IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハイレックスコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-昇降装置 図1
  • 特許-昇降装置 図2
  • 特許-昇降装置 図3
  • 特許-昇降装置 図4
  • 特許-昇降装置 図5
  • 特許-昇降装置 図6
  • 特許-昇降装置 図7
  • 特許-昇降装置 図8
  • 特許-昇降装置 図9
  • 特許-昇降装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
A61H33/00 310N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020170715
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062593
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 龍雄
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-175664(JP,A)
【文献】特開2013-027671(JP,A)
【文献】特開2003-052477(JP,A)
【文献】特開2016-123421(JP,A)
【文献】特開平09-285499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00-14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛部材と、
浴槽内に設置されて前記腰掛部材を昇降させる昇降機構と、
浴槽の縁の上側から浴槽の下側へ延び、前記腰掛部材の昇降をガイドするガイド部材と
を備えた昇降装置であって、
前記ガイド部材は、前記浴槽の上下方向に垂直な方向のうち、前記浴槽の縁が延在する延在方向に離間して設けられた第1ガイド部および第2ガイド部を備え、
前記腰掛部材は、入浴者の前方側となる前記延在方向の一方側に設けられた前記第1ガイド部にガイドされる第1移動体と、入浴者の後方側となる前記延在方向の他方側に設けられた前記第2ガイド部にガイドされる第2移動体とを備え、
前記腰掛部材は、前記ガイド部材に片持ち式に支持されており、
前記腰掛部材が降下した降下位置では、前記腰掛部材が入浴者の前方側となる前記延在方向の一方側で高くなり、入浴者の後方側となる前記延在方向の他方側で低くなるように、前記腰掛部材の降下時に、前記第1移動体が前記第2移動体よりも先に停止し、前記第1移動体が停止した後、前記第2移動体がさらに降下するように構成されている、昇降装置。
【請求項2】
前記第1ガイド部および前記第2ガイド部のそれぞれが、前記浴槽の縁の上側から浴槽の下側へ延びる棒状部材であり、
前記第1移動体は、前記第1ガイド部が挿通された状態で、前記第1ガイド部に対して移動する筒状体であり、
前記第2移動体は、前記第2ガイド部が挿通された状態で、前記第2ガイド部に対して移動する筒状体である、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記第1ガイド部の下端近傍に、前記第1移動体と当接可能な第1停止部を備え、
前記第2ガイド部の下端近傍に、前記第2移動体と当接可能な第2停止部を備え、
前記第1停止部は、前記第2停止部により停止する前記第2移動体よりも前記第1移動体を上下方向で高い位置で停止させる、請求項1または2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記第1ガイド部の下端に、前記第1ガイド部の下端の外周を少なくとも部分的に覆い、前記第1停止部を備えている停止部材を有している、請求項3に記載の昇降装置。
【請求項5】
前記ガイド部材が、前記第1ガイド部の下端および前記第2ガイド部の下端を繋ぐ、板状の基部を有し、
前記昇降機構は、流体が供給および排出されることにより、前記腰掛部材を昇降させる駆動部を備え、
前記駆動部は、前記基部と前記腰掛部材との間に、前記流体が充填される充填部を備え、
前記充填部に前記流体が供給されることにより、前記充填部が前記上下方向で伸長して前記腰掛部材を上昇させ、前記充填部から前記流体が排出されることにより、前記充填部が前記上下方向で収縮して、前記腰掛部材を降下させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体力が低下した高齢者、身体障害者等の、入浴に介護・支援等の手助けや補助が必要な入浴者にとって、浴槽外から浴槽内に入り、浴槽に浸かって、再び、浴槽外に出るといった入浴の動作は大きな負担となる。そのため、入浴の動作の負担を軽減する昇降装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この昇降装置は、腰掛部材と、浴槽内に設置されて腰掛部材を昇降させる昇降機構と、浴槽の縁の上側から浴槽の下側へ延びる、腰掛部材の昇降をガイドするガイド部とを備えている。ガイド部は、浴槽の縁の長手方向に離間して一対設けられ、腰掛部材に設けられた一対の移動体(補助部)が、一対のガイド部に案内されて、腰掛部材が昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-175664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
入浴者の入浴中、入浴者は、浴槽の縁の長手方向が入浴者の前後方向となるように腰掛部材に着座している。特許文献1の場合、背凭れ部材があるため、入浴者は姿勢を安定させたまま入浴が可能である。しかし、例えば、背凭れ部材を用いずに、入浴者の後方側にある浴槽の壁に向かって、入浴者が後方に背中を倒して浴槽の壁に凭れかかる場合、入浴者の臀部が腰掛部材上で前方へと滑りやすくなってしまう。
【0006】
また、特許文献1の昇降装置では、腰掛部材が、一対の移動体を介して一対のガイド部に片持ち式に支持されている。そして、一対のガイド部と一対の移動体との間には、移動体が円滑に移動できるように、所定のクリアランスが設けられている。そのため、腰掛部材が浴槽の下側へ移動して、片持ち式に支持された腰掛部材に入浴者の体重によって荷重が加わると、腰掛部材のガイド部から遠い側の端部が下がるように、腰掛部材が傾斜してしまう。この場合、入浴者の左右のいずれか(ガイド部から遠い側)が下がるような姿勢となってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、片持ち式にガイド部に支持される腰掛部材を有する昇降装置において、入浴中の入浴者の前方側が高くなるように腰掛部材を傾斜させて、入浴者が前方へ滑りにくくするとともに、入浴者の左右方向の傾斜を抑制することができる、昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の昇降装置は、腰掛部材と、浴槽内に設置されて前記腰掛部材を昇降させる昇降機構と、浴槽の縁の上側から浴槽の下側へ延び、前記腰掛部材の昇降をガイドするガイド部材とを備えた昇降装置であって、前記ガイド部材は、前記浴槽の上下方向に垂直な方向のうち、前記浴槽の縁が延在する延在方向に離間して設けられた第1ガイド部および第2ガイド部を備え、前記腰掛部材は、前記延在方向の一方側に設けられた前記第1ガイド部にガイドされる第1移動体と、前記延在方向の他方側に設けられた前記第2ガイド部にガイドされる第2移動体とを備え、前記腰掛部材は、前記ガイド部材に片持ち式に支持されており、前記腰掛部材が降下した降下位置では、前記腰掛部材が前記延在方向の一方側で高くなり、前記延在方向の他方側で低くなるように、前記腰掛部材の降下時に、前記第1移動体が前記第2移動体よりも先に停止し、前記第1移動体が停止した後、前記第2移動体がさらに降下するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、片持ち式にガイド部に支持される腰掛部材を有する昇降装置において、入浴中の入浴者の前方側が高くなるように腰掛部材を傾斜させて、入浴者が前方へ滑りにくくするとともに、入浴者の左右方向の傾斜を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の昇降装置が浴槽内に設置された状態を示す斜視図である。
図2図1の昇降装置を前方側から見た図である。
図3図2の昇降装置の駆動部が伸長し、腰掛部材が上昇した状態を示す図である。
図4図1の昇降装置が降下位置に位置し、入浴者が浴槽の壁部に凭れかかった状態での入浴者の入浴姿勢を示す斜視図である。
図5】停止部材が設けられていない参考例の昇降装置を、入浴者の側方側から見た概略図である。
図6図5に示される参考例の昇降装置を、入浴者の前方側から見た概略図である。
図7図6に示される状態から参考例の昇降装置が降下し、腰掛部材が傾斜した状態を示す概略図である。
図8】停止部材が設けられておらず、腰掛部材が傾斜した状態の参考例の昇降装置を、入浴者の前方側から見た図である。
図9】本実施形態の昇降装置を、入浴者の側方側から見た概略図である。
図10図9に示される状態から第1移動体および第2移動体が降下して、腰掛部材が前後方向に傾斜した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の駆動装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の駆動装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1図3に示されるように、本実施形態の昇降装置1は、腰掛部材2と、浴槽Ba内に設置されて腰掛部材2を昇降させる昇降機構3と、浴槽Baの縁Eの上側から浴槽Baの下側へ延び、腰掛部材2の昇降をガイドするガイド部材4とを備えている。本実施形態の昇降装置1はさらに、任意の構成として、腰掛部材2の後方側に亘って延びる背凭れ部材5と、背凭れ部材5を支持する支持部材6とを備えている。
【0013】
昇降装置1は、浴槽Ba内に設置されて用いられ、図2および図3に示されるように、腰掛部材2を浴槽Baの上側と下側との間で昇降させることにより、入浴者の入浴の支援等を行う。本実施形態では、昇降装置1は、浴槽Baに取り付けられ、図3に示されるように、腰掛部材2を浴槽Baの縁Eの上側まで上昇させて、入浴者を腰掛部材2に乗せる。入浴者が腰掛部材2に乗った後は、腰掛部材2を、図2に示されるように、浴槽Baの底部Bに向かって降下させて、入浴者の入浴が行われる。入浴者の入浴が完了すると、再び腰掛部材2を上昇させて、入浴者を浴槽Baから出す。なお、本明細書において、「上側」という場合は、浴槽Baの縁E側(上縁側)であり、「下側」という場合は、浴槽Baの底部B側である。また、本実施形態では、腰掛部材2の座面の中央部に対して背凭れ部材5が設けられている側を「後」、腰掛部材2の座面の中央部に対して背凭れ部材5が設けられている側とは反対の側を「前」と呼ぶ。一般に、入浴者は、昇降装置1が取り付けられる浴槽Baの壁部に入浴者の体の中心線(人体の正中線)が略平行となるように入浴する。この腰掛部材2の昇降時または入浴中の姿勢における人体の正面側が一般に「前」、背中側が「後」となる。また、昇降装置1において、「側方」とは、上述した「前」および「後」を結ぶ前後方向および上下方向の両方に垂直な方向側をいう。なお、上述した「上側」、「下側」、「前」、「後」、「側方」という用語は、基準となる部材に対する相対的な方向性を示すために用いているに過ぎず、方向や角度を限定するものではない。
【0014】
本実施形態では、昇降装置1は、図1図3に示されるように、浴槽Baの縁Eに取り付けられる取付部Aを有している。取付部Aは、昇降装置1を浴槽Baに取り付けることができれば、その構造は特に限定されない。本実施形態では、取付部Aは、図2および図3に示されるように、浴槽Baの縁Eを跨いで、浴槽Baの内面と外面とを挟み込むようにして浴槽Baに取り付けられる。
【0015】
昇降機構3は、腰掛部材2を昇降させて、入浴者等の昇降対象を昇降させる機構である。昇降機構3の形状および構造は、腰掛部材2を昇降させることができれば、特に限定されない。本実施形態では、図1図3に示されるように、昇降機構3は、流体が供給および排出されることにより、腰掛部材2を昇降させる駆動部31を備え、駆動部31は、後述する基部43と腰掛部材2との間に、流体が充填される充填部31aを備えている。本実施形態では、昇降機構3は、充填部31aに流体が供給されることにより、充填部31aが上下方向で伸長して腰掛部材2を上昇させ、充填部31aから流体が排出されることにより、充填部31aが上下方向で収縮して、腰掛部材2を降下させる。なお、本実施形態では、昇降機構3は、流体を用いて腰掛部材2を昇降させる流体式昇降機構として示されているが、昇降機構3は、腰掛部材2の下側に設けられたリンク機構などの動力伝達部を動作させて腰掛部材2を昇降させる機械式昇降機構であってもよい。また、昇降機構3は、流体と機械的な動力伝達部の両方を用いたものとしても構わない。
【0016】
駆動部31は、蛇口やポンプ等、流体を供給する流体供給源(図示せず)に、ホース、パイプ、チューブ等の供給路7(図1参照)を介して接続され、駆動部31に流体が供給されることにより、駆動部31の充填部31aが伸長し、腰掛部材2が上昇する。また、駆動部31は、ホース、パイプ、チューブ等の排出路8(図1参照)に接続され、排出路8から流体を排出することにより充填部31aが収縮して、腰掛部材2が降下する。
【0017】
本実施形態では、駆動部31の充填部31aは、図2および図3に示されるように、山部と谷部とを交互に有する蛇腹部を有している。また、本実施形態では、駆動部31は、駆動部31の軸X方向(図3参照)の両端(蛇腹部の上下方向の両端)が閉鎖され、駆動部31の充填部31aの内部空間が画定される。本実施形態では、図2および図3に示されるように、駆動部31への流体の充填および排出により、充填部31aの蛇腹部が伸縮し、駆動部31の軸X方向の長さが変動し、腰掛部材2を昇降移動させる。
【0018】
ガイド部材4は、腰掛部材2の昇降をガイドする。ガイド部材4は、昇降装置1が浴槽Baに設置された状態で、浴槽Baの上側から浴槽Baの下側へ延びている。ガイド部材4の材料は特に限定されないが、ガイド部材4は、腰掛部材2や腰掛部材2に加わる荷重を支持するために所定の剛性を有していることが好ましい。
【0019】
本実施形態では、ガイド部材4は、図1に示されるように、浴槽Baの上下方向に垂直な方向のうち、浴槽Baの縁Eが延在する延在方向D1に離間して設けられた第1ガイド部41および第2ガイド部42を備えている。より具体的には、ガイド部材4は、第1ガイド部41と、第2ガイド部42と、第1ガイド部41の下端および第2ガイド部42の下端を繋ぐ、板状の基部43とを有している。
【0020】
第1ガイド部41は、後述する腰掛部材2の第1移動体22aを上下方向にガイドする部分であり、第2ガイド部42とともに、腰掛部材2を上下方向(昇降方向)にガイドする。第1ガイド部41の構造は、第1移動体22aを上下方向にガイドすることができれば特に限定されない。本実施形態では、第1ガイド部41は、浴槽Baの縁Eの上側から浴槽Baの下側へ延びる棒状部材である。具体的には、第1ガイド部41は、上下方向に延びる細長い略円筒または略円柱状に形成されている。しかし、第1ガイド部41は、第1移動体22aをガイドすることができれば、浴槽Baの内壁に沿って上下方向に延びるガイド溝やガイド突条を有する板状部材やレール状の部材であってもよい。本実施形態では、第1ガイド部41は、図1および図2に示されるように、浴槽Baの底部Bから縁Eに向かって、鉛直方向に対して傾斜して延びているが、第1ガイド部41が延びる方向は、浴槽Ba内で腰掛部材2を上下方向に昇降させることができるように、第1移動体22aをガイドすることができれば、図示する方向とは異なる方向に延びていてもよく、例えば、鉛直方向(底部Bに垂直な方向)に延びていてもよい。
【0021】
第2ガイド部42は、後述する腰掛部材2の第2移動体22bを上下方向にガイドする部分であり、第1ガイド部41とともに、腰掛部材2を上下方向(昇降方向)にガイドする。第2ガイド部42は、第1ガイド部41と略平行に延在方向D1に離間して設けられている。第1ガイド部41と第2ガイド部42とが延在方向D1に離間していることにより、腰掛部材が降下位置に移動したときに安定した姿勢で保持される。第2ガイド部42の構造は、第2移動体22bを上下方向にガイドすることができれば特に限定されない。本実施形態では、第2ガイド部42は、浴槽Baの縁Eの上側から浴槽Baの下側へ延びる棒状部材である。具体的には、第2ガイド部42は、上下方向に延びる細長い略円筒または略円柱状に形成されている。しかし、第2ガイド部42は、第2移動体22bをガイドすることができれば、浴槽Baの内壁に沿って上下方向に延びるガイド溝やガイド突条を有する板状部材やレール状の部材であってもよい。本実施形態では、第2ガイド部42は、図1および図2に示されるように、浴槽Baの底部Bから縁Eに向かって、鉛直方向に対して傾斜して延びているが、第2ガイド部42が延びる方向は、浴槽Ba内で腰掛部材2を上下方向に昇降させることができるように、第2移動体22bをガイドすることができれば、図示する方向とは異なる方向に延びていてもよく、例えば、鉛直方向(底部Bに垂直な方向)に延びていてもよい。
【0022】
第1ガイド部41および第2ガイド部42は、互いに別部材として設けられていてもよいし、例えば1つの板状部材などの1つの部材に設けられた2つのガイド部分(ガイド溝など)であってもよい。なお、ガイド部材4は、第1ガイド部41および第2ガイド部42に加えて、さらなるガイド部を有していてもよい。
【0023】
なお、第1ガイド部41および第2ガイド部42(ガイド部材4)は、図1図3に示されるように、浴槽Baに設置された状態で昇降装置1の一方側、すなわち、入浴者の両側方のうちの一方側(昇降装置1が取り付けられている浴槽Baの壁部側)のみに設けられている。したがって、昇降装置1の他方側(入浴者の両側方のうちの他方側)にはガイド部は設けられておらず、腰掛部材2はガイド部材4に片持ち式に支持されている。
【0024】
基部43は、昇降装置1が浴槽Baに設置されたときに、浴槽Baの底部B側に位置する板状の部位である。基部43は、第1ガイド部41および第2ガイド部42の下端において、第1ガイド部41および第2ガイド部42を繋いでいる。基部43は、充填部31aの下方に位置しており、充填部31aの下端を閉鎖している。基部43は、供給路7および排出路8と充填部31aの内部とを連通する連通部を有しており、充填部31aへの流体の供給および排出を可能にしている。なお、供給路7および排出路8は、基部43を介さずに、充填部31aに直接接続されていてもよい。
【0025】
腰掛部材2は、人が着座可能な部材である。本実施形態では、浴槽Baに入る入浴者が腰掛部材2に着座する。腰掛部材2の形状および構造は、人が着座可能であれば特に限定されない。本実施形態では、腰掛部材2は、図1に示されるように、円形の着座面を有するように構成されているが、他の形状であってもよい。腰掛部材2は、腰掛部材2の座面に略垂直な軸周りに回転するように構成されてもよい。この場合、腰掛部材2を回転させることにより、入浴者が体の向きを容易に変更することができる。
【0026】
本実施形態では、腰掛部材2は、図1に示されるように、浴槽Baの縁Eの延在方向D1の一方側に設けられた第1ガイド部41にガイドされる第1移動体22aと、延在方向D1の他方側に設けられた第2ガイド部42にガイドされる第2移動体22bとを備えている。また、本実施形態では、腰掛部材2は、図1図3に示されるように、腰掛部21と、第1移動体22aおよび第2移動体22bと、腰掛部21と第1移動体22aおよび第2移動体22bとを接続する接続部23とを有している。また、接続部23には、背凭れ部材5を支持する支持部材6が接続されている。
【0027】
腰掛部21は、昇降機構3により昇降する部材であり、入浴者が座る座面を構成する。本実施形態では、腰掛部21は、駆動部31の上部に設けられ、充填部31aの上部を閉鎖している。
【0028】
接続部23は、腰掛部21と第1移動体22aおよび第2移動体22bとを直接または間接的に接続する。接続部23の形状および構造は、腰掛部21と第1移動体22aおよび第2移動体22bとを接続することができれば、特に限定されない。本実施形態では、接続部23は、図1図3に示されるように、第1移動体22aおよび第2移動体22bから浴槽Baの内面に対して略垂直方向(水平方向)に延びるアーム状の部材である。アーム状の接続部23の側面に腰掛部21が接続され、アーム状の接続部23の端部に第1移動体22aおよび第2移動体22bが接続されている。接続部23は、本実施形態では、昇降機構3による腰掛部21の昇降移動に伴って、腰掛部21および第1移動体22aおよび第2移動体22bとともに昇降移動する。
【0029】
支持部材6は背凭れ部材5を支持する。本実施形態では、支持部材6は、腰掛部材2に直接または間接的に接続され、腰掛部材2の昇降に伴って、腰掛部材2とともに昇降するように構成されている。本実施形態では、支持部材6は、接続部23を介して腰掛部材2に接続されている。
【0030】
支持部材6は、本実施形態では、図1図3に示されるように、腰掛部材2から上方向に延びている。本実施形態では、支持部材6が腰掛部材2から上方向に延びていることにより、腰掛部材2の座面より上の位置に背凭れ部材5を位置させ、背凭れ部材5に入浴者が背中を凭れかけることができる。支持部材6の形状は、背凭れ部材5を支持することができれば特に限定されない。本実施形態では、支持部材6は、図1に示されるように、腰掛部21の座面の中央部を挟んで、腰掛部21の前側および後側に互いに略平行に設けられた一対の接続部23に繋がって設けられ、腰掛部材2に対して上方向に延びる一対の支持部61、62を有している。本実施形態では、一方の支持部61は、接続部23との接続箇所から湾曲して上方に向かって延びる立設部61aと、立設部61aの上方において、後方側に向かって延びる延在部61bとを有している。延在部61bには、背凭れ部材5が直接または間接的に接続される。他方の支持部62は、接続部23との接続箇所から湾曲して上方に向かって延びる立設部62aと、立設部62aの上方において、前方側に向かって延びる延在部62bとを有している。延在部62bには、支持部材6の前方側に設けられた持ち手Hが直接または間接的に接続される。
【0031】
背凭れ部材5は、例えば、入浴者が昇降装置1により昇降されるときや、入浴中などに、入浴者が背中側から凭れかかったときに、入浴者の背中を支持する。背凭れ部材5は、図1に示されるように、腰掛部材2の後方側に配置される。なお、腰掛部材2の後方側とは、腰掛部材2の座面の中央部に対して後方側であることをいう。背凭れ部材5は、入浴者の背凭れとして機能する位置に設けられていればよい。背凭れ部材5は、背凭れとして機能するだけでなく、後述するように支持部材6に対して回転し、入浴者の背中側から外れた位置へと移動することができるように構成されている。本実施形態では、背凭れ部材5は、支持部材6に対して揺動可能に構成されており、背凭れとなる位置と腕置きとなる位置(図4参照)へと移動できるように構成されている。
【0032】
本実施形態では、図1に示されるように、支持部材6には、背凭れ部材5の他に、持ち手Hが接続されている。持ち手Hは、腰掛部材2の昇降時や入浴中に入浴者により把持される。本実施形態では、持ち手Hは、一対の支持部61、62のうち、他方の支持部62から延びている。持ち手Hは、背凭れ部材5と同様に、支持部材6に対して揺動するように構成することができる。
【0033】
第1移動体22aは、昇降機構3によって腰掛部材2が昇降する際に、第1ガイド部41にガイドされ、腰掛部材2とともに昇降移動する。第1移動体22aは、接続部23を介して腰掛部材2の腰掛部21に接続されている。第1移動体22aの形状および構造は、第1移動体22aがガイドされる第1ガイド部41の形状および構造に応じて適宜変更が可能である。本実施形態では、第1移動体22aは、第1ガイド部41が挿通された状態で、第1ガイド部41に対して移動する筒状体である。より具体的には、第1移動体22aは、長手方向に垂直な断面が円形である棒状の第1ガイド部41に挿通され、第1移動体22aの内面の断面形状が円形となるように構成されている。なお、この場合、第1移動体22aの外面の断面形状は特に限定されず、円形であっても、多角形など円形以外の形状であってもよい。第1移動体22aの内面と第1ガイド部41との間には、第1移動体22aが第1ガイド部41に対して円滑に移動できるように、所定のクリアランスが形成されている。
【0034】
第2移動体22bは、昇降機構3によって腰掛部材2が昇降する際に、第2ガイド部42にガイドされ、腰掛部材2とともに昇降移動する。第2移動体22bは、腰掛部材2の昇降時に第1移動体22aと同じ高さで移動する。第2移動体22bは、接続部23を介して腰掛部材2の腰掛部21に接続されている。第2移動体22bの形状および構造は、第2移動体22bがガイドされる第2ガイド部42の形状および構造に応じて適宜変更が可能である。本実施形態では、第2移動体22bは、第2ガイド部42が挿通された状態で、第2ガイド部42に対して移動する筒状体である。より具体的には、第2移動体22bは、長手方向に垂直な断面が円形である棒状の第2ガイド部42に挿通され、第2移動体22bの内面の断面形状が円形となるように構成されている。なお、この場合、第2移動体22bの外面の断面形状は特に限定されず、円形であっても、多角形など円形以外の形状であってもよい。第2移動体22bの内面と第2ガイド部42との間には、第2移動体22bが第2ガイド部42に対して円滑に移動できるようにするために、所定のクリアランスが形成されている。
【0035】
本実施形態の昇降装置1は、図1図3に示されるように、昇降装置1を浴槽Baに取り付けた後、駆動部31を駆動させて、腰掛部材2を上昇させる。本実施形態では、駆動部31の充填部31aに流体を流入させることにより腰掛部材2が上昇する。図3に示されるように、腰掛部材2が上昇位置にある状態で、入浴者を腰掛部材2に着座させた後、駆動部31を駆動させて、腰掛部材2を降下させる。具体的には、駆動部31の充填部31aから排出路8を経由して流体を排出することによって、腰掛部材2が降下する。充填部31aからの流体の排出は、排出路8への流路を閉鎖する排出弁を操作する操作部(図示せず)によって行うことができる。なお、排出弁を操作する操作部は、腰掛部材2が上昇位置に移動したときに、腰掛部材2(例えば第1移動体22aまたは第2移動体22b)に当接することで操作されるように構成されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、腰掛部材2が降下した降下位置では、腰掛部材2が浴槽Baの縁Eの延在方向D1の一方側で高くなり、延在方向D1の他方側で低くなるように、腰掛部材2の降下時に、第1移動体22aが第2移動体22bよりも先に停止し、第1移動体22aが停止した後、第2移動体22bがさらに降下するように構成されている。これにより、詳細は後述するが、腰掛部材2が延在方向D1の一方側、すなわち入浴者の前方側で高くなり、延在方向D1の他方側、すなわち入浴者の後方側で低くなるように腰掛部材2を傾斜させて、入浴者が前方へ滑ることを抑制するとともに、入浴者の左右方向の傾斜を抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、図1図3図9および図10に示されるように、第1ガイド部41の下端近傍に、第1移動体22aと当接可能な第1停止部S1を備え、第2ガイド部42の下端近傍に、第2移動体22bと当接可能な第2停止部S2を備えている。本実施形態では、第1停止部S1は、第2停止部S2により停止する第2移動体22bよりも第1移動体22aを上下方向で高い位置で停止させる。これにより、腰掛部材2の降下時に、第1移動体22aが第2移動体22bよりも先に停止し(図9の二点鎖線参照)、第1移動体22aが停止した後、第2移動体22bがさらに降下する。本実施形態では、第1停止部S1は、図9および図10に示されるように、第2停止部S2よりも上下方向で高い位置に設けられており、これにより、第1移動体22aを第2移動体22bよりも上下方向で高い位置で停止させている。
【0038】
第1ガイド部41の下端近傍とは、第1ガイド部41自体の下端領域だけでなく、第1ガイド部41の下端領域の周辺に位置する第1ガイド部41とは別の部材・部位であってもよい。同様に、第2ガイド部42の下端近傍とは、第2ガイド部42自体の下端領域だけでなく、第2ガイド部42の下端領域の周辺に位置する第2ガイド部42とは別の部材・部位であってもよい。
【0039】
第1停止部S1は、第1移動体22aと当接して、第1移動体22aを所定の位置で停止させる。第1停止部S1は、第2停止部S2により停止する第2移動体22bよりも第1移動体22aが上下方向で高い位置(上側)で停止する位置に設けられる。本実施形態では、昇降装置1は、図9および図10に示されるように、第1ガイド部41の下端に、第1ガイド部41の下端の外周を少なくとも部分的に覆う停止部材9を有しており、この停止部材9に第1停止部S1が設けられている。
【0040】
なお、第1停止部S1は、第2停止部S2により停止する第2移動体22bよりも第1移動体22aが上下方向で高い位置(上側)で停止するように設けられていれば、停止部材9に設けられる必要はない。例えば、第1停止部は、第1ガイド部41の外周から径方向外側に突出し、第1移動体22aが上下方向の下側に移動したときに、第1移動体22aと当接する突出部であってもよい。また、第1停止部は、第1ガイド部41ではなく、基部43に設けられていてもよい。例えば、第1停止部は、第1ガイド部41の下端の近傍の部位で基部43の表面から上側に突出して、第1移動体22aを第2移動体22bよりも上側で停止させる突出部であってもよい。また、昇降装置1は、例えば、第1停止部S1と第2停止部S2とを上下方向で同じ位置とするとともに、第1移動体22aを第2移動体22bに対して上下方向で下側に長くして、第2移動体22bが第2停止部S2に当接して停止するよりも先に第1移動体22aが第1停止部S1に当接して停止するように構成されていてもよい。また、本実施形態では、第1停止部S1は、図2および図10に示されるように、第1移動体22aの下端と当接して、第1移動体22aを停止させているが、第1停止部は、第1移動体22aの下端以外の部位と当接してもよい。
【0041】
停止部材9は、本実施形態では、第1ガイド部41の下端に、第1ガイド部41の外周を部分的に覆うように設けられている。停止部材9の形状は、第1停止部S1を有し、第1ガイド部41の外周を部分的に覆うように設けられていれば、特に限定されない。停止部材9は、本実施形態では、第1停止部S1を上端に有する円筒状に形成されているが、第1ガイド部41の延在方向に垂直な断面がC字状など、第1ガイド部41の外周の一部を覆うように構成されていてもよい。本実施形態では、停止部材9が第1ガイド部41の下端の外周を覆う円筒状に形成され、第1移動体22aが円筒状に形成されていることにより、第1移動体22aの下端と停止部材9の第1停止部S1との間の当接時の衝撃が1か所に集中せずに周方向に分散される。したがって、停止部材9および第1移動体22aの破損が抑制される。また、停止部材9が円筒状や略C字状など、第1ガイド部41に挿通可能な形状である場合、第1ガイド部41の上端または下端から容易に取り付けることができる。
【0042】
第2停止部S2は、第2移動体22bと当接して、第2移動体22bを所定の位置で停止させる。第2停止部S2は、第1停止部S1により停止する第1移動体22aよりも第2移動体22bが上下方向で低い位置(下側)で停止する位置に設けられる。本実施形態では、第2停止部S2は、図9および図10に示されるように、基部43の表面によって構成されている。しかし、第2停止部は、第1停止部S1により停止する第1移動体22aよりも第2移動体22bが上下方向で低い位置(下側)で停止するように構成されていれば、基部43ではなく、第2ガイド部42に設けられていてもよい。また、本実施形態では、第2停止部S2は、図10に示されるように、第2移動体22bの下端と当接して、第2移動体22bを停止させているが、第2停止部は、第2移動体22bの下端以外の部位と当接してもよい。また、例えば、第2停止部は、基部43に下側に凹んだ凹部を形成して、第1移動体22aの停止位置に対して、第2移動体22bの停止位置をより低い位置とすることにより、第1移動体22aが第2移動体22bよりも先に停止するように構成してもよい。
【0043】
次に、本実施形態の実施例に基づいて、本実施形態の昇降装置1の効果をより詳細に説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明により、本発明の昇降装置が限定されるものではない。
【0044】
まず、図1および図2に示されるように、駆動部31が収縮した状態の昇降装置1を浴槽Baに設置する。本実施形態では、取付部Aを浴槽Baの縁Eに取り付けることにより、昇降装置1が浴槽Baに取り付けられている。
【0045】
昇降装置1が浴槽Baに取り付けられた状態で、蛇口などの流体供給源を操作して水を昇降装置1に向けて供給すると、水は供給路7を経由して駆動部31の充填部31aに供給される。充填部31aに水が供給されると、充填部31aに供給された水により駆動部31の充填部31aが伸長し、腰掛部材2が上昇する。腰掛部材2の上昇中、腰掛部21に接続部23を介して接続された第1移動体22aおよび第2移動体22bは、第1ガイド部41および第2ガイド部42のそれぞれに沿って上昇する。
【0046】
図3に示されるように、腰掛部材2が上昇して上昇位置で停止すると、入浴者を腰掛部材2に乗せる準備が完了する。入浴者が腰掛部材2に乗り、入浴準備が完了すると、入浴者が浴槽Ba内のお湯に浸かるために、腰掛部材2を降下させる。腰掛部材2を降下させるためには、入浴者または入浴を補助する補助者が、図示しない操作部を操作して、駆動部31の充填部31a内の水を排出路8から排出する。これにより、駆動部31の充填部31aの水は、腰掛部材2側からの入浴者の体重による圧力により、排出路8を経由して外部に排出されて、腰掛部材2が降下する(図1図2および図4参照)。
【0047】
腰掛部材2が降下して、入浴者が浴槽Baの底部B側まで移動して入浴姿勢になると、図4に示されるように、昇降装置1の背凭れ部材5を入浴者の後部から外れるように移動させて、入浴者が浴槽Baの壁部に凭れかかるような姿勢になる場合がある。入浴者がこのような姿勢になった場合に、図5図8に概略的に示された従来の構造(以下、参考例という)を有する昇降装置10の場合、入浴者の臀部が前方に滑りやすくなり、腰掛部材20のガイド部材40から遠い側の端部が下がるように、腰掛部材20が傾斜してしまう場合がある。この点を、図5図8に示される参考例を用いて説明する。図5において、右側が入浴者(二点鎖線で示されている)の前方であり、左側が入浴者の後方である。図6および図7においては、図の左側が入浴者(二点鎖線で示されている)の右側、図の右側が入浴者の左側である。なお、図5図7においては、駆動部は省略している。
【0048】
参考例の昇降装置10では、図5に示されるように、腰掛部材20の降下位置において、本実施形態の腰掛部材2とは異なり、第1移動体220aと第2移動体220bとが同じ高さで停止し、腰掛部材20の前側(図5において右側)と後側(図5において左側)との高さがほぼ同じとなっている。そのため、腰掛部材20には、入浴者の臀部が滑りにくくなる傾斜はなく、入浴者の臀部が腰掛部材20上で前方へと滑りやすい。また、図5に示されるように、第1移動体220aと第1ガイド部410との間、および、第2移動体220bと第2ガイド部420との間には、所定のクリアランスが設けられている。このクリアランスが原因で、図6に示される状態から図7に示される状態へと腰掛部材20が浴槽Baの底部Bまで移動したときに、片持ち式に支持された腰掛部材20は、図7および図8に示されるように、上述したクリアランスを無くすように傾く。そのため、腰掛部材20の傾きにより、腰掛部材20上の入浴者の姿勢は、図7および図8において右側に倒れる方向に傾き、入浴中の快適性が低下する。
【0049】
本実施形態では、図9に示されるように、腰掛部材2の昇降時には、第1移動体22aと第2移動体22bとは同じ高さで移動する。これにより、入浴者は水平な腰掛部材2上で昇降するので、昇降時に不快感はない。なお、本実施形態では、腰掛部材2の昇降中は、腰掛部材2は内部に水が充填された充填部31aに支持されているので、腰掛部材2が片持ち式に支持されていても腰掛部材2の傾きは抑制されている。
【0050】
腰掛部材2が浴槽Baの底部B側まで移動すると、まず入浴者の前方側の第1移動体22aが、図9の二点鎖線に示されるように、第1停止部S1と当接して停止する。ここで、第1移動体22aと第1ガイド部41との間、および、第2移動体22bと第2ガイド部42との間には、所定のクリアランスが設けられている。この所定のクリアランスが設けられていることにより、第1移動体22aは第1ガイド部41に対して傾斜可能であり、第2移動体22bは第2ガイド部42に対して傾斜可能となる。この傾斜可能なクリアランスの分、第1移動体22aが第1停止部S1と当接して停止した後に、第2移動体22bは第1移動体22aよりも浴槽Baの下側の位置へ移動することが可能となる。したがって、入浴者の後方側の第2移動体22bは、第1移動体22aよりも下側の位置まで移動することができ、第2移動体22bは第2停止部S2と当接して停止する(図10参照)。これにより、図10に示されるように、腰掛部材2は、入浴者の前方側が高く、後方側が低くなるように傾斜する。これにより、図4に示されるように入浴者が後側にある浴槽Baの壁に凭れるような姿勢になった場合であっても、腰掛部材2の前方側が高くなっているため、入浴者の臀部が前方側へ滑りにくくなる。
【0051】
さらに、第1移動体22aと第2移動体22bとが異なる高さで停止することにより、図10に示されるように、第1移動体22aは第1ガイド部41の軸に対して傾斜した状態となり、第2移動体22bは、第2ガイド部42の軸に対して傾斜した状態で停止する。このとき、図10に示されるように、第1移動体22aおよび第2移動体22bの傾斜によって、第1移動体22aと第1ガイド部41との間に、第1ガイド部41の径方向外側に形成されたクリアランス、および、第2移動体22bと第2ガイド部42との間に、第2ガイド部42の径方向外側に形成されたクリアランスが詰まる。そのため、上述した参考例のように、第1移動体220aと第1ガイド部410との間のクリアランス、および、第2移動体220bと第2ガイド部420との間のクリアランス(図5参照)に起因する、腰掛部材20がクリアランスを詰めるように傾斜すること(図7参照)が抑制される。したがって、本実施形態の昇降装置1では、腰掛部材2が浴槽Baの底部B側で、入浴者の一方の側方が低くなるように、腰掛部材2が傾斜することが抑制される。
【符号の説明】
【0052】
1 昇降装置
2 腰掛部材
21 腰掛部
22a 第1移動体
22b 第2移動体
23 接続部
3 昇降機構
31 駆動部
31a 充填部
4 ガイド部材
41 第1ガイド部
42 第2ガイド部
43 基部
5 背凭れ部材
6 支持部材
61、62 支持部
61a、62a 立設部
61b、62b 延在部
7 供給路
8 排出路
9 停止部材
A 取付部
B 浴槽の底部
Ba 浴槽
D1 浴槽の縁が延在する延在方向
E 浴槽の縁
H 持ち手
S1 第1停止部
S2 第2停止部
X 駆動部の軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10