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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】プロテクタ及びワイヤハーネス配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20230725BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20230725BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 087
B60R16/02 623T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020059696
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158881
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光利
(72)【発明者】
【氏名】小川 真由
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】中地 祐介
(72)【発明者】
【氏名】久保 泰朝
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆好
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-244569(JP,A)
【文献】特開2008-154384(JP,A)
【文献】特開2020-142559(JP,A)
【文献】特開2011-229203(JP,A)
【文献】特開2012-176646(JP,A)
【文献】特開2010-213376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構造物に対し所定方向に往復移動可能な移動構造物に固定され、且つ、前記固定構造物及び前記移動構造物に跨って配索される屈曲可能なハーネス本体の一部を収容する樹脂製のプロテクタ本体と、
該プロテクタ本体における前記ハーネス本体の導出部に連続し、且つ、該導出部の軸方向に延在して前記ハーネス本体をガイド可能なハーネスガイド部とを有し、
該ハーネスガイド部には、前記固定構造物に対する前記移動構造物の位置に応じて前記ハーネスガイド部での前記ハーネス本体の配置が変わる配置変化部が形成され、
該配置変化部には、前記ハーネスガイド部の延在方向端部位置において、前記プロテクタ本体に設けられた前記移動構造物に対する固定部と前記ハーネスガイド部に設けられた前記移動構造物に対する固定脚部とで前記プロテクタ本体を前記移動構造物の水平面上に固定した際に前記プロテクタ本体が前記移動構造物の上側に位置するとした場合に、端部中間よりもこの両側の一側端部及び他側端部が垂直方向である上下方向に対して下向きに下がるような、且つ、前記往復移動の途中で前記ハーネス本体が前記端部中間を乗り越えるような、凹凸の端部形状が形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタにおいて、
前記延在方向端部位置の少なくとも前記端部中間には、前記ハーネス本体が摺接するハーネス摺接部が形成され、該ハーネス摺接部は、面取り形状又は曲面形状に形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロテクタにおいて、
前記ハーネスガイド部は、前記延在方向端部位置の幅が前記導出部の幅よりも広い、末広がりの形状に形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のプロテクタにおいて、
前記配置変化部は、この表面が鏡面となる状態に形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載のプロテクタにおいて、
前記延在方向端部位置の前記一側端部には、前記移動構造物に対する固定部分としての固定脚部が連続して形成され、該固定脚部から前記導出部にかけてのガイド側部には、前記ハーネスガイド部での前記ハーネス本体の配置規制と、前記配置変化部の補強とを兼ねた壁状部が形成される
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項6】
固定構造物に対し所定方向に往復移動可能な移動構造物に固定される請求項1、2、3、4又は5に記載のプロテクタと、
一端が前記固定構造物側にのび、且つ、他端が前記移動構造物側の電気的接続部に接続され、且つ、前記他端側の一部が前記プロテクタのプロテクタ本体に収容され、且つ、全体が前記固定構造物及び前記移動構造物に跨って配索される屈曲可能なハーネス本体とを備え、
該ハーネス本体は、前記固定構造物に対する前記移動構造物の位置に応じて前記プロテクタのハーネスガイド部に形成された配置変化部により、該配置変化部での配置を変えながら、且つ、ハーネス中間部に屈曲部分を生じさせながら配索される
ことを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【請求項7】
請求項6に記載のワイヤハーネス配索構造において、
前記ハーネス中間部は、前記配置変化部により前記往復移動の途中での前記屈曲部分の曲率が変わらないように配索される
ことを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のワイヤハーネス配索構造において、
前記ハーネス本体は、幹線から分岐された分岐線の本体が該当するものとして形成される
ことを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造物及び移動構造物に跨って配索されるワイヤハーネスの、屈曲可能なハーネス本体の一部を収容するための樹脂製のプロテクタに関する。また、このプロテクタを備えて構成されるワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図15において、従来技術のワイヤハーネス配索構造1は、自動車のバックドア2に採用される(例えば下記特許文献1参照)。図中の引用符号3はバックドア2のパネル本体を示す。また、引用符号4は窓ガラスを示す。バックドア2やパネル本体3は固定構造物に相当し、窓ガラス4は移動構造物に相当する。窓ガラス4には、図示しないが電熱線等の電気部品が設けられる。この電気部品への電力供給のために、バックドア2にはワイヤハーネス5が備えられる。ワイヤハーネス5は、ハーネス本体6と、固定側プロテクタ7と、移動側プロテクタ8とを備えて構成される。ハーネス本体6には、窓ガラス4の昇降移動を許容するための余長9が設けられる。ハーネス本体6は、窓ガラス4の昇降移動に伴って図示のように屈曲形状を変えながら移動していくものになる。固定側プロテクタ7は、ハーネス本体6の保護は勿論のこと、ハーネス本体6の動きを規制することができるようにも形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-213376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のワイヤハーネス配索構造1にあっては、窓ガラス4の昇降移動に伴ってハーネス本体6が屈曲形状を変えながら移動していくことから、窓ガラス4が完全に上昇しきった状態及びこの手前の状態においては、固定側プロテクタ7から引き出されたハーネス本体6の引き出し部10の曲げがきつくなり、そのため全体的に見るとハーネス本体6の円滑な移動ができていないという問題点を有する。また、引き出し部10においては、固定側プロテクタ7により動きが規制されることから、曲げがきつくなると引き出し部10が固定側プロテクタ7のエッジに干渉してしまうという問題点も有する。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ハーネス本体の円滑な移動と干渉防止を図ることが可能なプロテクタ及びワイヤハーネス配索構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のプロテクタは、固定構造物に対し所定方向に往復移動可能な移動構造物に固定され、且つ、前記固定構造物及び前記移動構造物に跨って配索される屈曲可能なハーネス本体の一部を収容する樹脂製のプロテクタ本体と、該プロテクタ本体における前記ハーネス本体の導出部に連続し、且つ、該導出部の軸方向に延在して前記ハーネス本体をガイド可能なハーネスガイド部とを有し、該ハーネスガイド部には、前記固定構造物に対する前記移動構造物の位置に応じて前記ハーネスガイド部での前記ハーネス本体の配置が変わる配置変化部が形成され、該配置変化部には、前記ハーネスガイド部の延在方向端部位置において、前記プロテクタ本体に設けられた前記移動構造物に対する固定部と前記ハーネスガイド部に設けられた前記移動構造物に対する固定脚部とで前記プロテクタ本体を前記移動構造物の水平面上に固定した際に前記プロテクタ本体が前記移動構造物の上側に位置するとした場合に、端部中間よりもこの両側の一側端部及び他側端部が垂直方向である上下方向に対して下向きに下がるような、且つ、前記往復移動の途中で前記ハーネス本体が前記端部中間を乗り越えるような、凹凸の端部形状が形成されることを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、ハーネスガイド部に配置変化部が形成されることから、固定構造物に対する移動構造物の位置に応じてハーネス本体の配置を変えていくことができる(配置の変化に関しては実施例の欄において詳細に説明をするものとする)。従って、固定構造物及び移動構造物に跨って配索されるハーネス本体の円滑な移動を、ハーネスガイド部の配置変化部にて実現することができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のプロテクタにおいて、前記延在方向端部位置の少なくとも前記端部中間には、前記ハーネス本体が摺接するハーネス摺接部が形成され、該ハーネス摺接部は、面取り形状又は曲面形状に形成されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、面取り形状又は曲面形状のハーネス摺接部が配置変化部に形成されることから、固定構造物に対する移動構造物の位置に応じてハーネス本体がこの配置を変えていく際に滑らかに摺接させることができる。従って、ハーネス本体の円滑な移動に寄与することができる。また、滑らかに摺接させることができれば、ハーネス本体の摩耗等の防止にも寄与することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のプロテクタにおいて、前記ハーネスガイド部は、前記延在方向端部位置の幅が前記導出部の幅よりも広い、末広がりの形状に形成されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、ハーネスガイド部が末広がりの形状に形成されることから、ハーネスガイド部の延在方向端部位置においてハーネス本体の移動範囲を広げることができる。これによりハーネスガイド部でのハーネス本体の配置を変え易くすることができ、以てハーネス本体の円滑な移動を実現することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1、2又は3に記載のプロテクタにおいて、前記配置変化部は、この表面が鏡面となる状態に形成されることを特徴とする。
【0013】
このような請求項4の特徴を有する本発明によれば、配置変化部の表面が鏡面に形成されることから、ハーネスガイド部でのハーネス本体を滑らかに摺接させつつ配置を変えることができる。
【0014】
請求項5に記載の本発明は、請求項1、2、3又は4に記載のプロテクタにおいて、前記延在方向端部位置の前記一側端部には、前記移動構造物に対する固定部分としての固定脚部が連続して形成され、該固定脚部から前記導出部にかけてのガイド側部には、前記ハーネスガイド部での前記ハーネス本体の配置規制と、前記配置変化部の補強とを兼ねた壁状部が形成されることを特徴とする。
【0015】
このような請求項5の特徴を有する本発明によれば、ハーネスガイド部に連続して固定脚部が形成されることから、プロテクタ本体とハーネスガイド部の両方を移動構造物に固定することができ、以て移動構造物に対するプロテクタの固定状態を安定させることができる。また、固定脚部が移動構造物に固定されることから、ハーネスガイド部でのハーネス本体の配置の変化も安定させることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するためになされた請求項6に記載の本発明のワイヤハーネス配索構造は、固定構造物に対し所定方向に往復移動可能な移動構造物に固定される請求項1、2、3、4又は5に記載のプロテクタと、一端が前記固定構造物側にのび、且つ、他端が前記移動構造物側の電気的接続部に接続され、且つ、前記他端側の一部が前記プロテクタのプロテクタ本体に収容され、且つ、全体が前記固定構造物及び前記移動構造物に跨って配索される屈曲可能なハーネス本体とを備え、該ハーネス本体は、前記固定構造物に対する前記移動構造物の位置に応じて前記プロテクタのハーネスガイド部に形成された配置変化部により、該配置変化部での配置を変えながら、且つ、ハーネス中間部に屈曲部分を生じさせながら配索されることを特徴とする。
【0017】
このような請求項6の特徴を有する本発明によれば、請求項1、2、3、4又は5に記載のプロテクタを構成に含むことから、固定構造物に対する移動構造物の位置に応じてハーネスガイド部でのハーネス本体の配置を変えていくことができる。本発明によれば、ハーネス中間部に屈曲部分を生じさせながらハーネス本体を円滑に移動させることができる。
【0018】
請求項7に記載の本発明は、請求項6に記載のワイヤハーネス配索構造において、前記ハーネス中間部は、前記配置変化部により前記往復移動の途中での前記屈曲部分の曲率が変わらないように配索されることを特徴とする。
【0019】
このような請求項7の特徴を有する本発明によれば、ハーネス中間部における屈曲部分の曲率を変えないようにハーネス本体を移動させることができることから、ハーネス本体の円滑な移動を実現することができる。また、本発明によれば、ハーネス中間部における屈曲部分の曲率を変えないことから、曲げがきつくならず、結果、ハーネス本体とプロテクタとの干渉防止を図ることもできる。
【0020】
請求項8に記載の本発明は、請求項6又は7に記載のワイヤハーネス配索構造において、前記ハーネス本体は、幹線から分岐された分岐線の本体が該当するものとして形成されることを特徴とする。
【0021】
このような請求項8の特徴を有する本発明によれば、ハーネス本体を分岐線の本体とすることから、より良い一形態として提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプロテクタ及びワイヤハーネス配索構造によれば、ハーネス本体の円滑な移動と干渉防止を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のプロテクタ及びワイヤハーネス配索構造の一実施形態を示す図であり、(a)は移動構造物が第一の位置に配置されている時の図、(b)は移動構造物が第二の位置に配置されている時の図である。
図2図1(a)の拡大図である。
図3図1(b)の拡大図である。
図4図3の矢印A方向から見た図である。
図5図2の矢印B方向から見た図である。
図6図4の拡大図である。
図7図5の拡大図である。
図8図6の矢印C方向から見た図である。
図9図7の矢印D方向から見た図である。
図10】プロテクタの平面図である。
図11】プロテクタの斜視図である。
図12図11の矢印E方向から見た図である。
図13図12の所定の平面を水平面に合わせた時の図である。
図14】ハーネスガイド部におけるハーネス本体の移動を示す図であり、(a)はハーネス延在方向を矢印R1~3で示す図、(b)は乗り越えを矢印R4で示す図である。
図15】従来技術のワイヤハーネス配索構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ワイヤハーネス配索構造は、固定構造物に対し所定方向に往復移動可能な移動構造物に固定されるプロテクタと、一端が前記固定構造物側にのび、且つ、他端が移動構造物側の電気的接続部に接続され、且つ、他端側の一部がプロテクタのプロテクタ本体に収容され、且つ、全体が固定構造物及び移動構造物に跨って配索される屈曲可能なハーネス本体とを備えて構成される。ハーネス本体は、固定構造物に対する移動構造物の位置に応じてプロテクタのハーネスガイド部に形成された配置変化部により、この配置変化部での配置を変えながら、且つ、ハーネス中間部に屈曲部分を生じさせながら配索される。ハーネスガイド部の配置変化部には、ハーネスガイド部の延在方向端部位置において、端部中間よりもこの両側の一側端部・他側端部が下がるような、且つ、前記往復移動の途中でハーネス本体が端部中間を乗り越えるような、凹凸の端部形状が形成される。
【実施例
【0025】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のプロテクタ及びワイヤハーネス配索構造の一実施形態を示す図である。また、図2及び図3図1の拡大図、図4及び図5図3及び図2の向きを変えて見た図、図6及び図7図4及び図5の拡大図、図8及び図9図6及び図7の向きを変えてきた図、図10はプロテクタの平面図、図11はプロテクタの斜視図、図12図11の向きを変えて見た図、図13図12の向きを変えて見た図、図14はハーネスガイド部におけるハーネス本体の移動を示す図である。
【0026】
<ワイヤハーネス配索構造21について>
図1において、ワイヤハーネス配索構造21は、例えば自動車の座席(シート)に配索されるワイヤハーネス22の配索に係る構造として採用される。尚、上記座席は一例であるものとし、固定構造物23と、この固定構造物23に対し所定方向(矢印P方向)に往復移動可能な移動構造物24との関係性があれば特に限定されないものとする。本実施例において、上記固定構造物23は自動車の床や、この床に固定される座席用のベース部が該当し、上記移動構造物24は座席(シート)が該当するものとする。移動構造物24を示す二点鎖線は、「座る部分」をイメージしたもので、この「座る部分」が矢印P方向にスライド移動することにより、運転者や搭乗者は足元のスペースを最適に確保することができる。図1(a)は「座る部分」を前に出した(自動車進行方向に出した)、第一の位置の状態を示すものとし、図1(b)は「座る部分」を後に引いた、第二の位置の状態を示すものとする。この他、図1の矢印Pに直交する矢印Qは上下方向を示すものとする。矢印Qにおいては、固定構造物23が移動構造物24よりも図の下側の配置になるものとする。
【0027】
ワイヤハーネス22は、幹線25と、この幹線25から分岐される分岐線26と、幹線25の端末に設けられる図示しない電気接続部材や電気接続箱と、幹線25を固定構造物23に保持するための複数のクリップ27と、分岐線26を移動構造物24に保持するためのプロテクタ28とを備えて構成される。ワイヤハーネス22を構成するプロテクタ28は、ワイヤハーネス配索構造21における特徴的な部材であり、分岐線26の後述するハーネス本体29を円滑に移動させることができるという効果、また、ハーネス本体29との干渉も防止することができるという効果を奏するものである。
【0028】
ワイヤハーネス配索構造21によれば、プロテクタ28に特徴を持たせることにより、移動構造物24を矢印P方向に往復移動させることで、後述するハーネス本体29を図2及び図3に示すように移動させることができる。具体的には、見る方向を変えた図4及び図5を参照すると、ハーネス本体29におけるハーネス中間部30の屈曲部分31の曲率をほぼ変えないように移動させることができる。従って、上記のようにハーネス本体29を円滑に移動させることができるという効果を奏する。ワイヤハーネス配索構造21によれば、曲率をほぼ変えないで移動させることができることから、従来技術のような曲げがきつくなってしまうこともなく、結果、ハーネス本体29とプロテクタ28との干渉を防止することもできるという効果を奏する。
【0029】
以下、ワイヤハーネス22の上記構成について説明をする。また、ワイヤハーネス配索構造21を構成するハーネス本体29と、プロテクタ28についても説明をする。
【0030】
<ワイヤハーネス22の幹線25及び分岐線26について>
図4及び図5において、幹線25は、数多くの電線を束ねて形成される太物の電線束と、この電線束を収容する太物のコルゲートチューブとを備えて構成される(一例であるものとする)。幹線25は、クリップ27を複数箇所設けて所定の経路を保持した状態で配索される。分岐線26は、一端が幹線25から分岐されるハーネス本体29と、この他端(端末)に設けられるコネクタ32とを備えて構成される。ハーネス本体29は、言い換えれば分岐線本体であり、本実施例においては、特許請求の範囲に記載された「ハーネス本体」に相当するものとする。分岐線26の本体であるハーネス本体29は、複数本の電線33と、この電線33を収容する細物のコルゲートチューブ34とを備えて構成される。尚、上記電線33は低電圧用のものであり、導体と絶縁体とを備えて構成される。図示の電線33は、ハーネス本体29の端末側において、例えば二本をテープ巻きしたような状態に形成される。ハーネス本体29は、上記から分かるように、固定構造物23及び移動構造物24(図1参照)に跨って配索される屈曲可能なものが採用される。ハーネス本体29における引用符号30は、上記の通りハーネス中間部を示す。また、引用符号31は屈曲部分を示す。コルゲートチューブ34は、幹線25の分岐部分からプロテクタ28にかけて設けられる。
【0031】
<プロテクタ28について>
図6及び図7において、プロテクタ28は、ワイヤハーネス配索構造21における特徴的な部材であって、移動構造物24(図1参照)に固定される。プロテクタ28は、樹脂成形品であり、ハーネス本体29の一部を図示のように収容・保護することができるように形成される。プロテクタ28は、細長い箱形状のプロテクタ本体35と、このプロテクタ本体35に連続するハーネスガイド部36とを有して図示形状に形成される。プロテクタ28の特徴的な機能としては、固定構造物23(図1参照)に対する移動構造物24の位置に応じてハーネスガイド部36でのハーネス本体29の配置が図6ないし図9に示すように変わることである。また、特徴的な機能としては、ハーネスガイド部36でのハーネス本体29の配置が変わっても、ハーネス中間部30の屈曲部分31の曲率がほぼ変わらない状態でハーネス本体29が移動することである。
【0032】
<プロテクタ本体35について>
図6図7、及び図10において、プロテクタ本体35は、細長い箱形状に形成される。プロテクタ本体35は、収容部37と、カバー38とを有する。収容部27とカバー38は、ヒンジ39を介して連続するように形成される。収容部27とカバー38は、ロック部40により係止される。プロテクタ本体35は、この長手方向の一端及び他端に一端側の導出部41、他端側の導出部42が形成される。一端側の導出部41には、ハーネスガイド部36が連成される。また、他端側の導出部42には、テープ巻き部43が連成される。テープ巻き部43は、電線固定部分として形成される。尚、テープ巻き部43の形状を示すために、図4ないし図7では電線33の図示が一部省略されるものとする。本実施例のプロテクタ本体35は、一端側の向きが中間及び他端側に対し若干傾くような形状に形成される。そのため一端側の導出部41は、傾いた状態に配置される。一端側の導出部41の端部には、ハーネス引き出し口44が円形に形成される。ハーネス本体29は、ハーネス引き出し口44の中心を通る軸(一端側の導出部41の軸)に沿ってプロテクタ本体35から引き出されるようになる。尚、ハーネス引き出し口44には、特に符号を付さないが、コルゲートチューブ34の端部に係合する部分(図11及び図12参照)が形成される。プロテクタ本体35における引用符号45は、移動構造物24(図1参照)に対する固定部を示す。
【0033】
<ハーネスガイド部36について>
図10ないし図13において(必要に応じて図6ないし図9も参照する)、ハーネスガイド部36は、プロテクタ本体35の一端側の導出部41に連続するように形成される。また、ハーネスガイド部36は、一端側の導出部41の軸方向に延在するように形成される。さらに、ハーネスガイド部36は、延在方向端部46となる位置の幅が一端側の導出部41の幅よりも広い、末広がりの形状に形成される。このようなハーネスガイド部36には、配置変化部47が形成される。また、ハーネスガイド部36には、固定脚部48と壁状部49とが形成される。
【0034】
<配置変化部47について>
図10ないし図14において(必要に応じて図6ないし図9も参照する)、配置変化部47は、固定構造物23に対する移動構造物24(図1参照)の位置に応じてハーネス本体29の配置が変わるような部分に形成される。配置変化部47には、ハーネスガイド部36の延在方向端部46の位置において、端部中間50よりもこの両側の一側端部51・他側端部52が下がるような、且つ、移動構造物24の往復移動の途中でハーネス本体29が端部中間50を乗り越えるような、凹凸の端部形状53(図13参照)が形成される。また、配置変化部47には、プロテクタ本体35の一端側の導出部41からのびる、第一配置部54と、第二配置部55と、第三配置部56とが形成される。第二配置部55の両側には、二つの傾斜部57、58が形成される。第一配置部54は、凹凸の端部形状53における一側端部51に向けて長くのびる凹状部分に形成される。また、第二配置部55は、端部中間50に向けて真っ直ぐな平面59でのびる部分に形成される。また、第三配置部56は、凹凸の端部形状53における他側端部52に向けて短くのびる部分に形成される。傾斜部57は、第一配置部54から第二配置部55にかけての斜面部分に形成される。また、傾斜部58は、第三配置部56から第二配置部55にかけての斜面部分に形成される。
【0035】
もう少し詳しく説明すると、第一配置部54は、図14の矢印R1の方向にハーネス本体29を配置する部分に形成される。同様に、第二配置部55は、矢印R2の方向にハーネス本体29を配置する部分に形成される。第三配置部56は、矢印R3の方向にハーネス本体29を配置する部分に形成される。二つの傾斜部57、58は、ハーネス本体29が端部中間50を乗り越える(矢印R4参照)際や、端部中間50から一側端部51又は他側端部52に落ち込む(矢印R4参照)際に摺接する斜面(曲面)に形成される。尚、第一配置部54は、ハーネス本体29が落ち込んだ際に収容されるような状態になり、この時、ソフトな状態で保持することができる部分に形成される。
【0036】
一側端部51は、一端側の導出部41から離れるように配置され、且つ、固定脚部48の近傍に配置される。また、他側端部52は、一端側の導出部41に近い側に配置される。ハーネスガイド部36の延在方向端部46は、一側端部51、端部中間50、他側端部52が異なる位置に配置される。延在方向端部46の少なくとも端部中間50には、ハーネス本体29が摺接するハーネス摺接部60が形成される。このハーネス摺接部60は、面取り形状又は曲面形状に形成される。以上のような配置変化部47は、この表面が鏡面61となる状態に形成される。尚、裏面側は、補強用のリブ62(図9参照)が多数形成される。
【0037】
<固定脚部48及び壁状部49について>
図10ないし図13において、固定脚部48は、移動構造物24(図1参照)に対する固定部分として形成される。壁状部49は、固定脚部48から一端側の導出部41にかけて形成されるガイド側部63に配置される。壁状部49は、ハーネス本体29の配置規制と、配置変化部47の補強とを兼ねた部分に形成される。壁状部49は、本実施例において、断面コ字状(断面略π字状)に形成される。
【0038】
<作用・効果について>
以上、図1ないし図14を参照しながら説明してきたように、本発明の一実施形態であるプロテクタ28及びワイヤハーネス配索構造21によれば、ハーネスガイド部36に配置変化部47が形成されることから、固定構造物23に対する移動構造物24の位置に応じてハーネスガイド部36でのハーネス本体29の配置を変えていくことができる。従って、固定構造物23及び移動構造物24に跨って配索されるハーネス本体29の円滑な移動を、ハーネスガイド部36の配置変化部47にて実現することができる。
【0039】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
21…ワイヤハーネス配索構造、 22…ワイヤハーネス、 23…固定構造物、 24…移動構造物、 25…幹線、 26…分岐線、 27…クリップ、 28…プロテクタ、 29…ハーネス本体、 30…ハーネス中間部、 31…屈曲部分、 32…コネクタ、 33…電線、 34…コルゲートチューブ、 35…プロテクタ本体、 36…ハーネスガイド部、 37…収容部、 38…カバー、 39…ヒンジ、 40…ロック部、 41…一端側の導出部、 42…他端側の導出部、 43…テープ巻き部、 44…ハーネス引き出し口、 45…固定部、 46…延在方向端部、 47…配置変化部、 48…固定脚部、 49…壁状部、 50…端部中間、 51…一側端部、 52…他側端部、 53…凹凸の端部形状、 54…第一配置部、 55…第二配置部、 56…第三配置部、 57、58…傾斜部、 59…平面、 60…ハーネス摺接部、 61…鏡面、 62…リブ、 63…ガイド側部
図1
図2
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