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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】電極製造システム及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230725BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20230725BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230725BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01G11/86
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020567391
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046403
(87)【国際公開番号】W WO2020152980
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019009584
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 広基
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小島 健治
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-72114(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026784(WO,A1)
【文献】特開平10-308212(JP,A)
【文献】特開2008-77963(JP,A)
【文献】特開2012-49543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/04
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用部材を、前記電極用部材の一方向に沿って切断して電極を製造する電極製造方法であって、
前記電極用部材は、アルカリ金属がドープされた活物質を含み、前記一方向に延びる第1部位を複数備えるとともに、隣接する2つの前記第1部位の間に、アルカリ金属がドープされた活物質が存在しない第2部位を備え、
前記第2部位を切断する電極製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造方法であって、
前記電極用部材の形状は帯状であり、
前記一方向は、前記電極用部材の長手方向である電極製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極製造方法であって、
前記第2部位は活物質を含まない部位である電極製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電極製造方法であって、
電極用部材製造装置を用いて前記電極用部材を製造し、
前記電極用部材製造装置を用いて製造した前記電極用部材の前記第2部位を切断し、
前記電極用部材製造装置は、
アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するドープ槽と、
前記第1部位に含まれる前記活物質に未だ前記アルカリ金属がドープされていない状態の前記電極用部材を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、
前記ドープ槽に収容される対極ユニットと、
を備える電極製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電極製造方法であって、
前記電極用部材製造装置は、
前記ドープ槽内にある前記電極用部材と、前記対極ユニットとの間に配置され、前記第2部位を覆うマスクをさらに備える電極製造方法。
【請求項6】
電極を製造する電極製造システムであって、
電極用部材を、前記電極用部材の一方向に沿って切断して電極を製造するように構成された切断装置を備え、
前記電極用部材は、アルカリ金属がドープされた活物質を含み、前記一方向に延びる第1部位を複数備えるとともに、隣接する2つの前記第1部位の間に、アルカリ金属がドープされた活物質が存在しない第2部位を備え、
前記切断装置は、前記第2部位を切断するように構成された電極製造システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電極製造システムであって、
前記電極用部材の形状は帯状であり、
前記一方向は、前記電極用部材の長手方向である電極製造システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電極製造システムであって、
前記第2部位は活物質を含まない部位である電極製造システム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の電極製造システムであって、
前記電極用部材を製造する電極用部材製造装置をさらに備え、
前記電極用部材製造装置は、
アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するドープ槽と、
前記第1部位に含まれる前記活物質に未だ前記アルカリ金属がドープされていない状態の前記電極用部材を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された搬送ユニットと、
前記ドープ槽に収容される対極ユニットと、
を備える電極製造システム。
【請求項10】
請求項9に記載の電極製造システムであって、
前記電極用部材製造装置は、
前記ドープ槽内にある前記電極用部材と、前記対極ユニットとの間に配置され、前記第2部位を覆うマスクをさらに備える電極製造システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2019年1月23日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2019-009584号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-009584号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は電極製造システム及び電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法として、例えば、連続式の方法がある。連続式の方法では、帯状の電極板を電解液中で移送させながらプレドープを行う。連続式の方法は、特許文献1~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電極を一層効率的に製造することが求められている。本開示の一局面では、電極を効率的に製造することができる電極製造システム及び電極製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面は、電極を製造する電極製造システムであって、電極用部材を、前記電極用部材の一方向に沿って切断して電極を製造するように構成された切断装置を備え、前記電極用部材は、アルカリ金属がドープされた活物質を含み、前記一方向に延びる第1部位を複数備えるとともに、隣接する2つの前記第1部位の間に、アルカリ金属がドープされた活物質が存在しない第2部位を備え、前記切断装置は、前記第2部位を切断するように構成された電極製造システムである。
【0009】
本開示の一局面である電極製造システムは、1つの電極用部材から、複数の電極を製造することができる。そのため、本開示の一局面である電極製造システムは、電極を効率よく製造することができる。
【0010】
本開示の別の局面は、電極用部材を、前記電極用部材の一方向に沿って切断して電極を製造する電極の製造方法であって、前記電極用部材は、アルカリ金属がドープされた活物質を含み、前記一方向に延びる第1部位を複数備えるとともに、隣接する2つの前記第1部位の間に、アルカリ金属がドープされた活物質が存在しない第2部位を備え、前記第2部位を切断する電極製造方法である。
【0011】
本開示の別の局面である電極製造方法は、1つの電極用部材から、複数の電極を製造することができる。そのため、本開示の一局面である電極製造方法は、電極を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電極用部材の構成を表す平面図である。
図2図1におけるII-II断面での断面図である。
図3】電極用部材製造装置の構成を表す説明図である。
図4】ドープ槽の構成を表す説明図である。
図5】対極ユニット及びマスクの構成を表す説明図である。
図6図5におけるVI-VI断面での断面図である。
図7】切断装置の構成を表す斜視図である。
図8】分割された対極ユニットの構成を表す説明図である。
図9】別形態の電極用部材の構成を表す平面図である。
図10】別形態の電極用部材の構成を表す平面図である。
図11】別形態の電極用部材の構成を表す平面図である。
【符号の説明】
【0013】
1…電極用部材、3…集電体、5…活物質層、5A…ドープ部、5B…非ドープ部、7…露出部、11…電極用部材製造装置、13…切断装置、15…浸漬槽、17、19、21…ドープ槽、23…洗浄槽、25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93…搬送ローラ、101…供給ロール、103…巻取ロール、105…支持台、107…循環濾過ユニット、109、110、111、112、113、114…電源、117…タブクリーナー、119…液回収ユニット、121…端部センサ、131…上流槽、133…下流槽、137、139、141、143…対極ユニット、144…マスク、149、151…空間、153…導電性基材、155…アルカリ金属含有板、157…多孔質絶縁部材、161…フィルタ、162…供給ロール、163…ポンプ、164…搬送ロール、165…配管、166…搬送ロール、169…スリッタ、171、173、175、177…巻取ロール、179…本体軸、181…円形刃、183…切り口、185、186…電極、187…第1残部、189…第2残部
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極用部材1の構成
図1図2に基づき、電極用部材1の構成を説明する。電極用部材1は電極の製造に用いられる。電極用部材1は帯状の形状を有する。電極用部材1は、集電体3と、活物質層5とを備える。集電体3は帯状の形状を有する。活物質層5は、集電体3の両面にそれぞれ複数形成されている。電極用部材1の幅方向Wにおいて、活物質層5の幅は、集電体3の幅に比べて小さい。活物質層5は、電極用部材1の長手方向Lに沿って延びている。活物質層5は第1部位に対応する。長手方向Lは電極用部材1の一方向に対応する。
【0015】
幅方向Wにおいて隣接する2つの活物質層5の間に、集電体3が露出している部分(以下では露出部7とする)が形成されている。また、電極用部材1の幅方向Wにおける両端にも、露出部7が形成されている。露出部7は電極用部材1の長手方向Lに沿って延びている。露出部7には活物質が存在しない。露出部7は第2部位に対応する。
【0016】
集電体3として、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体3は、前記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体3の厚みは、例えば、5~50μmである。
【0017】
活物質層5は、例えば、アルカリ金属をプレドープしていない状態(以下では未ドープ状態とする)の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを集電体3上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0018】
前記バインダーとして、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0019】
前記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。
【0020】
活物質層5の厚さは特に限定されない。活物質層5の厚さは、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。活物質層5に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離等の反応を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されない。活物質は、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0021】
負極活物質は特に限定されない。負極活物質として、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例として、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例として、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0022】
正極活物質として、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。
【0023】
活物質層5が含む活物質は、後述する電極用部材製造装置11を用いて、アルカリ金属がプレドープされる。活物質にプレドープするアルカリ金属として、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極用部材1をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層5の密度は、好ましくは1.30~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.40~1.90g/ccである。
【0024】
2.電極製造システムが備える電極用部材製造装置11の構成
本開示の電極製造システムは、電極用部材製造装置11と、切断装置13とを備える。電極用部材製造装置11の構成を、図3図6に基づき説明する。
【0025】
図3に示すように、電極用部材製造装置11は、浸漬槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23と、搬送ローラ25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール101と、巻取ロール103と、支持台105と、循環濾過ユニット107と、6つの電源109、110、111、112、113、114と、タブクリーナー117と、液回収ユニット119と、端部センサ121と、を備える。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。
【0026】
浸漬槽15は、上方が開口した角型の槽である。浸漬槽15の底面は、略U字型の断面形状を有する。浸漬槽15は、仕切り板123を備える。仕切り板123は、その上端を貫く支持棒125により支持されている。支持棒125は図示しない壁等に固定されている。仕切り板123は上下方向に延び、浸漬槽15の内部を2つの空間に分割している。仕切り板123の下端に、搬送ローラ33が取り付けられている。仕切り板123と搬送ローラ33とは、それらを貫く支持棒127により支持されている。なお、仕切り板123の下端付近は、搬送ローラ33と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ33と、浸漬槽15の底面との間には空間が存在する。
【0027】
ドープ槽17の構成を図4に基づき説明する。ドープ槽17は、上流槽131と下流槽133とから構成される。上流槽131は供給ロール101の側(以下では上流側とする)に配置され、下流槽133は巻取ロール103の側(以下では下流側とする)に配置されている。
【0028】
まず、上流槽131の構成を説明する。上流槽131は上方が開口した角型の槽である。上流槽131の底面は、略U字型の断面形状を有する。上流槽131は、仕切り板135と、4個の対極ユニット137、139、141、143と、4個のマスク144と、を備える。
【0029】
仕切り板135は、その上端を貫く支持棒145により支持されている。支持棒145は図示しない壁等に固定されている。仕切り板135は上下方向に延び、上流槽131の内部を2つの空間に分割している。仕切り板135の下端に、搬送ローラ40が取り付けられている。仕切り板135と搬送ローラ40とは、それらを貫く支持棒147により支持されている。なお、仕切り板135の下端付近は、搬送ローラ40と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ40と、上流槽131の底面との間には空間が存在する。
【0030】
対極ユニット137は、上流槽131のうち、上流側に配置されている。対極ユニット139、141は、仕切り板135を両側から挟むように配置されている。対極ユニット143は、上流槽131のうち、下流側に配置されている。
【0031】
対極ユニット137と対極ユニット139との間には空間149が存在する。対極ユニット141と対極ユニット143との間には空間151が存在する。対極ユニット137、139、141、143は、電源109の一方の極に接続される。対極ユニット137、139、141、143は同様の構成を有する。ここでは、図5に基づき、対極ユニット137、139の構成を説明する。
【0032】
対極ユニット137、139は、導電性基材153と、アルカリ金属含有板155と、多孔質絶縁部材157とを積層した構成を有する。導電性基材153の材質として、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の厚さは、例えば、0.03~5mmである。
【0033】
多孔質絶縁部材157は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材157は、アルカリ金属含有板155の上に積層されている。多孔質絶縁部材157が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材157がアルカリ金属含有板155の上に積層されている際の形状である。多孔質絶縁部材157は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0034】
多孔質絶縁部材157は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材157を通過することができる。そのことにより、アルカリ金属含有板155は、ドープ溶液に接触することができる。
【0035】
多孔質絶縁部材157として、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定できる。メッシュの目開きは、例えば、0.1μm~10mmであり、0.1~5mmであることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定できる。メッシュの厚みは、例えば、1μm~10mmであり、30μm~1mmであることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定できる。メッシュの目開き率は、例えば、5~98%であり、5~95%であることが好ましく、50~95%であることがさらに好ましい。
【0036】
多孔質絶縁部材157は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0037】
マスク144は、対極ユニット137、139、141、143のそれぞれに取り付けられている。マスク144は、対極ユニット137、139、141、143のうち、多孔質絶縁部材157の側の面に取り付けられている。図5に、対極ユニット137、139に取り付けられているマスク144を示す。マスク144は、対極ユニット137、139、141、143の一部を覆い、残りの部分を露出する。マスク144の詳しい形状は後述する。マスク144の材質として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。マスク144の材質として、ポリプロピレンが好ましい。マスク144の厚みは、例えば、10μm以上10mm以下であることが好ましく、50μm以上5mm以下であることが一層好ましい。
【0038】
下流槽133は、基本的には上流槽131とは同様の構成を有する。ただし、下流槽133の内部には、搬送ローラ40ではなく、搬送ローラ46が存在する。また、下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源110の一方の極に接続される。
【0039】
ドープ槽19は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽19の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ52、58が存在する。また、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源111の一方の極に接続される。また、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源112の一方の極に接続される。
【0040】
ドープ槽21は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽21の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ64、70が存在する。また、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源113の一方の極に接続される。また、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源114の一方の極に接続される。
【0041】
洗浄槽23は、基本的には浸漬槽15と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽23の内部には、搬送ローラ33ではなく、搬送ローラ75が存在する。
【0042】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ37、39、43、45、49、51、55、57、61、63、67、69は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、電極用部材1を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極用部材1を搬送する経路は、供給ロール101から、浸漬槽15の中、ドープ槽17の中、ドープ槽19の中、ドープ槽21の中、洗浄槽23の中、タブクリーナー117の中を順次通り、巻取ロール103に至る経路である。
【0043】
その経路のうち、浸漬槽15の中を通る部分は、まず、搬送ローラ29、31を経て下方に移動し、次に、搬送ローラ33により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0044】
また、上記の経路のうち、ドープ槽17の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ37により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ40により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ41、43により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ46により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ47により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽19に向かう。
【0045】
また、上記の経路のうち、ドープ槽19の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ49により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ52により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ53、55により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ58により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ59により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽21に向かう。
【0046】
また、上記の経路のうち、ドープ槽21の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ61により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ64により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ65、67により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ70により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ71により移動方向を水平方向に変えられ、洗浄槽23に向かう。
【0047】
また、上記の経路のうち、洗浄槽23の中を通る部分は、まず、搬送ローラ73により移動方向を下向きに変えられて下方に移動し、次に、搬送ローラ75により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0048】
供給ロール101は、電極用部材1を巻き回している。すなわち、供給ロール101は、巻き取られた状態の電極用部材1を保持している。供給ロール101に保持されている電極用部材1は、未ドープ状態にある。
【0049】
搬送ローラ群は、供給ロール101に保持された電極用部材1を引き出し、搬送する。
【0050】
巻取ロール103は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極用部材1を巻き取り、保管する。なお、搬送ローラ群により搬送されてきた電極用部材1は、ドープ槽17、19、21において、アルカリ金属のプレドープの処理を受けている。
【0051】
支持台105は、浸漬槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23を下方から支持する。支持台105は、その高さを変えることができる。循環濾過ユニット107は、ドープ槽17、19、21にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット107は、フィルタ161と、ポンプ163と、配管165と、を備える。
【0052】
ドープ槽17に設けられた循環濾過ユニット107において、配管165は、ドープ槽17から出て、ポンプ163、及びフィルタ161を順次通り、ドープ槽17に戻る循環配管である。ドープ槽17内ドープ溶液は、ポンプ163の駆動力により、配管165、及びフィルタ161内を循環し、再びドープ槽17に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ161により濾過される。異物として、ドープ溶液から析出した異物や、電極用部材1から発生する異物等が挙げられる。フィルタ161の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂である。フィルタ161の孔径は適宜設定できる。フィルタ161の孔径は、例えば、0.2μm~50μmである。
【0053】
ドープ槽19、21に設けられた循環濾過ユニット107も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、図3図4において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0054】
電源109の一方の端子は、搬送ローラ37、39と接続する。また、電源109の他方の端子は、ドープ槽17の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ37、39と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の上流槽131において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0055】
電源110の一方の端子は、搬送ローラ43、45と接続する。また、電源110の他方の端子は、ドープ槽17の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ43、45と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0056】
電源111の一方の端子は、搬送ローラ49、51と接続する。また、電源111の他方の端子は、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ49、51と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の上流槽131において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0057】
電源112の一方の端子は、搬送ローラ55、57と接続する。また、電源112の他方の端子は、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ55、57と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0058】
電源113の一方の端子は、搬送ローラ61、63と接続する。また、電源113の他方の端子は、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ61、63と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の上流槽131において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0059】
電源114の一方の端子は、搬送ローラ67、69と接続する。また、電源114の他方の端子は、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ67、69と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0060】
タブクリーナー117は、電極用部材1の幅方向Wにおける端部を洗浄する。液回収ユニット119は、浸漬槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23のそれぞれに配置されている。液回収ユニット119は、電極用部材1が槽から持ち出す液を回収し、槽に戻す。
【0061】
端部センサ121は、電極用部材1の幅方向Wにおける端部の位置を検出する。図示しない端部位置調整ユニットは、端部センサ121の検出結果に基づき、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。端部位置調整ユニットは、電極用部材1の幅方向Wにおける端部が、タブクリーナー117により洗浄される位置となるように、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。
【0062】
3.マスク144の形態
図6に基づき、マスク144の形態を説明する。図6は、対極ユニット137、139に取り付けられたマスク144を示す。対極ユニット141、143に取り付けられたマスク144も同様の形態を有する。
【0063】
マスク144は、電極用部材1のうち、露出部7を覆う。露出部7を覆うとは、電極用部材1の厚み方向Tから見て、マスク144が露出部7と重なることを意味する。マスク144は、活物質層5は覆わない。
【0064】
なお、マスク144は、露出部7の全てを覆ってもよいし、一部のみを覆ってもよい。また、マスク144は、露出部7に加えて、活物質層5の一部を覆ってもよい。
【0065】
4.ドープ溶液の組成
電極用部材製造装置11を使用するとき、ドープ槽17、19、21に、ドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0066】
また、前記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。前記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0067】
前記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部として、例えば、PF 、PF(C 、PF(CF 等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF 、BF(CF) 、BF(CF、B(CN) 等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO 、N(CFSO 、N(CSO 等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CFSO 等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0068】
前記ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。アルカリ金属塩の濃度がこの範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0069】
前記ドープ溶液は、さらに、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0070】
前記ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤の添加量は、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量は、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0071】
5.電極製造システムが備える切断装置13の構成
切断装置13の構成を図7に基づき説明する。切断装置13は、供給ロール162、搬送ロール164、166、167、スリッタ169、及び巻取ロール171、173、175、177を備える。
【0072】
供給ロール162には、電極用部材1が巻き回されている。供給ロール162に巻き回されている電極用部材1は、電極用部材製造装置11を用いてプレドープ処理が施されている。電極用部材1は、供給ロール162から引き出され、搬送ロール164、166、167によりガイドされながら、巻取ロール171、173、175、177に向けて搬送される。
【0073】
スリッタ169は、本体軸179と、複数の円形刃181とを備える。複数の円形刃181は、所定の間隔をおいて、本体軸179に取り付けられている。スリッタ169は、搬送ロール166と対向するように配置されている。複数の円形刃181は、電極用部材1がスリッタ169と搬送ロール166との間を通過するとき、長手方向Lに沿って電極用部材1を切断する。電極用部材1は、図1に示す4つの切り口183において切断される。その結果、電極用部材1から、2つの電極185、186と、第1残部187と、第2残部189と、が生じる。第1残部187及び第2残部189は、電極として用いられない残りの部分である。4つの切り口183はいずれも露出部7を通る切り口である。
【0074】
巻取ロール171は、第1残部187を巻き取る。巻取ロール173は、電極185を巻き取る。巻取ロール175は、電極186を巻き取る。巻取りロール177は、第2残部189を巻き取る。
【0075】
6.電極の製造方法
まず、電極を製造するための準備として、以下のことを行う。未ドープ状態の電極用部材1を供給ロール101に巻き回す。次に、電極用部材1を供給ロール101から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール103まで通紙する。そして、浸漬槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23とを上昇させ、図3に示す定位置へセットする。
【0076】
浸漬槽15、及びドープ槽17、19、21にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、前記「4.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽23に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。次に、搬送ローラ群により、供給ロール101から巻取ロール103まで、上述した経路に沿って電極用部材1を搬送する。電極用部材1がドープ槽17、19、21内を通過するとき、活物質層5に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。
【0077】
電極用部材1は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽23で洗浄される。次に、電極用部材1は巻取ロール103に巻き取られる。電極用部材1は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極用部材製造装置11は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、電極用部材製造装置11は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0078】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0079】
最後に、巻取ロール103に巻き取られた電極用部材1を、切断装置13を用いて切断する。以上の工程により、電極185、186が得られる。
【0080】
7.電極製造システムが奏する効果
(1A)電極製造システムは、1つの電極用部材1から、複数の電極185、186を製造することができる。そのため、電極製造システムは、電極185、186を効率よく製造することができる。
【0081】
(1B)切断装置13は、露出部7を通る切り口183において電極用部材1を切断する。そのため、切断装置13は、製造した電極185、186において、活物質層5が幅方向Wにおける端部に位置することを抑制できる。
【0082】
(1C)電極製造システムは、電極用部材製造装置11を備える。そのため、電極製造システムは、プレドープ処理が施された電極用部材1を容易に製造することができる。
【0083】
(1D)電極用部材製造装置11はマスク144を備える。マスク144は、ドープ槽17、19、21内にある電極用部材1と、対極ユニット137、139、141、143との間に配置され、露出部7を覆う。そのため、電極用部材製造装置11は、露出部7にアルカリ金属が析出することを抑制できる。
<第2実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0084】
上述した第1実施形態では、対極ユニット137、139、141、143にマスク144が取り付けられていた。これに対し、第2実施形態では、マスク144が存在せず、対極ユニット137、139、141、143が分割されている点で、第1実施形態と相違する。
【0085】
対極ユニット137、139の形態を図8に示す。分割された対極ユニット137、139は、厚み方向Tから見て、活物質層5と対向する部分に配置されている。対極ユニット137、139は、厚み方向Tから見て、露出部7と対向する部分には配置されていない。対極ユニット141、143も、対極ユニット137、139と同様の形態を有する。
【0086】
2.電極製造システムが奏する効果
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1A)~(1C)を奏し、さらに、以下の効果(2A)を奏する。
【0087】
(2A)対極ユニット137、139、141、143は分割され、活物質層5と対向する部分にのみ配置されている。対極ユニット137、139、141、143は、露出部7と対向する部分には配置されていない。そのため、電極用部材製造装置11は、露出部7にアルカリ金属が析出することを抑制できる。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0088】
(1)電極用部材1の形態は他の形態であってもよい。例えば、電極用部材1の形態は、図9に示すものであってもよい。この電極用部材1は、4つの活物質層5を備える。幅方向Wにおいて隣接する2つの活物質層5の間と、幅方向Wにおける両端とに露出部7が形成されている。
【0089】
電極用部材製造装置11は、第1実施形態のマスク144、又は、第2実施形態の分割された対極ユニット137、139、141、143により、露出部7にアルカリ金属が析出することを抑制する。
【0090】
切断装置13は、図9に示す5つの切り口183において電極用部材1を切断する。その結果、4つの電極185、186、191、193が製造される。
【0091】
(2)電極用部材1の形態は他の形態であってもよい。例えば、電極用部材1の形態は、図10に示すものであってもよい。電極用部材1は、幅方向Wにおける中央に活物質層5を備える。活物質層5は、ドープ部5Aと、非ドープ部5Bとに分かれる。
【0092】
ドープ部5Aには、電極用部材製造装置11を用いる処理により、アルカリ金属がプレドープされる。ドープ部5Aは第1部位に対応する。非ドープ部5Bには、電極用部材製造装置11を用いる処理の後でも、アルカリ金属がプレドープされない。すなわち、非ドープ部5Bには、電極用部材製造装置11を用いる処理の後でも、プレドープされた活物質は存在しない。非ドープ部5Bは第2部位に対応する。
【0093】
電極用部材製造装置11は、第1実施形態のマスク144、又は、第2実施形態の分割された対極ユニット137、139、141、143により、ドープ部5Aにはプレドープを施し、非ドープ部5Bにはプレドープを施さない。電極用部材製造装置11は、第1実施形態のマスク144、又は、第2実施形態の分割された対極ユニット137、139、141、143により、露出部7にアルカリ金属が析出することを抑制する。
【0094】
切断装置13は、図10に示す3つの切り口183において電極用部材1を切断する。その結果、2つの電極185、186が製造される。切り口183は、非ドープ部5B又は露出部7を通る。
【0095】
(3)電極用部材1の形態は他の形態であってもよい。例えば、電極用部材1の形態は、図11に示すものであってもよい。電極用部材1は、2つの活物質層5を備える。2つの活物質層5の間と、幅方向Wにおける両端とに露出部7が形成されている。それぞれの活物質層5は、ドープ部5Aと、非ドープ部5Bとに分かれる。
【0096】
ドープ部5Aには、電極用部材製造装置11を用いる処理により、アルカリ金属がプレドープされる。ドープ部5Aは第1部位に対応する。非ドープ部5Bには、電極用部材製造装置11を用いる処理の後でも、アルカリ金属がプレドープされない。すなわち、非ドープ部5Bには、電極用部材製造装置11を用いる処理の後でも、プレドープされた活物質は存在しない。非ドープ部5Bは第2部位に対応する。
【0097】
電極用部材製造装置11は、第1実施形態のマスク144、又は、第2実施形態の分割された対極ユニット137、139、141、143により、ドープ部5Aにはプレドープを施し、非ドープ部5Bにはプレドープを施さない。電極用部材製造装置11は、第1実施形態のマスク144、又は、第2実施形態の分割された対極ユニット137、139、141、143により、露出部7にアルカリ金属が析出することを抑制する。
【0098】
切断装置13は、図11に示す5つの切り口183において電極用部材1を切断する。その結果、4つの電極185、186、191、193が製造される。切り口183は、非ドープ部5B又は露出部7を通る。
【0099】
(4)上記各実施形態において、電源と搬送ローラと各対極ユニットとの接続の態様は、搬送ローラ及び各対極ユニットが、それぞれのドープ槽ごとに異なる電源と接続する態様であったが、他の態様であっても良い。例えば、電極用部材1の一方の面と対向する対極ユニットと、他方の面と対向する対極ユニットとを、別々の電源に接続する態様(以下では態様Aとする)であってもよい。態様Aの場合、電極用部材1の各々の面ごとにドープされるアルカリ金属の量が均等になる。
【0100】
態様Aでは、ドープ槽17の上流槽131が備える対極ユニット137、143は、電源109の一方の極に接続される。対極ユニット139、141は電源110の一方の極に接続される。ドープ槽17の下流槽133が備える対極ユニット137、143は、電源109の他方の極に接続される。対極ユニット139、141は、電源110の他方の極に接続される。
【0101】
また、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、143は、電源111の一方の極に接続される。対極ユニット139、141は電源112の一方の極に接続される。ドープ槽17の下流槽133が備える対極ユニット137、143は、電源111の他方の極に接続される。対極ユニット139、141は、電源112の他方の極に接続される。
【0102】
また、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、143は、電源113の一方の極に接続される。対極ユニット139、141は電源114の一方の極に接続される。ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、143は、電源113の他方の極に接続される。対極ユニット139、141は、電源114の他方の極に接続される。
【0103】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ37、41、43、47、49、53、55、59、61、65、67、71は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。
【0104】
電源109の一方の端子は、搬送ローラ37、41、43、47と接続する。また、電源109の他方の端子は、ドープ槽17の上流槽131及び下流槽133が備える対極ユニット137、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ37、41、43、47と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の上流槽131及び下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0105】
電源110の一方の端子は、搬送ローラ37、41、43、47と接続する。また、電源110の他方の端子は、ドープ槽17の上流槽131及び下流槽133が備える対極ユニット139、141と接続する。電極用部材1は搬送ローラ41、47と接触する。電極用部材1と対極ユニット139、141とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の上流槽131及び下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット139、141とは電解液を介して電気的に接続する。
【0106】
態様Aでは、上記のとおり、電極用部材1の片側の面が相対する対極ユニット137、143を電源109の一方の端子に、電極用部材1のもう片側の面が相対する対極ユニット139、141を電源110の一方の端子にそれぞれ接続することで、電極用部材1の表側へドープされるアルカリ金属の量と、電極用部材1の裏側へドープされるアルカリ金属の量とが均等になるようにコントロールしている。
【0107】
電源111の一方の端子は、搬送ローラ49、43、55、59と接続する。また、電源111の他方の端子は、ドープ槽19の上流槽131及び下流槽133が備える対極ユニット137、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ49、43、55、59と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の上流槽131及び下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0108】
電源112の一方の端子は、搬送ローラ49、43、55、59と接続する。また、電源112の他方の端子は、ドープ槽19の上流槽131及び下流槽133が備える対極ユニット137、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ49、43、55、59と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の上流槽131及び下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0109】
態様Aでは、上記のとおり、電極用部材1の片側の面が相対する対極ユニット137、143を電源111の一方の端子に、電極用部材1のもう片側の面が相対する対極ユニット139、141を電源112の他方の端子にそれぞれ接続することで、電極用部材1の表側へドープされるアルカリ金属の量と、電極用部材1の裏側へドープされるアルカリ金属の量とが均等になるようにコントロールしている。
【0110】
電源113の一方の端子は、搬送ローラ61、65、67、71と接続する。また、電源113の他方の端子は、ドープ槽21の上流槽131及び下流槽133が備える対極ユニット137、143と接続する。電極用部材1は搬送ローラ61、65、67、71と接触する。電極用部材1と対極ユニット137、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の上流槽131及び下流槽133において、電極用部材1と対極ユニット137、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0111】
電源114の一方の端子は、搬送ローラ61、65、67、71と接続する。また、電源114の他方の端子は、ドープ槽21が備える対極ユニット139、141と接続する。電極用部材1は搬送ローラ61、65、67、71と接触する。電極用部材1と対極ユニット139、141とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21において、電極用部材1と対極ユニット139、141とは電解液を介して電気的に接続する。
【0112】
態様Aでは、上記のとおり、電極用部材1の片側の面が相対する対極ユニット137、143を電源113の一方の端子に、電極用部材1のもう片側の面が相対する対極ユニット139、141を電源114の他方の端子にそれぞれ接続することで、電極用部材1の表側へドープされるアルカリ金属の量と、電極用部材1の裏側へドープされるアルカリ金属の量とが均等になるようにコントロールしている。
【0113】
(5)電極用部材1の形状は、帯状以外の形状であってもよい。電極用部材1の形状として、例えば、矩形、円形等が挙げられる。
【0114】
(6)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0115】
(7)上述した電極製造システムの他、電極用部材の製造装置、電極用部材の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
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