(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ノック式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/04 20060101AFI20230725BHJP
【FI】
B43K24/04
(21)【出願番号】P 2020558139
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039235
(87)【国際公開番号】W WO2020110461
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018224286
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019107514
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-78361(JP,A)
【文献】実開平1-165292(JP,U)
【文献】特開2004-17397(JP,A)
【文献】特開2014-65188(JP,A)
【文献】特開2018-108662(JP,A)
【文献】米国特許第3318289(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、
前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、
前記出没回転部材の前方部に、前記複数の突片の後端が当接する複数の当接部と、当該当接部よりも更に前方に突出する複数の突起部と、が設けられており、
前記複数の突起部の各々は、前記複数の突片の間の隙間に挿入されており、
前記複数の突起部の各々の前方において、前記隙間の一部が残存している
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】
前記軸筒は、前記筆記体を、後方に付勢された状態で、且つ、前後方向に移動可能に収容しており、
前記出没回転部材は、前記ノック部材の前後方向の移動に連動して、前後方向に移動するようになっており、前記ノック部材が前方に押圧される度に、当該ノック部材と共に前方に移動して、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるようになっている
ことを特徴とする請求項1に記載のノック式筆記具。
【請求項3】
前記複数の突片と前記複数の突起部とは、互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のノック式筆記具。
【請求項4】
前記複数の突片における前記複数の突起部との係合面、及び、前記複数の突起部における前記複数の突片との係合面は、前後方向に略平行に延在している
ことを特徴とする請求項3に記載のノック式筆記具。
【請求項5】
前記出没回転部材の前方部には、前記複数の突起部と一体的に、環状補助突起部が連設されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のノック式筆記具。
【請求項6】
前記環状補助突起部の内側面は、テーパ状の補助当接面となっており、
前記筆記体の後端部には、前記補助当接面に当接する補助テーパ部が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のノック式筆記具。
【請求項7】
前記複数の突片は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂により形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のノック式筆記具。
【請求項8】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記出没回転部材の前方部には、周方向に互いに離れて配置された複数の前方に突出する突起部が設けられており、
前記筆記体の後端に、前記複数の突起部の前端が当接する複数の当接部と、当該当接部よりも更に後方に突出する複数の突片と、が設けられており、
前記複数の突片の各々は、前記複数の突起部の間の隙間に挿入されており、
前記複数の突片の各々の後方において、前記隙間の一部が残存している
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項9】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記出没回転部材の前方部に、前方に突出する複数の突起部が設けられており、
前記筆記体の後端には、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、
前記柔軟部材は、多孔性の材料から形成されており、
前記複数の突起部と前記柔軟部材とは、前記複数の突起部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっている
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項10】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記出没回転部材の前方部に、前方に突出する複数の突起部が設けられており、
前記筆記体の後端には、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、
前記柔軟部材には、前記空気孔に連通すると共に当該柔軟部材の後端または側面において開口された接続空気孔が設けられており、
前記複数の突起部と前記柔軟部材とは、前記複数の突起部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっている
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項11】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、
前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、
前記出没回転部材の前方部に、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、
前記柔軟部材は、多孔性の材料から形成されており、
前記複数の突片と前記柔軟部材とは、前記複数の突片の後方側の少なくとも一部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっている
ことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項12】
前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔が開口された筆記体と、
前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、
前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、
前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、
前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、
を備え、
前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、
前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、
前記出没回転部材の前方部に、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、
前記複数の突片と前記柔軟部材とは、前記複数の突片の後方側の一部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっている
ことを特徴とするノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性インキが内蔵された筆記体を備えたノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ノック部材を前方に押圧する度にペン先が出没するノック式筆記具が知られている。
【0003】
特許文献1には、そのようなノック式ボールペンが開示されている。当該ノック式ボールペンは、ペン先を出没させるための回転カム部材を備えている。また、回転カム部材の前面に、インキ収容管の後端開口部内に挿入される突出部と、インキ収容管の後端に当接する当接部と、が設けられており、前記突出部の外面には、インキ収容管の後端開口部の内周縁部に圧接される傾斜面状の圧接部が設けられている。これにより、当該圧接部より前方の突出部の外面とインキ収容管の内面とは、非接触状態となっている。更に、前記圧接部の一部に前後方向に延びる切欠部が設けられ、当該切欠部と連通する凹部が前記当接部の一部に設けられている。このため、回転カム部材の当接部とインキ収容管の後端とが当接した状態において、前記切欠部と前記凹部とにより、インキ収容管の内部と外部とを連通させる空気通路が形成されている。これにより、インキ収容管のインキに対する空気置換がスムーズとなり、円滑な吐出性能が得られるようになっている。
【0004】
更に、最近では、ノック部材を前方に押圧する度に、ペン先が出没することに加えてペン先が回転するようなノック式筆記具も知られている。このようにペン先が回転する筆記具は、ペン先の摩耗を均等化することができるため、市場において人気がある。
【0005】
特許文献2には、そのようなノック式筆記具が開示されている。当該ノック式筆記具は、ペン先の偏った磨耗を回避する目的で、回転カムの回転とともにレフィールも回転するようになっている。また、特許文献2に記載された構成例では、レフィールの尾栓の頭部端面に、円周方向にV字状に刻まれた被係合部が形成され、回転カムの先端面に、前記被係合部に係合するような円周方向に逆V字状に刻まれた係合部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-17397号公報
【文献】特開平11-78361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱変色性インキは、ペン先からのインキ吐出量が比較的多い。このため、熱変色性インキを用いる筆記具に特許文献1に記載された構成を適用すると、インキ収容管の外部からインキ収容管の内部への空気の取り込みが不十分で、ペン先からの円滑なインキ吐出性が得られないおそれがある(筆跡途切れを生じさせるおそれがある)。
【0008】
同様に、熱変色性インキを用いる筆記具に特許文献2に記載された構成を適用すると、レフィールの内部と外部とを連通させる大きな空気通路を設けることが困難であるため、ペン先からの円滑なインキ吐出性が得られないおそれがある(筆跡途切れを生じさせるおそれがある)。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決することを目的とするものである。すなわち、本発明の目的は、熱変色性インキを用いるノック式筆記具であって、ペン先からの円滑なインキ吐出性が得られ、しかも、ノック操作の度にペン先を回転させることができるノック式筆記具を提供することである。
【0010】
なお、本明細書において、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、前記出没回転部材の前方部に、前記複数の突片の後端が当接する複数の当接部と、当該当接部よりも更に前方に突出する複数の突起部と、が設けられており、前記複数の突起部の各々は、前記複数の突片の間の隙間に挿入されており、前記複数の突起部の各々の前方において、前記隙間の一部が残存していることを特徴とするノック式筆記具が提供される。
【0012】
当該構成によれば、複数の突片の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0013】
例えば、前記軸筒は、前記筆記体を、後方に付勢された状態で、且つ、前後方向に移動可能に収容しており、前記出没回転部材は、前記ノック部材の前後方向の移動に連動して、前後方向に移動するようになっており、前記ノック部材が前方に押圧される度に、当該ノック部材と共に前方に移動して、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるようになっている。
【0014】
この場合、筆記体を後方に付勢する力がノック部材にも作用するため、ノック部材が自動的に復帰する効果を得ることができ、操作感及び操作性が良い。
【0015】
また、前記複数の突片と前記複数の突起部とは、互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっていることが好ましい。
【0016】
これにより、簡易な構成でありながら、出没回転部材と筆記体との周方向の係合を確実に達成することができる。
【0017】
また、この場合、更に、前記複数の突片における前記複数の突起部との係合面、及び、前記複数の突起部における前記複数の突片との係合面は、前後方向に略平行に延在していることが好ましい。
【0018】
これによれば、互いの係合面がより効率的に係合するため、出没回転部材と筆記体との周方向の係合をより一層確実に達成することができる。
【0019】
また、前記出没回転部材の前方部には、前記複数の突起部と一体的に、環状補助突起部が連設されていることが好ましい。
【0020】
これによれば、複数の突起部を効果的に補強することができ、複数の突起部の破損等を防止することができる。
【0021】
また、前記環状補助突起部の内側面は、テーパ状の補助当接面となっており、前記筆記体の後端部には、前記補助当接面に当接する補助テーパ部が設けられていることが好ましい。
【0022】
これによれば、テーパ状の補助当接面を利用して、筆記体の後端部を更に安定的に支持することができる。更に、補助当接面及び補助テーパ部がテーパ状であることにより、いわゆる「芯出し」作用を得ることもできる。
【0023】
また、前記複数の突片は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂により形成されていることが好ましい。
【0024】
これによれば、複数の突片に十分な強度を持たせることが可能となり、折れや座屈が効果的に防止され、出没回転部材の回転に伴う筆記体の安定した回転が得られる。
【0025】
また、本発明の第2の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記出没回転部材の前方部には、周方向に互いに離れて配置された複数の前方に突出する突起部が設けられており、前記筆記体の後端に、前記複数の突起部の前端が当接する複数の当接部と、当該当接部よりも更に後方に突出する複数の突片と、が設けられており、前記複数の突片の各々は、前記複数の突起部の間の隙間に挿入されており、前記複数の突片の各々の後方において、前記隙間の一部が残存していることを特徴とするノック式筆記具が提供される。
【0026】
当該構成によれば、複数の突起部の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0027】
また、本発明の第3の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記出没回転部材の前方部に、前方に突出する複数の突起部が設けられており、前記筆記体の後端には、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、前記柔軟部材は、多孔性の材料から形成されており、前記複数の突起部と前記柔軟部材とは、前記複数の突起部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっていることを特徴とするノック式筆記具である。
【0028】
当該構成によれば、多孔性の材料から形成された柔軟部材によって通気性を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0029】
また、本発明の第4の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記出没回転部材の前方部に、前方に突出する複数の突起部が設けられており、前記筆記体の後端には、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、前記柔軟部材には、前記空気孔に連通すると共に当該柔軟部材の後端または側面において開口された接続空気孔が設けられており、前記複数の突起部と前記柔軟部材とは、前記複数の突起部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっていることを特徴とするノック式筆記具が提供される。
【0030】
当該構成によれば、接続空気孔を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0031】
また、本発明の第5の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、前記出没回転部材の前方部に、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、前記柔軟部材は、多孔性の材料から形成されており、前記複数の突片と前記柔軟部材とは、前記複数の突片の後方側の少なくとも一部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっていることを特徴とするノック式筆記具である。
【0032】
当該構成によれば、多孔性の材料から形成された柔軟部材によって通気性を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0033】
また、本発明の第6の態様によれば、前端にペン先が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する(途中に追従体が介在していてもよい)空気孔が開口された筆記体と、前記筆記体を、前後方向に移動可能に収容する軸筒と、前記軸筒の外面に設けられ、当該軸筒に対して前後方向に移動可能なノック部材と、前記ノック部材が前方に移動される度に、前記軸筒の前端から前記ペン先を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体を回転させる出没回転部材と、前記軸筒内に設けられ、前記ノック部材の位置に応じて前記出没回転部材と係合または係合解除可能なカム部と、を備え、前記筆記体の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片が設けられており、前記複数の突片の間の隙間は、前記空気孔と連通しており、前記出没回転部材の前方部に、弾性変形可能な柔軟部材が設けられており、前記複数の突片と前記柔軟部材とは、前記複数の突片の後方側の一部が前記柔軟部材を弾性変形させながら当該柔軟部材の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材の回転に伴って前記筆記体が回転するようになっていることを特徴とするノック式筆記具である。
【0034】
当該構成によれば、柔軟部材の内部に没入しない部分の複数の突片の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の第1の態様によれば、複数の突片の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、複数の突起部の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、多孔性の材料から形成された柔軟部材によって通気性を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0038】
本発明の第4の態様によれば、接続空気孔を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0039】
本発明の第5の態様によれば、多孔性の材料から形成された柔軟部材によって通気性を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0040】
本発明の第6の態様によれば、柔軟部材の内部に没入しない部分の複数の突片の間の隙間を十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の第1実施形態のノック式筆記具のペン先没入状態の縦断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のノック式筆記具のペン先突出状態の縦断面図である。
【
図17】熱変色性インキの変色挙動を示す説明図である。
【
図18】回転カム機構の原理を説明する概略図である。
【
図19】出没回転部材と筆記体後端との当接状態を示す縦断面図である。
【
図20】出没回転部材と筆記体後端との当接状態を示す斜視図である。
【
図21】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図4に対応する図である。
【
図22】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図13に対応する図である。
【
図23】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図14に対応する図である。
【
図24】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図15に対応する図である。
【
図25】
図24のD-D線断面図である。(本発明の第1実施形態の変形例についての、
図16に対応する図である。)
【
図26】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図19に対応する図である。
【
図27】本発明の第1実施形態の変形例についての、
図20に対応する図である。
【
図28】本発明の第2実施形態の筆記体の後端部の斜視図である。
【
図29】本発明の第3実施形態の筆記体の後端部の斜視図である。
【
図30】本発明の第3及び第4実施形態の筆記体後端と回転部材との当接状態を示す正面図である。
【
図31】
図30のE-E線断面図である。(本発明の第3及び第4実施形態の筆記体後端と回転部材との当接状態を示す縦断面図である。)
【
図32】本発明の第3実施形態の柔軟部材の断面図である。
【
図33】本発明の第3実施形態の変形例についての、
図19に対応する図である。
【
図34】本発明の第4実施形態の筆記体の後端部の斜視図である。
【
図35】本発明の第4実施形態の柔軟部材の断面図である。
【
図36】本発明の第4実施形態の変形例についての、
図19に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0043】
(第1実施形態の構成)
本発明の第1実施形態のノック式筆記具を
図1乃至
図20に示す。本実施形態のノック式筆記具1は、軸筒2と、当該軸筒2内に収容される筆記体6と、当該筆記体6のペン先61を軸筒2の前端孔31aより出没自在にさせる出没機構と、を備える。
【0044】
・筆記体
本実施形態の筆記体6が、
図3乃至
図5に示されている。
図3を参照して、筆記体6は、ペン先61と、当該ペン先61が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管62と、当該インキ収容管62内に充填された熱変色性インキと、当該熱変色性インキの後端側に隣接して充填され当該熱変色性インキの消費に伴って前進する追従体(例えば高粘度流体)と、インキ収容管62の後端開口部に取り付けられた尾栓63と、からなる。尾栓63には、後端に向けて開口する空気孔63aが設けられている。空気孔63aは、インキ収容管62の内部と外部とを通気可能としている。
【0045】
ペン先61は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または、そのようなボールペンチップと当該ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーとの組合せからなる構成、のいずれかである。ペン先61の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容されている。当該スプリングは、例えば、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成となっており、当該ロッド部の前端がボールの後面と接触している。非筆記時には、当該スプリングの前方付勢により、ボールはボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接されている。これにより、ペン先61の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発が防止されている。
【0046】
そして、本実施形態の筆記体6の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の突片63bが設けられている。
【0047】
・尾栓
本実施形態の尾栓63は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂)の成形体により得られる略円筒状の部材である。
図3を参照して、尾栓63は、前端部の小径部63dと、当該小径部63dより後方側に一体に連設された大径部63eと、当該大径部63eより更に後方側に一体に連設された鍔部63fと、当該鍔部63fより更に後方側に一体に連設された複数の突片63bと、を有している。
【0048】
尾栓63の大径部63eの外面には、環状の外向突起63p(
図19参照)が形成されている。インキ収容管62に取り付けられる際、当該環状の外向突起63pが、インキ収容管62の後端部の内面に環状に圧入嵌合される。また、この際、鍔部63fの前面がインキ収容管62の後端に当接される(
図19参照)。
【0049】
また、尾栓63には、軸方向(前後方向)に空気孔63aが貫通されている。そして、各々の突片63bの間には、切り欠き状のパターンで隙間63cが形成されていて、当該隙間63cが空気孔63aと径方向に連通されている。これらの隙間63c及び空気孔63aによって、インキ収容管62の内部と外部とが空気流通可能となっている。
【0050】
なお、複数の突片63bの各々は、鍔部63fの後方側に一体的に形成される態様に限定されず、互いに別体に構成されてから結合等されてもよい。
【0051】
・軸筒
本実施形態の軸筒2は、先細円筒状の前軸3と、当該前軸3の後端部に連結される円筒状の中間軸4と、当該中間軸4の後端部に連結される円筒状の後軸5と、からなる。
【0052】
・前軸
本実施形態の前軸3は、先細状の金属材料からなる先口部31(
図6及び
図7参照)と、当該先口部31の後端に接続された合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる円筒状の本体32(
図8及び
図9参照)と、当該本体32の外面上に設けられた弾性材料からなる把持部33(
図8及び
図9参照)と、からなる。
【0053】
先口部31と本体32とは、螺着によって結合される。例えば、先口部31の後端部の内面に雌ネジ部が形成され、本体32の前端部(縮径部)の外面に雄ネジ部が形成され、それらの雌ネジ部及び雄ネジ部が着脱自在に螺着される。
【0054】
把持部33は、本体32の外面上に、例えば2色成形によって形成されるか、あるいは、別途に構成された後で装着される。
【0055】
図9を参照して、前軸3の後端部(本体32の後端部)は縮径されており、その外面に雄ネジ部が形成されている。当該雄ネジ部が、中間軸4の前端部の内面に形成された雌ネジ部と着脱自在に螺着される。
【0056】
一方、
図6及び
図7を参照して、前軸3の前端部(先口部31の前端部)には、前端孔31aが前後方向に貫設されている。
【0057】
・中間軸
図10を参照して、本実施形態の中間軸4は、略円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。中間軸4の前端部の内面には、雌ネジ部が形成されており、当該雌ネジ部が前軸3の後端部の雄ネジ部と螺合可能となっている。中間軸4の後端部には、縮径部が一体に形成されている。
【0058】
当該縮径部には、前後方向に延びる第1の長孔41が設けられている。第1の長孔41の前端は、中間軸4の側壁によって閉鎖されている一方、第1の長孔41の後端は、中間軸4の後端まで延びている(中間軸4の後端において開放されている)。
【0059】
さらに、縮径部の外面には、外向突起44が一体に形成されている。縮径部より前方の中間軸4の内面には、段部42が一体に形成されている。
【0060】
そして、段部42より更に前方の中間軸4の内面に、カム部43が一体に形成されている。カム部43は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯43aと、当該カム歯43aの間に形成される前後方向に延びる複数のカム溝43bと、を有している。
【0061】
また、第1の長孔41の前端は、段部42(カム部43の後端)よりも僅かに前方に位置しており、且つ、カム部43のカム歯43aよりも後方に位置している。
【0062】
・後軸
図11を参照して、本実施形態の後軸5は、略円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。後軸5の前端部の側壁には、第2の長孔51が形成されている。第2の長孔51の後端は、後軸5の側壁によって閉鎖されている一方、第2の長孔51の前端は、後軸5の前端まで延びている(後軸5の前端において開放されている)。
【0063】
また、後軸5の後端部には、取付孔52が前後方向に貫設されている。当該取付孔52に、弾性材料からなる摩擦部53が圧入嵌合されている。これにより、後軸5の後端部の外面に、摩擦部53が固定されている。また、後軸5の内面には、内向突起54が一体に形成されている。
【0064】
摩擦部53を構成する弾性材料は、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。
【0065】
摩擦部53を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、摩擦部53は、様々な態様で軸筒2の後端部外面に設けられ得る。例えば、軸筒2の後端部の外面もしくは後軸5の後端部の外面に弾性材料よりなる摩擦部53を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって設ける態様の他、軸筒2の全体もしくは後軸5の全体を弾性材料によって一体に形成する態様でもよい。
【0066】
なお、第2の長孔51の幅寸法は、第1の長孔41の幅寸法と等しく設定されている。これにより、後述されるように、スライド孔21(=第1の長孔41+第2の長孔51)に沿ったノック部材8の前後方向のスムーズな移動が可能となっている。摩擦部53は、ノック部材8の前後方向の移動には連動しない。
【0067】
・ノック部材
図1、
図2及び
図12を参照して、本実施形態のノック部材8には、前後方向に延びるクリップ83が固定されている。クリップ83の裏面には、玉部83aが突設されている。ノック部材8は、クリップ83の後端部が固定される基部81と、当該基部81と一体に連設され且つ当該基部81より前方に延びる円筒状の軸部82と、からなる。
【0068】
ノック部材8は、例えば合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。クリップ83は、例えば金属材料(例えばステンレス鋼)から得られる。
【0069】
図12に示すように、軸部82の前端には、出没回転部材7の突条71の後端(
図13乃至
図16参照)と係合するカム歯82aが一体に形成されている。
【0070】
ここで、ノック部材8の組付けについて説明する。ノック部材8の基部81を、中間軸4の第1の長孔41の後端(開放部)より、当該第1の長孔41内へと挿入すると共に、ノック部材8の軸部82を中間軸4内に挿入する。その後、中間軸4の第1の長孔41と後軸5の第2の長孔51とが径方向に連通するように(径方向に重なるように)、後軸5の内面を中間軸4の縮径部の外面に嵌合させながら、ノック部材8の基部81を、後軸5の第2の長孔51の前端(開放部)より、当該第2の長孔51内へと挿入する。これにより、中間軸4と後軸5とが連結される(中間軸4の外向突起44と後軸5の内向突起54とが乗り越え係合される)と共に、第1の長孔41と第2の長孔51とによって前後方向に延びるスライド孔21が形成され、当該スライド孔21から径方向外方にノック部材8が突出された状態となる。ノック部材8は、スライド孔21に沿って、前後方向にスライド可能(前後方向に摺動可能)となっている。
【0071】
後端に摩擦部53が固定された後軸5が、中間軸4の後端部に連結されることによって、摩擦部53は軸筒2の後端に常時固定された状態となる。また、前軸3と中間軸4とが螺合によって着脱自在に連結されているため、筆記体6は随時に交換可能である。
【0072】
・出没機構
本実施形態の出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構であり、前述のノック部材8と、ノック部材8が前方に移動される度に軸筒2の前端孔31aからペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に筆記体6(従ってペン先61)を回転させる出没回転部材7(後述される)と、軸筒2内に設けられノック部材8の位置に応じて出没回転部材7と係合または係合解除可能な前述のカム部43と、軸筒2内に設けられ且つ筆記体6を後方に付勢する弾発体9(例えば圧縮コイルスプリング)と、からなる。
【0073】
本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック部材8を前方に押圧操作(前方にスライド操作)するダブルノック式である。
【0074】
・出没回転部材
図13乃至
図16を参照して、本実施形態の出没回転部材7は、その外面に前後方向に延びる複数本(例えば4本)の突条71を有する大径の前部と、当該前部の後方に一体に連設された有底略円筒状の小径の後部と、を有する。複数本の突条71の各々は、カム部43のカム歯43a及びカム部43のカム溝43bと係合可能となっている。
【0075】
出没回転部材7は、例えば合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。また、出没回転部材7の後部外面には、外向突起78が形成されており、当該外向突起78は、ノック部材8の軸部82の内面の内向突起88と乗り越え係合している。これにより、ノック部材8と出没回転部材7の抜け止めがなされる一方で、出没回転部材7はノック部材8に対して前後方向の「あそび」(移動可能量)を有することができ、且つ、ノック部材と出没回転部材7とは周方向には互いに回転可能となっている。前後方向の「あそび」は、出没回転部材7の突条71とカム歯82aとの係脱が可能な程度の小さい寸法(カム歯82aの山部と谷部との高さの差(軸方向距離):
図18参照)に設定されている。
【0076】
そして、出没回転部材7の前面には、前方に突出された複数(例えば3個)の突起部72が一体に形成されている。突起部72は、放射状に、すなわち、周方向に等間隔に、配置されている。
【0077】
また、出没回転部材7の前面には、環状補助突起部74も一体に形成されている。環状補助突起部74の径方向内面は、複数の突起部72の各々の径方向外端部と一体に連設されている。
【0078】
更に、環状補助突起部74の内側面は、テーパ状の補助当接面74tとなっており、突片63bの後端部には、補助当接面74tに当接する補助テーパ部63tが設けられている(
図4参照)。このような構成によって、テーパ状の補助当接面74tを利用して、突片63bを更に安定的に支持することができる。更に、補助当接面74t及び補助テーパ部63tがテーパ状であることにより、いわゆる「芯出し」作用を得ることもできる。
【0079】
そして、出没回転部材7の前面には、平面状(前後方向に対して垂直な面状)の複数の(例えば3領域の)当接部73が形成されている。各当接部73は、環状補助突起部74の径方向内方であって且つ複数の突起部72の間に形成されている。当該当接部73に、尾栓63の突片63bの後端が当接されている。一方、突起部72の各々が、尾栓63の突片63bの間の隙間63cに挿入されている。突起部72の軸方向の長さは、突片63bの軸方向の長さよりも小さく形成されている。これにより、突起部72の各々の前方において、隙間63cの一部が残存していて、空気孔63aを介してのインキ収容管62への十分な空気取り込みを許容している。
【0080】
また、突起部72の各々の頂部(前端部)は、凸曲面(例えば断面半円形の筒状(かまぼこ状))となっている。これにより、筆記体6が軸筒2内に挿入される際に突起部72の頂部が突片63bの後端に接触したとしても、筆記体6の回転が円滑に促され、突起部72が突片63bの間へとスムーズに案内され得る。
【0081】
また、突起部72の周方向の幅寸法は、尾栓63の突片63bの間の隙間63cの周方向の幅寸法より小さく設定されている。これにより、突起72の側面と突片63bの側面との間においても空気通路が形成されている。
【0082】
なお、本実施形態では、環状補助突起部74の前端と突起部72の前端とは、軸方向に略同じ位置に配置されているが、突起部72の前端を環状補助突起部74の前端よりも前方に位置させてもよい。
【0083】
・熱変色性インキ
本実施形態において、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであることが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0084】
可逆熱変色性インキに含有される色材としては、例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び、(ハ)前記両者が化学的に結びつく反応(呈色反応)の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0085】
図17は、本実施形態の熱変色性インキについて、温度変化による着色濃度の変化をプロットしたグラフである。
図17に示すように、本実施形態の熱変色性インキにおいては、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と、温度を逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで、異なる経路を辿って変色する。
【0086】
より詳細には、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、または、完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域(t2~t3:実質的二相保持温度域と呼ばれる)において記憶保持できるようになっている。このような性質を有するインキは、色彩記憶保持型熱変色性インキと呼ばれる。
【0087】
また、
図17におけるΔHが、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示している。ΔHの値が小さいと、変色前後の各状態を保持することが難しく、ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態を保持することが容易である。
【0088】
本実施形態の熱変色性インキは、摩擦部53の摩擦熱によって変色することを想定しており、完全消色温度(高温側変色点:t4)を25℃~95℃(好ましくは、36℃~90℃)の範囲に設定する一方、完全発色温度(低温側変色点:t1)を-30℃~+20℃(好ましくは、-30℃~+10℃)の範囲に設定している。これにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩を、有効に保持することができる。従って、可逆熱変色性インキによる筆跡を、摩擦部53による摩擦熱で、容易に変色させることができる。
【0089】
(第1実施形態の作用:ペン先の出没機能)
図18は、回転カム機構の原理を説明する概略図である。
図18を参照して、ペン先没入状態(
図18(a)参照)からノック部材8が弾発体9による後方付勢に抗して前方に押圧操作(スライド操作)されると、ノック部材8の軸部82の前端のカム歯82aを介して、当該カム歯82aに係合していた出没回転部材7の突条71が前方に押圧される。出没回転部材7の突条71は、カム溝43bに沿って、前方に移動されていく。
【0090】
出没回転部材7の突条71が前方に移動される際、当該出没回転部材7は、当接部73と尾栓63の突片63bとの当接関係を介して、筆記体6を前方に押圧する。そして、ペン先61を前端孔31aより外部に突出させる。
【0091】
ノック部材8のノック操作の最深位置において、突条71の後端は、カム部43のカム溝43bを抜け出て、ノック部材8のカム歯82aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って出没回転部材7は僅かに周方向に回転する(
図18(b)参照)。
【0092】
引き続いて、弾発体9による後方付勢によってノック部材8が元の位置に戻ると、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って出没回転部材7は更に周方向に回転する(
図18(c)参照)。また、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの谷部の位置に留まるため、ペン先突出状態が維持される。
【0093】
次に、ペン先突出状態(
図18(c)参照)からノック部材8が前方に押圧操作(スライド操作)されると、ノック部材8の軸部82の前端のカム歯82aによって再び出没回転部材7の突条71の後端が係合されて前方に押圧される。
【0094】
ノック部材8のノック操作の最深位置において、突条71の後端は、カム部43のカム歯43aの山部(歯)を乗り越え、ノック部材8のカム歯82aの谷部に落ち込むように移動し、これに伴って、出没回転部材7は僅かに周方向に回転する(
図18(d)参照)。また、引き続いて、弾発体9による後方付勢によってノック部材8が元の位置に戻ると、突条71は、カム溝43b内に導入され、ペン先没入状態が維持される(
図18(a)参照)。
【0095】
(第1実施形態の作用:ペン先の回転機能)
図19及び
図20に、尾栓63の突片63bと出没回転部材7の当接部73との当接状態が示されている。
【0096】
出没回転部材7の前面の当接部73が、筆記体6の後端の尾栓63の突片63bに当接されると共に、出没回転部材7の前面の複数の突起部72が、筆記体6の後端の尾栓63の突片63bの間の隙間63cに挿入されて、周方向に係合されている。これにより、出没回転部材7の周方向の回転に伴って、筆記体6も周方向に回転される。
【0097】
ここで、尾栓63の突片63bの係合面63g(突片63bの周方向の側面)と出没回転部材7の突起部72の係合面72a(突起部72の周方向の側面)とが、何れも前後方向(軸方向)に略平行に延在しているため、出没回転部材7と筆記体6との周方向の係合をより一層確実に達成することができる。
【0098】
突片63bの間の隙間63cの周方向の幅寸法は、突起部72の周方向の幅寸法より大きく設定される。例えば、突片63bの間の隙間63cの周方向の幅寸法は1.5mmに設定され得て、突起部72の周方向の幅寸法は、0.7mmに設定され得る。
【0099】
また、突起部72の軸方向の突出長さ(突起部72が当接部73から前方に突出する軸方向の長さ)は、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましい。また、突片63bの軸方向の突出長さ(突片63bの後端(先端)から突片63bの基端までの軸方向の長さ)は、2mm以上5mm以下であることが好ましい。これらの条件が満たされる場合、突起部72と突片63bとの更に確実な係合が得られる。
【0100】
(第1実施形態の作用:適正な空気の取り込み)
一方、突片63bの軸方向の突出長さと突起部72の軸方向の突出長さとの差は、1mm以上であることが好ましい。これにより、突起部72の各々の前方において、隙間63cが残存されるため、空気孔63aを介してのインキ収容管62への十分な空気取り込みが保証される。これにより、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0101】
(第1実施形態による効果)
以上のような本実施形態のノック式筆記具1は、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63aが開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えており、前記筆記体6の後端には、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片63bが設けられており、前記複数の突片63bの間の隙間63cは、前記空気孔63aと連通しており、前記出没回転部材7の前方部に、前記複数の突片63bの後端が当接する複数の当接部73と、当該当接部73よりも更に前方に突出する複数の突起部72と、が設けられており、前記複数の突起部72の各々は、前記複数の突片63bの間の隙間63cに挿入されており、前記複数の突起部72bの各々の前方において、前記隙間63cの一部が残存している。
【0102】
このような構成によって、複数の突片63bの間の隙間63cを十分に確保することができ、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0103】
また、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記軸筒2は、前記筆記体6を、後方に付勢された状態で、且つ、前後方向に移動可能に収容しており、前記出没回転部材7は、前記ノック部材8の前後方向の移動に連動して、前後方向に移動するようになっており、前記ノック部材8が前方に押圧される度に、当該ノック部材8と共に前方に移動して、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるようになっている。
【0104】
このような構成によって、筆記体6を後方に付勢する力がノック部材8にも作用するため、ノック部材8が自動的に復帰する効果を得ることができ、操作感及び操作性が良い。
【0105】
また、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記複数の突片63bと前記複数の突起部72とは、互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材7の回転に伴って前記筆記体6が回転するようになっている。
【0106】
このような構成によって、簡易な構成でありながら、出没回転部材7と筆記体6との周方向の係合を確実に達成することができる。
【0107】
更に、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記複数の突片63bにおける前記複数の突起部72との係合面63g、及び、前記複数の突起部72における前記複数の突片63bとの係合面72aは、前後方向に略平行に延在している。
【0108】
このような構成によって、互いの係合面がより効率的に係合するため、出没回転部材7と筆記体6との周方向の係合をより一層確実に達成することができる。
【0109】
また、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記出没回転部材7の前方部に、前記複数の突起部72と一体的に、環状補助突起部74が連設されている。
【0110】
このような構成によって、複数の突起部72を効果的に補強することができ、複数の突起部72の破損等を防止することができる。
【0111】
更に、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記環状補助突起部74の内側面は、テーパ状の補助当接面74tとなっており、前記筆記体6の後端部(突片63bの後端部)には、前記補助当接面74tに当接する補助テーパ部63tが設けられている。
【0112】
このような構成によって、テーパ状の補助当接面74tを利用して、筆記体6の後端部を更に安定的に支持することができる。更に、補助当接面74t及び補助テーパ部63tがテーパ状であることにより、いわゆる「芯出し」作用を得ることもできる。
【0113】
また、本実施形態のノック式筆記具1によれば、前記複数の突片63bは、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂により形成されている。
【0114】
このような構成によって、複数の突片63bに十分な強度を持たせることが可能となり、折れや座屈が効果的に防止され、出没回転部材7の回転に伴う筆記体の安定した回転が得られる。
【0115】
なお、本実施形態の変形例として、ノック部材8は、軸筒2の後端より後方に突出された構成であってもよい。
【0116】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、突片63bの軸方向の突出長さを、突起部72の軸方向の突出長さよりも長くしている。しかしながら、突起部72の軸方向の突出長さを、突片63bの軸方向の突出長さより長くしてもよい。この場合、突片63bの各々の後方において、隙間72cが残存されることになり、やはり空気孔63aを介してのインキ収容管62への十分な空気取り込みが保証される。
【0117】
【0118】
図21乃至
図27に示すように、当該変形例のノック式筆記具も、第1実施形態のノック式筆記具1と同様に、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63aが開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えており、前記出没回転部材7の前方部には、周方向に互いに離れて配置された複数の前方に突出する突起部72が設けられている。
【0119】
一方、当該変形例では、前記筆記体6の後端に、前記複数の突起部72の前端が当接する複数の当接部63vと、当該当接部63vよりも更に後方に突出する複数の突片63bと、が設けられている。そして、前記複数の突片63bの各々は、前記複数の突起部72の間の隙間72cに挿入されており、前記複数の突片63bの各々の後方において、前記隙間72cの一部が残存している。
【0120】
本実施形態のその他の構成については、
図1乃至
図20を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図21乃至
図27において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0121】
当該変形例によれば、複数の突起部72の間の隙間72cを十分に確保することができ、ペン先からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0122】
なお、この場合も、突片63bの軸方向の突出長さと突起部72の軸方向の突出長さとの差は、1mm以上であることが好ましい。
【0123】
(第2実施形態の構成)
続いて、
図28は、本発明の第2実施形態の筆記体6の後端部の斜視図である。
【0124】
図28に示すように、本実施形態の筆記体は、尾栓を有しておらず、インキ収容管62の後端に複数の突片63bが一体に形成されている。また、インキ収容管62の後端に、インキ収容管62の内部と外部とを通気可能な空気孔63aが開口されている。
【0125】
突片63bの間には、切り欠き状の隙間63cが形成されており、各隙間63cは、空気孔63aと径方向に連通されている。隙間63c及び空気孔63aによって、インキ収容管62の内部と外部とが空気流通可能となっている。
【0126】
本実施形態のその他の構成については、
図1乃至
図20を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図28において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0127】
本実施形態によれば、突片63bがインキ収容管62の後端に一体に形成されているため、出没回転部材7の回転に伴う筆記体6のより確実な回転が得られる。また、部品点数を減らすことが可能となり、生産性が向上する。
【0128】
突片63bをインキ収容管62と一体に形成する好適な方法は、インキ収容管62の後端部を切削加工することである。これにより、突片63bの形状を確実に形成することができ、出没回転部材7の回転に伴う筆記体6のより確実な回転が得られる。
【0129】
突片63bをインキ収容管62と一体に形成する好適な別の方法は、インキ収容管62を射出成形により形成することである。これにより、突片63bの形状を確実に形成することができ、出没回転部材7の回転に伴う筆記体6のより確実な回転が得られる。また、インキ収容管62の射出成形と同時にインキ収容管62の後端に突片63bを一体に形成できるため、生産性が向上する。
【0130】
(第3実施形態の構成)
続いて、
図29は、本発明の第3実施形態の筆記体6の後端部の斜視図であり、
図30は、出没回転部材7と第3実施形態の筆記体6の後端との当接状態を示す正面図であり、
図31は、
図30のE-E線断面図である。
【0131】
本実施形態のノック式筆記具も、第1実施形態のノック式筆記具1と同様に、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63aが開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えており、出没回転部材7の前方部に、前方に突出する複数の突起部72が設けられている。
【0132】
一方、本実施形態では、筆記体6の後端に(空気孔63aを覆うように)、弾性変形可能な柔軟部材64が設けられており、当該柔軟部材64は、多孔性の材料(例えばスポンジ等の多孔質体)から形成された円柱状部材である。筆記体6は、尾栓63を有しておらず、突片63bも有していない。
【0133】
柔軟部材64は、多孔性であることによって、(多数の小さい)通気孔64aを提供している。また、柔軟部材64は、
図32に示すように、例えば、前方側が細径部64dとなっており、中央部が小径部64eとなっており、後方側が大径部64fとなっており、インキ収容管62に取り付けられた状態において、小径部64eの外面がインキ収容管62の後端部の内面に圧入嵌合されるとともに、大径部64fの前面がインキ収容管62の後端に当接されている。通気孔64aによって、インキ収容管62の内部と外部とは空気流通可能となっている。
【0134】
そして、前記複数の突起部72と前記柔軟部材64とは、弾発体9の付勢力によって前記複数の突起部72が前記柔軟部材64を弾性変形させながら当該柔軟部材64の内部に没入する(
図30及び
図31参照)ことによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材7の回転に伴って前記筆記体6が回転するようになっている。
【0135】
本実施形態のその他の構成については、
図1乃至
図20を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図29乃至
図31において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0136】
本実施形態によれば、多孔性の材料から形成された柔軟部材64によって通気性を十分に確保することができ、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材64は、筆記時に筆記体6に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0137】
また、本実施形態によれば、柔軟部材64の弾性変形によって柔軟部材64と突起部72とが周方向に確実に係合されるため、出没回転部材7の回転に伴う筆記体6の確実な回転が得られる。
【0138】
更に、本実施形態によれば、柔軟部材64の弾性が、例えば柔軟部材64が下側の姿勢で筆記体6が落下した場合等において、筆記体6を衝撃から保護することができる。
【0139】
本実施形態において、柔軟部材64は、インキ収容管62の後端に一体的に形成されてもよい。柔軟部材64をインキ収容管62と一体的に形成する方法としては、接着、溶着、インサート成形等が挙げられる。
【0140】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、第1実施形態と同様の出没回転部材7を用いて、筆記体6の後端部に柔軟部材64を設けているが、
図33に示すように、第1実施形態と略同様の突片63b’を用いて、出没回転部材7’の前方部に柔軟部材を設けてもよい。
【0141】
このようなノック式筆記具も、第1実施形態のノック式筆記具1と同様に、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63a’が開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7’と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7’と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えている。
【0142】
当該変形例では、第1実施形態と略同様に、筆記体6の後端の鍔部63f’の更に後方に、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片63b’が設けられており、前記複数の突片63b’の間の隙間63c’は、前記空気孔63a’と連通している。但し、突片63b’の長さは第1実施形態の突片63b(
図19参照)の長さより短く、それに応じて隙間63c’の長さも第1実施形態の隙間63c(
図19参照)の長さより短くなっている(代わりに鍔部63f’の長さが第1実施形態の鍔部63f(
図19参照)の長さより長くなっている)。
【0143】
一方、当該変形例では、前記出没回転部材7’の前方部に、環状突起部74’内に収容されるように、弾性変形可能な柔軟部材79’が設けられる。当該柔軟部材79’は、例えば、多孔性の材料(例えばスポンジ等の多孔質体)から形成される。
【0144】
そして、前記複数の突片63b’と前記柔軟部材79’とは、弾発体9の付勢力によって前記複数の突片63b’の後方側の少なくとも一部(
図33の例では全部)が前記柔軟部材79’を弾性変形させながら当該柔軟部材79’の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材7’の回転に伴って前記筆記体6が回転するようになっている。
【0145】
このような変形例によっても、多孔性の材料から形成された柔軟部材79’によって通気性を十分に確保することができ、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体6に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0146】
また、このような変形例によっても、柔軟部材79’の弾性変形によって柔軟部材79’と突片63b’とが周方向に確実に係合されるため、出没回転部材7’の回転に伴う筆記体6の確実な回転が得られる。
【0147】
更に、このような変形例によっても、柔軟部材79’の弾性が、例えば柔軟部材79’が下側の姿勢で筆記体6が落下した場合等において、筆記体6を衝撃から保護することができる。
【0148】
(第4実施形態の構成)
続いて、
図34は、本発明の第4実施形態の筆記体の後端部の斜視図である。
【0149】
本実施形態のノック式筆記具も、第1実施形態のノック式筆記具1と同様に、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63aが開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えており、出没回転部材7の前方部に、前方に突出する複数の突起部72が設けられている。
【0150】
一方、本実施形態では、筆記体6の後端に(空気孔63aを覆うように)、弾性変形可能な柔軟部材64’が設けられており、当該柔軟部材64’は、熱可塑性エラストマーの成形体から形成された円筒体であって、前後方向(軸方向)に延びて後端において開口された通気孔64a’(接続空気孔)を有している。筆記体6は、尾栓63を有しておらず、突片63bも有していない。
【0151】
柔軟部材64’の通気孔64a’は、空気孔63aと連通している。また、柔軟部材64’も、
図35に示すように、例えば、前方側が細径部64d’となっており、中央部が小径部64e’となっており、後方側が大径部64f’となっており、インキ収容管62に取り付けられた状態において、小径部64e’の外面がインキ収容管62の後端部の内面に圧入嵌合されるとともに、大径部64f’の前面がインキ収容管62の後端に当接されている。通気孔64a’によって、インキ収容管62の内部と外部とは空気流通可能となっている。
【0152】
そして、前記複数の突起部72と前記柔軟部材64とは、弾発体9の付勢力によって前記複数の突起部72が前記柔軟部材64を弾性変形させながら当該柔軟部材64の内部に没入する(
図30及び
図31参照)ことによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材7の回転に伴って前記筆記体6が回転するようになっている。
【0153】
本実施形態のその他の構成については、
図1乃至
図20を用いて説明した第1実施形態と略同様である。
図34において、第1実施形態と同様の部分については、同様の符号を付している。また、本実施形態の第1実施形態と同様の部分については、詳しい説明を省略する。
【0154】
本実施形態によれば、柔軟部材64’の通気孔64a’によって通気性を十分に確保することができ、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。
【0155】
出没回転部材7の当接部73が柔軟部材64の後端面に当接する場合でも、突起部72と柔軟部材64との間に隙間ができるため、当該隙間が空気流通孔として機能することができる。これにより、通気性を十分に確保することができる。
【0156】
通気孔64a’に加えて、あるいは通気孔64a’の代わりに、柔軟部材64の側面に空気孔63aに連通する側面孔を開口させて、空気流通孔(接続空気孔)として機能させてもよい。
【0157】
また、柔軟部材64’は、筆記時に筆記体6に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0158】
また、本実施形態によれば、柔軟部材64’の弾性変形によって柔軟部材64’と突起部72とが周方向に確実に係合されるため、出没回転部材7の回転に伴う筆記体6の確実な回転が得られる。
【0159】
更に、本実施形態によれば、柔軟部材64’の弾性が、例えば柔軟部材64’が下側の姿勢で筆記体6が落下した場合等において、筆記体6を衝撃から保護することができる。
【0160】
本実施形態において、柔軟部材64’は、インキ収容管62の後端に一体的に形成されてもよい。柔軟部材64’をインキ収容管62と一体的に形成する方法としては、接着、溶着、インサート成形等が挙げられる。
【0161】
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態では、第1実施形態と同様の出没回転部材7を用いて、筆記体6の後端部に柔軟部材64’を設けているが、
図36に示すように、第1実施形態と略同様の突片63b”を用いて、出没回転部材7”の前方部に柔軟部材を設けてもよい。
【0162】
このようなノック式筆記具も、第1実施形態のノック式筆記具1と同様に、前端にペン先61が設けられ、内部に熱変色性インキが内蔵され、後端に前記熱変色性インキが内蔵される空間に連通する空気孔63a”が開口された筆記体6と、前記筆記体6を、前後方向に移動可能に収容する軸筒2と、前記軸筒2の外面に設けられ、当該軸筒2に対して前後方向に移動可能なノック部材8と、前記ノック部材8が前方に移動される度に、前記軸筒2の前端から前記ペン先61を突出または没入させるよう前後に移動すると共に、当該筆記体6を回転させる出没回転部材7”と、前記軸筒2内に設けられ、前記ノック部材8の位置に応じて前記出没回転部材7”と係合または係合解除可能なカム部43と、を備えている。
【0163】
当該変形例では、更に第1実施形態と略同様に、筆記体6の後端の鍔部63f”の更に後方に、周方向に互いに離れて配置された複数の後方に突出する突片63b”が設けられており、前記複数の突片63b”の間の隙間63c”は、前記空気孔63a”と連通している。
【0164】
一方、当該変形例では、前記出没回転部材7”の前方部に、環状突起部74”内に収容されるように、弾性変形可能な柔軟部材79”が設けられる。当該柔軟部材79”は、例えば、熱可塑性エラストマーの成形体から形成される。
【0165】
そして、前記複数の突片63b”と前記柔軟部材79”とは、弾発体9の付勢力によって前記複数の突片63b”の後方側の一部が前記柔軟部材79”を弾性変形させながら当該柔軟部材79”の内部に没入することによって互いに周方向に係合するようになっており、前記出没回転部材7”の回転に伴って前記筆記体6が回転するようになっている。
【0166】
このような変形例によっても、複数の突片63b”の前方側(基端側)の間の隙間によって通気性を十分に確保することができ、ペン先61からの熱変色性インキの吐出に応じた適正な空気の取り込みが可能となり、ペン先61から熱変色性インキを円滑に吐出させることができる。また、柔軟部材は、筆記時に筆記体6に加わる衝撃や力を吸収することもできるため、柔らかで書き心地の良い筆記感をユーザに提供することもできる。
【0167】
また、このような変形例によっても、柔軟部材79”の弾性変形によって柔軟部材79”と突片63b”とが周方向に確実に係合されるため、出没回転部材7”の回転に伴う筆記体6の確実な回転が得られる。
【0168】
更に、このような変形例によっても、柔軟部材79”の弾性が、例えば柔軟部材79”が下側の姿勢で筆記体6が落下した場合等において、筆記体6を衝撃から保護することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 ノック式筆記具
2 軸筒
3 前軸
4 中間軸
5 後軸
6 筆記体
7 出没回転部材
7’ 出没回転部材
7” 出没回転部材
8 ノック部材
9 弾発体
21 スライド孔
31 先口部
31a 前端孔
32 本体
33 把持部
41 第1の長孔
42 段部
43 カム部
43a カム歯
43b カム溝
44 外向突起
51 第2の長孔
52 取付孔
53 摩擦部
54 内向突起
61 ペン先
62 インキ収容管
63 尾栓
63’ 尾栓
63a 空気孔
63a’ 空気孔
63a” 空気孔
63b 突片
63b’ 突片
63b” 突片
63c 隙間
63c’ 隙間
63c” 隙間
63d 小径部
63e 大径部
63f 鍔部
63f’ 鍔部
63f” 鍔部
63g 係合面
63p 外向突起
63t 補助テーパ部
63v 当接部
64 柔軟部材
64’ 柔軟部材
64a 通気孔
64a’ 通気孔
64d 細径部
64d’ 細径部
64e 小径部
64e’ 小径部
64f 大径部
64f’ 大径部
71 突条
72 突起部
72a 係合面
72c 隙間
73 当接部
74 環状補助突起部
74’ 環状突起部
74” 環状突起部
74t 補助当接面
78 外向突起
79’ 柔軟部材
79” 柔軟部材
81 基部
82 軸部
82a カム歯
83 クリップ
83a 玉部
88 内向突起