(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド・ポリマー膜
(51)【国際特許分類】
B01D 69/12 20060101AFI20230725BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230725BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230725BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20230725BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20230725BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230725BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230725BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20230725BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230725BHJP
C08K 11/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B01D69/12
B01D53/22
B01D69/02
B01D71/08
B01D71/38
B01D71/40
B01D69/00
B01D69/10
C08L101/00
C08K11/00
(21)【出願番号】P 2020560966
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 NO2019050097
(87)【国際公開番号】W WO2019212359
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-21
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519463455
【氏名又は名称】シンテフ・テーテーオー・アクシェセルスカプ
【氏名又は名称原語表記】SINTEF TTO AS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・サンドゥル
(72)【発明者】
【氏名】エウゲニア・マリアナ・サンドゥル
(72)【発明者】
【氏名】ペル・マルティン・ステンスタッド
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157012(WO,A1)
【文献】特開2007-222098(JP,A)
【文献】特公昭57-013274(JP,B2)
【文献】特開平08-229367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129493(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08L 101/00
C08K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離膜であって、
ガス透過性又は多孔性の支持層;及び
少なくとも1つのCO
2選択性ポリマー層内に固定された炭酸脱水(CA)酵素を含んで成る、少なくとも1つのCO
2選択性ポリマー層
を有して成り、
少なくとも1つのCO
2
選択性ポリマー層は、化学的に修飾されたCA酵素及びモノマーの共重合
によって形成される生体ポリマーであって;並びに
少なくとも1つのCO
2選択性ポリマー層は親水性ポリマーに基づく、ガス分離膜。
【請求項2】
CO
2選択性ポリマー層がアミノ基をさらに含んで成る、請求項1に記載のガス分離膜。
【請求項3】
CA酵素が熱安定性酵素であって
、少なくとも50℃の温度に耐性を有する、請求項1又は2に記載のガス分離膜。
【請求項4】
親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミド、アルギン酸、キトサン及びポリビニルアミンから選択される、請求項1~3のいずれかに記載のガス分離膜。
【請求項5】
CO
2選択性ポリマー層の上部に被覆される、ガス及び水蒸気の高透過率材料の保護層をさらに有して成
り、
前記ガス及び水蒸気の高透過率材料が、ポリジメチルシロキサン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリメチルペンテンまたはポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]の非晶質フルオロポリマーである、請求項1~4のいずれかに記載のガス分離膜。
【請求項6】
CO
2選択性ポリマー層が、0.1~10μ
mの範囲の厚みを有する、請求項1~5のいずれかに記載のガス分離膜。
【請求項7】
CO
2
選択性ポリマー層が、0.2~5μmの範囲の厚みを有する、請求項1~5のいずれかに記載のガス分離膜。
【請求項8】
CO
2選択性ポリマー層が、酵素修飾ポリマー層及びアミン含有層から選択される、少なくとも2つの層によって形成される多層構造を有する、請求項1~
7のいずれかに記載のガス分離膜。
【請求項9】
ガス混合物からのCO
2の分離のための、請求項1~
8のいずれかに記載のガス分離膜の使用。
【請求項10】
ガス混合物が、排気ガス、天然ガス、バイオガス、空気、発酵プロセス及び麻酔のガス、若しくはそれらの混合物から選択される、請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
血液、若しくは水産養殖及び栽培漁業における水からCO
2を分離するための膜コンダクターにおける、請求項1~
8のいずれかに記載のガス分離膜の使用。
【請求項12】
ガス混合物からCO
2を分離する方法であって、
請求項1~
8のいずれかに記載のガス分離膜にガス混合物を接触させること;
CA酵素反応及び溶液拡散の両方によって、加えられる分圧により供給側から透過側にCO
2分子が選択的に移送されることにおいて、ガス混合物の少なくとも一部が膜を介して移動することを可能とすること;
透過側からCO
2分子を連続的に除去すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離膜の使用による、ガス混合物からのCO2の捕捉に関する。特に、本発明は、CO2選択性高分子膜(又はポリマー膜、polymeric membrane)及びガス混合物からCO2を分離する方法にも関する。また、本発明は、CO2選択性高分子膜の使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収や吸着などの、排気ガスのストリーム(又は煙管ガス流、flue gas stream)からのCO2捕捉の既存技術は、多くのエネルギー消費量及び全体のコストを有し、以下の主要な市場(放出されるCO2の量による)、エネルギー分野(又は部門、sector)(発電設備(又は動力設備若しくは発電所、power plant)からの排気ガス)、石油及びガス(天然ガスのスウィートニング(sweetening))、工業(セメント、製鋼からの排気ガス)における工業的な実施の大きな障害となっている。さらに、アミンの吸収に用いられる化学種は、環境への追加の汚染源となる。
【0003】
ガス分離のための膜技術は、広く用いられるようになっている。高分子膜は、経済的で技術的に有用である一方で、その性能によって制限される。透過率と選択率との間のバランスは、ガスのストリームからのCO2分離のための高分子膜の使用に影響し、低透過率では、高い投資コストを発生させる非常に大きな膜面積を要することになるため、CO2分離は非常に高額になる。
【0004】
高分子膜は、N2及びO2(排気ガス、息)、CH4(天然ガス、バイオガス)、又はH2(合成ガス)などの他のガスと比較して、高いCO2の溶解度及び/又は拡散係数(溶液-拡散(又は溶解-拡散、solution-diffusion)機構)のため、大量の希薄なストリーム(5~20%CO2)から少量の濃縮された透過ストリーム(65~95%CO2)にまでCO2を濃縮する。他のガス(N2、O2、CH4、H2又は他のガス)に対するCO2選択率及びCO2透過率は、膜材料の本質的な特性によって与えられる。膜を介するガス分子の移送のための駆動力は、膜の透過側にスイープ・ガス(又は掃気ガス、sweep gas)又は真空を用いることによって発生する、供給側と透過側との間の分圧又は濃度の差によるものである。
【0005】
膜分離の1つのオプション(又は選択肢、option)は、促進移送膜の使用である。促進移送に用いる最もよく知られた膜の種類は、移動促進移送担体(mobile facilitated transport carrier)を有する支持液体膜(SLM:supported liquid membrane)である。これは20年間にわたって研究されており、高いガス透過率及び高いガス選択率の両方を有することが知られている。しかしながら、溶液の蒸発や担体の不活性化などの、SLM膜に関する重大な劣化の問題により、これらのさらなる発展及び適用が制限されている。
【0006】
別の代替案は、促進移送担体がポリマーのマトリックス内に固定された(fixed)膜、すなわち、固定サイト担体(FSC:fixed site carrier)膜を用いることである。低いCO2濃度及び水蒸気が存在する場合(排気ガス、天然ガス、息、発酵など)は、このような固定サイト担体(FSC)膜が好まれる。それらは、溶液-拡散機構によってだけではなく、膜に存在するCO2担体(アミン、エーテル、ナノ粒子又は他の親CO2性基/実体(entity))との可逆的な化学反応によってCO2が移送される膜の包括的な種類(又は分類、class)を表す。CO2担体との可逆的な化学反応は、膜にわたって低いCO2の分圧の差を補い、駆動力を増加させる。
【0007】
米国特許第8,764,881号は、支持体に担持された少なくともMw100,000のモル質量を有する非架橋PVAmを有して成る、ガス混合物からガスを分離するのに適したこのような固定サイト膜を開示しており、支持体上へのキャスティング(又は流し込み、casting)後、当該PVAmを50~150℃の温度範囲で加熱している。
【0008】
ガス分離膜は、特に混合物における低いCO2濃度、20%以下(好ましくは10%又は5%若しくは1%以下)における産業の適用のためのコストに効果的であるため、未だに改善された分離性能が求められている。これらの低いCO2濃度は、駆動力の不足のため、分離することが非常に困難である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ガス分離膜であって、ガス透過性又は多孔性の支持層;並びに少なくとも1つのCO2選択性層内に固定される炭酸脱水(CA:carbonic anhydrase)酵素を含んで成る、少なくとも1つのCO2選択性ポリマー層、を有して成る、ガス分離膜を供する。また、炭酸脱水酵素(CA)は、少なくとも1つのCO2選択性ポリマー層の表面に固定されてよい。
【0010】
ある実施形態において、選択性ポリマー層は、アミノ基及びCA酵素の混合物を含んで成る。
【0011】
ある実施形態において、CA酵素は熱安定性の酵素であって、好ましくは少なくとも50℃の温度に耐性を有する。
【0012】
CA酵素はポリマー層内に固定され、また、必要に応じて様々な手順を用いることによってポリマー層の表面に固定される。
【0013】
ある実施形態において、最初に、CA酵素は、例えばビニル基に化学的に修飾され、次いでモノマーと共に共重合されて生体ポリマーを形成し、CA酵素はポリマー鎖に沿って組み込まれる(又は統合される、integrated)。
【0014】
別の実施形態において、CA酵素はバルクにおける既存のポリマー鎖に固定されて(immobilized)よい。別の実施形態には、膜の表面に化学的に修飾されたCA酵素を固定することが含まれる。本発明のある実施形態は、酵素を固定する様々な手順を兼ね備える。
【0015】
CO2選択性ポリマー層は、親水性ポリマーであってよい。親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアミド、ポリビニルアミン並びにアルギン酸及びキトサンなどの天然ポリマーである。
【0016】
代替的に、CO2選択性ポリマー層は、水蒸気透過性ポリマーであってよい。水蒸気透過性ポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP:poly[1-(trimethylsilyl)-1-propyne])、又はポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]などのパーフルオロ・ポリマーである。
【0017】
CO2選択性ポリマー層は、0.1~10μm、好ましくは0.1~5μmの範囲の厚みを有してよい。
【0018】
ガス分離膜は、膜に機械的強度を供する支持層を有して成ってよい。この層は、多孔性又は高密度であってよい。水ろ過膜のための市販の多孔性支持層が適当である。この支持層は、ポリスルホン(PSF:polysulfone)、ポリエーテルスルホン(PES:polyether sulfone)、ポリアミド(PA:polyamide)、ポリイミド(PI:polyimide)、ポリビニルジフルオリド(PVDF:polyvinyl difluoride)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)又は酢酸セルロース(CA:cellulose acetate)などの材料のものであってよい。この支持層の厚みは、10~250μmの範囲内で変わり得る。好ましくは、多孔性層の孔径は0.0001μm~1μmである。
【0019】
また、高いガス透過率を有するガス透過性ポリマーの高密度層は、CO2選択性層の下に機械的な支持体として用いられ得る。この層は、下にある追加の多孔性層上でさらに支持されてよく、ガター層(gutter layer)と呼ばれる。このような高密度の層の厚みは、約1μm(追加の多孔性支持体が用いられる場合)~最大約200μm(多孔性支持体なし)の範囲内で変わり得る。適当なガス高透過性ポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP)、ポリメチルペンテン(PMP:polymethylpentene)又は4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレンなどの非晶質フルオロポリマーである。
【0020】
本発明のガス分離膜は、CO2選択性ポリマー層の上部に被覆されたガス及び水蒸気の高透過率材料の保護層をさらに有して成ってよい。保護層に適当な材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)(PTMSP)、ポリメチルペンテン(PMP)又はポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]などの非晶質フルオロポリマーである。
【0021】
CO2選択性ポリマー層は、単一又は多層構造を有してよい。ある実施形態において、多層構造は、酵素が表面に修飾されたポリマー層及びアミン含有層から選択される、少なくとも2つの層を有して成る。
【0022】
本発明のガス分離膜は、排気ガス、天然ガス、バイオガス、空気、発酵プロセス及び麻酔のガスなどのガス混合物からのCO2の分離に適している。別の適用は、血液、若しくは水産養殖及び栽培漁業(又は養魚、pisciculture)又は液体の脱気を要する他の産業用途における水からCO2を分離するための、膜コンタクター(又は接触器、contactor)におけるガス分離膜の使用である。
【0023】
また、本発明は、ガス混合物からCO2を分離する方法に関する。ガス混合物を本発明に従うガス分離膜に接触させ、ガスの流れの少なくとも一部は膜をわたって移動する。CO2分子は、CA酵素反応及び溶液拡散によって、供給側から膜透過側に選択的に移送される。供給側と透過側との間の分圧の差を維持するため、CO2分子は、スイープ・ガス又は真空を用いることによって透過側から連続的に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、膜の使用によるガス分離の概略図を図示している。
【
図2】
図2は、ガス分離膜の断面図を図示している。
【
図3】
図3は、本発明に従うCA酵素-ポリマーのハイブリッド膜の分離原理を図示している。
【
図4】
図4は、CA酵素で修飾した1つの層及びNH
2基を含む1つの層の多層構造を有するハイブリッド膜の概略図を図示している。
【
図5】
図5は、CA酵素修飾ポリマーの2つの層の多層構造を有するハイブリッド膜の概略図を図示している。
【
図6】
図6は、PVA/PSF及びPVA/CA酵素で修飾したPSFのハイブリッド膜を用いる、供給圧力の関数としてのCO
2パーミアンスを示す。
【
図7】
図7は、PVA/PSF及びPVA/CA酵素で修飾したPSFのハイブリッド膜を用いる、供給圧力の関数としてのCO
2/N
2選択率を示す。
【
図8】
図8は、多孔性支持体PSF及びPVDF上のCA-PAA生体ポリマーのハイブリッド膜を用いる、CO
2パーミアンスの関数としてのCO
2/N
2選択率を示す。
【
図9】
図9は、高密度の支持体PTMSP及びPDMS上のCA-PAA生体ポリマーのハイブリッド膜を用いる、CO
2パーミアンスの関数としてのCO
2/N
2選択率を示す。
【
図10】
図10は、一般的な排気ガスに暴露された際の、ハイブリッド膜の時間における耐久性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、膜式ガス分離プロセスの簡略化された概略設計図を図示している。流入供給物ストリーム(incoming feed stream)1は、膜2を通過し、透過物(又は浸透分、permeate)3及び残余物(又は残余分若しくは濃縮物、retentate)4の、2つの成分に分けられる。供給ガスは膜に沿って移動し、供給ガスの一部は、高圧側5から低圧側6へ膜を横切って移動し、透過物3として除去される。
図2は、非対称性多孔質層8及び織成支持体(又は編まれた支持体、woven support)9によって支持される選択層7を有して成る、一般的なガス分離膜の詳細を図示している。
【0026】
本発明に従うガス分離膜は、CO2選択性ポリマー層及び支持層を有して成る。CO2選択性ポリマー層は、支持層上に配置され、例えば、支持層に被覆されている。選択性ポリマー層は、ポリマー層内に、また、必要に応じてポリマー層の表面に固定(fix)された炭酸脱水(CA)酵素を含んで成る。
【0027】
CO2選択性ポリマー層は、CA酵素に加えて、親CO2性担体として作用するアミノ基を含んで成ってよい。
【0028】
炭酸脱水酵素(CA)は、一般的に活性サイトに亜鉛イオンを含む金属酵素である。それは、様々なクラス(class)及びイソ型で存在し、毎秒10
6個のCO
2分子より多くのターンオーバー(又は回転、turnover)で、最も速い既知のCO
2反応速度を有する。CO
2は、以下の式に従って水和された形態を生成し、水に溶解する。
【0029】
これらの反応の中で、CO2の水和(式1)は律速段階である。炭酸塩を生成するための重炭酸塩の解離は遅いものの、CO2の水和より速い。10より大きいpHにおいて、式3は炭酸塩の形成が優勢であるのに対して、8未満のpHにおいては、このステップはごくわずかである。CAは、式1の反応を触媒する。反応1の反応速度の増加により、CAの添加を経て、大量のCO2が低位~中位のpHにおいて炭酸塩として固定され得る。このアプローチは、ウシ由来の炭酸脱水酵素を用いることによって実証されている。50℃~110℃の温度範囲で生息するバクテリアである好熱生物から分離されたCAは、熱安定的であり、O2などの一般の酵素変性剤に対して安定である。したがって、例えば、ガス処理(35~50℃)に適している。
【0030】
CA酵素は、分離/生成され、酵素の活性サイトに関連しないアミノ酸残基の反応性の側基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、又はフェノール基)によって、引き続き修飾、及びポリマーのマトリックス内に統合(又は一体化、integration)/固定することが可能となる。
【0031】
ポリマー層にCA酵素を固定するいくつかの方法が可能である。
・CA酵素は、ポリマー内に分散されてよい。水溶液中の既知の量の酵素をポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリアクリルアミド(PAA:polyacrylamide)、アルギン酸、キトサン又はいずれかの他の適当なポリマーなどのポリマー、並びに適当な溶媒から成るポリマー溶液と混合し、この混合物の薄層を支持層に適用し、乾燥させる。ポリマーと分散された酵素との間に弱い水素結合が存在することになる。
・まず、CA酵素を、例えばビニル基で化学的に修飾し、次いでモノマーと共に共重合させ、二元重合体を形成してよい。したがって、重合の間に、酵素はイン・サイチュで(又はその位置で、in situ)ポリマー鎖に固定されることになる。アクリルアミドなど、様々なモノマーがCA酵素と重合されてよい。
・既存のポリマーは、CA酵素をポリマーの官能基にカップリングすることによって修飾されてよい。ポリマーは、ポリマー鎖において、酵素を固定するのに用いられ得る、アミノ基などの様々な官能基を有してよい。したがって、CA酵素はポリマー鎖と化学的に(共有結合で)結合する。
驚くべきことに、化学的に固定されたCA酵素は、ポリマーのマトリックスにおいてその活性を維持するということが示されている。
【0032】
ポリマー及び固定された炭酸脱水酵素(CA)を含んで成る、得られたハイブリッド膜層は、高密度の高分子膜の耐久性と、支持液体膜(SLM:supported liquid membrane)の選択性とを兼ね備えることになる。したがって、SLMの欠点である、媒体を経時的に洗い出すことが排除される。
【0033】
図3は、本発明に従うハイブリッド・ポリマー-酵素膜の移送機構を図示している。膜は、その上に配置されたポリマー-酵素(CA)層を有する多孔性の支持体を有して成る。ポリマー-酵素層の厚みは、0.1~10μm、好ましくは1~5μmの範囲であってよい。
【0034】
CO2分子は、酵素反応(移送の促進)及び溶液-拡散(又は溶解-拡散、solution-diffusion)の両方によって、高圧側(供給側)から低圧側に選択的に移送される。CA酵素と反応しないN2及びCH4分子は、膜のポリマーのマトリックスに溶解及び拡散することによる溶液-拡散のみによって移送される。スイープ・ガス(又は掃気ガス、sweep gas)又は真空を用いて透過物を連続的に除去することによって、反応の平衡は、低圧側(透過側)へのCO2の移送、及び気相中のCO2の脱離の方にシフトする。CO2の分離(吸収、水及び酵素との反応、並びに脱離)は、選択性ポリマー層において発生する。目的のガス自体(排気ガス(又は煙管ガス、flue gas)、息など)によって供される、水蒸気の形態における水は、供給側から透過側へ、薄い選択層を透過し、ポリマーのマトリックスを膨張させる(又は増水させる、swell)ことになる。ある実施形態において、供給ガスのCO2濃度は1~15%であってよく、次いで透過物は60~80%のCO2濃度を有してよい。
【0035】
好ましくは、CO2選択性ポリマーは、親水性及び/又は水蒸気浸透性のポリマーである。適当な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、キトサン、アルギン酸、ポリアミド、ポリアクリルアミド、及びポリビニルアミンである。
【0036】
適当な水蒸気浸透性ポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及びポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP)、並びにポリ[4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン]などのパーフルオロ・ポリマーである。
【0037】
ガス分離膜は、一般的に、支持される形態、又は支持されない形態の2つの形態を成し得る。本発明の膜は、膜に機械的強度を供するために支持体に担持される。後述のように、支持体は、平らなシートの支持体又は中空ファイバーの支持体の形態であり得る。これらの支持体の種類の両方が本発明において用いられてよい。
【0038】
機械的強度を付与する適当な支持体は当業者に既知であり、ほとんどは多孔質である。適当な支持体には、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリプロピレン、スルホン化ポリスルホン、フッ化ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル(PAN)及び関連するブロック共重合体、セルロースアセテートポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI:polyether imide)、脂肪族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:polyether ether ketone)、ポリフェニレンオキシド(PPO:polyphenylene oxide)並びにポリスルホン(PSF)が含まれる。好ましい実施形態において、支持体はPSFである。支持体は、平らなシートの支持体又は中空ファイバーの支持体のどちらかであり得る。
【0039】
これらの支持体のほとんどは、0.0001~1μmの孔径を有し、若しくは、より一般的にダルトン(Dalton)又はMWCO(分画分子量(Molecular Weight Cut Off)で表される、逆浸透RO(1~100ダルトン)、ナノろ過NF(200~400ダルトン)、限外ろ過UF(1000~200000ダルトン)及び精密ろ過MF(0.1~10μm)の孔径を有する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、微孔性の支持体構造が使用される。このような支持体は、それを介するガスの移送を非常に速くする、よりずっと大きな孔径、例えば0.10~10μmの孔径を有する。これらの支持体の孔径は一般的にMWCOの用語で表されず、微孔性の支持体は100,000より大きいMWCO値を有すると考えられる。
【0041】
微孔性の支持体は、限外ろ過膜に関して上述した材料及びセラミックス(アルミナ、酸化ジルコニウム)などの無機材料、シリカなどのガラス膜などを含むいずれかの適当な材料から形成され得る。これらの支持体は、当業者に既知である、焼結、ゾル・ゲル法又は浸出技術によって調製され得る。
【0042】
ガス分離膜に機械的強度を供する支持体は、高いガス透過性の高密度の支持体であってよい。適当な材料の例としては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PTMSP(ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、PMP(ポリメチルペンテン)、並びにAF2400又はAF1600(テフロン(登録商標))などの4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレンなどの非晶質フルオロポリマーである。
【0043】
ガス分離膜は、CO2選択性ポリマー層の上部を被覆した、ガス及び水蒸気高透過率材料の保護層をさらに有して成ってよい。
【0044】
CO
2選択性ポリマー層は、CA酵素修飾ポリマー層の少なくとも2つの層によって形成された多層構造を有してよい。
図4を参照のこと。代替的には、この層はポリマー層を含むCA酵素、及びアミンから選択されてよい。
図5を参照のこと。
【0045】
本開示に従うガス分離膜により、ワン・ステップのガス分離プロセスが可能になる。相は1つのみ(ガス-ガス)であって、吸収のための液体は存在しない。結果として、液体膜(SLM)及び膜コンタクター(MC)などの酵素を用いるガス分離システムと比較して、複雑性が減じられ、酵素の量が減じられ、設備のサイズ及び重量が減じられ、並びに容易な拡張性(又は規模設定性、scalability)がもたらされる。
【0046】
本開示に従うガス分離膜は、ガス混合物からのCO2の分離に使用される。ガス混合物の例としては、排気ガス、天然ガス、バイオガス、CO2及びH2、発酵ガス並びに麻酔ガスである。膜は、血液から、若しくは水産養殖及び栽培漁業(又は養魚、pisciculture)並びに水又は液体の脱気を要する他の産業用途における水から、CO2を分離するのに特に有用である。
【0047】
特に、5%容量未満のCO2を有する混合物など、低濃度のCO2を含むガス混合物であることが望ましい。
【0048】
ガス混合物からのCO2の分離方法において、本開示に従うガス分離膜の供給側に沿ってガス混合物が供給されている。ガス混合物の少なくとも一部は、かけられる分圧の差、すなわち、供給側における高圧及び透過側の低圧(大気)によって、膜を介して拡散することになる。CO2分子は、酵素反応(促進される移送)及び溶液-拡散によって、供給側から透過側に選択的に移送されることになる。CO2分子は、分圧の差を維持するために透過側から連続的に除去されることになる。
【0049】
本開示のガス分離膜の適用には、窒素、メタン、一酸化炭素(CO)、酸素、揮発性有機化合物又は水素などの様々な成分を有する、CO2を含むガス混合物からのCO2の分離が含まれる。また、水素を伴う混合物の分離も想定される。これらのガスは、産業及び家庭のガスのストリームにおいてなど、いずれの環境においても発生し得る。使用において、分離されるガス混合物は、一般的に圧力下で膜をわたって流れることになる。使用される温度は、一般的に、温度は0~90℃の範囲、好ましくは20~65℃の範囲内で変わり得る。
【0050】
好ましくは、膜は、窒素及び/又はメタンから二酸化炭素を分離するのに用いられる。したがって、この後者に関して、本発明の膜は、これらのガスが排気ガス、天然ガス、バイオガス、空気、発酵プロセス及び麻酔のガスなどの混合物中に存在する分野における用途を有し得る。
【0051】
本発明のガス分離膜は、低濃度のCO2、すなわち40%未満において特に有用である。水産養殖ではCO2が水中に溶解し(60ppm)、清浄な大気では400ppmから、アルミニウム産業などの様々な産業では1%、息では4~5%、排気ガスでは燃焼された燃料に応じて3.5~15%、並びにバイオガス及び天然ガスでは10%~40%のCO2を含み得る。
【0052】
実験
炭酸脱水酵素の調製と精製
特許出願WO2014/090327 A1に記載されるように、大腸菌における組換えによって本実験で用いた炭酸脱水酵素を産生し、次いで、65℃における加熱沈殿と、続く遠心分離によって宿主タンパク質のほとんどを除去した。以下の実施例で用いられる菌株(strain)は、WO2014/090327 A1において参照されるように、SCA11であったものの、いずれの他の菌株又は他のCAも用いられ得る。
【0053】
平らなシート膜の調製
高密度又は多孔性の支持体、及び高密度のCO2分離層から成る合成膜を、支持体上への分離層の溶液キャスティング(又は溶液流延、solution casting)と、その後の室温又はオーブンで上げられた温度における乾燥によって調製した。
【0054】
用いた多孔性の支持体は、市販の50000MWCOの限外ろ過ポリスルホン(PSF)、又は10000MWCOのフッ化膜(PVDF)のどちらかであった。
【0055】
高密度の支持体を、テフロン(登録商標)皿上で、ヘキサン又はシクロヘキサン溶媒中のPTMSP、PDMS、並びにFC-72溶媒中のAF2400の溶液キャスティングと、その後の室温又はオーブンで上げられた温度における乾燥によって調製した。また、ガス透過試験中に、これらの膜の下に分離の機械的な支持体としていくつかの市販の微孔性(0.2ミクロン)PVDF膜を用いた。
【0056】
支持体の上部の高密度のCO2分離層は、後述される様々な方法に従って導入/固定されるCA酵素を含む、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリジメチルシロキサン(PDMS)若しくはポリアクリルアミド(PAA)製であった。
【0057】
・方法1:CO2分離層へのCA酵素の化学的カップリング
二官能性リンカー(bifunctional linker)(グルタルアルデヒド)を用いることによって、支持体に被覆されたPVA膜にCA酵素をカップリングした。一方の官能基はヒドロキシル基と反応し、第2の官能基はCA酵素のアミノ残基と反応する。
【0058】
望まない副反応を減ずるため、一連のアプローチを用いた。
1.多孔性の支持体に被覆することによって、PVA膜を調製した。
2.PVA膜を0.5mmol/mLグルタルアルデヒド溶液10mLで活性化させた。
3.グルタルアルデヒド溶液を除去し、10mgの酵素をpH=7.4の緩衝溶液に加えた。
4.以下のように多層膜を調製した。過剰の酵素を除去し、新しい0.5mmol/mLグルタルアルデヒド溶液10mLを活性化のために加え、続いて酵素の緩衝溶液を加えた。
【0059】
・方法2:分離層(PVA)のポリマーのマトリックスに分散されたCA酵素
CA酵素は、ポリマーのマトリックス中に分散される際に、水素結合によってポリマー鎖と弱く結合する。2%PVA水溶液を酵素溶液と混合した。CA酵素の濃度は52.9mg/g PVAであった。50000MWCOのPSF支持体に混合物を被覆した。
【0060】
・方法3:化学的に修飾されたCA酵素及びアクリル系モノマーの共重合
CA酵素をビニル基で修飾し、pH7.4の緩衝溶液においてアクリルアミドと共重合させた。CA酵素/Aam(アクリルアミド)の2つの異なる比、40mg CA酵素/g Aam及び100mg CA酵素/g Aam、を用いた。ビニル基を導入するため、アクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミド(NSA:N-hydroxy succinimide acrylate)でCA酵素を処理した。NSA/CA酵素の2つのモル比、8.89及びそれぞれ5.56(より少ないビニル基)、を用いた。得られたポリマー溶液を多孔性で高密度の支持体に被覆した。以下の3つの異なる生体ポリマーが得られた。
CA酵素-PAA0:NSA/CA酵素比8.89及び40mg CA/g Aam;
CA酵素-PAA1:NSA/CA酵素比5.56及び40mg CA/g Aam、並びに
CA酵素-PAA2:NSA/CA酵素比5.56及び100mg CA/g Aam。
【0061】
高密度の支持体を用いるに際して、それはPTMSP、PDMS及びAF2400の自立性の膜から成る。また、以下の方法も用いた。
【0062】
・方法4:高密度の支持体上のメタクリル酸グリシジルを用いるUVグラフトと、その後のCA酵素のカップリング
一連のアプローチを用いるUVグラフト(grafting)によって、膜表面を修飾した。一連のアプローチは、望まない副反応を減ずるという利点を有する。
1.モノマーのグラフトが開始するグラフト点を作るため、膜を1%開始剤(ベンゾフェノン)メタノール溶液に浸漬し、UV放射線に暴露した。
2.開始剤溶液を除去し、膜をメタノールで優しく洗浄した。
3.次いで、膜を10%モノマー溶液(メタクリル酸グリシジル(GMA:glycidyl methacrylate)溶液に浸漬し、重合を促進するためにUV放射線に暴露した。
4.次いで、モノマー溶液を除去し、膜を水で数回洗浄して未反応のモノマー並びに膜表面に未結合のポリマーを除去した。
5.エポキシ基を介して、酵素をメタクリル酸ポリグリシジルとカップリングさせた。
【0063】
・方法5:AEMAを用いるUVグラフトと、その後の方法3に従って得られた共重合溶液の被覆
GMAモノマーの代わりにメタクリル酸アミノエチル(AEMA:aminoethyl methacrylate)を使用し、方法4で説明された一連の方法を用いて膜を調製した。次いで、グラフトされた膜を、方法3によって調製された共重合溶液で被覆した。
【0064】
・方法6:AEMAを用いるUVグラフトと、その後のグルタルアルデヒドを用いた活性化によるCA酵素のカップリング
GMAモノマーの代わりにAEMAモノマーを使用し、方法4で説明された一連の方法を用いて膜を調製した。次いで、リンカー(linker)としてグルタルアルデヒド(GA)を用いて、グラフトされた膜をCA酵素とカップリングさせた。
【0065】
混合されたガスの透過試験
CO2のパーミアンス(又は透過、permeance)又はCO2透過率(パーミアンス/膜厚)、並びにCO2/N2選択率(CO2及びN2のパーミアンスの比)などのガス分離特性を、真のガス組成と同様に、十分に加湿されたCO2及びN2のガス混合物を用いることによって、調製した膜で測定した。真のガス組成は、排気ガス(5~15%CO2)、息(5%CO2)などである。測定は25℃で行われ、供給圧は絶対圧で1.2bar~5barであった。駆動力を生み出す手段として、膜の透過側にスイープ・ガスであるヘリウムを用いた。供給ガスは、5%又は15%のCO2含量を有していた。流量計及びガス・クロマトグラフによって透過物の流れ及びその組成を連続的に測定し、CO2のパーミアンス及びCO2/N2の選択率を計算するのに用いた。
【0066】
結果:
実施例1
方法1に従ってグルタルアルデヒド及びCA酵素を修飾した50000MWCOのPSF支持体上のPSA(600μlの17.6mg/mlCA酵素溶液)。
【0067】
1.2bar、25℃において、加湿されたCO2が15%であるN2供給ガスにおける、膜性能に対するCA酵素の添加の効果を表1に示す。
【0068】
【0069】
実施例2
PVAポリマー溶液にCA酵素を分散させ、方法2に従って50000MWCOのPSFに支持させた。得られた膜を、25℃で、十分に加湿されたCO2が15%であるN2供給ガスで試験した。
【0070】
1.2bar、25℃で、加湿された15%CO2であるN2供給ガスにおける、膜性能に対するPVA中に分散されたCA酵素の効果を表2に示す。
【0071】
【0072】
図6及び
図7のプロット図において、PVA/PSF及びPVA/CA酵素を修飾したPSFの、圧力の上昇に伴うCO
2パーミアンス及びCO
2/N
2選択率の変化を示す。プロット図(
図6)は、PVA/CA酵素を有するPSFに関してCO
2パーミアンスが減少することを示している。プロット図(
図7)は、PVA/CA酵素を有するPSFに関してCO
2/N
2選択率が増加することを示している。供給圧力を増加させると、結果として、CO
2/N
2選択率に関しては相対的に一定であり、CO
2パーミアンスに関してはわずかに減少する。
【0073】
実施例3
方法3に従う、化学的に修飾したCA酵素及びアクリル系モノマーの共重合。
【0074】
1.2bar、25℃において、加湿された5%CO
2であるN
2供給ガスを使用し、様々な多孔性支持体上のCA酵素-PAA生体ポリマーを用いて得られた結果を、表3及び
図8に示す。
【0075】
【0076】
全ての膜はCA酵素-PAA1及びCA酵素-PAA2を用いて調製した。多孔性で高密度の支持体上のその両方は、参照と比較して、CO2/N2選択率において大幅な増加を示した。
【0077】
図8は、多孔性の支持体、PSF及びPVDF上の膜を用いて得られた結果をまとめるプロット図を示している。本発明に従う膜は、参照と比較して、CO
2/N
2選択率が6~11倍増加している。また、CA酵素-PAA2の膜は、参照の膜よりも高いCO
2パーミアンスを示した。
【0078】
図9は、1.2bar、25℃において、CO
2が5%である加湿されたN
2供給ガスを用いる、高密度の支持体、PTMSP及びPDMS上のCA-PAA生体ポリマーの膜の結果をまとめるプロット図を示している。多孔性の支持体と同様に、CA酵素の存在によるCO
2/N
2の大幅な増加が得られた。参照の膜と比較して、CA-PAA生体ポリマーの追加の層はCO
2透過率を減ずるものの、未だ高いCO
2透過率の値、すなわち1000バーラー(Barrer)を表す。
【0079】
1.2bar、25℃において、CO2が5%である加湿されたN2供給ガスを使用し、高密度の支持体上のCA酵素-PAA生体ポリマーを用いて得られた結果を、PTMSP支持体に関して表4に、並びにPDMS支持体に関して表5に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
実施例4
方法5に従う、AEMAを用いるUVドラフトと、その後の生体ポリマー(PAA-CA酵素)の被覆
【0083】
1.2bar、25℃で、5%CO2の十分に加湿されたN2における膜のCO2透過率及びCO2/N2選択率を表6に示す。
【0084】
【0085】
CA酵素-PAA2膜は、CA酵素-PAA1膜と比較して2,5分の1に相当するポリアクリルアミド(PAA)1mgあたりのCA酵素を有する。UVグラフトの手順には、10%メタクリル酸アミノエチル(AEMA)水溶液を用いた。
【0086】
相対的に厚く高密度な支持体(25~50ミクロン)の変化(又は差異、variation)を補うため、パーミアンス(m3(STP)/(bar m2 h))の代わりに透過率(バーラー)で結果を表す。変換の理由のため、1000バーラーは、1μmの厚みの膜に関して2.7m3(STP)/(bar m2 h)のパーミアンスに相当する。
【0087】
結果は、CO2の透過率の大きな減少を示しているものの、CA酵素の導入により、PTMSPと比較して、それぞれ4倍及び7倍のCO2/N2選択率の増加を示している。
【0088】
実施例5
方法6に従う、AEMAを用いるUVグラフトと、その後のグルタルアルデヒドを用いる活性化によるCA酵素のカップリング。
【0089】
1.2bar、25℃で、5%CO2である十分に加湿されたN2における、膜のCO2透過率及びCO2/N2選択率を表7に示す。
【0090】
【0091】
UVグラフトの手順には、10%メタクリル酸アミノエチル(AEMA)水溶液を用いた。
【0092】
相対的に厚く高密度の支持体(25~50ミクロン)の変化を補うため、パーミアンス(m3(STP)/(bar m2 h))の代わりに透過率(バーラー)で結果を表す。変換の理由のため、1000バーラーは、1μmの厚みの膜に関して2.7m3(STP)/(bar m2 h)のパーミアンスに相当する。
【0093】
結果は、CO2透過率に関して大きな減少を示しているものの、CA酵素の導入により、PTMSPと比較して、CO2/N2選択率の4倍の増加を示している。
【0094】
膜の耐久性の試験
ある膜、方法3の手順に従って調製したPAA-CA酵素1/PTMSPを選択し、その膜を以下の試験条件で350時間にわたって暴露した:5%CO2、85%N2、10%O2、300ppmのSO2;1.2barの圧力、25℃、高湿の気体。組成は、発電装置(又は動力設備若しくは発電所、power plant)からの排気ガスに関して非常に一般的なものである。CO2のフラックス(又は流れ、flux)(パーミアンス)及びCO2/N2選択率の両方は、時間において相対的に一定を保っており、排気ガスからのCO2の捕捉に関して潜在的な適用可能性を示している。
【0095】