(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電動機組立体
(51)【国際特許分類】
H02K 11/35 20160101AFI20230725BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230725BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20230725BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20230725BHJP
H02K 5/18 20060101ALI20230725BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20230725BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20230725BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230725BHJP
【FI】
H02K11/35
H02K11/33
H02K9/02 B
H02K9/06 D
H02K5/18
H02K5/20
H02K5/22
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020027294
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】西村 和馬
(72)【発明者】
【氏名】小澤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129904(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090403(WO,A1)
【文献】実開昭50-72905(JP,U)
【文献】特開平11-266565(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132474(WO,A1)
【文献】特開2011-166948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/35
H02K 11/33
H02K 9/02
H02K 9/06
H02K 5/18
H02K 5/20
H02K 5/22
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、
前記駆動軸を回転させるモータと、
前記モータを収容するモータケーシングと、
前記モータの可変速手段であるインバータと、
前記インバータを収容し、かつ前記駆動軸の軸線方向に沿って前記モータケーシングに直列的に接続されたインバータケースと、
前記インバータケースの内部に配置され、かつ前記駆動軸の周囲を覆う、樹脂製の軸カバーと、
前記インバータケースの内部に配置された無線通信装置と、を備え、
前記インバータケースは、前記軸カバーが接続されたカバー部材を備えており、
前記カバー部材と前記駆動軸との間には、前記無線通信装置から送られる電波の伝搬路が形成されている、電動機組立体。
【請求項2】
前記モータケーシングは、前記インバータケースに隣接して配置されたブラケットを備えており、
前記インバータケースは、前記インバータの周囲に配置され、かつ前記カバー部材と前記ブラケットとの間に配置されたインバータフレームを備えており、
前記インバータフレームの少なくとも一部および/または前記カバー部材の少なくとも一部は、樹脂から構成されている、請求項1に記載の電動機組立体。
【請求項3】
前記無線通信装置は、前記ブラケット上に配置されている、請求項2に記載の電動機組立体。
【請求項4】
前記ブラケットは、受け皿形状を有しており、
前記ブラケットには、前記無線通信装置を放熱するための樹脂が充填されている、請求項2または請求項3に記載の電動機組立体。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記ブラケットの内面に形成された放熱フィンを備えている、請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の電動機組立体。
【請求項6】
前記電動機組立体は、
前記インバータケースに隣接して配置され、かつ前記駆動軸に固定された、樹脂製の冷却ファンと、
前記冷却ファンを覆う、樹脂製のファンカバーと、を備えている、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電動機組立体。
【請求項7】
前記電動機組立体は、前記ファンカバーを覆う、樹脂製のファンガードを備えている、請求項6に記載の電動機組立体。
【請求項8】
前記電動機組立体は、前記駆動軸に装着された、樹脂製の接触シールを備えており、
前記接触シールは、前記インバータケースの外側において、前記インバータケースに接触している、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電動機組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ等の回転機械の駆動機であるモータとモータの可変速手段であるインバータとを一体的に備えた電動機組立体が知られている。このような電動機組立体には、振動センサを始めとするセンサ類が搭載される。このようなセンサで取得したデータを収集し、解析することで、電動機組立体の状態を診断し、故障時期や部品交換時期などの通知を行うことが可能となる。結果として、アフターサービスなどのサービス向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145830号公報
【文献】特開2018-129904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサによって取得されたデータを外部に送信する無線通信装置を電動機組立体の筐体の外部に設置する場合、無線通信装置を収容するための箱状のケースが必要となる。したがって、電動機組立体の筐体が大型化してしまう。
【0005】
一般的に、モータの筐体およびインバータの筐体は、金属製の部材から構成されている。したがって、金属部材から構成された電動機組立体の筐体の内部に無線通信装置を設置した場合、無線信号が遮断され、外部との通信が不可能となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、電動機組立体の全体の小型化を実現し、かつ外部との通信が可能な電動機組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、駆動軸と、前記駆動軸を回転させるモータと、前記モータを収容するモータケーシングと、前記モータの可変速手段であるインバータと、前記インバータを収容し、かつ前記駆動軸の軸線方向に沿って前記モータケーシングに直列的に接続されたインバータケースと、前記インバータケースの内部に配置され、かつ前記駆動軸の周囲を覆う、樹脂製の軸カバーと、前記インバータケースの内部に配置された無線通信装置と、を備える電動機組立体が提供される。前記インバータケースは、前記軸カバーが接続されたカバー部材を備えており、前記カバー部材と前記駆動軸との間には、前記無線通信装置から送られる電波の伝搬路が形成されている。
【0008】
一態様では、前記モータケーシングは、前記インバータケースに隣接して配置されたブラケットを備えており、前記インバータケースは、前記インバータの周囲に配置され、かつ前記カバー部材と前記ブラケットとの間に配置されたインバータフレームを備えており、前記インバータフレームの少なくとも一部および/または前記カバー部材の少なくとも一部は、樹脂から構成されている。
一態様では、前記無線通信装置は、前記ブラケット上に配置されている。
一態様では、前記ブラケットは、受け皿形状を有しており、前記ブラケットには、前記無線通信装置を放熱するための樹脂が充填されている。
【0009】
一態様では、前記ブラケットは、前記ブラケットの内面に形成された放熱フィンを備えている。
一態様では、前記電動機組立体は、前記インバータケースに隣接して配置され、かつ前記駆動軸に固定された、樹脂製の冷却ファンと、前記冷却ファンを覆う、樹脂製のファンカバーと、を備えている。
一態様では、前記電動機組立体は、前記ファンカバーを覆う、樹脂製のファンガードを備えている。
一態様では、前記電動機組立体は、前記駆動軸に装着された、樹脂製の接触シールを備えており、前記接触シールは、前記インバータケースの外側において、前記インバータケースに接触している。
【発明の効果】
【0010】
無線通信装置は、樹脂製の軸カバーが設けられたインバータケースの内部に配置されている。したがって、電動機組立体は、その全体のサイズをコンパクトにすることができ、かつ外部との通信が可能な構成を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電動機組立体の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】ファンカバーに取り付けられたファンガードを示す図である。
【
図4】無線通信装置から送られる電波の伝搬路を示す図である。
【
図5】駆動軸に装着された接触シールを示す図である。
【
図6】電動機組立体の他の実施形態を示す図である。
【
図8】ブラケットのさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、電動機組立体1の一実施形態を示す断面図である。電動機組立体1は、インバータ20が内蔵された一体型構造を有する機械装置である。
図1に示すように、電動機組立体1は、モータ部2と、インバータ部3とを備えている。電動機組立体1は、駆動軸5と、駆動軸5を回転させる回転子(ロータ)6および固定子(ステータ)7を備えるモータ(回転要素)8と、回転子6および固定子7を収容するモータケーシング10と、回転子6および固定子7に隣接して配置され、モータ8の動作(回転速度)を制御するインバータ20と、インバータ20を収容し、駆動軸5の軸線CL方向に沿ってモータケーシング10に直列的に配置(接続)されたインバータケース21と、を備えている。
【0014】
駆動軸5は、モータケーシング10およびインバータケース21を貫通して延びており、モータケーシング10およびインバータケース21は駆動軸5と同心状に配置されている。本実施形態では、モータケーシング10およびインバータケース21は、駆動軸5の軸線CL方向に直列的に配置されているため、電動機組立体1はコンパクトな構造を有することができる。駆動軸5の端部(すなわち、駆動軸5の反負荷側)には、駆動軸5と同心状に配置された冷却ファン25が固定されている。冷却ファン25は、インバータケース21の外側に配置されており、インバータケース21に隣接している。一実施形態では、冷却ファン25は遠心ファンである。
【0015】
モータケーシング10の内部には、発熱源であるモータ8が配置されている。モータ8は、駆動軸5に固定された回転子6と、回転子6を囲んで、外部(図示しない)からの電力を巻線(コイル)7bが受けて回転磁界を形成する固定子(ステータ)7と、を備えている。固定子7は、ステータコア7aと、ステータコア7aに巻かれた複数の巻線7bと、を備えている。回転子6は、回転子6と固定子7との間に形成される回転磁界によって回転し、回転子6が固定された駆動軸5は回転子6とともに回転する。
【0016】
図1において、モータ8は模式的に描かれている。モータ8は、例えば、ロータに永久磁石を用いた永久磁石型モータである。しかしながら、モータ8は、永久磁石型モータに限定されず、誘導モータやSRモータなど、様々な種類のモータであってもよい。
【0017】
モータケーシング10は、固定子7が固定されたモータフレーム11と、モータフレーム11の一方の開口端を閉じ、かつ駆動軸5が貫通する貫通孔30が形成されたエンドカバー12と、モータフレーム11の他方の開口端を閉じ、かつ駆動軸5が貫通する貫通孔31が形成されたブラケット13と、を備えている。エンドカバー12およびブラケット13は、モータ8を挟んで互いに対向している。駆動軸5は、エンドカバー12の軸受支持部32に支持された軸受27およびブラケット13の軸受支持部33に支持された軸受28によって回転自在に支持されている。
【0018】
インバータケース21は、インバータ20を取り囲み、言い換えれば、インバータ20の周囲に配置されたインバータフレーム22と、インバータフレーム22の開口端を閉じるカバー部材23と、を備えている。インバータフレーム22は、ブラケット13に隣接して配置されており、ブラケット13に接続されている。
【0019】
電動機組立体1は、冷却ファン25を覆うようにインバータケース21、より具体的には、カバー部材23に接続されたファンカバー51を備えている。ファンカバー51は、人間の指の冷却ファン25への接触を防止しつつ、冷却用の空気をインバータ部3およびモータ部2に、この順に送るための部材である。ファンカバー51は、カバー部材23を覆うように配置されており、カバー部材23に固定されている。ファンカバー51は、冷却ファン25に対向するファンカバー51の面に形成された開口51aを有している。
【0020】
カバー部材23の外面には、複数のフィン36が形成されている。これらフィン36は、冷却ファン25に隣接しており、カバー部材23の外面から冷却ファン25に向かって延びている。カバー部材23は駆動軸5と同心状に配置されており、カバー部材23の中央には、駆動軸5が貫通する貫通孔40が形成されている。駆動軸5は、この貫通孔40を通ってカバー部材23の外部まで延びている。
【0021】
図2は、ファンカバー51の正面図である。ファンカバー51の開口51aは、整列して配置された複数の孔であり、これら複数の孔のそれぞれは、人間の指が冷却ファン25に接触しない程度の大きさを有している。ファンカバー51の開口51aの形状は本実施形態には限定されない。冷却ファン25は、ファンカバー51の開口51aに隣接している。冷却ファン25が回転すると、ファンカバー51の開口51aの周囲の空気は開口51aを通過してファンカバー51の内部に吸い込まれる。
【0022】
図3は、ファンカバー51に取り付けられたファンガード55を示す図である。
図3に示すように、ファンガード55は、ファンカバー51を覆うようにファンカバー51に取り付けられている。したがって、冷却ファン25が回転すると、ファンカバー51とファンガード55との間の隙間から空気が吸い込まれ、開口51aを通過してファンカバー51の内部に吸い込まれる。
【0023】
図1に示すように、インバータケース21の内部には、インバータ20が配置されている。インバータ20は、スイッチング素子やコンデンサなどの要素を含むインバータ要素41と、このインバータ要素41が実装された基板42と、を備えている。基板42はスペーサ43を介してカバー部材23の内面に固定されている。カバー部材23の内面は、フィン36が形成されたカバー部材23の外面とは反対側の面である。カバー部材23は基板42が載置される受け皿形状を有している。このような構造により、カバー部材23には、基板42の放熱用および表面保護用の樹脂を充填することができる。
【0024】
電動機組立体1は、インバータケース21の内部に配置され、かつ駆動軸5の周囲を覆う軸カバー50をさらに備えている。この軸カバー50は、駆動軸5とインバータ20とを隔離する隔離部材である。軸カバー50は、円筒形状を有しており、駆動軸5と同心状に配置されている。軸カバー50の形状は特に限定されない。軸カバー50は、駆動軸5の軸線CL方向に延びている。インバータ20(すなわち、インバータ要素41および基板42)およびインバータ20と固定子7の巻線7bとを電気的に接続する接続線は、軸カバー50の外側に配置されている。
【0025】
軸カバー50は、カバー部材23に接続されている。
図1に示す実施形態では、カバー部材23は、軸カバー50が装着される環状突起23aを有している。この環状突起23aを軸カバー50に挿入することにより、軸カバー50は、カバー部材23に接続される。
【0026】
基板42は、駆動軸5および軸カバー50が貫通する環状形状を有しており、基板42および軸カバー50は駆動軸5と同心状に配置されている。軸カバー50を設けることにより、上記接続線の駆動軸5への巻き込み、およびインバータ要素41の駆動軸5との接触を防止することができる。結果として、インバータ20の故障を確実に防止することができる。
【0027】
本実施形態では、モータフレーム11およびインバータフレーム22は別部材から構成されており、モータフレーム11とインバータフレーム22との間には、ブラケット13が介在している。モータフレーム11およびブラケット13は互いに接続されており、インバータフレーム22およびブラケット13は互いに接続されている。このように、モータフレーム11、ブラケット13、およびインバータフレーム22は別部材から構成されており、モータフレーム11およびインバータフレーム22はブラケット13を介して接続されているため、作業者は、ブラケット13をモータフレーム11から取り外すことができる。したがって、作業者は、回転子6を引き抜くことなく、軸受28を容易に交換することができる。つまり、このような構造により、電動機組立体1のメンテナンス性を向上することができる。
【0028】
図1に示すように、電動機組立体1は、インバータケース21の内部(すなわち、インバータ設置空間110)に配置された無線通信装置100を備えている。無線通信装置100は、無線通信方式を通じて、外部との通信が可能な通信モジュールである。無線通信方式の一例として、Bluetooth(登録商標)を用いた通信方式を挙げることができる。無線通信方式が採用される場合、電磁ノイズの影響は問題とならず、電磁ノイズの放出も抑えられ、高速で大量のデータ通信を行うことができる。
【0029】
無線通信装置100をインバータケース21の内部に配置することにより、電動機組立体1の筐体に無線通信装置100を収容するケース部材を設ける必要はない。したがって、電動機組立体1は、その全体のサイズをコンパクトにすることができ、かつ外部との通信が可能な構成を備えることができる。
【0030】
図1に示す実施形態では、無線通信装置100は、ブラケット13上に配置されている。一実施形態では、無線通信装置100は、インバータケース21の内面(より具体的には、カバー部材23の内面またはインバータフレーム22の内面)上に配置されてもよい。一実施形態では、無線通信装置100は、基板42上に配置されてもよい。
【0031】
一実施形態では、無線通信装置100は、通信モジュール(図示しない)と、電動機組立体1の状態を検出するセンサ(図示しない)と、の組み合わせであってもよい。この場合、通信モジュールおよびセンサは、インバータ設置空間110のうちの限られた空間に配置される。したがって、通信モジュールおよびセンサとして、可能な限り、小型の製品を採用することが望ましい。
【0032】
通信モジュールおよびセンサを含む無線通信装置100は、一体的にインバータ設置空間110に配置されてもよく、または、分割して、インバータ設置空間110に配置されてもよい。センサおよび通信モジュールを分割して配置する場合、センサを基板42上に配置し、通信モジュールをブラケット13上に配置してもよい。
【0033】
図4は、無線通信装置100から送られる電波の伝搬路を示す図である。
図4に示すように、ブラケット13上に配置された無線通信装置100は、軸カバー50に隣接している。本実施形態では、モータケーシング10およびインバータケース21は、金属などの堅強な部材から構成されている。このような堅強な部材は、電波の伝搬を阻害するが、軸カバー50は、電波の伝搬を遮断しない材料(
図4に示す実施形態では、樹脂)から構成されている。したがって、
図4に示すように、無線通信装置100から送られる電波は、軸カバー50を通過し、電波の伝搬路は、カバー部材23と駆動軸5との間に形成される(
図4の矢印参照)。
【0034】
図4に示すように、カバー部材23と駆動軸5との間の隙間は、回転する駆動軸5がカバー部材23に接触せず、かつ電波の伝搬を阻害しない大きさに決定される。駆動軸5は、その端部で冷却ファン25を支持しているため、駆動軸5の直径が小さすぎると、冷却ファン25を支持することができない。したがって、駆動軸5は、冷却ファン25を支持することが可能な程度の大きさの直径を有している。その一方で、駆動軸5の直径に対して、貫通孔40の大きさを大きくしすぎると、インバータケース21の内部に異物や水滴などが混入するおそれがある。逆に、貫通孔40の大きさを小さくしすぎると、電波の伝搬が阻害されるおそれがある。そこで、本実施形態では、カバー部材23と駆動軸5との間の隙間は、回転する駆動軸5がカバー部材23に接触せず、かつ電波の伝搬を阻害しない大きさに決定される。
【0035】
電波の伝搬をより確実に阻害しないために、冷却ファン25およびファンカバー51のそれぞれは、樹脂(すなわち、電波の伝搬を遮断しない材料)から構成されていることが好ましい。
図4に示すように、電波の伝搬路は、駆動軸5の軸線CL方向に沿って形成されている。したがって、電波の伝搬路に冷却ファン25およびファンカバー51が存在している場合、電波の伝搬が阻害されるおそれがある。本実施形態では、冷却ファン25およびファンカバー51は、樹脂から構成されているため、電波の伝搬は、冷却ファン25およびファンカバー51によって阻害されない。したがって、無線通信装置100は、外部との通信をより確実に行うことができる。一実施形態では、ファンガード55が設けられる場合、ファンガード55も樹脂から構成されてもよい。一実施形態では、駆動軸5は、樹脂(すなわち、電波の伝搬が阻害されない材料)から構成されてもよい。他の実施形態では、駆動軸5は、樹脂以外の材料(例えば、金属)から構成されてもよい。
【0036】
図5は、駆動軸5に装着された接触シールを示す図である。
図5に示すように、電動機組立体1は、駆動軸5に装着された接触シール60を備えてもよい。接触シール60は、インバータケース21の外側において、インバータケース21(より具体的には、カバー部材23)に接触している。接触シール60の一例として、Vリングを挙げることができる。接触シール60は、冷却ファン25およびファンカバー51と同様に、電波の伝搬路上に配置されている。したがって、接触シール60も電波の伝搬が阻害されない材料(例えば、樹脂)から構成されている。
【0037】
接触シール60は、その防水性を確保するために、カバー部材23に接触している。接触シール60とカバー部材23との接触面積は、一定の規定値を満たす大きさを有している。したがって、貫通孔40の大きさを大きくしすぎると、上記接触面積は一定の規定値を満たさない。逆に、貫通孔40の大きさを小さくしすぎると、電波の伝搬が阻害されるおそれがある。そこで、本実施形態では、カバー部材23と駆動軸5との間の隙間は、回転する駆動軸5がカバー部材23に接触せず、電波の伝搬を阻害せず、かつ、接触シール60とカバー部材23との接触面積が一定の規定値を満たす大きさに決定される。
【0038】
軸カバー50を設けることにより、駆動軸5とインバータ要素41との接触を防止することができ、かつ外部からの水や湿気やほこりなどの異物の侵入を防ぐことができる。接触シール60を追加的に設けることにより、異物の侵入をより確実に防止することができる。
【0039】
図6は、電動機組立体1の他の実施形態を示す図である。
図6に示す実施形態では、インバータフレーム22の一部に開口22aが設けられており、この開口22aは、樹脂製の閉止部材101で閉じられている。閉止部材101で開口22aを閉じることにより、水や湿気やほこりなどの異物の侵入を防止することができる。
【0040】
上述したように、モータケーシング10およびインバータケース21は、金属などの堅強な部材で構成されている。したがって、電波の伝搬をより向上させるために、インバータフレーム22は開口22aを有しており、この開口22aは樹脂製の閉止部材101で閉じられている。このような構成により、電波の伝搬路は、駆動軸5とカバー部材23との間の隙間のみならず(
図6の「第1の伝搬路」参照)、開口22aにも形成される(
図6の「第2の伝搬路」参照)。
【0041】
一実施形態では、図示しないが、カバー部材23に開口を形成して、この開口を閉止部材で閉じてもよい。耐久性や冷却性能に問題がなければ、カバー部材23の全体および/またはインバータフレーム22の全体を樹脂(すなわち、電波の伝搬を遮断しない材料)で構成してもよい。したがって、インバータフレーム22の少なくとも一部および/またはカバー部材23の少なくとも一部は、樹脂から構成されてもよい。
【0042】
図7は、ブラケット13の他の実施形態を示す図である。
図7に示すように、ブラケット13は、無線通信装置100が載置される受け皿形状を有している。このような構造により、ブラケット13には、無線通信装置100の放熱用および表面保護用の樹脂102を充填することができる。
【0043】
インバータ20は、発熱源であるため、インバータ設置空間110は高温になる。無線通信装置100がインバータ設置空間110に配置されている場合、無線通信装置100は、熱の影響を受けてしまう。無線通信装置100が耐熱性を有しない部材から構成される場合、無線通信装置100は、インバータ20の熱の影響を受けて故障するおそれがある。
図7に示す実施形態によれば、無線通信装置100は、ブラケット13に充填される樹脂102に浸漬される。したがって、無線通信装置100は、インバータ20の熱の影響を受けず、熱に起因する無線通信装置100の故障を防止することができる。
【0044】
図8は、ブラケット13のさらに他の実施形態を示す図である。
図8に示すように、ブラケット13の内面13aには、複数の放熱フィン103が形成されてもよい。このような構成により、ブラケット13を放熱することができ、ブラケット13上に配置される無線通信装置100は、インバータ20の熱の影響を低減することができる。結果として、熱に起因する無線通信装置100の故障を防止することができる。
【0045】
図7に示す実施形態および
図8に示す実施形態は、組み合わされてもよい。この場合、受け皿形状を有するブラケット13の内面13aには、放熱フィン103が形成されており、ブラケット13には、樹脂が充填されている。
【0046】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 電動機組立体
2 モータ部
3 インバータ部
5 駆動軸
6 回転子(ロータ)
7 固定子(ステータ)
7a ステータコア
7b 巻線
8 回転要素(モータ)
10 モータケーシング
11 モータフレーム
12 エンドカバー
13 ブラケット
13a 内面
20 インバータ
21 インバータケース
22 インバータフレーム
22a 開口
23 カバー部材
23a 環状突起
25 冷却ファン
27 軸受
28 軸受
30 貫通孔
31 貫通孔
32 軸受支持部
33 軸受支持部
36 フィン
40 貫通孔
41 インバータ要素
42 基板
43 スペーサ
50 軸カバー
51 ファンカバー
51a 開口
55 ファンガード
60 接触シール
100 無線通信装置
101 閉止部材
102 樹脂
110 インバータ設置空間