(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒド不含接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20230725BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230725BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230725BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230725BHJP
B27D 1/04 20060101ALI20230725BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230725BHJP
C09J 143/02 20060101ALI20230725BHJP
C09J 143/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/04
C09J11/08
B27D1/04 K
C09J133/14
C09J143/02
C09J143/04
(21)【出願番号】P 2020542753
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2019077265
(87)【国際公開番号】W WO2020177110
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フ、ミンピャオ
(72)【発明者】
【氏名】スン、トン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンクィ
(72)【発明者】
【氏名】パン、シ
(72)【発明者】
【氏名】フェン、シャオカン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、シウメイ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-148582(JP,A)
【文献】特開平11-349911(JP,A)
【文献】特開昭58-029871(JP,A)
【文献】米国特許第05480720(US,A)
【文献】国際公開第2017/112018(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド不含接着剤組成物であって、
(a)アクリルポリマーの水性エマルジョンと、
(b)1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
(c)ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン、カルボン酸官能性ポリエステル、カルボン酸官能性ポリアクリレート、無水物、メルカプタン、ポリメルカプタン、環状アミジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
(d)水性連続相と、を含み、
前記アクリルポリマーが、少なくとも1つの接着促進官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つの構造単位を有し、前記アクリルポリマーが、-40℃~15℃のガラス転移温度を有
し、
前記接着促進官能基が、ウレイド、アルコキシシラン、およびリン基からなる群から選択される、ホルムアルデヒド不含接着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリマーが、-40℃~10℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のエポキシ化合物分散液が、脂環式エポキシ樹脂分散液、および芳香族エポキシ樹脂分散液からなる群から独立して選択される、請求項
1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、充填剤、消泡剤、レオロジー調整剤、および添加剤のうちの1つ以上をさらに含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記接着剤組成物が、以下の成分:
1)10~70%のアクリルポリマーの水性エマルジョンと、
2)3~70%の1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
3)0~75%の充填剤と、
4)0.1~2%の消泡剤と、
5)0.1~2%のレオロジー調整剤と、
6)0.5~20%の少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
7)0~5%の添加剤と、
8)水と、を含み、
上のパーセンテージが、前記接着剤組成物の総固形分重量に基づいて計算される、請求項
1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
以下のステップ:
(a)請求項
1~5のいずれか一項に記載のホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供することと、
(b)2層以上の木材を提供することと、
(c)前記ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を、前記2層以上の木材のうちの1つまたは2つの表面上に適用することと、
(d)2層以上の木材を重ね、前記重ねた2層以上の木材を室温でプレスすることと、
(e)前記重ねた2層以上の木材を50~200℃の高温でプレスすることと、を含む、合板を生成するための方法。
【請求項7】
請求項
1~5のいずれか一項に記載のホルムアルデヒド不含接着剤組成物によって得られる、合板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性接着剤組成物、特に、合板用のホルムアルデヒド不含接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合板は、隣接する層と一緒に接合された木製のベニヤの薄層または「プライ」から製造されたシート材料である。これは、ファイバーボードおよびパーティクルボード(チップボード)を含む、木質パネルの類から設計された木材である。
【0003】
接着剤は、木材層を接合して、合板を製造するために使用される。使用される接着剤の大部分は、尿素ホルムアルデヒド(UF)樹脂、メラミンホルムアルデヒド(MF)樹脂、およびフェノールホルムアルデヒド(PF)樹脂などのホルムアルデヒド系硬化配合物である。いくつかのホルムアルデヒド不含硬化配合物(エマルジョンポリマーイソシアネート接着剤(EPI)など)が存在するが、それらは、次のような重大な欠点を抱える。
-短い作業ウィンドウ。反応性がより高く、硬化速度が速いため、作業ウィンドウが短くなり、つまり、接着剤のパッケージを開いた後、作業者は接着剤をできるだけ早く使用する必要がある。場合によっては、そのような短い作業ウィンドウに対応するために、新しい機器および作業プロセスの再設計に追加の投資が必要になるであろう。
-高コスト。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート原料は、PF/ME/UF系接着剤パッケージよりも高価である。
【0004】
最近、小麦粉系接着剤または大豆系接着剤などのいくつかの生体材料系接着剤システムが合板に使用されると報告されているが、それらはすべて加工性および耐水性の性能が劣っている。
【0005】
政府の規制によって、木質パネル産業の許容ホルムアルデヒド放出レベルをさらに低下するように推進されており(E0<=0.5mg/L対E1<=1.5mg/L、ここで、E0およびE1の両方は、中国におけるホルムアルデヒド放出基準GB/T 18102-2007を指す)、一般市民は、刺激、アレルギー、さらには癌および奇形などのホルムアルデヒドによってもたらされる健康上の危険をますます認識し始めている。現在米国では、California Air Resources Board(CARB)による無添加ホルムアルデヒド(NAF)製品メーカーに対する認定がある。中国では、生体材料系複合パネルおよび無添加ホルムアルデヒドの最終製品の業界団体規格が最近発表された。したがって、木質パネル産業では、耐水性および良好な加工性などの望ましい性能を有する合板用の代替のホルムアルデヒド不含接着剤組成物が強く必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、耐水性および良好な加工性などの望ましい性能を有する合板用の新規のホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供する。
【0007】
第1の態様では、本開示は、
(a)アクリルポリマーの水性エマルジョンと、
(b)1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
(c)ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン、カルボン酸官能性ポリエステル、カルボン酸官能性ポリアクリレート、無水物、メルカプタン、ポリメルカプタン、環状アミジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
(d)水性連続相と、を含む、ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供し、
ここで、該アクリルポリマーは、少なくとも1つの接着促進官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つの構造単位を有し、該アクリルポリマーは、-40℃~15℃のガラス転移温度を有する。
【0008】
第2の態様では、本開示は、
(a)本開示によるホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供することと、
(b)2層以上の木材を提供することと、
(c)ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を、該2層以上の木材のうちの1つまたは2つの表面上に適用することと、
(d)2層以上の木材を重ね、重ねた2層以上の木材を室温でプレスすることと、
(e)重ねた2層以上の木材を50~200℃の高温でプレスすることと、を含む、合板を生成するための方法を提供する。
【0009】
第3の態様では、本開示は、本開示によるホルムアルデヒド不含接着剤組成物によって得られる合板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示されるように、「組成物」、「配合物」、または「混合物」という用語は、物理的な方法によって異なる成分を単に混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。
【0011】
本明細書に開示されるように、「ホルムアルデヒド不含」という用語は、組成物が添加されたホルムアルデヒドおよび/または添加されたホルムアルデヒド発生剤を有さないことを意味する。
【0012】
本明細書に開示されるように、「ガラス転移温度」または「Tg」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0013】
本明細書に開示されるように、「アルキル」または「アルコキシ」という用語は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシを指す。
【0014】
本開示は、耐水性および良好な加工性などの望ましい性能を保持しながら、合板用の新規のホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供する。接着剤組成物は、現在の製造プロセスに影響を与えることなく費用効果の高い合板を生成するために使用され得る。本開示によるホルムアルデヒド不含接着剤組成物はまた、ポリイソブチレン化合物、酢酸ビニル系ポリマー、および80重量パーセント以上のエチレン性不飽和酸コモノマーを含むポリマーを含まない。
【0015】
本開示は、
(a)アクリルポリマーの水性エマルジョンと、
(b)1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
(c)ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン、カルボン酸官能性ポリエステル、カルボン酸官能性ポリアクリレート、無水物、メルカプタン、ポリメルカプタン、環状アミジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
(d)水性連続相と、を含む、ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供し、
ここで、該アクリルポリマーは、少なくとも1つの接着促進官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つの構造単位を有し、該アクリルポリマーは、-40℃~15℃のガラス転移温度を有する。
【0016】
アクリルポリマーの水性エマルジョンは、フリーラジカル乳化もしくは懸濁付加重合を介して、または剪断下で予め形成されたポリマーを水性媒体に分散させることによって調製され得る。アクリルポリマーの調製に好適なモノマーには、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレート、例えば、アルキル(メタ)アクリレートが含まれるが、これらに限定されない。アルキル(メタ)アクリレートの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2-エチルヘキシルメタクリレート、ならびにそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0017】
アクリルポリマーは、1つ以上のスチレンモノマーの構造単位をさらに含み得る。スチレンモノマーには、例えば、スチレン、置換スチレン、またはそれらの混合物が含まれ得る。置換スチレンには、例えば、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ブチルスチレン、メチルスチレン、p-メトキシスチレン、またはそれらの混合物が含まれ得る。好ましいスチレンモノマーは、スチレンである。ポリマーは、ポリマーの重量で、5%以上、10%以上、15%以上、17%以上、19%以上、またはさらには21%以上、および同時に40%以下、35%以下、30%以下、28%以下、またはさらには26%以下のスチレンモノマー(複数可)の構造単位(複数可)を含み得る。
【0018】
本開示におけるアクリルポリマーは、少なくとも1つの接着促進官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの構造単位を含み得る。接着促進官能基は、ウレイド、アルコキシシラン(好ましくは、加水分解性アルコキシシラン)、ニトリル、ヒドロキシル、またはリン基からなる群から選択され得る。好適なウレイド官能性モノマーには、例えば、ウレイド基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。好適なウレイドモノマーの例を以下に例示する。
【化1】
、またはそれらの混合物。好適なアルコキシシラン官能性モノマーには、例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン;アルキルビニルジアルコキシシラン;(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシランおよび(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;それらの誘導体;ならびにそれらの組み合わせが含まれる。好適なニトリル官能性モノマーには、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどの(アルキル)アクリロニトリルが含まれる。好適なヒドロキシル官能性モノマーには、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸アルキルエステル、またはそれらの混合物が含まれる。好適なリン官能性モノマーには、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、ホスホブチル(メタ)アクリレート、それらの塩、およびそれらの混合物;CH
2=C(R)-C(O)-O-(R
lO)
n-P(O)(OH)
2(式中、R=HまたはCH
3、R
1=アルキル、かつn=2~6であり、例えば、SIPOMER PAM-100、SIPOMER PAM-200、およびSIPOMER PAM-300(全てSolvayから入手可能である))などのリン含有(メタ)アクリレート;ホスホエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ホスホトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、それらの塩、およびそれらの混合物などのホスホアルコキシ(メタ)アクリレートが含まれる。アクリルポリマーは、ポリマーの重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、0.3重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、または1重量%~3重量%の少なくとも1つの官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの構造単位の構造単位を含み得る。
【0019】
本開示におけるアクリルポリマーは、1つ以上の追加のモノマーの構造単位を含み得る。追加のモノマーは、イタコール酸、もしくはフマル酸;または、そのような酸基(例えば、無水物、(メタ)アクリル酸無水物、またはマレイン酸無水物など)を生じるか、もしくはそれに後に変換可能な酸形成基を有するモノマー;p-スチレンスルホン酸ナトリウム塩(SSS);アクリルアミド;またはそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0020】
本開示におけるアクリルポリマーは、10,000~1,000,000、20,000~200,000、または40,000~150,000の重量平均分子量を有し得る。重量平均分子量は、ポリスチレン標準によって較正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され得る。
【0021】
本開示におけるアクリルポリマーは、-40℃~15℃、好ましくは-40℃~10℃、より好ましくは-40℃~7℃のガラス転移温度を有する。
【0022】
一実施形態では、アクリルポリマーの水性エマルジョンは、The Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMAL(商標)EC2848ER、ELASTENE(商標)2468M、PRIAML(商標)AC261p、MAINCOTE(商標)PR-71K、PRIMAL(商標)SF-155、ROBOND(商標)PS-90、PRIMAL(商標)EC-2540、ELASTENE(商標)2468、PRIMAL(商標)EC-2949、PRIMAL(商標)EC-4811、PRIMAL(商標)EC-4642 ME、PRIMAL(商標)EC-1791、ROBOND(商標)L-168、TIANBA(商標)2012、ELASTENE(商標)2475である。
【0023】
本開示の接着剤組成物では、成分(a)は、本組成物の固形分に基づいて、本組成物の5~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~50重量%を構成する。
【0024】
好適なエポキシ化合物の例には、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、および芳香族エポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定されない。より具体的な例には、1,2-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルオキシラン、2-(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)-5,1”-スピロ-3”,4”-エポキシシクロヘキサン-1,3-ジオキサン、一酸化ビニルシクロヘキセン、アジピン酸ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、DGEBA系固体エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、クレゾールエポキシノボラック、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、エポキシ化合物分散液を調製する方法は、エポキシ化合物を水と混合して、エポキシ分散液を形成することであり、ここで、エポキシ化合物分散液は、50ナノメートル~10ミクロンの範囲のサイズを有するエポキシ粒子を含む。様々な実施形態では、混合は、10℃~90℃、好ましくは20℃~60℃の範囲の温度で起こり、高速ミキサーまたはホモジナイザーが使用される。様々な実施形態では、エポキシ化合物分散液の調製に界面活性剤が使用され得る。好適な界面活性剤には、APEOを含まないものなどの非イオン性界面活性剤;ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、脂肪酸エステル、グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、およびポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテルなどの非イオン性湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない。好ましい非イオン性湿潤剤には、The Dow Chemical Companyから入手可能なTRITON(商標)X-405オクチルフェノールエトキシレートなどの市販の湿潤剤が含まれる。界面活性剤が使用される場合、それは一般に、0.5重量パーセント~5重量パーセントの範囲の濃度で使用される。好ましいエポキシ化合物分散液は、The Dow Chemical Companyから入手可能なXCM-38である。
【0025】
好適なアクリル-エポキシハイブリッドの例には、WO2017112018A1に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、アクリル-エポキシハイブリッドは、上述のエポキシ化合物分散液をアクリレート分散液と混合して、エポキシで完全に吸収されたアクリル粒子を有するアクリル/エポキシラテックスを形成することによって調製される。この混合は、典型的には、20℃~80℃、好ましくは40℃~60℃の範囲の温度で起こる。アクリレート分散液は、フリーラジカル乳化もしくは懸濁付加重合を介して、または剪断下で予め形成されたポリマーを水性媒体に分散させることによって調製され得る。アクリレート分散液の調製に好適なモノマーには、アクリレートおよびメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および2-エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。好ましいアクリル-エポキシハイブリッドは、The Dow Chemical Companyから入手可能なEcoground(商標)AEH-2014である。
【0026】
本開示の接着剤組成物では、成分(b)は、本組成物の固形分に基づいて、本組成物の3~50重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~20重量%を構成する。
【0027】
本開示による接着剤組成物は、レオロジー改変剤をさらに含み得る。レオロジー調整剤は、非イオン性ウレタンポリマー、セルロース、ポリエチレングリコール、デンプンエーテル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ガム、小麦粉、およびそれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。レオロジー調整剤は、接着剤組成物の総固形分重量に基づいて、一般に0.1~5.0重量%、0.2%~3重量%、または0.5%~2.0重量%の量で存在し得る。
【0028】
本開示による接着剤組成物は、1つ以上の消泡剤をさらに含み得る。「消泡剤」という用語は、本明細書では、泡の形成を減少させ、かつ妨げる化学添加剤を指す。消泡剤は、シリコーン系消泡剤、鉱油系消泡剤、エチレンオキシド/プロピレンオキシド系消泡剤、またはそれらの混合物であり得る。好適な市販の消泡剤には、例えば、両方ともTEGOから入手可能なTEGO Airex902WおよびTEGO Foamex1488ポリエーテルシロキサンコポリマーエマルジョン、BYKから入手可能なBYK-024シリコーン変形剤、NOPCOから入手可能なNOPCO(登録商標)NXZ変形剤、またはそれらの混合物が含まれる。消泡剤は、接着剤組成物の総固形分重量で、一般に0.1~2%、0.2~1.5%、または0.5%~1.0%の量で存在し得る。
【0029】
本開示による接着剤組成物は、1つ以上の充填剤をさらに含み得る。充填剤には、炭酸カルシウム、シリカ、シリケート、石膏、パルプ、木粉、小麦粉、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。充填剤は、接着剤組成物の総固形分重量で、一般に1~75%、10%~70%、または20%~60%、または30~60%の量で存在し得る。
【0030】
本開示による接着剤組成物は、少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤をさらに含み得る。好適な硬化剤の例には、ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン、カルボン酸官能性ポリエステル、カルボン酸官能性ポリアクリレート、無水物、メルカプタン、ポリメルカプタン、環状アミジン、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。より具体的な例には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、l-エチル-l,3-プロパンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、l,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、l,2-ジアミノ-4-エチルシクロヘキサン、l,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、1-シクロヘキシル-3,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロン-ジアミン、ノルボランジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシル-プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3-アミノ-l-シクロヘキサン-アミノ-プロパン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリアミドアミン、ならびに尿素およびメラミンとアルデとの反応によって形成されたアミノプラスト樹脂が含まれるが、これらに限定されない。本開示の接着剤組成物では、硬化剤の量は、エポキシの投与量に依存する。硬化剤の活性水素対エポキシの化学量論比は、0.25~2、好ましくは0.5~1.5、より好ましくは0.8~1.2である。一般に、硬化剤は、接着剤組成物の総固形分重量で、0.5~20%、1%~15%、または1%~10%、または1~8%の量で存在し得る。
【0031】
上述の成分に加えて、本発明の接着剤組成物は、以下の添加剤:分散緩衝剤、中和剤、湿潤剤、防カビ剤、殺生物剤、着色剤、流動剤、架橋剤、酸化防止剤、可塑剤、均染剤、チキソトロピー剤、接着促進剤、および粉砕展色剤(grind vehicles)のうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせをさらに含み得る。一実施形態では、添加剤は、シランおよびイソシアネートプレポリマーからなる群から選択される。存在する場合、これらの添加剤は、接着剤組成物の総固形分重量に基づいて、0~5重量%、または0.1%~3重量%、または0.5%~1.5重量%の合計量で存在し得る。
【0032】
第2の態様では、本開示は、
(a)本開示によるホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供することと、
(b)2層以上の木材を提供することと、
(c)ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を、該2層以上の木材のうちの1つまたは2つの表面上に適用することと、
(d)2層以上の木材を重ね、重ねた2層以上の木材を室温でプレスすることと、
(e)重ねた2層以上の木材を50~200℃の高温でプレスすることと、を含む、合板を生成するための方法を提供する。
【0033】
上の方法によって得られる合板は、一般に、3~11層の木材、好ましくは5~9層の木材、より好ましくは5~7層の木材を含むが、これらに限定されない。
【0034】
上のステップ(d)では、プレスすることは、0.5~20MPa、より好ましくは1~10MPa、最も好ましくは1~5MPaの好ましい圧力で行われる。
【0035】
上のステップ(d)では、プレスすることは、1~120分間、好ましくは10~80分間、より好ましくは20~40分間行われる。
【0036】
上のステップ(e)では、プレスすることは、0.5~20MPa、より好ましくは1~10MPa、最も好ましくは1~5MPaの好ましい圧力で行われる。
【0037】
上のステップ(e)では、プレスすることは、60~180℃、より好ましくは80~150℃、最も好ましくは100~120℃の好ましい温度で行われる。
【0038】
上のステップ(e)では、プレスすることは、1~80分間、好ましくは5~40分間、より好ましくは10~20分間行われる。
【0039】
第3の態様では、本開示は、本開示によるホルムアルデヒド不含接着剤組成物によって得られる合板を提供する。
【実施例】
【0040】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、すべての部およびパーセンテージは、他に特定されない限り、重量による。
【表1】
【0041】
ガラス転移温度測定
10グラムのエマルジョンをプラスチック皿に入れ、室温で24時間乾燥させた。次に、得られたフィルムを50℃に48時間供して、フィルムをさらに乾燥させた。フィルムの小片を切り取り、密封されたTA Instrumentsの標準アルミニウム密閉パンに入れた。試料を10℃/分の昇温速度で-60℃~100℃の2サイクルに供した。ポリマーのガラス転移温度を、変曲の中間点で半高法を使用して測定する。
【0042】
沸騰水試験
合板の最も重要な要件の1つは、耐水性である。中国のコードGB/T18259-2009によると、クラスIの合板は、沸騰水試験に合格する必要がある。中国のコードGB/T17657-2013に従って、詳細な試験方法を以下に記載する。
1)6つの試験試料(75mm*75mm)を合板試料(300mm*300mm)から切り取った。
2)試験試料を沸騰水に4時間浸した。
3)次に、沸騰水から試験試料を取り出し、オーブン(63℃)に入れて、20時間乾燥させた。
4)次に、乾燥した試験試料を沸騰水にさらに4時間浸した。
5)試験試料を取り出し、オーブン(63℃)に入れて、3時間乾燥させた。
6)次に、異なる層間の界面を注意深く観察した。各試料の各層の剥ぎ取り長さは、25mm未満でなければならない。
【0043】
吸水時の木材の体積膨張によって、異なる木材層間に内部応力が発生する。そのため、沸騰水試験は、接着剤の耐水性能だけでなく、湿潤状態での接着性能も評価する。ラボ試験では、接着剤の性能を評価するために沸騰水試験を使用した。
【0044】
実施例1:対照実施例および発明の実施例
アクリルエマルジョン、エポキシまたはアクリル-エポキシハイブリッド分散液、および水を配合に従って混合し、消泡剤も添加した。充填剤を添加し、攪拌によって分散させた。レオロジー調整剤を添加して、粘度を約20000cp(ブルックフィールド、5#、30rpm)に調整した。硬化剤を添加し、攪拌によって分散させた。添加剤(存在する場合)を添加する場合がある。接着剤組成物はすぐに使用できた。上の成分およびそれらの量を以下の表2に列記した。
【0045】
工場での状態をシミュレーションするために、接着剤組成物を4時間置いてから木材層の表面に適用した。4時間後、接着剤を木材層(30cm*30cm)に適用した。投入量は200g/m
2であった。ここで木材は、市場で広く使用されているユーカリであった。接着剤付きの木材層をさらに4時間放置した後、室温でプレスするために1層ずつ重ねた。重ねた木材層(7層)を取り、室温で40分間プレスした。圧力は、約2MPaであった。次に、重ねた木材層を取り、110℃でプレスした。プレス時間は1分/mmであり、圧力は約2MPaであった。合板は、ホットプレス後に準備が整ったが、室温でさらに24時間放置してから沸騰水中で4時間試験した。合板の沸騰水試験の結果を以下の表2に列記した。
【表2】
【0046】
接着剤組成物がアクリルエマルジョンを含む場合、耐水性能は、沸騰水試験に合格するには不十分であった(CE-1)。一方で、エポキシ分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液を配合物に添加した、接着剤組成物IE-1~IE-4は、良好な接着性および耐水性能を示した。ペンタエチレンヘアミンおよびAradur(登録商標)36BD(水乳化性アミン硬化剤)など、異なるアミン硬化剤が採用される場合がある。シランのようないくつかの添加剤も添加することができ、これによって、性能が向上する場合がある(IE-5およびIE-6)。
【0047】
実施例2
IE-4試料をWood Products Quality Test&Inspection Center of State Forestry Administration(Nanjing,China)に運び、ホルムアルデヒド値を評価した。ホルムアルデヒド値は検出できず、ホルムアルデヒドを含まないという概念が証明された。
【0048】
実施例3
接着剤の性能に役立つであろうアクリルラテックスの要因をさらに研究するために、一連の比較作業が行われた。比較作業を行うためにIE-4の配合物を使用した。最初に、アクリルラテックスのTg(ガラス転移温度)を調べた。ラテックスが高いTgを有する場合、配合物は、室温で粘着性を失った。それは、木材層が最初に一つに接合され得ないというコールドプレス問題を引き起こした。ラテックスが非常に低いTgを有する場合、配合物は、最終的な接着の問題を引き起こすであろう凝集性能が不足することになる。
【表3】
【0049】
実施例4
この実施例では、アクリルラテックスの官能性モノマーも慎重に評価した。結果を、以下の表4に要約した。比較作業を行うためにIE-4の配合物を使用した。以下のデータに基づいて、官能性モノマーは、最終性能に対する大きな効果を示した。同様のTgでは、ラテックスが官能性モノマー(複数可)を有する場合、それらは、良好な機械的性能を示す。
【表4】
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]ホルムアルデヒド不含接着剤組成物であって、
(a)アクリルポリマーの水性エマルジョンと、
(b)1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
(c)ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン、カルボン酸官能性ポリエステル、カルボン酸官能性ポリアクリレート、無水物、メルカプタン、ポリメルカプタン、環状アミジン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
(d)水性連続相と、を含み、
前記アクリルポリマーが、少なくとも1つの接着促進官能基を担持する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの少なくとも1つの構造単位を有し、前記アクリルポリマーが、-40℃~15℃のガラス転移温度を有する、ホルムアルデヒド不含接着剤組成物。
[2]前記接着促進官能基が、ウレイド、アルコキシシラン、ニトリル、ヒドロキシル、およびリン基からなる群から選択される、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記アクリルポリマーが、-40℃~10℃のガラス転移温度を有する、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[4]前記1つ以上のエポキシ化合物分散液が、脂環式エポキシ樹脂分散液、および芳香族エポキシ樹脂分散液からなる群から独立して選択される、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[5]前記アクリル-エポキシハイブリッド分散液が、エポキシ化合物分散液をアクリレート分散液と混合して、エポキシで完全に吸収されたアクリル粒子を有するアクリル/エポキシラテックスを形成することによって調製される、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[6]前記接着剤組成物が、充填剤、消泡剤、レオロジー調整剤、および添加剤のうちの1つ以上をさらに含む、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[7]前記接着剤組成物が、以下の成分:
1)10~70%のアクリルポリマーの水性エマルジョンと、
2)3~70%の1つ以上のエポキシ化合物分散液またはアクリル-エポキシハイブリッド分散液と、
3)0~75%の充填剤と、
4)0.1~2%の消泡剤と、
5)0.1~2%のレオロジー調整剤と、
6)0.5~20%の少なくとも1つの水溶性、水乳化性、または水分散性エポキシ硬化剤と、
7)0~5%の添加剤と、
8)水と、を含み、
上のパーセンテージが、前記接着剤組成物の総固形分重量に基づいて計算される、上記[1]に記載の接着剤組成物。
[8]以下のステップ:
(a)上記[1]~[6]のいずれかに記載のホルムアルデヒド不含接着剤組成物を提供することと、
(b)2層以上の木材を提供することと、
(c)前記ホルムアルデヒド不含接着剤組成物を、前記2層以上の木材のうちの1つまたは2つの表面上に適用することと、
(d)2層以上の木材を重ね、前記重ねた2層以上の木材を室温でプレスすることと、
(e)前記重ねた2層以上の木材を50~200℃の高温でプレスすることと、を含む、合板を生成するための方法。
[9]上記[1]~[7]のいずれかに記載のホルムアルデヒド不含接着剤組成物によって得られる、合板。