(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】封止構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 13/02 20060101AFI20230725BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G01L13/02 C
H01L29/84 B
H01L29/84 A
(21)【出願番号】P 2019220431
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】田島 渉吾
(72)【発明者】
【氏名】石倉 義之
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】徳田 智久
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159593(JP,A)
【文献】特開2018-159597(JP,A)
【文献】特開2019-132817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0150275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部の主面に凹部を形成する第1工程と、
前記凹部の底面から前記基部を貫通する貫通孔を形成する第2工程と、
前記凹部の表面に金属層を形成する第3工程と、
前記金属層が形成された前記凹部の表面の、前記基部の主面と接する箇所から、前記基部の主面から前記貫通孔の方向にかけて、前記凹部の途中まで配置される溝部を形成する第4工程と、
前記基部の裏面側に、前記貫通孔で前記基部の主面側と連通するオイル収容部を形成する第5工程と、
前記オイル収容部および前記貫通孔にオイルを充填する第6工程と、
金属から構成された金属部材を、前記金属層が形成された前記凹部に配置する第7工程と、
前記凹部に配置された前記金属部材を加熱し、前記金属層に溶着した前記金属部材からなる封止部材で前記貫通孔を封止する第8工程と
を備える封止構造の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の封止構造の製造方法において、
前記第4工程は、前記凹部に前記金属層の未形成部を設けることで前記溝部を形成することを特徴とする封止構造の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の封止構造の製造方法において、
前記第8工程は、前記封止部材で前記凹部を埋める状態にすることを特徴とする封止構造の製造方法。
【請求項4】
基部と、
前記基部の主面に形成された凹部と、
前記基部の裏面側に形成されたオイル収容部と、
前記凹部の底面から前記基部を貫通し、前記基部の主面側と前記オイル収容部とを連通する貫通孔と、
前記凹部の表面に形成された金属層と、
前記金属層が形成された前記凹部の表面の、前記基部の表面と接する箇所から、前記基部の主面から前記貫通孔の方向にかけて、前記凹部の途中まで形成された溝部と、
前記オイル収容部および前記貫通孔に充填されたオイルと、
金属から構成され、前記金属層に溶着することで前記貫通孔を封止する封止部材と
を備える封止構造。
【請求項5】
請求項4記載の封止構造において、
前記溝部は、前記金属層の未形成部により構成されていることを特徴とする封止構造。
【請求項6】
請求項4または5記載の封止構造において、
前記封止部材は、前記凹部を埋めて形成されていることを特徴とする封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用の差圧計では、小型化や耐食性などの要望により、センサチップ本体をシリコンなどの半導体やサファイアなどから構成している。例えば、半導体チップ内に、ピエゾ抵抗素子が形成された半導体膜から2つのダイアフラムを平面方向に並んで配置し、それぞれのダイアフラムの直上に形成された2つの部屋を連通路によって互いに空間的に接続した構造のセンサチップを用いたダイアフラム並列配置型の差圧計が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この種の差圧計では、一方のダイアフラムに加えられた圧力を他方のダイアフラムに伝達させるために、2つの部屋および連通路を、オイルなどによる圧力伝達物質で満たしている。また、2つの部屋および連通路に満たしたオイルは、これらの空間に封入するため、オイルの導入口を、封止部材で封止している。
【0004】
上述した封止部材による封止では、導入口の表面に金属層を形成し、この金属層に金属から構成された封止部材を溶着している。この溶着では、よく知られたはんだ接合などのろう付けの技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように、溶着により封止部材による封止構造を実現する場合、封入するオイルの沸点を超える高温に加熱することになる。このため、封止の工程において、封止部材に接している高温に晒されるオイルは、突沸し、また、変質する。このように突沸が発生すると、封止部材と金属層との正常な溶着を阻害し、封止部材と金属層との溶着が不完全になる場合が発生する。また、高温に晒されて変質したオイルが、連通路に入り込む場合も発生する。この場合、変質したオイルが、連通路より先の領域に侵入する場合もあり、この場合、ダイアフラムの正常な動作を阻害する場合も発生する。これらのように、従来は、加熱封止によりオイルが正常に封入できないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、加熱封止によりオイルが正常に封入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る封止構造の製造方法は、基部の主面に凹部を形成する第1工程と、凹部の底面から基部を貫通する貫通孔を形成する第2工程と、凹部の表面に金属層を形成する第3工程と、金属層が形成された凹部の表面の、基部の主面と接する箇所から、基部の主面から貫通孔の方向にかけて、凹部の途中まで配置される溝部を形成する第4工程と、基部の裏面側に、貫通孔で基部の主面側と連通するオイル収容部を形成する第5工程と、オイル収容部および貫通孔にオイルを充填する第6工程と、金属から構成された金属部材を、金属層が形成された凹部に配置する第7工程と、凹部に配置された金属部材を加熱し、金属層に溶着した金属部材からなる封止部材で貫通孔を封止する第8工程とを備える。
【0009】
上記封止構造の製造方法の一構成例において、第4工程は、凹部に金属層の未形成部を設けることで溝部を形成する。
【0010】
上記封止構造の製造方法の一構成例において、第8工程は、封止部材で凹部を埋める状態にする。
【0011】
また、本発明に係る封止構造は、基部と、基部の主面に形成された凹部と、基部の裏面側に形成されたオイル収容部と、凹部の底面から基部を貫通し、基部の主面側とオイル収容部とを連通する貫通孔と、凹部の表面に形成された金属層と、金属層が形成された凹部の表面の、基部の表面と接する箇所から、基部の主面から貫通孔の方向にかけて、凹部の途中まで形成された溝部と、オイル収容部および貫通孔に充填されたオイルと、金属から構成され、金属層に溶着することで貫通孔を封止する封止部材とを備える。
【0012】
上記の封止構造の一構成例において、溝部は、金属層の未形成部により構成されている。
【0013】
上記封止構造の一構成例において、封止部材は、凹部を埋めて形成されている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、凹部の表面の基部の主面と接する箇所から、基部の主面から貫通孔の方向にかけて、凹部の途中まで配置される溝部を形成するので、加熱封止によりオイルが正常に封入できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す平面図である。
【
図1E】
図1Eは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1F】
図1Fは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1G】
図1Gは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す平面図である。
【
図1H】
図1Hは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1I】
図1Iは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1J】
図1Jは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1K】
図1Kは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1L】
図1Lは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図1M】
図1Mは、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す平面図である。
【
図2D】
図2Dは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2E】
図2Eは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2F】
図2Fは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す断面図である。
【
図2G】
図2Gは、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法を説明するための途中工程の封止構造の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る封止構造およびその製造方法について説明する。
【0017】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る封止構造の製造方法について、
図1A~
図1Mを参照して説明する。
【0018】
まず、
図1Aに示すように、基部101の主面に、オイル供給口となる凹部102を形成する(第1工程)。基部101は、例えば、単結晶シリコンから構成することができる。また、基部101は、GaAs、GaN、SiCなどの他の半導体から構成することもできる。また、基部101は、例えば、サファイアなどの金属酸化物から構成することもできる。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術、およびエッチング技術を用いることで、基部101の主面に凹部102を形成することができる。
【0019】
次に、
図1Bに示すように、凹部102の底面から基部101を貫通する貫通孔103を形成する(第2工程)。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術、および反応性イオンエッチング技術を用いることで、貫通孔103を形成することができる。
【0020】
次に、
図1C,
図1Dに示すように、基部101の凹部102を含む主面に、マスクパターン121を形成する。マスクパターン121は、凹部102を含み、平面視で凹部102より所定の範囲の広い開口121aを備える。また、マスクパターン121は、開口121aの周縁部から、貫通孔103の方向に向かって、凹部102の途中まで延在する延在部121bを備える。延在部121bの貫通孔103側の先端は、貫通孔103から所定の距離離間している。実施の形態1において、延在部121bは、平面視の形状が短冊状とされている。また、実施の形態1において、4個の延在部121bが形成されている。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術により、フォトレジストからなるマスクパターン121を形成することができる。
【0021】
次に、
図1Eに示すように、開口121aに露出する基部101の主面および凹部102の上を含め、マスクパターン121の上に金属膜122を形成する。例えば、基部101の側より、Ti膜、Pt膜、Au膜の順に積層した金属膜122を形成する。Ti膜は、基部101,凹部102の表面との高い密着性を得るための密着層として機能する。例えば、真空蒸着法やスパッタ法などにより、金属膜122が形成できる。
【0022】
上述したように、金属膜122を形成した後、マスクパターン121を除去(リフトオフ)する。例えば、マスクパターン121を構成するレジストが溶解する溶液(有機溶媒など)を用いることで、マスクパターン121が溶解除去できる。このようにして、マスクパターン121を除去することで、延在部121bを含むマスクパターン121の上に形成されていた金属膜122も除去され、開口121aの基部101の主面および凹部102の上の金属膜122が残る。
【0023】
この結果、
図1F,
図1Gに示すように、凹部102の表面に金属層104が形成され(第3工程)、また、溝部105が形成される(第4工程)。溝部105は、金属層104が形成された凹部102の表面の、基部101の主面と接する箇所から、基部101の主面から貫通孔103の方向にかけて、凹部102の途中まで配置される。
【0024】
溝部105の貫通孔103側の先端は、貫通孔103から所定の距離離間している。言い換えると、貫通孔103の周辺部の金属層104は、貫通孔103の周囲を囲って連続する環状の部分を備える。このように、実施の形態1では、凹部102に金属層104の未形成部を設けることで、溝部105を形成する。なお、溝部105は、平面視で直線上に延在させているが、これに限るものではなく、曲線状に延在させることもできる。
【0025】
次に、
図1Hに示すように、基部101の裏面に、部品106を接合する。部品106は、連通路107およびダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bが形成されている。連通路107は、凹部102とダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bとを連通する。部品106は、例えば、単結晶シリコンから構成することができる。後述するように、連通路107およびダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bが、基部101の裏面側に設けられるオイル収容部となる(第5工程)。
【0026】
次に、
図1Iに示すように、部品106に、ダイアフラム層109,部品110を接合する。部品110には、ダイアフラム層109を挾んでダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bに重なって配置される圧力導入孔110a,圧力導入孔110bが形成されている。ダイアフラム層109の、ダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bと圧力導入孔110a,圧力導入孔110bとに挾まれている領域が、ダイアフラム109a,ダイアフラム109bとなる。また、部品106の周囲のダイアフラム層109の上には、電極111a,電極111bが形成されている。
【0027】
なお、図示していないが、ダイアフラム109a,ダイアフラム109bの各々には、圧力が加わることで変形したダイアフラム109a,ダイアフラム109bの歪みを計測するための歪みゲージが形成されている。歪みゲージは、例えば、複数のピエゾ抵抗素子から構成され、複数のピエゾ抵抗素子は、ブリッジ回路を構成している。このブリッジ回路は、一定の電流が流れている状態においてダイアフラム109a,ダイアフラム109bに応力が発生したとき、発生した応力による各ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を電圧の変化として出力する差圧検出部として機能する。このブリッジ回路の各ノードは、ダイアフラム層109の図示しない領域の面に形成された配線パターンを介し、電極111a,電極111bに接続されている。
【0028】
次に、凹部102より、圧力伝達物質となるオイルを供給し、
図1Jに示すように、貫通孔103、連通路107、ダイアフラム室108a,ダイアフラム室108bをオイル112で充填する(第6工程)。この結果、貫通孔103、および 基部101の裏面側に形成されたオイル収容部(連通路107、ダイアフラム室108a,ダイアフラム室108b)が、オイル112で充填された状態となる。オイル112は、例えば、シリコーンオイルやフッ素オイルとすることができる。
【0029】
次に、
図1Kに示すように、金属から構成された金属部材113を、金属層104が形成された凹部102に配置する(第7工程)。金属部材113は、例えば、AuSn合金から構成されたソルダボール(ボールはんだ)から構成することができる。
【0030】
次に、凹部102に配置された金属部材113を加熱して溶融させ、
図1Lに示すように、封止部材114で貫通孔103を封止する(第8工程)。封止部材114は、溶融することで変形して金属層104に溶着した金属部材113から構成されたものである。金属層104の貫通孔103の周辺部の金属層104は、貫通孔103の周囲を囲って連続する環状の部分を備えるので、この環状の部分と封止部材114とが溶着した環状の領域で、この内側の領域が封止される。これらのことにより、差圧計のセンサチップが完成する(特許文献1参照)。
【0031】
上述した実施の形態1における封止構造は、基部101と、基部101の主面に形成された凹部102と、基部101の裏面側に形成されたオイル収容部と、凹部102の底面から基部101を貫通し、基部101の主面側とオイル収容部とを連通する貫通孔103と、凹部102の表面に形成された金属層104と、金属層104が形成された凹部102の表面の、基部101の表面と接する箇所から、基部101の主面から貫通孔103の方向にかけて、凹部102の途中まで形成された溝部105と、オイル収容部および貫通孔103に充填されたオイル112と、金属から構成され、金属層104に溶着することで貫通孔103を封止する封止部材114とを備えるものとなる。
【0032】
なお、実施の形態1において、溝部105は、金属層104の未形成部により構成されたものとなる。また、封止部材は、凹部102を埋めて形成されている。
【0033】
ここで、上述した封止部材114を形成する封止の工程において、加熱された金属部材113(封止部材114)に接しているオイル112は、沸点以上の高温に加熱され、突沸が発生する状態となる。しかしながら、実施の形態1によれば、金属層104の未形成部による溝部105が逃げ通路となり、突沸したオイル112は、外部に放出されるものとなる。
【0034】
この結果、実施の形態1によれば、上述した封止工程の加熱によりオイル112に突沸が発生しても、封止部材114と金属層104との正常な溶着を阻害することが無い。また、オイル112の高温に晒されることで変質した部分は、逃げ通路となる溝部105から外部に放出されるので、連通路107より先の領域に侵入することもなく、ダイアフラム109a,ダイアフラム109bの正常な動作を阻害することもない。このように、実施の形態1によれば、加熱封止によるオイルの封入が、正常に実施できるようになる。
【0035】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る封止構造の製造方法について、
図2A~
図2Gを参照して説明する。
【0036】
まず、
図2Aに示すように、基部101の主面に、オイル供給口となる凹部102を形成する(第1工程)。基部101は、例えば、単結晶シリコンから構成することができる。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術、およびエッチング技術を用いることで、基部101の主面に凹部102を形成することができる。
【0037】
次に、
図2B,
図2Cに示すように、基部101の凹部102を含む主面に、マスクパターン131を形成する。マスクパターン131は、平面視で凹部102の中央部から、凹部102の外側に向かって、所定の箇所まで延在する短冊状の開口部131aを備える。実施の形態1において、4個の開口部131aが形成され、平面視で「+」の形状とされている。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術により、フォトレジストからなるマスクパターン131を形成することができる。
【0038】
次に、例えば、反応性イオンエッチング技術を用いることで、マスクパターン131をマスクとして基部101の主面、および凹部102の表面を、所定の量(深さ)エッチングし、開口部131aの平面視の形状を基部101の主面、および凹部102の表面に転写する。この後、マスクパターン131を除去し、
図2Dに示すように、溝部205を形成する(第4工程)。溝部205は、凹部102の表面の中央部から、凹部102の外側に向かって、所定の箇所まで延在する。実施の形態2では、凹部102の表面を加工することで、溝部205を形成する。なお、溝部205は、平面視で直線上に延在させているが、これに限るものではなく、曲線状に延在させることもできる。
【0039】
次に、
図2Eに示すように、凹部102の底面から基部101を貫通する貫通孔103を形成する(第2工程)。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術、および反応性イオンエッチング技術を用いることで、貫通孔103を形成することができる。
【0040】
次に、
図2F,
図2Gに示すように、凹部102の表面、および凹部102の周囲の所定領域の基部101の主面に、金属層204を形成する。例えば、金属層204を形成したい領域に開口を有するレジストパターンを形成し、この上に、真空蒸着法やスパッタ法などにより、金属膜を形成する。例えば、金属膜は、基部101の側より、Ti膜、Pt膜、Au膜の順に積層した積層膜とする。この後、レジストパターンを除去(リフトオフ)すれば、Ti層、Pt層、筋層の積層構造による金属層204が形成できる。
【0041】
以上のようにすることで溝部205、金属層204を形成した後、
図1H~
図1Lを用いて説明した工程と同様にすることで、最終的に、金属層204に溶着した封止部材114で、貫通孔103を封止してオイルを封入する。
【0042】
ここで、上述した封止部材114を形成する封止の工程において、加熱された金属部材(封止部材114)に接しているオイルは、沸点以上の高温に加熱され、突沸が発生する状態となる。しかしながら、実施の形態2によれば、溝部205が逃げ通路となり、突沸したオイルは、外部に放出されるものとなる。
【0043】
この結果、実施の形態2おいても、上述した封止工程の加熱によりオイルに突沸が発生しても、封止部材114と金属層104との正常な溶着を阻害することが無い。また、オイルの高温に晒されることで変質した部分は、逃げ通路となる溝部205から外部に放出されるので、連通路より先の領域に侵入することもなく、ダイアフラムの正常な動作を阻害することもない。このように、実施の形態2においても、加熱封止によるオイルの封入が、正常に実施できるようになる。
【0044】
以上に説明したように、本発明によれば、凹部の表面の基部の主面と接する箇所から、基部の主面から貫通孔の方向にかけて、凹部の途中まで配置される溝部を形成するので、加熱封止によりオイルが正常に封入できるようになる。
【0045】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0046】
101…基部、102…凹部、103…貫通孔、104…金属層、105…溝部、106…部品、107…連通路、108a…ダイアフラム室、108b…ダイアフラム室、109…ダイアフラム層、109a…ダイアフラム、109b…ダイアフラム、110…部品、110a…圧力導入孔、110b…圧力導入孔、111a…電極、111b…電極、112…オイル、113…金属部材、114…封止部材、121…マスクパターン、121a…開口、121b…延在部、122…金属膜。