(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230725BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230725BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20230725BHJP
H01M 50/174 20210101ALI20230725BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20230725BHJP
H01M 50/555 20210101ALI20230725BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20230725BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/121
H01M50/174
H01M50/533
H01M50/555
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2019034812
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武典
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016263(JP,A)
【文献】特開2005-135764(JP,A)
【文献】特開2018-206533(JP,A)
【文献】特開2016-081635(JP,A)
【文献】特開2000-106154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の片面に正極を形成した正極電極と、
前記正極電極と対向し集電体の正極と対向する面に負極を形成した負極電極と、
前記正極電極と
前記負極電極との間に位置する複数の固体電解質と、隣接する
前記複数の固体電解質の間にそれぞれ位置して集電体の片面に正極を形成し正極と反対側の面に負極を形成した複数のバイポーラ電極とを備える固体電池積層体と、
前記正極電極に隣接して配置された正極端子板と、
前記負極電極に隣接して配置された負極端子板と、
前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を金型内にインサートし、加圧状態での高圧樹脂の射出により前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を封止する樹脂ケースと、
を備え
、
前記正極端子板及び前記負極端子板は前記固体電池積層体よりも長く伸び前記固体電池積層体の方向に屈曲した端子部がそれぞれ形成され、
前記樹脂ケースは前記正極端子板の屈曲した端子部及び前記負極端子板の屈曲した端子部を覆う端子台を備え、
前記端子台は全固体電池を電気接続する際の目安となるよう前記樹脂ケースのケース面から突出するように形成され、
ナットタイプ接続の場合、前記端子部にはナット型端子が取り付けられ、前記端子台は前記ナット型端子への接続を行うための目安となり、ボルトタイプ接続の場合、前記端子部にはボルト型端子が取り付けられ、前記端子台は前記ボルト型端子への接続を行うための目安となることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記樹脂ケースは前記端子部を覆う端子台が一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
集電体の片面に正極を形成した正極電極と、前記正極電極と対向し集電体の正極と対向する面に負極を形成した負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に位置する複数の固体電解質と、隣接する前記複数の固体電解質の間にそれぞれ位置して集電体の片面に正極を形成し正極と反対側の面に負極を形成した複数のバイポーラ電極とを備える固体電池積層体と、
前記正極電極に隣接して配置された正極端子板と、
前記負極電極に隣接して配置された負極端子板と、
前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を金型内にインサートし、加圧状態での高圧樹脂の射出により前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を封止する樹脂ケースと、
を備え、
前記樹脂ケースは前記高圧樹脂の射出時に前記固体電池積層体を積層方向に押す押し付け冶具を内部に含むことを特徴とする全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関し、特に、全固体電池ケースと電極端子を樹脂モールディング(型を使用した成形)で一体成形してセルのエネルギー密度を向上させる構造を有する全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の制御及び計装に使用される電力量が増大し、さらに、ハイブリッド自動車及び/または、電気自動車の実用化に伴い、自動車用蓄電池(二次電池)に要求される性能は、高くなっている。とりわけ、ハイブリッド自動車と電気自動車では、ガソリン車に比べて、大きな電池容量が必要になり、自動車全体に占める割合が重量面でも空間容積面でも大きくなっている。従って、蓄電池の小型化、軽量化が重要になっている。また、太陽光発電等の自然エネルギーによる発電設備でも蓄電池が使用されており、自動車用ほどではないにしても、小型化、軽量化の意味は大きい。
上記の背景のもとで、より大きなエネルギー密度の蓄電池として、リチウムイオン電池等の全固体電池が開発されている。全固体電池とは、電解液を使用しない電池であり、一般に固体電解質が使用される。
しかし、従来の全固体電池(例えば特許文献1)ではラミネートセルで開発されているが、セル内部からタップで電極端子を引き出すためにタップが必要になること、また、セルを連結してモジュール化する時も端子間を接続するためのスペースが必要であること、結果的に電池モジュールとしての体積エネルギー密度が低くなり電動での走行距離が減少すること、電解質が固体であるため、電解質と電極の間の界面抵抗が大きく、製造時に加圧工程(約500MPa)が必要であることなどの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の事情に鑑みなされたもので、電池ケースと電極端子を樹脂モールディングで一体成形してセルのエネルギー密度を向上させる構造を有する全固体電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による全固体電池は、集電体の片面に正極を形成した正極電極と、前記正極電極と対向し集電体の正極と対向する面に負極を形成した負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に位置する複数の固体電解質と、隣接する前記複数の固体電解質の間にそれぞれ位置して集電体の片面に正極を形成し正極と反対側の面に負極を形成した複数のバイポーラ電極とを備える固体電池積層体と、前記正極電極に隣接して配置された正極端子板と、前記負極電極に隣接して配置された負極端子板と、前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を金型内にインサートし、加圧状態での高圧樹脂の射出により前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を封止する樹脂ケースを備え、前記正極端子板及び前記負極端子板は前記固体電池積層体よりも長く伸び前記固体電池積層体の方向に屈曲した端子部がそれぞれ形成され、前記樹脂ケースは前記正極端子板の屈曲した端子部及び前記負極端子板の屈曲した端子部を覆う端子台を備え、前記端子台は全固体電池を電気接続する際の目安となるよう前記樹脂ケースのケース面から突出するように形成され、ナットタイプ接続の場合、前記端子部にはナット型端子が取り付けられ、前記端子台は前記ナット型端子への接続を行うための目安となり、ボルトタイプ接続の場合、前記端子部にはボルト型端子が取り付けられ、前記端子台は前記ボルト型端子への接続を行うための目安となることを特徴とする。
また、本発明による全固体電池は、集電体の片面に正極を形成した正極電極と、前記正極電極と対向し集電体の正極と対向する面に負極を形成した負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に位置する複数の固体電解質と、隣接する前記複数の固体電解質の間にそれぞれ位置して集電体の片面に正極を形成し正極と反対側の面に負極を形成した複数のバイポーラ電極とを備える固体電池積層体と、前記正極電極に隣接して配置された正極端子板と、前記負極電極に隣接して配置された負極端子板と、前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を金型内にインサートし、加圧状態での高圧樹脂の射出により前記固体電池積層体、前記正極端子板及び前記負極端子板を封止する樹脂ケースを備え、前記樹脂ケースは前記高圧樹脂の射出時に前記固体電池積層体を積層方向に押す押し付け冶具を内部に含むことを特徴とする。
【0006】
前記正極端子板及び前記負極端子板は、前記固体電池積層体よりも長く伸び前記固体電池積層体の方向に屈曲した端子部がそれぞれ形成され、前記樹脂ケースは前記端子部を覆う端子台が一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モジュール化やパック化でセルを連結する時、ボルトでの締結が可能になるので、振動などの外部からの衝撃に対して信頼性が向上する。また、セルの故障時に簡単に電池モジュールを交換処理できる。また、電極に均一に加圧することで、界面抵抗の低減が可能になる。また、セルの連結が簡素化されるので、連結の信頼性が向上する。また、セルの連結が簡素化されるので、連結のためのスペースを小さくできる。さらに、セルを機械的に連結することで、充放電時のセル膨張の抑制が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による全固体電池の電池モジュールを部分的に切断して、内部構造を見えるようにした斜視図である。
【
図2】
図1に示す全固体電池の内部構造を垂直断面により概略的に示す図である。
【
図3】本発明による電池モジュールを示す図(電極端子がナットタイプの例)である。(内部を示すために一部を切断面にしてある。)
【
図4】本発明による電池モジュールを示す図(電極端子がボルトタイプの例)である。内部を示すために一部を切断面にしてある。
【
図5】本発明による電池モジュールを直列に接続した例を示す図である。
【
図6】本発明による電池モジュールを並列に接続した例を示す図である。
【
図7】電池モジュールの樹脂ケースをモールド(型による成形)で成形する場合の詳細を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明による全固体電池のモジュール構造及びこれを用いた電池モジュールを実施するための具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による全固体電池のモジュール構造を部分的に切断して、内部構造が見えるようにした斜視図である。
【0010】
図1を参照すると、全固体電池のモジュール構造は、充放電を行う固体電池積層体20と、固体電池積層体20を挟み込むように位置する正極端子板30及び負極端子板40と、固体電池積層体20並びに正極端子板30及び負極端子板40の外周部を覆って全体を一体化する樹脂ケース50と、を含む。
【0011】
図2は、
図1に示す全固体電池の内部構造を垂直断面により概略的に示す図である。
図2を参照すると、固体電池積層体20は集電体21の片面に正極22を形成した正極電極23、正極電極23の反対側に位置し、集電体21の正極22と対向する面に負極24を形成した負極電極25、正極電極23と負極電極25との間に位置する複数の固体電解質26、及び隣接する複数の固体電解質26の間にそれぞれ位置して集電体21の片面に正極22を形成し正極22と反対側の面に負極24を形成した複数のバイポーラ電極27とを備える。
【0012】
このように固体電池積層体20は複数の層が積層されて構成されるが、部分的にみると正極22、固体電解質26、負極24がこの順に組み合わされた固体電池としての最小単位構造(単電池)が直列に複数配列された構造となっている。ここで固体電池積層体20に使用する材料は固体電池として機能する材料であればその種類や組合せに制限はない。固体電池積層体20のそれぞれの層には以下のような公知の材料が使用される。
【0013】
集電体21は、一般には金属箔が使用され、金属箔の材料としてはAl、SUS、Cu、Niなどの材料が使用される。固体電池積層体20には正極電極23、負極電極25、バイポーラ電極27の3種類の電極にそれぞれ集電体21を含むが、3種類の電極の材料は同じでもよいし、異なる材料でもよい。
【0014】
正極22は、正極活性物質を含み、正極活性物質としてはLiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiMnPO4等が挙げられる。正極は正極電極23とバイポーラ電極27とに含まれるが、正極電極23とバイポーラ電極27とで同一の正極活性物質を使用するのが好ましい。
【0015】
負極24は、負極活性物質を含み、負極活性物質としてはグラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料や、Li4Ti5O12等の無機酸化物が使用される。負極は負極電極25とバイポーラ電極27とに含まれるが、負極電極25とバイポーラ電極27とで同一の負極活性物質を使用するのが好ましい。
【0016】
固体電解質26の材料としては、酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質が使用され、酸化物系固体電解質としては、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3、Li0.5La0.5TiO3等が挙げられ、硫化物系固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiGe0.25P0.75S4等が挙げられる。
【0017】
図3は、本発明を実施して製造した電池モジュール1である。バイポーラ電極27によって電気的に直列に接続された6個の単電池1が、樹脂ケース4に収められている。単電池は、それぞれリチウムイオン電池である。他の全固体電池でも本発明は実施できる。
【0018】
バイポーラ電極は、板状の電極で、隣接する単電池において一方の単電池の正極でかつ他方の単電池の負極である電極である。バイポーラ構造、すなわちバイポーラ電極を用いた構造にすることにより、複数の単電池が電気的に直列に接続される。バイポーラ電極を用いた構造にすることにより、単電池間の電気抵抗を低くすることができ、また、電池モジュール及び電池全体をコンパクトにすることができる。上記のように正極電極、バイポーラ電極、負極電極を別個に製作して積層することもできるし、1枚のバイポーラ板として正極と負極を兼ねることもできる。その場合、バイポーラ電極の材質としては、電池の充放電の化学反応に伴って反応しないことと、電気抵抗が小さいことが必要であるので、炭素板、チタン板などが用いられる。
【0019】
この電池モジュール1は、単セル1を6個積層した状態で射出成形装置の中に置き、加圧しておき、その状態で樹脂の材料ペレット(パウダー)を加熱して融解した樹脂を金型内に、圧力100MPaで射出し、硬化したその樹脂により単セル6個を包み込む形で樹脂のケース4としてある。
【0020】
この樹脂ケース4には、
図3乃至
図6に示してあるように、単電池の側方の位置になる電池モジュールの端面の上部に、正極側端子32用の電極端子台と負極側端子31用の端子台が設けられており、それぞれに、正極側端子32と負極側端子31が設けられている。
【0021】
正極側端子32は正極電極23に隣接して配置された正極端子板を備え、負極側端子31は負極電極25に隣接して配置された負極端子板31aを備えている。(正極端子板は図示省略)。これらの正極端子板及び負極端子板31aは固体電池積層体20よりも長く伸びており、その延設端部に固体電池積層体20の方向に屈曲した端子部31b(正極端子板側の端子部は図示省略)が形成されている。
【0022】
樹脂ケース4は固体電池積層体20、正極端子板及び負極端子板31aを積層した状態で金型内にインサートして100MPaの高圧で溶融樹脂を射出し硬化させることにより形成される。これにより樹脂ケース4は固体電池積層体20、正極端子板及び負極端子板31aを封止する。このような高圧加圧による射出成形を行うことにより、全固体電池の界面抵抗を減少させることができる。
【0023】
樹脂ケース4は
図3、
図4に示すように、正極端子板の屈曲した端子部及び負極端子板31aの屈曲した端子部31bを覆う端子台4aを備えている。端子台4aは樹脂ケース4のケース面から突出するように形成されている。このような端子台4aは全固体電池を電気接続する際の目安とすることができる。
図3はナットタイプ接続の端子台4aを示し、端子部31bにナット型端子31cが取り付けられている。端子台4aはこのナット型端子31cへの接続を行うための目安となる。
図4はボルトタイプ接続の端子台4aを示し、ボルト型端子31dが端子部31bに取り付けられている。端子台4aはこのボルト型端子31dへの接続のための目安となる。
【0024】
図5に、上記の電池モジュールを6個集めて電池を構成した状態を示す。この例では、6個の電池モジュールを電気的に直列に接続している。また、
図6は6個の電池モジュールを並列に接続して電池全体を構成した場合を示す。いずれの場合も、電池モジュール上部に電極端子が、隣接する電池モジュールの電極端子に近く位置するようになっているので、接続のためのスペースが小さく、作業性もよく、電気的な抵抗も小さくできる。
【0025】
また、
図5及び
図6のように電池モジュールを複数集めて電池全体とする場合に、電池モジュール間に伝熱性の良い物質を挟んで構成することで放熱を良くすることができる。
【0026】
図7に電池モジュールの筐体をモールド(型による成形)で成形する場合の詳細を示す。左右二つの金型102、103の間にバイポーラ構造で積層したセルスタック101を置く。セルスタック101と金型(右側)102の間と、セルスタック101と金型(左側)103の間のそれぞれに、押し付け冶具104を置く。押し付け冶具104はそれぞれ、押しボルト105と当て板(セルスタック側)106と当て板(金型側)107で構成されている。押しボルト105にはネジが切ってあり、当て板106、107には押しボルト105が挿入される貫通孔が明けてあり、その孔の内側には押しボルト105のネジと対応するめネジが切ってあり、両者がネジで係合される。
【0027】
押しボルト105を回転させることにより、当て板(セルスタック側)106と当て板(金型側)107の距離、すなわち押し付け冶具104の長さが調整される。射出成形工程が始まるまでは、すなわち金型102、103が閉じられるまでは、押し付け冶具104はフリーの状態すなわち押し付け力が働いていない状態である。射出成形工程が始まると、すなわち左右の金型102、103が閉じられると、押し付け冶具104はセルスタック101と金型の凹部109の両方と接触し、圧縮される。これにより、射出成形中、押し付け冶具104の当て板(セルスタック側)106が両側からセルスタック101を押し、成形のための樹脂がセルスタック101内に入ることを防ぐ。
【0028】
押しボルト105と当て板106、107の材質は、いずれも、射出されてセルスタックを収容するケースになる樹脂と近い性質の樹脂であるが、射出成形されてケースになる材料よりも、少し熱可塑性が大きいか少し融点が高いものを使用する。射出成型後、この押し付け冶具104は、ケースの中にその一部として残される。
【0029】
左右の金型102、103の内部にセルスタック101と押し付け冶具104を設置し終わると両方の金型102、103を合わせる、すなわち閉じる。そして、射出する樹脂のペレットを加熱機(図示せず)で加熱して融解したものを、樹脂射出管108から金型内に射出する。
図5の例では、樹脂射出管108が左右の金型102、103のそれぞれの四隅に、計8か所設けられているが、樹脂射出管108の数と位置は、セルスタック101の大きさと形状、射出する樹脂の材料に合わせ、湯流れ等を考慮して決められる。
【0030】
左右の金型102、103は、嵌合が精密加工されているので、射出された樹脂が漏れることはないが、射出成形中は、射出された樹脂の圧力に負けないように両方の金型102、103にF1とF2の力を加える。もちろん、一方の金型が固定されている装置であれば、他方の金型だけを可動にし、その金型の方からのみ力を加えればよい。樹脂が硬化したら金型を開放して、樹脂でケースが形成された電池モジュールを取り出す。
【0031】
射出成形に用いる、電池モジュールのケースとなる樹脂は、十分な強度と耐熱性と耐食性があれば、どの樹脂でもよいが、例えばポリカーボネートが好適な材料の一つである。
【0032】
図5に示す例では、射出成形する時に、セルスタックに締結部材を取り付けてから射出成形している。締結部材は帯状のもので、セルスタックを巻くようにして締結し、ケース内に残される。この締結部材により、電池使用中のセルスタックの膨張を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
樹脂モールディングで一体成形した全固体電池として好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 電池モジュール
20、101 固体電池積層体(セルスタック)
21 集電体
22 正極
23 正極電極
24 負極
25 負極電極
26 固体電解質
27 バイポーラ電極
30 正極端子板
40 負極端子板
4、50 樹脂ケース
60 導電性材料
70 締結体
71 締結ボルト
3 端子
31 負極側端子
32 正極側端子
102 金型(右側)
103 金型(左側)
104 押し付け冶具
105 押しボルト
106 当て板(セルスタック側)
107 当て板(金型側)
108 樹脂射出管
109 金型の凹部
110 締結部材
F1 金型(右側)への押し付け力
F2 金型(左側)への押し付け力