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特許7319329光ファイバ部品冷却構造及びそれを含む光コネクタ構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】光ファイバ部品冷却構造及びそれを含む光コネクタ構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20230725BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/42
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021121233
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017174
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】大泉 晴郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0329092(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109244804(CN,A)
【文献】特開平09-127381(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104991310(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、前記光ファイバが挿通された筒状の部品冷却部と、を備えた光ファイバ部品冷却構造であって、
前記部品冷却部には、前記光ファイバを囲うように長さ方向に沿って四重の螺旋状に延びる4条の冷媒流路が形成されているとともに、冷媒流入部及び冷媒排出部が設けられており、
前記4条の冷媒流路は、隣り合う一対の往路の冷媒流路と、残りの一対の復路の冷媒流路とを含み、
前記一対の往路の冷媒流路の一端部が連通して前記冷媒流入部に通じるとともに、前記残りの一対の復路の冷媒流路の一端部が連通して前記冷媒排出部に通じ、かつ前記4条の冷媒流路の他端部が連通している光ファイバ部品冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバ部品冷却構造において、
前記部品冷却部は、外筒部材と、前記外筒部材に内嵌めされた外周面に長さ方向に沿って螺旋状に延びる溝が形成された内筒部材と、で構成されており、
前記冷媒流路は、前記外筒部材の内周面で前記内筒部材の外周面の溝の開口が封じられて構成されている光ファイバ部品冷却構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ファイバ部品冷却構造を含む光コネクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ部品冷却構造及びそれを含む光コネクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイパワーのレーザ光を伝送する光ファイバに取り付けられる光ファイバ部品では、光ファイバが伝送するレーザ光に起因する発熱による損傷を防止するため、その発熱を冷却する手段が必要である。例えば、特許文献1には、筒状のハウジング内に、外周面に螺旋状に延びる溝が形成された筒状のチューブが同軸に配置されるとともに、そのチューブ内に光ファイバが挿通され、且つハウジングとチューブとの間の空洞が、光ファイバを冷却するための冷却水の流路に構成された光伝送ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公報第10775575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、光ファイバが挿通された部品冷却部の剛性の高い構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、光ファイバと、前記光ファイバが挿通された筒状の部品冷却部とを備えた光ファイバ部品冷却構造であって、前記部品冷却部には、前記光ファイバを囲うように長さ方向に沿って四重の螺旋状に延びる4条の冷媒流路が形成されているとともに、冷媒流入部及び冷媒排出部が設けられており、前記4条の冷媒流路は、隣り合う一対の往路の冷媒流路と、残りの一対の復路の冷媒流路とを含み、前記一対の往路の冷媒流路の一端部が連通して前記冷媒流入部に通じるとともに、前記残りの一対の復路の冷媒流路の一端部が連通して前記冷媒排出部に通じ、かつ前記4条の冷媒流路の他端部が連通している。
【0006】
本発明は、本発明の光ファイバ部品冷却構造を含む光コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品冷却部に形成された冷媒流路が螺旋状に延びているので、剛性の高い部品冷却部の構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態に係る光コネクタ構造の内部構造を示す図である。
図1B】実施形態に係る光コネクタ構造の縦断面図である。
図2A図1AにおけるIIA-IIAに対応する光コネクタ構造の断面図である。
図2B図1AにおけるIIB-IIBに対応する光コネクタ構造の断面図である。
図2C図1AにおけるIIC-IICに対応する光コネクタ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1A及びB並びに図2A乃至Cは、実施形態に係る光コネクタ構造Cを示す。この光コネクタ構造Cは、例えばレーザ加工機等に装着されるレーザ光伝送用の光ファイバケーブルの入射側及び/又は出射側の端部に設けられるものである。
【0011】
実施形態に係る光コネクタ構造Cは、光ファイバ10と、その先端部に取り付けられた光コネクタ20とで構成されている。
【0012】
光ファイバ10は、裸ファイバ11と、それを被覆するジャケット12とを有する。裸ファイバ11は、相対的に高屈折率なコアと、それを被覆する相対的に低屈折率のクラッドとを有する。コアは、例えばノンドープの純粋石英で形成されており、クラッドは、例えば屈折率を低下させるドーパント(F、B等)がドープされた石英で形成されている。ジャケット12は、フッ素樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂材料で形成されている。光ファイバ10は、先端から所定長の部分のジャケット12が剥離されて裸ファイバ11が露出している。その露出した裸ファイバ11の外周面には、モードストリッパが設けられている。
【0013】
光コネクタ20は、筒状の部品冷却部21を有する。そして、実施形態に係る光コネクタ構造Cには、光ファイバ10と、この筒状の部品冷却部21とを備えた光ファイバ部品冷却構造Aが構成されている。
【0014】
部品冷却部21は、外筒部材のハウジング22と、内筒部材のファイバ挿通部材23とを有する。
【0015】
ハウジング22は、例えばステンレス等の金属材料で形成されている。ハウジング22は、本体が円筒状に形成されている。ハウジング22には、本体後方部に、管状の冷媒流入部221が外周面から突出するように設けられているとともに、その反対側に管状の冷媒排出部222が外周面から突出するように設けられている。これらの冷媒流入部221及び冷媒排出部222は、本体内部に連通している。
【0016】
ファイバ挿通部材23は、冷却機能に優れた材料として熱伝導率の高い材料が好ましく、例えば銅等の金属材料で形成されている。ファイバ挿通部材23は、外径がハウジング22の内径と同一の円筒状に形成されている。ファイバ挿通部材23の外周面には、長さ方向に沿って四重の螺旋状に延びる4条の断面コの字状の溝231が形成されている。ファイバ挿通部材23の後方部の外周面には、4条の溝231のうちの一対の溝231の一端部を連通させる後方側第1連通部2321と、残りの一対の溝231の一端部を連通させる後方側第2連通部2322とが形成されている。ファイバ挿通部材23の先端部の外周面には、4条の溝231の他端部を連通させる先端側連通部233が形成されている。ファイバ挿通部材23は、ファイバ挿通孔234を有し、その先端に連続して、先端側に行くに従って内径が漸次拡大したテーパ部235が形成されている。
【0017】
部品冷却部21は、ハウジング22にファイバ挿通部材23が内嵌めされ、後方側第1連通部2321が冷媒流入部221に、また、後方側第2連通部2322が冷媒排出部222に、それぞれ連通するように位置合わせされて構成されている。冷媒流入部221に連通した後方側第1連通部2321は、部品冷却部21内の後方部において冷媒流動開始部31を構成しているとともに、冷媒排出部222に連通した後方側第2連通部2322は、部品冷却部21内の後方部において冷媒流動終了部32を構成している。ファイバ挿通部材23の外周面の4条の溝231のそれぞれは、ハウジング22の内周面で開口が封じられて、部品冷却部21内において、長さ方向に沿って螺旋状に延びる流路断面が矩形の冷媒流路33を構成している。後述するように、これらの4条の冷媒流路33には冷媒が流動するが、その冷却効率を高める観点からは、流路幅が流路間の隔壁の厚さよりも大きいことが好ましい。ファイバ挿通部材23の外周面の先端側連通部233は、ハウジング22の内周面で開口が封じられて、部品冷却部21内の先端部において折り返し部34を構成している。
【0018】
光コネクタ20は、更にハウジング22内に設けられたファイバ固定部材24及び石英ブロック25を有する。
【0019】
ファイバ固定部材24は、例えば熱伝導率の高い銅等の金属材料で形成されている。ファイバ固定部材24は、外径がファイバ挿通部材23の内径と同一で且つ内径が光ファイバ10の外径と同一の円筒状に形成されている。ファイバ固定部材24の先端部は、先細り形状に形成されている。ファイバ固定部材24は、ファイバ挿通部材23の後方部に内嵌めされている。
【0020】
石英ブロック25は、例えばノンドープの純粋石英で形成されている。石英ブロック25は、先端側部分が、外径がハウジング22の内径と同一の円柱状に形成され、後方側部分が、ファイバ挿通部材23のテーパ部235に対応するように、後方側に行くに従って外径が漸次縮小した円錐状に形成されている。石英ブロック25は、先端側部分が、ハウジング22の先端部に内嵌めされるとともに、後方側部分がファイバ挿通部材23のテーパ部235に収容されている。
【0021】
光ファイバ10は、ファイバ固定部材24の後方から挿通されるとともに、ジャケット12の先端がファイバ固定部材24の先端に一致するように位置決めされ、且つそこから先端側に突出した裸ファイバ11がファイバ挿通孔234内に延びて石英ブロック25の後端に融着されている。
【0022】
実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、入射側の場合には光源からのレーザ光が、また、出射側の場合には被照射物からの反射光が、石英ブロック25を介して光ファイバ10のクラッドにも入射してクラッドモード光として伝搬する。このクラッドモード光は、その大半がファイバ挿通孔234内を延びる裸ファイバ11の表面のモードストリッパで除去される。モードストリッパで除去されたクラッドモード光の除去光は、ファイバ挿通孔234内の空間を伝搬した後、ファイバ挿通部材23の内周面に達して熱に変換される。また、クラッドモード光のうちのモードストリッパで除去されなかったものは、ジャケット12で被覆された部分までクラッドを伝播した後、ジャケット12を介してファイバ固定部材24の内周面に達して熱に変換される。さらに、光コネクタ20に入射したその他の漏れ光も、光コネクタ20において熱に変換される。
【0023】
一方、実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、光コネクタ20内において、冷媒流入部221及び冷媒排出部222並びにファイバ固定部材24の先端部分に対応する部分から、石英ブロック25の後方側部分に対応する部分にかけて、冷媒流動開始部31及び冷媒流動終了部32、光ファイバ10を囲うように長さ方向に沿って螺旋状に延びる冷媒流路33、並びに折り返し部34を含む冷媒流動領域が構成されている。そして、冷媒流入部221から例えば水等の冷媒が供給されると、冷媒は、冷媒流動開始部31に連通した二重螺旋状に延びる一対の冷媒流路33を先端側に向かって流動する。これらが往路の冷媒流路33を構成する。冷媒は、往路の冷媒流路33を介して折り返し部34に達した後、二重螺旋状に延びる残りの一対の冷媒流路33を後方側に向かって流動する。これらが復路の冷媒流路33を構成する。冷媒は、復路の冷媒流路33を介して冷媒流動終了部32に達した後、冷媒排出部222から排出される。
【0024】
したがって、実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、光ファイバ10がレーザ光を伝送した際に光コネクタ20が発熱するが、光ファイバ部品冷却構造Aにより、光コネクタ20を、その内部を流動する冷媒との熱交換により冷却する。
【0025】
以上の構成の実施形態に係る光コネクタ構造Cによれば、ハウジング22とファイバ挿通部材23とにより部品冷却部21が構成され、その部品冷却部21に形成された冷媒流路33が光ファイバ10を囲うように長さ方向に沿って螺旋状に延びているので、流路間を仕切る隔壁の補強効果により、剛性の高い部品冷却部21の構造を得ることができる。
【0026】
したがって、実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、このように部品冷却部21が剛性の高い構造であるため、冷媒流路33とファイバ挿通孔234との間の厚さを薄くすることができ、それにより冷媒による熱交換の効率が高まるので、高い冷却能力を得ることができる。しかも、薄肉化は、加工歪を発生させるが、部品冷却部21の構造が高い剛性を有するので、かかる加工歪の発生を抑制することができる。
【0027】
また、例えば、円筒材の外周面に長さ方向に沿って真っ直ぐな断面コの字状の溝を形成する場合、1回の切削加工では、溝底における幅方向の中央が最も薄肉となり、その両側に行くに従って厚肉となるため、厚さを一定にするためには、複数回の切削加工が必要となる。しかしながら、実施形態に係る光コネクタ構造Cでは、円筒状のファイバ挿通部材23の外周面に形成された断面コの字状の溝231は、長さ方向に沿って螺旋状に延びているので、1回の切削加工でも、溝底における幅方向の厚さがほぼ一定に形成することができ、そのため加工工数を少なくすることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、部品冷却部21に冷媒流路33が4条形成された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、1条のみであってもよく、2条若しくは3条、又は、5条以上形成された構成であってもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、複数の冷媒流路33が、往路の冷媒流路33と、復路の冷媒流路33とを含み、冷媒が部品冷却部21の長さ方向を往復するように流動する構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、部品冷却部の先端部及び後方部のうちの一方に冷媒流入部及び他方に冷媒排出部が設けられ、冷媒が部品冷却部の長さ方向を一方向に流動する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、光ファイバ部品冷却構造及びそれを含む光コネクタ構造の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0031】
A 光ファイバ部品冷却構造
C 光コネクタ構造
10 光ファイバ
11 裸ファイバ
12 ジャケット
20 光コネクタ
21 部品冷却部
22 ハウジング(外筒部材)
221 冷媒流入部
222 冷媒排出部
23 ファイバ挿通部材(内筒部材)
231 溝
2321 後方側第1連通部
2322 後方側第2連通部
233 先端側連通部
234 ファイバ挿通孔
235 テーパ部
24 ファイバ固定部材
25 石英ブロック
31 冷媒流動開始部
32 冷媒流動終了部
33 冷媒流路
34 折り返し部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C