(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】外壁ユニット、及び外壁ユニットの取付け方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230725BHJP
E04B 2/94 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B2/94
(21)【出願番号】P 2019058481
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏晴
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-025849(JP,A)
【文献】特開2004-346601(JP,A)
【文献】特開2012-117300(JP,A)
【文献】特開昭63-315769(JP,A)
【文献】特開2018-009365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04B 2/56- 2/70、 2/88- 2/96
E04B 1/04
E04B 1/348
E04B 1/38- 1/61
E04B 5/02
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に立設された状態で水平方向に連接された状態となるように連接された複数の壁パネルと、締結部材と、固定具と、前記複数の壁パネルに跨るように配置されるとともに締結部材によって固定具と共に前記複数の壁パネルに仮固定されて該複数の壁パネルをユニット化する仮フレーム部材と、を備え、
前記固定具は前記仮フレーム部材に重ねて配置されており、
前記締結部材は、前記仮フレーム部材と前記固定具とを貫通しており、
前記仮フレーム部材は、前記締結部材によって、前記壁パネルに対して着脱可能に固定されており、
前記仮フレーム部材は、前記壁パネルから前記締結部材を取り外すことなく前記仮フレーム部材を引き抜くことができるよう形成され、前記仮フレーム部材の長手方向に沿って配置されている、切欠き状の複数の締結孔を有し、
前記仮フレーム部材は、前記複数の壁パネルが鉛直方向に立設された状態で、前記長手方向が水平方向になるように延在しており、
前記締結部材は、前記複数の締結孔のうち前記複数の壁パネルそれぞれに対応する締結孔を通じて、前記複数の壁パネルそれぞれに取り付けられており、
前記複数の締結孔それぞれは、前記複数の壁パネルが鉛直方向に立設された状態で、前記仮フレーム部材の前記長手方向に対して垂直な鉛直方向に延在し、前記仮フレーム部材の下端部に開口しており、
前記仮フレーム部材は、前記複数の壁パネルそれぞれに対応する前記締結孔に配置された前記締結部材と、該締結部材を前記長手方向の両側から挟み込む、前記複数の壁パネルそれぞれに対応する前記締結孔の内縁部との係合により、前記壁パネルと前記仮フレーム部材との間の相対的な前記長手方向の移動、及び、前記複数の壁パネル間の相対的な前記長手方向の変位、が規制されるよう構成されていることを特徴とする外壁ユニット。
【請求項2】
前記仮フレーム部材には、切欠き状の前記複数の締結孔と共にシノ穴が設けられている、
請求項1に記載の外壁ユニット。
【請求項3】
前記仮フレーム部材は、互いに直交する鉛直板部と水平板部を有し、
前記複数の締結孔は、前記鉛直板部の下端部に開口している、請求項1
又は2に記載の外壁ユニット。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の外壁ユニットを建物の躯体に取り付ける外壁ユニットの取付け方法であって、
前記外壁ユニットの上部にユニット吊上げ部材を着脱可能に装着するステップと、
前記ユニット吊上げ部材を用いて所定の高さに吊り上げた外壁ユニットを、前記躯体の所定の位置に配置するステップと、
前記締結部材を緩めるとともに、前記固定具を回転またはスライドさせて該固定具を躯体に固定された壁受け部に対して係合させるステップと、
前記固定具を前記壁受け部に対して係合させた後に、前記締結部材を緩めた状態を維持しつつ、前記仮フレーム部材を上方に引き抜いて前記壁パネルから取り外すステップと、
前記締結部材を再び締め付けるステップと、を含む、ことを特徴とする外壁ユニットの取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルの固定構造、及びこの外壁パネルの固定構造を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば隣接する建物との距離が小さく足場の設置が困難な住宅の外壁を設置する際には、複数のパネル状の外壁材を予めユニット化した外壁ユニットを、クレーン等を用いて吊り上げて躯体に取り付ける場合がある。このように、外壁をユニット化する場合、フレームを支持材として用いて複数の連接した外壁材を一体化させることが知られている。しかしながら、外壁を躯体に取り付けた後もフレームが外壁材の内面側に残留する場合には、当該フレームが設備配管配線等の障害となったり、熱橋となって断熱性を低下させてしまったりする虞がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、壁用のパネルユニットを簡易にかつ無足場にて建物に取り付
けることを目的とし、吊具を用いてパネルユニットを壁として建物に取り付けるためのパネルユニット工法が開示されている。この方法は、パネルユニットの内面上部側に各壁パネルを建物に対してそのまま固定するための上部下地材を取り付けておき、パネルユニットの内面下部側には各壁パネルを仮連結する定規材(フレーム)を仮止めしておくとともに、建物には各壁パネルの下端部を支持固定するための壁受け部を予め取り付けておき、前記パネルユニットを平置きした状態で前記吊具を装着し、その吊具によりパネルユニットを立て起こしてそのまま吊り上げ、パネルユニットを建物に固定するに際しては、上部下地材をそのまま建物に対して固定し、かつ各壁パネルの下端部を下部下地材(壁受け部)に係止するとともに定規材を取り外すことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている工法では、各壁パネルを仮連結する定規材が、壁パネルにボルト締結された係止具(Z型金物)を介して仮止めされており、係止具を壁パネルに締結するボルトは、定規材から離れた位置に配置されている。そのため、パネルユニットを吊り上げた際に、各壁パネルの位置が安定せず、隣接する壁パネル間に設けられたシーリングが破損したり、取り付け作業の効率が低下したりする虞がある。
【0006】
それゆえ本発明は、外壁ユニットを構成する複数の壁パネルを安定した状態で保持し、建物躯体への取付け作業の安全性及び効率性を高めることが可能な外壁ユニット、及び外壁ユニットの取付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る外壁ユニットは、連接された複数の壁パネルと、締結部材と、固定具と、前記複数の壁パネルに跨るように配置されるとともに締結部材によって固定具と共に前記複数の壁パネルに仮固定されて該複数の壁パネルをユニット化する仮フレーム部材と、を備え、
前記固定具は前記仮フレーム部材に重ねて配置されており、
前記締結部材は、前記仮フレーム部材と前記固定具とを貫通しており、
前記仮フレーム部材は、前記締結部材によって、前記壁パネルに対して着脱可能に固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の外壁ユニットは、前記仮フレーム部材は、前記壁パネルから前記締結部材を取り外すことなく前記仮フレーム部材を引き抜くことができるよう形成された切欠き状の締結孔を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の外壁ユニットは、前記仮フレーム部材は、前記締結孔に配置された前記締結部材と、該締結部材を両側から挟み込む前記締結孔の内縁部との係合により、前記壁パネルと前記仮フレーム部材の間の相対的な左右方向の移動が規制されるよう構成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の外壁ユニットは、前記仮フレーム部材は、互いに直交する鉛直板部と水平板部を有し、
前記締結孔は、前記鉛直板部の下端部に開口していることが好ましい。
【0011】
また、本発明の外壁ユニットの取付け方法は、上記何れかの外壁ユニットを建物の躯体に取り付ける外壁ユニットの取付け方法であって、
前記外壁ユニットの上部にユニット吊上げ部材を着脱可能に装着するステップと、
前記ユニット吊上げ部材を用いて所定の高さに吊り上げた外壁ユニットを、前記躯体の所定の位置に配置するステップと、
前記締結部材を緩めるとともに、前記固定具を回転またはスライドさせて該固定具を躯体に固定された壁受け部に対して係合させるステップと、
前記固定具を前記壁受け部に対して係合させた後に、前記締結部材を緩めた状態を維持しつつ、前記仮フレーム部材を上方に引き抜いて前記壁パネルから取り外すステップと、
前記締結部材を再び締め付けるステップと、を含む、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外壁ユニットを構成する複数の壁パネルを安定した状態で保持し、建物躯体への取付け作業の安全性及び効率性を高めることが可能な外壁ユニット、及び外壁ユニットの取付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態としての外壁ユニットを示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1の外壁ユニットにおける固定具の動作を説明するための図であり、(b)は、固定具の変形例を示す図である。
【
図3】
図1の外壁ユニットにおける仮フレーム部材を単独で示す斜視図である。
【
図4】
図1の外壁ユニットを、建物の躯体の所定の位置に配置した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す状態から、躯体に設けた壁受け部に固定具を係合させる様子を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す状態から、仮フレーム部材を取り外す様子を示す斜視図である。
【
図7】
図1の外壁ユニットにおける壁パネルの取り付けが完了した状態を示す室内側から見た正面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態としての外壁ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0015】
図1は、本発明に係る外壁ユニット1を示す斜視図であり、外壁ユニット1の上部に装着されるユニット吊上げ部材50を用いて吊り上げた状態を示している。外壁ユニット1は、連接された複数(本例では3枚)の壁パネル10と、複数の壁パネル10に跨るように配置され、締結部材20によって固定具30と共に複数の壁パネル10に仮固定(着脱可能に固定)されて複数の壁パネル10をユニット化する仮フレーム部材40と、を備える。
【0016】
壁パネル10としては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)製のパネル、耐火性を有する金属系や窯業系のサイディング、押出成形セメント板などを用いることができる。この壁パネル10を軸組架構の外周部の周囲に連接することにより、外壁の外皮層を形成することができる。
【0017】
壁パネル10は、縦方向(鉛直方向)の長さが横方向(水平方向)の幅よりも大きい正面視長方形状のパネル状部材である。壁パネル10の内部には、雌ねじが設けられたナットが埋め込まれており、ボルト等の締結部材20を締結することができる。なお、壁パネル10は、上記のようにナットが埋め込まれた構成に限らず、例えば、壁パネル10の表面から雄ねじ状の先端部が突出する軸部材が埋め込まれた構成としてもよい。また、その場合、先端部に設けられた雄ねじ部に締結部材としてのナットを締結することで、固定具30、仮フレーム部材40等の各種部材を壁パネル10に締結して固定することができる。
【0018】
図1に示す外壁ユニット1は、同一形状の3枚の壁パネル10を横方向に連接した構成としている。なお、左右に隣接する2枚の壁パネル10の間には、シーリング用のガスケット部材(図示省略)が取り付けられており、外壁ユニット1の防水性を確保している。なお、外壁ユニット1を構成する各壁パネル10の形状、数、配置等は適宜変更可能である。また、外壁ユニット1は、例えば形状の異なる複数の壁パネル10を連接下構成としてもよい。
【0019】
締結部材20は、固定具30及び仮フレーム部材40の鉛直板部41を貫通して壁パネル10に締結される。すなわち、締結部材20は、
図2(a)に示す正面視で、固定具30及び仮フレーム部材40の鉛直板部41に重なるように配置される。なお、締結部材20は、例えばボルト又はナットとすることができるが、特に限定されない。また、締結部材20は、各壁パネル10の下部において、当該壁パネル10の幅方向(左右方向)の中心に配置されている。すなわち、壁パネル10の幅方向(左右方向)の中心で固定具30及び仮フレーム部材40が締結される。これにより、外壁ユニット1としての各壁パネル10の安定性を高めることができるとともに、仮フレーム部材40を取り外した後も、壁パネル10をより安定した状態で躯体に固定することができる。なお、締結部材20の上下方向の位置及び左右方向の位置は図示例に限定されず、適宜変更可能である。
【0020】
本例の固定具30は、Z型の金具であり、例えば板状の鋼材等から形成することができる。また、
図2(a)にも示すように、固定具30は、締結部材20を通すための貫通孔31aが設けられた平坦な締結板部31と、段差部32と、締結板部31に平行な係合板部33とを有する。固定具30は、予め横向きの状態で壁パネル10に締結固定され、締結部材20を緩めて、締結部材20の軸部を中心に90度下方に回転させることにより、壁受け部71を壁パネル10と係合板部33との間に挟むことができる。つまり、壁受け部71に対して固定具30を係合させて、壁パネル10の前後方向の移動を規制することができる。締結板部31における係合板部33の逆側の端部(周縁部)は、半円形状になっており、固定具30を回転させる際に仮フレーム部材40の水平板部42等に干渉しないようにしている。
【0021】
締結板部31は、
図1に示す状態において仮フレーム部材40の鉛直板部41に沿って配置され、仮フレーム部材40を取り外した後は壁パネル10の内面11に沿って配置される。係合板部33は、躯体に固定された壁受け部71に対して係合するよう構成されている。壁受け部71は、断面がT字状の金属製の長尺部材の支持金具70において鉛直に延びる板状部分とすることができる。
【0022】
なお、本例の固定具30は、
図2(a)に示すように、締結部材20を緩めた状態で、締結部材20の軸部を中心に90度下方に回転させることにより、壁受け部71に対して係合させる構成としているが、これに限られるものではない。例えば、
図2(b)に示す固定具30’のように、締結板部31の貫通孔31aを長孔として、締結部材20を緩めた状態で固定具30’を下方にスライドさせることにより、壁受け部71に対して係合させる構成としてもよい。
【0023】
仮フレーム部材40は、外壁ユニット1を構成する全ての壁パネル10に跨るように配置され、締結部材20によって固定具30と共に複数の壁パネル10それぞれに仮固定される。すなわち、仮フレーム部材40は、外壁ユニット1を構成する全ての壁パネル10それぞれに締結固定され、また締結部材20を緩めることで、壁パネル10から容易に取外すことができるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、仮フレーム部材40は、断面(長手方向に対して垂直な横断面)がL字状の長尺部材であり、相互に直交する平坦な鉛直板部41と水平板部42とを備える。仮フレーム部材40は、例えば断面がL字状の鋼材(アングル材)から形成することができる。鉛直板部41には、下向きの切欠き状(スリット状)の締結孔43が形成されている。締結孔43は、締結部材20を締結するための貫通孔である。
【0025】
本例の締結孔43は、仮フレーム部材40の長手方向に対して垂直に延在し、鉛直板部41の下端部に開口しており、締結部材20としてのボルトの軸部の直径よりも僅かに大きくなるように設定されている。すなわち、壁パネル10から締結部材20を取り外すことなく仮フレーム部材40を上方に引き抜いて壁パネル10から取り外すことができるように構成されている。また、本例の締結孔43は、仮フレーム部材40の長手方向に一定の間隔を空けて11箇所に形成されている。
【0026】
水平板部42には、外壁ユニット1を建物の躯体に取り付ける際に、棒状の工具(シノ、バール等)を差し込んで位置合わせを容易にするためのシノ穴44と、介錯ロープを連結可能な連結孔45とが設けられている。このようなシノ穴44、連結孔45を利用することにより、吊り上げた外壁ユニット1を建物躯体の所定の位置に配置する作業の効率を向上させることができ、且つ、安全性も高めることができる。
【0027】
連結孔45は、水平板部42の両端部に設けられている。また、本例では、シノ穴44が長手方向に等間隔で3箇所に設けられており、各シノ穴44の長手方向位置は、締結部材20が固定される締結孔43の長手方向位置に対応している。
【0028】
なお、本例の仮フレーム部材40は、締結孔43に配置された締結部材20の軸部と、締結部材20を両側から挟み込む締結孔43の内縁部43a、43bとの係合により、壁パネル10と仮フレーム部材40との間の相対的な左右方向の移動が規制されるよう構成されている。このような構成により、複数の壁パネル10間の相対的な左右方向の変位や位置ずれを抑制することができ、外壁ユニット1を躯体に取付ける際に、各壁パネル10の位置が安定するため、取付け作業の安全性及び効率性をさらに高めることができる。また、複数の壁パネル10間の相対的な変位を抑制することで、隣接する壁パネル10間に配置されたシーリング用のガスケット部材等が変形したり、破損したりすることも確実に防止することができる。
【0029】
図1に示すように、本例のユニット吊上げ部材50は、ワイヤー60を連結するための左右一対のフック部51と、複数の壁パネル10に跨るように配置される平坦な長尺板状の支持板52とを有する。一対のフック部51は、支持板52の長手方向の両端部に設けられている。ユニット吊上げ部材50を外壁ユニット1に装着した状態で、フック部51は、外壁ユニット1の左右両端部に配置され、外壁ユニット1の上端よりも上方に突出している。支持板52は、外壁ユニット1を構成する全て(3枚)の壁パネル10の内面11に当接するように配置され、複数の壁パネル10間の相対的な前後方向の位置ずれを防止している。また、ユニット吊上げ部材50は、例えば、支持板52を、各壁パネル10の上端面に締結固定することで、外壁ユニット1に装着することができる。具体的には、例えば、支持板52の表面から突出する板状部分を、ボルト等の締結部材で各壁パネル10の上端面に締結固定することにより、ユニット吊上げ部材50を外壁ユニット1に装着することができる。なお、各壁パネル10には、ボルトを締結するためのナット等が埋め込まれている。ユニット吊上げ部材50は、外壁ユニット1の上部に着脱可能に装着され、外壁ユニット1を建物の躯体に取り付けた後で、外壁ユニット1から取り外されるものである。
【0030】
本実施形態の外壁ユニット1にあっては、固定具30が仮フレーム部材40に重ねて配置され、締結部材20が仮フレーム部材40と固定具30とを貫通し、仮フレーム部材40が締結部材20によって、壁パネル10に対して着脱可能に固定(仮固定)されている。このような構成により、締結部材20によって仮フレーム部材40が壁パネル10に強力に締結されるため、壁パネル10と仮フレーム部材40との間の変位、及び、複数の壁パネル10相互間での上下方向及び左右方向の相対的な変位を抑制することができる。その結果、本実施形態の外壁ユニット1によれば、本発明によれば、外壁ユニット1を構成する複数の壁パネル10を安定した状態で保持することができ、建物躯体への取付け作業の安全性及び効率性を高めることが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態の外壁ユニット1にあっては、締結孔43を切欠き状とし、壁パネル10から締結部材20を取り外すことなく仮フレーム部材40を引き抜くことができる構成としたことにより、仮フレーム部材40の取付け及び取り外し作業を容易かつ安全に行うことができる。これにより、後述するように、外壁ユニット1の取付け作業の安全性をより高めることが可能となる。
【0032】
以下に、外壁ユニット1を建物の躯体に取り付けて外壁を形成する方法について説明する。
【0033】
先ず、ユニット吊上げ部材50の支持板52を各壁パネル10の上端面に締結固定すること等により、外壁ユニット1の上部にユニット吊上げ部材50を着脱可能に装着する。なお、固定具30は、横向きに配置されている。つまり、係合板部33が締結板部31の左右方向(水平方向)に位置する向きに配置されている。固定具30の向きは、
図4に示す左向きに限らず、右向きでもよい。
【0034】
次いで、
図4に示すように、ユニット吊上げ部材50及びワイヤー60を用いて所定の高さに吊り上げた外壁ユニット1を、躯体の所定の位置に配置する。具体的には、例えば、梁73(
図7参照)に締結固定された断面T字状の壁受け部71の外面に壁パネル10の内面11が当接し、また、支持金具70の水平板72上に壁パネル10の下端面が載置されるように配置される。なお、壁パネル10と支持金具70との間には、水切り部材を設置することができる。水切り部材は、1つでも複数でもよく、材料も特に限定されず、樹脂製でも、アルミ、ステンレス鋼等の金属製でもよい。
【0035】
上記のように外壁ユニット1を躯体の所定の位置に配置した後、
図5に示すように、締結部材20を緩めるとともに、固定具30を回転(またはスライド)させて固定具30を躯体に固定された壁受け部71に対して係合させる。この時、締結部材20は固定具30が回転できる程度に緩めればよいので、取り外す必要がない。そのため、仮に振動や風等により壁パネル10が揺れたとしても、支持金具70から壁パネル10が脱落してしまう虞がない。
【0036】
そして、固定具30を壁受け部71に対して係合させた後に、締結部材20を緩めた状態を維持しつつ、
図6に示すように、仮フレーム部材40を上方に引き抜いて取り外す。仮フレーム部材40を壁パネル10から取り外した後、締結部材20を再び締め付けて壁パネル10の下部を支持金具70の壁受け部71に締結固定する。
【0037】
さらに、壁パネル10の上部を建物の躯体に直接、又は間接的に締結固定した後、ユニット吊上げ部材50をパネル10から取り外すことで、壁パネル10の取付けが完了する。具体的には、例えば
図7に示すように、ボルト等の締結部材81を用いて、Z型の金具等の固定具82を、躯体としての梁83に固定された断面L字状の支持金具84に締結固定する。
【0038】
以上の通り、外壁ユニット1の取付け方法は、外壁ユニット1の上部にユニット吊上げ部材50を着脱可能に装着するステップと、ユニット吊上げ部材50を用いて所定の高さに吊り上げた外壁ユニット1を、躯体の所定の位置に配置するステップと、締結部材20を緩めるとともに、固定具30を回転またはスライドさせて固定具30を躯体に固定された壁受け部71に対して係合させるステップと、固定具30を壁受け部71に対して係合させた後に、締結部材20を緩めた状態を維持しつつ、仮フレーム部材40を上方に引き抜いて取り外すステップと、締結部材20を再び締め付けるステップと、を含む。
【0039】
本実施形態における外壁ユニット1の取付け方法にあっては、壁パネル10から締結部材20を取り外すことなく、固定具30を壁受け部71に係合させ、また、仮フレーム部材40のみを取り外すことができる。
【0040】
したがって、本実施形態の外壁ユニット1の取付け方法によれば、外壁ユニット1を構成する複数の壁パネル10が常に少なくとも仮フレーム部材40及び壁受け部71の何れかによって支持されるため、例えば、取付け作業の過程で、振動や風等により壁パネル10が揺れたとしても、吊り上げた壁パネル10が落下したり、支持金具70から壁パネル10が脱落して落下したりすることを確実に防止することができる。
【0041】
また、壁パネル10を躯体に取り付けた後は、仮フレーム部材40が取り外されるため、当該仮フレーム部材40が設備配管配線等の障害となったり、熱橋となって断熱性を低下させてしまったりする虞もない。
【0042】
以下に、本発明の他の実施形態について説明する。
図8は、窓等の開口部101を有する外壁ユニット100を示している。外壁ユニット100は、開口部101の左右両側に位置する壁パネルとしての2枚の帳壁102と、開口部101の上方に位置し、2枚の帳壁102の間で左右に連接される壁パネルとしての2枚の小壁103と、開口部101の下方に位置し、2枚の帳壁102の間で左右に連接される壁パネルとしての2枚の腰壁104と、を備える。また、外壁ユニット100は、開口部101を取り囲む開口枠部105と、開口枠部105を固定する支持フレーム106とを備える。
【0043】
外壁ユニット100は、
図1に示す外壁ユニット1と共通の固定具30及び仮フレーム部材40を備える。また、先の実施形態の外壁ユニット1と同様に、重ねて配置された固定具30及び仮フレーム部材40は、締結部材20によって、壁パネルとしての帳壁102及び腰壁104の下部に対して着脱可能に締結されている。締結部材20は、帳壁102及び腰壁104それぞれの幅方向(左右方向)の中心となる位置に締結されている。
【0044】
なお、小壁103及び腰壁104は、先の実施形態の壁パネル10と同一の幅(左右方向の長さ)を有し、帳壁102は、壁パネル10の半分の幅となるように形成されている。
【0045】
また、小壁103の上部は、2枚の小壁103及び締結部材20に跨るように配置される長尺板状のフレーム部材107に対して締結されている。また、小壁103の下部は、小壁103に締結されるZ型の金具等の固定具108を用いて支持フレーム106に係合している。
【0046】
腰壁104の上部は、腰壁104に締結されるZ型の金具等の固定具109を用いて支持フレーム106に係合している。腰壁104の下部には、固定具30及び仮フレーム部材40が締結部材20によって締結され、仮固定されている。
【0047】
外壁ユニット100は、先の実施形態と同様に、外壁ユニット100の上部に装着されるユニット吊上げ部材50を用いて、建物の躯体に取り付けることができる。すなわち、建物の躯体に対する外壁ユニット100の取付け方法は、外壁ユニット100の上部にユニット吊上げ部材50を着脱可能に装着するステップと、ユニット吊上げ部材50を用いて所定の高さに吊り上げた外壁ユニット100を、躯体の所定の位置に配置するステップと、締結部材20を緩めるとともに、固定具30を回転またはスライドさせて固定具30を躯体に固定された壁受け部71に対して係合させるステップと、固定具30を壁受け部71に対して係合させた後に、締結部材20を緩めた状態を維持しつつ、仮フレーム部材40を上方に引き抜いて取り外すステップと、締結部材20を再び締め付けるステップと、を含む。なお、仮フレーム部材40及びユニット吊上げ部材50は最終的に取り外される部材であり、開口枠部105、支持フレーム106及びフレーム部材107等は建物に残る部材である。
【0048】
このように、開口部101を有する外壁ユニット100においても、外壁ユニット100を構成する複数の壁パネル(帳壁102、小壁103及び腰壁104)を安定した状態で保持することができ、建物躯体への取付け作業の安全性及び効率性を高めることが可能となる。また、帳壁102及び腰壁104から締結部材20を取り外すことなく、固定具30を壁受け部71に係合させて、その後、仮フレーム部材40を取り外すことができるので、取付け作業の安全性及び効率性をさらに高めることができる。
【0049】
また、開口部101を有する外壁ユニット100と、開口部を有していない先の実施形態の外壁ユニット1に、固定具30及び仮フレーム部材40等の共通の部材を使用することができるので、各部材の製造コストを低減することができる。
【0050】
ここで、外壁ユニット1、100を使用可能な建物一例について説明する。建物は、例えば、鉄骨造の骨組みを有する2階建ての住宅とすることができる。建物は、地盤に固定された基礎構造体と、当該基礎構造体上に固定される上部構造体と、で構成される。なお、建物は、戸建住宅または集合住宅であってもよいし、住宅以外の建築物であってもよい。
【0051】
基礎構造体は、上部構造体の下側に位置し、その骨組みを支持するものであり、例えば、鉄筋コンクリート造の布基礎、又はベタ基礎とすることができる。上部構造体は、複数の柱と、柱間に架設された複数の梁とで構成される骨組み(躯体)と、この躯体の外周側に配置される外壁と、躯体を構成する梁上に配置される各階の床及び屋根と、を備える構成とすることができる。なお、骨組みを構成する部材は、予め規格化(標準化)され、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられるものとすることができる。
【0052】
建物は、建物の外周を取り囲む外壁を備える。外壁は、連接して配置される複数のパネル状の外壁材と、外壁材の室内側に配置される断熱材、及び内層材等で構成される。
【0053】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、仮フレーム部材40の締結孔43の形状、数及び配置は適宜変更可能であり、例えば締結孔43の形状は、切欠き状でなく円形等の貫通孔としてもよい。その場合、仮フレーム部材40を壁パネル10から取り外す際には、締結部材20を壁パネル10から取り外すことが必要となる。
【符号の説明】
【0054】
1:外壁ユニット
10:壁パネル
11:壁パネルの内面
20:締結部材
30:固定具
31:締結板部
31a:貫通孔
32:段差部
33:係合板部
40:仮フレーム部材
41:鉛直板部
42:1
43:締結孔
43a、43b:締結孔の内縁部
44:シノ穴
45::連結孔
50:ユニット吊上げ部材
51:フック部
52:支持板
60:ワイヤー
70:支持金具
71:壁受け部
72:水平板
73:梁(躯体)
81:締結部材
82:固定具
83:梁(躯体)
84:支持金具
100:外壁ユニット
101:開口部
102:帳壁
103:小壁
104:腰壁
105:開口枠部
106:支持フレーム
107:フレーム部材
108、109:固定具