(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230725BHJP
B60N 2/427 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/427
(21)【出願番号】P 2019017451
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】山口 貢載
(72)【発明者】
【氏名】小林 和樹
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忍
(72)【発明者】
【氏名】大川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 弘人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの骨格を構成するクッションフレームを備えた乗物用シートであって、
前記クッションフレームは、
当該クッションフレームの後側に位置し、乗員の荷重を受ける第一パンフレームと、
前記第一パンフレームよりも前側に位置し、乗員の荷重を受ける第二パンフレームと、
前記第一パンフレームと前記第二パンフレームとの間に位置し、前記第一パンフレームの前端部が
係合するフロントフレームと、を有しており、
前記第二パンフレームの下面には、乗物用シートに搭載された電装部品の動作を制御する制御装置が設けられ、
前記フロントフレームに対する前記第一パンフレームの
係合部位
への前方からの接触に対する保護を可能とするために、当該
係合部位と前記制御装置とが前後方向に隣接して配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記制御装置の下面が、前記
係合部位よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記フロントフレームにおける側端部が湾曲して形成されており、
前記湾曲した側端部が、前記制御装置の側面に対向していることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記制御装置は、前記湾曲した側端部よりもシート中央側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記
係合部位の前側面と前記制御装置の後側面とが対向していることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第二パンフレームの下面には、当該第二パンフレームの上方に向かって凹む形状の凹部が形成されており、
前記制御装置は、前記第二パンフレームの下面に対し、前記凹部を跨いで配置固定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記シートクッションは、
前記クッションフレームと、
前記クッションフレームにおける前記第一パンフレーム及び前記第二パンフレームの上面に設けられたクッションパッドと、
前記第一パンフレーム及び前記第二パンフレームの周縁部から前記クッションパッドを被覆する表皮と、を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおけるシートクッションとフロアパネルとの間には隙間が形成される場合が多く、隙間には、乗員の手や指が入れられたり、例えばメンテンナンス時に工具が入れられたりすることがある。一方、シートクッションの下面には、シートクッションの性能を保つべき部位(例えば乗員の荷重を受ける受圧部材)がある。そのため、そのような部位が、隙間に入れられた手・指や工具によって、クッションフレームから不意に取り外されてしまうような事態の発生を抑制することが求められている。
そこで、従来、シートクッションの下面に樹脂成型品のカバーを取り付けたり、全体が表皮材で被覆されたシートクッションを乗物のフロアパネルに固定したりすることで、乗物用シートにおけるシートクッションの下面全面を被覆する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗物用シートにおけるシートクッションの下面には、当該乗物用シートに搭載された電装部品を制御するためのECU(Electronic Control Unit)装置が取り付けられたり、乗物用シートをフロアパネルに対して前後方向にスライドさせるスライド機構が設けられたりする場合がある。そのため、従来のように、シートクッションの下面全面をカバーで被覆してしまうと、ECU装置のメンテナンス作業や、スライド機構の動作が妨げられてしまうおそれがある。
しかしながら、一方では、シートクッションの下面にあるシートクッションの性能を保つべき部位を保護したいという要望もある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シートクッションの下面全面を被覆せずとも、保護すべき部位を保護することが可能な乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、シートクッションの骨格を構成するクッションフレームを備えた乗物用シートであって、
前記クッションフレームは、
当該クッションフレームの後側に位置し、乗員の荷重を受ける第一パンフレームと、
前記第一パンフレームよりも前側に位置し、乗員の荷重を受ける第二パンフレームと、
前記第一パンフレームと前記第二パンフレームとの間に位置し、前記第一パンフレームの前端部が係合するフロントフレームと、を有しており、
前記第二パンフレームの下面には、乗物用シートに搭載された電装部品の動作を制御する制御装置が設けられ、
前記フロントフレームに対する前記第一パンフレームの係合部位への前方からの接触に対する保護を可能とするために、当該係合部位と前記制御装置とが前後方向に隣接して配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、前記制御装置の下面が、前記係合部位よりも下方に位置していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の乗物用シートにおいて、前記フロントフレームにおける側端部が湾曲して形成されており、
前記湾曲した側端部が、前記制御装置の側面に対向していることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の乗物用シートにおいて、前記制御装置は、前記湾曲した側端部よりもシート中央側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、前記係合部位の前側面と前記制御装置の後側面とが対向していることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、前記第二パンフレームの下面には、当該第二パンフレームの上方に向かって凹む形状の凹部が形成されており、
前記制御装置は、前記第二パンフレームの下面に対し、前記凹部を跨いで配置固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
前記シートクッションは、
前記クッションフレームと、
前記クッションフレームにおける前記第一パンフレーム及び前記第二パンフレームの上面に設けられたクッションパッドと、
前記第一パンフレーム及び前記第二パンフレームの周縁部から前記クッションパッドを被覆する表皮と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、例えば、シートクッションとフロアパネルとの間に形成された隙間に、前方から乗員の手や指が入れられたり、メンテンナンス時に工具が入れられたりしても、保護対象である係合部位よりも先に制御装置に接することになる。すなわち、制御装置が、隙間から入ってきた手・指や物体に対する障壁となり、保護対象である係合部位へのアクセスを困難にするため、シートクッションの下面全面を被覆せずとも、保護すべき部位を保護しやすくなる。そして、結果的に、第一パンフレームがフロントフレームから外れてしまうような事態の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、制御装置の下面が、係合部位よりも下方に位置しているので、制御装置が、隙間から入ってきた手・指や物体に対する障壁となりやすく、保護対象である係合部位へのアクセスがより困難になる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、フロントフレームにおける湾曲した側端部が、制御装置の側面に対向しているので、当該湾曲した側端部によって、保護対象である取付部位へのアクセスがより困難になる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、制御装置は、湾曲した側端部よりもシート中央側に配置されているので、例えば、シートクッションとフロアパネルとの間に形成された隙間に、側方から乗員の手や指が入れられたり、メンテンナンス時に工具が入れられたりしても、湾曲した側端部によって、保護対象である取付部位へのアクセスがより困難になる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、係合部位の前側面と制御装置の後側面とが対向しているので、制御装置によって、保護対象である係合部位における前側面へのアクセスが困難になる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、凹部によって第二パンフレームの剛性を向上させることができ、このように剛性が向上した部分に制御装置を設けることができるので、第二パンフレームに対する制御装置の固定状態を安定的かつ強固にすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、表皮が、第一パンフレーム及び第二パンフレームの周縁部からクッションパッドを被覆するので、シートクッションの下面全面を被覆せず、制御装置のメンテナンス作業を行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】乗物用シートの骨格を構成するシートフレームを示す斜視図である。
【
図4】クッションフレームの裏面側を示す斜視図である。
【
図5】クッションサイドフレーム等を省略した状態で、クッションフレームの裏面側における要部付近を示す斜視図である。
【
図6】クッションサイドフレーム等を省略した状態で、クッションフレームの裏面側における要部付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0022】
本実施形態における乗物用シートは、人の大腿部及び臀部を支持するシートクッションと、下端部がシートクッションに支持され、かつ背凭れとなるシートバックと、を少なくとも備える。必要に応じて、人の頭部を支持するヘッドレストや、人の腕部を支持するアームレスト、人の脚部を支持するオットマン等の補助支持部が設けられる。
このような乗物用シートは、乗用車である自動車に設けられるものとするが、これに限られるものではなく、バスやトラック等の他の自動車に設けられるものとしてもよいし、鉄道や船舶、航空機等の自動車以外の乗物に設けられるものとしてもよい。
【0023】
図1~
図3において符号1は、シートクッションの骨格を形成するクッションフレームを示し、符号8は、シートバックの骨格を形成するバックフレームを示す。
シートクッションは、クッションフレーム1と、クッションフレーム1上に設けられたクッションパッド(図示省略)と、クッションフレーム1及びクッションパッドを被覆してシートクッションの表面を構成する表皮(図示省略)と、から主に構成される。
シートバックも同様に、バックフレーム8と、バックフレーム8前に設けられたクッションパッド(図示省略)と、バックフレーム8及びクッションパッドを被覆してシートバックの表面を構成する表皮(図示省略)と、から主に構成される。
なお、バックフレーム8は、一定以上の速度で自動車が真横から衝突した時と同等か、それ以上の衝撃を受けた時に膨らむサイドエアバッグ8aを備えている。このサイドエアバッグ8aは、自動車の外側に配置されている。また、このサイドエアバッグ8aは、後述する着座センサー10と連携しており、乗物用シートに人が座っていない状態においては作動しないように設定されている。
【0024】
クッションフレーム1は、左右一対のクッションサイドフレーム2,3と、各クッションサイドフレーム2,3の後端部を連結するバックパイプフレーム4と、各クッションサイドフレーム2,3の前端部を連結するフロントパイプフレーム5(すなわち、フロントフレーム)と、乗員の荷重を受ける受圧部材としての第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60と、から主に構成されている。
左右一対のクッションサイドフレーム2,3は、後端部においてバックフレーム8と連結されるため、この後端部は、上方に向かって湾曲したような状態となっている。
バックパイプフレーム4はパイプ材であり、上記のように湾曲した左右一対のクッションサイドフレーム2,3の後端部を連結しているため、フロントパイプフレーム5よりも上方に位置している。
フロントパイプフレーム5はパイプ材であり、
図3~
図5に示すように、右側端部5aがクランク状(屈曲部が2か所ある。)に湾曲して形成されている。
【0025】
クッションフレーム1の下には、乗員の操作に基づいて乗物のフロアに対してクッションフレーム1を任意の前後位置までスライドさせる左右一対のスライドレール6,7が設けられている。左側のスライドレール6は、左側のクッションサイドフレーム2に取り付けられ、右側のスライドレール7は、右側のクッションサイドフレーム3に取り付けられている。スライドレール6,7には、これらスライドレール6,7の動作をロック及びロック解除を行うロック機構が設けられているものとする。
シートクッションは、このようにクッションフレーム1の下にスライドレール6,7が設けられているため、フロアパネルから上方に隙間を空けて配置されることになる。すなわち、人の手・指や工具等が、シートクッションの下方に入るスペースが形成されている。
なお、シートクッションの左右にスライドレール6,7が設けられているため、隙間に手・指や工具が入れられる場合は、主に前方若しくは後方から入れられることになる。
また、隙間の前方には、上記のロック機構から延び、当該ロック機構を操作するための操作レバーLが位置している。
【0026】
クッションフレーム1と共にシートクッションを構成する上記のクッションパッドは、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60上に設けられるようになっている。
また、上記の表皮は、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の周縁部からクッションパッドを被覆している。つまり、シートクッションの下面は、表皮によって周縁部が被覆され、周縁部よりも中央側が被覆されずに開口した状態となっており、シートクッションの側面及び上面は表皮によって被覆されている。
換言すれば、シートクッションの下面における中央付近は、表皮が設けられずに開口しているため、この開口から、クッションフレーム1やクッションフレーム1に設けられた装置等のメンテナンス作業を行うことができるようになっている。
【0027】
以下、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の詳細な構成について説明する。
第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60は、乗員の荷重を受ける金属製の板材からなる受圧部材であり、これら第一パンフレーム50と第二パンフレーム60とが組み合わせられて用いられることで略箱形に形成され、クッションパッドが収容可能となっている。
また、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60には、当該第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60に各種ケーブルや装置を留め付けるためのクリップ部材20,30が差し込まれる取付孔(貫通孔)が複数形成されている。
【0028】
まず、第一パンフレーム50は、クッションフレーム1における後側に位置しており、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の臀部の下方に位置している。
この第一パンフレーム50は、後端部51aがバックパイプフレーム4に取り付けられ、前端部51bがフロントパイプフレーム5に取り付けられており、バックパイプフレーム4とフロントパイプフレーム5との間に架け渡された状態となっている。
【0029】
第一パンフレーム50は、クッションパッドを受ける底面部51を有している。
底面部51は、後端部51aが後方に向かうにつれて徐々にせり上がり、前端部51bが前方に向かうにつれて徐々にせり上がり、後端部51aの両側に位置する両側端部51cが側方に向かうにつれて徐々にせり上がるようにして形成されている。すなわち、第一パンフレーム50における底面部51は、クッションパッドを受けやすい形状に形成されている。
【0030】
第一パンフレーム50は、バックパイプフレーム4に取り付けられる取付部位として、第一後側フック52a、第二後側フック52b、第三後側フック52cを有し、フロントパイプフレーム5に取り付けられる取付部位として、第一前側フック53a、第二前側フック53b、第三前側フック53cを有している。
これら各フック52a~52c,53a~53cは、各パイプフレーム4,5の直径と略等しい内径に設定されたフック状部である。
【0031】
第一後側フック52a、第二後側フック52b、第三後側フック52cは、底面部51における後端部51aに一体形成されており、等間隔に配置されている。
左右に設けられた第一後側フック52aと第三後側フック52cは等しい形状に形成されており、中央に設けられた第二後側フック52bは、左右の第一及び第三後側フック52a,52cよりも左右に向かって幅広に形成されている。
そして、第一後側フック52a、第二後側フック52b、第三後側フック52cが、バックパイプフレーム4に上方から引っ掛けられることによりバックパイプフレーム4に取り付けられている。
【0032】
第一前側フック53a、第二前側フック53b、第三前側フック53cは、底面部51における前端部51bに一体形成されており、等間隔に配置されている。
左右に設けられた第一前側フック53aと第三前側フック53cは等しい形状に形成されており、中央に設けられた第二前側フック53bは、左右の第一及び第三前側フック53a,53cよりも左右に向かって幅広に形成されている。
そして、第一前側フック53a、第二前側フック53b、第三前側フック53cが、フロントパイプフレーム5に上方から引っ掛けられることによりフロントパイプフレーム5に取り付けられている。
【0033】
第一パンフレーム50は、上記のように各フック52a~52c,53a~53cが、各パイプフレーム4,5に対して上方から引っ掛けられ、さらにクッションパッドの大部分を受け、その上、表皮によって被覆されている。
このことから、例えばメンテナンス作業時などに各フック52a~52c,53a~53cが各パイプフレーム4,5から外れてしまうと、表皮を剥がしたり、クッションパッドを取り除いたりしてから各フック52a~52c,53a~53cを各パイプフレーム4,5に引っ掛けなおす必要があり、手間がかかる。
そのため、各パイプフレーム4,5に対する第一パンフレーム50の取付部位(各フック52a~52c,53a~53cの箇所)は保護対象とされている。
特にシートクッションの下面は、表皮によって中央側が被覆されずに開口した状態となっているため、当該開口から露出するフロントパイプフレーム5に対して取り付けられた各前側フック53a~53cの箇所は、重要な保護対象とされている。
【0034】
第一パンフレーム50の上面のうち幅方向中央領域には、
図1,
図2に示すように、第一パンフレーム50の上面よりも一段低い凹状部50aが設けられており、その凹状部50aにセンサー10が配置されている。なお、凹状部50aの左右両側には、第一パンフレーム50の表側と裏側を連通する開口部50bが形成されている。
センサー10は、例えば、乗員がシートに着座しているか否かを検知可能な着座センサー(ポジションセンサーともいう。)とされている。すなわち、着座センサー10は、シートクッションの幅方向中央領域において受圧部材である第一パンフレーム50の上側に配置されている。
【0035】
着座センサー10は凹状部50aに直接取り付けられてもよいが、本実施形態における着座センサー10は取付ブラケット11に固定され、着座センサー10が固定された取付ブラケット11が凹状部50a内に配置されるようになっている。
乗員が乗物用シートに着座するとクッションパッドを介して乗員の荷重が着座センサー10にかかる。その際、着座センサー10が取付ブラケット11を介して凹状部50aに取り付けられていれば、乗員の荷重が着座センサー10にかかった際にその一部を取付ブラケット11が吸収するため、着座センサー10が凹状部50aに直接取り付けられる場合に比べて、着座センサー10に及ぶ乗員の荷重の影響が少なくなる。
【0036】
なお、第一パンフレーム50に替えて、例えば所謂Sバネフレームが受圧部材として採用される場合は、図示はしないが、Sバネフレーム間に凹状部50aを構成するブラケット部材を架け渡し、そのブラケット部材上に着座センサー10を固定するものとする。
また、受圧部材としてSバネフレームが採用された場合、このSバネフレームも、第一パンフレーム50と同様に、後端部と前端部に、上記の各フック52a~52c,53a~53cを備えているものとする。
【0037】
着座センサー10には、
図1~
図4に示すように、当該着座センサー10と制御装置12(後述する)とを電気的に接続するハーネス13(ワイヤーハーネス、ケーブルハーネスともいう。)のうち平らに形成されたフラットケーブル15aが接続されている。
フラットケーブル15aは、後述する第一サブケーブル15に一体的に接続されたケーブルであり、凹状部50aの両側に形成された開口部50bのうち、いずれか一方の開口部50bから通されて、第一パンフレーム50の裏側(下側)に配線されている。なお、本実施形態においては、フラットケーブル15aは、左側の開口部50bから通されている。
【0038】
続いて、第二パンフレーム60は、第一パンフレーム50よりも前側に位置しており、通常のドライビングポジションで着座した場合に、乗員の大腿部の下方に位置している。
この第二パンフレーム60は、左右の側端部が、左右一対のクッションサイドフレーム2,3に取り付けられて架け渡された状態となっている。
また、この第二パンフレーム60は、大部分がフロントパイプフレーム5よりも前方に位置している。
【0039】
第二パンフレーム60は、全体が一体形成されており、クッションパッドを受ける底面部61と、底面部61の前方に位置してクッションフレーム1における前縁を構成する前端部62と、底面部61の左右両側に位置して左右一対のクッションサイドフレーム2,3と共にクッションフレーム1における左右の側縁を構成する左右の側端部63,64と、を有している。
【0040】
底面部61は、前端部62及び左右の側端部63,64に対して下方に凹んだ状態となっており、その後方には、フロントパイプフレーム5と当該フロントパイプフレーム5に引っ掛けられた各前側フック53a~53cが位置している。
また、第二パンフレーム60における底面部61の下面には、
図6に示すように、上方に向かって凹む形状の凹部61aが形成されている。この凹部61aは、
図1に示すように、上方から見た場合には凸部として認識されることとなる。
さらに、凹部61a(凸部)は、底面部61における左側端部から右側端部にかけて形成されている。このような凹部61aには、
図4に示すように、後述するハーネス13が配線されている。
【0041】
前端部62及び左右の側端部63,64は、緩やかに湾曲するようにして一体形成されており、左右の側端部63,64における後端部は、
図2に示すように、フロントパイプフレーム5よりも後方に位置している。
左右の側端部63,64は、左右一対のクッションサイドフレーム2,3における前端部に対して上方から被せられるようにして載せられるとともに一体的に接合されている。
【0042】
そして、第二パンフレーム60の下面には、乗物用シートに搭載された電装部品の動作を制御する制御装置12が設けられている。
このような制御装置12は、所謂ECU(Electric Control Unit)装置であり、例えば電源装置や後述する着座センサー10からの信号の処理装置、乗物用シートに装備される電装部品(モータ、センサ、ブロア等)を制御する。
制御装置12は、後述するハーネス13と共にクッションフレーム1の裏面(下面)に設けられており、ハーネス13以外の他のハーネス又はケーブルとも接続されている。
【0043】
制御装置12は、直方体状に形成されており、上面が第二パンフレーム60の下面に接する本体部12aと、本体部12aに装着されて内部を遮蔽する蓋部12bと、を備えている。このような制御装置12は、その本体部12aが、第二パンフレーム60の下面に対し、凹部61aを跨いで配置固定されている。
また、制御装置12における後側面12cが、フロントパイプフレーム5における湾曲した右側端部5aを除くストレートな部位と平行な状態となるように配置されている。
【0044】
制御装置12の配置についてより詳細に説明すると、制御装置12は、クッションフレーム1における第二パンフレーム60の裏面において、左右方向の一方(右)に配置されている。
また、この制御装置12と、第一パンフレーム50における第三前側フック53cとが前後方向に隣接して配置されている。そして、第三前側フック53cの前側面と制御装置12の後側面12cとが対向している。つまり、制御装置12は、第一パンフレーム50における第三前側フック53cの前に配置された状態となっている。なお、制御装置12の後側面12cにおける左右の幅寸法は、第三前側フック53cにおける左右の幅寸法よりも長く設定されている。
さらに、制御装置12の下面(すなわち、蓋部12bの下方を向く面)は、
図6に示すように、第三前側フック53cよりも下方に位置している。なお、制御装置12の後側面12cにおける上下寸法は、第三前側フック53cにおける上下寸法よりも長く設定されていることが好ましい。
【0045】
フロントパイプフレーム5における湾曲した右側端部5aは、制御装置12の右側面に対向した状態となっている。すなわち、
図3~
図5に示すように、制御装置12は、湾曲した右側端部5aよりもシート中央側に配置されており、その上、制御装置12よりも後方に位置するフロントパイプフレーム5は、その右側端部5aが、後方から前方側に一回屈曲し、さらにその先で右側に屈曲した状態となっている。
【0046】
以上のような制御装置12には、ハーネス13(メインケーブル14)が接続されている。
ハーネス13は、メインケーブル14と、メインケーブル14から分岐する第一サブケーブル15及び第二サブケーブル16と、を有する。
このようなハーネス13は、上記のフラットケーブル15a以外が、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の裏側(下側)に配置されている。
【0047】
メインケーブル14は、
図3に示すように、制御装置12に接続されており、制御装置12と接続された方とは反対側に分岐部14aを備えている。
分岐部14aは、着座センサー10の側方に離間する地点に配置されている。当該地点は、第一パンフレーム50の裏面における凹状部50aの側方(本実施形態においては左側方)に離間した部位の周辺領域を指している。
そして、メインケーブル14は、着座センサー10の側方に離間する地点(以下、地点P)においてクリップ部材20によって固定され、分岐部14aも地点Pに配置されている。
【0048】
第一サブケーブル15は、分岐部14aにおいて第二サブケーブル16と分岐して伸びるケーブルであり、着座センサー10に近い側の端部には、着座センサー10に接続されるフラットケーブル15aが一体的に接続されており、第一サブケーブル15の途中部分において一方の丸型ケーブルと他方の丸型ケーブルとを接続するコネクタ15bを備えている。
【0049】
第二サブケーブル16は、分岐部14aにおいて第一サブケーブル15と分岐して伸びるケーブルであり、シートクッションの幅方向に沿って配置され、コネクタを介して他のケーブルに接続されている。
【0050】
また、ハーネス13のメインケーブル14及び第一サブケーブル15を、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60に固定するために、クリップ部材20,30が適宜用いられる。そのため、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60には、クリップ部材20,30が取り付けられて係止される取付孔が複数形成されている。
【0051】
また、ハーネス13を構成する第一サブケーブル15及び第二サブケーブル16やその他のケーブルは、
図3に示すように、第二パンフレーム60の左右方向に配索されるとともに、第一パンフレーム50の裏面において、左右方向の他方(左)に配置されている。また、左右方向の一方(右)に繋がれたケーブル(メインケーブル14を含む各種ケーブル)は、他方(左)側に向かうようにして配索されている。
つまり、クッションフレーム1における第二パンフレーム60の裏面においては、左右方向の一方側に制御装置12が配置され、他方側にハーネス13(14~16)やその他のケーブル類(分岐部14aなども含む)がまとめられて配置されている。そして、着座センサー10は、これら制御装置12と、まとめられて配置されたハーネス13等との間に設けられた状態となっている。これにより、制御装置12とハーネス13等との干渉を避けることができるようになっている。
【0052】
以上のように構成された乗物用シートにおけるシートクッションは、上述のように、フロアパネルから上方に隙間を空けて配置されている。また、シートクッションの左右側端部には、シートクッションを支持するスライドレール6,7が設けられているため、人の手・指やメンテナンス作業などを行う際に用いられる工具等は、シートクッションの前方又は後方から隙間に向かって入れられることになる。
さらに、第一パンフレーム50の後端部51aが取り付けられたバックパイプフレーム4は、上述のように、左右一対のクッションサイドフレーム2,3の後端部が上方に向かって湾曲したような状態となっており、これに伴ってフロントパイプフレーム5よりも上方に位置している。
そのため、バックパイプフレーム4に対する第一パンフレーム50の取付部位(後端部51a:各後側フック52a~52c)よりも、フロントパイプフレーム5に対する第一パンフレーム50の取付部位(前端部51b:各前側フック53a~53c)の方が、人の手・指や工具が接触しやすい状況となっている。
【0053】
このような状態を踏まえ、フロントパイプフレーム5に引っ掛けられた第一前側フック53a、第二前側フック53b、第三前側フック53cのうち、少なくとも一つの前側フック(本実施形態においては第三前側フック53c)の前方に制御装置12が配置されている。これによって、シートクッションとフロアパネルとの間に形成された隙間に、前方から乗員の手や指が入れられたり、メンテンナンス時に工具が入れられたりしても、保護対象である取付部位(第三前側フック53c)よりも先に制御装置12に接することになる。
なお、本実施形態においては、着座センサー10に接続された各種ケーブルの配索を考慮して制御装置12が右側の第三前側フック53cの前方に配置されているが、左側の第一前側フック53aや真ん中の第二前側フック53bの前方に配置されてもよいものとする。
【0054】
本実施の形態によれば、フロントパイプフレーム5に対する第一パンフレーム50の取付部位(第三前側フック53c)が保護対象とされ、当該取付部位53cと制御装置12とが前後方向に隣接して配置されているので、制御装置12が、隙間から入ってきた手・指や物体に対する障壁となり、保護対象である取付部位(第三前側フック53c)へのアクセスを困難にするため、シートクッションの下面全面を表皮によって被覆せずとも、保護すべき部位(第三前側フック53c)を保護しやすくなる。そして、結果的に、第一パンフレーム50がフロントパイプフレーム5から外れてしまうような事態の発生を抑制することができる。
【0055】
また、制御装置12の下面が、取付部位である第三前側フック53cよりも下方に位置しているので、制御装置12が、隙間から入ってきた手・指や物体に対する障壁となりやすく、保護対象の取付部位である第三前側フック53cへのアクセスがより困難になる。
すなわち、隙間から入ってきた手・指や工具は、下方に突出する制御装置12を越えなければ後方側の第三前側フック53cに接触できない状態となっている。
【0056】
また、フロントパイプフレーム5における湾曲した右側端部5aが、制御装置12の側面に対向しているので、当該湾曲した右側端部5aによって、保護対象の取付部位である第三前側フック53cへのアクセスがより困難になる。
【0057】
また、制御装置12は、湾曲した右側端部よりもシート中央側に配置されているので、例えば、シートクッションとフロアパネルとの間に形成された隙間に、側方から乗員の手や指が入れられたり、メンテンナンス時に工具が入れられたりしても、湾曲した右側端部によって、保護対象の取付部位である第三前側フック53cへのアクセスがより困難になる。
【0058】
また、取付部位である第三前側フック53cの前側面と制御装置12の後側面12cとが対向しているので、制御装置12によって、保護対象の取付部位である第三前側フック53cにおける前側面へのアクセスが困難になる。
【0059】
また、制御装置12は、第二パンフレーム60の下面に対し、凹部61aを跨いで配置固定されているので、凹部61aによって第二パンフレーム60の剛性を向上させることができ、このように剛性が向上した部分に制御装置12を設けることができるので、第二パンフレーム60に対する制御装置12の固定状態を安定的かつ強固にすることができる。
【0060】
また、シートクッションは、クッションフレーム1と、クッションフレーム1における第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の上面に設けられたクッションパッドと、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の周縁部からクッションパッドを被覆する表皮と、を有するので、表皮が、第一パンフレーム50及び第二パンフレーム60の周縁部からクッションパッドを被覆することになり、シートクッションの下面全面を被覆せず、制御装置12のメンテナンス作業を行いやすい。
【符号の説明】
【0061】
1 クッションフレーム
2 クッションサイドフレーム
3 クッションサイドフレーム
4 バックパイプフレーム
5 フロントパイプフレーム
5a 右側端部
50 第一パンフレーム
51 底面部
51a 後端部
51b 前端部
51c 側端部
52a 第一後側フック
52b 第二後側フック
52c 第三後側フック
53a 第一前側フック
53b 第二前側フック
53c 第三前側フック
60 第二パンフレーム
61 底面部
61a 凹部
62 前端部
63 左側端部
64 右側端部
6 スライドレール
7 スライドレール
8 バックフレーム
10 着座センサー
12 制御装置
12a 本体部
12b 蓋部
12c 後側面
13 ハーネス
L 操作レバー