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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
G01N35/04 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019106462
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201056
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 晴久
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 大介
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143678(JP,A)
【文献】特開2014-085354(JP,A)
【文献】特開2007-309675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を用いて検体を分析するための分析装置であって、
前記検体を収容するための検体容器を保持する複数の検体ラックを収納する収納ユニットであり、前記検体ラックを収納するための収納領域を含む収納ユニットと、
前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックを当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを当該分析装置と接続された他の分析装置に収納することが可能となり、又は/及び、前記他の分析装置から送られた前記検体ラックを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを前記収納ユニットにおける前記複数の収納位置に収納することが可能となる搬送手段と、を備え、
前記収納領域を、当該収納領域内の前記検体ラックに保持された前記検体容器の検体を吸引可能な位置に配置し、
前記搬送手段は、
前記収納ユニットの近傍に設けられた垂直搬送手段であって、前記検体ラックを垂直方向に搬送するための垂直搬送手段と、
前記収納ユニットの近傍に設けられた水平搬送手段であって、前記検体ラックを水平方向に搬送するための水平搬送手段と、を備え、
前記水平搬送手段を、前記収納領域よりも下方の位置に配置し、
前記垂直搬送手段を、前記収納領域と前記水平搬送手段との相互間において垂直移動可能に配置した、
分析装置。
【請求項2】
前記搬送手段が、前記収納領域に収納された前記検体ラックを、当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送し、又は当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該収納ユニットの領域のうち前記検体ラックを一時的に収納するためのバッファ領域に収納可能とし、
前記バッファ領域を、前記収納領域に隣接する位置且つ当該収納領域の真横の位置に配置すると共に、垂直方向において前記水平搬送手段に対応する位置に配置した、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記搬送手段が、前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックの各々を垂直方向に搬送する前に水平方向に搬送することにより、当該検体ラックのいずれであっても前記複数の収納位置のうち所望の収納位置に位置させることを可能とした、
請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、当該分析装置と前記他の分析装置との相互間に設けられた受け渡し手段であって、前記水平搬送手段にて搬送された検体ラックを前記他の分析装置に受け渡すための受け渡し手段をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の物質を含有する試料(サンプル)の中から、分析対象となる成分や所定物質(以下、標的物質)を、試料と試薬の反応により、検出、分離、同定、定量して分析を行うための装置又はシステムが種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、検体の分注や分析等が行われる複数の機能モジュールと、検体を収容した検体容器を搭載する検体ラックを収納するサンプラユニットと、機能モジュールの各々と対で組み合わされるバッファユニットと、サンプラユニットよりも背面側に設けられ、且つ検体ラックの供給、搬送、回収といったラック搬送の役割をもつラック搬送部であって、複数の機能モジュールの上流から下流に検体ラックを搬送する送りレーンと、複数の機能モジュールの下流から上流に検体ラックを搬送する戻りレーンとを有するラック搬送部と、バッファユニットと送りレーンとの間、および、バッファユニットと戻りレーンとの間で、検体ラックを双方向で移載するラック移載機構と、バッファユニット内で検体ラックを一時的に待機させることができる独立した複数のスロットと、バッファユニット内のモジュール搬入出待機位置との間で検体ラックを搬送するラック移動機構と、を備えるシステムが開示されている。また、サンプラユニットは、正面側に設けられた投入部であって、検体ラックを投入する投入部と、投入部から投入された検体ラックをラック搬送部に搬送する(すなわち、検体ラックを正面側から背面側に向けて搬送する)ための投入ラック移動ユニットとを備えている。
【0004】
例えば、特許文献2には、横方向に沿って配置された複数の機能モジュールと、検体を収容した検体容器を搭載する検体ラックを収納するサンプラユニットであって、検体ラックを投入する投入部を有するサンプラユニットと、サンプラユニットよりも背面側に設けられた搬送部であって、複数の機能モジュールの夫々に投入部で投入された検体ラックを横方向に搬送する搬送部と、夫々の機能モジュールの内部に備えられ、且つ、分注位置での分注処理待ちの検体ラックを待機させる第1バッファ部と、検体ラックを横方向に搬送する搬送部に対し縦方向に配置され、且つ、検体ラックを分注位置に搬送する前に一時的に待機させる複数のスロットを有する、夫々の機能モジュールと対となる第2バッファ部と、を備えるシステムが開示されている。また、サンプラユニットは、投入部から投入された検体ラックをラック搬送部に搬送する(すなわち、検体ラックを正面側から背面側に向けて搬送する)ための投入ラック移動ユニットを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-194197号公報
【文献】特開2017-096964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2のシステムには、以下の問題点があった。
【0007】
例えば、サンプラユニットが機能モジュールの外部に設けられていたので、各機能モジュールにおいて検体の分注を行う毎に検体ラックをサンプラユニットから各機能モジュールに搬送しなければならないことから、検体ラックの搬送距離の最小限化を図ることが難しくなるという問題があった。
【0008】
また、サンプラユニットに収納された検体ラックを各機能モジュールまでラック搬送部で搬送する際に、投入ラック移動ユニットを用いてサンプラユニット内において検体ラックを正面側から背面側に向けて水平に搬送していた。また、ラック搬送部からサンプラユニットに搬送された検体ラックを回収する際には、投入ラック移動ユニットを用いてサンプラユニット内において検体ラックを背面側から正面側に向けて水平に搬送する必要があった。これらのことから、検体ラックの搬送経路及びシステムの構造が複雑化するという問題があった。
【0009】
また、検体吸引位置にすでに検体ラックがある場合、次の検体ラックは、検体吸引位置が空くまでラックの待機位置であるバッファユニットなどで待つ必要があり、検体ラックの移送制御が複雑になる。また、システムの構造の簡易化を図ることが難しくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、検体ラックにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を図りながら、分析装置の構造の簡易化を図ることが可能になる、分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の分析装置は、試薬を用いて検体を分析するための分析装置であって、前記検体を収容するための検体容器を保持する複数の検体ラックを収納する収納ユニットであり、前記検体ラックを収納するための収納領域を含む収納ユニットと、前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックを当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを当該分析装置と接続された他の分析装置に収納することが可能となり、又は/及び、前記他の分析装置から送られた前記検体ラックを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを前記収納ユニットにおける前記複数の収納位置に収納することが可能となる搬送手段と、を備え、前記収納領域を、当該収納領域内の前記検体ラックに保持された前記検体容器の検体を吸引可能な位置に配置し、前記搬送手段は、前記収納ユニットの近傍に設けられた垂直搬送手段であって、前記検体ラックを垂直方向に搬送するための垂直搬送手段と、前記収納ユニットの近傍に設けられた水平搬送手段であって、前記検体ラックを水平方向に搬送するための水平搬送手段と、を備え、前記水平搬送手段を、前記収納領域よりも下方の位置に配置し、前記垂直搬送手段を、前記収納領域と前記水平搬送手段との相互間において垂直移動可能に配置した。
【0012】
請求項2に記載の分析装置は、請求項1に記載の分析装置において、前記搬送手段が、前記収納領域に収納された前記検体ラックを、当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送し、又は当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該収納ユニットの領域のうち前記検体ラックを一時的に収納するためのバッファ領域に収納可能とし、前記バッファ領域を、前記収納領域に隣接する位置且つ当該収納領域の真横の位置に配置すると共に、垂直方向において前記水平搬送手段に対応する位置に配置した。
【0013】
請求項3に記載の分析装置は、請求項1又は2に記載の分析装置において、前記搬送手段が、前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックの各々を垂直方向に搬送する前に水平方向に搬送することにより、当該検体ラックのいずれであっても前記複数の収納位置のうち所望の収納位置に位置させることを可能とした。
【0014】
請求項4に記載の分析装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析装置において、前記搬送手段は、当該分析装置と前記他の分析装置との相互間に設けられた受け渡し手段であって、前記水平搬送手段にて搬送された検体ラックを前記他の分析装置に受け渡すための受け渡し手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の分析装置によれば、複数の検体ラックを収納する収納ユニットを備えるので、検体の吸引等を行う毎にサンプラユニットや検体ラック搬送部を介して検体ラックを搬送することを回避でき(又は搬送距離を短くでき)、検体ラックにおける搬送距離の最小限化及び搬送機構の単純化を図ることができる。また、収納ユニットに収納されている複数の検体ラックを当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを当該分析装置と接続された他の分析装置に収納することが可能となり、又は/及び、他の分析装置から送られた検体ラックを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを収納ユニットにおける複数の収納位置に収納することが可能となる搬送手段を備えるので、分析装置間で検体ラックを搬送でき、分析装置間において検体ラックの収納位置を状況に応じて変更することができる。よって、検体吸引のための検体吸引待機用のバッファユニットを設ける必要がなくなることから、分析装置の構造の簡易化を図ることができる。また、搬送手段によって検体ラックを垂直方向及び水平方向に搬送させることができ、検体ラックを水平方向のみで搬送する場合に比べて最短ルートで搬送しやすくなることから、検体ラックにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を一層図ることができる。
また、収納領域を、当該収納領域内の検体ラックに保持された検体容器の検体を吸引可能な位置に配置したので、収納領域において検体ラックを搬送させることなく検体の吸引を行うことができ、検体の吸引作業を効率的に行うことが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納領域に収納された検体ラックを、収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送し、又は当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該収納ユニットのバッファ領域に収納可能としたので、収納領域に収納された検体ラックをバッファ領域に一時的に収納でき、収納領域とバッファ領域との相互間で検体ラックを搬送することで収納領域の検体ラックの入れ替え等を簡易に行うことが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納ユニットに収納されている複数の検体ラックの各々を水平方向に搬送することにより、当該検体ラックのいずれであっても複数の収納位置のうち所望の収納位置に位置させることを可能としたので、例えば、収納ユニットの複数の収納位置のうち検体ラックを搬送できる収納位置が1つである場合でも、特定の検体ラックを当該搬送できる収納位置まで搬送でき、収納ユニットに収納されている検体ラックのすべてを他の分析装置に搬送することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納ユニットの近傍に設けられた垂直搬送手段と、収納ユニットの近傍に設けられた水平搬送手段と、当該分析装置と他の分析装置との相互間に設けられた受け渡し手段とを備えたので、分析装置間での検体ラックの搬送をスムーズに行うことができ、分析装置の使用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る分析システムを例示する平面図である(一部図示省略)。
図2図1の分析システムの縦断面図である(一部図示省略)。
図3】検体テーブルの構成例を示す図である。
図4】実施の形態に係る搬送処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る分析装置の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、試薬を用いて検体を分析するための分析装置に関するものである。
【0024】
ここで、「試薬」とは、後述する反応容器内で検体内の成分と反応させるために用いられる物質を意味し、例えば微小磁性粒子、標識体、抗原等を含む。また、「検体」とは、標的物質を含むと思われる、全血、血清、血漿、尿、唾液などの生体試料又は該試料を希釈した液体試料を意味する。この「検体」は、標的物質として、例えば、抗体などのタンパク質、核酸(一例として、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等)、ウイルス、細菌、細胞、組織等を含む。また、検体を収容する「検体容器」とは、実施の形態では、透光性を有する公知の試験管状の容器(一例として、ポリプロピレンの如き樹脂製又はガラス製の容器)等が該当する(なお、後述の反応容器についても略同様とする)。また、検体容器を保持する「検体ラック」とは、実施の形態では、複数の検体容器を保持する公知のラック等として説明するが、これに限らず、例えば、1つの検体容器のみを保持する公知のラックであってもよい。また、「分析システム」とは、後述の反応ラインにおいて反応容器を搬送させつつ、反応容器に収容される検体を分析するシステムであり、例えば、標的物質を分離や同定して分析を行うための自動分析装置、生体成分の検出を行う生体成分検査装置等を含む概念である。以下、実施の形態では、本発明を、標識物質に酵素と発光基質を用いるCLEIA(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay:化学発光酵素免疫測定法)測定法によって血液等の検体の分析を実施するための自動分析装置に適用した場合について説明する。
【0025】
また、この種の自動分析装置としては、反応容器を測定後に洗浄して次の測定に繰り返し使用する装置と、使い捨て用の反応容器を測定後に廃棄する装置とがあり、本発明はこれらいずれの装置にも適用することができるが、以下では、本発明を後者の装置に適用した場合について説明する。
【0026】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0027】
(構成)
最初に、実施の形態に係る分析システム1の構成について説明する。
【0028】
(構成-分析システム)
まず、分析システム1の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る分析システム1を例示する平面図である(一部図示省略)。図2では、図1の分析システムの縦断面図である(一部図示省略)。以下の説明では、図1のX方向を分析システム1の左右方向(-X方向を分析システム1の左方向、+X方向を分析システム1の右方向)、図1のY方向を分析システム1の前後方向(+Y方向を分析システム1の前方向、-Y方向を分析システム1の後方向)、図2のZ方向を分析システム1の前後方向(+Z方向を分析システム1の前方向、-Z方向を分析システム1の後方向)と称する。また、図1では、図の簡略化のために、後述する筐体20の上側カバー部21の図示を省略する。
【0029】
分析システム1は、概略的には、図1図2に示すように、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、第3分析モジュール13、及び制御部200を備えている。なお、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々は、特許請求の範囲における「分析装置」に対応する。
【0030】
(構成-分析システム-分析モジュール)
第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13は、それぞれ別体に構成されており、各分析モジュールにおいて検体及び試薬を反応させるための反応容器C3を所定の複数位置に順次搬送して分析を行い、分析後に反応容器C3を廃棄するものである。これら第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13は、図1図2に示すように、左方から右方に向けて順に並べて設けられて、隣接する分析モジュール同士接続されている。なお、実施の形態では、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では第1分析モジュール11の構成のみについて説明する。
【0031】
第1分析モジュール11は、図1図2に示すように、筐体20、反応容器供給部30、試薬収納ユニット40、廃棄箱50、検体収納ユニット60、反応容器搬送部70、検体搬送部80、試薬分注部90、検体分注部100、反応槽110、検出部116、及び分析側制御部120を備えている。ここで、第1分析モジュール11の各部の接続形態については任意であるが、実施の形態では、反応容器搬送部70、検体搬送部80、試薬分注部90、検体分注部100、反応槽110、及び検出部116の各々と、分析側制御部120とは、図示しない配線を介して電気的に接続されている。これにより、反応容器搬送部70、検体搬送部80、試薬分注部90、検体分注部100、反応槽110、及び検出部116の各々と分析側制御部120とが相互間で通信することができる。
【0032】
(構成-分析システム-分析モジュール-筐体)
筐体20は、第1分析モジュール11の各部を外部から保護する保護手段である。この筐体20は、例えば樹脂材料又は金属材料にて形成されており、具体的には、図2に示すように、上側カバー部21、中間カバー部22、及び下側カバー部23を備えている。このうち、上側カバー部21は、筐体20の収容空間のうち上側部分を覆うためのものであり、反応容器供給部30、試薬収納ユニット40、検体収納ユニット60、反応容器搬送部70、試薬分注部90、検体分注部100、及び反応槽110を収容可能に構成されている。また、中間カバー部22は、筐体20の収容空間のうち上側部分と下側部分との間の部分を覆うためのものであり、検体搬送部80を収容可能に構成されており、上側カバー部21に対して嵌合構造や固定具等にて固定されている。また、下側カバー部23は、筐体20の収容空間のうち下側部分を覆うためのものであり、廃棄箱50、図示しない洗浄タンク、及び潜在タンク等を収容可能に構成されており、下側カバー部23に対して嵌合構造や固定具等にて固定されている。また、これら上側カバー部21、中間カバー部22、及び下側カバー部23の具体的な構成については任意であるが、例えば、上側カバー部21、中間カバー部22、及び下側カバー部23の各々にいずれかの側面に開口部(図示省略)を設けることにより、各カバー部に収容されている各部又は各種容器を取り出し及び取り入れ可能としてもよい。
【0033】
(構成-分析システム-分析モジュール-反応容器供給部、試薬収納ユニット、廃棄箱)
図1に戻り、反応容器供給部30は、使用前の複数の反応容器C3を収納するものであり、例えば公知のパーツフィーダ等を用いて構成されている。試薬収納ユニット40は、試薬を収容する試薬容器C1(例えば、磁性粒子液ボトル、標識体液ボトル、前処理液ボトル、検体希釈液ボトル等)を収納するユニットであり、例えば公知の試薬保冷庫等を用いて構成されている。廃棄箱50は、使用済みの反応容器C3を収納するユニットであり、例えば公知の廃棄箱等を用いて構成されている。
【0034】
(構成-分析システム-分析モジュール-検体収納ユニット)
検体収納ユニット60は、検体ラックRを収納する収納ユニットであり、例えば複数の検体ラックRを収納して左右方向に整列させることが可能な公知の保管庫を用いて構成されており、図2に示すように、上側カバー部21の内部において試薬収納ユニット40よりも下方位置に配置されている。なお、実施の形態では、検体ラックRに保持されている検体容器C2には、検体情報のうちの検体識別情報が付されているものとして説明する。ここで、「検体情報」とは、検体に関する情報であり、実施の形態では、検体を一意に識別するための検体識別情報、及び検体容器C2の位置(具体的には、後述の収納領域61及び後述のバッファ領域62に収納されている検体容器C2の後述する収納位置P1、P2)を示す検体位置情報を含むものとして説明する。
【0035】
また、図1図2に示すように、この検体収納ユニット60の領域は、収納領域61とバッファ領域62とに大別される。このうち、収納領域61は、検体ラックRを収納するための領域であり、検体ラックRを収納する位置P1(以下、「収納位置P1」と称する)を複数含む(図1図2では、5か所の収納位置P1を含む)。また、バッファ領域62は、収納領域61に収納された検体ラックRを一時的に収納するための領域であり、複数の収納位置P2を含み(図1図2では、5か所の収納位置P2を含む)、図1図2に示すように収納領域61に隣接する位置(図2では、収納領域61の左側)に配置されている(ただし、これに限らず、例えば、収納領域61から離れた位置に配置されてもよい)。
【0036】
また、収納領域61及びバッファ領域62の設置方法については任意であるが、実施の形態では、以下の通りとなる。すなわち、収納領域61については、収納領域61に収納されている検体ラックRに保持された検体容器C2の検体を吸引可能な位置に設置しており、例えば、図1に示すように、検体分注部100の近傍位置に設置している。これにより、収納領域61において検体ラックRを搬送させることなく検体の吸引を行うことができ、検体の吸引作業を効率的に行うことが可能となる。また、バッファ領域62については、バッファ領域62に収納されている検体ラックRに保持された検体容器C2の検体を吸引できない位置に設置しており、例えば、図1に示すように、試薬収納ユニット40の近傍(図1では、収納領域61よりも左側の位置)に設置している。
【0037】
(構成-分析システム-分析モジュール-反応容器搬送部、検体搬送部)
図1に戻り、反応容器搬送部70は、反応容器供給部30に収納されている反応容器C3を、後述する反応槽110の反応ライン111に搬送するものであり、例えば3次元方向に移動可能な公知の搬送機構等を用いて構成されており、図1に示すように、上側カバー部21の内部において反応容器供給部30及び反応槽110の近傍位置に配置されている。検体搬送部80は、検体収納ユニット60に収納されている検体ラックRを当該検体収納ユニット60における複数の収納位置P1の少なくともいずれか1つから搬送することにより、当該搬送した検体ラックRを他の分析モジュール(具体的には、他の分析モジュールの検体収納ユニット60)に搬送するものであり、図2に示すように、中間カバー部22の内部において検体収納ユニット60の近傍位置(図2では、検体収納ユニット60の真下の位置)に配置されている。なお、検体搬送部80の構成の詳細については、後述する。
【0038】
(構成-分析システム-分析モジュール-試薬分注部、検体分注部)
図1に戻り、試薬分注部90は、試薬収納ユニット40に収納されている試薬容器C1から後述する反応槽110の反応ライン111に配置された反応容器C3に試薬を吸引するためのものである。この試薬分注部90は、例えば3次元方向に移動可能な公知の分注機構(一例として、ステップモータ等を用いた公知のロボットアームにポンプを用いた吸引機構を組み合わせてなる分注機構)等を用いて構成されており、図1に示すように、上側カバー部21の内部において試薬収納ユニット40及び反応槽110の近傍に配置されている。検体分注部100は、検体収納ユニット60に収納されている検体容器C2から後述する反応槽110の反応ライン111に配置された反応容器C3に検体を吸引するためのものであり、図1に示すように、上側カバー部21の内部において検体収納ユニット60及び反応槽110の近傍に配置されている。また、この検体分注部100は、例えば3次元方向に移動可能な公知の分注機構等を用いて構成されており、一例として、ノズル部101と、ノズル部101を水平方向に移動させる水平移動部(図示省略)と、ノズル部を垂直方向に移動させる垂直移動部(図示省略)と、ノズル部101に検体を吸引吐出するポンプ部(図示省略)とを備えている。
【0039】
(構成-分析システム-分析モジュール-反応槽)
反応槽110は、検体及び試薬が分注された反応容器C3を一定の温度に保ち、検体と試薬の反応を促進するための槽である。この反応槽110は、例えば公知の反応槽等を用いて構成されており、図1に示すように、反応ライン111、集磁部112、洗浄液分注部113、撹拌部114、及び基質分注部115を備えている。
【0040】
(構成-分析システム-分析モジュール-反応槽-反応ライン)
反応ライン111は、複数の反応容器C3を複数搬送させるためのラインである。この反応ライン111は、例えば公知の駆動式の反応ライン(一例として、円環状の反応ライン)等を用いて構成されており、図1に示すように、反応槽110に設けられている。また、この反応ライン111には、反応容器C3を上方から着脱自在に収納するための複数の孔部111aが設けられている。
【0041】
(構成-分析システム-分析モジュール-反応槽-集磁部、洗浄液分注部、撹拌部、基質分注部)
反応容器C3の内壁面に磁性粒子試薬とそれに結合した標的物質を集磁するものであり、反応ライン111の近傍に少なくとも1つ以上設けられている。洗浄液分注部113は、反応容器C3に洗浄液を分注するためのものであり、例えば、洗浄液を反応容器C3に吐出した後に吸引することで反応容器C3を洗浄することが可能な公知の分注部等を用いて構成されており、反応ライン111の近傍に少なくとも1つ以上設けられている。撹拌部114は、反応容器C3の内壁面に集磁された磁性粒子試薬とそれに結合した標的物質を分散させるものであり、例えば公知の撹拌機構等を用いて構成されており、反応ライン111の近傍に少なくとも1つ以上設けられている。基質分注部115は、下側カバー部23に収容された基質液タンク(図示省略)から供給される基質液をポンプ(図示省略)を介して反応容器C3に分注するものであり、例えば公知の分注機構等を用いて構成されており、反応ライン111の近傍に少なくとも1つ以上設けられている。
【0042】
(構成-分析システム-分析モジュール-検出部)
検出部116は、酵素反応による生成物による化学発光量を検出するものであり、例えば公知の検出装置(一例として、光電子倍増管により光子の数をフォトンカウントすることが可能な検出装置)等を用いて構成されており、反応ライン111の近傍に設けられている。
【0043】
(構成-分析システム-分析モジュール-分析側制御部)
分析側制御部120は、第1分析モジュール11の各部を制御する制御手段である。この分析側制御部120は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラム、検体の吸引処理、反応処理、及び分析処理を実行するための公知のプログラムを含む)及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0044】
(構成-分析システム-制御部)
次に、制御部200の構成について説明する。制御部200は、図2に示すように、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、又は第3分析モジュール13の近傍に設けられており、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の分析側制御部120と配線2を介して接続されている。また、この制御部200は、概略的には、操作部、通信部、出力部、制御部本体、及び記憶部を備えている(いずれも図示省略)。
【0045】
(構成-分析システム-制御部-操作部、通信部、出力部、制御部本体)
操作部は、制御部200に対する操作入力を受け付ける操作手段である。通信部は、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の検体搬送部80及び分析側制御部120の各々との相互間で通信するための通信手段である。出力部は、制御部の制御に基づいて各種の情報を出力する出力手段である。制御部本体は、制御部200の各部を制御する制御手段である。
【0046】
(構成-分析システム-制御部-記憶部)
記憶部は、制御部200の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、書き換え可能な公知の記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる。
【0047】
また、この記憶部は、検体テーブル及び分析テーブルを備えている(いずれも図示省略)。
【0048】
(構成-分析システム-制御部-記憶部-検体テーブル)
この検体テーブルは、検体情報を格納する検体情報格納手段である。
【0049】
図3は、検体テーブルの構成例を示す図である。図3に示すように、検体テーブルは、項目「検体位置情報」及び項目「検体識別情報」と、各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて格納している。このうち、項目「検体位置情報」に対応する情報は、検体位置情報であり、例えば、図3に示す検体の位置である「x11、y11」等が該当する(なお、検体の位置に検体ラックRが存在しない場合には、「-」と表示する)。また、項目「検体識別情報」に対応する情報は、検体識別情報であり、例えば、図3に示す検体を一意に識別する番号である「1001」等が該当する(なお、検体の位置に検体容器C2に入った検体が存在しない場合には、「-」と表示する)。
【0050】
ここで、検体テーブルに格納されている情報の更新方法については任意であるが、例えば、検体テーブルにすべての検体位置情報があらかじめ格納されている場合には、各検体収納ユニット60に設けられている図示しない取得部(例えば、バーコードリーダ等)にて各検体収納ユニット60に収納される際に検体容器C2から制御部200を介して検体識別情報が取得され、当該取得された検体識別情報を検体テーブルに格納されている検体位置情報のうち当該収納される検体収納ユニット60の収納位置P1、P2に対応する検体位置情報と相互に関連付けて格納することで更新してもよい。
【0051】
(構成-分析システム-制御部-記憶部-分析テーブル)
分析テーブルは、分析モジュールを一意に識別する分析モジュール識別情報と、分析モジュールの位置を示す分析モジュール位置情報と、検体情報と、後述する搬送先位置情報と、分析項目を示す分析項目情報と、検体の分析を行うタイミング(時間又は時刻)を示す分析タイミング情報とを相互に関連付けて格納する分析情報格納手段である。
【0052】
(構成-検体搬送部の構成の詳細)
図2に戻り、次に、検体搬送部80の構成の詳細について説明する。ただし、検体搬送部80は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。また、上述したように、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では、第1分析モジュール11の検体搬送部80の構成のみについて説明する。
【0053】
実施の形態において、図2に示すように、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60に収納されている複数の検体ラックRを当該検体収納ユニット60における複数の収納位置P1の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックRを第1分析モジュール11と接続された他の分析モジュール(例えば、第2分析モジュール12等)に収納することが可能となり、又は/及び、他の分析モジュールから送られた検体ラックRを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における複数の収納位置P1に収納することが可能となるように、第1分析モジュール11の検体搬送部80は構成されている。
【0054】
具体的には、第1分析モジュール11の検体搬送部80は、垂直搬送部81、水平搬送部82、及び受け渡し部83を備えている(ただし、第3分析モジュール13の検体搬送部80は、受け渡し部83を省略する)。
【0055】
このうち、垂直搬送部81は、検体ラックRを垂直方向に搬送するための垂直搬送手段である。この垂直搬送部81は、例えば公知の垂直搬送機構等(一例として、エレベータ式の垂直搬送機構)を用いて構成され、図2に示すように、中間カバー部22の内部において検体収納ユニット60の近傍に設けられている。また、水平搬送部82は、検体ラックRを水平方向に搬送するための水平搬送手段である。この水平搬送部82は、例えば公知の水平搬送機構等(一例として、マグネット式の水平搬送機構)を用いて構成され、図2に示すように、中間カバー部22の内部において検体収納ユニット60の近傍に設けられており、具体的には、垂直搬送部81との間で検体ラックRを受け渡し可能な位置に設けられている。また、受け渡し部83は、水平搬送部82にて搬送された検体ラックRを他の分析モジュールに受け渡すための受け渡し手段である。この受け渡し部83は、例えば公知の移動式のチャック機構等を用いて構成され、第1分析モジュール11と第2分析モジュール12との相互間に設けられており、具体的には、図2に示すように、中間カバー部22の内部において第1分析モジュール11の水平搬送部82と第2分析モジュール12の水平搬送部82との相互間に配置されている。
【0056】
また、垂直搬送部81及び水平搬送部82の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、検体収納ユニット60の収納領域61に収納された検体ラックRを当該検体収納ユニット60における複数の収納位置P1の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該検体収納ユニット60のバッファ領域62に収納可能となるように構成されている。具体的には、図2に示すように、垂直搬送部81は、中間カバー部22の内部において、検体収納ユニット60の収納領域61及びバッファ領域62における各収納位置P1、P2に対応する位置にそれぞれ設けられている。また、水平搬送部82は、中間カバー部22において、少なくとも検体収納ユニット60の収納領域61及びバッファ領域62に対応する領域の略全長にわたって設けられている。これにより、収納領域61に収納された検体ラックR及び接続されている他の分析モジュールから搬入された検体ラックRをバッファ領域62に一時的に収納でき、収納領域61とバッファ領域62との相互間で検体ラックRを搬送することで収納領域61の検体ラックRの入れ替え等を簡易に行うことが可能となる。
【0057】
このような構成により、分析モジュール間で検体ラックRを搬送でき、分析モジュール間において検体ラックRの収納位置P1を状況に応じて変更することができる。よって、バッファユニットを設ける必要がなくなることから、第1分析モジュール11の構造の簡易化を図ることができる。また、検体搬送部80によって検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送させることができ、検体ラックRを水平方向のみで搬送する場合に比べて最短ルートで搬送しやすくなることから、検体ラックRにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を図ることができる。また、検体搬送部80が、検体収納ユニット60の近傍に設けられた垂直搬送部81と、検体収納ユニット60の近傍に設けられた水平搬送部82と、第1分析モジュール11と他の分析モジュールとの相互間に設けられた受け渡し部83とを備えたので、分析モジュール間での検体ラックRの搬送をスムーズに行うことができ、第1分析モジュール11の使用性を高めることができる。
【0058】
(搬送処理)
次に、上述した第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の搬送処理について説明する。図4は、実施の形態に係る搬送処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。搬送処理は、概略的には、検体ラックRを分析モジュール間で搬送するための処理である。この搬送処理を実行するタイミングは任意であるが、実施の形態においては、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13、及び制御部200の電源が投入された後に起動されるものとして説明する。なお、実施の形態では、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の搬送処理はそれぞれ略同一であるので、以下では第1分析モジュール11の搬送処理のみについて説明する。
【0059】
また、この搬送処理の前提については、以下の通りとなる。すなわち、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の反応槽110の反応ライン111には空き状態の反応容器C3が複数収納されており、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の試薬収納ユニット40には試薬が収容された試薬容器C1が複数収納されており、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の検体収納ユニット60の収納領域61には検体が収容された検体容器C2を保持する検体ラックRが複数収納されているものとする(ただし、バッファ領域62には検体容器C2は収納されていないものとする)。また、制御部200の検体テーブルには、検体収納ユニット60に収納されているすべての検体容器C2の検体に関する検体情報が格納されているものとする。
【0060】
搬送処理が起動されると、図4に示すように、まず、SA1において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第1搬送タイミングが到来したか否かを判定する。ここで、「第1搬送タイミング」とは、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60に収納されている検体ラックRを他の分析モジュール(例えば、第2分析モジュール12、又は第3分析モジュール13)に搬送するタイミングを意味する。
【0061】
また、この第1搬送タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、制御部200によって分析モジュールに収納された各種情報に基づいて作成された第1搬送指示情報が制御部200から取得されたか否かに基づいて判定し、第1搬送指示情報が取得された場合には第1搬送タイミングが到来したと判定し、第1搬送指示情報が取得されていない場合には第1搬送タイミングが到来していないと判定する。ここで、「第1搬送指示情報」とは、搬送対象となる検体ラックRの搬送指示を示す情報であり、実施の形態では、搬送対象となる検体ラックRに保持された検体容器C2の検体に関する検体情報(検体識別情報、検体位置情報)と、搬送先となる分析モジュールの検体収納ユニット60における収納領域61の収納位置P1を示す搬送先位置情報とを含むものとして説明する(なお、この搬送先位置情報は、分析テーブルに格納されている搬送先位置情報であるが、例えば、搬送先位置情報に対応する収納位置に収納されている検体の分析が終了していない場合には、分析テーブルに格納されている搬送先位置情報に代えて、制御部200によって変更された情報であって当該収納位置とは異なる他の収納位置P1(又はバッファ領域62の収納位置P2)を示す情報を搬送先位置情報として含めてもよい)。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第1搬送タイミングが到来していないと判定された場合(SA1、No)にはSA2に移行し、第2搬送タイミングが到来したと判定された場合(SA1、Yes)にはSA4に移行する。
【0062】
SA2において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第2搬送タイミングが到来したか否かを判定する。ここで、「第2搬送タイミング」とは、他の分析モジュールから送られた検体ラックR(又は第1分析モジュール11の検体収納ユニット60のバッファ領域62に収納されている検体ラックR)を第1分析モジュール11の検体収納ユニット60の収納領域61に搬送するタイミングを意味する。
【0063】
また、この第2搬送タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、制御部200によって分析モジュールに収納された各種情報に基づいて作成された第1搬送指示情報が制御部200から取得されたか否かに基づいて判定し、第1搬送指示情報が取得された場合には第2搬送タイミングが到来したと判定し、第1搬送指示情報が取得されていない場合には第2搬送タイミングが到来していないと判定する。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第2搬送タイミングが到来していないと判定された場合(SA2、No)にはSA3に移行し、第2搬送タイミングが到来したと判定された場合(SA2、Yes)にはSA8に移行する。
【0064】
SA3において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第3搬送タイミングが到来したか否かを判定する。ここで、「第3搬送タイミング」とは、他の分析モジュールから送られた検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60に搬送することなく別の他の分析モジュールに搬送するタイミングを意味する。
【0065】
また、この第3搬送タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、制御部200によって分析モジュールに収納された各種情報に基づいて作成された第2搬送指示情報が制御部200から取得されたか否かに基づいて判定し、第2搬送指示情報が取得された場合には第3搬送タイミングが到来したと判定し、第2搬送指示情報が取得されていない場合には第3搬送タイミングが到来していないと判定する。ここで、「第2搬送指示情報」とは、搬送対象となる検体ラックRを検体収納ユニット60に搬送することなく他の分析モジュールに搬送する指示を示す情報であり、実施の形態では、分析テーブルに格納されている情報のうち、搬送先となる分析モジュールに関する分析モジュール識別情報及び分析モジュール位置情報を含むものとして説明する。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第3搬送タイミングが到来していないと判定された場合(SA3、No)にはSA1に移行し、第3搬送タイミングが到来したと判定された場合(SA3、Yes)にはSA11に移行する。なお、実施の形態では、分析システム1に設けられた分析モジュールのうち左右方向の端部に位置する分析モジュール(例えば、第1分析モジュール11、第3分析モジュール13等)については、他の分析モジュールから第2搬送指示情報が送られることはないので、SA11の処理は実行されない。
【0066】
SA4において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、搬送対象の検体ラックRが第1分析モジュール11の検体収納ユニット60に存在するか否かを判定する。この搬送対象の検体ラックRが存在するか否かを判定する方法については任意であるが、例えば、検体テーブルに格納されている検体識別情報のうち第1分析モジュール11の収納領域61の検体位置情報に対応する検体識別情報のいずれかと、SA1にて取得された第1搬送指示情報に含まれる検体識別情報とが一致するか否かに基づいて判定し、一致する場合には搬送対象の検体ラックRが存在すると判定し、一致しない場合には搬送対象の検体ラックRが存在しないと判定する。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、搬送対象の検体ラックRが存在すると判定された場合(SA4、Yes)にはSA5に移行し、搬送対象の検体ラックRが存在しないと判定された場合(SA4、No)にはSA12に移行する。
【0067】
SA5において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、SA1にて取得された第1搬送指示情報に基づいて、搬送対象の検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60から他の分析モジュールに搬送させる。この検体ラックRの搬送方法については任意であるが、実施の形態では、第1分析モジュールの検体搬送部80を用いて、この検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送させることにより搬送する。具体的には、まず、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に収納されている搬送対象の検体ラックRを当該収納領域61の収納位置P1から垂直方向(例えば下方向)に搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを水平方向(例えば右方向)に搬送する。さらに、上記検体搬送部80の受け渡し部83を用いて、上記検体ラックRを他の分析モジュール(第2分析モジュール)まで搬送する。なお、実施の形態では、SA5の処理が行われた後には、上述した更新方法を用いて、検体テーブルに格納されている情報(検体情報)が更新される(なお、後述するSA7、SA9、SA10の処理についても同様とする)。
【0068】
SA6において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62に検体ラックRが存在するか否かを判定する。この上記バッファ領域62に検体ラックRが存在するか否かを判定する方法については任意であるが、例えば、検体テーブルに格納されている検体識別情報の中に第1分析モジュール11のバッファ領域62の検体位置情報に対応する検体識別情報が含まれているか否かに基づいて判定し、上記検体識別情報が含まれている場合には上記バッファ領域62に検体ラックRが存在すると判定し、上記検体識別情報が含まれていない場合には上記バッファ領域62に検体ラックRが存在しないと判定する。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、上記バッファ領域62に検体ラックRが存在すると判定された場合(SA6、Yes)にはSA7に移行し、上記バッファ領域62に検体ラックRが存在しないと判定された場合(SA6、No)にはSA12に移行する。
【0069】
SA7において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、SA6にてバッファ領域62に存在すると判定された検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に搬送させる。その後、SA12に移行する。
【0070】
この検体ラックRの搬送方法については任意であるが、実施の形態では、第1分析モジュール11の検体搬送部80を用いて、この検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送する。具体的には、まず、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62に収納されている検体ラックRを当該バッファ領域62の収納位置P2から垂直方向(例えば下方向)に搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを水平方向(例えば右方向)に搬送する。さらに、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、上記検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61の収納位置P1まで垂直方向(例えば上方向)に搬送する。このような処理により、後述するSA9の処理において第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62に一時的に収納された検体ラックRを、当該検体収納ユニット60における収納領域61に収納することが可能となる。
【0071】
SA8において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、搬送先に検体ラックRが存在するか否かを判定する。ここで、搬送先に検体ラックRが存在するか否かを判定する方法については任意であるが、実施の形態では、検体テーブルにSA2にて取得された第1搬送指示情報に含まれる搬送先位置情報と一致する検体位置情報に対応する検体識別情報が格納されているか否かに基づいて判定し、上記検体識別情報が格納されている場合には搬送先に検体ラックRが存在すると判定され、上記検体識別情報が格納されていない場合には搬送先に検体ラックRが存在しないと判定される。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、搬送先に検体ラックRが存在すると判定された場合(SA8、Yes)にはSA9に移行し、搬送先に検体ラックRが存在しないと判定された場合(SA8、No)にはSA10に移行する。
【0072】
SA9において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、SA2にて取得された第1搬送指示情報に基づいて、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に収納されている検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62に搬送させる。この検体ラックRの搬送方法については任意であるが、実施の形態では、第1分析モジュールの検体搬送部80を用いて、この検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送する。具体的には、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に収納されている検体ラックRのうち、SA2にて取得された第1搬送指示情報に含まれる搬送先位置情報に対応する検体ラックRを当該搬送先位置情報に対応する収納位置P1から垂直方向(具体的には、下方向)に搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを水平方向(具体的には、左方向)に搬送する。さらに、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、上記検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62の収納位置P2まで垂直方向(例えば上方向)に搬送する。このような処理により、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61の状態が満杯状態である場合に、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に収納されている検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60におけるバッファ領域62に一時的に収納することができ、上記収納領域61において搬送対象となる検体ラックRを収納するスペースを確保できる。
【0073】
SA10において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、SA2にて取得された第1搬送指示情報に基づいて、搬送対象の検体ラックRを他の分析モジュール(又は第1分析モジュール11の検体収納ユニット60のバッファ領域62)から第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に搬送させる。その後、SA12に移行する。なお、収納領域61に搬送された検体ラックRについては、例えば、第1分析モジュール11において分析を実行するために、検体ラックRの検体が検体分注部100により吸引されることになる。
【0074】
この検体ラックRの搬送方法については任意であるが、実施の形態では、第1分析モジュールの検体搬送部80を用いて、この検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送する。具体的には、他の分析モジュール(第2分析モジュール)から送られた検体ラックRを搬送する場合には、まず、上記検体搬送部80の受け渡し部83を用いて、他の分析モジュールから搬送対象の検体ラックRを搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを水平方向(例えば左方向)に搬送する。さらに、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、上記検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61の収納位置P1まで垂直方向(例えば上方向)に搬送する。また、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60のバッファ領域62に収納されている検体ラックRを搬送する場合には、まず、SA2にて取得された第1搬送指示情報に含まれる搬送対象に関する検体位置情報に対応する検体ラックRを当該検体位置情報に対応する上記バッファ領域62の収納位置P2から垂直方向(具体的には、下方向)に搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを水平方向(具体的には、左方向)に搬送する。さらに、上記検体搬送部80の垂直搬送部81を用いて、上記検体ラックRを第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61の収納位置P1まで垂直方向(例えば上方向)に搬送する。このような処理により、他の分析モジュールから送られた搬送対象の検体ラックR(又は第1分析モジュール11の検体収納ユニット60のバッファ領域62に収納されている検体ラックR)を第1分析モジュール11の検体収納ユニット60における収納領域61に収納することが可能となる。
【0075】
SA11において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、SA3にて取得された第2搬送指示情報に基づいて、搬送対象の検体ラックRを他の分析モジュールから別の他の分析モジュールに搬送させる。その後、SA12に移行する。
【0076】
この検体ラックRの搬送方法については任意であるが、実施の形態では、第1分析モジュールの検体搬送部80を用いて、この検体ラックRを水平方向に搬送する。具体的には、まず、上記検体搬送部80の受け渡し部83を用いて、他の分析モジュールから搬送対象の検体ラックRを搬送する。次いで、上記検体搬送部80の水平搬送部82を用いて、上記検体ラックRを別の他の分析モジュールまで水平方向に搬送する。
【0077】
SA12において第1分析モジュール11の分析側制御部120は、搬送処理を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。この終了タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、制御部200の操作部を介して所定操作が受け付けられたか否か、又は図示しない外部装置(例えば、管理サーバ等)から搬送処理の終了を指示する情報(以下、「終了指示情報」と称する)が受信されたか否かに基づいて判定する。ここで、上記所定操作が受け付けられた場合、又は終了指示情報が受信された場合には終了タイミングが到来したと判定し、上記所定操作が受け付けられていない場合、又は終了指示情報が受信されていない場合には終了タイミングが到来していないと判定する。そして、第1分析モジュール11の分析側制御部120は、終了タイミングが到来していないと判定された場合(SA12、No)にはSA1へ移行し、SA12にて終了タイミングが到来したと判定されるまでSA1からSA12の処理を繰り返し行う。一方、終了タイミングが到来したと判定された場合(SA12、Yes)には搬送処理を終了する。
【0078】
このような搬送処理により、分析モジュール間で検体ラックRを搬送でき、各分析モジュールの検体収納ユニット60における検体ラックRの収納位置P1を状況に応じて変更することが可能となる。
【0079】
(搬送処理-具体的な処理内容)
続いて、搬送処理が実行される具体的な状況及びその場合の処理内容について、以下で説明する。
【0080】
まず、搬送処理の分析システム及び検体等の概要について説明する。まず、分析システム1は、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13を備えており、これらの分析モジュールのいずれかで第1検体から第4検体の分析が行われるものとする。また、各分析モジュールで分析可能な分析項目(つまり試薬が搭載され、キャリブレーションも問題ない分析項目)については、第1分析モジュール11の分析項目=腫瘍マーカー項目であるAFP、CEA、CA19-9、PSAであり、第2分析モジュール12の分析項目=甲状腺項目であるT3、T4、FT3、FT4、TSH、TRAbであり、第3分析モジュール13の分析項目=感染症項目であるHBsAg、HCV、HTLV-1であるとする。また、各検体にオーダーされている分析項目については、第1検体の分析項目=AFP、CEA、CA19-9、HBsAg、HCV、HTLV-1であり、第2検体の分析項目=FT3、FT4、TSH、CEAであり、第3検体の分析項目=FT3、FT4、TSH、HBsAg、HCV、HTLV-1であり、第4検体の分析項目=HBsAg、HCV、HTLV-1であるとする。また、第1検体を収容した検体容器(以下、「第1検体容器」と称する)と、第2検体を収容した検体容器(以下、「第2検体容器」と称する)とは、第1分析モジュール11の検体収納ユニット60に収納されているものとする(なお、第1検体容器及び第2検体容器は、それぞれ別の検体ラックRに保持されているものとする)。また、第3検体を収容した検体容器(以下、「第3検体容器」と称する)と、第4検体を収容した検体容器(以下、「第4検体容器」と称する)とは、第3分析モジュール13の検体収納ユニット60に収納されているものとする(なお、第3検体容器及び第4検体容器は、それぞれ別の検体ラックRに保持されているものとする)。
【0081】
次に、搬送処理が実行される具体的な状況及びその場合の処理内容について説明する。まず、第1分析モジュール11において、第1検体容器の第1検体に対する分析項目=AFP、CEA、CA19-9に関する吸引が行われた後に(例えば、第1検体を搭載している検体ラックRの全ての検体は第1分析モジュール11での検体吸引を全て終了した後に)、SA1にて第1搬送タイミングが到来すると、第1検体の残りの分析項目=HBsAg、HCV、HTLV-1を分析するために、SA5において第1検体容器を保持する検体ラックRが第3分析モジュール13に搬送される(具体的には、上記検体ラックRが、第2分析モジュール12においてSA3、SA11が行われた後に第3分析モジュール13に搬送される)。次いで、第3分析モジュール13において、SA2にて第2搬送タイミングが到来して、SA10において第1検体容器を保持する検体ラックRが第3分析モジュール13の検体収納ユニット60の収納領域61まで搬送されて収納される。その後、第1検体容器の第1検体に対する分析項目=HBsAg、HCV、HTLV-1に関する吸引が行われる。
【0082】
次に、第1分析モジュール11において、第2検体容器の第2検体に対する分析項目=CEAに関する吸引が行われた後に(例えば、第2検体を搭載している検体ラックRの全ての検体は第1分析モジュール11での検体吸引を全て終了した後に)、SA1にて第1搬送タイミングが到来すると、第2検体の残りの分析項目=FT3、FT4、TSHを分析するために、SA5において第2検体容器を保持する検体ラックRが第2分析モジュール12に搬送される。次いで、第2分析モジュール12において、SA2にて第2搬送タイミングが到来して、SA10において第2検体容器を保持する検体ラックRが第2分析モジュール12の検体収納ユニット60の収納領域61まで搬送されて収納される。その後、第2検体容器の第2検体に対する分析項目=FT3、FT4、TSHに関する吸引が行われる。
【0083】
次に、第3分析モジュール13において、第3検体容器の第3検体に対する分析項目=HBsAg、HCV、HTLV-1に関する吸引が行われた後に(例えば、第3検体を搭載している検体ラックRの全ての検体は第3分析モジュール13での検体吸引を全て終了した後に)、SA1にて第1搬送タイミングが到来すると、第3検体の残りの分析項目=FT3、FT4、TSHを分析するために、SA5において第3検体容器を保持する検体ラックRが第2分析モジュール12に搬送される。次いで、第2分析モジュール12において、SA2にて第2搬送タイミングが到来して、SA10において第3検体容器を保持する検体ラックRが第2分析モジュール12の検体収納ユニット60の収納領域61まで搬送されて収納される。その後、第3検体容器の第3検体に対する分析項目=FT3、FT4、TSHに関する吸引が行われる。
【0084】
次に、第3分析モジュール13において、第4検体容器の第4検体に対する分析項目=HBsAg、HCV、HTLV-1に関する吸引が行われた後に(例えば、第4検体を搭載している検体ラックRの全ての検体は第3分析モジュール13での検体吸引を全て終了した後に)、第4検体容器は、他の分析モジュールに搬送されることなく、第3分析モジュール13に収納され続けられる。
【0085】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、複数の検体ラックRを収納する検体収納ユニット60を備えるので、検体の分注等を行う毎にサンプラユニットやラック搬送部を介して検体ラックRを搬送することを回避でき(又は搬送距離を短くでき)、検体ラックRにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を図ることができる。また、検体収納ユニット60に収納されている複数の検体ラックRを当該検体収納ユニット60における複数の収納位置P1の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックRを当該分析モジュールと接続された他の分析モジュールに収納することが可能となり、又は/及び、他の分析モジュールから送られた検体ラックRを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックRを検体収納ユニット60における複数の収納位置P1に収納することが可能となる検体搬送部80を備えるので、分析モジュール間で検体ラックRを搬送でき、分析モジュール間において検体ラックRの収納位置P1を状況に応じて変更することができる。よって、検体分注のための検体吸引待ち用のバッファユニットを設ける必要がなくなることから、分析装置の構造の簡 易化を図ることができる。また、検体搬送部80によって検体ラックRを垂直方向及び水平方向に搬送させることができ、検体ラックRを水平方向のみで搬送する場合に比べて最短ルートで搬送しやすくなることから、検体ラックRにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を一層図ることができる。
【0086】
また、検体搬送部80が、収納領域61に収納された検体ラックRを、検体収納ユニット60における複数の収納位置P1の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、検体収納ユニット60のバッファ領域62に収納可能としたので、収納領域61に収納された検体ラックRをバッファ領域62に一時的に収納でき、収納領域61とバッファ領域62との相互間で検体ラックRを搬送することで収納領域61の検体ラックRの入れ替え等を簡易に行うことが可能となる。
【0087】
また、収納領域61を、当該収納領域61内の検体ラックRに保持された検体容器C2の検体を吸引可能な位置に配置したので、収納領域61において検体ラックRを搬送させることなく検体の吸引を行うことができ、検体の吸引作業を効率的に行うことが可能となる。
【0088】
また、検体搬送部80が、検体収納ユニット60の近傍に設けられた垂直搬送部81と、検体収納ユニット60の近傍に設けられた水平搬送部82と、当該分析モジュールと他の分析モジュールとの相互間に設けられた受け渡し部83とを備えたので、分析モジュール間での検体ラックRの搬送をスムーズに行うことができ、分析モジュールの使用性を高めることができる。
【0089】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0090】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0091】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。
【0092】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0093】
(分析モジュールについて)
上記実施の形態では、分析モジュールの設置数が3つであると説明したが、これに限らず、例えば、2つであってもよく、あるいは、4つ以上であってもよい。
【0094】
(検体搬送部について)
上記実施の形態では、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の検体搬送部80が検体収納ユニット60よりも下方に設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、上記検体収納ユニット60よりも上方に設けてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の水平搬送部82がそれぞれ別体に構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、これら水平搬送部82を一体に構成してもよい。この場合には、第1分析モジュール11及び第2分析モジュール12の各々の受け渡し部83を省略できる。
【0096】
また、上記実施の形態では、第1分析モジュール11の垂直搬送部81が、検体収納ユニット60の収納領域61及びバッファ領域62における各収納位置P1、P2に対応する位置にそれぞれ設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、検体収納ユニット60の収納領域61及びバッファ領域62における複数の収納位置P1、P2の一部(一例として、1つの収納位置P1、P2)に対応する位置のみに設けられてもよい(なお、第2分析モジュール12の垂直搬送部81、第3分析モジュール13の垂直搬送部81についても同様とする)。この場合において、検体搬送部80の具体的な構成については任意であるが、例えば、検体収納ユニット60に収納されている検体ラックRの各々を垂直方向に搬送する前に水平方向に搬送することにより、当該検体ラックRのいずれであっても複数の収納位置P1、P2のうち所望の収納位置P1、P2に位置させることが可能となるように構成されてもよい。一例として、検体収納ユニット60(具体的には、収納領域61、あるいは、収納領域61及びバッファ領域62)に収納されている複数の検体ラックRを水平方向(左右方向)にまとめて搬送する(又は個別に搬送する)ことが可能な補助搬送手段をさらに備えてもよい。また、筐体20の構成については、複数の検体ラックRを水平方向(左右方向)にまとめて搬送することが可能となるスペースを確保できるように構成されることが望ましい。このような構成により、検体収納ユニット60に収納されている検体ラックRのいずれであっても所望の収納位置P1、P2に位置させることができる。よって、例えば、検体収納ユニット60の複数の収納位置P1、P2のうち検体ラックRを搬送できる収納位置P1、P2がそれぞれ1つである場合でも、特定の検体ラックRを当該搬送できる収納位置P1、P2まで搬送できるので、検体収納ユニット60に収納されている検体ラックRのすべてを他の分析モジュールに搬送することが可能となる。
【0097】
(収納領域、バッファ領域について)
上記実施の形態では、収納領域61に含まれる収納位置P1の数が5個であると説明したが、これに限らず、例えば、2個以上5個未満であってよく、あるいは、6個以上であってもよい。この場合において、バッファ領域62に含まれる収納位置P2の数は、収納領域61に含まれる収納位置P2の数と同一の数としてもよく、あるいは、異なる数としてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、及び第3分析モジュール13の各々の検体収納ユニット60にバッファ領域62が設けられていると説明したが、これに限らない。例えば、第1分析モジュール11、第2分析モジュール12、又は第3分析モジュール13の少なくともいずれか1つの検体収納ユニット60に設けられたバッファ領域62を省略してもよい。なお、バッファ領域62が省略された分析モジュール11の搬送処理においては、SA6、SA7、SA8、SA9を省略できる。
【0099】
また、上記実施の形態では、バッファ領域62が、収納領域61よりも左側に設けられていると説明したが、これに限らず、例えば、収納領域61よりも上側、下側、前側、後側、又は右側に設けられてもよい。一例として、バッファ領域62が、中間カバー部22において収納領域61よりも下側且つ後側の位置に設けられてもよい。この場合において、検体搬送部80を用いて、検体ラックRを収納領域61からバッファ領域62に搬送する場合には、収納領域61の収納位置P1から垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することになる。なお、バッファ領域62が、収納領域61よりも前側又は後側に設けられた場合には、水平搬送部82は、左右方向に加えて、前後方向に検体ラックRを搬送可能に構成される。
【0100】
(分析テーブルについて)
上記実施の形態では、制御部200の記憶部に分析テーブルが格納されていると説明したが、これに限らない。例えば、各分析モジュールに分析テーブルが格納されてもよい。この場合には、搬送処理においては、分析モジュール間で第1搬送指示情報及び第2搬送指示情報が通信されることで各種の処理が行われる。あるいは、制御部200と通信可能に接続された外部装置(一例として、管理サーバ)に格納されてもよい。
【0101】
(付記)
付記1の分析装置は、試薬を用いて検体を分析するための分析装置であって、前記検体を収容するための検体容器を保持する複数の検体ラックを収納する収納ユニットと、前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックを当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを当該分析装置と接続された他の分析装置に収納することが可能となり、又は/及び、前記他の分析装置から送られた前記検体ラックを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを前記収納ユニットにおける前記複数の収納位置に収納することが可能となる搬送手段と、を備えた。
【0102】
付記2の分析装置は、付記1に記載の分析装置において、前記搬送手段が、前記収納ユニットに収納されている前記複数の検体ラックの各々を垂直方向に搬送する前に水平方向に搬送することにより、当該検体ラックのいずれであっても前記複数の収納位置のうち所望の収納位置に位置させることを可能とした。
【0103】
付記3の分析装置は、付記1又は2に記載の分析装置において、前記搬送手段が、前記収納ユニットの領域のうち前記検体ラックを収納するための収納領域に収納された前記検体ラックを、当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送し、又は当該収納ユニットにおける前記複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該収納ユニットの領域のうち前記検体ラックを一時的に収納するためのバッファ領域に収納可能とした。
【0104】
付記4の分析装置は、付記3に記載の分析装置において、前記収納領域を、当該収納領域内の前記検体ラックに保持された前記検体容器の検体を吸引可能な位置に配置した。
【0105】
付記5の分析装置は、付記1から4のいずれか一項に記載の分析装置において、前記搬送手段は、前記収納ユニットの近傍に設けられた垂直搬送手段であって、前記検体ラックを垂直方向に搬送するための垂直搬送手段と、前記収納ユニットの近傍に設けられた水平搬送手段であって、前記検体ラックを水平方向に搬送するための水平搬送手段と、当該分析装置と前記他の分析装置との相互間に設けられた受け渡し手段であって、前記水平搬送手段にて搬送された検体ラックを前記他の分析装置に受け渡すための受け渡し手段と、を備えた。
【0106】
(付記の効果)
付記1に記載の分析装置によれば、複数の検体ラックを収納する収納ユニットを備えるので、検体の吸引等を行う毎にサンプラユニットや検体ラック搬送部を介して検体ラックを搬送することを回避でき(又は搬送距離を短くでき)、検体ラックにおける搬送距離の最小限化及び搬送機構の単純化を図ることができる。また、収納ユニットに収納されている複数の検体ラックを当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを当該分析装置と接続された他の分析装置に収納することが可能となり、又は/及び、他の分析装置から送られた検体ラックを水平方向に搬送した後に垂直方向に搬送することにより、当該搬送した検体ラックを収納ユニットにおける複数の収納位置に収納することが可能となる搬送手段を備えるので、分析装置間で検体ラックを搬送でき、分析装置間において検体ラックの収納位置を状況に応じて変更することができる。よって、検体吸引のための検体吸引待機用のバッファユニットを設ける必要がなくなることから、分析装置の構造の簡易化を図ることができる。また、搬送手段によって検体ラックを垂直方向及び水平方向に搬送させることができ、検体ラックを水平方向のみで搬送する場合に比べて最短ルートで搬送しやすくなることから、検体ラックにおける搬送距離の最小限化及び搬送経路の単純化を一層図ることができる。
【0107】
付記2に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納ユニットに収納されている複数の検体ラックの各々を水平方向に搬送することにより、当該検体ラックのいずれであっても複数の収納位置のうち所望の収納位置に位置させることを可能としたので、例えば、収納ユニットの複数の収納位置のうち検体ラックを搬送できる収納位置が1つである場合でも、特定の検体ラックを当該搬送できる収納位置まで搬送でき、収納ユニットに収納されている検体ラックのすべてを他の分析装置に搬送することが可能となる。
【0108】
付記3に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納領域に収納された検体ラックを、収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送し、又は当該収納ユニットにおける複数の収納位置の少なくともいずれか1つから垂直方向に搬送した後に水平方向に搬送して垂直方向に搬送することにより、当該収納ユニットのバッファ領域に収納可能としたので、収納領域に収納された検体ラックをバッファ領域に一時的に収納でき、収納領域とバッファ領域との相互間で検体ラックを搬送することで収納領域の検体ラックの入れ替え等を簡易に行うことが可能となる。
【0109】
付記4に記載の分析装置によれば、収納領域を、当該収納領域内の検体ラックに保持された検体容器の検体を吸引可能な位置に配置したので、収納領域において検体ラックを搬送させることなく検体の吸引を行うことができ、検体の吸引作業を効率的に行うことが可能となる。
【0110】
付記5に記載の分析装置によれば、搬送手段が、収納ユニットの近傍に設けられた垂直搬送手段と、収納ユニットの近傍に設けられた水平搬送手段と、当該分析装置と他の分析装置との相互間に設けられた受け渡し手段とを備えたので、分析装置間での検体ラックの搬送をスムーズに行うことができ、分析装置の使用性を高めることができる。
【符号の説明】
【0111】
1 分析システム
11 第1分析モジュール
12 第2分析モジュール
13 第3分析モジュール
20 筐体
21 上側カバー部
22 中間カバー部
23 下側カバー部
30 反応容器供給部
40 試薬収納ユニット
50 廃棄箱
60 検体収納ユニット
61 収納領域
62 バッファ領域
70 反応容器搬送部
80 検体搬送部
81 垂直搬送部
82 水平搬送部
83 受け渡し部
90 試薬分注部
100 検体分注部
110 反応槽
111 反応ライン
111a 孔部
112 集磁部
113 洗浄液分注部
114 撹拌部
115 基質分注部
116 検出部
120 分析側制御部
200 制御部
C1 試薬容器
C2 検体容器
C3 反応容器
P1 収納位置
P2 収納位置
R 検体ラック
図1
図2
図3
図4