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  • 特許-電池装置および制御方法 図1
  • 特許-電池装置および制御方法 図2
  • 特許-電池装置および制御方法 図3
  • 特許-電池装置および制御方法 図4
  • 特許-電池装置および制御方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電池装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230725BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20230725BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230725BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
B60R16/033 B
H01M10/44 P
H02J1/00 304E
H02J1/00 304H
H02J1/00 306L
H02J1/00 309B
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019183250
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021061659
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 隆資
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009654(JP,A)
【文献】特開2015-033859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 1/00 - 1/16
H01M 10/42 - 10/48
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1系統に接続され、他端が第1スイッチを介して第2系統に接続されるとともに、それぞれ直列配置された電池セルのセル列を繋ぐ第2スイッチを有するバッテリと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第2系統の起動時に、前記第1スイッチをオンにするとともに、前記第2スイッチをオフにし、前記第2系統の停止時に、前記第1スイッチをオフにするとともに、前記第2スイッチをオンにすること
を特徴とする電池装置。
【請求項2】
自動運転を行う自動運転車両に搭載され、
前記第1系統は、
自動運転に関する1次負荷が接続され、
前記第2系統は、
前記1次負荷のバックアップ用の2次負荷が接続されること
を特徴とする請求項1に記載の電池装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記自動運転を開始する場合に、前記第1スイッチをオンにするとともに、前記第2スイッチをオフにすること
を特徴とする請求項2に記載の電池装置。
【請求項4】
前記バッテリは、
リチウムイオンバッテリであること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電池装置。
【請求項5】
一端が第1系統に接続され、他端が第1スイッチを介して第2系統に接続されるとともに、それぞれ直列配置された電池セルのセル列を繋ぐ第2スイッチを有するバッテリを制御する制御方法であって、
前記第2系統の起動時に、前記第1スイッチをオンにするとともに、前記第2スイッチをオフにし、前記第2系統の停止時に、前記第1スイッチをオフにするとともに、前記第2スイッチをオンにすること
を特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両の自動運転などといった高い安全性が求められる電源システムにおいて、冗長性を確保するために2系統の電源系統を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-144860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、電源系統ごとに蓄電池を設ける必要があるため、電源システムの製造コストを抑える点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源システムの製造コストを抑えることができる電源装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る電源装置は、バッテリと、制御部とを備える。前記バッテリは、一端が第1系統に接続され、他端が第1スイッチを介して第2系統に接続されるとともに、それぞれ直列配置された電池セルのセル列を繋ぐ第2スイッチを有する。前記制御部は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチをそれぞれ制御する。また、前記制御部は、前記第2系統の起動時に、前記第1スイッチをオンにするとともに、前記第2スイッチをオフにし、前記第2系統の停止時に、前記第1スイッチをオフにするとともに、前記第2スイッチをオンにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源システムの製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、電源システムの概要を示す図である。
図2図2は、電池パックのブロック図である。
図3図3は、バッテリと、第1系統及び第2系統との接続態様を示す模式図(その1)である。
図4図4は、バッテリと、第1系統及び第2系統との接続態様を示す模式図(その2)である。
図5図5は、電池ECUが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る電池装置および制御方法について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を用いて、実施形態に係る電源システムの概要について説明する。図1は、電源システムの概要を示す図である。なお、以下では、図1に示す電源システム1が、手動運転と自動運転とを行う自動運転車両に搭載されるものとして説明する。また、図1に示す電池パック50は、電池装置の一例に対応する。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る電源システム1は、高圧バッテリ10と、高圧DCDC20と、1次負荷30と、切替DCDC40と、電池パック50と、2次負荷60とを備える。
【0012】
高圧バッテリ10は、HEVやEV等に搭載されるメインバッテリであり、走行用モータ(図示略)を動力源として用いている間、高電圧の電力をインバータ(図示略)を介して走行用モータへ供給する。
【0013】
また、高圧バッテリ10は、車両の制動時や減速時に走行用モータが発電機として機能する場合、発電された電力をインバータを介して入力し、蓄電する。高圧DCDC20は、高圧バッテリ10から供給される電力を、1次負荷を動作させる補機用電力供給系に応じて低電圧(たとえば12V)へ降圧する。
【0014】
高圧DCDCによって降圧された電圧は、1次負荷30へ供給されるとともに、電池パック50に蓄電される。1次負荷30は、例えば、車両に搭載された各種電装品や、車両の自動運転を制御するシステムを含む。
【0015】
切替DCDC40は、高圧DCDC20によって降圧された低電圧を2次負荷60の規格に応じて降圧または昇圧する。切替DCDC40によって降圧または昇圧された電圧は、2次負荷60に供給されるとともに、電池パック50に蓄電される。
【0016】
2次負荷60は、例えば、1次負荷30のバックアップ用の負荷である。車両の自動運転時において、1次負荷30側の第1系統S1に電源失陥が生じた場合に、2次負荷60が1次負荷30に代わって自動運転を継続して制御することで、自動運転を継続することができる。
【0017】
第1系統S1および第2系統S2の双方に電源失陥が生じた場合、電源失陥が生じた時点で自動運転自体が機能せずに、危険な状態となる。このため、第1系統S1および第2系統S2のうち、一方に電源失陥が生じた時点で、車両のドライバへ手動運転への切替えや、安全な場所(例えば、路側帯など)への退避を行う。
【0018】
なお、1次負荷30のうち、一部の負荷を2次負荷60と見做すことにしてもよい。この場合、かかる負荷に対して、第1系統S1および第2系統S2の双方から電力を供給することになる。
【0019】
ところで、従来技術においては、第1系統および第2系統に対して、それぞれ電池パックを設置していた。このため、従来技術においては、系統ごとに電池パックを必要とするので、電源システムの製造コストが増大していた。
【0020】
これに対して、本実施形態に係る電源システム1では、図1に示すように、第1系統S1および第2系統S2で1つの電池パック50を共用する。つまり、実施形態に係る電源システム1は、従来技術に比べて、電池パック50の個数を減らすことができるので、削減した電池パック50の分だけ、製造コストを削減することが可能となる。以下、実施形態に係る電池パック50についてさらに詳細に説明する。
【0021】
次に、図2を用いて、電池パック50の構成例について説明する。図2は、電池パック50のブロック図である。なお、図2に示す電池ECU(Electronic Control Unit)51は、制御部の一例に対応する。
【0022】
図2に示すように、電池パック50は、電池ECU51と、バッテリBとを備える。電池ECU51は、バッテリB内に設けられた第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン/オフを制御するコントローラである。
【0023】
電池ECU51は、車両の運転モードに応じて、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2のオン/オフを切り替える。ここでの運転モードは、図示しない自動運転制御装置がドライバに代わって運転を行う自動運転モードと、自動運転モード以外のモードである通常モードとがある。また、自動運転モードには、自動駐車が含まれる。
【0024】
バッテリBは、複数の電池セルCと、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2とを備える。また、図2に示すように、バッテリBは、一端が第1系統S1に接続され、他端が第1スイッチSW1を介して第2系統S2に接続される。
【0025】
すなわち、バッテリBは、第1系統S1と電気的に常時接続され、第1スイッチSW1がオンである場合に、第2系統S2に電気的に接続される。また、図2に示すように、バッテリBは、それぞれ直列配置された電池セルCの列であるセル列L1、L2によって構成される。
【0026】
セル列L1、L2は、それぞれ複数の電池セルCが直列配置されて構成され、セル列L1、L2間に第2スイッチSW2が設けられる。すなわち、第2スイッチSW2がオンである場合に、各セル列L1、L2は、並列接続されることになる。
【0027】
ここで、各電池セルCは、リチウムイオンバッテリ(LiB)である。LiBは、鉛バッテリに比べて、エネルギー密度が高い(蓄電容量が大きい)2次電池である。また、近年では、LiBに対して、鉛バッテリは、有害物質であるため、使用が規制されつつある。
【0028】
したがって、各電池セルCをLiBとすることで、鉛バッテリを適用する場合に比べてバッテリBの小型化が可能であり、また、環境負荷を低減することができる。なお、各電池セルCは、LiBに限らず、鉛バッテリを含むその他の2次電池であってもよい。
【0029】
なお、各セル列L1、L2の電池セルCの個数や、各電池セルCの容量については、第1系統S1および第2系統S2の消費電力等を考慮して、適宜決定することにすればよい。
【0030】
続いて、図3および図4を用いて、車両の運転モードに応じたバッテリBと第1系統S1および第2系統S2との接続態様について説明する。図3および図4は、バッテリBと、第1系統S1及び第2系統S2との接続態様を示す模式図である。
【0031】
まず、図3を用いて、通常時(自動運転時以外)における接続態様について説明する。図3に示すように、通常時においては、第1スイッチSW1をオフにし、第2スイッチSW2がオンとなる。
【0032】
つまり、通常時においては、セル列L1およびセル列L2が並列接続された状態で、第1系統S1に接続される。言い換えれば、後述するように、第1系統S1用のセル列L1に加えて、自動運転時における第2系統S2用のセル列L2を第1系統S1に接続することで、電池容量を確保することが可能となる。
【0033】
これにより、仮に、車両が長期放置された場合であっても、バッテリ上がりまでの期間を長くすることが可能となる。
【0034】
これに対して、自動運転時においては、図4に示すように、第1スイッチSW1をオンにし、第2スイッチSW2をオフとなる。すなわち、セル列L1が第1系統S1に接続され、セル列L2が第2系統S2にそれぞれ接続された状態であり、セル列L1およびセル列L2が切り離された状態となる。
【0035】
この場合、セル列L1およびセル列L2は、第1系統S1または第2系統S2における電圧変動に耐えるためのバッファとしてそれぞれ機能する。
【0036】
具体的には、第1系統S1または第2系統S2の電圧が低下した場合には、セル列L1またはセル列L2から第1系統S1または第2系統に電源が供給される。また、第1系統S1または第2系統S2の電圧が上昇した場合には、セル列L1またはセル列L2へ蓄電することになる。
【0037】
また、上述のように、セル列L1およびセル列L2に蓄電されたそれぞれの電力は、通常時において、第1系統S1へ供給されることになる。このように、実施形態に係る電池パック50は、セル列L1と、第2系統S2を繋ぐ第1スイッチSW1と、セル列L1、L2を繋ぐ第2スイッチSW2とを有する。
【0038】
これにより、第1系統S1および第2系統S2に対して、1つの電池パック50を共有することが可能となる。したがって、実施形態に係る電池パック50によれば、系統ごとに電池パックを設ける場合に比べて、電池パックの個数を削減することができるので、電源システム1の製造コストを抑えることができる。
【0039】
次に、図5を用いて、実施形態に係る電池ECU51が実行する処理手順について説明する。図5は、電池ECU51が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下では、通常時から自動運転時を経由し、通常時に遷移するまでの一連の処理手順について説明する。
【0040】
図5に示すように、電池ECU51は、まず、自動運転制御装置から自動運転への切替え要求を取得すると(ステップS101)、第1スイッチSW1をオン、第2スイッチSW2をオフに切り替える(ステップS102)。ステップS102の処理では、セル列L1を第1系統S1、セル列L2を第2系統S2にそれぞれ切り離した状態で接続することになる。
【0041】
続いて、電池ECU51は、自動運転が終了したか否かを判定し(ステップS103)、自動運転が終了した場合(ステップS103,Yes)、第1スイッチSW1をオフ、第2スイッチSW2をオンに切り替えて(ステップS104)、処理を終了する。一方、電池ECU51は、ステップS103の判定において、自動運転が終了していないと判定した場合(ステップS103,No)、ステップS103の判定処理を継続して行うことになる。
【0042】
上述したように、実施形態に係る電池パック50(電源装置の一例)は、バッテリBと、電池ECU51(制御部の一例)とを備える。バッテリは、一端が第1系統S1に接続され、他端が第1スイッチSW1を介して第2系統S2に接続されるとともに、それぞれ直列配置された電池セルCのセル列L1、L2を繋ぐ第2スイッチSW2を有する。
【0043】
電池ECU51は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2をそれぞれ制御し、第2系統S2の起動時に、第1スイッチSW1をオンにするとともに、第2スイッチSW2をオフにし、第2系統S2の停止時に、第1スイッチSW1をオフにするとともに、第2スイッチSW2をオンにする。したがって、実施形態に係る電池パック50によれば、電源システム1の製造コストを抑えることができる。
【0044】
ところで、上述した実施形態では、バッテリBのセル列がセル列L1、L2の2列である場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、セル列を3列以上とすることにしてもよい。この場合、セル列の列数に応じて、第2スイッチSW2を増設することにすればよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、電源システム1が車両に搭載される場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、電源システム1をその他の2電源システムに適用することも可能である。
【0046】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 電源システム
50 電池パック(電池装置の一例)
51 電池ECU(制御部の一例)
B バッテリ
C 電池セル
L1、L2 セル列
S1 第1系統
S2 第2系統
図1
図2
図3
図4
図5