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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】回転電気機械のための空気出口吸音体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230725BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20230725BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20230725BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20230725BHJP
   H02K 9/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G10K11/16 100
G10K11/16 130
G10K11/16 140
G10K11/162
G10K11/172
H02K5/24 C
H02K9/04 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020544169
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 GB2018053166
(87)【国際公開番号】W WO2019086879
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】1718127.2
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520154139
【氏名又は名称】ブラッシュ エレクトリカル マシーンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】マタイ, デニス
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-091727(JP,A)
【文献】特開2003-050586(JP,A)
【文献】国際公開第2016/040431(WO,A1)
【文献】特開平02-102313(JP,A)
【文献】実開昭57-003363(JP,U)
【文献】実開昭60-096972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00-17/32
B41J 2/47
B64B 1/00- 1/70
B64C 1/00-99/00
B64D 1/00-47/08
B64F 1/00- 5/60
B64G 1/00-99/00
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-99/00
F01M 11/00-13/06
F01P 1/00-11/20
F17D 1/00- 5/08
F23L 1/00-99/00
F24F 11/00-11/89
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/13
G03B 21/134-21/30
G03B 33/00-33/16
G10K 11/00-13/00
H02K 5/00- 5/26
H02K 7/00- 7/20
H02K 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電気機械であって、
回転子のための筐体を提供する第1の部と、サイレンサーのための筐体を提供する第2の部とを有するハウジングと、
前記ハウジングの前記第1の部からサイレンサーまで、かつ前記サイレンサーを通って排気口に至る空気流路と、を備え、
前記サイレンサーは、少なくとも1つの吸音柱に隣接して配置された少なくとも1つの空気流路を備え、前記少なくとも1つの吸音柱は、多孔質の第1の吸音材料を内部に有する前記回転子に最も近い第1の部分と、前記回転子から離れた場所に第2の部分と、を備え、前記第2の部分は、前記第1の部分の下流端に隣接する微細穿孔パネル(MPP)および前記微細穿孔パネルの下流に共振空洞を有し
記空気流路は、前記ハウジングの前記第2の部を通り、前記回転子の軸方向長さに沿って延在する細長い断面プロファイルと、前記回転子の軸から離れる向きに、前記少なくとも1つの吸音柱の、前記第1の部分、前記微細穿孔パネルの端部、次いで前記共振空洞に沿った流路方向と、を有する、回転電気機械。
【請求項2】
前記サイレンサーは、前記吸音柱のうちの少なくとも2つを含み、
前記少なくとも1つの空気流路は、2つの前記吸音柱の間に画定された請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項3】
前記吸音柱は、内部に吸音材料を有する第3の部分をさらに含む、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項4】
前記共振空洞内に第2のMPPを有する、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項5】
前記共振空洞は、前記柱を通過する前記空気流路の方向を横断する複数の区画に分割されている、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項6】
前記共振空洞は、異なる深さを有する複数の区画に分割されている、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項7】
前記柱の前記第2の部分は、80~180Hz、またはより具体的には100~120Hzでのピーク吸収のために調整されている、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項8】
前記柱の前記第2の部分は、60~300Hz、またはより具体的には100~120Hzでのピーク吸収のために調整されている、請求項4に記載の回転電気機械。
【請求項9】
前記柱の前記第2の部分は、前記回転子の給電周波数、またはその高調波周波数でのピーク吸収のために調整されている、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項10】
前記第1の吸音材料は、多孔質吸収体、発泡体またはロックウールである、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項11】
前記回転電気機械は、発電機である、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項12】
前記回転子の軸方向長さに沿って延在する細長い断面プロファイルをそれぞれが有する複数の空気流路を画定する複数の吸音柱を有する、請求項2に記載の回転電気機械。
【請求項13】
前記MPPは、0.5mm~1.2mmの範囲の直径の穿孔、0.5mm~2.5mmの厚さの板、または板の総面積に対する穿孔の総面積の割合は、0.15%~0.4%の範囲にある板を備える、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項14】
前記共振空洞は、150mm~400mm、または200mm~400mmの範囲の深さを有する、請求項1に記載の回転電気機械。
【請求項15】
ハウジング内に配置された回転電気機械の通気路からの空力騒音の放出を制御する方法であって、
前記ハウジングの第1の部内に回転子を配置することと、
前記ハウジングの第2の部内にサイレンサーを配置し、
前記ハウジングの前記第1の部から前記サイレンサーまで、かつ前記サイレンサーを通って前記ハウジングの排気口に至る空気流路を提供することと、
少なくとも1つの吸音柱に隣接して配置された少なくとも1つの空気流路に前記サイレンサーを提供し、前記少なくとも1つの吸音柱は、多孔質の第1の吸音材料を内部に有する前記回転子に最も近い第1の部分と、前記回転子から離れた場所に第2の部分と、を備え、前記第2の部分は、前記第1の部分の下流端に隣接する微細穿孔パネル(MPP)および前記微細穿孔パネルの下流に共振空洞を有し
記空気流路は、前記ハウジングの前記第2の部を通り、前記回転子の軸方向長さに沿って延在する細長い断面プロファイルと、前記回転子の軸から離れる向きに、前記少なくとも1つの吸音柱の、前記第1の部分、前記微細穿孔パネルの端部、次いで前記共振空洞に沿った流路方向と、を有することと、
前記多孔質の第1の吸音材料が抵抗音響吸収体として機能するように、冷却空気を、前記少なくとも1つの空気流路に沿って、前記吸音柱の前記第1の部分を通過させることと、
前記微細穿孔パネルおよび前記共振空洞が反応型吸音体として機能するように、冷却空気を、少なくとも1つの空気流路に沿って、前記吸音柱の前記第2の部分を通過させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機、電気モーター、およびその他の回転電気機械のための排気流路で使用される吸音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大型回転電気機械からの騒音の放出の制御は、そのような機器の設計と実装においてしばしば重要である。周知の振動誘導雑音に加えて、回転電気機械の構成部品の急速回転によって発生する、空気の流れから生じる重大な空力騒音が起こりうる。「回転電気機械」という表現は、空気の流れによって通気され、および/または回転中にそのような空気の流れを発生させる回転子構成部品を有するすべての電気機械を包含することを意図している。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、そのような機械からの空力騒音の影響を軽減することに関する。
【0004】
一態様によれば、本発明は、以下を備える回転電気機械を提供する。
回転子ハウジング内に配置された回転子と、
回転子ハウジングからサイレンサーまで、かつサイレンサーを通って排気口に至る空気流路と、を備え、
サイレンサーは、少なくとも1つの吸音柱に隣接して配置された少なくとも1つの空気流路を備え、吸音柱は、第1の吸音材料を内部に有する第1の部分と、微細穿孔パネル(MPP)および共振空洞を有する第2の部分と、を備えている。
【0005】
サイレンサーは、吸音柱のうちの2つの間に画定された少なくとも1つの空気流路を備えてもよい。吸音柱は、内部に吸音材料を有する第3の部分をさらに含んでもよい。回転電気機械は、共振空洞内に第2のMPPを有してもよい。共振空洞は、柱を通過する空気流路の方向を横断する複数の区画に分割されてもよい。共振空洞は、異なる深さを有する複数の区画に分割されてもよい。柱の第2の部分は、80~180Hz、またはより具体的には100~120Hzでのピーク吸収のために調整されてもよい。柱の第2の部分は、60~300Hz、またはより具体的には100~120Hzでのピーク吸収のために調整されてもよい。柱の第2の部分は、回転子の給電周波数、またはその高調波周波数でのピーク吸収のために調整されてもよい。第1の吸音材料は、多孔質吸収体であってもよい。多孔質吸収体は、発泡体またはロックウールであってもよい。吸音柱の第分は、回転子と吸音柱の第2の部分との間にあってもよい。吸音柱の第1の部分は、回転子と吸音柱の第2の部分との間にあってもよく、第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間にあってもよい。回転電気機械は、発電機であってもよい。回転電気機械は、回転子の軸方向長さに沿ってそれぞれが延在する複数の空気流路画定する複数の吸音柱を有してもよい。MPPは、0.5mm~1.2mmの範囲の直径の穿孔を備えてもよい。MPPは、0.5mm~2.5mmの厚さの板を備えてもよい。板の総面積に対する穿孔の総面積の割合は、0.15%~0.4%の範囲にあってもよい。共振空洞は、150mm~400mm、または200mm~400mmの範囲の深さを有してもよい。
【0006】
別の態様によれば、本発明は、発電機ハウジング内に配置された回転電気機械の通気路からの空力騒音の放出を制御する方法を提供し、その方法は、
回転子ハウジング内に回転子を配置することと、
回転子ハウジングからサイレンサーまで、かつサイレンサーを通って発電機ハウジングの排気口に至る空気流路を提供することと、
少なくとも1つの吸音柱に隣接して配置された少なくとも1つの空気流路をサイレンサーに提供することと、
抵抗音響吸収体として機能するように、冷却空気を、少なくとも1つの空気流路に沿って、第1の吸音材料を内部に有する吸音柱の第1の部分を通過させることと、
反応型吸音体として機能するように、冷却空気を、少なくとも1つの空気流路に沿って、微細穿孔パネル(MPP)と共振空洞を有する吸音柱の第2の部分を通過させることと、を含む。
次に、本発明の実施形態をこれより、例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】発電機ハウジング内のサイレンサーユニットの配置を示す発電機の概略断面側面図を示す。
図1B図1Aの発電機の概略断面端面図を示す。
図2図1Aおよび図1Bの発電機ハウジングで使用される2つの吸音柱の端面図である。
図3図2の2つの吸音柱の斜視図である。
図4図1Aおよび図1Bの発電機ハウジングで使用される2つの代替の吸音柱の端面図である。
図5図4の2つの吸音柱の斜視図である。
図6図2図5の柱で使用可能な反応型吸音ユニットの斜視図である。
図7図1Bのサイレンサーユニットの上部の概略断面端面図である。
図8】抵抗吸音構造のみを使用して、図1Aおよび図1Bの発電機と共に使用するためのサイレンサーユニットの騒音低減スペクトルを示すグラフである。
図9図3図5の吸音柱で使用するための反応型吸音ユニットに当たる平面波の計算された垂直入射吸音係数スペクトルを示すグラフである。
図10図3図5の吸音柱で使用するための2つの異なる反応型吸音ユニットに当たる平面波の予測垂直入射吸音係数スペクトルを示すグラフである。
図11図3図5の吸音柱で使用するための代替の二重パネル反応型吸音ユニットの概略断面端面図である。
図12図3図5の吸音柱で使用するための代替の3チャネルの反応型吸音ユニットの概略断面端面図である。
図13図11および図12の反応型吸音ユニットに当たる平面波の予測垂直入射吸音係数スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書を通して、「上部」、「底部」、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」等の、相対的な向きおよび位置に関する記述子は、任意のその形容詞および副詞の波生語も含め、従来の使用形態において、図面内に示すような装置の向きの意味で使用される。しかしながら、そのような記述子は、説明された、または請求された発明の意図される使用をいかようにも限定することを意図するものではない。
【0009】
図1Aは、発電機ハウジング2内の発電機1の概略図を示す。発電機1は、図1Aの側面図に見られるように、ハウジング2を通って長手方向に延在する回転軸3を有する。ハウジング2の下部4は、発電機1および関連する機器のための筐体を提供し、これは、本明細書では、より一般的には、回転子ハウジングと称すことができる。ハウジング2の上部5は、空気入口構造6、空気出口構造/排気処理モジュール10(図1B)、およびハウジング2から空気を排気するための空気出口ルーバー8を含む、サイレンサー7を提供する。これは、図1Bの軸方向断面図で最もよくわかる。
【0010】
送風/冷却空気は、空気入口構造6から発電機1の軸方向端部に提供され、発電機1の回転子9の通気スロットに沿って軸方向に運ばれる。回転子の通気スロットから、空気は回転子の回転運動の下で排出され、サイレンサー7/排気処理モジュール10と出口ルーバー8を通過する。
【0011】
発電機1などの回転電気機械では、少なくとも部分的に、回転子通気スロットから出る高速空気ジェットにより、空力音響騒音が発生する。空力音響騒音は、低周波成分が強く、発電機の動作周波数の2倍で特に深刻になり得る。また、回転子通気スロットの数と間隔に関連する高次の高調波が存在することもある。排気処理モジュール10では、この騒音は、音響スプリッタ11を含む散逸性サイレンサーによって減衰される。図1Bに見られるように、沢山の音響スプリッタ11は、発電機ハウジング2の下部4から上方に、出口ルーバー8が配置される排気処理モジュール10の頂部に向かって延在する。音響スプリッタ11は、それらの間の間隔で排気流路12を画定し、排気をルーバー8に導く。音響スプリッタ11は、それぞれの柱に複数の部分を含み、その特徴は以下に説明される。
【0012】
音響スプリッタ11は、図2により詳細に示されている。それぞれの音響スプリッタは、回転子/発電機1に最も近い第1の部分21と、回転子/発電機1からさらに離れた第2の部分22と、を有する吸音柱20を備える。便宜上、第1の部分21は、「上流」位置にあって、すなわち、騒音源/空気源/回転子により近いと考えることができ、第2の部分22は、「下流」位置にあって、すなわち騒音源/空気源/回転子から離れていると考えることができる。
【0013】
第1の部分21は、第1の吸音材料を含み、好ましくは、発泡体またはロックウールなどの多孔質吸収体である。吸音柱20の第1の部分21は、剛性側面24と、交差部材などの構造支持体26と、吸音材料を空気流路12に露出させる空気流路12に隣接する面27と、を有するフレームを含むことができる。面27は、多孔質吸収体を吸音柱の第1の部分21のフレーム内の適所に保持し、その構造への空気が出入りする移動を可能とするために、オープンメッシュバリアまたは穿孔パネルを含んでもよい。メッシュは、例えば、金属格子構造を含み得る。あるいは、面27は、音響エネルギーがそこを通過して多孔質吸収体に至ることを可能にする固体材料を含んでもよい。一般的な態様では、第1の部分21は、抵抗音響吸収体または抵抗吸音ユニットを備える。
【0014】
第2の部分22は、第1の部分21の頂部(すなわち、下流端)に隣接する微細穿孔パネル(MPP)28と、MPP28の下流の共振空洞29と、を含む。第2の部分22は、反応型音響吸収体または反応型吸音ユニットを効果的に提供する。このように、第二部分22の必要性は、発泡体またはロックウールなどの多孔質吸音体材料を含んでいない。
【0015】
図4および図5も参照すると、吸音柱20は、第2の部分22の上方、すなわち下流に第3の部分23を含んでもよい。第3の部分23は、第1の部分21と同様のさらなる抵抗音響吸収体構造を含んでもよい。
【0016】
2つ以上の吸音柱20は、回転子/発電機の軸方向長さに沿ってそれぞれが延在する複数の空気流路12を画定してもよい。図1Bおよび図7の例は、空気の流れを5つの空気流路12に分割する4つの吸音柱20を含む。
【0017】
図6を参照すると、第2の部分22は、2つ以上のMPP28を含んでもよい。図6に示す例では、第2の部分60は、第1の部分21の下流端に隣接する第1のMPP61と、第1のMPP61の下流の共振空洞62と、共振空洞62を2つの部分に分割する、第1のMPP61の下流の第2のMPP63と、を含む。この配置については、詳細は後に示す。
【0018】
したがって、一般的な態様では、吸音柱20の第1の部分21(抵抗吸音ユニット)は、回転子/発電機1と吸音柱20の第2の部分22(反応型吸音ユニット)との間にあってもよい。吸音柱20の第2の部分22は、第1の部分21と第3の部分23との間にあってもよい。
【0019】
1つまたは複数の微細穿孔パネル28、61、63は、好ましくは、特定の用途、例えば使用中の特定の回転電気機械用のサイレンサー/空気出口構造7の音響性能を最適化するように構成される。サイレンサー構造は、好ましくは、80~180Hzの広いピーク吸収に合わせて調整され、またはより具体的には、100~120Hzのピーク吸収に合わせて、またはそれらの周波数のうちの1つで調整されてもよい。図6のように、二重微細穿孔パネル61、63を使用すると、60~300Hzのより広いピーク吸収を提供可能となり、またはより具体的には、100~120Hzのピーク吸収に合わせて調整できる。
【0020】
第2の部分22を吸音柱20に統合することにより、共振空洞62およびMPP28、61、63を画定することにより、排気処理アセンブリ10の音響性能が実質的に改善され、発電機の動作周波数の2倍で特に深刻な、強い低周波成分を有する、回転子通気スロットから出る高速空気ジェットにより生じる、空力音響騒音を吸収することが分かった。回転子の通気スロットの数と間隔に関連する高次の高調波は、第1および第3(適宜)の部分21、23の散逸性抵抗サイレンサーによって、より効果的に減衰される。
【0021】
テストにより、多孔質材料を組み込んだ第1および第3の部分21、23は、良好な広帯域性能を有する200Hzを超える吸収周波数で効果的ではあるが、通常の発電機の50Hzと60Hzの動作周波数で騒音を抑制するのにはあまり適しておらず、特に出口ルーバー8で測定された100Hzおよび120Hzでのその第1高調波がそうであることが示されている。
【0022】
図7は、排気処理モジュール10の上部の可能な配置を示している。この配置では、第1の部分21(見えない)と、MPP28(またはMPP61、63)と共振空洞62とを含む第2の部分22と、第3の部分23と、を有するいくつかの、またはそれぞれの吸音柱20は、空気流路12内の空気の流れを横方向外側に向けてルーバー8に向けるために、横方向の第4の部分70を、さらに含んでもよい。横方向の第4の部分70は、第1の吸音材料のより多くを、好ましくは、発泡体またはロックウールなどの多孔質吸収体を組み込んでもよい。さらなる抵抗吸収材料71が、ハウジング2の上部5の屋根に提供されてもよい。
【0023】
図8は、上述の配置と類似の排気処理モジュールアセンブリ10の騒音低減特性を描写しているが、MPP28、61、63および共振空洞29、62を含む第2の部分22の反応型音響吸収構造を使用していない。これは、抵抗吸収体材料のみを使用した基本構造は、より高い周波数では効果的であるが、回転子の通気スロットからの空力音響騒音が支配するより低い周波数では、比較的悪い性能を有することを明確に示している。これにより、発電機の動作周波数の2倍の騒音レベルが主体のようになる。グラフでは、測定された音圧レベルを示して、それぞれの騒音スペクトル帯域の3つの柱のうちより高いものが、回転子/発電機源(つまり、サイレンサーの上流)での騒音レベルを表し、それぞれの騒音スペクトル帯域の次に低い柱が、サイレンサー/排気処理モジュールの下流端での騒音レベルを表す。それぞれの騒音スペクトル帯域の一番低い柱は、ルーバーでの騒音レベルを表す。
【0024】
反応型音響吸収体、すなわち、MPP28、61、63および共振空洞29、62を含む吸音柱20の第2部分22は、100Hzおよび125Hzの中心帯域周波数(または、発電機/回転子の設計および回転による周波数に応じた、他のターゲット帯域)を減衰するように最適に設計されており、それによって、サイレンサーアセンブリの全体的な音響性能が、空気の流れに実質的に影響を与えることなく、大幅に向上する。
【0025】
微細穿孔パネル28、61、63は、それぞれ、その中に多くの穴を有する薄いプレート、シェル、または膜材料を含む。共振空洞29、62には抵抗多孔質材料は必要ない。主要な吸収メカニズムは、音圧の影響下で空気分子が前後に移動するときに、パネル28、61、63の穴の粘性損失によって提供される抵抗によって提供することができる。その吸収体と一般的に剛性のある後壁との間の中間空間にある空気は、ヘルムホルツ共鳴器に類似してばねとして機能しながら、空気は、隣接する多数の穴で塊として共振動する。MPP28、61、63の後ろに閉空間を形成することで、マルチモーダル音響共振を作成することができる。その微細穿孔内の空気の動きに結合する空洞様式は、吸音に寄与する。MPPおよび空洞を画定する材料を、必要な音響室の特性を与えるために必要な剛性を有する任意の適切な材料から形成することができる。一実施例では、共振空洞29、62の壁は、必要な剛性を提供する1.2~3mmの厚さのステンレス鋼で形成される。
【0026】
穿孔パネル28、61、63によって、排気処理モジュール10の音響吸収を最適化するように設計することができる。孔径は、ほとんど音響抵抗がなく、高いリアクタンスでミリメートルまたはセンチメートルの程度で提供されてもよく、または高い音響抵抗を提供するサイズでサブミリメートルであってもよい。好ましくは、穴の直径は、穴内の共振増幅振動の最適な減衰が可能となる穴内の定常流の音響境界層と同程度の大きさになるように選択される。
【0027】
MPPの性能の調整に最も役立つ幾何学的パラメーターは、穴内の空気分子の速度を制御する共振空洞の深さである。MPP吸収体は、粒子速度により、穴内の粘性摩擦が最大化され、粒子速度が高くなる場合に、最も効果的である。MPP吸収体の吸音が、穿孔穴とバッキング空洞の両方で、空気質量振動の共振によって支配されるため、共振周波数領域までで制限され、したがって、その帯域幅は、比較的狭くなる。
【0028】
MPP吸収体の垂直入射吸音係数の典型的な高調波解析を図9に示します。この吸収体では、MPP28は、直径0.8mmの穿孔穴、1.5mmのMPPの厚さ、0.4%の穿孔率(プレート総面積に対する穴の総面積の比率、および深さ300mmの共振空洞を有する。ピーク吸収は、約100Hzまたは120Hzで作られることができるため、50Hzまたは60HzでAC電源を供給する発電機の国際的な動作要件に合わせて最適化される。ピーク吸収は、回転電気機械の任意の適切な周波数、例えば、回転子の給電周波数、またはその高調波周波数でのピーク吸収で設計することもできる。
【0029】
さらに2つの潜在的なMPP吸収体が設計され、100Hzおよび120Hzで高い垂直入射吸音係数を有すると予測される。2つのMPPの寸法を以下に示す。
【表1】
【0030】
空洞深さが300mmの2つのタイプのMPP吸収体の予測垂直入射吸音係数は、図10に示されており、タイプ1はトレース101、タイプ2はトレース102を示している。
【0031】
図6をさらに参照すると、共振空洞29、61は、サイレンサーの空気の流れ方向に対して横方向に複数の区画に分割されてもよく、区画65は、空洞の幅に沿って間隔が空けられている(例えば、MPP28、62の平面に対して直交する区画)。共振空洞29、62が仕切られていない場合、グレージング波(MPP28、61に平行に伝搬する波)の音響吸収はあまり効果的でないことがある。しかしながら、MPPに垂直に伝播する波は、分割された空洞なしで等しく減衰される。研究によると、空洞を分割することによって、MPP28、61の背後で波の伝播が妨害され、MPPが従来の局所的に反応する吸収体のように動作するように強いられる。好ましくは、隣接する区画65の間の間隔は、最小で半音響波長未満であるはずである。設計例として、幅300mmの区画がある。
【0032】
図示の配置では、音響圧力波は、MPPに対して垂直に伝播するはずであり、したがって、分割は必要とされない場合がある。しかしながら、ランダム/グレージング入射音響波による性能の低下の潜在的なリスクを排除するために、図6に示すように、バッキング空洞は5つの個別の空洞62a、62b…62eに分割された。これには、図1に示すように、特に、構造の幅が発電機の軸方向の長さの実質的な部分に沿って延在する場合に、構造を剛性化するという更なる利点がある。代替構成では、別個の幅が狭められた音響スプリッタ11を、発電機の軸方向長さに沿って並べて配置することができる。
【0033】
図3を再参照すると、吸音柱20の第1の部分21と第2の部分22との間の間隔30を調整することにより、騒音低減のさらなる改善が達成され得る。好ましい配置としては、第1の部分21と第2の部分22との間の25mmの間隔で、最も高い騒音低減が達成されることが検出された。第1の部分21と第2の部分22との間(該当する場合、第2の部分22と第3の部分23との間)の間隔は、第1、第2、および第3の部分が図示しない支持フレームにボルト締めされることによって保持されてもよい。
【0034】
一般に、吸音柱20の第2の部分22によって2つ以上の反応型吸収体を提供することができ、反応型吸収体は空気の流れ方向に直列に配置される。例えば、図2を参照すると、下部の第2の部分22は、第1の周波数、例えば、50Hzまたは100Hzでの減衰用に調整されたMPP吸収体として構成されてもよく、上部の第2の部分22aは、第2の周波数、たとえば60Hzまたは120Hzでの減衰用に調整されたMPP吸収体として構成されてもよい。しかしながら、100Hzと120Hzを含む関心対象の周波数で、空洞の深さが260~300mmの範囲の場合、音響エネルギーの殆どは、最初の2つのMPP吸収体によって吸収され、2番目以降の反応型吸収体を追加することによって、さらなる騒音低減に大きく貢献しない場合もある。しかしながら、さらなる反応型吸収体を省略することは、空気の流れ抵抗の減少の原因となり、したがって、排気処理モジュール全体にわたって、予想される圧力低下を減少させるかもしれない。したがって、2つの直列取り付けの反応型吸収体は、多くの状況で最適な数であり得る。
【0035】
示されている実施例では、両方のタイプのMPP吸収体で100Hzおよび120Hzで最適な騒音低減を提供する空洞の深さ寸法は、上流空洞では260mm、下流空洞では300mmであることがわかった。
【0036】
MPP吸収体空洞の壁の構造コンプライアンスを考慮に入れることにより、サイレンサーをさらに改良することができる。MPP吸収体ボックス22は、好ましくは、動作中に曲がったり曲がったりしないように十分に硬い機械的構造でなければならず、および好ましくは、ハウジング自体から振動を拾わないように出口サイレンサーハウジングから機械的に隔離されるべきである。
【0037】
図10に示すように、2つのタイプのMPP(上記でタイプ1およびタイプ2として定義)の予測垂直入射吸収係数は、比較的狭い吸収帯域幅を有していてもよく、これにより200Hzおよび240Hz、そして潜在的にはより高い周波数でで、最適な騒音低減が低下する結果となる。MPPの吸収帯域幅は、図6図11に示すように、二重MPP層の配置を使用することで改善できる。
【0038】
図11および図13を参照すると、2層のMPP吸収体穴の予測垂直入射吸音係数は、図11に示すように、MPP穴直径=0.3mm、MPP厚さ=1mm、穿孔率=1.5%を有し、深さ300mm(D2)の空洞内に50mm間隔(D1)で離間して配置された2つのプレートを備え、図13に示すように、吸収係数スペクトル130を提供する。
【0039】
帯域幅を改善する別の方法は、図12に示すように、複数のチャネルまたはダクト121、122、123を備えた空洞120を使用することである。それぞれのチャネルの深さは、特定の周波数を減衰するように調整でき、チャネルの深さを増やすと、周波数吸収が低くなり、したがって、より広帯域の周波数吸収が実現できる。穴直径=0.3mm、MPP厚さ=1mm、穿孔率=1.5%であって、第1の空洞深さD1=150mm、第2の空洞の深さD2=225mm、および第3の空洞の深さD3=300mmを有するMPPの予測垂直入射吸音係数は、図13に示すように、吸収係数スペクトル131を提供する。したがって、一般的な態様では、共振空洞を、異なる深さD1、D2、D3を有する複数の区画121、122、123に分割してもよい。
【0040】
記載された実施形態は、発電機の回転子上の通気スロットからの空力音響騒音を吸収するように、特に調整されたサイレンサーを例示しているが、サイレンサーは、回転の結果として周期的な空気の動きを生成する傾向を有する、回転電気機械の任意の特徴に関して音響減衰を提供するように適合されることができると理解される。
【0041】
他の実施例は意識的に添付の特許請求の範囲に含まれるものとなっている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13