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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/08 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
D02G1/08 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019098754
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020193402
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】堀本 尭幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 重樹
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-002656(JP,A)
【文献】特開2016-223034(JP,A)
【文献】特開昭55-163227(JP,A)
【文献】特開昭62-199826(JP,A)
【文献】特開平11-021731(JP,A)
【文献】特開平11-107087(JP,A)
【文献】特表2001-500576(JP,A)
【文献】特開2009-074219(JP,A)
【文献】特開2011-047074(JP,A)
【文献】特開2016-141912(JP,A)
【文献】実開平07-040786(JP,U)
【文献】英国特許出願公告第00933438(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48
D02J 1/00-13/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機台長手方向に並べて配置された、前記機台長手方向と交差する軸方向に延びる5つの回転軸に設けられた複数の円板部材によって一度に2本の糸に撚りを付与可能な複数の5軸仮撚装置、を備え、前記複数の5軸仮撚装置に糸掛けを行うための作業空間が前記機台長手方向に沿って形成された仮撚加工機であって、
各5軸仮撚装置は、
前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第1三角形の頂点を形成する2つの第1個別回転軸及び1つの共通回転軸を有し、前記第1三角形の内側を走行している第1の糸に撚りを付与する第1仮撚部と、
前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第2三角形の頂点を形成する2つの第2個別回転軸及び前記1つの共通回転軸を有し、前記第2三角形の内側を走行している第2の糸に撚りを付与する第2仮撚部と、を備え、
前記2つの第1個別回転軸と、前記2つの第2個別回転軸とは、前記機台長手方向において、前記共通回転軸を挟んで互いに反対側に配置され、
前記第1仮撚部は、前記第1の糸が前記2つの第1個別回転軸の間から前記第1三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、
前記第2仮撚部は、前記第2の糸が前記2つの第2個別回転軸の間から前記第2三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、
前記2つの第1個別回転軸のうち一方は、
前記2つの第1個別回転軸のうち他方よりも前記作業空間に近い手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第1動作位置と前記第1動作位置よりもさらに前記手前側である第1糸掛位置との間で移動可能な第1可動軸であり、
前記2つの第2個別回転軸のうち一方は、
前記2つの第2個別回転軸のうち他方よりも前記手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第2動作位置と前記第2動作位置よりもさらに前記手前側である第2糸掛位置との間で移動可能な第2可動軸であり、
前記第1可動軸及び前記第2可動軸は、
前記共通回転軸を揺動軸中心として揺動可能であることを特徴とする仮撚加工機。
【請求項2】
所定の機台長手方向に並べて配置された、前記機台長手方向と交差する軸方向に延びる5つの回転軸に設けられた複数の円板部材によって一度に2本の糸に撚りを付与可能な複数の5軸仮撚装置、を備え、前記複数の5軸仮撚装置に糸掛けを行うための作業空間が前記機台長手方向に沿って形成された仮撚加工機であって、
各5軸仮撚装置は、
前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第1三角形の頂点を形成する2つの第1個別回転軸及び1つの共通回転軸を有し、前記第1三角形の内側を走行している第1の糸に撚りを付与する第1仮撚部と、
前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第2三角形の頂点を形成する2つの第2個別回転軸及び前記1つの共通回転軸を有し、前記第2三角形の内側を走行している第2の糸に撚りを付与する第2仮撚部と、を備え、
前記2つの第1個別回転軸と、前記2つの第2個別回転軸とは、前記機台長手方向において、前記共通回転軸を挟んで互いに反対側に配置され、
前記第1仮撚部は、前記第1の糸が前記2つの第1個別回転軸の間から前記第1三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、
前記第2仮撚部は、前記第2の糸が前記2つの第2個別回転軸の間から前記第2三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、
前記2つの第1個別回転軸のうち一方は、
前記2つの第1個別回転軸のうち他方よりも前記作業空間に近い手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第1動作位置と前記第1動作位置よりもさらに前記手前側である第1糸掛位置との間で移動可能な第1可動軸であり、
前記2つの第2個別回転軸のうち一方は、
前記2つの第2個別回転軸のうち他方よりも前記手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第2動作位置と前記第2動作位置よりもさらに前記手前側である第2糸掛位置との間で移動可能な第2可動軸であり、
前記5軸仮撚装置は、
前記第1可動軸が前記第1動作位置から前記第1糸掛位置に移動すること及び前記第2可動軸が前記第2動作位置から前記第2糸掛位置に移動することを防止するためのロック機構を備えることを特徴とする仮撚加工機。
【請求項3】
前記5軸仮撚装置は、
前記第1可動軸が前記第1動作位置から前記第1糸掛位置に移動すること及び前記第2可動軸が前記第2動作位置から前記第2糸掛位置に移動することを防止するためのロック機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記第1仮撚部は、
前記複数の円板部材のうち、前記第1の糸が走行する第1糸走行方向における最も上流側の円板部材のさらに上流側に配置された第1糸ガイドを有し、
前記第2仮撚部は、
前記複数の円板部材のうち、前記第2の糸が走行する第2糸走行方向における最も上流側の円板部材のさらに上流側に配置された第2糸ガイドを有し、
前記第1糸ガイド及び前記第2糸ガイドのうち少なくとも一方は、他方に対して位置調整が可能な可動糸ガイドであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項5】
前記第1糸ガイドと前記第2糸ガイドとは、前記機台長手方向に並べて配置され、
前記可動糸ガイドは、
前記軸方向から見たときに、前記機台長手方向と交差する方向に移動可能であることを特徴とする請求項に記載の仮撚加工機。
【請求項6】
前記5軸仮撚装置は、
駆動源の動力が、前記5つの回転軸のうち、前記第1可動軸と前記第2可動軸とを除く3つの固定回転軸の1つである中間軸に伝達されるように構成され、且つ、
前記中間軸から前記3つの固定回転軸の残り2つに前記駆動源の動力を伝達する共通ベルト、を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項7】
前記中間軸は、前記共通回転軸であることを特徴とする請求項に記載の仮撚加工機。
【請求項8】
各5軸仮撚装置は、前記5つの回転軸を共通駆動するための共通駆動源を有し、
前記5つの回転軸のうち、糸の処理に用いられていない回転軸には、前記円板部材の代わりに重りが設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項9】
前記共通回転軸に設けられた前記円板部材の前記糸との接触部分を形成する部材の耐摩耗性が、前記共通回転軸以外の回転軸に設けられた前記円板部材の前記糸との接触部分を形成する部材の耐摩耗性よりも高いことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の仮撚加工機。
【請求項10】
前記第1仮撚部の、前記第1の糸が走行する第1糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材と、前記第2仮撚部の、前記第2の糸が走行する第2糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材とが、前記軸方向と直交する同一の第1平面内に配置され、
前記第1仮撚部の、前記第1糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材と、前記第2仮撚部の、前記第2糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材とが、前記軸方向と直交する同一の第2平面内に配置されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維からなる糸を仮撚加工する仮撚加工機が、特許文献1に記載されている。仮撚加工機は、所定の機台長手方向に並べられた、走行中の複数の糸にそれぞれ撚りを付与する複数の仮撚装置を備える。仮撚装置として、例えば特許文献2に記載された3軸型のフリクション方式の仮撚装置(3軸仮撚装置)が多く用いられている。3軸仮撚装置は、機台長手方向と略直交する所定の軸方向に延びた3つの回転軸と、各回転軸に設けられた複数の摩擦円板(円板部材)とを有する。3つの回転軸の軸中心は、軸方向から見たときに、仮想的な三角形の頂点を形成している。円板部材を所定の向きに回転させると、円板部材と接触しつつ上記三角形の内側を走行している糸に撚りが付与される。
【0003】
ここで、仮撚加工機の大型化を抑制しつつより多くの糸を加工するため、3軸仮撚装置の代わりに、5つの回転軸を有し、2本の糸に一度に撚りを付与できる5軸仮撚装置(特許文献3参照)を設けることが考えられる。5軸仮撚装置においては、第1の糸に撚りを付与する第1仮撚部と、第2の糸に撚りを付与する第2仮撚部とが設けられ、これらの仮撚部は、5つの回転軸のうち1つを共通回転軸として共有している。つまり、5軸仮撚装置においては、軸方向から見たときに、共通回転軸を共通の頂点とした仮想的な三角形が2つ形成されており、これらの三角形の内側をそれぞれ走行する2本の糸に撚りが付与される。このように、5軸仮撚装置によって、3軸仮撚装置を2つ設ける構成と比べて回転軸の数を少なくすることができるため、装置の大型化を抑制しつつ多くの糸を加工できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-141912号公報
【文献】特開昭62-199826号公報
【文献】特開昭53-2656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した5軸仮撚装置においては、第1仮撚部及び第2仮撚部への糸掛けが必要である。具体的には、所定の2つの回転軸の間から、上記三角形の内側に糸を収める作業を、第1仮撚部及び第2仮撚部に対してそれぞれ行う必要がある。糸掛けは、一般的に、機台長手方向に沿って延びた作業空間に位置している作業者によって行われる。ここで、第1仮撚部及び第2仮撚部のうち一方が、他方よりも作業空間から遠い側(奥側)に配置された場合、奥側の仮撚部への糸掛作業が極めて困難となる。したがって、第1仮撚部及び第2仮撚部の両方が作業空間に面するように、第1仮撚部及び第2仮撚部は、機台長手方向に並べて配置される必要がある。
【0006】
さらに、各仮撚部に糸掛けをするためには、機台長手方向における外側に配置された2つの回転軸の間からそれぞれ糸が通されるような装置構成が求められる(詳細については、後述の実施形態において説明する)。このような構成では、ある5軸仮撚装置への糸掛けを行う際に、機台長手方向において隣に配置された別の5軸仮撚装置との間の作業スペースが狭くなり、糸掛けの作業が困難となるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、5軸仮撚装置が機台長手方向に並べて配置された仮撚加工機において、糸掛けの作業を容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の仮撚加工機は、所定の機台長手方向に並べて配置された、前記機台長手方向と交差する軸方向に延びる5つの回転軸に設けられた複数の円板部材によって一度に2本の糸に撚りを付与可能な複数の5軸仮撚装置、を備え、前記複数の5軸仮撚装置に糸掛けを行うための作業空間が前記機台長手方向に沿って形成された仮撚加工機であって、各5軸仮撚装置は、前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第1三角形の頂点を形成する2つの第1個別回転軸及び1つの共通回転軸を有し、前記第1三角形の内側を走行している第1の糸に撚りを付与する第1仮撚部と、前記5つの回転軸のうち、前記軸方向から見たときに仮想的な第2三角形の頂点を形成する2つの第2個別回転軸及び前記1つの共通回転軸を有し、前記第2三角形の内側を走行している第2の糸に撚りを付与する第2仮撚部と、を備え、前記2つの第1個別回転軸と、前記2つの第2個別回転軸とは、前記機台長手方向において、前記共通回転軸を挟んで互いに反対側に配置され、前記第1仮撚部は、前記第1の糸が前記2つの第1個別回転軸の間から前記第1三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、前記第2仮撚部は、前記第2の糸が前記2つの第2個別回転軸の間から前記第2三角形の内側に入れられることによって糸掛けされるように構成され、前記2つの第1個別回転軸のうち一方は、前記2つの第1個別回転軸のうち他方よりも前記作業空間に近い手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第1動作位置と前記第1動作位置よりもさらに前記手前側である第1糸掛位置との間で移動可能な第1可動軸であり、前記2つの第2個別回転軸のうち一方は、前記2つの第2個別回転軸のうち他方よりも前記手前側に配置され、且つ、前記5軸仮撚装置が動作しているときの第2動作位置と前記第2動作位置よりもさらに前記手前側である第2糸掛位置との間で移動可能な第2可動軸であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、5軸仮撚装置において、第1仮撚部の第1個別回転軸と第2仮撚部の第2個別回転軸とが、機台長手方向において共通回転軸を挟んで互いに反対側に配置されている。言い換えると、第1仮撚部と第2仮撚部とが、機台長手方向に並べて配置されている。さらに、2つの第1個別回転軸のうち一方が、第1動作位置と、第1動作位置よりも手前側である第1糸掛位置との間で移動可能である。これにより、第1仮撚部に糸掛けを行うときに、2つの第1個別回転軸の間の隙間を大きくすることができる。したがって、複数の5軸仮撚装置が機台長手方向に並べて配置された構成においても、作業空間からの糸掛けを行いやすくすることができる。同様に、2つの第2個別回転軸のうち一方が、第2動作位置と第2糸掛位置との間で移動可能であるため、第2仮撚部への糸掛け時に2つの第2個別回転軸の間の隙間を大きくすることができる。以上のように、5軸仮撚装置が機台長手方向に並べて配置された仮撚加工機において、糸掛けの作業を容易に行うことができる。
【0010】
第2の発明の仮撚加工機は、前記第1の発明において、前記第1可動軸及び前記第2可動軸は、前記共通回転軸を揺動軸中心として揺動可能であることを特徴とするものである。
【0011】
第1可動軸及び第2可動軸が移動する際にこれらの可動軸と共通回転軸との距離が変化する構成では、例えば、可動軸と共通回転軸との間に駆動源の動力を伝達するための部材(ベルトやギア等)を介在させたい場合に、以下のような支障が生じる。例えば、ベルトが介在している状態で上記距離が変化すると、ベルトが緩み、或いは過大なテンションにより破損するおそれがある。また、ギアが介在している状態で上記距離が変化すると、ギアを再び噛み合わせる際に噛み合わせの精度が悪化するおそれがある。
【0012】
本発明では、第1可動軸及び第2可動軸が共通回転軸を揺動軸中心として揺動可能であるため、上記可動軸と共通回転軸との距離を変化させることなく上記可動軸を移動させることができる。したがって、上述したような支障が生じることを回避できる。
【0013】
第3の発明の仮撚加工機は、前記第1又は第2の発明において、前記第1仮撚部は、前記複数の円板部材のうち、前記第1の糸が走行する第1糸走行方向における最も上流側の円板部材のさらに上流側に配置された第1糸ガイドを有し、前記第2仮撚部は、前記複数の円板部材のうち、前記第2の糸が走行する第2糸走行方向における最も上流側の円板部材のさらに上流側に配置された第2糸ガイドを有し、前記第1糸ガイド及び前記第2糸ガイドのうち少なくとも一方は、他方に対して位置調整が可能な可動糸ガイドであることを特徴とするものである。
【0014】
一般的に、各仮撚部において、複数の円板部材は螺旋を描くように配置される。ここで、糸が走行する方向における最も上流側の円板部材がどの回転軸に設けられるかによって、第1糸ガイドによって案内される第1の糸の糸道、及び、第2糸ガイドによって案内される第2の糸の糸道が変わりうる。この場合、第1の糸の糸道と第2の糸の糸道とが大きく異なると、糸の屈曲角度等の相違に起因して第1の糸の撚られ方と第2の糸の撚られ方とが互いに異なり、その結果、第1の糸の糸品質と第2の糸の糸品質とがばらつくおそれがある。
【0015】
本発明では、可動糸ガイドの位置を調整することにより、第1糸ガイドによって案内される第1の糸の糸道と第2糸ガイドによって案内される第2の糸の糸道との違いを小さく抑えることができる。したがって、第1の糸と第2の糸との間で糸品質のばらつきを抑制できる。
【0016】
第4の発明の仮撚加工機は、前記第3の発明において、前記第1糸ガイドと前記第2糸ガイドとは、前記機台長手方向に並べて配置され、前記可動糸ガイドは、前記軸方向から見たときに、前記機台長手方向と交差する方向に移動可能であることを特徴とするものである。
【0017】
例えば、第1糸ガイド及び第2糸ガイドのうち一方を機台長手方向に沿って移動させるような構成では、第1糸ガイド及び第2糸ガイドのうち他方との干渉を避けるために、可動範囲が狭くなるおそれがある。本発明では、2つの糸ガイドが互いに干渉することを抑制しつつ、可動糸ガイドの可動範囲を広くすることができるので、糸道を効果的に調整できる。
【0018】
第5の発明の仮撚加工機は、前記第1~第4のいずれかの発明において、前記5軸仮撚装置は、駆動源の動力が、前記5つの回転軸のうち、前記第1可動軸と前記第2可動軸とを除く3つの固定回転軸の1つである中間軸に伝達されるように構成され、且つ、前記中間軸から前記3つの固定回転軸の残り2つに前記駆動源の動力を伝達する共通ベルト、を有することを特徴とするものである。
【0019】
複数の回転軸を1つの駆動源で回転駆動するためには、一般的に、騒音及び振動が少ないベルトによって駆動源の動力を伝達することが好ましい。但し、回転軸の数に応じて単純にベルトの数を増やすと、回転軸のうちベルトが掛けられる部分が増えるため回転軸が長くなり、装置が軸方向に大型化するという問題がある。本発明では、3つの固定回転軸を共通ベルトによってまとめて駆動できるので、ベルトの数を少なく抑えることができる。したがって、回転軸の長軸化を抑制でき、装置の大型化を抑制できる。
【0020】
第6の発明の仮撚加工機は、前記第5の発明において、前記中間軸は、前記共通回転軸であることを特徴とするものである。
【0021】
上述した5つの回転軸の位置関係より、共通駆動軸は、機台長手方向において、5つの回転軸のうち真ん中に配置されている。本発明では、駆動源の動力は、まず、真ん中の共通回転軸に伝達される。このため、共通回転軸の周りに配置された他の回転軸にさらに動力を伝達するように、5軸仮撚装置を構成できる。したがって、動力伝達のための構造を単純化できる。
【0022】
第7の発明の仮撚加工機は、前記第1~第6のいずれかの発明において、各5軸仮撚装置は、前記5つの回転軸を共通駆動するための共通駆動源を有し、前記5つの回転軸のうち、糸の処理に用いられていない回転軸には、前記円板部材の代わりに重りが設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
5軸仮撚装置においては、第1仮撚部及び第2仮撚部の両方によって一度に2本の糸に撚りが付与される場合もあれば、第1仮撚部及び第2仮撚部のいずれか一方によって1本の糸のみに撚りが付与される場合もある。このように、1本の糸のみに撚りが付与されている場合、コスト削減等の観点より、糸の処理に用いられていない回転軸から不要な円板部材を取り外しておくことが好ましい。但し、ある5軸仮撚装置において一部の回転軸から単純に円板部材を取り外すだけでは、当該5軸仮撚装置の共通駆動源への負荷が、他の5軸仮撚装置の共通駆動源への負荷と比べて小さくなる。そうすると、一部の円板部材が取り外された5軸仮撚装置において、5つの回転軸が意図せず速く回転する。その結果、当該5軸仮撚装置によって処理された糸の糸品質が、他の5軸仮撚装置によって処理された糸の糸品質と大きく異なるおそれがある。
【0024】
本発明では、不要な円板部材の代わりに重りが設けられているので、この重りが負荷となり、回転軸が意図せず速く回転することを防止できる。したがって、円板部材よりも安価な部材を重りとして適用することで、コスト増大を抑えつつ、5軸仮撚装置間での糸品質のばらつきを抑制できる。
【0025】
第8の発明の仮撚加工機は、前記第1~第7のいずれかの発明において、前記共通回転軸に設けられた前記円板部材の前記糸との接触部分を形成する部材の耐摩耗性が、前記共通回転軸以外の回転軸に設けられた前記円板部材の前記糸との接触部分を形成する部材の耐摩耗性よりも高いことを特徴とするものである。
【0026】
共通回転軸以外の回転軸に設けられた円板部材には、第1の糸又は第2の糸のみが接触する。一方、共通回転軸に設けられた円板部材には、第1の糸及び第2の糸の両方が接触する。このため、共通回転軸に設けられた円板部材は、他の回転軸に設けられた円板部材と比べて早く摩耗しうる。このような場合、共通回転軸に設けられた円板部材のみ早期交換が必要となり、交換作業の手間が増えるおそれがある。本発明では、共通回転軸に設けられた円板部材の耐摩耗性が他の円板部材の耐摩耗性よりも高いので、共通回転軸に設けられた円板部材のみが早く摩耗してしまうことを抑制できる。したがって、一部の円板部材のみを早期交換する必要が生じることを回避できる。
【0027】
第9の発明の仮撚加工機は、前記第1~第8のいずれかの発明において、前記第1仮撚部の、前記第1の糸が走行する第1糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材と、前記第2仮撚部の、前記第2の糸が走行する第2糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材とが、前記軸方向と直交する同一の第1平面内に配置され、前記第1仮撚部の、前記第1糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材と、前記第2仮撚部の、前記第2糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材とが、前記軸方向と直交する同一の第2平面内に配置されていることを特徴とするものである。
【0028】
第1糸走行方向における最も上流側の円板部材と、第2糸走行方向における最も上流側の円板部材とが軸方向において互いにずれて配置される構成では、少なくとも一部の回転軸を長くする必要が生じる。その結果、第1に、前記第1の糸の糸道と前記第2の糸の糸道とが変わりえる。第1の糸の糸道と第2の糸の糸道とが大きく異なると、糸の屈曲角度等の相違に起因して第1の糸の撚られ方と第2の糸の撚られ方とが互いに異なり、その結果、第1の糸の糸品質と第2の糸の糸品質とがばらつくおそれがある。第2に、装置が軸方向に大型化しうる。第1糸走行方向における最も下流側の円板部材と第2糸走行方向における最も下流側の円板部材との位置関係に関しても、同様である。本発明では、第1の糸の糸道と第2の糸の糸道とが実質的に変わることなく、円板部材の軸方向における配置をコンパクトにすることができる。したがって、装置の軸方向における大型化を抑制できる。また、本発明では、機台長手方向から見たときの第1の糸の糸道の形と第2の糸の糸道の形とを、いっそう同一に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係る仮撚加工機の側面図である。
図2】糸の経路に沿って仮撚加工機を展開した模式図である。
図3図1のIII矢視図である。
図4】5軸仮撚装置の斜視図である。
図5】5軸仮撚装置を機台長手方向及び軸方向の両方と直交する方向から見た図である。
図6】(a)及び(b)は、糸にZ撚りを付与する5軸仮撚装置を軸方向から見た図である。
図7】(a)及び(b)は、糸にS撚りを付与する5軸仮撚装置を軸方向から見た図である。
図8】(a)は、5軸仮撚装置の向きを示す参考図であり、(b)は、5軸仮撚装置への糸掛けの向きに関する参考図である。
図9】(a)及び(b)は、回転軸の移動に関する説明図である。
図10】(a)は、ガイド支持部を示す説明図であり、(b)及び(c)は、糸道を示す説明図である。
図11】回転軸を回転駆動する駆動機構を示す説明図である。
図12】(a)及び(b)は、変形例に係る5軸仮撚装置を示す説明図である。
図13】(a)及び(b)は、別の変形例に係る5軸仮撚装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、図1の紙面垂直方向を機台長手方向とし、紙面左右方向を機台幅方向とする。機台長手方向及び機台幅方向の両方と直交する方向を、重力の作用する上下方向(鉛直方向)とする。
【0031】
(仮撚加工機の全体構成)
まず、仮撚加工機の全体構成について、図1図3を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る仮撚加工機1の側面図である。図2は、糸Yの経路(糸道)に沿って仮撚加工機1を展開した模式図である。図3は、図1のIII矢視図である。
【0032】
仮撚加工機1は、例えばナイロン(ポリアミド系繊維)等の合成繊維からなる糸Yを仮撚加工可能に構成されている。仮撚加工機1は、糸Yを供給するための給糸部2と、給糸部2から供給された糸Yを仮撚加工する加工部3と、加工部3によって加工された糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る巻取部4とを備える。給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成要素は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道が配置される糸の走行面(図1の紙面)と直交する機台長手方向において、複数配列されている(図2参照)。
【0033】
給糸部2は、複数の給糸パッケージPsを保持するクリールスタンド7を有し、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、5軸仮撚装置15、第2フィードローラ16、合糸装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻取装置21で巻取ボビンBwに巻き取って巻取パッケージPwを形成する。
【0034】
また、仮撚加工機1は、機台幅方向に間隔を置いて配置された主機台8及び巻取台9を有する。主機台8及び巻取台9は、機台長手方向に略同じ長さに延設されており、互いに対向するように配置されている。主機台8の上部と巻取台9の上部とは、支持フレーム10によって連結されている。加工部3を構成する各装置は、主に主機台8や支持フレーム10に取り付けられている。主機台8と巻取台9と支持フレーム10とによって、作業者が各装置に対して糸掛け等の作業を行うための作業空間22が形成されている。糸道は、糸Yが主に作業空間22の周りを走行するように形成されている。
【0035】
仮撚加工機1は、互いに対向配置された1組の主機台8及び巻取台9を含むスパンと呼ばれる単位ユニットを有する。1つのスパンでは、機台長手方向に並んだ状態で走行する複数の糸Yに対して、同時に仮撚加工を施すことができるように各装置が配置されている。一例として、1つの巻取台9に12個の巻取装置21が設けられている(図3参照)。また、後述するように、1つの巻取装置21は、1本又は2本の糸Yを同時に巻取可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、1つのスパンにおいて、最大24本の糸Yを同時に巻き取ることができる。そして、仮撚加工機1は、このスパンが、主機台8の機台幅方向の中心線Cを対称軸として、紙面左右対称に配置される(主機台8は左右のスパンで共通のものとなっている)とともに、機台長手方向に複数配列された構成となっている。
【0036】
(加工部の構成)
次に、加工部3の構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0037】
第1フィードローラ11は、給糸部2から供給された糸Yを第1加熱装置13へ送るためのものである。第1フィードローラ11は、巻取台9の上方に配置されている(図1参照)。第1フィードローラ11は、機台長手方向に1列に配列されている。第1フィードローラ11は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを第1加熱装置13へ送ることが可能に構成されているが、これに限られるものではない。
【0038】
撚止ガイド12は、後述する5軸仮撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播しないようにするためのものである。撚止ガイド12は、第1フィードローラ11の糸走行方向下流側、且つ、第1加熱装置13の糸走行方向上流側に配置されている。撚止ガイド12は、例えば、給糸部2から供給される複数の糸Yに対して個別に設けられており、機台長手方向に1列に配列されている。
【0039】
第1加熱装置13は、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱するためのものであり、支持フレーム10に設置されている(図1参照)。第1加熱装置13は、給糸部2から供給される複数の糸Yに対して複数設けられており、機台長手方向に1列に配列されている。各第1加熱装置13は、例えば、図2に示すように、4本の糸Yを加熱可能に構成されているが、これに限られるものではない。
【0040】
冷却装置14は、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却するためのものである。冷却装置14は、第1加熱装置13の糸走行方向下流側、且つ、5軸仮撚装置15の糸走行方向上流側に配置されている。冷却装置14は、例えば、特開2011-47074号公報に記載されているように、気流により糸Yを冷却可能に構成されている。冷却装置14は、給糸部2から供給される複数の糸Yに対して複数設けられており、機台長手方向に1列に配列されている。各冷却装置14は、例えば、図2に示すように、4本の糸Yを冷却可能に構成されているが、これに限られるものではない。
【0041】
5軸仮撚装置15は、いわゆるディスクフリクション方式の仮撚装置の一種であり、2本の糸Y、すなわち糸Y1(本発明の第1の糸)及び糸Y2(本発明の第2の糸)に対して一度に同じ向きに撚りを付与する。5軸仮撚装置15は、冷却装置14の糸走行方向におけるすぐ下流側に配置されている。5軸仮撚装置15は、機台長手方向において複数配列されている。なお、機台長手方向における端部に配置された5軸仮撚装置15には、糸Yが1本のみ掛けられている(図2の紙面左側端部の5軸仮撚装置15を参照)。図示は省略するが、例えば、5軸仮撚装置15は、1つのスパンにつき13個設けられている。5軸仮撚装置15のより詳細については後述する。
【0042】
第2フィードローラ16は、5軸仮撚装置15で処理された糸Yを合糸装置17へ送るためのものである。第2フィードローラ16は、主機台8の上側部分に配置されている(図1参照)。第2フィードローラ16は、機台長手方向に1列に配列されている。第2フィードローラ16は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを合糸装置17へ送ることが可能に構成されているが、これに限られるものではない。なお、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速く、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。
【0043】
合糸装置17は、糸Y1と糸Y2を合糸可能に構成されている。本実施形態では、合糸装置17は、ある5軸仮撚装置15で処理された糸Y1と、機台長手方向において当該5軸仮撚装置15に隣接配置された5軸仮撚装置15で処理された糸Y2とを合糸可能であるが、これには限られない。合糸装置17は、第2フィードローラ16の下方に配置されている(図1参照)。合糸装置17は、2つのインターレースノズル31、32を有する(図2参照)。合糸装置17は、例えばインターレースノズル31の内部を通っている糸Y1及び糸Y2(図2の紙面左側部分参照)に対して空気を噴射し、糸Y1と糸Y2を空気流で絡める空気交絡(インターレース)によって合糸する。なお、合糸装置17は、糸Y1と糸Y2とを合糸せずに、2本の糸Yをそのまま糸走行方向における下流側へ案内することも可能である。この場合、糸Y1はインターレースノズル31の内部を通り、糸Y2はインターレースノズル32の内部を通る(図2の紙面右側部分参照)。
【0044】
第3フィードローラ18は、合糸装置17よりも糸走行方向における下流側を走行している糸Yを第2加熱装置19へ送るためのものである。第3フィードローラ18は、合糸装置17の下方に配置されている(図1参照)。第3フィードローラ18は、機台長手方向に1列に配列されている。第3フィードローラ18は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを第2加熱装置19へ送ることが可能に構成されているが、これに限られるものではない。なお、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅く、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0045】
第2加熱装置19は、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱するためのものである。第2加熱装置19は、第3フィードローラ18の下方に配置されている(図1参照)。第2加熱装置19は、鉛直方向に沿って延びており、1つのスパンに1つずつ設けられている。
【0046】
第4フィードローラ20は、第2加熱装置19によって加熱された糸Yを巻取装置21へ送るためのものであり、作業空間22の下方に配置されている(図1参照)。第4フィードローラ20は、機台長手方向に1列に配列されている。第4フィードローラ20は、例えば、図2に示すように、2本の糸Yを巻取装置21へ送ることが可能に構成されているが、これに限られるものではない。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅く、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0047】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yが、1つの5軸仮撚装置15につき2本ずつ撚られる。5軸仮撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播するが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱されて熱固定された後、冷却装置14で冷却される。5軸仮撚装置15から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが波状に仮撚りされた状態が維持される。さらに、5軸仮撚装置15によって仮撚りが施された2本の糸Y(糸Y1及び糸Y2)は、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、合糸装置17によって合糸された後、又は、合糸されずにそのまま、糸走行方向における下流側へ案内される。さらに、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱固定される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。
【0048】
(巻取部の構成)
次に、巻取部4の構成について図2及び図3を参照しつつ説明する。巻取部4は、糸Yを巻取ボビンBwに巻き取る複数の巻取装置21を有する。各巻取装置21は、例えば特開2009-74219号公報に記載されているように、1つ又は2つの巻取ボビンBwに糸Yを巻取可能に構成されている。各巻取装置21は、糸Yがトラバースされる際の支点となる支点ガイド41と、糸Yをトラバースするトラバース装置42と、巻取ボビンBwを回転自在に支持する単一のクレードル43と、制御部44(図3参照)とを有する。
【0049】
支点ガイド41は、上述したように、糸Yがトラバースされる際の支点となるガイドである。支点ガイド41は、例えば、機台長手方向に沿って並ぶように、各巻取装置21に3つずつ設けられている(図2参照)。例えば、合糸装置17により合糸されて1本になった糸Yを案内する場合には、3つの支点ガイドのうち中央に配置された支点ガイド41に糸Yが掛けられる(図2の紙面左側部分参照)。また、合糸されずにそのまま送られてきた2本の糸Yを案内する場合には、3つの支点ガイド41のうち両端の2つの支点ガイド41にそれぞれ糸Yが掛けられる(図2の紙面右側部分参照)。
【0050】
トラバース装置42は、例えば、モータにより往復駆動される無端ベルトに取り付けられたトラバースガイド45によって、糸Yをトラバース可能に構成されている。無端ベルトに取り付けられるトラバースガイド45の数は、トラバースされる糸Yの数に応じて変更可能である。例えば、合糸装置17により合糸されて1本になった糸Yをトラバースするトラバース装置42においては、1つのトラバースガイド45が設けられている(図2の紙面左側部分参照)。また、合糸されずにそのまま送られてきた2本の糸Yをトラバースするトラバース装置42においては、2つのトラバースガイド45が設けられている(図2の紙面右側部分参照)。トラバースガイド45の移動範囲は、トラバースされる糸Yの数に応じて変更可能である。トラバースされる糸Yの数やトラバースガイド45の移動範囲等の設定に関する情報は、例えば、制御部44に記憶されている。
【0051】
クレードル43は、1以上(1又は2)の巻取ボビンBw(巻取パッケージPw)を回転自在に支持可能に構成されている。言い換えると、クレードル43は、1つの巻取ボビンBwを支持している状態と、2つの巻取ボビンBwを支持している状態との間で状態を切換可能である。クレードル43は、複数の巻取装置21に1つずつ設けられている。また、巻取パッケージPwの糸走行方向におけるすぐ上流側には、巻取パッケージPwの表面に接触する接触ローラ46が配置されている。クレードル43に支持されている巻取ボビンBwは、例えば、不図示のモータによって回転駆動される。このような構成では、巻取パッケージPwの表面に接触している接触ローラ46が、摩擦によって従動回転しつつ巻取パッケージPwに接圧を付与する。或いは、巻取ボビンBwをモータで回転駆動する代わりに、接触ローラ46が不図示のモータによって回転駆動されても良い。このような構成では、接触ローラ46に接触している巻取パッケージPwが、摩擦によって従動回転する。
【0052】
制御部44は、トラバース装置42の動作及び巻取ボビンBwを回転駆動するモータの動作を制御する。制御部44は、巻取装置21に巻き取る糸Yの数に関する設定を変更可能に構成されている。すなわち、制御部44は、1つの巻取ボビンBwに1本の糸Yを巻き取る(図2の紙面左側部分参照)第1モードと、2つの巻取ボビンBwに2本の糸Yをそれぞれ巻き取る(図2の紙面右側部分参照)第2モードとの間で動作モードを切換可能である。
【0053】
以上のように構成された巻取部4では、上述した第4フィードローラ20から送られた糸Yが各巻取装置21によって巻取ボビンBwに巻き取られ、巻取パッケージPwが形成される。合糸装置17によって2本の糸Yを合糸する場合には、対応する巻取装置21の動作モードは第1モードに設定される。また、2本の糸Yを合糸せずにそのまま糸走行方向における下流側へ案内する場合には、対応する巻取装置21の動作モードは第2モードに設定される。
【0054】
(仮撚装置の構成)
次に、5軸仮撚装置15の構成について、図4図7を参照しつつ説明する。図4は、5軸仮撚装置15の斜視図である。図5は、5軸仮撚装置15を機台長手方向及び後述する回転軸53の軸方向(以下、単に軸方向)の両方と直交する方向から見た図である。図6(a)、(b)は、糸YにZ撚りを付与する5軸仮撚装置15を軸方向から見た図である。図7(a)、(b)は、糸YにS撚りを付与する5軸仮撚装置15を軸方向から見た図である。図6(b)及び図7(b)においては、後述する支持台54~56が見えるように、後述する円板部材57を二点鎖線で示している。なお、図4図7に示すように、機台長手方向における一方側及び他方側を定義する。また、5軸仮撚装置15において作業空間22(図1参照)に近い側を手前側と定義し(図1図4図6及び図7参照)、作業空間22から遠い側を奥側と定義する(図4図6及び図7参照)。また、図6(a)~図7(b)においては、後述する糸ガイド61の図示を省略している。
【0055】
5軸仮撚装置15は、2本の糸Y(糸Y1及び糸Y2)を一度に同じ向きに撚る(Z撚り又はS撚りを施す)ことが可能に構成されている。すなわち、図4図7に示すように、5軸仮撚装置15には、糸Y1に撚りを付与する第1仮撚部51と、糸Y2に撚りを付与する第2仮撚部52とが設けられている。5軸仮撚装置15は、機台長手方向において複数配列されている(図2参照)。
【0056】
図4図7に示すように、5軸仮撚装置15は、第1仮撚部51及び第2仮撚部52を構成する構成要素として、5つの回転軸53と、支持台54、55、56と、複数の円板部材57と、駆動機構58と、糸ガイド61、62、63とを有する。5つの回転軸53(共通回転軸71、第1個別回転軸72、73、第2個別回転軸74、75)は、機台長手方向と略直交する軸方向に延びた軸部材である。なお、軸方向は、必ずしも機台長手方向と略直交していなくても良い。5つの回転軸53のうち、機台長手方向における中央に配置された共通回転軸71と、共通回転軸71の機台長手方向における一方側に配置された2つの第1個別回転軸72、73とが、第1仮撚部51に含まれる。共通回転軸71と、共通回転軸71の機台長手方向における他方側に配置された2つの第2個別回転軸74、75とが、第2仮撚部52に含まれる。言い換えると、共通回転軸71は、第1仮撚部51及び第2仮撚部52に共通に設けられている。図6(a)及び図7(a)に示すように、回転軸53は、軸方向から見たときに、軸中心が仮想的な2つの正三角形(第1三角形201及び第2三角形202)の頂点を形成するように配置されている。共通回転軸71及び第1個別回転軸72、73が、第1三角形201の頂点を形成している。共通回転軸71及び第2個別回転軸74、75が、第2三角形202の頂点を形成している。第1個別回転軸72、73と第2個別回転軸74、75とは、機台長手方向において、共通回転軸71を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0057】
支持台54、55、56は、不図示のベアリングを介して回転軸53を回転可能に支持する台である。支持台54は、共通回転軸71と、第1個別回転軸72、73のうち奥側に配置された第1個別回転軸72と、第2個別回転軸74、75のうち奥側に配置された第2個別回転軸74とを回転可能に片持ち支持している。支持台55は、支持台54に取り付けられて支持台54の手前側に配置され、手前側の第1個別回転軸73を回転可能に片持ち支持している。支持台56は、支持台54に取り付けられて支持台54の手前側に配置され、手前側の第2個別回転軸75を回転可能に片持ち支持している。図4及び図5における紙面上側が軸方向における先端側であり、紙面下側が軸方向における基端側である。糸Yは、回転軸53の軸方向における先端側から基端側へ走行する。すなわち、軸方向における先端側が、糸走行方向における上流側である。軸方向における基端側が、糸走行方向における下流側である。また、糸Y1の走行方向を第1糸走行方向、糸Y2の走行方向を第2糸走行方向と定義する(図5参照)。また、支持台54、55、56の軸方向における基端側部分は、それぞれ、駆動機構58の一部を覆うカバー54a、55a、56aである(図4図5参照)。
【0058】
複数の円板部材57は、各回転軸53に装着された、糸Yに接触することで糸Yに撚りを付与するための部材である。なお、本実施形態では、説明の簡単化のため、全ての5軸仮撚装置15の全ての回転軸53に円板部材57が装着されているものとして説明を進める。また、本実施形態では、各回転軸53に3つ或いは4つの円板部材57が装着されている(図4等参照)が、各回転軸53に装着される円板部材57の数はこれに限られない。
【0059】
まず、複数の円板部材57のうち、共通回転軸71、第1個別回転軸72、73に装着された複数の円板部材57は、第1仮撚部51に含まれ、軸方向に延びる螺旋を描くように配置されている。円板部材57によって描かれる螺旋の向きは、糸Yに施す撚りの向きによって決まる。すなわち、糸YにZ撚りを施す5軸仮撚装置15(5軸仮撚装置15a。図6(a)、(b)参照)を軸方向における先端側から見たとき、第1仮撚部51の円板部材57は、反時計回りに螺旋を描くように配置されている。一方、糸YにS撚りを施す5軸仮撚装置15(5軸仮撚装置15b。図7(a)、(b)参照)を軸方向における先端側から見たとき、第1仮撚部51の円板部材57は、時計回りに螺旋を描くように配置されている。
【0060】
また、共通回転軸71、第2個別回転軸74、75に装着された円板部材57は、第2仮撚部52に含まれ、軸方向に延びる螺旋を描くように配置されている。第2仮撚部52に含まれる円板部材57によって描かれる螺旋の向きは、第1仮撚部51に含まれる円板部材57によって描かれる螺旋の向きと同じである。
【0061】
図5に示すように、第1仮撚部51の、第1糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材57(円板部材81)と、第2仮撚部52の、第2糸走行方向における最も上流側に配置された円板部材57(円板部材82)とは、軸方向と直交する同一の第1平面203内に配置されている。言い換えると、円板部材81の軸方向における位置及び円板部材82の軸方向における位置は、略同じである。また、第1仮撚部51の、第1糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材57(円板部材83)と、第2仮撚部52の、第2糸走行方向における最も下流側に配置された円板部材57(円板部材84)とは、軸方向と直交する同一の第2平面204内に配置されている。言い換えると、円板部材83の軸方向における位置及び円板部材84の軸方向における位置は、略同じである。これにより、円板部材81及び円板部材82の軸方向における位置が互いに異なり又は円板部材83及び円板部材84の軸方向における位置が互いに異なる場合と比べて、回転軸53が長くなることが抑制される。
【0062】
また、第1仮撚部51の円板部材57と第2仮撚部52の円板部材57は、軸方向から見たときに、共通回転軸71を対称中心として互いに点対称に配置されている。具体例として、5軸仮撚装置15a(図6(a)、(b)参照)において、第1仮撚部51の円板部材81は、手前側の第1個別回転軸73に装着され、第2仮撚部52の円板部材82は、奥側の第2個別回転軸74に装着されている。
【0063】
複数の円板部材57の糸Yとの接触部分は、例えばポリウレタンで形成されている。本実施形態では、糸Yとの接触部分がポリウレタンで形成された円板部材57が、各回転軸53に少なくとも1つ装着されている。但し、走行中の糸Yが最初に接触する円板部材57(円板部材81、82)及び最後に接触する円板部材57(円板部材83、84)は、一般的に摩耗しやすいことが知られている。そこで、円板部材81、82、83、84の糸Yとの接触部分は、例えば、ポリウレタンよりも耐摩耗性の高い部材であるセラミックで形成されている。これにより、円板部材81、82、83、84の摩耗が抑制される。しかしながら、これに限られるものではなく、全ての円板部材57の糸Yとの接触部分がポリウレタンで形成されていても良い。
【0064】
駆動機構58は、5つの回転軸53を同じ向きに回転駆動する機構である。駆動機構58は、モータ85(図4参照。本発明の駆動源、共通駆動源)と、モータ85の動力を各回転軸に伝達するためのベルト86、87、88、89(図5参照)等を有する。糸YにZ撚りを施す5軸仮撚装置15(5軸仮撚装置15a)の駆動機構58は、軸方向における先端側から見たときに、回転軸53を反時計回りに回転駆動する(図6(a)、(b)の矢印参照)。糸YにS撚りを施す5軸仮撚装置15(5軸仮撚装置15b)の駆動機構58は、軸方向における先端側から見たときに、回転軸53を時計回りに回転駆動する(図7(a)、(b)の矢印参照)。駆動機構58のより詳細については後述する。
【0065】
糸ガイド61、62、63は、図5に示すように、第1仮撚部51及び第2仮撚部52に対応して2つずつ設けられている。まず、第1仮撚部51の糸ガイド61(糸ガイド61a。本発明の第1糸ガイド)は、円板部材81の第1糸走行方向におけるすぐ上流側に配置されている。第1仮撚部51の糸ガイド62(糸ガイド62a)は、円板部材83の第1糸走行方向におけるすぐ下流側に配置されている。第1仮撚部51の糸ガイド63(糸ガイド63a)は、糸ガイド62aの第1糸走行方向におけるすぐ下流側に配置され、支持台55の機台長手方向における一方側端部に固定されている。また、第2仮撚部52の糸ガイド61(糸ガイド61b。本発明の第2糸ガイド)は、円板部材82の第2糸走行方向におけるすぐ上流側に配置されている。第2仮撚部52の糸ガイド62(糸ガイド62b)は、円板部材84の第2糸走行方向におけるすぐ下流側に配置されている。第2仮撚部52の糸ガイド63(糸ガイド63b)は、糸ガイド62bの第2糸走行方向におけるすぐ下流側に配置され、支持台56の機台長手方向における他方側端部に固定されている。
【0066】
以上のような構成を有する5軸仮撚装置15において、糸Yは、以下のような経路(糸道)を描くように配置される。図5に示すように、まず、糸Y1は、糸ガイド61aを経由し、第1仮撚部51の複数の円板部材57に接触しつつ螺旋を描くように配置される。円板部材57に接触している糸Y1は、軸方向から見たときに、第1三角形201の内側に収まるように配置され(図6(a)参照)、第1三角形201の内側を走行する。さらに、糸Y1は、糸ガイド62a、63aを経由して第1糸走行方向における下流側へ走行する。また、糸Y2は、糸ガイド61bを経由し、第2仮撚部52の複数の円板部材57に接触しつつ螺旋を描くように配置される。円板部材57に接触している糸Y2は、軸方向から見たときに、第2三角形202の内側に収まるように配置され(図6(a)参照)、第2三角形202の内側を走行する。さらに、糸Y2は、糸ガイド62b、63bを経由して第2糸走行方向における下流側へ走行する。
【0067】
このように糸Yを走行させながら、駆動機構58によって5つの回転軸53を同じ向きに回転駆動することにより、回転中の円板部材57に接触している糸Yに撚りが付与される。具体的には、Z撚り用の5軸仮撚装置15a(図6(a)、(b)参照)においては、糸Y1、糸Y2の両方にZ撚りが付与される。S撚り用の5軸仮撚装置15b(図7(a)、(b)参照)においては、糸Y1、糸Y2の両方にS撚りが付与される。
【0068】
ところで、上述した5軸仮撚装置15においては、第1仮撚部51及び第2仮撚部52への糸掛けが必要である。具体的には、所定の2つの回転軸53の間から第1三角形201の内側に糸Y1を入れ、さらに糸ガイド61、62、63に糸Y1を掛ける必要がある。また、所定の2つの回転軸53の間から第2三角形202の内側に糸Y2を入れ、さらに糸ガイド61、62、63に糸Y2を掛ける必要がある。糸掛けは、作業空間22(図1参照)に位置している作業者によって行われる。仮に、図8(a)の参考図に示すように、第1仮撚部51及び第2仮撚部52のうち一方が他方よりも奥側(作業空間22から遠い側)に配置された場合、奥側の仮撚部(図8(a)においては第2仮撚部52)への糸掛けの作業が極めて困難となる。したがって、第1仮撚部51及び第2仮撚部52の両方が作業空間22に面するように、第1仮撚部51及び第2仮撚部52は、機台長手方向に並べて配置される必要がある(図8(b)の参考図を参照)。
【0069】
また、上述したように、第1仮撚部51の円板部材57と第2仮撚部52の円板部材57は、軸方向から見たときに、互いに点対称に配置されている。このような構成では、円板部材57への糸掛けの方法は、図8(b)に示すように3通り考えられる。第1の方法は、図8(b)の紙面左側部分に示すように、第1仮撚部51には手前側から糸掛けをし、第2仮撚部52には奥側から糸掛けをするという方法である(図8(b)の矢印205、206参照)。第2の方法は、図8(b)の紙面中央部分に示すように、第1仮撚部51には奥側から糸掛けをし、第2仮撚部52には手前側から糸掛けをするという方法である(図8(b)の矢印207、208参照)。第3の方法は、図8(b)の紙面右側部分に示すように、第1仮撚部51には機台長手方向における一方側から糸掛けをし、第2仮撚部52には機台長手方向における他方側から糸掛けをするという方法である(図8(b)の矢印209、210参照)。なお、別の糸掛けの方法を見出すために、第1仮撚部51の円板部材57と第2仮撚部52の円板部材57とが互いに点対称でなくなるように円板部材57を配置することも考えられるが、現実的には、以下の理由により、そのような配置は採用され難い。すなわち、第1仮撚部51の円板部材57と第2仮撚部52の円板部材57とが互いに点対称でない場合、第1仮撚部51の円板部材57の軸方向における位置と、第2仮撚部52の円板部材57の軸方向における位置とが互いにずれることとなる。この場合、糸Y1の糸道と糸Y2の糸道とが大きく異なることにより糸品質がばらつくおそれがあり、また、回転軸53が長くなるため装置の大型化を招くという問題も生じる。これらの理由から、現実的には、第1仮撚部51の円板部材57と第2仮撚部52の円板部材57とを互いに点対称に配置することが求められる。
【0070】
その上で、上述した3つの方法のうち、第1及び第2の方法は、奥側からの糸掛けが困難であるため採用され難い。したがって、5軸仮撚装置15は、第3の方法を適用可能に構成されることが求められる。より具体的には、本実施形態における5軸仮撚装置15は、2つの第1個別回転軸72、73の間から糸Y1が糸掛けされ、2つの第2個別回転軸74、75の間から糸Y2が糸掛けされるように構成されている。しかしながら、このような構成では、ある5軸仮撚装置15への糸掛けを行う際に、機台長手方向において隣に配置された別の5軸仮撚装置15との間の作業スペースが狭くなり(図8(b)参照)、糸掛けの作業が困難となるおそれがある。そこで、本実施形態では、糸掛けの作業を容易に行えるようにするため、5軸仮撚装置15が以下のような構成を有する。
【0071】
(5軸仮撚装置の詳細構成)
5軸仮撚装置15の詳細構成について、図9(a)、(b)を参照しつつ説明する。図9(a)は、第1個別回転軸73が第1動作位置(後述)に位置し、且つ、第2個別回転軸75が第2動作位置(後述)に位置しているときの5軸仮撚装置15を示す説明図である。図9(b)は、第1個別回転軸73が第1糸掛位置(後述)に位置し、且つ、第2個別回転軸75が第2糸掛位置(後述)に位置しているときの5軸仮撚装置15を示す説明図である。
【0072】
第1個別回転軸72、73のうち手前側に配置された第1個別回転軸73(本発明の一方、及び、第1可動軸)を回転可能に支持している支持台55は、支持台54に対して、共通回転軸71の軸中心を揺動軸中心として揺動可能に取り付けられている。別の言い方をすれば、支持台54と支持台55とは、いわばヒンジのように開閉可能である。これにより、第1個別回転軸73は、5軸仮撚装置15が動作しているとき(糸Yに撚りを付与しているとき)の動作位置(第1動作位置。図9(a)参照)と、第1動作位置よりもさらに手前側である糸掛位置(第1糸掛位置。図9(b)参照)との間で移動可能である。このため、糸掛け時に、2つの第1個別回転軸72、73の間の隙間を大きくすることができる。したがって、複数の5軸仮撚装置15が機台長手方向に並べて配置された構成においても、作業空間22からの糸Y1の糸掛けが行いやすくなる(図9(b)の矢印211参照)。より詳細には、第1個別回転軸73は、軸方向から見たときに、共通回転軸71との距離を一定に保った状態で、第1個別回転軸72との距離を変更可能である。同様に、第2個別回転軸74、75のうち手前側に配置された第2個別回転軸75(本発明の一方、及び、第2可動軸)を回転可能に支持している支持台56は、支持台54に対して、共通回転軸71の軸中心を揺動軸中心として揺動可能に取り付けられている。これにより、第2個別回転軸75は、5軸仮撚装置15が動作しているときの動作位置(第2動作位置。図9(a)参照)と、第2動作位置よりもさらに手前側である糸掛位置(第2糸掛位置。図9(b)参照)との間で移動可能である。これにより、糸掛け時に、2つの第2個別回転軸74、75の間の隙間を大きくすることができる。したがって、複数の5軸仮撚装置15が機台長手方向に並べて配置された構成においても、作業空間22からの糸Y2の糸掛けが行いやすくなる(図9(b)の矢印212参照)。このようにして、5軸仮撚装置15への糸掛作業を容易に行うことができる。なお、支持台54、55、56は、いずれも、不図示のベアリングを介して共通回転軸71を回転可能に支持していても良い。
【0073】
さらに、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75を動作位置から糸掛位置に移動させたときに、これらの回転軸53は、手前側且つ5軸仮撚装置15の機台長手方向における内側(共通回転軸71側)へ移動する。このため、糸掛作業時に、機台長手方向において互いに隣接する5軸仮撚装置15同士の干渉を回避することもできる。言い換えると、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75を移動可能とするために複数の5軸仮撚装置15の間隔を広げる必要がない。したがって、仮撚加工機1の機台長手方向における大型化を抑制しつつ、糸掛作業を容易化できる。
【0074】
また、上述したように、糸ガイド63aは支持台55に固定されており、糸ガイド63bは支持台56に固定されている。したがって、第1個別回転軸73が第1動作位置から第1糸掛位置に移動する際に、糸ガイド63aも手前側且つ5軸仮撚装置15の機台長手方向における内側(共通回転軸71側)へ移動する(図9(b)参照)。また、第2個別回転軸75が第2動作位置から第2糸掛位置に移動する際に、糸ガイド63bも手前側且つ5軸仮撚装置15の機台長手方向における内側(共通回転軸71側)へ移動する(図9(b)参照)。糸ガイド63a、63b(糸ガイド63)が手前側(作業者に近づく側)に移動することにより、糸ガイド63に対する糸掛作業が行いやすくなる。また、糸ガイド63が5軸仮撚装置15の機台長手方向における内側(共通回転軸71側)へ移動することにより、隣り合う5軸仮撚装置15の糸ガイド63との間隔が広がる。したがって、糸ガイド63に対する糸掛作業がより行いやすくなる。
【0075】
ここで、第1個別回転軸73を第1動作位置から第1糸掛位置に移動させる際の支持台55の回転角度は、例えば27度以上30度以下であると好ましい。上記回転角度が27度以上であることにより、第1個別回転軸73が第1糸掛位置に位置しているとき、第1個別回転軸72に装着された円板部材57と第1個別回転軸73に装着された円板部材57とが、軸方向から見たときに実質的に重ならない(図9(b)参照)。このため、第1個別回転軸72と第1個別回転軸73との間から第1三角形201の内側に糸Y1を入れ、且つ、糸ガイド61、62、63に糸掛けすることが容易になる。また、上記回転角度が30度以下であることにより、支持台55と支持台56とが互いに干渉して意図せず動くこと等を抑制でき、糸掛作業の妨げになることを抑制できる。第2個別回転軸75を第2動作位置から第2糸掛位置に移動させるときの支持台56の回転角度についても、同様である。
【0076】
なお、共通回転軸71、第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74は、支持台54に回転可能に取り付けられており、位置が固定されている。つまり、5つの回転軸53のうち、第1個別回転軸73と第2個別回転軸75とを除く共通回転軸71、第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74は、本発明の3つの固定回転軸に相当する。
【0077】
次に、5軸仮撚装置15のその他の構成について、図10(a)~(c)、図11等を参照しつつ具体的に説明する。図10(a)は、ガイド支持部90(後述)を軸方向における先端側から見た図である。図10(b)は、糸ガイド61a、61bの位置調整前の、機台長手方向から見たときの糸道を示す説明図である。図10(c)は、糸ガイド61a、61bの位置調整後の、機台長手方向から見たときの糸道を示す説明図である。図11は、駆動機構を軸方向における基端側から見た図である。
【0078】
(糸ガイドの周辺の構成)
糸ガイド61a、61bの周辺の構成について説明する。図4及び図10(a)に示すように、5軸仮撚装置15は、糸走行方向における上流側に配置された糸ガイド61a、61bを支持するガイド支持部90を有する。ガイド支持部90は、例えば、第1支持部材91と、第2支持部材92とを有する。第1支持部材91は、支持台54の奥側の端部且つ機台長手方向における一方側の端部に取り付けられ、軸方向に延びた部材である。第2支持部材92は、第1支持部材91の軸方向先端部に取り付けられた部材である。第2部材は、5軸仮撚装置15の機台長手方向における内側に向かって延びる延在部93と、延在部93と一体的に設けられ、軸方向及び機台長手方向の両方と略垂直な方向に延びた1対のガイド取付部94a、94bとを有する。ガイド取付部94aは、5軸仮撚装置15の機台長手方向における一方側(第1仮撚部51側)に配置さている。ガイド取付部94bは、5軸仮撚装置15の機台長手方向における他方側(第2仮撚部52側)に配置されている。
【0079】
図4に示すように、ガイド取付部94aには、糸ガイド61aを取り付けるための取付穴95aが形成され、ガイド取付部94bには、糸ガイド61bを取り付けるための取付穴95bが形成されている。また、図10(a)に示すように、糸ガイド61aは、取付穴95aを通過している不図示のネジを有する固定具96aによって、ガイド取付部94aに取り付けられている。同様に、糸ガイド61bは、固定具96bによってガイド取付部94bに取り付けられている。また、取付穴95a、95bは、軸方向及び機台長手方向の両方と略垂直な方向に延びている(図4参照)。これにより、糸ガイド61a、61bは、軸方向から見たときに、機台長手方向と略垂直な方向に位置調整可能な可動糸ガイドとなっている。具体的には、固定具96aを緩めることにより糸ガイド61aを取付穴95aに沿って移動させることができる。そして、固定具96aを締めることにより糸ガイド61aの位置を固定することができる。糸ガイド61bについても同様である。
【0080】
ここで、上述したように、第1仮撚部51の円板部材81と第2仮撚部52の円板部材82とは互いに点対称に配置されている(図6(a)参照)。つまり、機台長手方向から見たときに、円板部材81の位置と円板部材82の位置とが互いに異なる。このため、仮に図10(b)に示すように、機台長手方向から見たときに糸ガイド61a、61bが互いに重なるように配置されている場合、糸ガイド61aを経由して走行する糸Y1の屈曲角度と、糸ガイド62を経由して走行する糸Y2の屈曲角度とが互いに異なる。このような場合、糸Y1の糸品質と糸Y2の糸品質とがばらつくおそれがある。この点、本実施形態では、糸ガイド61a、61bが可動糸ガイドであるため、糸ガイド61aと糸ガイド61bとの相対的な位置関係を調整できる。このため、糸ガイド61a、61bの位置を適切に調整することで、糸Y1の屈曲角度と糸Y2の屈曲角度との差を小さくできる(図10(c)参照)。
【0081】
(駆動機構の詳細)
次に、駆動機構58の詳細について説明する。図11に示すように、駆動機構58は、モータ85と、ベルト86、87、88、89とを有する。モータ85は、支持台54よりも奥側に配置された、5つの回転軸を共通に駆動するための駆動源である。ベルト86は、モータ85の動力を共通回転軸71(本発明の中間軸)に伝達するための無端ベルトである。ベルト86は、モータ85の駆動軸85aに取り付けられたプーリ101、及び、共通回転軸71に取り付けられたプーリ102に巻き掛けられている。
【0082】
ベルト87(本発明の共通ベルト)は、共通回転軸71を介して、3つの固定回転軸のうち残り2つの第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74にモータ85の動力を伝達するための無端ベルトである。ベルト87は、共通回転軸71に取り付けられたプーリ103、第1個別回転軸72に取り付けられたプーリ104、及び、第2個別回転軸74に取り付けられたプーリ105に巻き掛けられている(図5及び図11参照)。
【0083】
ベルト88は、共通回転軸71を介して、モータ85の動力を第1個別回転軸73に伝達するための無端ベルトである。ベルト88は、共通回転軸71に取り付けられたプーリ106及び第1個別回転軸73に取り付けられたプーリ107に巻き掛けられている(図5及び図11参照)。ベルト89は、共通回転軸71を介して、モータ85の動力を第2個別回転軸75に伝達するための無端ベルトである。ベルト89は、共通回転軸71に取り付けられたプーリ108及び第2個別回転軸75に取り付けられたプーリ109に巻き掛けられている(図5及び図11参照)。
【0084】
ここで、仮に、第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74を共通に駆動するためのベルト87の代わりに、第1個別回転軸72に動力を伝達するためのベルトと第2個別回転軸74に動力を伝達するベルトが別々に設けられている構成では、ベルトの数が多くなる。すると、共通回転軸71に取り付けられるプーリの数も増え、共通回転軸71をより長軸化せざるを得ないという問題が発生する。この点、本実施形態では、上述した3つの固定回転軸をベルト87によってまとめて駆動できるので、ベルトの数を少なく抑えることができる。
【0085】
以上のように、第1個別回転軸73が、第1動作位置と、第1動作位置よりも手前側である第1糸掛位置との間で移動可能である。これにより、第1仮撚部51に糸掛けを行うときに、2つの第1個別回転軸72、73の間の隙間を大きくすることができる。したがって、複数の5軸仮撚装置15が機台長手方向に並べて配置された構成においても、作業空間22からの糸掛けを行いやすくすることができる。同様に、第2個別回転軸75が、第2動作位置と第2糸掛位置との間で移動可能であるため、第2仮撚部52への糸掛け時に2つの第2個別回転軸74、75の間の隙間を大きくすることができる。以上のように、5軸仮撚装置15が機台長手方向に並べて配置された仮撚加工機1において、糸掛けの作業を容易に行うことができる。
【0086】
また、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75が、共通回転軸71を揺動軸中心として揺動可能である。つまり、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75を移動させる際、第1個別回転軸73と共通回転軸71との距離及び第2個別回転軸75と共通回転軸71との距離が変化しない。したがって、ベルト88、89が緩み或いは過大なテンションにより破損することを回避できる。
【0087】
また、糸ガイド61a、61bの位置を調整することにより、糸ガイド61aによって案内される糸Y1の糸道と糸ガイド61bによって案内される糸Y2の糸道との違いを小さく抑えることができる。したがって、糸Y1と糸Y2との間で糸品質のばらつきを抑制できる。
【0088】
また、糸ガイド61a、61bは、軸方向から見たときに、機台長手方向と略直交する方向に移動可能である。したがって、糸ガイド61a、61bが互いに干渉することを抑制しつつ、糸ガイド61a、61bの可動範囲を広くすることができるので、糸道を効果的に調整できる。
【0089】
また、共通回転軸71、第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74をベルト87によってまとめて駆動できるので、ベルトの数を少なく抑えることができる。したがって、回転軸53の長軸化を抑制でき、装置の大型化を抑制できる。
【0090】
また、モータ85の動力は、5つの回転軸53のうち機台長手方向における真ん中に配置された共通回転軸71に伝達される。このため、共通回転軸71の周りに配置された他の回転軸53にさらに動力を伝達するように、5軸仮撚装置15を構成できる。したがって、動力伝達のための構造を単純化できる。
【0091】
また、第1仮撚部51の第1糸走行方向における最も上流側の円板部材81と、第2仮撚部52の第2糸走行方向における最も上流側の円板部材82とが、同一の第1平面203内に配置されている。さらに、第1仮撚部51の第1糸走行方向における最も下流側の円板部材83と、第2仮撚部52の第2糸走行方向における最も下流側の円板部材84とが、同一の第2平面204内に配置されている。これにより、円板部材57の軸方向における配置をコンパクトにすることができる。したがって、装置の軸方向における大型化を抑制できる。
【0092】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0093】
(1)前記実施形態においては、仮撚加工機1において、全ての5軸仮撚装置15の全ての回転軸53に円板部材57が装着されているものとしたが、これには限られない。例えばコスト削減等を目的として、糸Yの処理に用いられていない回転軸53(例えば、図2において最も紙面左側に配置された5軸仮撚装置15の、一部の回転軸53)からは、不要な円板部材57が取り外されていても良い。但し、5つの回転軸53を上述のモータ85によって共通駆動する構成においては、以下のような問題が生じる。すなわち、ある5軸仮撚装置15において一部の回転軸53から単純に円板部材57を取り外すだけでは、当該5軸仮撚装置15のモータ85への負荷が、他の5軸仮撚装置15のモータ85への負荷と比べて小さくなる。そうすると、一部の円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15において、5つの回転軸53が意図せず速く回転する。その結果、当該5軸仮撚装置15によって処理された糸の糸品質が、他の5軸仮撚装置15によって処理された糸の糸品質と大きく異なるおそれがある。そこで、図12(a)、(b)に示すように、一部の円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15において、取り外された円板部材57の代わりに重りが設けられていても良い。例えば、図12(a)に示すように、第1個別回転軸72、73から円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15cにおいて、円板部材57の代わりに重り110が設けられていても良い。同様に、図12(b)に示すように、第2個別回転軸74、75から円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15dにおいても、円板部材57の代わりに重り110が設けられていても良い。これにより、これらの重り110が負荷となるため、回転軸53が意図せず速く回転することを防止できる。したがって、円板部材57よりも安価な部材を重り110として適用することで、コスト増大を抑えつつ、5軸仮撚装置15間での糸品質のばらつきを抑制できる。
【0094】
或いは、重り110を設ける代わりに、一部の円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15が、モータ85の回転数をフィードバック制御するように構成されていても良い。例えば、当該5軸仮撚装置15は、5つの回転軸53を共通駆動するモータ85の回転数を制御するための、不図示のインバータ装置を有していても良い。或いは、別の手段として、一部の円板部材57が取り外された5軸仮撚装置15は、各回転軸53を個別に回転駆動する5つの不図示のモータを有していても良い。
【0095】
(2)前記までの実施形態において、糸Yとの接触部分がポリウレタンで形成された円板部材57が、全ての回転軸53に装着されているものとしたが、これには限られない。すなわち、共通回転軸71に設けられた円板部材57には、原則として糸Y1及び糸Y2の両方が接触するため、これらの円板部材57は、他の回転軸53に設けられた円板部材57と比べて早く摩耗しうる。そこで、例えば、共通回転軸71に装着された全ての円板部材57の糸Yとの接触部分が、ポリウレタンよりも耐摩耗性の高いセラミックにより形成されていても良い。つまり、共通回転軸71に装着された円板部材57の糸Yとの接触部分の耐摩耗性が、共通回転軸71以外の回転軸53に装着された円板部材57の糸Yとの接触部分の耐摩耗性よりも高くても良い。これにより、共通回転軸71に設けられた円板部材57のみが早く摩耗してしまうことを抑制できる。したがって、一部の円板部材57のみを早期交換する必要が生じることを回避できる。なお、円板部材57の糸Yとの接触部分の材質は、上述したポリウレタンやセラミックに限定されるものではない。
【0096】
(3)前記までの実施形態において、第1仮撚部51の円板部材81と第2仮撚部52の円板部材82とが、同一の第1平面203内に配置されるものとしたが、これには限られない。円板部材81及び円板部材82は、必ずしも同一平面内に配置されていなくても良い。同様に、第1仮撚部51の円板部材83と第2仮撚部52の円板部材84とは、必ずしも同一の第2平面204内に配置されていなくても良い。
【0097】
(4)前記までの実施形態において、ベルト86によってモータ85から共通回転軸71に動力が伝達されるものとした(すなわち、共通回転軸71が本発明の中間軸に相当するものとした)が、これには限られない。例えば、ベルト86によって、モータ85から第1個別回転軸72に、或いはモータ85から第2個別回転軸74に動力が伝達されるように、5軸仮撚装置15が構成されていても良い。
【0098】
(5)前記までの実施形態において、ベルト87によって、共通回転軸71を介して第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74の両方に動力を伝達するものとしたが、これには限られない。すなわち、共通回転軸71に伝達された動力は、別々のベルトを介して第1個別回転軸72及び第2個別回転軸74にそれぞれ伝達されても良い。
【0099】
(6)前記までの実施形態において、回転軸53をベルト駆動するものとしたが、これには限られない。例えば、駆動源の動力を各回転軸53に伝達する伝達部材として、ベルトの代わりにギア又はチェーンが設けられていても良い。
【0100】
(7)前記までの実施形態において、糸ガイド61a、61bは、軸方向から見たときに、機台長手方向に略直交する方向に移動可能であるものとしたが、これには限られない。糸ガイド61a、61bの移動可能な方向は、機台長手方向に略直交する方向から傾いていても良い。言い換えると、糸ガイド61a、61bは、機台長手方向と交差する方向に移動可能であっても良い。
【0101】
(8)前記までの実施形態において、糸ガイド61a、61bの両方が位置調整可能に構成されているものとしたが、これには限られない。すなわち、糸ガイド61a、61bのうち、一方のみが他方に対して位置調整可能であっても良い。言い換えると、糸ガイド61a、61bのうち少なくとも一方が、他方に対して位置調整可能であっても良い。
【0102】
(9)前記(8)の変形例において、糸ガイド61a、61bのうち少なくとも一方が、他方に対して位置調整可能であっても良いものとしたが、これには限られない。糸ガイド61a及び糸ガイド61bは、必ずしも位置調整可能に構成されていなくても良い。
【0103】
(10)前記までの実施形態において、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75は、共通回転軸71を揺動軸中心として揺動可能であるものとしたが、これには限られない。例えば、第1個別回転軸73及び第2個別回転軸75は、直線的に移動可能に構成されていても良い。
【0104】
(11)前記までの実施形態において、仮撚加工機1は合糸装置17を備えるものとしたが、仮撚加工機1は、必ずしも合糸装置17を備えていなくても良い。
【0105】
(12)前記までの実施形態において、巻取装置21は1つの巻取ボビンBwに糸Yを巻き取る第1モードと、2つの巻取ボビンBwに糸Yを巻き取る第2モードとの間で動作モードを切換可能に構成されているものとしたが、これには限られない。例えば、巻取装置21は、さらに、3つ以上の巻取ボビンBwに糸Yを巻き取る動作モードを選択可能に構成されていても良い。或いは、巻取装置21は、1つの巻取ボビンBwにのみ糸Yを巻き取るように構成されていても良い。
【0106】
(13)前記までの実施形態において、仮撚加工機1は、ナイロンからなる糸Yを仮撚加工するものとしたが、これには限られない。仮撚加工機1は、例えば、ポリエステルからなる糸等を仮撚加工しても良い。
【0107】
(14)支持台54、55、56が不図示のベアリングを介して共通回転軸71を回転可能に支持する構成では、例えば支持台55を揺動させると、摩擦によって支持台56が意図せず従動的に揺動するおそれがあり、以下のような問題が生じうる。例えば、第2仮撚部52への糸掛作業が既に完了した状態で支持台56が意図せず手前側に揺動した場合、糸Y2が第2仮撚部52から外れてしまい、糸掛作業をやり直す必要が生じうる。そこで、5軸仮撚装置15は、回転軸53が動作位置から糸掛位置に意図せず移動することを防止するためのロック機構を備えていても良い。1つのロック機構の全ての構成要素は、対応する1つの5軸仮撚装置15に設けられていても良い。或いは、図13(a)、(b)に示すように、ロック機構120が、ある5軸仮撚装置15の支持台55から、当該5軸仮撚装置15と隣接する5軸仮撚装置15の支持台56に亘って設けられていても良い。具体的には、ロック機構120は、図13(b)に示すように、長尺状の板部材121と、ある5軸仮撚装置15の支持台56の手前側の側面に設けられた回動軸122と、隣接する5軸仮撚装置15の支持台55の手前側の側面に設けられた凸部123とを有する。板部材121の延在方向における一方側の端部は、回動軸122を介して、支持台56の手前側の側面に取り付けられている。つまり、板部材121は、支持台56に回動可能に取り付けられている。板部材121の延在方向における他方側の端部には、例えばU字状の切欠き121aが形成されている。これにより、板部材121の他方側端部は凸部123と係合可能な係合部となっている。板部材121が凸部123と係合しているとき(図13(b)の実線参照)、ロック機構120が設けられた支持台55、56が意図せず手前側に動くことを防止できる。板部材121と凸部123との係合が解除されたとき(図13(b)の二点鎖線参照)、上記支持台55、56を手前側に移動させることができる。また、ある5軸仮撚装置15で処理された糸Y1と当該5軸仮撚装置15に隣接配置された5軸仮撚装置15で処理された糸Y2とを合糸する場合にも、上記のようなロック機構120が設けられていても良い。
【符号の説明】
【0108】
1 仮撚加工機
15 5軸仮撚装置
22 作業空間
51 第1仮撚部
52 第2仮撚部
53 回転軸
57 円板部材
61a 糸ガイド(第1糸ガイド)
61b 糸ガイド(第2糸ガイド)
71 共通回転軸(中間軸、固定回転軸)
72 第1個別回転軸(固定回転軸)
73 第1個別回転軸(第1可動軸)
74 第2個別回転軸(固定回転軸)
75 第2個別回転軸(第2可動軸)
81 円板部材
82 円板部材
83 円板部材
84 円板部材
85 モータ(駆動源、共通駆動源)
87 ベルト(共通ベルト)
110 重り
201 第1三角形
202 第2三角形
203 第1平面
204 第2平面
Y 糸
Y1 糸(第1の糸)
Y2 糸(第2の糸)
図1
図2
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図13