリウム塩浴などの溶融浴に由来するカリウムイオンで置換されるが、ルビジウム又はセシウムなどのより大きい原子半径を有する他のアルカリ金属イオンは、ガラス内のより小さいアルカリ金属イオンと置換することができる。特定の実施形態によれば、ガラス又はガラスセラミック内のより小さいアルカリ金属イオンをAg+イオンと置換して、抗菌効果をもたらすことができる。同様に、限定はしないが、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換プロセスに用いることもできる。
【0030】
ガラスネットワークが著しく緩和されうる温度未満の温度において、より小さいイオンをより大きいイオンで置換することにより、強化された基板の表面にわたってイオンの分布が生じ、結果的に応力プロファイルがもたらされる。取り込まれる大量のイオンによって、表面に圧縮応力(CS)が生じ、強化された基板の中央に張力(中央張力又はCT)が生じる。圧縮応力は、次の関係(等式2)で中央張力に関係する:
CS=(CT×(t-2DOL))/DOL
式中、tは強化されたガラス又はガラスセラミック基板の全厚であり、層の圧縮深さ(DOL)は交換の深さである。交換の深さは、イオン交換プロセスによって促進されたイオン交換が生じる、強化されたガラス又はガラスセラミック基板内の深さ(すなわち、ガラス基板の表面からガラス又はガラスセラミック基板の中央領域までの距離)として説明することができる。
【0031】
1つ以上の実施形態では、第1の強化された基板は、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、又は800MPa以上など、300MPa以上の表面圧縮応力を有しうる。1つ以上の実施形態では、第1の強化された基板は、300MPa~900MPaの範囲、500MPa~900MPaの範囲、600MPa~900MPaの範囲、400MPa~900MPaの範囲、450MPa~850MPaの範囲、450MPa~800MPaの範囲、450MPa~750MPaの範囲、並びに、上記値の間のすべての範囲及び部分範囲の圧縮応力値を有しうる。強化されたガラス又はガラスセラミック基板は、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、又は4μm以下の層の圧縮深さを有しうる。圧縮深さの下限は、0.5μm又は1μm又は2μmでありうる。中央張力は、0~20MPa、又は5~20MPa、又は5~15MPa、又は10~20MPa、又は10~15MPa、又は15~20MPaの範囲、並びに、上記値の間のすべての範囲及び部分範囲でありうる。1つ以上の特定の実施形態では、第1の強化された基板は、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値及び20μm~100μmの範囲の層の深さの値;300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値;又は、500MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値及び2μm~12μmの範囲の層の深さの値を有する。他の特定の実施形態では、第1の強化されたガラス基板は、400MPa~800MPaの範囲の圧縮応力値と、例えば0.1mm~0.6mmなど、0.05mm~0.7mmの範囲の厚さと、1μm~20μm、1μm~15μm、1μm~14μm、1μm~13μm、1μm~12μm、1μm~11μm、1μm~10μm、1μm~9μm、1μm~8μm、1μm~7μm、1μm~6μm、及び1μm~5μmの範囲の層の深さの値と、0~20MPa、1~20MPa、1~19MPa、1~18MPa、1~17MPa、1~16MPa、1~15MPa、1~14MPa、1~13MPa、1~12MPa、1~11MPa、及び1~10MPaの範囲の中央張力値、並びに、CS、厚さ、DOL、及びCTについての上記値の間のすべての範囲及び部分範囲を有しうる。1つ以上の実施形態によれば、第1の強化されたガラス基板は、少なくとも3N、少なくとも3.5N、少なくとも4N、少なくとも4.5N、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも7N、少なくとも8N、少なくとも9N、又は少なくとも10Nのヌープ引っ掻き耐性を有する。本明細書で用いられる場合、「少なくとも3N(及び他の引っ掻き耐性値)のヌープ引っ掻き耐性」とは、本明細書にさらに記載されるヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値試験によって得られる最小のヌープ引っ掻き耐性値を指す。よって、ヌープ引っ掻き耐性の決定については、ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値試験は、複数の引っ掻き測定(例えば、5回)を含み、「少なくとも3Nのヌープ引っ掻き耐性」とは、5回の測定から得られた最小値を指す。
【0032】
1つ以上の実施形態では、第1の強化された基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さと、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値と、20μm~100μmの範囲の層の深さの値とを有する、アフターマーケット画面プロテクタである。幾つかの実施形態では、アフターマーケット画面プロテクタは、2つ以上の基板の積層体でありうる。特定の実施形態では、第1の強化されたガラス基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さと、400MPa~800MPの範囲の圧縮応力値と、例えば、1μm~25μm、1μm~20μm、1μm~15μm、1μm~14μm、1μm~13μm、1μm~12μm、1μm~11μm、1μm~10μm、1μm~9μm、1μm~8μm、1μm~7μm、1μm~6μm、及び1μm~5μmの範囲など、1μm~50μmの範囲の層の深さの値と、0~20MPa、1~20MPa、1~19MPa、1~18MPa、1~17MPa、1~16MPa、1~15MPa、1~14MPa、1~13MPa、1~12MPa、1~11MPa、及び1~10MPaの範囲の中央張力値、並びに、厚さ、CS、DOL、及びCTについての上記値の間のすべての範囲及び部分範囲を有する、アフターマーケット画面プロテクタである。1つ以上の実施形態では、第1の強化された基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さと、500MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値と、例えば、1μm~25μm、1μm~20μm、1μm~15μm、1μm~14μm、1μm~13μm、1μm~12μm、1μm~11μm、1μm~10μm、1μm~9μm、1μm~8μm、1μm~7μm、1μm~6μm、及び1μm~5μmの範囲など、1μm~50μmの範囲の層の深さの値と、0~20MPa、1~20MPa、1~19MPa、1~18MPa、1~17MPa、1~16MPa、1~15MPa、1~14MPa、1~13MPa、1~12MPa、1~11MPa、及び1~10MPaの範囲の中央張力値、並びに、厚さ、CS、DOL、及びCTについての上記値の間のすべての範囲及び部分範囲を有する、アフターマーケット画面プロテクタである。1つ以上の実施形態によれば、第1の強化されたガラス基板は、少なくとも3N、少なくとも3.5N、少なくとも4N、少なくとも4.5N、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも7N、少なくとも8N、少なくとも9N、又は少なくとも10Nのヌープ引っ掻き耐性を有する。特定の実施形態では、第1の強化されたガラス基板は、91%を超える、380~2000nmの範囲における透過率を有する。
【0033】
1つ以上の特定の実施形態では、第1の強化された基板は、摩耗、引っ掻き、圧痕などによって生じる損傷に対して高度の耐性を有する、イオン交換可能なガラスを含む。特定の実施形態では、ガラスは、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を含み、かつ、3配位を有するホウ素カチオンを含む。ガラスは、イオン交換されると、少なくとも3重量キログラム(kgf)(約29.4N)、少なくとも4重量キログラム(kgf)(約39.2N)、少なくとも5重量キログラム(kgf)(約49.0N)、少なくとも6重量キログラム(kgf)(約58.8N)、少なくとも7重量キログラム(kgf)(約68.6N)、少なくとも8重量キログラム(kgf)(約78.4N)、少なくとも9重量キログラム(kgf)(約88.2N)、又は少なくとも10重量キログラム(kgf)(約98.0N)のビッカース亀裂開始閾値を有する。
【0034】
圧痕破壊閾値(又はビッカース亀裂開始閾値)は、ビッカース圧子で測定される。圧痕破壊閾値は、ガラスの圧痕損傷耐性の尺度である。試験は、ビッカース圧子と称される、136°の面間角度の正四角錐形状のダイヤモンド圧子の使用を包含する。ビッカース圧子は、標準的な微小硬さ試験(参照番号ASTM-E384-11)に用いられるものと同じである。目的とするガラスのタイプ及び/又は系統を代表して、最低5つの被検物が選択される。各被検物について、5つの圧痕の複数セットが被検物表面に導入される。5つの圧痕の各セットは、所与の荷重で導入され、各個々の圧痕は、被検物のエッジに対して最低5mm分離され、5mmを超えて近づかない。50kg/分の圧子の負荷/除荷速度を≧2kgの試験荷重に使用した。<2kgの試験荷重については、5kg/分の速度が用いられる。目標荷重での10秒の滞留(すなわち、保持)時間が用いられる。機械は、滞留期間中の荷重制御を維持する。少なくとも12時間の期間の後に、圧痕は、500倍の倍率の化合物顕微鏡を使用して、反射光の下で検査される。次に、メジアン/半径方向亀裂又は被検物破砕の有無が、各圧痕について記録される。この試験はメジアン/半径方向亀裂の形成又は被検物破砕に関係することから、横方向亀裂の形成は閾値挙動を示す指標とはみなされないことに留意されたい。被検物の閾値は、該閾値を満たす個々の圧痕の50%超をブラケットする(bracket)、最低の連続圧痕負荷の中間点として定義される。例えば、個々の被検物内において、5kg荷重で誘起される5つの圧痕のうちの2つ(40%)が閾値を超えており、6kg荷重で誘起される5つの圧痕のうちの3つ(60%)が閾値を超えているならば、被検物の閾値は、5kgと6kgの中間点、又は5.5kgとして定められる。試料の平均閾値は、すべての個々の被検物閾値の算術平均として定められる。平均と併せて、被検物のすべての中間点の範囲(最低値から最高値まで)を各試料について報告する。試験前、試験中、及び試験後の環境は、ガラス被検物の疲労(応力腐食)挙動の変動を最小限に抑えるために、理想的には、23±2℃及び50±5%RHに制御されるべきである。精通していない組成物又は系統を最初に試験する場合、必要とされる圧痕荷重及びブラケット増分は、しばしば、「反復探索」を行うことによって決定しなければならないことに留意すべきである。ひとたび試料の性能に精通したら、将来の試験は、予想される閾値付近の荷重だけを試験することで合理化することができ、次に、必要な場合のみ、さらなる圧痕負荷を「補充(filling in)」することができる。
【0035】
1つ以上の実施形態によれば、第1の強化された基板は、その内容全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第8,951,927号明細書に記載されるガラスを含む。このようなガラスは、この開示の1つ以上の実施形態によれば、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここで、R2OはNa2Oを含む);Al2O3(ここで、Al2O3(モル%)<R2O(モル%)である);及び、B2O3(ここで、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%である)を含む。幾つかの実施形態では、このようなガラスはまた、66~74モル%のSiO2;≧2.7モル%のB2O3;9~22モル%のAl2O3;9~20モル%のNa2O;及び、少なくとも約0.1モル%の、MgO及びZnOのうちの少なくとも一方を含み、ここで、R2O+CaO+SrO+BaO-Al2O3-B2O3<0である。特定の実施形態では、第1の強化された基板は、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここで、R2OはNa2Oを含む);Al2O3;及び、B2O3(ここで、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%である)を含むガラスを含み、ここで、ガラスは、該ガラスが約25キロポアズ~約40キロポアズの範囲の粘度を有する温度に等しい、ジルコン破壊温度を有する。特定の実施形態では、第1の強化された基板は、少なくとも3重量キログラム(kgf)(約29.4N)、少なくとも4重量キログラム(kgf)(約39.2N)、少なくとも5重量キログラム(kgf)(約49.0N)、少なくとも6重量キログラム(kgf)(約58.8N)、少なくとも7重量キログラム(kgf)(約68.6N)、少なくとも8重量キログラム(kgf)(約78.4N)、少なくとも9重量キログラム(kgf)(約88.2N)、又は少なくとも10重量キログラム(kgf)(約98.0N)のビッカース亀裂開始閾値を有するイオン交換されたガラスを含むガラスを含み、該ガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここで、R2OはNa2Oを含む);Al2O3(ここで、Al2O3(モル%)<R2O(モル%)である);B2O3(ここで、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%である)を含む。幾つかの実施形態では、第1の強化された基板は、少なくとも3重量キログラム(kgf)、少なくとも4重量キログラム(kgf)(約39.2N)、少なくとも5重量キログラム(kgf)(約49.0N)、少なくとも6重量キログラム(kgf)(約58.8N)、少なくとも7重量キログラム(kgf)(約68.6N)又は少なくとも8重量キログラム(kgf)(約78.4N)、少なくとも9重量キログラム(kgf)(約88.2N)、又は少なくとも10重量キログラム(kgf)(約98.0N)のビッカース亀裂開始閾値を有するイオン交換されたガラスを含むガラスを含み、該ガラスは、66~74モル%のSiO2;≧2.7モル%のB2O3;9~22モル%のAl2O3;9~20モル%のNa2O;及び、少なくとも約0.1モル%のMgO及びZnOのうちの少なくとも一方を含み、ここで、R2O+CaO+SrO+BaO-Al2O3-B2O3<0である。特定の実施形態では、第1の強化された基板は、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここで、R2OはNa2Oを含む);Al2O3;及び、少なくとも2.7モル%のB2O3含有配位ホウ素カチオンを含むガラスを含み、ここで、B2O3-(R2O-Al2O3)≧3モル%である。特定の実施形態では、これらのガラスは、少なくとも0.1モル%の、MgO及びZnOのうちの少なくとも一方を含む。特定の実施形態では、これらのガラスは、約2.7モル%~約4.5モル%のB2O3を含む。非常に特殊な実施形態では、第1の強化された基板は、66~74モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここで、R2OはNa2Oを含む);9~22モル%のAl2O3;少なくとも2.7モル%のB2O3(ここで、B2O3-(R2O-Al2O3)≧3モル%である);及び、少なくとも0.1モル%の、MgO及びZnOのうちの少なくとも一方を含むガラスを含む。1つ以上の実施形態によれば、ガラス中に存在するB2O3の少なくとも50%は、3配位ホウ素カチオンを含む。
【0036】
摩耗、引っ掻き、及び圧痕によって生じる損傷に対する高度の耐性を有し、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を含み、かつ、直上に記載される3配位を有するホウ素カチオンを含む、イオン交換されたガラスは、約20μm未満、約15μm未満、又は約10μm未満の層の圧縮深さ(DOL)と、1mm未満、0.8mm未満、0.7mm未満、0.6mm未満、及び0.5mm未満の厚さとを有する。
【0037】
引っ掻き耐性は、横方向引っ掻き閾値の限界及び引っ掻きの可視性を理解するために、ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値試験によって決定することができる。ヌープ圧子は、標準的な微小硬さ試験(参照番号ASTM-E384-11)に用いられるものと同じである。引っ掻き耐性試験で使用されるヌープ圧子は、ASM国際ハンドブック第8巻:機械的試験及び評価(ASM International Handbook Volume 08: Mechanical Testing and Evaluation)に示されるように、公称130°及び172.5°の夾角で構成される。
【0038】
横方向引っ掻き閾値を決定するために、ガラス組成物あたり最低でも5つの試料を使用する。0.4mm/秒の速度で生成される、荷重あたり5つの引っ掻き傷で、一定荷重の引っ掻き傷が生成される。引っ掻き傷の長さは約10mmである。5つの引っ掻き傷の各セットが、所与の垂直荷重で導入され、各個々の引っ掻き傷は、被検物のエッジに対して最低3mm分離され、3mmを超えて近づかない。測定単位はニュートン(N)である。負荷及び除荷速度は14g/秒を超えない。トラバース速度及び距離は、10.0mmの距離で0.4±0.025mm/秒である。トラバース方向は、圧子の長軸に対して±2°以内で平行である。試験を実施する設備は、Bruker(旧CETR)、Nanovea、CSM機器及び他のものから得ることができる。被検物の表面は、残留物又はフィルムが残らないように注意深く、引っ掻きの前又は後に、非研磨布(任意選択的にアルコールで湿らせてもよい)又は空気キャニスターを使用して優しく清掃される。ダイヤモンドの先端は、これも残留物又はフィルムが残らないように、各引っ掻き傷の間をアルコールで湿らせた非研磨布を使用して清掃される。履歴が未知の試料については、開始負荷は0.25Nであり、1Nの負荷に達するまで0.25のデルタで増加させ、>1Nでは、デルタの増加は1Nであり、10Nを超えると、デルタの増加は2Nである。負荷は、0.25Nから開始して、横方向引っ掻き閾値に達するまで増加させる。試料は、少なくとも12時間の期間の後に、顕微鏡下で検査される。横方向引っ掻き閾値の範囲は、試験被検物を次の破壊モードのうちの1つと比較することによって決定される:1)溝の幅の2倍を超える、持続される横方向表面亀裂、又は、2)溝の幅の2倍を超える大きい表面下の横方向亀裂の存在、及び/又は、スクラッチの頂点にメジアン亀裂が存在する。検査倍率は、被検物内の引っ掻きの位置特定には100倍、及び、引っ掻き溝及び横方向亀裂の幅の測定では500倍である。ひとたびすべてのデータが回収されると、各個々の被検物の閾値は、目的のガラスのタイプ又は系統についての平均閾値(5つの被検物からなる試料に基づいて)と同様に決定される。特に:(i)被検物の閾値は、閾値を超える個々の引っ掻きの50%をブラケットする、最低の連続的な引っ掻き荷重の中間点として定められる。例えば、個別の被検物内において、5.0N荷重で誘起される5つの引っ掻き傷うちの2つ(40%)が閾値を超えており、6.0N荷重で誘起される5つの引っ掻き傷のうちの3つ(60%)が閾値を超えている場合には、被検物の閾値は、5.0Nと6.0Nとの中間点、又は5.5Nとして定められるであろう。(ii)試料の平均閾値は、すべての個々の被検物の閾値の算術平均として定められる。平均と併せて、すべての被検物の中間点の範囲(最低値から最高値まで)を、各試料について報告する必要がある。精通していない組成物又は系統を最初に試験する場合、必要とされる引っ掻き荷重及びブラケット増分は、しばしば、「反復探索」を実施することによって決定しなければならないことに留意すべきである。ひとたび試料の性能に精通したら、将来の試験は、予想される閾値付近の荷重だけを試験することで合理化することができ、次に、必要な場合のみ、さらなる引っ掻き荷重を「補充」することができる。試験前、試験中、及び試験後の環境は、ガラス被検物の疲労(応力腐食)挙動の変動を最小限に抑えるために、理想的には23±2℃及び50±5%RHに制御すべきである。1つ以上の実施形態によれば、第1の強化されたガラス基板は、少なくとも3N、少なくとも3.5N、少なくとも4N、少なくとも4.5N、少なくとも5N、少なくとも6N、少なくとも7N、少なくとも8N、少なくとも9N、又は少なくとも10Nのヌープ引っ掻き耐性を有する。
【0039】
下記表1には、上記CS、DOL及びCTの範囲内にある、直上に記載されるこのようなガラスの例示的な非限定的特性が提示されている。
【0040】
【0041】
1つ以上の実施形態では、CS/CTの比は、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であり、DOLは、10マイクロメートル以下、9マイクロメートル以下、8マイクロメートル以下、7マイクロメートル以下、又は6マイクロメートル以下、又は5マイクロメートル以下、又は4マイクロメートル以下、又は3マイクロメートル以下、又は2マイクロメートル以下である。1つ以上の実施形態では、t/DOL及びCS/CTの比はいずれも、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上である。表1に提示される例示的な特性は、例えば0.1~0.5時間など、0.1時間~2時間の範囲の時間、及び、例えば350℃~420℃など、300℃~450℃の範囲の温度で、適切なカリウム塩(例えば、硝酸カリウム又は塩化カリウム)を約70質量%~約100質量%の範囲の浴中濃度で含む浴中にガラスを入れることを含むイオン交換プロセスを使用してイオン交換することができる、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を含み、かつ、3配位を有するホウ素カチオンを含む、直上に記載のガラス組成に従う強化されたガラス基板を製造することによって得ることができる。時間、温度、イオン交換塩の量は、所望の特性(CS、DOL、CT)を達成するように調整することができることが理解されよう。より薄いガラス基板は、短時間で、より高濃度のナトリウム塩を用いて交換することができるのに対し、より厚いガラス基板は、長時間かけて、より低い濃度のナトリウム塩と交換することができる。カリウム塩もまた、単独で、又はナトリウム塩と組み合わせて使用することができ、あるいは、ナトリウム塩とカリウム塩を使用する連続浴を使用してもよい。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、ガラス基板は抗菌機能性を有する。用語「抗菌」とは、本明細書では、2種以上の2つ以上のタイプの微生物(例えば、細菌、ウイルス、菌類など)を死滅させるか、又はその増殖を抑制する能力のことを指す。1つ以上の実施形態では、ガラス基板表面は、表面から最初の50nm以内に、酸化物基準で、ガラス基板の約1質量%~35質量%の範囲の銀イオン濃度を有する。1つ以上の実施形態によれば、銀イオンは、約1マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲の深さまで存在する。銀イオンの浸透の深さはDOLとは異なることに留意すべきである。銀イオンの浸透は、EMP(電子マイクロプローブ)、SIMS(二次イオン質量分析法)、又はGdOES(グロー放電発光分析装置)などの技術によって測定することができる。1つ以上の実施形態では、抗菌機能性を有するガラス基板において、該ガラス基板は、光源の下で、垂直入射において、CIE L*、a*、b*測色システムで約2未満(又は約1.8以下、約1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.2以下、又は約1以下)の透過率(ガラス基板の両主面を通して測定)及び/又は反射率(反対側の表面の反射率を除く、単一の表面から測定)におけるb*値を示しうる。光源には、A光源(代表的なタングステンフィラメント照明)、B光源(昼光シミュレーション光源)、C光源(昼光シミュレーション光源)、Dシリーズ光源(代表的な自然光)、及びFシリーズ光源(代表的なさまざまなタイプの蛍光照明)を含む、CIEで決定される標準的な光源が含まれうる。特定の例では、画面プロテクタは、CIE F2、F10、F11、F12又はD65光源下、又はより詳細には、CIE D65又はF2光源下で、垂直入射で見た場合に、透過率及び/又は反射率における本明細書に記載されるb*値を示す。1つ以上の実施形態では、抗菌機能性を有するガラス基板は、実質的に変色を有さず、例えば、CIE1976色座標b*は<2である。実質的な無変色には、厳しい条件にさらされる前の光透過率に対して約3パーセント以下のガラス物品の光透過率変化、厳しい条件にさらされる前のヘイズに対して約5パーセント以下のガラス物品のヘイズ変化、及び/又は、それぞれ、約±0.2以下、±0.1以下、及び±0.1以下の、ガラス物品のCIE1976色座標L*、a*及びb*の変化が含まれうる。幾つかの実施形態では、抗菌ガラス物品のCIE1976色座標L*、a*及びb*の変化は、それぞれ、約±0.1以下、±0.05以下、±0.05以下である。抗菌機能性を有する基板の1つ以上の実施形態では、該抗菌機能性を有するガラス基板は、可視スペクトル(すなわち、約400nm~約700nmの波長範囲)にわたり、90%より高い透過率を有する。1つ以上の実施形態によれば、抗菌機能性を有するガラス基板は、名称を「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果(Antimicrobial products-Test for antimicrobial activity and efficacy)」とする日本工業規格JIS Z 2801(2000)に準拠して3を上回る抗菌有効性(Log Kill)を有する。JIS Z 2801の「湿潤」条件下(すなわち、約37℃及び90%を超える湿度で約24時間)、本明細書に記載される抗菌性を有する基板は、少なくとも黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の濃度における、少なくとも3の対数減少(又は99.999%の殺傷率)を示しうる。ある特定の実施では、本明細書に記載される抗菌性を有する基板は、これらの試験条件下で曝露される細菌の濃度において、少なくとも5の対数減少を示しうる。
【0043】
抗菌機能性を有するガラス基板は、清掃が容易なコーティング(又は0.5nm~20nm厚の耐指紋性コーティング)などの追加のコーティング層を有していてもよい。表面はまた、防眩仕上げ(テクスチャ表面)されてもよい。表面粗さ(Ra)は0.2nm~300nmでありうる。
【0044】
抗菌性は、次の一般的なプロセスに従ってガラス基板にもたらされうる。一実施形態では、抗菌性は、1段階プロセス、若しくは、少なくとも1つのステップはガラスに抗菌剤を加える抗菌ステップである多段階プロセスによって、もたらすことができる。一実施形態では、ガラス表面にAgイオンを加えるステップは、高温、1気圧以上の圧力における、溶融塩浴、又は水溶液中でのイオン交換プロセスを含みうる。
【0045】
特定の実施形態では、抗菌性が溶融浴にもたらされ、ここで、AgNO3の濃度は、1段階プロセスでは0.1質量%~50質量%、多段階プロセスでは0.1質量%~100質量%でありうる。水溶液中での多段階プロセスの1つ以上の実施形態では、AgNO3の濃度は、0.1質量%~飽和(100℃の水中で約90質量%)でありうる。
【0046】
よって、特定の実施形態では、薄いガラス基板は、直上に記載されるように提供することができ、抗菌性は、硝酸銀又は他の適切な銀塩を含む浴中の銀イオンをイオン交換することによって、薄いガラス基板に付与することができる。その後、耐指紋性及び/又は疎油性コーティングなどの他の機能を基板に適用することができる。
【0047】
1段階プロセスの特定の実施形態では、以下の表2の組成を有するガラス基板をイオン交換することができる:
【0048】
【0049】
イオン交換(IOX)条件の例が表3に提示されている。表2に示されるガラス組成物を、0.3mmの厚さを有するシートへと成形した。1つ以上の実施形態によれば、ガラス組成物のための標準的なIOX条件に沿った総浴毒レベルを維持するように、硝酸ナトリウムと硝酸銀の合計濃度のバランスを保った。イオン交換前の出発ガラスは、0.2nm~300nmの表面粗さを有しうる。1つ以上の実施形態では、結果的に得られるガラス(IOX後)は、約500MPa~約600MPaの範囲の結果的に得られるCSも示すと同時に、銀系抗菌剤を含む。1つ以上の実施形態では、結果的に得られるガラスは、約5MPa~約20MPa(例えば、約5MPa~約16MPa)の範囲のCTを含む。1つ以上の実施形態では、結果的に得られるガラスは、約3マイクロメートル~約10マイクロメートルの範囲のDOLを含む。
【0050】
【0051】
例示的な多段階プロセスでは、0.3mmの厚さを有するシートへと成形された表2のガラス組成物を、次のようにイオン交換した。第1のIOX:390℃/0.15時間、浴中のNaNO3は25質量%である。第2のIOX:表4に記載。
【0052】
【0053】
1つ以上の実施形態では、結果的に得られるガラス(1段階IOXプロセス後)は、約10マイクロメートル未満の深さにまで及ぶ銀系抗菌剤を含む。1つ以上の実施形態では、結果的に得られるガラス(2段階IOXプロセス後)は、約20マイクロメートル未満の深さにまで及ぶ銀系抗菌剤を含む。
【0054】
1つ以上の特定の実施形態では、第1の強化された基板は、鋭い衝撃による損傷に対して耐性であり、かつ、速いイオン交換が可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む。このようなガラスの例は、その内容全体が参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第9,156,724号明細書に開示されている。このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの例は、少なくとも4モル%のP2O5を含み、イオン交換されると、少なくとも約3kgf(約29.4N)、少なくとも約4kgf(約39.2N)、少なくとも約5kgf(約49.0N)、少なくとも約6kgf(約58.8N)、又は少なくとも約7kgf(約68.6N)のビッカース亀裂開始閾値を有する。1つ以上の特定の実施形態では、第1の強化された基板は、少なくとも約4モル%のP2O5及び0モル%~約4モル%のB2O3を含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含み、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、Li2Oを含まず、1.3<[(P2O5+R2O)/M2O3]≦2.3であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、R2Oは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計である。特定の実施形態では、このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば0モル%のK2Oなど、1モル%未満のK2Oを含む。特定の実施形態では、このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、例えば0モル%のB2O3など、1モル%未満のB2O3を含む。特定の実施形態では、このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約10μmの層の深さまでイオン交換され、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、ガラスの表面から層の深さにまで及ぶ圧縮層を有し、該圧縮層は、少なくとも約300MPaの圧縮応力下にある。特定の実施形態では、このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群より選択される一価及び二価のカチオン酸化物を含む。非常に特殊な実施形態では、このようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約40モル%~約70モル%のSiO2;約11モル%~約25モル%のAl2O3;約4モル%~約15モル%のP2O5;及び、約13モル%~約25モル%のNa2Oを含む。
【0055】
直上に記載されるガラス組成物でできているガラス基板は、例えば上記プロセスに従ってイオン交換されて、表1に提示され、かつ上述のCS、DOL及びCTの範囲内にある、例となる非限定的な特性をもたらすことができる。さらには、ガラス基板に、上述のような抗菌性をもたらしてもよく、例えば表3及び4に提示される特定の手順など、上述の手順に従って処理されてもよい。
【0056】
第1の強化された基板に用いられうるガラスの他の非限定的な例には、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物又はアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物が含まれうるが、他のガラス組成物も予定されている。このようなガラス組成物は、イオン交換可能であると特徴付けることができる。本明細書で用いられる場合、「イオン交換可能」とは、その組成物を含む基板が、該基板の表面又はその近くに位置するカチオンを、より大きい又はより小さいサイズの同じ価数のカチオンと交換することが可能であることを意味する。1つの例となるガラス組成物は、SiO2、B2O3及びNa2Oを含み、(SiO2+B2O3)≧66モル%、及びNa2O≧9モル%である。ある実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含む。さらなる実施形態では、基板は、アルカリ土類酸化物の含量が少なくとも5質量%になるように、1つ以上のアルカリ土類酸化物を有するガラス組成物を含む。適切なガラス組成物は、幾つかの実施形態では、K2O、MgO、及びCaOのうちの少なくとも1つをさらに含む。特定の実施形態では、基板に用いられるガラス組成物は、61~75モル%のSiO2;7~15モル%のAl2O3;0~12モル%のB2O3;9~21モル%のNa2O;0~4モル%のK2O;0~7モル%のMgO;及び、0~3モル%のCaOを含みうる。
【0057】
第1の強化された基板に適したさらなる例となるガラス組成物は、60~70モル%のSiO2;6~14モル%のAl2O3;0~15モル%のB2O3;0~15モル%のLi2O;0~20モル%のNa2O;0~10モル%のK2O;0~8モル%のMgO;0~10モル%のCaO;0~5モル%のZrO2;0~1モル%のSnO2;0~1モル%のCeO2;50ppm未満のAs2O3;及び、50ppm未満のSb2O3を含み、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%、及び0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0058】
第1の強化されたガラス基板に適したさらに別の例となるガラス組成物は、63.5~66.5モル%のSiO2;8~12モル%のAl2O3;0~3モル%のB2O3;0~5モル%のLi2O;8~18モル%のNa2O;0~5モル%のK2O;1~7モル%のMgO;0~2.5モル%のCaO;0~3モル%のZrO2;0.05~0.25モル%のSnO2;0.05~0.5モル%のCeO2;50ppm未満のAs2O3;及び、50ppm未満のSb2O3を含み、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%、及び2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0059】
特定の実施形態では、第1の強化されたガラス基板に適したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1つのアルカリ金属、及び、幾つかの実施形態では50モル%を超えるSiO2、他の実施形態では少なくとも58モル%のSiO2、さらに他の実施形態では少なくとも60モル%のSiO2を含み、ここで、比((Al2O3+B2O3)/Σ改質剤)>1であり、この比において、成分はモル%で表されており、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施形態では、58~72モル%のSiO2;9~17モル%のAl2O3;2~12モル%のB2O3;8~16モル%のNa2O;及び、0~4モル%のK2Oを含み、比((Al2O3+B2O3)/Σ改質剤)>1である。
【0060】
さらに別の実施形態では、第1の強化されたガラス基板は、64~68モル%のSiO2;12~16モル%のNa2O;8~12モル%のAl2O3;0~3モル%のB2O3;2~5モル%のK2O;4~6モル%のMgO;及び、0~5モル%のCaOを含有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含みうる。
【0061】
代替的な実施形態では、第1の強化された基板は、2モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2、若しくは、4モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2を含む、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含みうる。
【0062】
これより、第1の強化された基板100の実施形態を示す
図2Aを参照する。特定の実施形態では、第1の強化された基板100は、熱的に強化及び/又は化学的に強化されうるガラス基板である。第1の強化された基板100は、外面105と、該外面105とは反対側の内面125とを有し、ここで、外面105及び内面125の各々は、イオン交換されて、化学強化及び圧縮応力領域110及び120をもたらしうる。外面105は、電子デバイスのユーザに晒され、かつ、デバイスの落下時の鋭い衝撃損傷の影響を受けやすい。
【0063】
第1の強化された基板100の圧縮応力領域110、120は、各表面からDOLへと(
図1に示されるように)内向きに延び、ガラスの中央張力領域130は、2つの圧縮応力領域110、120の間に存在する。1つ以上の実施形態によれば、第1の強化された基板は、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力領域130における中央張力値を有する。
【0064】
図2Bは、ガラス又はガラスセラミック基板でありうる第2の基板150の実施形態を示している。第2の基板150は、第3の表面155と、内面125とは反対側の第4の表面175とを有する。第2の基板150は、熱的に強化、化学的に強化、又は熱的及び化学的に強化されうる。第2の基板150が化学的に強化される実施形態では、第3の表面155及び第4の表面175の各々は、イオン交換されて、化学的強化をもたらしうる。第2の基板150が強化される実施形態では、圧縮応力領域160、170は、各々それぞれの表面155、175からDOLへと内向きに延び、ガラスの中央張力領域180は、2つの圧縮応力領域160、170の間に存在する。
【0065】
1つ以上の実施形態によれば、上述の第1の強化された基板は、デバイスのユーザによって施されるアフターマーケット画面プロテクタの形態であってよく、第1の強化された基板は、例えばスマートフォン又はタブレットデバイスなどのデバイスの表示画面を覆うカバーガラスを覆うように寸法決めされかつ構成される。他の実施形態では、上述の第1の強化された基板は、さらに後述されるデバイスの工場出荷時に取り付け済みのカバーガラス積層体である。このような積層体は、標準的なカバーガラスと同じ操作で作ることができ、ここで、該カバーガラスは、第2の基板として位置付けられ、カバーガラスの典型的な特性を有し、第1の基板は本明細書に記載される低いCTの特性を有する。2つの基板は、次に、表示ユニットに取り付けられる前に積層されて、デバイスアセンブリに組み込まれうる。第1の強化されたガラス基板は、ユーザに晒される外側面又は外面、及び、第2のガラス基板と接触する内面、すなわち、第1の強化されたガラスの外面及び内面を有する。「接触」は、必ずしも、表面同士が直接接触することを意味せず、表面同士の間に材料、すなわち、ともに基板を保持する接着剤又は他の材料が存在してもよいことが理解されよう。1つ以上の実施形態によれば、第1の基板の厚さは、0.025mm~0.7mmの範囲、又は0.025~0.6mmの範囲、又は0.025~0.5mmの範囲、又は0.025~0.4mmの範囲、又は0.025~0.3mmの範囲、又は0.025~0.2mmの範囲、並びに上記値の間のすべての範囲及び部分範囲である。
【0066】
図3は、
図2Aに示される第1の強化された基板100と
図2Bに示される第2の強化された基板150とがともに積層された、積層体200の実施形態を示している。積層体200は、第1の厚さとは異なる第2の厚さを有する第2の基板150に接着剤層210によって積層された、第1の厚さを有する第1の強化された基板100を含む。しかしながら、幾つかの実施形態では、第1の強化された基板100及び第2の基板150は、同じ厚さを有していてもよいことが理解されよう。中間層(interlayer)は、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、イオノマー、シリコーン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー中間層でありうる。中間層はまた、シリコーン系接着剤も含み、特定の実施形態では、自己湿潤性であり、容易に取り外して再適用することができる、シリコーン接着剤も含みうる。中間層はまた、1つ以上の実施形態によれば、感圧接着剤であってもよい。他の実施形態では、中間層は、金属フッ化物接着剤を含みうる。中間層は、20マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲の厚さを有しうる。
【0067】
図4は、基板100を矢印102の方向に適用することによってデバイス(図示せず)のカバーガラス250に貼り付けることができる接着剤層220を含む、アフターマーケット画面プロテクタの形態の
図2Aに示される第1の強化された基板100を示している。カバーガラス250は、強化されたガラス基板(例えば、熱的に強化された又は化学的に強化された)であってもよく、あるいは、強化されていなくてもよい。
図5は、
図2Bに示される第2の強化された基板150に積層され、最終製品としてデバイス300に組み付けられた、
図2Aに示される第1の強化された基板100を示している。図に示されるように、第2のガラス基板は、ハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒されない。よって、
図5は、ハンドヘルド電子デバイスの表示画面を覆うように寸法決めされかつ構成された第1の強化された基板を含む、ハンドヘルドデバイス表示画面プロテクタを示しており、この第1の強化されたガラス基板は、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、ハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒される外面105とを有し、該第1の強化されたガラス基板は、ハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒されない内部基板;及び、第1の化学的に強化されたガラス基板と第2の基板との間の接着剤層210に積層される。上記のように、第2の基板150は、標準的なカバーガラスであってよく、第1の強化された基板130は、電子デバイスの表示に対し、さらなる保護をもたらす。
【0068】
本開示の別の態様は、電子デバイスの表示画面を保護する方法に関し、該方法は、電子デバイスの画面を、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、本明細書に記載される電子デバイスのユーザに晒される表面とを有する第1の強化されたガラス基板で覆う工程を含む。ある実施形態によれば、第1の強化されたガラス基板は、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される。
【0069】
1つ以上の方法の実施形態において、電子デバイスはカバーガラスを含み、第1の強化されたガラス基板はアフターマーケット画面プロテクタであり、本方法は、第1の強化されたガラス基板を、接着剤を用いてカバーガラスに貼り付ける工程を含む。ある実施形態では、第1の化学的に強化されたガラス基板は、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値、及び30μm~100μmの範囲の層の深さの値を有する。別の実施形態では、第1の化学的に強化されたガラス基板は、300MPa~900MPaの範囲(例えば500MPa~900MPaの範囲)の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲(例えば2μm~12μmの範囲)の層の深さの値を有する。別の実施形態では、第1の化学的に強化されたガラス基板は、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~12μmの範囲の層の深さの値を有する。
【0070】
別の方法の実施形態では、第1の化学的に強化されたガラス基板は、接着剤を用いて第2のガラス基板に積層されて、電子デバイスの画面を覆う積層カバーガラスをもたらす。
【0071】
1つ以上の実施形態によれば、本開示は、画面プロテクタ及び、デバイス、特に、表示画面を含めたハンドヘルド携帯電子デバイスのための、機械的に有利かつ良好な耐損傷性のアフターマーケットカバーガラス画面プロテクタ及びカバーガラス積層体の製造方法を提供する。任意の(CS/DOL)組合せ(例えば、低CS/高DOL;高CS/低DOL;中CS/低DOL)で、若しくはイオン交換せずに、0~20MPaの範囲のCT値を有する第1の基板を提供することによって、時期尚早の製品破壊に特有の製品性能を改善することができる。例えばNative Damage Resistance(商標)ガラス(NDR)などのCorning(登録商標)ガラスの選択と組み合わせたこの属性は、第1の基板の表面損傷に対し、耐性の改善をもたらす。第1の基板は、さまざまなタイプのカバーガラスの形状(2次元及び3次元)及びサイズを有する、幅広い範囲の携帯電子機器用途に及ぶ、特定のCS/DOL条件で製造されうる。1つ以上の実施形態によれば、第1の基板は、携帯電話又はタブレットなどの電子デバイス上に、成形されたカバーガラスのエッジからエッジまでの被覆(coverage)をもたらすような3次元プロファイルを有しうる。
図6は、ハンドヘルドデバイス400上に湾曲した表面552を有する第2の強化された湾曲基板550に貼り付けられる湾曲した表面502を有する第1の強化された湾曲基板500を示している。説明を容易にするために、第1の強化された湾曲基板500及び第2の強化された湾曲基板550の圧縮応力領域及び中央張力領域などのガラスのさまざまな領域は、
図6には示されていない。同様に、第1の強化された湾曲基板500と第2の強化された湾曲基板550との間の中間層は示されていないが、1つ以上の実施形態では、中間層は、第1の強化された湾曲基板500と第2の強化された湾曲基板550とを結合するために用いられる。中間層は、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、イオノマー、シリコーン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン及びそれらの組合せからなる群より選択されるポリマー中間層でありうる。中間層はまた、1つ以上の実施形態によれば、感圧接着剤であってもよい。中間層は、20マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲の厚さを有しうる。図示されるように、第2の強化された湾曲基板550はハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒されず、第1の強化された湾曲基板500は、第2の強化された湾曲基板550のエッジからエッジまでの保護をもたらす。
【0072】
1つ以上の実施形態によれば、画面プロテクタの形態の第1の強化された基板によって保護された携帯デバイスが落下事象に遭遇すると、典型的には、エッジは落下表面と接触する。曲げ事象の存在の有無にかかわらず、損傷は、最初に周辺領域の周りで発生する。画面プロテクタのエッジは露出していることから、周辺の損傷/傷が生じたとき、かつ、プロテクタの中央張力が<20MPaである場合、破砕は表示領域に伝播せず、局所的領域内に含まれる。中央張力が>20MPaならば、CTレベルに起因して、損傷の導入は臨界応力拡大レベルを超え、画面プロテクタは、破砕に伴ってすぐに亀裂し、ガラス内に瞬時に(≧1500m/秒)伝播する。応力拡大係数(ΚI)はΚI=Υσa√aとして定められ、式中、aは傷の深さであり、σaは印加される応力であり、Yは幾何学的定数である。印加される応力、傷の深さ、又はその両方の増大は、応力拡大係数(ΚI)を増加させるであろう。KI≧KICのとき、すなわち、応力拡大係数(KI)が臨界応力拡大限界値KICと等しいか、又はそれを超える場合、亀裂の伝播が生じる。1つ以上の実施形態では、この用途について、この状態は、20MPaを超えるCT限界値について生じる。第1の強化された基板が、本明細書に記載される画面プロテクタの形態である実施形態では、Native Damage Resistance(商標)(NDR)の特性を有することは、比較ガラスと比べて、鋭い接触表面損傷及び引っ掻き傷について有利である。圧縮応力(CS)の存在に伴って、ガラスの破砕強度(σf)が増加し、印加される荷重(例えば、鋭い接触傷の導入)は、亀裂が引張応力を経験する前に、残留圧縮応力を克服しなければならない:σf=ΚIc/(Υ√a)+σ比較。
【0073】
強化された外部基板がアフターマーケット画面プロテクタである1つ以上の実施形態によれば、第1の基板は、プライバシーフィルタフィルム;グレア、反射、指紋、及び引っ掻き傷を低下させるためのさらなるコーティング及び表面処理;並びに、デバイスのカバーガラスに含まれない他の特徴を取り込んでもよい。より詳細には、強化された外部基板は、AlON又はSiONなどの耐スクラッチフィルム、反射防止及び防眩用のフィルム又は表面処理、プライバシー画面、抗菌性(例えば、Ag+及び/又はCuイオン)、疎油性コーティング及び/又は疎水性コーティング、エネルギー吸収層、並びに、自己修復可能なポリエチレンテレフタレート(PET)などの犠牲ポリマー層のうちの1つ以上を含みうる。これらの追加のフィルムは、接着剤層と強化された外部基板の内面との間に配置することができる。
【0074】
1つ以上の実施形態によれば、サンドブラスティング及び/又はエッチングなどの表面処理は、コーティングを施すことなく、同様の防眩効果を生成することができる。自己修復も可能な、PETなどの犠牲ポリマーコーティングもまた、画面プロテクタの表面に配置してもよい。フィルムは、画面プロテクタの裏面にも同様に配置することができる。画面プロテクタの裏に導入することができるこのような特徴の1つは、間接的な角度でデバイスを見ることを制限する、プライバシーフィルムである。さらには、プラスチックがデバイスの被覆に用いられる場合には、紫外線によるプラスチックへの損傷を防ぐために、UV遮蔽層を画面プロテクタの裏面に導入してもよい。画面プロテクタはまた、抗菌性タッチ表面のために、銀又は他の金属イオン(例えば、Cu)を表面内へとイオン交換することを潜在的に可能にする。画面プロテクタ及びカバーガラスの落下性能は、集中力の脅威を緩和するために、画面プロテクタの下に軟質のエネルギー吸収層を導入することによって高めることができる。デバイス画面に搭載されるカバーガラスにおけるこのような機能の要求はあまりにも低すぎる可能性がある、あるいは、その機能は高価すぎる可能性があることから、アフターマーケット画面プロテクタは、特定のユーザのニーズに対してカスタマイズするためのプラットフォームを提供する。
【0075】
さまざまな実施形態は、電子デバイスの表示画面を覆うように寸法決めされかつ構成された第1の強化された基板を含むデバイス表示画面プロテクタを対象とする第1の実施形態を含み、該第1の強化された基板は、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力(CT)値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する。第2の実施形態では、第1の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される、強化されたガラス基板である。第3の実施形態では、第2の実施形態は、第2のガラス基板が電子デバイスのユーザに晒されないように、第1の強化されたガラス基板に接着した第2のガラス基板をさらに含む。第4の実施形態では、第2又は第3の実施形態の第1の強化されたガラス基板において、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面は外面であり、第1の強化されたガラス基板は第2のガラス基板と接触する内面を備えており、第1の強化されたガラス基板の外面及び内面は、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さを画成する。第5の実施形態では、第2~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力(CS)値、及び30μm~100μmの範囲の層の深さ(DOL)の値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。第6の実施形態では、第2~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。
【0076】
第7の実施形態では、第2~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~500MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する化学的に強化されたガラス基板である。
【0077】
第8の実施形態では、第1~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さ、及び20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値、並びに30μm~100μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板を備えた、アフターマーケット画面プロテクタである。第9の実施形態では、第1~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さ、及び500MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、並びに2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板を備えた、アフターマーケット画面プロテクタである。第10の実施形態では、第1~第4の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、0.025~0.7mmの範囲の厚さ、及び300MPa~500MPaの範囲の圧縮応力値、並びに2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板を備えた、アフターマーケット画面プロテクタである。
【0078】
第11の実施形態では、第3の実施形態の第2のガラス基板及び第1の強化されたガラス基板は、接着剤でともに接着される。第12の実施形態では、第8の実施形態の画面プロテクタは積層体であり、接着剤は、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、イオノマー、シリコーン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0079】
第13の実施形態では、第1~第9の実施形態は、耐スクラッチフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、プライバシー画面、抗菌添加剤、疎油性コーティング、疎水性コーティング、エネルギー吸収層、及び犠牲ポリマー層のうちの1つ以上をさらに含む。
【0080】
第14の実施形態では、第1~第13の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、摩耗、引っ掻き、及び圧痕によって生じる損傷に対して高度の耐性を有する、イオン交換可能なガラスを含む。第15の実施形態では、第14の実施形態のガラスは、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を含み、かつ、3配位を有するホウ素カチオンを含む。第15の実施形態では、第1~第14の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、少なくとも3重量キログラム(kgf)(約29.4N)のビッカース亀裂開始閾値を有する。
【0081】
第16の実施形態では、第1~第15の実施形態の画面プロテクタは、湾曲した表面を有する。
【0082】
第17の実施形態では、第1~第13の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、摩耗、引っ掻き、及び圧痕によって生じる損傷に対して高度の耐性を有する、イオン交換可能なガラスを含み、該ガラスは、鋭い衝撃に起因する損傷に対して耐性である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。第18の実施形態では、第17の実施形態のガラスは、少なくとも4モル%のP2O5を含み、第1の強化されたガラス基板は、少なくとも約3kgf(約29.4N)のビッカース圧痕亀裂開始荷重を有する。第19の実施形態では、第17及び第18の実施形態のガラスは、少なくとも約4モル%のP2O5及び0モル%~約4モル%のB2O3を含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含み、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、Li2Oを含まず、ここで、1.3<[P2O5+R2O/M2O3]≦2.3であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、R2Oは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計である。第20の実施形態では、第1~第19の実施形態の画面プロテクタは、湾曲した表面を有する。
【0083】
第21の実施形態は、電子デバイスの表示画面を覆うように寸法決めされかつ構成された第1の強化されたガラス基板を含むデバイス表示画面プロテクタに関し、該第1の強化されたガラス基板は、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、ハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒される表面とを有し、第1の強化されたガラス基板は、ハンドヘルド電子デバイスのユーザに晒されない第2の基板;及び、第1の強化されたガラス基板と第2の基板との間の接着剤層に積層されており、該第1の強化されたガラス基板は、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する。第22の実施形態では、第21の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される。第23の実施形態では、第21及び第22の実施形態の画面プロテクタは、湾曲した表面を有する。
【0084】
第24の実施形態は、電子デバイスの表示画面を保護する方法に関し、該方法は、電子デバイスの画面を、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力(CT)値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する第1の強化された基板で覆う工程を含む。第25の実施形態では、第24の実施形態における第1の強化された基板は、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択されるガラス基板である。第26の実施形態では、第25の実施形態の電子デバイスは、カバーガラスを含み、第1の強化されたガラス基板はアフターマーケット画面プロテクタであり、本方法は、接着剤を用いて、第1の強化されたガラス基板をカバーガラスに貼り付ける工程を含む。第27の実施形態では、第24~第26の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値、及び30μm~100μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。第28の実施形態では、第24~第26の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。第29の実施形態では、第24~第26の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~500MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。
【0085】
第30の実施形態では、第25の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、接着剤を用いて第2のガラス基板に積層されて、電子デバイスの画面を覆う積層カバーガラスをもたらす。第31の実施形態では、第30の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、20MPa~300MPaの範囲の圧縮応力値、及び30μm~100μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。第32の実施形態では、第30の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。第33の実施形態では、第30の実施形態の第1の強化されたガラス基板は、300MPa~500MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板である。
【0086】
第34の実施形態では、第5~第23の実施形態のいずれかは、第1の強化された基板が、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であるCS/CTの比を有し、かつ、DOLが10マイクロメートル以下であるという特徴を有しうる。第35の実施形態では、第5~第23の実施形態のいずれかは、第1の強化された基板のt/DOL及びCS/CTの比がいずれも、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であるという特徴を有しうる。第36の実施形態では、第5~第23の実施形態のいずれかは、第1の強化された基板のt/DOL及びCS/CTの比がいずれも、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であるという特徴を有しうる。
【0087】
第37の実施形態では、前面、裏面、及び側面を有する筐体;筐体の内部に少なくとも部分的に設けられている電気部品;筐体の前面又はそれに隣接した表示;及び、表示の上に配置された実施形態1~28及び34~36のいずれかに記載の表示画面プロテクタを備えたデバイスが提供される。第38の実施形態では、第37の実施形態に従うデバイスは、表示の上に配置されたカバーガラスをさらに含み、表示画面プロテクタは、カバーガラスの上に配置される。
【実施例】
【0088】
ガラス基板の調製
実施例1
0.4mmの厚さを有し、上記表2の組成を有するガラス基板を調製し、0.4mmの厚さについて上記表1に列挙された表面CS、DOL、及びCTを有するようにイオン交換した。
【0089】
比較ガラス基板の調製
比較例2(SLG).約505MPaの表面CS、約6.5μmのDOL、及び約8MPaのCTを有するようにイオン交換された、0.4mmの厚さを有するソーダ石灰ガラス基板を提供した。
【0090】
比較例3(ASG).約772MPaの表面CS、約42μmのDOL、及び約103MPaのCTを有するようにイオン交換された、0.4mmの厚さを有する市販のアルミノケイ酸塩ガラス基板を提供した。
【0091】
引っ掻き試験
比較例2(SLG)、比較例3(ASG)及び実施例1の0.4mm試料を提供した。上述の手順を使用して、各々について、ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を決定した。
図7に示されるように、実施例1は、4.5Nの平均ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有しており、SLGは、0.75Nの平均ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有し、ASGは、1.25Nの平均ヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有していた。実施例1の最適化された組成物及び処理条件の理由から、実施例1の性能は、比較例よりもはるかに良好である。
【0092】
破壊性能
比較例2(SLG)、比較例3(ASG)、及び実施例1の0.4mm試料を提供した。上述の手順を使用して、各々について圧痕破壊閾値を決定した。
図8に示されるように、実施例1は、5kgf(約49.0N)の平均圧痕破壊閾値を有しており、SLGは、0.1kgf(約0.98N)の平均圧痕破壊閾値を有し、ASGは、2kgf(約19.6N)の平均圧痕破壊閾値を有していた。実施例1の最適化された組成物及び処理条件の理由から、実施例1の性能は、比較例よりもはるかに良好である。
【0093】
光学特性
比較例2(SLG)、比較例3(ASG)、及び実施例1の0.4mm試料を提供した。分光透過率、ヘイズ、透明度、及び色を測定した。分光透過率が
図9に示されている。透過率及び色は、CIE CWF(白色蛍光)、CIE D65(昼光シミュレーション)、CIE A(白熱光)を含む光源を用いて、可視スペクトル範囲をカバーする360~750nmの波長範囲における高効率のX-rite Color i7分光光度計で測定した。測定は、SCI(正反射成分を含む)並びにSCE(正反射成分を含まない)で行われる。L*、a*、及びb*色座標は、CIE規格に従って計算及び報告した。ヘイズ及び透明度は、BYKヘイズ-ガードプラス機器で測定し、その結果は、ASTM及びISOの標準試験法(ASTM D1003、ISO13468)に準拠して示されている。
【0094】
【0095】
【0096】
上記結果は、実施例1が、画面プロテクタがデバイスに加えられてもユーザ体験に悪影響を及ぼさないことが示唆される、優れた透過率(400~700nmの対象波長で>91%)、ヘイズ(<1%)、透明度(100%)、及び色(SLGよりも良好なb*<0.5)を有することを示している。これらの測定は、本発明の実際の利生を模倣するように、接着剤層を適所に用いて行われた。
【0097】
引っ掻き損傷後の落下性能
各試料がいずれも0.4mmの厚さを有する、ソーダ石灰ガラス試料(SLG)と実施例1に従って調製された試料とを比較した。本試験の目的は、画面プロテクタ表面におけるフィールドの引っ掻き事象/傷をシミュレートし、次に、それらを滑らかなグラナイト表面に落下させることによって、これらの傷に過度の応力を加えることであった。携帯デバイス上に取り付けられた試験試料を、最初に45分間タンブルさせ、一度に1つの試料について、画面プロテクタ上にフィールドの引っ掻き事象を再現した。タンブラーは、誰かのポケット又は財布の中に見出すことができそうな一般的な品目(家の鍵、小銭、化粧品、爪やすり等)を有する。45分間のタンブル及び12時間の待機時間の後、試料を滑らかなグラナイト表面に平面落下させた。試験部品を市販の落下試験機械(日本国所在の神栄テクノロジー株式会社製造の吉田精機落下試験機Model-DT-205H)上に取り付け、落下表面(滑らかなグラナイト)上に平らに整列させた。落下高さは、試験試料が故障(すなわち、画面プロテクタの表示領域上の亀裂)するまで、22cmの開始高さから10cmの増分で順次増加させ、対応する破壊高さを記録した。典型的には、1条件あたり約10の試料を試験し、平均破壊高さを計算した。
図10は、実施例1の基板が98センチメートルの平均破壊高さを有し、SLG試料が72センチメートルの平均破壊高さを有していたことを示している。ASG部品については、タンブル処理自体の間に故障してしまったため、利用可能な落下試験データはない。
【0098】
180グリットのサンドペーパーにおける落下試験
各試料がいずれも0.4mmの厚さを有する、実施例1に従って製造されたガラス基板と、比較例2(SLG)及び比較例3(ASG)とを比較した。この試験の目的は、グラナイト、アスファルト等のさまざまな現実世界の粗い表面における落下事象についての画面プロテクタの鋭い接触損傷に起因するフィールド破壊をシミュレートすることであった。経験から、180グリットのサンドペーパー(糊マトリクスに埋め込まれたAl
2O
3粒子)のトポグラフィ及び鋭さは、現実世界の粗い表面をよく模倣しているということが分かっている。180グリットのサンドペーパーを使用して、制御された試験データを生成することにより、目的とする試料と比較試料とを公正に比較することができる。サンドペーパーは、一貫性を可能にするために、試験試料毎に交換した。目的とする試料と比較試料とを、次の2つの「独立した試験」構成で試験した:(i)試験試料が180グリットの粗い表面の全面に接触する、平面落下、及び、(ii)試験試料が、180グリットの粗い表面において、屈曲/曲げ事象と、ある角度で接触する、30度の角度落下。携帯デバイス上の試験試料を、(i)180グリットの落下表面に平坦に整列させて、及び(ii)180グリットの落下表面に対して30度の角度で整列させて、市販の落下試験機械(日本国所在の神栄テクノロジー株式会社製造の吉田精機落下試験機Model-DT-205H)上に取り付けた。落下高さは、試験試料が故障(画面プロテクタの表示領域上の亀裂)するまで、22センチメートルの開始高さから10センチメートルの増分で順次増加させ、破壊高さを記録した。典型的には、1条件及び1配向あたり約10の試料を試験し、平均破壊高さを計算した。
図11は、実施例1の基板の平面落下平均破壊高さが138cmであり、SLG試料では108cmであり、ASG試料では25cmであることを示している。
図12は、30度の角度の落下試験結果を示している。実施例1の基板の平均破壊高さは132cmであり、SLG試料の破壊高さは106cmであり、ASG試料の破壊高さは28cmであった。これらの結果は、実施例1によるガラスが、ソーダ石灰ガラス及び市販のアルミノケイ酸塩ガラス基板のどちらよりもはるかに優れていたことを示している。
【0099】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載される画面プロテクタは、電子デバイスの画面プロテクタとして使用することができる。本明細書に開示される強化された基板は、表示(又は表示物品)を有する電子デバイス(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含めた大衆消費電子製品)、建築用品、搬送用品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶等)、電化製品、又はある程度の透明性、耐引っ掻き性、耐摩耗性又はそれらの組合せを必要とする任意の物品など、別の物品に組み込むことができる。本明細書に開示される強化された基板のいずれかを組み込む例示的な物品が
図13及び14に示されている。具体的には、
図13及び14は、前面604、裏面606、及び側面608を有する筐体602;筐体の内部に少なくとも部分的に又は全体的に存在し、コントローラ、メモリ、及び筐体の前面又はそれに隣接した表示610を少なくとも含む、電気部品(図示せず);並びに、表示610を覆うように筐体の前面にある又は前面を覆うカバー基板612を備えた、大衆消費電子デバイス600を示している。幾つかの実施形態では、カバー基板612は、本明細書に開示される強化された基板のいずれかを含みうる。例えば、カバー基板612は、
図4に示されるように、デバイスのカバーガラス上に積層された本明細書に記載されるアフターマーケット画面プロテクタとして、第1の強化されたガラス基板を含みうる。この構成では、第1の強化された基板は、デバイス(デバイスと一体となったカバーガラスを含む)が製造された後に、個別に供給され、デバイスに貼り付けられる、アフターマーケット基板である。よって、アフターマーケット基板とともに、第1の強化された基板は、デバイスのエンドユーザ又は店員などの他の人材によって、アフターマーケット基板がカバー基板612に重なるように、カバー基板612に貼り付けられうる。あるいは、デバイス600は、カバー基板612が、例えば
図5に示されるように、デバイスの第2のガラス基板150上に積層された第1の強化されたガラス基板を含むように製造されてもよい。したがって、この構成では、カバー基板612は、デバイスが該デバイスの元々の製造業者によって製造されるときに形成されうる積層体を含む。
【0100】
電子デバイスの筐体602は、表示610を含みうる。表示610は、ともに積層された複数のタッチ及び表示構成要素を含みうる。タッチ及び表示構成要素は、例えば、表示技術層(例えば、LCDパネル)、検知層(例えば、タッチセンサ)及び/又はバックライト層を含みうる。表示610は、電子デバイスの筐体602内に固定される。一実施形態では、表示610は、接着剤の層によってカバー基板612の底面に固定されてもよい。代替的に又は加えて、別の実施形態では、タッチ表示610は、ブラケット、接着剤、又は他の手段によって筐体602に固定されてもよい。電子デバイス600の筐体602は、例えば、矩形構造を形成するように組み合わせることができる1つ以上の要素を含む、任意の適切な形状を有しうる。筐体602は、内容積を少なくとも部分的に囲むことができ、その内部に、電子デバイス構成要素が組み付けられ、保持されうる。筐体602の形状は、内容積の境界を実質的に画定することができ、内容積内に配置される構成要素の大きさ及びタイプに基づいて決定されうる。
【0101】
筐体602は、任意の適切な大きさを有していてよく、この大きさは、適切な基準に基づいて決定することができる。適切な基準には、美的又は産業デザイン、構造的考察、所望の機能性及び/又は製品デザインに必要とされる構成要素が含まれうるがこれらに限られない。筐体602は、例えば可変の断面又は一定の断面を含む、任意の適切な断面を有しうる。幾つかの実施形態では、断面は、筐体602の所望の構造特性に基づいて選択されうる。例えば、筐体602の断面は、筐体602の高さが筐体602の幅よりも実質的に大きくなるように、略矩形でありうる。このような断面形状は、圧縮及び張力、並びに曲げにおける構造剛性をもたらしうる。幾つかの実施形態では、筐体602の断面の寸法は、筐体602に内包される構成要素の寸法に関連して決定されうる。幾つかの実施形態では、筐体602は、1つ以上の開口部、ノブ、拡張部、フランジ、面取り部、若しくは、デバイスの構成要素又は要素を受け入れるための他の特徴を含む、さらなる特徴(図示せず)を含みうる。筐体602の特徴は、例として、例えば、内部構成要素又は構成要素層を保持するために内面から、又は外面からを含めた、筐体のいずれかの表面から延在しうる。特に、筐体602は、電子デバイス600内にカード又はトレーを受け入れるためのスロット又は開口部(図示せず)を含みうる。筐体602は、例えば、それを通じてコネクタが電子デバイス600の1つ以上の導電ピンを係合することができる30-ピンコネクタなどのためのコネクタ用の開口部(図示せず)も含みうる。筐体602に含まれうる他の特徴としては、ユーザに音響を提供するための開口部、ユーザから音響を受信するための開口部、コネクタ用の開口部(例えば、オーディオコネクタ又は電源コネクタ)、及び/又は、音量制御又は消音スイッチなどのボタンを保持し有効にする特徴が挙げられうるが、これらに限られない。
【0102】
上記はさまざまな実施形態を対象としているが、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態は、それらの基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、それらの範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【0103】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0104】
実施形態1
電子デバイスの表示画面を覆う大きさの第1の強化された基板を備えたデバイス表示画面プロテクタであって、前記第1の強化された基板が、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力(CT)値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する、デバイス表示画面プロテクタ。
【0105】
実施形態2
前記第1の強化された基板が、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される、強化されたガラス基板であることを特徴とする、実施形態1に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0106】
実施形態3
前記第1の強化されたガラス基板が、0.025~0.7mmの範囲の厚さ、及び500MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、並びに2μm~12μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板を備えたアフターマーケット画面プロテクタであることを特徴とする、実施形態2に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0107】
実施形態4
前記第1の強化されたガラス基板に接着した第2のガラス基板をさらに備えていることを特徴とする、実施形態2又は3に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0108】
実施形態5
少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する前記表面が外面であり、前記第1の強化されたガラス基板が、前記第2のガラス基板と接触する内面を有し、前記第1の強化されたガラス基板の前記外面及び内面が、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ(t)を画成することを特徴とする、実施形態4に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0109】
実施形態6
前記第2のガラス基板と前記第1の強化されたガラス基板とが、ともに接着剤で接着されることを特徴とする、実施形態4又は5に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0110】
実施形態7
前記画面プロテクタが積層体であり、前記接着剤が、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、イオノマー、シリコーン、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、及びそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態6に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0111】
実施形態8
前記第1の強化された基板が、厚さ(t)、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力(CS)値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さ(DOL)の値を有することを特徴とする、実施形態1~7のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0112】
実施形態9
前記第1の強化された基板のCS/CT比が、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であり、前記DOLが10マイクロメートル以下であることを特徴とする、実施形態8に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0113】
実施形態10
前記第1の強化された基板のt/DOL及びCS/CTの比が、いずれも、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、又は90以上であることを特徴とする、実施形態8に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0114】
実施形態11
耐スクラッチフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、プライバシー画面、抗菌添加剤、疎油性コーティング、疎水性コーティング、エネルギー吸収層、及び犠牲ポリマー層のうちの1つ以上をさらに含むことを特徴とする、実施形態1~10のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0115】
実施形態12
前記第1の強化された基板が、摩耗、引っ掻き、及び圧痕によって生じる損傷に対して高度の耐性を有する、イオン交換可能なガラスを含むことを特徴とする、実施形態1~11のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0116】
実施形態13
前記画面プロテクタが、0.025mm~0.7mmの範囲の厚さ、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の圧縮深さの値を有することを特徴とする、実施形態1~12のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0117】
実施形態14
前記第1の強化された基板が、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を有するガラスを含み、かつ、3配位を有するホウ素カチオンを含むことを特徴とする、実施形態1~13のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0118】
実施形態15
前記第1の強化されたガラス基板が、少なくとも3重量キログラム(kgf)(約29.4N)のビッカース亀裂開始閾値を有することを特徴とする、実施形態14に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0119】
実施形態16
前記画面プロテクタが、湾曲した表面を有することを特徴とする、実施形態1~15のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0120】
実施形態17
前記第1の強化された基板が、鋭い衝撃による損傷に対して耐性である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含むことを特徴とする、実施形態1~16のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0121】
実施形態18
前記第1の強化された基板が、少なくとも4モル%のP2O5を有するガラスを含み、前記第1の強化されたガラス基板が、少なくとも約3kgf(約29.4N)のビッカース圧痕亀裂開始荷重を有することを特徴とする、実施形態1~17のいずれかに記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0122】
実施形態19
前記ガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5及び0モル%~約4モル%のB2O3を含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含み、該アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、Li2Oを含まず、1.3<[(P2O5+R2O)/M2O3]≦2.3であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、R2Oが前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計であることを特徴とする、実施形態18に記載のデバイス表示画面プロテクタ。
【0123】
実施形態20
電子デバイスの表示画面の保護方法であって、前記電子デバイスの画面を、0MPa超かつ20MPa未満の範囲の中央張力値と、少なくとも3Nのヌープ横方向亀裂引っ掻き閾値を有する表面とを有する第1の強化された基板で覆う工程を含む、方法。
【0124】
実施形態21
前記第1の強化された基板が、化学的に強化されたガラス基板、熱的に強化されたガラス基板、並びに、化学的及び熱的に強化されたガラス基板からなる群より選択される、強化されたガラス基板であることを特徴とする、実施形態20に記載の方法。
【0125】
実施形態22
前記電子デバイスがカバーガラスを含み、前記第1の強化された基板がアフターマーケットガラス画面プロテクタであり、前記方法が、接着剤を用いて、前記第1の強化されたガラス基板を前記カバーガラスに貼り付ける工程を含むことを特徴とする、実施形態20又は21に記載の方法。
【0126】
実施形態23
前記第1の強化された基板が、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~20μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、実施形態20~22のいずれかに記載の方法。
【0127】
実施形態24
前記第1の強化された基板が、300MPa~900MPaの範囲の圧縮応力値、及び2μm~12μmの範囲の層の深さの値を有する、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、実施形態20~22のいずれかに記載の方法。
【0128】
実施形態25
前記第1の強化された基板が、接着剤を用いて第2のガラス基板に積層されて、前記電子デバイスの前記画面を覆う積層カバーガラスをもたらす、化学的に強化されたガラス基板であることを特徴とする、実施形態20~24のいずれかに記載の方法。
【0129】
実施形態26
前面、裏面、及び側面を有する筐体、
前記筐体の内部に少なくとも部分的に設けられている電気部品、
前記筐体の前記前面にある又はそれに隣接している表示、及び
前記表示の上に配置された、実施形態1~19のいずれかに記載される表示画面プロテクタ
を備えている、デバイス。
【0130】
実施形態27
前記表示の上に配置されたカバーガラスをさらに備えており、前記表示画面プロテクタが、前記カバーガラスの上に配置されていることを特徴とする、実施形態26に記載のデバイス。
【符号の説明】
【0131】
10 第1の強化された基板
50 小さい亀裂
60 圧縮応力領域
80 中央張力領域
90 大きい亀裂
100 第1の強化された基板
102 矢印
105 外面
110,120 圧縮応力領域
125 内面
130 第1の強化された基板
150 第2の強化された基板
155 第3の表面
160,170 圧縮応力領域
175 第4の表面
180 中央張力領域
200 積層体
210,220 接着剤層
250 カバーガラス
300 デバイス
400 ハンドヘルドデバイス
500, 550 湾曲基板
502, 552 湾曲した表面
600 大衆消費電子デバイス
602 筐体
604 前面
606 裏面
608 側面
610 表示
612 カバー基板