(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】液晶装置及び液晶装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/133 20060101AFI20230725BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230725BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20230725BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G02F1/133 505
G02F1/13 101
G02F1/1343
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2019224271
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】真野 智秀
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-038949(JP,A)
【文献】特開平06-148582(JP,A)
【文献】特開昭55-059347(JP,A)
【文献】米国特許第04734688(US,A)
【文献】米国特許第04970503(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/133
G09G 3/18,3/36
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視における面積が互いに異なる複数の画素領域を含む液晶素子と、
前記液晶素子を駆動する駆動装置と、
を含み、
前記駆動装置は、前記複数の画素領域の各々について、検査用電流値と当該検査用電流値に対応する駆動電圧及び駆動周波数のデータを保持しており、所定機会毎に、前記複数の画素領域の各々を前記データに基づく前記駆動周波数及び前記駆動電圧によって駆動してその際の電流値を測定し、当該測定された電流値を前記検査用電流値と比較することにより前記複数の画素領域の各々に関する故障の有無を判定し、当該故障が有ると判定された場合に警告信号を出力する、
液晶装置。
【請求項2】
前記データにおける前記検査用電流値、前記駆動電圧及び前記駆動周波数の少なくとも1つは、前記複数の画素領域の各々において異なる値に設定されている、
請求項1に記載の液晶装置
【請求項3】
前記面積の小さい前記画素領域ほど、当該画素領域に対応する前記駆動電圧と前記駆動周波数の少なくとも1つの値が大きく設定されている、
請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記複数の画素領域は、複数の画素電極と、当該複数の画素電極に対応づけられる共通電極と、当該各画素電極と共通電極の間に配置される液晶層を含んで構成されている、
請求項1~
3の何れか1項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記複数の画素領域は、複数の画素電極と、当該複数の画素電極のうち所定数ごとに対応付けられる複数の共通電極と、当該各画素電極と各共通電極の間に配置される液晶層を含んで構成されている、
請求項1~
3の何れか1項に記載の液晶装置。
【請求項6】
平面視における面積が互いに異なる複数の画素領域を含む液晶素子と、前記液晶素子を駆動する駆動装置とを備える液晶装置の検査方法であって、
前記複数の画素領域の各々について、検査用電流値と当該検査用電流値に対応する駆動電圧及び駆動周波数のデータを予め取得する第1ステップと、
前記複数の画素領域の各々を前記データに基づく前記駆動周波数及び前記駆動電圧によって駆動してその際の電流値を測定する第2ステップと、
当該測定された電流値を前記検査用電流値と比較することにより前記複数の画素領域の各々に関する故障の有無を判定し、当該故障が有ると判定された場合に警告信号を出力する第3ステップと、
を含む、液晶装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種画像の表示用途などに用いられる液晶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用途やその他種々の画像形成などに液晶素子が用いられている。このような液晶素子の検査技術に関して、例えば特開2005-49788号公報(特許文献1)には、単純マトリクス方式の液晶素子(液晶表示器)においてコモンライン数nに対してn本のセグメントラインを1つのグループとし、そのグループ内でn個の画素を点灯させるように駆動し、所定のn個の画素のみが点灯すれば全てのラインに断線および短絡がないことを確認するという技術が記載されている。
【0003】
ところで、上記の検査技術は特定のn個の画素が点灯しているかどうかを目視で確認するものであるが、これは基本的に製造時における製品検査を想定したものであると考えられる。このため、当該検査技術は、液晶素子の出荷後においてユーザにより液晶素子が使用される際の故障検出には使いにくい。通常、ユーザはそのような観点で液晶素子を観察していないため、十分な確認を期待できないからである。また、表示用途以外の用途、例えば車両前方へ選択的な光照射を行うために光源からの光を変調して照射パターンを形成するような用途においては、ユーザが液晶素子を目視により確認すること自体が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、液晶装置の使用時において自律的に故障検出を行うことが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様の液晶装置は、(a)平面視における面積が互いに異なる複数の画素領域を有する液晶素子と、(b)前記液晶素子を駆動する駆動装置と、を含み、(c)前記駆動装置は、前記複数の画素領域の各々について、検査用電流値と当該検査用電流値に対応する駆動電圧及び駆動周波数のデータを保持しており、所定機会毎に、前記複数の画素領域の各々を前記データに基づく前記駆動周波数及び前記駆動電圧によって駆動してその際の電流値を測定し、当該測定された電流値を前記検査用電流値と比較することにより前記複数の画素領域の各々に関する故障の有無を判定し、当該故障が有ると判定された場合に警告信号を出力する、液晶装置である。
[2]本発明に係る一態様の液晶装置の検査方法は、(a)平面視における面積が互いに異なる複数の画素領域を有する液晶素子と、前記液晶素子を駆動する駆動装置とを備える液晶装置の検査方法であって、(b)前記複数の画素領域の各々について、検査用電流値と当該検査用電流値に対応する駆動電圧及び駆動周波数のデータを予め取得する第1ステップと、(c)前記複数の画素領域の各々を前記データに基づく前記駆動周波数及び前記駆動電圧によって駆動してその際の電流値を測定する第2ステップと、(d)当該測定された電流値を前記検査用電流値と比較することにより前記複数の画素領域の各々に関する故障の有無を判定し、当該故障が有ると判定された場合に警告信号を出力する第3ステップと、を含む、液晶装置の検査方法である。
【0007】
上記構成によれば、液晶装置の使用時において自律的に故障検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の液晶素子を含んで構成される液晶表示装置(液晶装置)の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、メモリに書き込まれているデータ内容の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、液晶表示装置に検査装置を接続した構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、セグメント電極とコモン電極間に流れる電流値とその際の駆動電圧および駆動周波数の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、メモリに書き込まれるデータを求める際の処理手順について示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、メモリに予め書き込まれたデータを用いて、液晶表示装置が自律的に断線や短絡の検査を行う際の処理手順について示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、コモン電極を複数備える液晶素子とそれを含んだ液晶表示装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の液晶素子を含んで構成される液晶表示装置(液晶装置)の構成を示す図である。
図1に示す液晶表示装置1は、液晶素子(液晶パネル)2とこの液晶素子2を駆動するための駆動装置3を含んで構成されている。本実施形態の液晶表示装置1は、出荷後の通常使用時(エンドユーザの使用時)において液晶素子2に含まれる各電極や引き回し配線の故障(断線や短絡)を自律的に検出する機能を有している。
【0010】
液晶素子2は、対向配置される第1基板21および第2基板22と、第1基板21と第2基板22の間に配置される液晶層23を含んで構成されている。なお、第1基板21と第2基板22の各々の表面には液晶層23に配向規制力を与えるための配向膜や電極を覆う絶縁膜などが適宜設けられる(図示省略)。また、第1基板21と第2基板22の各々の外側には、光学補償フィルムや偏光板なども適宜設けられる(図示省略)。
【0011】
第1基板21および第2基板22は、それぞれ、例えばガラス基板などの透明基板を用いて構成されている。液晶層23は、例えばネマティック液晶材料を用いて構成されている。液晶層23の配向モードは如何なるものあってもよく、例えば本実施形態では垂直配向モードであるとする。
【0012】
第1基板21の一面側には、複数のセグメント電極SEG1、SEG2、SEG3、SEG4、SEG5が設けられている。また、第2基板22の一面側には、各セグメント電極SEG1等のそれぞれと対向するようにコモン電極COMが設けられている。各セグメント電極SEG1等およびコモン電極COMは、それぞれ、例えばインジウム錫酸化物膜(ITO膜)などの透明導電膜をパターニングすることによって得られる。本実施形態では、各セグメント電極SEG1~SEG5は、各々の平面視における面積が異なっている。各セグメント電極SEG1~SEG5とコモン電極COMの重畳する領域の各々において画素領域(光変調領域)が構成されている。
【0013】
各セグメントSEG1等は、それぞれに対応付けられた各引き回し配線24を介して駆動装置3のドライバIC31と接続されている。また、コモン電極COMは、対応付けられた引き回し配線25を介して駆動装置3のドライバIC31と接続されている。なお、図示の都合上、各引き回し配線24を簡略化して示しているが実際には各引き回し配線24は第1基板21の一面側に設けられている。同様に、引き回し配線25を簡略化して示しているが実際には引き回し配線25は第2基板21の一面側に設けられている。各引き回し配線24、25は、例えばITO膜をパターニングすることによって得られる。
【0014】
駆動装置3は、ドライバIC31と制御回路32を含んで構成されている。ドライバIC31は、各引き回し配線24、25を介して各セグメント電極SEG1等とコモン電極COMの間に駆動電圧(交流電圧)を印加する。ドライバIC31は、例えば第1基板21の一面側の端部に直接的に載置されている。制御回路32は、例えばフレキシブルプリント基板を介してドライバIC31と接続されており、ドライバIC31に対して制御信号ならびに電源電圧を供給する。制御回路32は、図示しないCPU、ROM、RAMなどを内蔵するマイクロコンピュータであり、外部からデータ書き込み可能なメモリ33を内蔵している。このメモリ33は、不揮発性メモリであり、各セグメント電極SEG1等、コモン電極COMあるいは各引き回し配線24、25の断線や短絡を自律的に検出するために用いるデータ(詳細は後述)が予め書き込まれている。
【0015】
図2は、メモリに書き込まれているデータ内容の一例を示す図である。メモリ33には、各セグメント電極SEG1~SEG5とコモン電極COMの間にそれぞれ個別に駆動電圧(好ましくは液晶層13の閾値電圧以上の電圧)を印加した際に流れる電流の大きさ(検査用電流値)と、その電流値に対応する駆動電圧およびその周波数(駆動周波数)が書き込まれている。例えば、SEG1と表記されるデータは、セグメント電極SEG1とコモン電極COMの間に駆動周波数1200Hz(1.2kHz)の駆動電圧8Vを与えた際の電流値が0.5401μAであるという内容である。他のセグメント電極SEG2~SEG5についても同様である。このようなセグメント電極ごとのデータは、例えば液晶素子2の製造時において、液晶素子2が出荷検査によって正常に完成したと判断された後に、
図3に示すように制御回路32に対して検査装置4を接続し、検査装置4によって求められる。なお、この検査装置4によるデータ取得、書き込みの詳細については後述する。
【0016】
ここで、セグメント電極ごとの駆動電圧や駆動周波数が一定値ではなくセグメント電極ごとに異なっている理由について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、セグメント電極とコモン電極間に流れる電流値とその際の駆動電圧および駆動周波数の一例を示す図である。ここでは、液晶層13を垂直配向モードとし、環境温度20℃における定格の駆動電圧が5V、駆動周波数が100Hzである液晶素子2において、表示面積1mm
2のセグメント電極とコモン電極の間に電圧を印加した場合の電流値を示している。
【0017】
図示のように、例えば定格の5V/100Hzに対する電流値は0.0195μAである。このため、例えばこの表示面積1mm2のセグメント電極ないしこれに接続されている引き回し配線に断線が生じている場合にも、それを電気的に検出することは難しい。例えば、液晶素子2の全体に流れる電流が正常時に4.9195μAであるとして、上記の表示面積1mm2のセグメント電極又はこれに対応する引き回し配線に断線が生じても、全体電流は4.9μAとなるだけであり、その電流値の違いを検出することは難しい。
【0018】
これに対して、
図4に示されるように、同じ表示面積1mm
2のセグメント電極における電流値であっても、その駆動周波数あるいは駆動電圧を上昇させることで、電流値をより大きくすることができる。例えば、図中で最も電流値が大きくなる条件として、駆動周波数を2000Hz(2kHz)、駆動電圧を12Vと設定した場合であれば、その電流値は1.0056μAとなる。これは定格の駆動電圧/駆動周波数における電流値に比較して約52倍の大きさである。一般に、液晶素子2における各セグメント電極とコモン電極COMの間に構成される領域は電気的にはコンデンサ(容量素子)と等価である。従って、電極間に与える電圧や周波数をより大きくすることで、当該領域に流れる電流を増加させることができる。
【0019】
本実施形態では、各セグメント電極SEG1~SEG5はそれぞれ面積(平面視における面積)が異なっているので、それぞれに対応して適宜に駆動電圧、駆動周波数の一方または双方を大きくすることで、電流値を大きくすることができる。換言すれば、セグメント電極ごとにそれらの面積に応じて好適な大きさの電流値を設定することができる。それにより、メモリ33に書き込まれたデータを用いて断線や短絡の有無を検査する際の電流検出ならびに判定が容易になる。具体的には、セグメント電極の面積が小さいほど、対応する駆動電圧と駆動周波数の少なくとも1つの値が大きく設定されていることが望ましい。
図2に示す例では、面積の小さい順にセグメント電極SEG2、SEG4、SEG1、SEG5、SEG4となっており、駆動電圧、駆動周波数のいずれも当該面積の小さい順に大きい値に設定されている。それにより、検出対象となる電流値を好適な大きさにできるとともに、各セグメント電極に対応する電流値の差を少なくすることもできる。
【0020】
次に、メモリ33に書き込まれるデータを求める際の処理手順について
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0021】
まず、検査装置4からの指令を受けて、制御回路32によりセグメント電極毎に電流値が測定される(ステップS11)。例えば、セグメント電極SEG1から順に1つずつ選択され、その選択された1つのセグメント電極SEG1等とコモン電極COMの間に定格の駆動周波数による駆動電圧が与えられて電流値が測定される。このとき、対象となるセグメント電極SEG1等は、以前に測定対象とされたものと隣り合わないものを選択することが望ましい。例えば、初めに選択されたものがセグメント電極SEG1であれば、その後は、セグメント電極SEG3、セグメント電極SEG5、セグメント電極SEG2、セグメント電極SEG4の順で選択するとよい。
【0022】
なお、電流値については、例えばいずれのセグメント電極SEG1等とコモン電極COMの間にも電圧を与えていない場合(全オフ時)にドライバIC31に流れる電流と、ある1つのセグメント電極SEG1等とコモン電極COMの間に電圧を与えた場合にドライバIC31に流れる電流の差分を求めることで測定することができる。
【0023】
次に、検査装置4は、ステップS11で測定された電流値が一定基準以下の極めて小さい電流である場合には電流値が測定困難であると判定する(ステップS12;YES)。この場合には、検査装置4は、制御回路32へ指令を出して、駆動周波数または駆動電圧の何れか一方または双方を前回より高い値に設定する(ステップS13)。ここで、駆動周波数と駆動電圧の上昇度合いは適宜設定しておくことができる。例えば、駆動周波数を定格の100Hzから次は200Hz、その次は300Hz・・・というように段階的に上昇させることができる。駆動電圧についても同様である。すなわち、駆動周波数と駆動電圧をどのように上昇させるかは任意であり、予め実験などで効率的な設定条件を定めておけばよい。
【0024】
駆動周波数や駆動電圧が高い値に設定されると、ステップS11へ戻り、再度対象となっているセグメント電極SEG1等に対応する電流値の測定が行われ(ステップS11)、その適否が判定される(ステップS12)。
【0025】
電流値が一定基準より大きい場合、すなわち測定困難ではない場合には(ステップS12;NO)、検査装置4は、そのときの駆動周波数、駆動電圧および測定された電流値(検査用電流値)を対象となったセグメント電極SEG1等を特定する情報と紐付けて記憶媒体5に書き込む(ステップS14)。
【0026】
その後、検査装置4は、対象となる全セグメント電極に対応する電流値の測定が終了したか否かを判定し(ステップS15)、終了していない場合には(ステップS15;NO)、上記したステップS11へ戻り、次の対象となるセグメント電極についての処理を実行する。
【0027】
また、全セグメント電極に対応する電流値の測定が終了した場合には(ステップS15;YES)、各セグメント電極に対応する電流値、駆動電圧、駆動周波数のデータを制御回路32内のメモリ33へ書き込み(ステップS16)、処理を終了する。
【0028】
次に、メモリ33に予め書き込まれたデータを用いて、液晶表示装置1が自律的に断線や短絡の検査を行う際の処理手順について
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここで説明する自律的な検査は、所定機会(例えば液晶表示装置1の電源が投入されるごと)において自動的に駆動装置3によって実行される。
【0029】
駆動装置3の制御回路32は、メモリ33から読み出したデータに基づいて、セグメント電極毎に電流値を測定する(ステップS21)。例えば、セグメント電極SEG1から順に1つずつ選択され、その選択された1つのセグメント電極SEG1等とコモン電極COMの間に、メモリ33に書き込まれているデータによって特定される駆動周波数による駆動電圧が与えられ、それに対する電流値が測定される。例えば、セグメント電極SEG1を対象とする場合であれば、駆動周波数1200Hz、駆動電圧8Vに設定され、それに対する電流値が測定される。
【0030】
次に、制御回路32は、測定された電流値がメモリ33から読み出された検査用電流値(基準値)に対して1/2以下の大きさであるか否かを判定する(ステップS22)。なお、ここでは検査用電流値の1/2以下という判定基準を設定しているが判定基準はこれに限定されず適宜設定できる。判定基準については、液晶素子2の閾値電圧によりどの程度のインピーダンスで表示不能になるかを基に決められるが、さらに液晶素子2の温度特性も考慮することが望ましい。諸条件にもよるが、例えば環境温度が-40℃の場合と140℃の場合とでは正常時であっても電流値の比が50%程度となり得る。このため、上記のように正常時の電流値に対して1/2以下という判定基準を設けることで、環境温度が大きく変化するような使用環境においても判定精度を向上させることができる。
【0031】
電流値が基準値の1/2以下である場合には(ステップS22;YES)、対象としたセグメント電極またはこれに対応する引き回し配線、あるいはコモン電極COMまたはこれに対応する引き回し配線において断線が生じていると推測されるので、制御回路32は、図示しない上位装置(液晶表示装置1を含んで構成される電子機器等)に対して警告信号を出力する(ステップS25)。警告信号を受けた上位装置は、動作を停止する、アラートランプを点灯させるなど予め設定された動作を実行する。
【0032】
他方、電流値が検査用電流値に対して1/2以下ではない場合には(ステップS22;NO)、制御回路32は、測定された電流値がメモリ33から読み出された検査用電流値(基準値)に対して2倍以上の大きさであるか否かを判定する(ステップS23)。なお、ここでは検査用電流値の2倍以上という判定基準を設定しているが判定基準はこれに限定されず適宜設定できる。判定基準については、上記と同様に液晶素子2の温度特性も考慮することが望ましい。諸条件にもよるが、例えば環境温度が-40℃の場合と140℃の場合とでは正常時であっても電流値の比が50%程度となり得る。このため、上記のように正常時の電流値に対して2倍以上という判定基準を設けることで、環境温度が大きく変化するような使用環境においても判定精度を向上させることができる。
【0033】
電流値が基準値の2倍以上である場合には(ステップS23;YES)、対象としたセグメント電極またはこれに対応する引き回し配線とコモン電極COMまたはこれに対応する引き回し配線において短絡が生じていると推測されるので、制御回路32は、図示しない上位装置に対して警告信号を出力する(ステップS25)。警告信号を受けた上位装置は、動作を停止する、アラートランプを点灯させるなど予め設定された動作を実行する。
【0034】
電流値が基準値の2倍以上ではない場合には(ステップS23;NO)、制御回路32は、対象となる全セグメント電極に対応する電流値の測定が終了したか否かを判定し(ステップS24)、終了していない場合には(ステップS24;NO)、上記したステップS11へ戻り、次の対象となるセグメント電極についての処理を実行する。
【0035】
全セグメント電極に対応する電流値の測定が終了した場合には(ステップS24;YES)、制御回路32は、通常動作へ移行する(ステップS26)ここでいう通常動作とは、図示しない上位装置からの指令に従ってドライバIC31を制御して、液晶素子2に画像表示を実行させる動作である。
【0036】
以上のような実施形態によれば、液晶表示装置1の使用時において、予めメモリ33に書き込んでおいたデータを用いて駆動装置3により自律的に故障検出を行うことが可能となる。
【0037】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では液晶素子を備える液晶装置の一例として表示用途のもの(液晶表示装置)を示したが本発明の適用範囲はこれに限定されない。また、上記した実施形態では基板上にドライバIC31が載置されている場合(いわゆるCOG実装)を説明していたが、実装方法はこれに限定されない。例えば、フレキシブルプリント基板上にドライバIC31が実装されていてもよいし、プリント基板上にドライバIC31が実装されていてもよい。また、ドライバIC31は、ピン端子、フレキシブルプリント基板、ラバーコネクタなどを介して液晶素子2と接続されていてもよい。さらに、ドライバIC31と制御回路32は一体化されたものであってもよい。
【0038】
また、上記した実施形態ではコモン電極が1つでスタティック方式により駆動する液晶素子を例示していたが、コモン電極を複数備えたマルチプレックス方式により駆動する液晶素子においても本発明を適用することができる。
【0039】
図7は、コモン電極を複数備える液晶素子とそれを含んだ液晶表示装置の構成例を示す図である。この液晶表示装置1aにおける液晶素子2aの基本的な構成は上記した実施形態の液晶素子2と同様であるが、第2基板22の一面側に2つのコモン電極COM1、COM2とそれぞれに対応する引き回し配線25a、25bが設けられている点と、液晶素子2aがドライバIC31aによってマルチプレックス方式で駆動される点が異なっている。
【0040】
このようなマルチプレックス方式による駆動を行う液晶素子2aにおいては、メモリ33に予め書き込んでおくデータを取得する際には、全コモン電極に対してセグメント電極ごとに電流値を測定してもよいし、全セグメント電極に対してコモン電極ごとに電流値を測定するなど、複数のコモン電極と複数のセグメント電極の組み合わせを種々に設定して電流値を測定し、その組み合わせに対する駆動周波数や駆動電圧をメモリ33に書き込んでおいてもよい。それにより、故障判定に要する時間を短縮する効果が得られる。ただし、上記した実施形態と同様にセグメント電極ごとに電流値と測定したほうが故障判定をより高精度に実施できると考えられる。
【0041】
また、断線の検出に関しては、例えばコモン電極COM1と各セグメント電極SEG1等のいずれの組み合わせにおいても電流値が低く、コモン電極COM2と各セグメント電極SEG1等との組み合わせでは電流値が正常範囲である場合には、コモン電極COM1またはそれに対応する引き回し配線25aにおいて断線が生じていると判定することができる。また、短絡の検出に関しては、例えばコモン電極COM1と対応するセグメント電極SEG1等に駆動電圧を印加している際に、コモン電極COM2においても電流値が高ければ、コモン電極COM1とコモン電極2の間で短絡が生じていると判定することができる。
【0042】
また、上記した実施形態等では、個々の液晶表示装置について予め電流値とそれに対する駆動電圧および駆動周波数のデータを取得し、これを用いて通常動作時に自律的な検査を行っていたが、検査により不具合のないことが確認された1つの液晶表示装置1において取得されたデータを用いて、同一の仕様で製造された他の液晶表示装置1の製造時検査を行ってもよい。この場合には、予め取得されたデータを検査装置4(
図3参照)が記憶媒体5に保持し、それを用いて、検査対象となる液晶表示装置1(1a)において各セグメント電極において電流値を測定してデータと照合することで断線や短絡の有無を判定することができる。
【0043】
また、検査により不具合のないことが確認された1つの液晶表示装置において取得されたデータを用いて、同一の仕様で製造された他の液晶表示装置のメモリ33にデータを書き込んでおき、このデータを用いてそれぞれの液晶表示装置における使用時の自律的な検査を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1a:液晶表示装置、2、2a:液晶素子、3:駆動装置、4:検査装置、5:記憶媒体、21:第1基板、22:第2基板、23:液晶層、24、25、25a、25b:引き回し配線、31、31a:ドライバIC、32:制御回路、33:メモリ、SEG1、SEG2、SEG3、SEG4、SEG5:セグメント電極、COM、COM1、COM2:コモン電極