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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】光学式変位計
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019085200
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180918
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】宮川 裕
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-096125(JP,A)
【文献】特開2018-119865(JP,A)
【文献】特開2012-127887(JP,A)
【文献】特開2004-198249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光を前記測定対象物に照射する光源と、
前記測定対象物からの反射光を、受光レンズを介して受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記複数の画素を保護するカバーガラスと、
前記画像センサと前記カバーガラスとを収容し、前記反射光を内部に導くための受光窓が設けられた筐体と、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段と、
前記カバーガラスを前記画像センサから離間し、かつ前記画像センサの受光面に対して斜めに配置されるように支持するとともに、前記カバーガラスと前記画像センサとの間に空間を形成する支持部材と、
を有することを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記画像センサ、前記受光レンズ及び前記スリット光の光軸がシャインプルーフ光学系を形成するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記カバーガラスと前記画像センサの受光面とを密閉する密閉部材をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学式変位計。
【請求項4】
記画像センサの受光面は、前記支持部材と前記カバーガラスとによって密閉されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記密閉部材は前記筐体であることを特徴とする請求項3に記載の光学式変位計。
【請求項6】
前記カバーガラスは、前記受光レンズの光軸に対して直交していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項7】
前記画像センサの姿勢を調整する調整機構と、
前記筐体を形成する複数の面のうち、前記画像センサの裏面と対向する面に設けられ、前記調整機構に調整担当者がアクセスするための開口部と、
前記開口部を閉鎖する、取り外し可能なフタ部材と
をさらに有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【請求項8】
前記カバーガラスと前記画像センサとの間に形成された空間は、前記支持部材に設けられた貫通孔であり、
前記受光窓により前記筐体の内部に導かれ、前記カバーガラスを透過した前記反射光は、前記貫通孔を通過した後、前記画像センサの受光面に入射することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光学式変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベイヤによってY方向に搬送される測定対象物(ワーク)についてZ方向における高さを測定するために、光切断方式の光学式変位計が提案されている(特許文献1、2)。Y方向とZ方向とに直交する方向がX方向であり、XY平面にワークが載置されている。光学式変位計は、X方向に幅を有するスリット光をワークに照射し、ワークからの反射光を二次元配列の画像センサで受光する。スリット光の投光方向と画像センサの受光方向とは傾いており、三角測距の原理に基づき、ワークの高さが算出される。このような、光切断方式の光学式変位計はワークのX-Z断面の輪郭(プロファイル)を一度に取得できる。Y方向にワークを搬送しながら繰り返し撮像を実行することで、Y方向における異なる位置でのプロファイルが取得される。また、複数のプロファイルからワークの三次元形状を示すデータが取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-096125号公報
【文献】特開2012-103266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像センサの受光面側には複数の光電変換素子(画素)を保護するためのカバーガラスが取り付けられている。受光面とカバーガラスとが近接しているため、強い反射光が受光面とカバーガラスとの間で多重反射することがあった。この場合、本来は反射光が入射しないはずの画素にまで多重反射した反射光が入射し、ワークの高さの誤測定が発生する。そこで、本発明は光切断方式の光学式変位計において測定対象物の誤測定を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
Y方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計であって、
X方向に幅を有するスリット光を前記測定対象物に照射する光源と、
前記測定対象物からの反射光を、受光レンズを介して受光する画像センサであって、前記X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、前記複数の画素による前記反射光の受光量を出力する画像センサと、
前記複数の画素を保護するカバーガラスと、
前記画像センサと前記カバーガラスとを収容し、前記反射光を内部に導くための受光窓が設けられた筐体と、
前記U方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなる前記V方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段と、
前記U方向における前記複数の画素列のそれぞれの位置と、前記V方向における前記ピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段と、
前記カバーガラスを前記画像センサから離間し、かつ前記画像センサの受光面に対して斜めに配置されるように支持するとともに、前記カバーガラスと前記画像センサとの間に空間を形成する支持部材と、
を有することを特徴とする光学式変位計を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光切断方式の光学式変位計において測定対象物の誤測定が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光学式変位計を説明する図
図2】三角測距の原理を説明する図
図3】プロファイルの測定を説明する図
図4】ピーク位置の検出方法を説明する図
図5】光学式変位計を構成する機能を説明するブロック図
図6】カバーガラスと多重反射との関係を説明する図
図7】支持部材を用いた密閉構造を説明する図
図8】姿勢調整機構を説明する図
図9】姿勢調整機構を説明する図
図10】多重反射に起因した複数のピークを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一または同様の構成には同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
<光学式変位計>
図1は光学式変位計100を示す図である。光学式変位計100はベルトコンベイヤ4によりY方向に搬送されるワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する装置である。この例では、Z方向はワークWの高さ方向に対応している。ヘッド部1はXZ平面と平行なスリット光L1を出力し、ワークWからの反射光L2を受光することで、受光結果を制御部2に出力する。制御部2は、ヘッド部1が出力する受光結果に基づきワークWのプロファイルを演算する。なお、制御部2はヘッド部1に統合されてもよい。プロファイルとはXZ平面と平行なワークWの切断面の外縁を示すデータである。たとえば、プロファイルは(xi,zi)の集合体である(iはインデックス)。xiはX方向における位置を示す。ziはZ方向における高さを示す。なお、3次元形状は、(xi,yi,zi)の集合体である。yiは、Y方向における位置を示す。制御部2は、一定周期ごとに、ヘッド部1に撮像を実行させることで、yiが異なるワークWのプロファイル(xi,zi)を求める。表示装置3は、光学式変位計100によるワークWの測定結果を表示したり、光学式変位計100の設定を行うためのUI(ユーザインタフェース)を表示したりする。操作部5は、光学式変位計100に対するユーザ入力を受け付けるための入力装置である。
【0010】
<三次元測距の原理>
図2は光切断方式(三角測距)の原理を説明する図である。ヘッド部1の筐体15の内部には、光源6、投光レンズ7、受光レンズ12および画像センサ13が内蔵されている。光源6から出力された光は投光レンズ7を通過することでスリット光L1に変換される。筐体15には、スリット光L1が通過するための透光窓8が設けられている。透光窓8には、防塵のための透光ガラス9aが設けられている。同様に、筐体15には反射光L2を筐体15の内部に導くための受光窓10が設けられている。受光窓10には、防塵のための透光ガラス9bが設けられている。受光レンズ12は反射光L2を画像センサ13に結像させるためのレンズである。画像センサ13は二次元配列された複数の画素(受光素子や光電変換素子と呼ばれてもよい)を有するセンサである。図2が示すように、光源6の投光軸に対して、画像センサ13の受光軸は角度θだけ傾いている。つまり、高さZ0からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV0の位置に結像する。高さZ1からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV1の位置に結像する。高さZ2からの反射光L2は画像センサ13のV方向におけるV2の位置に結像する。このように画像センサ13のV方向は、ワークWのZ方向に対応している。画像センサ13のU方向は図示されていないが、U方向はワークWのX方向に対応している。つまり、画像センサ13が出力する受光結果である画像の縦方向はV方向であり、横方向はU方向である。
【0011】
図2においてはスリット光L1がZ軸方向に出力されるように光源6が配置されているが、光源6および投光レンズ7のペアと、画像センサ13および結像レンズ12とのペアとの位置関係は逆であってもよい。
【0012】
図3は画像センサ13が出力する画像I1と、ワークWの断面との関係を説明する図である。この例では、ワークWのXZ断面において高さが三段階に変化している。より具体的には、X方向における位置X0から位置X1までの高さはZ0である。位置X1からX2までの高さはZ2である。位置X2からX3までの高さはZ1である。画像I1は、このようなワークWをヘッド部1により撮像して得られる画像である。なお、画像I1のU方向(横方向)はワークWのX方向に対応している。つまり、画像I1の位置U0、U1、U2、U3はそれぞれ位置X0、X1、X2、X3に対応している。同様に、画像I1のV方向における位置V0、V1、V2はそれぞれ高さZ0、Z1、Z2に対応している。スリット光L1がXY平面に入射することで形成される光スポット(反射位置の集合)は直線状である。つまり、ベルトコンベイヤ4上にワークWが存在しないときにヘッド部1が出力する画像には、ほぼ一直線状の光スポットが並ぶことになる。その一方で、一般的なワークWの切断面のエッジの高さは一定でないことが多い。この場合、図3が示すように、複数の高さのそれぞれに対応したV方向の位置に光スポットが並ぶことになる。高さに応じてV方向の位置が変わることは、図2が示す通りである。このように制御部2は、あるY方向の位置で取得された画像IMから各U方向の位置ごとにV方向の位置を演算することでプロファイルを生成する。なお、なお、XZ座標系とUV座標系との間には一定の縮尺関係があるため、制御部2は、簡単な演算により、UV座標系におけるプロファイルをXZ座標系におけるプロファイルに変換できる。
【0013】
<位置(高さの演算)>
図4は画像I1からプロファイルを構成する高さを演算する方法を説明する図である。スリット光L1はY方向において、ある程度の幅を持っている。そのため、反射光L2が画像センサ13にもたらす光スポットの幅も複数画素にまたがるような幅となる。そこで、制御部2は各画素の輝度値から輝度値の変化を示す近似曲線P1を求め、近似曲線P1においてピーク値をもたらすV方向における位置を演算する。図4では一番左の列が注目列であり、注目列の輝度値の分布(近似曲線P1)が例示されている。近似曲線P1は、複数のサンプル値をカーブフィッティングするなどして求められる。検出閾値未満のサンプル値は考慮されない。このピーク値をもたらすV方向における位置がワークWの高さを示している。制御部2は、U方向における各位置(各画素列)ごとに近似曲線P1を求め、近似曲線P1からピーク値をもたらすV方向の位置(高さ)を演算する。この演算処理をU方向における各位置で実行することで、一つのプロファイルが得られる。このような演算処理はサブピクセル処理と呼ばれてもよい。
【0014】
<内部機能>
図5は光学式変位計100の内部機能を示している。ヘッド部1の通信部21aは、制御部2と通信するための通信回路である。駆動部22は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって駆動電流を光源6に流すことで光源6を点灯させる駆動回路である。センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがった所定の露光時間により画像センサ13に撮像を実行させる制御回路である。なお、本実施形態では、センサ制御部23は、通信部21aを介して受信される制御部2からの指示にしたがって所定のビニングを画像センサ13に実行させる。
【0015】
制御部2の通信部21bはヘッド部1と通信するための通信回路である。CPU25は記憶部30に記憶されている制御プログラムを実行することでヘッド部1を制御し、ヘッド部1から出力される受光結果に基づきワークWのプロファイルおよび三次元形状を測定する。ピーク検出部26は、画像センサ13が出力する受光結果に基づき輝度値のピークをもたらすV方向の位置(ピーク位置)を検出する。ピーク位置はワークWの高さに対応している。つまり、ピーク検出部26は、X方向における各位置ごとのワークWの高さを演算により求める。プロファイル生成部27は、ピーク検出部26により求められたX方向における各位置(xi)ごとのワークWの高さ(zi)をまとめることで、一つのプロファイルデータを生成する。つまり、一つのプロファイルデータは、複数の高さ(zi)の集合体である。プロファイル生成部27は、Y方向における異なる位置(yi)ごとにプロファイルデータを求め、求められた複数のプロファイルデータからワークWの三次元形状を示すデータを生成する。なお、ワークWの三次元形状のデータは、求められた複数のプロファイルデータの集合体である。選択部28は、操作部5から入力されるユーザ指示に基づいて、後述されるビニングの比率を選択する。UI部29は、プロファイル生成部27により求められたプロファイルデータまたは画像I1を表示装置3に表示したり、ビニングの比率を選択するためのUIを表示装置3に表示したりする。
【0016】
<防塵対策>
図6(A)は画像センサ13の防塵構造を説明する図である。画像センサ13を構成するいずれかの画素にゴミが付着すると、画像にゴミが写り込んでしまう。画像に写り込んだゴミはワークWの測定結果に誤差をもたらす。そこで、画像センサ13の受光面側にはカバーガラス14が固定されている。カバーガラス14が画像センサ13の受光面を覆っているため、受光面にはゴミが付着しない。
【0017】
ところで、三角測距の精度を上げるためには、光源6、受光レンズ12の主面、および画像センサ13の受光面がシャインプルーフの条件を満たすことが重要である。シャインプルーフの条件が満たされると、画像センサ13により生成される画像において、ワークWにおける高い部分と低い部分との両方にピントが合うようになる(シャインプルーフの原理)。シャインプルーフの条件はワークWの高さを画像から判定する上で重要な条件である。
【0018】
その一方で、画像センサ13がシャインプルーフ条件を満たすように配置されたときに、反射光L2が画像センサ13の受光面とカバーガラス14との間で多重反射してしまうことがある。このような場合、図6(A)が示すように、位置V3だけでなく位置V3'にも受光量のピークが発生してしまう。ピーク検出部26が二つのピークのうちどちらを選択するかは大きな問題である。たとえば、CPU25は、ヘッド部1に近い側のピーク(V3')を優先する設定と遠い側のピーク(V3)を優先する設定とのうちのいずれかをユーザに選択させてもよい。しかし、ユーザにとって近い側と遠い側を正しく選択することは簡単ではない。ワークWの表面の特徴や光学式変位計100の特徴を十分に理解し、かつ、かなりの測定の経験を積まなければ、ユーザは正しい選択を行うことはできない。
【0019】
図10は多重反射が発生しかつ遠い側のピークを優先することが選択された事例を示している。この例では、位置V4に本来のピークが発生しているが、位置V4'と位置V4"にも偽のピークが発生している。この場合に近い側のピークが選択されると、図10のピーク判定結果Gが示すように、偽のピークが選択されてしまうことがある。したがって、ユーザに負担をかけることなく、より正しい測定結果を得られるようにするヘッド部1の構造が必要である。
【0020】
図6(B)はカバーガラス14を取り去られた画像センサ13を示している。多重反射の原因であったカバーガラス14が存在しないため、偽のピークが発生しない。なお、カバーガラス14が存在しないため、カバーガラス14に代わる防塵機能が必要となる。これは、たとえば、筐体15自体を密閉構造(防塵構造)とすることで達成可能である。密閉構造とは、筐体15の外部から内部への空気の侵入を防ぐことが可能な構造をいう。
【0021】
図7は他の防塵構造を示す図である。この例では、断面がくさび形状をした支持部材16とカバーガラス14とで構成された防塵構造が採用されている。支持部材16は、画像センサ13と対向し、かつ、画像センサ13の縁部と結合される頂面40と、カバーガラス14が取り付けられる底面41とを有している。頂面40は画像センサ13の受光面に対して平行であるが、底面41は画像センサ13の受光面に対して傾斜している。カバーガラス14は平板であり、受光レンズ12の主面に対して平行である。支持部材16の中央に反射光L2が通過するための空間17が設けられている。空間17は、底面41に設けられた開口部43から、頂面40に設けられた開口部42まで連通した貫通孔である。このように、画像センサ13の受光面は、支持部材16とカバーガラス14とによって密閉されるため、ゴミが受光面に侵入しにくくなる。また、画像センサ13の受光面とカバーガラス14とが近接していないため、多重反射が起こりにくい。
【0022】
このように、本来画像センサ13の表面に付着されるカバーガラスを画像センサ13から外し、画像センサ13を支持する支持部材16の受光レンズ12に対向する側の位置に設けることにより、画像センサ13へのゴミ付着を防止するとともに、カバーガラス14と画像センサ13の間での多重反射を効果的に防止できる。
【0023】
<姿勢調整穴>
図8(A)および図8(B)は頂面側からヘッド部1を見た図である。上述したように、画像センサ13の姿勢はシャインプルーフ条件を満たすことが望ましい。そのため、ヘッド部1の筐体15の頂面には姿勢調整穴33が設けられている。図8(A)が示すように、姿勢調整穴33はフタ50によって覆われている。フタ50は四つのビス31などの固定具により筐体15に固定される。四つのビス31は筐体15に設けられた四つのネジ穴32にそれぞれ螺合する。
【0024】
フタ50を筐体15から取り外し、姿勢調整穴33から筐体15の内部を覗き込むと、図8(B)が示すように、画像センサ13を含む基板が見える。画像センサ13を含む基板は支持部材16によって支持されている。姿勢調整ネジ34は、筐体15に固定された保持部35のネジ穴に螺合している。
【0025】
図9(A)が示すように、支持部材16は、画像センサ13の両端を挟持する挟持部材37を有している。図9(A)では一つの挟持部材37が示されているが、画像センサ13を挟んだ向こう側にはもう一つの挟持部材37が存在する。挟持部材37には支持ピン38が設けられている。支持ピン38は、筐体15に設けられた穴に対して回転可能に嵌合する。つまり、支持ピン38は、画像センサ13の姿勢を調整するための回転軸となる。この回転軸は、画像センサ13の中心を通過するように存在している。
【0026】
図9(A)と図9(B)とから理解可能なように、支持部材16の後端側には弾性部材36の一端が当接または結合されている。弾性部材36の他端は筐体15に当接または結合されている。図9(B)が示すように、姿勢調整穴33から挿入されたマイクロメータ39の先端が、支持部材16の先端側を押すことで、支持ピン38を回転軸として、画像センサ13は支持部材16とともに左回りに回転する。これにより、画像センサ13の姿勢が調整される。なお、画像センサ13が左回り(半時計方向)に回転すると、弾性部材36は支持部材16の後端側により押し上げられて縮む。一方で、画像センサ13が右回り(時計方向)に回転すると、弾性部材36は支持部材16の後端側を押し下げる。弾性部材36はゴムまたはバネなどであってもよい。組立担当者は、画像センサ13により取得された画像を確認しながら、マイクロメータ39を回転させる。これにより、画像センサ13がシャインプルーフ条件を満たすように支持部材16および画像センサ13の姿勢が調整される。
【0027】
<まとめ>
[観点1]
図1が示すように光学式変位計100はY方向に搬送される測定対象物のX-Z断面のプロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計の一例である。光源6はX方向とZ方向との両方に平行なスリット光L1を測定対象物(ワークW)に照射する光源の一例である。また、光源6はX方向に幅を有するスリット光を測定対象物に照射する光源の一例である。画像センサ13は、測定対象物からの反射光L2を、受光レンズ12を介して受光する画像センサであって、X方向に対応するU方向とZ方向に対応するV方向とに二次元配列された複数の画素を有し、複数の画素による反射光の受光量を出力する。図7などが示すように、カバーガラス14は、画像センサ13から離間し、かつ画像センサの受光面に対して斜めに配置されたカバーガラスとして機能する。筐体15は画像センサ13とカバーガラス14とを収容する筐体として機能する。ピーク検出部26はU方向に並んだ複数の画素列のそれぞれについて受光量のピークとなるV方向における画素の位置をピーク位置として検出する検出手段として機能する。プロファイル生成部27はU方向における複数の画素列のそれぞれの位置と、V方向におけるピーク位置とからX-Z断面のプロファイルを生成する生成手段として機能する。
【0028】
このように、カバーガラス14は、画像センサ13の受光面に対して斜めに配置されているため、多重反射光が発生しにくくなる。その結果、光切断方式の光学式変位計において測定対象物の誤測定が抑えられるようになる。
【0029】
[観点2]
画像センサ13と受光レンズ12とはシャインプルーフ光学系を形成するように配置されている。つまり、画像センサ13、受光レンズ12およびスリット光L1の光軸がシャインプルーフ光学系を形成するように配置されている。これにより、ワークWの様々な位置にピントが合った画像I1が生成されるようになる。図3の画像I1が示すように、それぞれ異なる反射位置(ワークWの高さ)で反射してきた複数の反射光L2が受光面に結像したときのピークスポットの幅がほぼ一定となる。これにより、精度よく、ピーク位置を特定できるようになるため、ワークWの高さの測定精度が向上する。
【0030】
[観点3]
支持部材16はカバーガラス14と画像センサ13の受光面とを密閉する密閉部材として機能する。これにより、画像センサ13の受光面にゴミなどが侵入しにくくなる。
【0031】
[観点4]
密閉部材として機能する支持部材16は、画像センサ13とカバーガラス14との間に配置され、カバーガラス14を支持するくさび形の支持部材であってもよい。これにより、画像センサ13に対して斜めに配置されたカバーガラス14を安定的に支持することが可能となる。
【0032】
[観点5]
図6(B)に関連して説明されたように、筐体15が密閉部材として機能してもよい。これにより、簡易な構造で防塵機能と、多重反射の低減とを達成することが可能となる。
【0033】
[観点6]
受光レンズ12は、測定対象物からの反射光L2を画像センサ13の受光面に結像させる受光レンズとして機能する。図7が示すように、反射光L2が入射するカバーガラス14の入射面は、受光レンズ12の光軸に対して直交している。つまり、カバーガラス14の入射面は、受光レンズ12の主面に対して平行に配置される。
【0034】
[観点7]
図8(B)、図9(A)および図9(B)は画像センサ13の姿勢を調整する調整機構を示している。姿勢調整穴33は、筐体15を形成する複数の面のうち、画像センサ13の裏面と対向する面(頂面)に設けられ、調整機構に調整担当者がアクセスするための開口部として機能する。フタ50は、開口部を閉鎖する、取り外し可能なフタ部材として機能する。これにより、調整担当者は容易に画像センサ13の姿勢を調整することが可能となる。
【0035】
筐体15は、画像センサ13を密閉状態で収容する筐体として機能してもよい。つまり、画像センサ13と受光レンズ12との間にはカバーガラス14が設けられていない。この場合、カバーガラス14が省略可能となり、かつ、多重反射も低減でき、さらに、ゴミの侵入も軽減されよう。
【0036】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
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