(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/38 20060101AFI20230725BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20230725BHJP
E06B 3/06 20060101ALI20230725BHJP
E06B 3/34 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
E06B3/38
E06B7/23 A
E06B3/06
E06B3/34
(21)【出願番号】P 2019159320
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】安田 辰雄
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-117893(JP,U)
【文献】実公昭46-003969(JP,Y1)
【文献】実開昭60-084692(JP,U)
【文献】実開昭55-109795(JP,U)
【文献】実開昭60-184990(JP,U)
【文献】特開2011-185009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
E06B 3/04-3/46
E06B 3/50-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と障子とタイト材とを備え、タイト材は、枠に取付けてあり、正圧時に枠障子間を塞ぐ正圧時気密保持部と負圧時に枠障子間を塞ぐ負圧時気密保持部とを有し、負圧時気密保持部は、正圧時気密保持部
の内周側に正圧時気密保持部から独立して設けてあり、室内
外方向の変形量が負圧時の障子の室外側への変位量よりも大き
く、負圧時に障子が室外側に移動して正圧時気密保持部が障子から離れたときに、負圧時気密保持部が障子に追従して障子に当接した状態を維持することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧時にも気密性を維持できる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建具は、枠にタイト材が設けてあり、閉鎖時に障子がそのタイト材に当接することにより気密性を確保している(例えば、非特許文献1参照)。かかる従来の建具においては、負圧を受けて障子が室外側に引っ張られたときに障子がタイト材から離れ、気密性を維持できないことがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社 三協アルミ社発行のカタログ「ビル建材 カーテンウォール 総合カタログ」(カタログNo.STB0261I YP.15.07-030)、2015年7月、p.248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、負圧時にも気密性を維持できる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、枠と障子とタイト材とを備え、タイト材は、枠に取付けてあり、正圧時に枠障子間を塞ぐ正圧時気密保持部と負圧時に枠障子間を塞ぐ負圧時気密保持部とを有し、負圧時気密保持部は、正圧時気密保持部の内周側に正圧時気密保持部から独立して設けてあり、室内外方向の変形量が負圧時の障子の室外側への変位量よりも大きく、負圧時に障子が室外側に移動して正圧時気密保持部が障子から離れたときに、負圧時気密保持部が障子に追従して障子に当接した状態を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による建具は、枠と障子とタイト材とを備え、タイト材は、枠に取付けてあり、正圧時に枠障子間を塞ぐ正圧時気密保持部と負圧時に枠障子間を塞ぐ負圧時気密保持部とを有し、負圧時気密保持部は、正圧時気密保持部の内周側に正圧時気密保持部から独立して設けてあり、室内外方向の変形量が負圧時の障子の室外側への変位量よりも大きく、負圧時に障子が室外側に移動して正圧時気密保持部が障子から離れたときに、負圧時気密保持部が障子に追従して障子に当接した状態を維持することで、負圧時に障子が室外側に変位しても、負圧時気密保持部が障子に追従するため、気密性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明の建具の一実施形態を示す室外側正面図である。
【
図4】同建具の障子の下部側を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】タイト材の周辺を拡大して示す縦断面図であって、(a)は障子が開いた状態、(b)は障子が閉鎖した状態、(c)は負圧時に障子が室外側に変位したときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~4は、本発明の建具の一実施形態を示している。本建具は、建物の外壁を成すカーテンウォールに適用したものであって、より詳細には体育館、劇場等の建物の排煙窓として用いられるものである。
本建具は、
図3に示すように、左右方向に間隔をおいて設置した方立7,7,…と、方立7,7,…に支持して左右方向及び上下方向に並べて設置した複数の窓ユニット6,6,…とを備えている。
【0009】
方立7は、アルミ形材で形成した長尺材であり、
図2に示すように、隣り合う左右の窓ユニット6,6の隣接する縦枠8,8の室内側に位置しており、矩形断面の中空部14と、中空部14の左右両側に形成されたL型片15,15を有している。中空部14の室外側壁には、室外側が開口した溝16が形成してあり、その溝16内にはパッキン13が縦枠8の全長にわたって設けてある。また、中空部14の室内側には、躯体17に取付けられた連結具18が係合する係合溝19を有し、連結具18の室外側端部が方立7の係合溝19に係合し、ボルト20(
図1参照)で固定してある。左右のL型片15,15と中空部14の側壁間には、後述する窓ユニット6のブラケット9の係止部11を係止させるための丸棒状の被係止部12が設けてある。
【0010】
窓ユニット6は、
図1~3に示すように、枠1と、枠1内に開閉自在に支持した障子2とを備えている。障子2は、
図1に示すように、下部側を支点として室外側に回動して開くようになっている。
枠1は、
図1~3に示すように、アルミ形材よりなる上枠21と下枠22と左右の縦枠8,8とを枠組みして構成されている。縦枠8は、
図2に示すように、見込壁23と、見込壁23の室内側に内周側に突出して設けた見付壁24とを有し、見付壁24は中空部を設けて厚みを持たせてある。さらに縦枠8は、見付壁24より室内側に室内側に向けて突出する突条25が、見込壁23と連続して全長に設けてある。見込壁23の室外側端部には、外周側に向けてタイト材26が突出して設けてあり、このタイト材26により隣接する縦枠8,8間の隙間を室外側で塞いでいる。
【0011】
縦枠8には、
図1,2に示すように、板状のブラケット9が室内側に突出して設けてある。ブラケット9は、室外側の部分を見付壁24の中空部内に挿入し、ボルト・ナット27で取付けてある。ブラケット9は、
図1に示すように、室内側に下側が開放した溝状の係止部11が設けてあり、係止部11の室内側には下方に向かうにつれて室内側に傾斜したテーパー部10が設けてある。
ブラケット9の係止部11を方立7の被係止部12に上方から係止させると、テーパー部10により縦枠8が窓ユニット6の自重により方立7に向けて引き寄せられ、これに伴い縦枠8の突条25が方立7のパッキン13に押し付けられ、
図2に示すように、突条25の室内側端部がパッキン13に食い込む。このように、縦枠8の突条25を方立7のパッキン13に食い込ませてあることで、タイト材26を超えて縦枠8,8間に雨水が浸入したとしても、室内に雨水が浸入することを防止できる。
【0012】
上枠21は、
図1に示すように、見込壁28と、室内側に位置する見付壁29と、見込壁29より上方に突設した突壁30とを有し、突壁30の上端部には上方に向けてタイト材31が取付けてある。
下枠22は、見込壁32と、室内側に位置する見付壁33とを有し、見込壁32は室内側が高くなった階段状に形成されている。見込壁32の室外側端部にはタイト材34が下向きに突出して設けてあり、タイト材34が下段の窓ユニット6の上枠21の上面に当接している。また、見込壁32の一段高くなった部分の下面側には、下向きに開口したコ字形の溝35が形成してあり、当該溝35に下段の窓ユニット6の上枠21の突壁30を嵌合することで下枠22が見込み方向に位置決めされ、且つ溝35の底部に下段の窓ユニット6の上枠21のタイト材31が当接することで、室外側のタイト材34を超えて上枠21と下枠22間に雨水が浸入したとしても、室内に雨水が浸入することを防止できる。
【0013】
図1,2に示すように、縦枠8と上枠21と下枠22の見付壁24,29,33の内周側端部の室内側には、それぞれ障子2に当接するタイト材3が取付けてあり、タイト材3は四周連続している。タイト材3は、
図4に示すように、見付壁24,29,33のタイト材保持溝36に保持されるベース部37と、ベース部37の室外側に設けた正圧時気密保持部4と、正圧時気密保持部4の内周側に位置する負圧時気密保持部5とを有している。
【0014】
正圧時気密保持部4は、軟らかいシリコンスポンジで中空部を有する蒲鉾形の断面に形成してある。正圧時気密保持部4は、障子2を閉鎖したときに障子2の室内側面に当接することで室内方向に押しつぶされ(
図5(a),(b)参照)、気密を保持する。障子2を閉鎖した状態で障子2に正圧がかかったときは、障子2が室内側に押されるので正圧時気密保持部4がさらに押しつぶされ、気密を保持する。
【0015】
負圧時気密保持部5は、
図4に示すように、正圧時気密保持部4から独立してベース部37から設けてあり、柔軟に変形するヒレ状に形成されている。負圧時気密保持部5は、正圧時気密保持部4よりも硬い材質、具体的には硬度70±5°(HA=70°±5°)のシリコンゴムで形成してある。ベース部37も負圧時気密保持部5と同じ材質であり、負圧時気密保持部5とベース部37とは連続して一体に形成されている。
負圧時気密保持部5は、障子2を開けた状態では、
図5(a)に示すように、ベース部37の内周側端部より室外側に内周側に斜めに傾斜して伸びており、障子2を閉鎖すると、
図5(b)に示すように、負圧時気密保持部5は根元から曲り、障子2の室内側面に沿うように当接する。負圧時気密保持部5は、室内外方向の変形量lが負圧時の障子2の室外側への変位量Lよりも大きくしてある。負圧時の障子2の室外側への変位量Lは窓種や障子の大きさ等によって異なるが、大きく見積もってもせいぜい10mmであり、負圧時気密保持部5の室内外方向の変形量lはそれよりも大きい寸法、例えば12mmとしてある。
【0016】
図5(c)は、負圧時の状態を示している。負圧時には障子2が室外側に引っ張られ、正圧時気密保持部4は障子2から離れるが、負圧時気密保持部5は室内から室外に流れようとする空気55によって障子2の室内側面に吸着し、障子2の変位に追従して当接状態を維持する。よって、負圧時にも気密性を維持できる。
仮に、負圧時気密保持部5が正圧時気密保持部4から設けてあったとすると、障子2閉鎖時に正圧時気密保持部4が障子2に押されて変形すると、正圧時気密保持部4の変形に伴って負圧時気密保持部5も変位し、負圧時気密保持部5が障子2から離れるおそれがあるが、本実施形態のように負圧時気密保持部5が正圧時気密保持部4とは別個にベース部37から設けてあることで、負圧時気密保持部5が正圧時気密保持部4の変形の影響を受けることなく、常に障子2に当接して気密を維持できる。
【0017】
障子2は、
図1,2に示すように、アルミ形材よりなる上框38と下框39と左右の縦框と40,40を框組みしてなる框体41と、框体41に室外側から嵌め込んで設けた外部側パネル部42と、框体41に室内側から嵌め込んで設けた内部側パネル部43とを有している。外部側パネル部42と内部側パネル部43との間には、空気層44を有している。空気層44の幅Dは、65mmである。障子2は、下框39が下枠22にヒンジ45で連結してある(
図1参照)。縦框40と縦枠8の間には、障子2を室外に突き出すためのダンパー46を設置してある(
図2参照)。
外部側パネル部42は、室外側パネル47と室内側パネル48とを有する複層パネルとなっている。室外側パネル47は板厚3mmのアルミ製パネルとしてあり、室内側パネル48は板厚1.6mmのスチール製パネルとしてある。室外側パネル47と室内側パネル48とは、両パネル間の四周に配置した防振ゴム49を介して接着されており、室外側パネル47と室内側パネル48との間には5mmの空気層50が設けてある。外部側パネル部42は、ガスケット51a,51bにより框体41の室外側の溝52に取付けてある。
内部側パネル部43は、板厚3mmのアルミ製パネルとしてある。内部側パネル部43は、ガスケット53a,53bにより框体41の室内側の溝54に取付けてある。
【0018】
室内で音が発生すると内部側パネル部43が振動するが、内部側パネル部43と外部側パネル部42の間の空気層44により振動のパワーが弱められる上、外部側パネル部42の室内側パネル48として重いスチール製パネルが配置されていることで、伝わってきた振動がその室内側パネル48で大きく抑えられる。さらに、スチール製の室内側パネル48の室外側に防振ゴム49により空気層50を形成してアルミ製の室外側パネル47が設けてあるので、振動がさらに抑えられる。これにより、非常に優れた遮音性能を発揮する。スチール製パネル(室内側パネル48)を用いることで、空気層44の幅Dを小さくでき、枠1の見込み寸法を小さくすることができる。スチール製パネルの室外側にアルミ製パネル(室外側パネル47)が配置されていることで、スチール製パネルが錆びるのを防止できる。内部側パネル部43を熱伝導性の良いアルミ製パネルとしたことで、結露を防止することができる。
また本建具は、障子2に金属製パネル(スチール製パネル及びアルミ製パネル)が嵌め込んであるため、遮光性を備えるものとなっており、室外から室内に光が射し込まない。
【0019】
次に、本建具の施工手順を説明する。まず、躯体17に方立7,7,…を取付ける。次に、予め組み立てた窓ユニット6を下段のものから順に方立7,7間に取付ける。窓ユニット6の取付けは、縦枠8に取付けたブラケット9の係止部11を方立7の被係止部12に上方から係止すると共に、下枠22の溝35を下段の窓ユニット6の上枠21の突壁30に上方から嵌合することにより行う。このとき、
図1に示すように、ブラケット9の係止部11の室内側にテーパー部10が設けてあることで、窓ユニット6が下降するにつれて窓ユニット6は自重により方立7に向かって引き寄せられ、方立7と縦枠8間に設けたパッキン13が押しつぶされる。特に本建具は、縦枠8の室内側端部に突条25が全長に設けてあるため、突条25の室内側端部がパッキン13に食い込み(
図2参照)、これにより縦枠・方立間の高い気密性・水密性が得られる。
【0020】
以上に述べたように本建具は、枠1と障子2とタイト材3とを備え、タイト材3は、枠1に取付けてあり、正圧時気密保持部4と負圧時気密保持部5とを有し、負圧時気密保持部5は、正圧時気密保持部4の内周側に位置し、室内側方向の変形量lが負圧時の障子2の室外側への変位量Lよりも大きいことで、負圧時に障子2が室外側に変位しても、負圧時気密保持部5が障子2に追従するため、気密性を維持できる。
タイト材3は、負圧時気密保持部5がベース部37から設けてあることで、負圧時気密保持部5が正圧時気密保持部4の変形の影響を受けることなく障子2に常時当接させられ、気密性を維持できる。
またタイト材3は、負圧時気密保持部5が正圧時気密保持部4よりも硬いことで、負圧時気密保持部5が障子2の変位に速やかに追従できる。
【0021】
また本建具は、窓ユニット6と、窓ユニット6を支持する方立7とを備え、窓ユニット6は、縦枠8にブラケット9を有し、ブラケット9は、テーパー部10を有する係止部11が設けてあり、方立7は、ブラケット9の係止部11が係止する被係止部12を有し、窓ユニット6の縦枠8と方立7の間にパッキン13を有し、窓ユニット6は、ブラケット9の係止部11を方立7の被係止部12に係止させると、テーパー部10により自重で方立7に向けて引き寄せられ、パッキン13が押しつぶされることで、窓ユニット6のブラケット9を方立7の被係止部12に上方から係止するだけで、窓ユニット6の自重で窓ユニット6が方立7に向けて引き寄せられて縦枠・方立間のパッキン13が押しつぶされるから、施工性が良い上に水密性・気密性に優れる。
窓ユニット6は、縦枠8の室内側に突条25を長手方向に有し、パッキン13は、方立7の室外側面に長手方向に設けてあり、縦枠8の突条25をパッキン13に食い込ませてあるので、水密性・気密性をより一層高めることができる。
本建具は、方立7が左右の窓ユニット6,6の隣接する縦枠8,8の室内側に位置しており、方立7の室外側面に取付けた一つのパッキン13に隣接する縦枠8,8が押し付けられるようにしたので、簡単な構造で水密性・気密性を維持できる。
【0022】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。枠と障子の構造、材質は、任意である。障子の開き方は任意であり、また障子は枠に動かないように固定してあってもよい。正圧時気密保持部及び負圧時気密保持部の形状、材質は、適宜変更することができる。材質については、負圧時気密保持部の材質が正圧時気密保持部の材質よりも硬い材質であればよい。
【符号の説明】
【0023】
1 枠
2 障子
3 タイト材
4 正圧時気密保持部
5 負圧時気密保持部
6 窓ユニット
7 方立
8 縦枠
9 ブラケット
10 テーパー部
11 係止部
12 被係止部
13 パッキン