(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】アデノウイルスおよびアデノウイルスを使用するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/861 20060101AFI20230725BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230725BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230725BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230725BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N7/01
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/761
(21)【出願番号】P 2021528389
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 US2019062547
(87)【国際公開番号】W WO2020106924
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バリー・マイケル・エイ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/083297(WO,A2)
【文献】特表2008-522630(JP,A)
【文献】特表2002-527455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0150557(US,A1)
【文献】特表2009-523007(JP,A)
【文献】Oncolytic Virotherapy,2018年05月01日,vol.7, p.43-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒトAd6株からのAdキャプシドポリペプチドおよび(b)ヒトAd57株からの少なくとも2つのヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドを含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記組換えAdは、
4-1BBL、CD40Lまたは4-1BBLとCD40Lとの組み合わせをコードする核酸をさらに含む、前記組換えAd。
【請求項2】
(a)ヒトAd6株からのAdキャプシドポリペプチドおよび(b)ヒトAd57株からの少なくとも2つのヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドを含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記組換えAdは、制限増殖型Ad(CRAd)であり、前記CRAdは、
4-1BBL、CD40Lまたは4-1BBLとCD40Lとの組み合わせをコードする核酸をさらに含む、前記組換えAd。
【請求項3】
ヒトAd6株のキャプシドヘキソンポリペプチドが、ヒトAd57株からのキャプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチド1~7を含む、請求項1または2に記載の組換えAd。
【請求項4】
ヒトAd6株のキャプシドヘキソンポリペプチドが、ヒトAd57株からのキャプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチド2~6を含む、請求項1または2に記載の組換えAd。
【請求項5】
1種または複数の異なるAd株からのキャプシドポリペプチドをさらに含み、当該キャプシドポリペプチドが、ヒトAd6およびヒトAd57株のファイバーポリペプチドとは異なるファイバーポリペプチドである、請求項1~4のいずれか1つに記載の組換えAd。
【請求項6】
アミノ酸置換および/またはアミノ酸修飾をさらに含み、前記のアミノ酸置換がHVRポリペプチドにおけるシステインへの置換であり、前記のアミノ酸修飾がHVRポリペプチドにおけるシステインのPEG化およびBAP化から選択される、請求項1~
5のいずれか1つに記載の組換えAd。
【請求項7】
配列番号43、配列番号44または配列番号45のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組換えAd。
【請求項8】
(a)ヒトAd6株からのヘキソンポリペプチドをコードするAdゲノムおよび(b)ヒトAd57株からの少なくとも2つのヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記組換えAdは、
4-1BBL、CD40Lまたは4-1BBLとCD40Lとの組み合わせをコードする核酸をさらに含む、前記組換えAd。
【請求項9】
(a)ヒトAd6株からのヘキソンポリペプチドをコードするAdゲノムおよび(b)ヒトAd57株からの少なくとも2つのヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記組換えAdは、制限増殖型Ad(CRAd)であり、前記CRAdは、
4-1BBL、CD40Lまたは4-1BBLとCD40Lとの組み合わせをコードする核酸をさらに含む、前記組換えAd。
【請求項10】
ヒトAd6株のキャプシドヘキソンポリペプチドが、ヒトAd57株からのキャプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチド1~7を含む、請求項
8または
9に記載の組換えAd。
【請求項11】
ヒトAd6株のキャプシドヘキソンポリペプチドが、ヒトAd57株からのキャプシドヘキソン超可変領域(HVR)ポリペプチド2~6を含む、請求項
8~
9のいずれか1つに記載の組換えAd。
【請求項12】
1種または複数の異なるAd株からのキャプシドポリペプチドをコードする核酸をさらに含み、当該キャプシドポリペプチドが、ヒトAd6およびヒトAd57株のファイバーポリペプチドとは異なるファイバーポリペプチドである、請求項
8~
10のいずれか1つに記載の組換えAd。
【請求項13】
E1ポリペプチドをコードする核酸中にdl1101欠失を含むように修飾されているか、E1ポリペプチドをコードする核酸中にdl1107欠失を含むように修飾されているか、またはE1ポリペプチドをコードする核酸中にdl1101欠失およびdl1107欠失を含むように修飾されている、請求項
9に記載の組換えAd。
【請求項14】
配列番号43、配列番号44または配列番号45のアミノ酸配列をコードする核酸を含む、請求項
13に記載の組換えAd。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1つに記載の組換えアデノウイルス(Ad)を含む、癌を有する哺乳動物を治療するための方法に使用するための医薬組成物であって、前記方法が、前記哺乳動物に前記医薬組成物を投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項16】
前記癌が、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、メラノーマ、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記投与が全身投与を含む、請求項
15~
16のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項18】
全身投与が筋肉内、鼻内または静脈内投与を含む、請求項
17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記投与が局所投与を含む、請求項
15~
16のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記局所投与が腫瘍内注射を含む、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~
14のいずれか1つに記載の組換えアデノウイルス(Ad)を含む、癌の治療のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸送達、ワクチン接種、および/または癌の治療のための方法および材料に関する。例えば、本発明は、アデノウイルス(Ad)、および医学的状態、例えば癌を治療するためにアデノウイルスを使用するための方法を包含する。本発明の一態様では、本明細書で提供されるアデノウイルスを腫瘍溶解剤として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
膨大な努力にもかかわらず、2017年のみで160万を超える新規症例を有する米国では、癌は依然として主要な公衆衛生問題である(米国国立がん研究所、「Cancer Stat Facts: Cancer of Any Site,」seer.Cancer.gov/statfacts/html/all.html)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Russellら、2017 Molecular Therapy 25:1107-1116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の治療法、例えば、化学療法、放射線療法および手術は、特に癌が進行している場合には、しばしば失敗する。その理由の1つは、癌細胞がこれらの治療法によって標的化される成分を排除または修飾し、殺されることを効果的に回避できるからである。
【0005】
腫瘍溶解性ウイルス療法は、腫瘍を破壊し、適応免疫応答を活性化し、腫瘍に対する生涯にわたる免疫を確保するために選択的に複製するウイルスを利用することにより、癌治療の代替アプローチを提供することができる(非特許文献1)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、核酸送達、ワクチン接種、および/または癌の治療のための方法および材料を提供する。例えば、本発明は、腫瘍溶解剤として1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を投与することによって癌を治療ための方法および材料を提供する。一実施態様では、組換えAdは、第1のAdに由来することができ(例えば、第1のAd、例えばAd6のゲノムを含むことができ、組換えAdバックボーンとも呼ぶ)、そして、第2のAd、例えばAd57由来のヘキソンHVRを含むことができる。組換えAdがAd6ゲノムおよびAd57ヘキソンHVRを含む場合、組換えAdはAd657と称されるキメラAdであり得る。(Nguyen, et al. Oncolytic Virotherapy 7:43-51, 2018参照)。
【0007】
一態様において、本発明は、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を使用する、感染性疾患に対してワクチン接種するための方法を提供する。一態様において、本発明は、腫瘍溶解剤として1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を使用する、癌を治療ための方法を提供する。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657)は、哺乳動物における癌細胞の数を減少させるために(例えば、癌細胞に感染させ、癌細胞を殺すことによって)、使用することができる。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)は、哺乳動物における抗癌免疫応答を刺激するために使用することができる。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)は、哺乳動物における感染性疾患に対する免疫応答を刺激するために使用することができる。
【0008】
本明細書において実証されるように、Ad657を皮下ヒトDU145前立腺癌腫瘍を有するマウスに静脈内注射によって送達すると、Ad657はまず肝臓に感染し、次いで遠隔の腫瘍に到達する。Ad6およびAd657は両者とも、腫瘍成長の有意な遅延および生存の延長を媒介したが、Ad6はより高い有効性を媒介した。
【0009】
本発明は、核酸送達、ワクチン接種、および/または癌の治療のための方法および材料を提供する。例えば、本発明は、腫瘍溶解剤として1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を投与することによって癌を治療ための方法および材料を提供する。一実施態様では、組換えAdは、第1のAdに由来することができ(例えば、第1のAd、例えばAd6のゲノムを含むことができ、組換えAdバックボーンとも呼ぶ)、そして、第2のAd、例えばAd57由来のヘキソンHVRを含むことができる。組換えAdがAd6ゲノムおよびAd57ヘキソンHVRを含む場合、組換えAdはAd657と称されるキメラAdであり得る。一態様において、本発明は、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を使用する、感染性疾患に対してワクチン接種するための方法を提供する。一態様において、本発明は、腫瘍溶解剤として1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)を使用する、癌を治療ための方法を提供する。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657)は、哺乳動物における癌細胞の数を減少させるために(例えば、癌細胞に感染させ、癌細胞を殺すことによって)、使用することができる。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)は、哺乳動物における抗癌免疫応答を刺激するために使用することができる。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAd(例えば、1種または複数のAd657およびそれらのバリアント)は、哺乳動物における感染性疾患に対する免疫応答を刺激するために使用することができる。
【0010】
本明細書において実証されるように、Ad657を皮下ヒトDU145前立腺癌腫瘍を有するマウスに静脈内注射によって送達すると、Ad657はまず肝臓に感染し、次いで遠隔の腫瘍に到達する。Ad6およびAd657は両者とも、腫瘍成長の有意な遅延および生存の延長を媒介したが、Ad6はより高い有効性を媒介した。
【0011】
さらに、肝壊死が、実質的にいずれの腫瘍溶解性ウイルスにとっても、それが静脈内全身療法として使用される場合、重要な問題である。ウイルスが肝細胞に感染し、それらを殺すと、低用量では肝臓の損傷をもたらし、高用量では死に至る。特に、本発明のAd、すなわちAd657キメラベクターおよびそのバリアントの投与は、Ad5またはAd6のいずれよりも予想外に低い肝臓損傷を媒介した。このように、Ad6プラットフォームとAd657のHVR1~7とのユニークな組合せは、天然ウイルスでは観察されない生体内分布および治療の変化を媒介した。
【0012】
また、本明細書において示されるように、鼻内(IN)および筋肉内(IM)経路によるクレードB HIV-1 gp160のみを発現する複製シングルサイクルアデノウイルス(SC-Ad657)ワクチンを用いたアカゲザルの免疫化を、粘膜および全身経路のワクチン接種と比較した。SC-Adワクチンは単独で、単回免疫化だけの後に、Envに対する有意な循環抗体力価をもたらした。IM経路のみで免疫化した動物は血中の末梢T濾胞ヘルパー(pTfh)細胞が高かったが、リンパ節ではTfhが低く、そして抗体依存性細胞傷害(ADCC)抗体活性がより低かった。IN経路によって免疫化した動物は、リンパ節でのTfhが高かったが、血中でのpTfhは低く、ADCC抗体がより高かった。免疫化した動物をSHIVSF162P3で直腸チャレンジした場合、それらは全て感染したが、粘膜で抗原刺激を受けた動物はそれらの胃腸管のウイルス量は著しく低かった。同様に、C型肝炎抗原の遺伝子を保有するAd657は、肝炎およびサイトメガロウイルスに対して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生成することができる。Ad657は、4-1BBL、顆粒球マクロファージ刺激因子(GMCSF)およびIL-21のようなサイトカインを含む治療遺伝子を送達し、発現することができる。本明細書中に提供される結果は、組換えAdが核酸、ワクチン、および/または癌に関する腫瘍溶解性ウイルス療法のための局所または全身送達ビヒクルとして使用できることを実証している。
【0013】
発明の概要
概して、本発明の一態様は、(a)第1のAd株からのAdゲノムおよび(b)第2のAd株からのヘキソンポリペプチドをコードする核酸を含む組換えAdであって、前記ヘキソンポリペプチドの1つまたは複数の超可変領域(HVR)が前記AdゲノムによってコードされるHVRとは異なる組換えAdを特徴とする。第1のAd株は第1のヒトAd株であることができ、第2のAd株は第1のヒトAd株とは異なる第2のヒトAd株であることができる。第1のAd株と第2のAd株は血清型的に異なっていてよい。第1のAd株はヒトAd6株であることができ、そして第2のAd株はヒトAd57株であることができる。前記組換えAdはまた、1つまたは複数の標的化ポリペプチド、抗原性ポリペプチド、酵素、アミノ酸置換、PEG化、リガンド、タグなども含み得る。
【0014】
組換えAdは、遺伝子ベースのワクチン接種のための、遺伝子治療適用/送達のための、または腫瘍溶解性ウイルス療法のためのベクターとして使用され得る。
【0015】
さらなる実施態様において、前記組換えAdは、(a)第1のAd株からのAdゲノムおよび(b)1種または複数のAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで、前記の1種または複数のAd株からの前記ヘキソンポリペプチドの超可変領域(HVR)は第1のAdゲノムによってコードされるHVRとは異なる。
【0016】
さらなる実施態様において、前記組換えAdは、複製能を有する(replication competent)または制限増殖型Ad(conditionally-replicating Ad)(例えば、CRAd)であってよい。
【0017】
別の態様において、本発明は、(a)第1のヘキソンポリペプチドをコードする核酸および(b)第2のヘキソンポリペプチドを含み、第1のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列が、第2のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列と異なる、組換えおよび/またはキメラAdを特徴とする。第1のヘキソンポリペプチドの超可変領域(HVR)のアミノ酸配列は、第2のヘキソンポリペプチドの超可変領域のアミノ酸配列とは異なっていてよい。前記核酸は第1のAd株由来であることができ、そして第2のヘキソンポリペプチドは第2のAd株由来であることができる。第1のAd株は第1のヒトAd株であることができ、第2のAd株は第1のヒトAd株とは異なる第2のヒトAd株であることができる。第1のAd株と第2のAd株は血清型的に異なっていてよい。前記Ad株はヒトAd6株であることができ、そして第2のAd株はヒトAd57株であることができる。前記組換えAdはまた、標的化ポリペプチドを含むこともできる。前記標的化ポリペプチドは、アミノ酸配列TARGEHKEEELI(配列番号1)を含むことができる。
【0018】
さらなる実施態様において、前記組換えAdは、(a)第1のヘキソンポリペプチドをコードする核酸および(b)1種または複数のAd株からの第2のヘキソンポリペプチドを含み、ここで第1のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列は、前記の1種または複数のAd株からの第2のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列とは異なる。
【0019】
さらなる実施態様において、前記組換えAdは、複製能を有するAdまたは制限増殖型Ad(例えば、CRAd)であり得る。
【0020】
別の態様において、本発明は、癌を有する哺乳動物を治療するための材料および方法を提供する。前記方法は、癌を有する哺乳動物に、(a)第1のAd株からのAdゲノムおよび(b)1種または複数のAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドを含む組換えAdであって、前記ヘキソンポリペプチドの1つまたは複数の超可変領域(HVR)が前記AdゲノムによってコードされるHVRと異なる前記組換えAdを、および/または、(a)第1のヘキソンポリペプチドをコードする核酸および(b)第2のヘキソンポリペプチドを含みAdであって、第1のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列が、第2のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるAdを、投与することを含むか、または投与することから本質的になることができる。哺乳動物はヒトであり得る。前記癌は、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、メラノーマ、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病または骨髄性白血病であり得る。投与には、全身投与または局所投与(例えば、静脈内、腫瘍内、筋肉内、器官内、リンパ節内投与)が含まれ得る。
【0021】
本明細書において、Ad657およびそのバリアントが、治療用ポリペプチドの発現のために細胞に治療用遺伝子を送達できることが実証されている。従って、組換えAd(キメラAdを含む)は、核酸、ワクチンおよび/または癌のための腫瘍溶解性ウイルス療法のための局所または全身送達ビヒクルとして使用することができる。
【0022】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細は、例および添付の図面ならびに以下の説明に示されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、当該説明および図面から、並びに請求項から明らかとなろう。(a)第1のAd株からのヘキソンポリペプチドをコードするAdゲノムおよび(b)1種または複数の異なるAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドをコードする核酸を含む組み換えアデノウイルス(Ad)であって、前記ヘキソンポリペプチドの少なくとも1つの超可変領域(HVR)が第1のAd株のAdゲノムによってコードされるHVRと異なる、組換えアデノウイルス(Ad)。
【0023】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、第1のAd株および前記の1種または複数の異なるAd株が血清型的に異なる組換えAdに関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記第1のAd株がヒトAd6株であり、第2のAd株がヒトAd57株である組換えAdに関する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、標的化ポリペプチド、抗原、酵素、受容体、リガンドまたはタグをコードする核酸をさらに含む、上記のような組換えAdに関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、標的化ポリペプチドが配列番号1~41および配列番号46~47から選択されるアミノ酸配列を含む組換えAdに関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記組換えAdが複製能を有するAdである組換えAdに関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記の複製能を有するAdが、シングルサイクルAd(single-cycle Ad)または制限増殖型Ad(CRAd)である組換えAdに関する。
【0029】
本発明のさらなる態様は、(a)第1のAd株由来のAdキャプシドポリペプチドおよび(b)1種または複数の異なるAd株由来の少なくとも1つのヘキソンポリペプチドを含む上記のような組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記ヘキソンポリペプチドまたはキャプシドポリペプチドの超可変領域(HVR)が、第1のAd株のHVRまたはキャプシドポリペプチドとは異なる組換えアデノウイルス(Ad)に関する。
【0030】
本発明のさらなる態様は、(a)第1のヘキソンポリペプチドをコードする核酸および(b)第2のヘキソンポリペプチドをコードする核酸を含む上記のような組換えアデノウイルス(Ad)であって、第1のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列が第2のヘキソンポリペプチドのアミノ酸配列と異なる組換えアデノウイルス(Ad)に関する。
【0031】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、少なくとも1つのヘキソンポリペプチドをコードする核酸が前記第2のヘキソンポリペプチドの超可変領域のアミノ酸配列とは異なる前記組換えAdに関する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記核酸が第1のAd株由来であり、前記第2のヘキソンポリペプチドが第2のAd株由来である組換えAdに関する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記第1のAd株が第1のヒトAd株であり、そして前記第2のAd株が前記第1のヒトAd株とは異なる第2のヒトAd株である組換えAdに関する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記第1のAd株および前記第2のAd株が血清型的に異なる組換えAdに関する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記第1のAd株がヒトAd6株であり、前記第2のAd株がヒトAd57株である組換えAdに関する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、標的化ポリペプチドをさらに含む組換えAdに関する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記の標的化ポリペプチドがアミノ酸配列TARGEHKEEELI(配列番号1)を含む組換えAdに関する。
【0038】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記組換えAdが複製能を有するAdである組換えAdに関する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、上記のような組換えAdであって、前記の複製能を有するAdが、シングルサイクルAd(single-cycle Ad)または制限増殖型Ad(CRAd)である組換えAdに関する。
【0040】
本発明のさらなる態様は、癌を有する哺乳動物を治療するための方法であって、本明細書に記載されるような組換えアデノウイルス(Ad)を前記哺乳動物に投与することを含む方法に関する。
【0041】
本発明のさらなる態様は、上記のような方法であって、前記癌が、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、メラノーマ、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される方法に関する。
【0042】
本発明のさらなる態様は、上記のような方法であって、前記投与が全身投与を含む方法に関する。
【0043】
本発明のさらなる態様は、上記のような方法であって、全身投与が筋肉内、鼻内または静脈内投与を含む方法に関する。
【0044】
本発明のさらなる態様は、上記のような方法であって、前記投与が局所投与を含む方法に関する。
【0045】
本発明のさらなる態様は、上記のような方法であって、前記局所投与が腫瘍内注射を含む方法に関する。
【0046】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を使用して本発明を実施することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。すべての出版物、特許出願、特許、並びにここで言及されている他の参考文献が、それらの全体として参照によって組み込まれる。不一致がある場合、定義を含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法および例はあくまで例示であり、限定することを意図するものではない。
【0047】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、当該説明および図面から、並びに請求項から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、ファージからアデノウイルスへのコンテキスト特異的なペプチドの翻訳を示す。A)ランダムな12量体ペプチドライブラリーを構造的に制約するAd5ファイバーHI βシートを含むファージディスプレイライブラリーの図。下に示されるのは、Ad5 HVR5ヘキソンにおけるβ7およびβ8シートの間の構造的に類似した部位の描写である。B)HIライブラリーにおける12.51および12.52の一次アミノ酸アライメントおよびヘキソンのHVR5中に挿入された場合のそれらの位置。C)ペプチドで修飾されたAd5 GFP-Luc発現ウイルスを示す。
【
図2】
図2は、インビトロ形質導入を示す。A)10
4vp/細胞の示されたベクターを感染させたC2C12細胞の、感染2日後の蛍光顕微鏡によるGFP発現。B)示されたAdの様々なMOIでの感染2日後のC2C12細胞からのルシフェラーゼ活性。
【
図3】
図3は、マウスにおけるin vivo形質導入を示す。A)静脈内(IV)または筋肉内(IM)経路による注射1日後のマウスのルシフェラーゼイメージング。IM注射されたマウスは、それぞれの四頭筋に10
9vpを受けた。IV注射されたマウスは、尾静脈により10
10vpを受けた。B)注射後示された日でのイメージングによる、ルシフェラーゼ活性の定量化。*一元配置ANOVAによりp<0.05。***一元配置ANOVAによりp<0.001。
【
図4】
図4は、ハムスターにおけるin vivo形質導入を示す。A)IM経路による10
10vpでの注射の1日後におけるハムスターの筋肉におけるルシフェラーゼ活性。**T検定によりp<0.01。
【
図5】
図5は、単回IM免疫化の16週後の遺伝子をベースとする免疫応答を示す。
図3からのマウスをIM注射の16週後に採血し、それらの血清をELISAによって段階希釈で分析して、GFPタンパク質に対する抗体を検出した。*一元配置ANOVAによりp<0.05、**p<0.01、***p<0.001。****一元配置ANOVAによりp<0.0001。全てのAd注射マウスは、1:10,000~1:1000の血清希釈でPBS群と比較した場合に、有意な抗GFP抗体を生成した。Ad5-GL-HVR-12.51および12.52とAd5-GLとの比較を黒色のアスタリスクで示す。Ad5-GL-HVR-12.51とAd5-GL-HVR-12.52との比較を灰色のアスタリスクで示す。OD0.06における灰色の一点鎖線は、PBS群とは異なる抗体を区別する95%信頼区間を示す。
【
図6】
図6は、ヒトアデノウイルス血清型の全ゲノム配列の系統樹を示す。
【
図7】
図7は、Ad5、6および57のアラインメントを示し、ヘキソンおよびE3領域における変化を示す。(A)Ad6およびAd57のゲノムのPustell DNAアライメント。ボックスは、2つのウイルスの間で変化が最も大きいヘキソンおよびE3領域を示す。(B)Ad5、Ad6およびAd57からのヘキソンタンパク質における超可変領域のClustalWアミノ酸アラインメント。MacVector上でアライメントを行った。
【
図8】
図8は、Ad6 HVRをAd57 HVRで置き換えることによるAd657の構築の図を示す。略語:HVR、超可変領域。
【
図9】
図9は、in vitro腫瘍溶解活性を示す。LNCaPおよびDU145細胞を、示されたvp/細胞を有する示されたウイルスで5日間処理した。細胞をクリスタルバイオレットで染色し、細胞生存率をOD595により測定した。細胞生存率(%)は、サンプルのODを同じ96ウェルプレート上の未処理コントロール細胞の平均ODで割り、この数に100を掛けることによって計算した。(A)LNCaP細胞殺傷。(B)DU145殺傷。略語:vp、ウイルス粒子。
【
図10】
図10は、肝損傷における腫瘍溶解性Adの効果を示す。C57BL/6マウス(1群あたりn=6)に1011vpの各ウイルスを尾静脈により注射した。(A)カプラン・マイヤー生存。(B)注射3日後にALT測定用に採血した(****ANOVAによりp<0.001)。略語:ALT、アラニンアミノトランスフェラーゼ; vp、ウイルス粒子。
【
図11】
図11は、単回i.v.投与後のヌードマウスにおけるDU145腫瘍異種移植片におけるAd6およびAd657の抗癌活性を示す。確立されたDU145腫瘍を有するヌードマウス(1群あたりn=9)に、示されたウイルスの3×10
10vpの単回用量またはPBSをi.v.注射した。(A)腫瘍成長に対する単回i.v注射の効果。腫瘍寸法をカリパスで測定し、腫瘍体積を幅
2×長さ×1/2として計算した。データは平均±SEとして示す。本文に記載されるようなANOVAによりまたはT検定により、*p<0.05、****p=0.0001。黒色矢印が上を指す黒色アスタリスクは、本文に記載された選択された日におけるAd6群とPBS群との間の統計的差異を示す。灰色のアスタリスクおよび上を指す矢印は、示された日におけるAd657群とPBS群との間の差を示す。灰色の矢印が下を指す影付きの白色アスタリスクは、示された日におけるAd6群とAd657群との間の統計的差異を示す。(B)生存に対する単回i.v.注射の効果。腫瘍体積が2000μLに達した場合、又は他の屠殺基準を満たした場合(例えば 潰瘍形成)、動物を安楽死させ、カプラン・マイヤー生存曲線をプロットした(log-rank解析により、*p<0.05、**p<0.01)。略語:i.v、静脈内。
【
図12】
図12は、ルシフェラーゼイメージングヌードマウスを示す。12.5K、6.7K、19K、11.6K(ADP)、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)および14.7Kの一部の欠失、およびE4 34Kの部分的欠失を有する3×10
10vpのAd6およびAd657-GFP-Lucの単回i.v.注射後4日目。略語: i.v、静脈内; vp、ウイルス粒子。
【
図13】
図13は、ルシフェラーゼイメージングヌードマウスを示す。注記:3×10
10vpのAd657-GFP-Lucの単回i.v.注射の14日後。略語:i.v、静脈内;vp、ウイルス粒子。
【
図14】
図14は、血漿HIV Env結合力価を示す。異なるSC-Adおよびgp140タンパク質を用いた免疫化を、大きな矢印でグラフの上に示す。ELISAによるミッドポイントF8 gp140結合力価を、各免疫化の前後に各動物に関して示す。破線は、このアッセイにおける抗体の最小検出限界を示す。記号は個々の測定を観察できるように、各時点ではx方向に散布されている。SC-Ad6-EbovはネガティブコントロールAdワクチンである。この動物群は、gp140でブーストされなかった。SC-Ad6-Ebov群との比較における一元配置ANOVAにより、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図15】
図15は、血漿HIV中和力価を示す。示されたウイルスの中和は、TZM-bl中和アッセイを用いて行った。全ての値は、ウイルスのみのウェルと比較して計算した。各ドットは、各動物の平均値を表す。
【
図16】
図16は、血漿ADCC活性を示す。血漿サンプルを、SHIV
SF162P3を感染させたCEM.NKR.CCR5.CD4+-Luc,標的細胞を殺すために、CD16-KHYG-1エフェクター細胞で試験した。各ドットは、各動物の平均値を表す。対SC-Ad6-Ebov群の一元配置ANOVAにより、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図17】
図17は、粘膜ADCC活性を示す。膣洗浄および唾液サンプルを、SHIVSF162P3を感染させたCEM.NKR.CCR5.CD4+-Luc,標的細胞を殺すために、CD16-KHYG-1エフェクター細胞で試験した。各ドットは、各動物の平均値を表す。対SC-Ad6-Ebov群の一元配置ANOVAにより、*p<0.05。
【
図18】
図18は、PBMCおよびリンパ節からのIFN-γ分泌細胞を示す。PBMCおよびリンパ節細胞はIFN-γの染色によりELISPOTにより分析した。抗Envは、保存されたHIV Envペプチド、およびSC-Adで刺激された細胞を示す。刺激されたウェルの各々におけるスポット形成細胞(SFC)の総数を計数し、バックグラウンドとしてのコントロール培地に対して調整した。各ドットは、各動物の平均値を表す。一元配置ANOVAにより*p<0.05。
【
図19】
図19は、粘膜T細胞の輸送および活性化を示す。2回目のタンパク質ブースト後に採取した直腸生検からT細胞を回収し、CD4、CD8、α4β7インテグリン、CD69およびFoxP3についてフローサイトメトリーによって分析した。各ドットは、各動物の平均値を表す。
【
図20】
図20は、血液中およびリンパ節中のTfh細胞応答を示す。40週目に回収したPBMCおよびリンパ節細胞をHIV-1 Envタンパク質で刺激し、その後、CD3+、CD4+、CXCR5+およびIL-21の共発現について調べた。各ドットは、各動物の平均値を表す。一元配置ANOVAにより*p<0.05。
【
図21】
図21は、反復的な直腸SHIV
SF162P3チャレンジに対する保護を示す。示された群を、週1回ベースで、4.3TCID50(アカゲザルPBMCにおける)のSHIV
SF162P3での直腸チャレンジに付した。血漿サンプルを、SHIVウイルスRNAコピーに関して分析した。10を超えるRNAコピーを有する動物を感染動物とみなし、その動物に感染させるのに必要なチャレンジの回数をカプラン・マイヤー生存分析のイベントとして用いた。
【
図22】
図22は、SHIV
SF162P3獲得およびウイルス量を示す。A)
図8からの動物を、それらの最初のSC-Adプライミング経路(IMまたはIN)によって群分けし、8のグループを得、カプラン・マイヤー分析を行った。B)チャレンジ研究の経過中の血漿SHIVSF162P3ウイルスRNAレベル。
【
図23】
図23は、組織におけるSHIVウイルス量を示す。PBMCおよび死後組織からRNAを回収し、qPCRを実施してSHIVウイルスRNAを検出し分析した。
【
図24】
図24は、例7に使用したシングルサイクルアデノウイルスワクチンを示す。A)F8およびG4クレードBのHIVエンベロープ遺伝子を有するSC-Ad血清型6および657の図。B)ワクチン上に提示されたAd6および57ヘキソンを含むクレードCのAdヘキソンのアライメント。
【
図25】
図25は、唾液および膣のHIV env結合滴定を示す。F8に対して試験した場合の、ELISA OD450レベルを、示された希釈において示されたサンプルについて示す。これらの粘膜サンプルにおける抗体の低いレベルは、アッセイの飽和に達することを妨げる。この理由のために、EC50値は、ほとんどの動物について信頼性をもって算出することができない。IN-IM-IM群におけるアカゲザルRh13-091は、EC50を算出できた唯一の動物であった(EC50=4580)。SF162 gp140を用いたELISAでも同様の結果が観察された。
【
図26】
図26は、in vivo細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を生成する、C型肝炎およびサイトメガロウイルス(CMV)gB由来の抗原遺伝子を発現するAd657を示す。CMV gBよりもむしろAd657-HCVでワクチン接種したマウスにおいてC型肝炎ペプチド負荷標的細胞が殺されることを示す。
【
図27】
図27は、GMCSF依存性TF-1ヒト赤芽球の増殖を誘導するAd657由来のヒトGMCSFの発現を示す。
【
図28】
図28は、Ad6単回IV注射vsA549肺腫瘍を示すグラフである。
【
図29】
図29は、Ad6単回IVまたはIT注射vsPanc1膵臓腫瘍を示すグラフである。
【
図30】
図30は、免疫正常ハムスターにおけるAd6単回IV注射vs腎臓癌を示すグラフである。
【
図31】
図31は、ヘキソンのHVR5中の12.51細胞結合ペプチドを提示するAdによる、B16メラノーマおよびA549肺腫瘍/癌細胞におけるルシフェラーゼ活性を示すグラフである。
【
図32】
図32は、ヘキソンのHVR5中の12.51細胞結合ペプチドを提示するAdによる、肝細胞癌および腎臓癌におけるルシフェラーゼ活性を示すグラフである。
【
図33-1】
図33は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入とを組み合わせた図を示す。細胞および血液因子との天然の相互作用を調節するために異なるAd血清型由来の異なるHVRを組み合わせるキメラHVR構築物が示され、異なるHVRにおける細胞結合および細胞脱標的化ペプチドの挿入と組み合わせて薬理が改善されて、細胞侵入および細胞回避を変化させる。1つのHVRが100種のAdから置き換えられる場合、これは、100種の異なるヘキソンキメラを生成するであろう。7つ全てのHVRがそれぞれ別のAd HVRを受け取った場合、このコンビナトリアルライブラリーは、7
100バリアントに及ぶであろう。1つのペプチドを7つのHVRに導入した場合、これは7X7
100バリアントに及ぶであろう。10の異なるペプチドが7つのHVRに導入された場合、これは10X7X7
100に及ぶであろう、等々。
【
図33-2】
図33は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入とを組み合わせた図を示す。細胞および血液因子との天然の相互作用を調節するために異なるAd血清型由来の異なるHVRを組み合わせるキメラHVR構築物が示され、異なるHVRにおける細胞結合および細胞脱標的化ペプチドの挿入と組み合わせて薬理が改善されて、細胞侵入および細胞回避を変化させる。1つのHVRが100種のAdから置き換えられる場合、これは、100種の異なるヘキソンキメラを生成するであろう。7つ全てのHVRがそれぞれ別のAd HVRを受け取った場合、このコンビナトリアルライブラリーは、7
100バリアントに及ぶであろう。1つのペプチドを7つのHVRに導入した場合、これは7X7
100バリアントに及ぶであろう。10の異なるペプチドが7つのHVRに導入された場合、これは10X7X7
100に及ぶであろう、等々。
【
図33-3】
図33は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入とを組み合わせた図を示す。細胞および血液因子との天然の相互作用を調節するために異なるAd血清型由来の異なるHVRを組み合わせるキメラHVR構築物が示され、異なるHVRにおける細胞結合および細胞脱標的化ペプチドの挿入と組み合わせて薬理が改善されて、細胞侵入および細胞回避を変化させる。1つのHVRが100種のAdから置き換えられる場合、これは、100種の異なるヘキソンキメラを生成するであろう。7つ全てのHVRがそれぞれ別のAd HVRを受け取った場合、このコンビナトリアルライブラリーは、7
100バリアントに及ぶであろう。1つのペプチドを7つのHVRに導入した場合、これは7X7
100バリアントに及ぶであろう。10の異なるペプチドが7つのHVRに導入された場合、これは10X7X7
100に及ぶであろう、等々。
【
図34】
図34は、代表的なコンビナトリアルヘキソンおよびペプチドの組み合わせについてのプラスミドマップを示す。Ad6由来のHVR1およびAd57由来のHVR2~7を有するヘキソン、ならびに個々のHVRへの細胞標的化ペプチドの挿入を示す。
【
図35】
図35は、細胞および血液因子との天然の相互作用を調節するために異なるAd血清型由来の異なるHVRを組み合わせるキメラHVR構築物を示し、異なるHVRにおける細胞結合および細胞脱標的化ペプチドの挿入と組み合わせて薬理が改善されて、細胞侵入および細胞回避を変化させる。この例では、単一のシステインアミノ酸をAd657のHVR1およびHVR5に挿入して、薬理を調節し、ポリエチレングリコールのようなポリマーまたは発蛍光団のようなイメージング剤のような他の部分の標的化された連結を可能にする。
【
図36】
図36は、Ad657-HVR1-Cへのポリエチレングリコール(PEG)の連結を示す。A)PEG化有り、PEG化なしのAdタンパク質のSDS-PAGE。矢印は、ヘキソンへのPEGの化学結合によるサイズ増加を示す。B)ウイルス感染におけるマレイミド-PEGおよび非標的化NHS-PEGによる標的化PEG化の効果。
【
図37】
図37は、Ad657-HVR5-Cへのポリエチレングリコール(PEG)の連結を示す。A)PEG化有り、PEG化なしのAdタンパク質のSDS-PAGE。B)Adタンパク質のSDS-PAGEの近赤外イメージング(PEG化有り、PEG化なし、および近赤外蛍光イメージングタグIR800有り、なし)。C)ルシフェラーゼイメージングによる、マレイミド-PEG化Ad657-HVR5-Cの腹腔内注射後のin vivo形質導入。
【
図38】
図38は、ヌードマウスのルシフェラーゼイメージングを示す。A)Ad6単回I.V.注射後1、4、7、14、28および42日目vs遠隔DU145前立腺腫瘍。B)LNCaP前立腺腫瘍を有するマウスへの増殖型Ad5-GFPLUCのI.V.注射後3、7および19日目。
【
図39】
図39は、E1A遺伝子に修飾を有する癌特異的制限増殖型Ad(CRAd)dl1101+dl1107の概要図を示す。
【
図40】
図40は、Ad6およびAd657が両方とも標的化癌治療のためのCRAdとして使用できることを示すグラフである。
【
図41】
図41は、Ad治療サイクルを示す概略図である。A)Adによる血清型スイッチング(serotype-switching)の概要図。B)Ad6およびAd657が、共有結合ポリマー連結と組み合わされた血清型スイッチングによる複数ラウンドの治療のために使用できる、例示的な治療サイクルの概略図。
【
図42】
図42は、E3A遺伝子(12.5K、6.7K、19K、11.6K)が欠失しているがE3B遺伝子(10.4K、14.5Kおよび14.7K)が保持され、E4 34Kが保持されたAd6およびAd6-F35の単回IV注射後の、DU145前立腺腫瘍における血清型スイッチングおよびオンターゲットルシフェラーゼ活性を示す。腫瘍がAd657およびCRAd657(両者とも元のままのE3遺伝子を有する)による事前の単回IV注射に耐えたマウスに、示されたベクターを単回IV注射によって注射した。
【
図43】
図43は、E1発現が天然のE1プロモーターによって制御されている、複製能を有するAd(RC-Ad);E1発現が前立腺特異的プロバシンプロモーターによって制御されているバリアントCRAd-プロバシン-E1A(Ad-PB);p300経路との結合能が除去され、正常細胞におけるIFN経路に対して感受性である、CRAd-dl1101;pRBとの結合能が除去されることによって、ウイルスがRB経路途絶を有する癌細胞を殺すことを可能にするが、RB+正常細胞においては抑制される、CRAd-dl1107;p300経路との結合能が除去され、IFN経路に対して感受性であり、pRBとの結合能が除去されることによって、ウイルスがRB経路途絶を有する癌細胞を殺すことを可能にするが、RB+正常細胞においては抑制される、CRAd-dl1101/07。
【
図44】
図44(AおよびB)は、非癌性細胞における複製能を有するAd5、Ad6、Ad657の感染、および制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾の効果を示す。
【
図45】
図45は、複製能を有するAd5、Ad6、Ad657、および示されたCRAdにより癌性細胞が殺されることを示す。
【
図46】
図46は、制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示す。
【
図47】
図47は、制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示す。
【
図48】
図48は、マウスにおけるDU145腫瘍の成長に対する、複製能を有するAd6または示されたCRAdのin vivo効果を示す。
【
図49】
図49は、ヒト前立腺腫瘍を有するマウスにおける単回静脈内注射後のin vivoでの、複製能を有するAd657および制限増殖型Ad657-dl1101/07(両方とも元のままのE3領域を有する)の、in vivoでの効果を示す。
【
図50】
図50は、PEG化がin vivoで、アデノウイルスを肝臓に関して脱標的化することを実証している。
【
図51】
図51は、チンパンジーAdC68由来のより短いファイバーでのAd657の修飾およびコドンのゆらぎを有するE4 34.K遺伝子の付加がin vitroの有効性を変化させることを示す。
【
図52】
図52は、CRAd修飾の有無にかかわらず、6/56/6ウイルスがヒト前立腺癌細胞を殺すことを示す。
【
図53】
図53は、元のままのE3領域を有するCRAd657-dl1101/07-FOLRによるBALB/cマウスの単回筋肉内免疫化後のヒト癌抗原ホレート受容体αに対する抗体応答の産生を示す。
【
図54】
図54は、例えば、PEG化またはビオチンアクセプターペプチド(BAP)での「BAP化(BAPylation)」によって修飾され得るAd HVRにおける部位を示す。
【
図55】
図55は、ウイルスを制限増殖型Ad(CRAd)に変換するためにE1タンパク質に突然変異を有するAdのバリアントの概略図である。
【
図56】
図56は、野生型E1AポリペプチドのN末端部分およびCRAdバリアントdl1101、dl1107およびdl1101/1107のE1A N末端のアミノ酸配列を示す。
【
図57】
図57は、Ad種Cの代表例Ad6とAd種Dの代表例Ad26における異なるE3免疫回避遺伝子の概略図を示す。両方のAdの発現サイズおよびE3の配列バリアント 12.5K、6.7K、19K、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)、および14.7K遺伝子、ならびにこれらのE3にコードされるタンパク質の機能の描写。
【
図58】
図58は、免疫正常ハムスターにおけるAd6-Lucウイルスによる腫瘍溶解性ウイルス抗腫瘍活性に対するPEG化およびE3欠失の効果を示す。Ad6-LucおよびAd6-Luc-20K PEGは両方とも、全E3遺伝子およびE4 34Kを元のままで有している。Ad6-deltaE3-Lucは、E3 12.5KとE4 34Kの部分的欠失、およびE3 6.7K、19K、11.6K(ADP)、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)および14.7K遺伝子の全欠失を有する。これらの免疫回避遺伝子が腫瘍溶解性アデノウイルスに存在しない場合、この免疫正常動物モデルでは腫瘍溶解効果が失われる。
【
図59】
図59は、E3 12.5KとE4 34Kの部分的欠失、およびE3 6.7K、19K、11.6K(ADP)、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)および14.7K遺伝子の全欠失を有するAd657のプラスミドマップである。
【
図60】
図60は、dl1101/1107 CRAd修飾を有するおよび有しない、ならびに選択したE3免疫回避遺伝子の欠失を有するおよび有しない、CRAd 657構築物を示す。
【
図61】
図61は、E3挿入部位を有するCRAd657を示す。これらは、本明細書において記載されるdl1101/1107 CRAd修飾を伴う場合と伴わない場合、およびE3免疫回避修飾を伴う場合と伴わない場合である。
【
図62】
図62は、CRAd657+/- Ad35ファイバーまたはChimpanzee C68ファイバー+/-K7ペプチドを示す。これらは、前のスライドにおいて記載されるdl1101/1107 CRAd修飾を伴う場合と伴わない場合、およびE3免疫回避修飾を伴う場合と伴わない場合である。いくつかの場合では、E4の後かつファイバーの前にコドンのゆらぎを有するE4 34K遺伝子が含まれ、E3B遺伝子を欠失させた場合にE4 34Kの部分欠失を補う。
【
図63】
図63は、CRAd657+/-Ad35ファイバーまたはChimpanzee C68ファイバー+/-K7ペプチドを示す。これらは、前のスライドにおいて記載されるdl1101/1107 CRAd修飾を伴う場合と伴わない場合、およびE3免疫回避修飾を伴う場合と伴わない場合である。
【
図64】
図64は、ホレート受容体αを発現するCRAd657+/-Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを示す。
【
図65】
図65は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を発現するCRAd657+/-Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを示す。
【
図66】
図66は、1つのウイルスにおいて4-1BBLまたはGMCSFまたはIL21またはCD40Lおよび組み合わせを発現するCRAd657+/-Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを示す。
【
図67】
図67は、Ad6 HVR1およびAd57 HVR2~7+/-Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを有するAd6/57を示す。
【
図68】
図68は、Ad6 HVR1、Ad57 HVR2~6、Ad6 HVR7+/-Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを有するAd6/57/6を示す。
【
図69】
図69は、Ad6 HVR1、Ad57 HVR2~6、Ad6 HVR7+/Ad35ファイバーまたはチンパンジーC68ファイバー+/-K7ペプチドを有し、GFPルシフェラーゼを発現するAd6/57/6を示す。
【
図70】
図70は、血清型スイッチング後のルシフェラーゼイメージングを示す。側腹にLNCaP前立腺腫瘍を有するマウスを、Ad657またはCRAd657の単回IV注射により処置した。単回IV注射の5か月後に残存腫瘍を有するマウスを、バリアントファイバーおよびコドン最適化E4 34K遺伝子を有するおよび有しない、GFPルシフェラーゼを発現する示されたAd6/57/6バリアントの血清型スイッチングにより処置した。示したAd6/57/6バリアントは、ファイバー上に付加された7つのリジン(K7)、Ad6ファイバー上にそのKKTKフレキシビリティードメイン後にグラフトされたチンパンジーC68ファイバーを含む異なるファイバー修飾を有し、Ad35ファイバーを有するAd6/57/6ウイルスを含む。マウスを、7日後にルシフェラーゼ活性について画像化した。
【
図71】
図71は、1細胞あたり示されたウイルス粒子(vp)の、バリアントファイバーおよびコドン最適化E4 34K遺伝子を有しおよび有さないAd6/57/6で処理されたA549ヒト肺癌細胞を示す。7日後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、ウェルをプレートリーダーで分析した。ODが高いことは、生存細胞の存在を示す。低いODは、接着細胞の死と喪失を示す。
【0049】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸送達、ワクチン接種、および/または癌の治療のための方法および材料を提供する。例えば、本発明は、タンパク質/ポリペプチドの核酸送達、ワクチン接種、および/または腫瘍溶解剤として1種または複数の組換えAd(例えば、Ad657およびそのバリアント)を使用する癌の治療のための方法および材料を提供する。
【0050】
アデノウイルス二十面体は、そのヘキソンタンパク質720コピーから構成される。ウイルスはこのタンパク質を受容体に結合するためには使用しないが、繰り返しタンパク質のこのナノ格子はタンパク質、細胞および薬剤との相互作用(例えば、天然の相互作用および非天然の相互作用)のためのマトリックスを提供する。Adを中和できる抗体は、Ad上のヘキソンポリペプチドの超可変領域(HVR)を標的とすることができる。
【0051】
いくつかの場合において、本発明は、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAdを提供する。例えば、組換えAdは、第1のAdから誘導することができ、そして1種または複数の異なるAd由来のヘキソンHVRを含むことができる。HVRは、任意の種CのAd、例えば、Ad1、Ad2、Ad5、Ad6およびAd57から誘導され得る。一実施態様では、組換えAdは、第1のAdから誘導することができ、そして少なくとも1種の他のAdからの1つまたは複数のヘキソンHVRを含むことができ、ここで、少なくとも1つのヘキソンHVRは第1のAdのHVR(複数可)とは異なる。第1のAd株はヒトAd6株であることができ、そして第2のAd株はヒトAd57株であることができる。ヘキソンシャトルプラスミドマップ(
図34)は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入との組み合わせを示す。一実施態様では、前記組換えAdは、アミノ酸置換、例えば、ポリペプチド中へのシステインの置換、および修飾、例えばPEG化およびBAP化を含む。ここでは、Ad657に挿入されたポリマーおよびシステインに関する他の化学修飾を標的とする能力が示される。
【0052】
Ad657が、ヒト前立腺癌に対する腫瘍溶解物質として実証される。Ad6 HVRをAd57由来のものと置き換えて、Ad657と呼ぶキメラ種C腫瘍溶解性ウイルスを生成した。Ad657およびAd6を、ヒト癌性腫瘍を有するヌードマウスにおいて単回i.v.注射による全身性腫瘍溶解療法として試験した。Ad657は、癌に対する局所または全身腫瘍溶解性ウイルス療法として使用し得る。これらのデータは、腫瘍溶解性の種C Adでの血清型スイッチング(serotype-switching)の驚くべき効果も示している。
【0053】
いくつかの場合において、本発明は、癌、感染性疾患および/または遺伝的疾患を有するかもしくは有するリスクがある哺乳動物を治療するために、本明細書において提供される1種または複数の組換えAdを使用するための方法を提供する。例えば、1種または複数の組換えAdは、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物に、当該哺乳動物(例えば、ヒト)における癌細胞の数を減少させるために(例えば、癌細胞に感染し殺すことによって)、投与することができる。例えば、1種または複数の組換えAdは、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物に、当該哺乳動物(例えば、ヒト)における抗癌免疫応答を刺激するために投与することができる。
【0054】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657およびそのバリアント)は、哺乳動物の免疫系によって破壊されない。例えば、組換えAdは、当該組換えAdが投与される哺乳動物における抗原提示細胞(APC)、マクロファージおよび/または他の免疫細胞によって破壊されない。
【0055】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657およびそのバリアント)は、複数(例えば2以上)ラウンドの治療のために投与することができる。例えば、本明細書に記載される第1の組換えAdは本明細書に記載される第2の組換えAdを中和できる抗体を回避することができ、逆もまた同様である。癌を有する哺乳動物が本明細書において記載される1種または複数の組換えAdで治療される場合、前記哺乳動物は、第1の組換えAdでの第1ラウンドの治療を施され、引き続き第2の組換えAdでの第2ラウンドの治療を施されることができる。
【0056】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657およびそのバリアント)は、複製能を有するAd(RC-Ad)であることができる。例えば、RC-Adは、E1ポリペプチドをコードする核酸を含むRC-Ad(例えば、E1+RC-Ad)であることができる。例えば、RC-Adは、感染性のウイルス子孫の産生に関連する1種または複数のポリペプチド(例えば、pIIIaおよびE3)をコードする1つまたは複数の核酸の欠失を含むシングルサイクルAd(SC-Ad)であることができる。例えば、RC-Adは、制限増殖型Ad(CRAd)であることができる。シングルサイクルAdの例、およびそれらの製造および使用方法は、他において提供されている(国際特許出願公開WO2009/111738号)。
【0057】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657およびそのバリアント)は、複製欠損Ad(RD-Ad)であることができる。例えば、RD-Adは、E1ポリペプチドをコードする核酸の欠失を含むRD-Ad(例えば、E1欠失RD-Ad)であり得る。
【0058】
本明細書の例において、CRAd657およびそのバリアントが癌性細胞において制限増殖型Ad(CRAd)であること、およびCRAd657およびバリアントが細胞生存率および腫瘍体積を減少させることが実証されている。従って、CRAd657およびそのバリアントは、癌を有する対象における局所または全身性の腫瘍溶解性ウイルス療法として使用され得る。
【0059】
さらに、CRAdが抗原の発現のために使用でき、ウイルスに対するワクチン接種のための、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)に対するワクチン接種のためのワクチンとして使用できることが実証される。
【0060】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657およびそのバリアント)は、(例えば、細胞へのウイルス侵入を容易にするために)細胞表面受容体に結合することができる。例えば、本明細書において記載される組換えAdは、コクサッキー・アデノウイルス受容体(CAR)および/またはFc受容体(例えば、FcμRおよびFcγR)、補体受容体(例えば、CR3および/またはC2qR)に結合することができる。
【0061】
本発明の一態様では、CRAdは、Adに対して異種のポリペプチド、例えば抗原、細胞表面受容体、細胞標的化ポリペプチドなどをコードする核酸を含むことができる。例えば、CRAd-657-dl1101/1107-FolR は、元のままの(intact)E3を含み、ヒトホレート受容体αを発現する組換えAdである。本明細書では、CRAdを用いて、既知の癌抗原、例えばホレート受容体αに対する抗体を生成できることが実証されている。
【0062】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、(例えば、細胞へのウイルス侵入を容易にするために)スカベンジャー受容体への結合を回避することができる(例えば結合しない)。例えば、本明細書において記載される組換えAdは、SREC受容体および/またはSR-A受容体への結合を回避する。
【0063】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、ファゴサイトーシスを回避することができる。
【0064】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、非病原性である(例えば、本明細書において記載されるように治療される哺乳動物に対して)。
【0065】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、分裂細胞に感染することができる(例えば分裂細胞にのみ感染することができる)。
【0066】
本明細書において記載される組換えAdは、組換えDNA技術および当業者に公知の方法によって生成される任意の適切な組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd)であることができる。組換えAdは、当該組換えAdが由来するAd以外の任意の生物由来の物質(例えば、核酸および/またはポリペプチド)を組換えることによって生成される任意のAdであることができる。例えば、組換えAdは、そのAd中に天然には存在しない(例えば、組換え前にそのAd中に天然には存在しない)1種または複数の物質を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書において提供される組換えAdは、キメラAdであることができる(例えば、2種またはそれを超える(例えば、2、3、4、5またはそれを超える)異なるAdゲノム由来のウイルスエレメントを含むことができる)。
【0067】
これらの実施態様は、異なるAdからの異なるHVRを組み合わせる(すなわち、HVRをシャッフルする)Adとの関連においても適用されている。例えば、Ad6のHVR1とAd57のHVR2~7、またはAd6のHVR1および7とAd57のHVR2~6、またはAd6からのHVR1および7とAd657からのHVR2~6。
【0068】
Ad中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、任意の適切な起源に由来し得る。いくつかの場合において、そのようなAd中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、非ウイルス性の生物由来であることができる。いくつかの場合において、そのようなAd中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、Ad以外のウイルス由来であることができる。いくつかの場合において、そのようなAd中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、異なる種から得られるAd由来であることができる。いくつかの場合において、そのようなAd中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、Adの異なる株(例えば、血清型が異なる株)由来であることができる。いくつかの場合において、そのようなAd中に天然には存在しない核酸および/またはポリペプチドは、合成核酸および/または合成ポリペプチドであることができる。
【0069】
本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、任意の適切なAdから誘導することができる(例えば、任意の適切なAd由来のゲノムバックボーンを含むことができる)。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、低い血清抗体保有率を有するAdから誘導することができる。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)の50%以下(例えば、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%以下)が、本明細書において記載される組換えAdが由来するAdに曝露されていてよい。血清抗体保有率に関して、種CアデノウイルスであるAd6およびAd657は、原型Ad5ウイルスよりも低い有病率を有する。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、副作用(例えば、ファゴサイトーシスおよび肝臓損傷)が減少または排除されたAdから誘導することができる。組換えAdは、任意の適切な動物種から単離されるAdから誘導することができる。例えば、Adは、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル類、例えばアカゲザルのような旧世界ザル種)、魚類、カエル類およびヘビ類から単離することができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、ヒトAd(HAdまたはHAdV)から誘導することができる。組換えAdはAdの任意の種(例えば、A、B、C、D、E、FまたはG)から誘導することができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、Ad C種(例えば、ヒトAd C種(HAd-C))から誘導することができる。組換えAdは、任意の適切なAd血清型(例えば、2、5、6または57)から誘導することができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、Ad血清型6(Ad6;例えばヒトAd6)から誘導することができる。
【0070】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657およびそのバリアント)は、ポリペプチド(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸および/またはAdゲノムの1種または複数のウイルスエレメントに対して、1つまたは複数の修飾を含むAdゲノムを含み得る。前記の1つまたは複数の修飾は、任意の適切な修飾であることができる。いくつかの場合において、修飾は、当該修飾を施されたポリペプチドが別のポリペプチド、例えばp300および/またはpRBに結合する能力を阻害するのに有効であることができる。いくつかの場合において、修飾は、1つまたは複数のインターフェロン経路を中和するために有効であることができる。ポリペプチドをコードする核酸に対してまたはウイルスエレメントに対してなされ得る修飾の例としては、置換、欠失、挿入および突然変異が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0071】
Ad(例えば、Ad657およびそのバリアント)は、修飾され、全てのE1A遺伝子を保持してよく、あるいは、選択された領域およびそれらのコードされるタンパク質の機能を欠失するように修飾されてもよい。
【0072】
図57は、Ad種Cの代表例Ad6とAd種Dの代表例Ad26における異なるE3免疫回避遺伝子の概略図を示し、ならびにこれらのE3にコードされるタンパク質の機能を描写する。両方のAdの発現サイズおよびE3の配列バリアント 12.5K、6.7K、19K、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)、および14.7K遺伝子。19Kは、感染細胞をT細胞およびNK細胞から保護するために、細胞表面上のMHC IおよびMICタンパク質の提示を減少させる。RIDタンパク質は、死誘導性リガンド(FAS、TRAIL、TNFRおよびEGFR)から感染細胞を保護する。14.7Kは、感染細胞におけるアポトーシスの内因性活性化を阻害する。種CのAdはまた、adenovirus death protein(ADP)として知られる11.6Kも発現する。ADPの過剰発現は細胞死を加速させるが、全体的な細胞死は同等である。種Dのウイルスはまた、49Kおよび31Kと呼ばれる2つの新規バリアントも発現する。分泌型の49Kは、T細胞およびNK細胞上のCD46に結合し、これらの細胞のダウンレギュレーション、およびNK細胞によるクラスI MHC欠損細胞の効率の低い細胞殺傷をもたらす。Ad657プラスミドは、全てのネイティブE3免疫回避遺伝子(12.5K、6.7K、19K、11.6K(ADP)、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)および14.7K)およびE4 34Kを保持するために、または選択された領域を削除するために修飾されている。Ad657およびそのバリアントはまた、49Kおよび31Kの付加によって修飾されて、これらの種Cウイルスプラットフォームにこれらの追加の機能も付与する。
【0073】
Ad(例えば、Ad657およびそのバリアント)は、全てのE3免疫回避遺伝子を保持するように、または選択された領域およびそれらのコードタンパク質の機能を欠失するように修飾されてもよい。E3突然変異に関して:19kは、感染細胞上のMHCIおよびMICタンパク質をダウンレギュレートする;ADPの過剰発現は、細胞死を加速させるが、殺される細胞数は増加させない;10kおよび14kタンパク質(RIDαおよびRIDβ)は、組み合わされてFAS、TRAIL、TNF、TNFRおよびEGFRのような外因性アポトーシスタンパク質が細胞を殺すのを妨げる;14.7kタンパク質は、内因性アポトーシスシグナル伝達を阻害する。
【0074】
これらのE3タンパク質を保持することにより、腫瘍溶解をより長く持続させ得、それらを欠失させると免疫刺激が増加し得る。
【0075】
腫瘍溶解性効果を試験したデータからは、元のままのE3がより良好な有効性を媒介することが示唆される。
【0076】
DE3構築物は12.5kから14.7kまでの部分が欠失されており、DE3A構築物はE3 12.5kから19kまでの部分が欠失されており、そしてDE3ADP構築物は、E3 12.5kからADPまでの部分が欠失されている。
【0077】
驚くべきことに、全てのE3遺伝子を欠失させると、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍増殖抑制効果が低下する。
【0078】
一実施態様では、本発明は、シングルサイクルアデノウイルス、例えばSC-Ad657およびそのバリアントを包含する。ポリペプチドをコードする異種核酸を有する組換えSC-Adウイルスを、ワクチンとしての使用について評価した。SC-Ad657ワクチンは単独で、単回免疫化だけの後に、HIVエンベロープタンパク質に対する有意な循環抗体力価をもたらした。
【0079】
同様に、B型およびC型肝炎抗原の遺伝子を保有するAd657は、肝炎およびサイトメガロウイルスに対して細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生成することができる。
【0080】
ヒト乳頭腫ウイルス由来の合成ペプチドをHVR5に挿入することにより、Ad657を修飾した。一実施態様では、バリアントAd657-HVR5-HPVヘキソンのアミノ酸配列が配列番号57に定義される。当該修飾は、ワクチン目的のためのこの抗原の提示、ならびにHPVペプチドと相互作用するタンパク質への結合による再標的化を可能にする。
【0081】
さらなる実施態様において、Ad657によるヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)の発現が、本明細書において実証される。
【0082】
従って、本明細書の例から、組換えAd、例えばAd657およびそのバリアントが、異種タンパク質、例えばポリペプチド抗原および細胞標的化ポリペプチドの発現に利用され得ることが実証される。
【0083】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、1つまたは複数の置換を含むAdゲノムを含むことができる。例えば、ポリペプチド(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸、および/またはAdゲノムによってコードされる1つまたは複数のウイルス要素が置換されてよい。置換は、任意の適切な置換であることができる。いくつかの場合において、第1のAdのゲノムのキャプシドポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を、第2のAdのキャプシドポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸で置換して、キメラAdを生成することができる。例えば、組換えAdが、第1のAd由来のゲノムであって、当該ゲノムにおけるキャプシドポリペプチドをコードする核酸が第2のAd(例えばAdバックボーンとは異なるAd)由来のキャプシドポリペプチドをコードする核酸で置換されているゲノムを含む場合、第2のAd由来のキャプシドポリペプチドをコードする前記核酸は、1種または複数のキャプシドポリペプチドを発現することができ、発現されたキャプシドポリペプチド(単数または複数)は、組換えAdのキャプシドに組み込まれることができる。キャプシドポリペプチドの例としては、ヘキソンポリペプチド、ファイバーポリペプチド、ペントンベース(penton base)ポリペプチド、IIIaポリペプチド、IXポリペプチド、およびpVIポリペプチドが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0084】
Adファイバータンパク質は、初期の細胞付着ステップを媒介する3つのおそらく同一のサブユニットの複合体である。天然のAd6ファイバータンパク質は、配列番号60に示されるアミノ酸配列を含み、CARに結合する。
【0085】
本発明の一態様では、親Adまたは「バックボーン」Ad由来でないファイバータンパク質を有するファイバー修飾組換えおよびキメラAdを生成した。
【0086】
キメラAdであるAdF35ファイバーキメラは、配列番号61のアミノ酸配列を有し、Ad5およびAd6ファイバータンパク質より短く、ウイルスの標的をCD46に変える。
【0087】
配列番号62の配列を有するK7ファイバーを含むファイバー修飾組換えAdは、ウイルスの標的を、ヘパリン硫酸プロテオグリカンおよび細胞上の負電荷に向けさせる。
【0088】
配列番号63の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短く、CARに結合する。
【0089】
配列番号64の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短い。6/FC68-K7ファイバーはCARに結合し、標的がヘパリン硫酸および負電荷に変わる。
【0090】
配列番号65の配列を含む組換えキメラAdである6/FC68-HI-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短い。6/FC68-HI-K7ファイバーはCARに結合し、標的がヘパリン硫酸および負電荷に変わる。
【0091】
いくつかの場合において、組換えAdは、第1のAd由来のゲノムであって、当該ゲノムにおけるヘキソンポリペプチドをコードする核酸(例えば、ヘキソンポリペプチドをコードする核酸のHVR)が第2のAd由来のヘキソンポリペプチドをコードする核酸(例えば、ヘキソンポリペプチドをコードする核酸のHVR)で置換されている第1のAd由来のゲノムを含むことができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、第2のAdからの1つまたは複数のHVRで置換された1つまたは複数のHVRを有する第1のAdからのゲノムを含むことができる。例えば、組換えAdは、キメラ、特にAd657であることができる(例えば、ヘキソンHVRがAd57ヘキソンHVRと置き換えられているAd6ゲノムを含むことができる)。組換えAdが、第1のAd由来のゲノムであって、当該ゲノムにおけるヘキソンポリペプチドをコードする核酸が第2のAd由来のヘキソンポリペプチドをコードする核酸で置換されている第1のAd由来のゲノムを含む場合、当該組換えAdは、第2のAd由来のヘキソンポリペプチドを約1~約720含むことができる。例えば、組換えAdがAd657である場合、当該Ad657は、Ad6ゲノムと、Ad57ヘキソンHVRを含む720のヘキソンポリペプチドを含み得る。
【0092】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、1つまたは複数の核酸欠失を含むAdゲノムを含むことができる。核酸欠失は、任意の適切な核酸欠失であり得る。核酸欠失は、完全欠失(例えば、ポリペプチドをコードする核酸の欠失)または部分欠失(例えば、ポリペプチドをコードする核酸内の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失)であり得る。核酸欠失は、欠失した核酸によってコードされるポリペプチドの転写および翻訳を減少または排除することができる。任意の適切な核酸を欠失させることができる。いくつかの場合において、感染性の子孫の産生に関連するポリペプチドをコードする核酸を欠失させることができる。本明細書において記載される組換えAdにおいて欠失および/または修飾できる核酸の例は、E1(例えば、E1AおよびE1B)、E2、E3、E4、pIIIA、ファイバー、E1Bをコードし得、ウイルスエンハンサーおよびプロモーターを含み得る。例えば、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、E1ポリペプチドをコードする核酸内の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失を含むAdゲノムを含むことができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdは、E1ポリペプチドをコードする核酸における1つまたは複数の置換を含むことができる。
【0093】
特定の実施態様では、本明細書に記載される組換えAdは、例えば、配列番号48の核酸を含むプロバシンプロモーターを含むように修飾され;本明細書に記載される組換えAdは、E1ポリペプチドをコードする核酸中にdl1101欠失を含むように修飾され;本明細書に記載される組換えAdは、E1ポリペプチドをコードする核酸中にdl1107欠失を含むように修飾され;本明細書に記載される組換えAdはdl1101欠失およびdl1107欠失を含むように修飾されている。E1Aポリペプチド、例えば野生型Ad E1A、およびCRAd-657-dl1101、CRAd-657-dl1107およびCRAd-657-dl1101/1107バリアントのN末端アミノ酸配列に関して、本明細書の例および
図56を参照されたい。
【0094】
一実施態様では、バリアントCRAd-657-dl1101/1107-FolRは、元のままのE3を含み、癌細胞上に見出されるヒトホレート受容体αを発現する。
【0095】
概して、Adは、本明細書に記載されるCRAd修飾を含むように修飾されてもよい。
【0096】
いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)は、1つまたは複数の核酸挿入を含むAdゲノムを含むことができる。例えば、核酸挿入は、ポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。核酸は、本明細書において記載される組換えAdのゲノム内の任意の適切な位置に挿入することができる。いくつかの場合において、ポリペプチドをコードする核酸は、本明細書において記載される組換えAdのゲノムのHVR(例えば、HVR 5ループ)に挿入することができる。例えば、ポリペプチドをコードする核酸が本明細書において記載される組換えAdのゲノムのHVRに挿入される場合、ポリペプチドをコードする当該核酸は、1種または複数のポリペプチドを発現することができ、発現されたポリペプチド(単数または複数)は、組換えAdのキャプシド中に組み込まれ得る。ポリペプチドをコードする核酸が、本明細書に記載される組換えAdのゲノムのHVR中に挿入される場合、前記組換えAdは、その表面上に、挿入された核酸によってコードされる約1~約720のポリペプチドを提示することができる。核酸挿入は、任意の適切なポリペプチドをコードする核酸であることができる。いくつかの場合において、核酸挿入は、ポリペプチド抗原をコードすることができる。
【0097】
いくつかの場合において、核酸挿入は、標的化ポリペプチドをコードすることができる。本明細書において記載される組換えAdに含まれ得る標的化ポリペプチドの例には以下が含まれるが、限定はされない:ペプチド12.51(TARGEHKEEELI;配列番号1)、ペプチド12.52(LRQTGAASAVWG;配列番号2)、12.53(ARRADTQWRGLE;配列番号3)、VSV(GTWLNPGFPPQSCGYATVT;配列番号4)、RGD(CDCRGDCFC;配列番号5)、α4インテグリン結合ペプチド(NMSLDVNRKA;配列番号6)、Met3-4(ISLSSHRATWVV;配列番号7)、L10.1F(WTMGLDQLRDSSWAHGGFSA;配列番号8)、L10.1RGDF(WTMGLDQLRGDSSWAHGGFS;配列番号9)、L10.2F(RSVSGTEWVPMNEQHRGAIW;配列番号10)、L10.5F(TELRTHTSKELTIRTAASSD;配列番号11)、S5.1(DRAIGWQDKLYKLPLGSIHN;配列番号12)、DU9C.1(MGSWEKAALWNRVSASSGGA;配列番号13)、DU9C.2(MAMGGKPERPADSDNVQVRG;配列番号14)、DU9A.7(MASRGDAGEGSTQSNTNVPS;配列番号15)、XS.1(GPEDTSRAPENQQKTFHRRW;配列番号16)、REDVmyc(MGREDVGEQKLISEEDLGGS;配列番号17)、RGD-4C(ACDCRGDCFCG;配列番号18)、REDV-4C(ACDCREDVCFCG;配列番号19)、SKBR5C1(GQIPITEPELCCVPWTEAFY;配列番号20)、231R10.1(PQPPNSTAHPNPHKAPPNTT;配列番号21)、HepaCD8(VRWFPGGEWGVTHPESLPPP;配列番号22)、K20(KKKKKKKKKKKKKKKKKKK;配列番号23)、BAP(GLNDIFEAQKIEWH;配列番号24)、CALM BP(CAAARWKKAFIAVSAANRFKKIS;配列番号25)、EBV(EDPGFFNVEIPEFP;配列番号26)、#1-5(GGHGRVLWPDGWFSLVGISP;配列番号27)、##4*-5(MARTVTANVPGMGEGMVVVPC;配列番号28)、1-1(GVSKRGLQCHDFISCSGVPW;配列番号29)、1-2(NQSIPKVAGDSKVFCWWCAL;配列番号30)、1-3(QSTPPTKHLTIPRHLRNTLI;配列番号31)、1-4(DMSFQLVTPFLKALPTGWRG;配列番号32)、1-5(GGHGRVLWPDGWFSLVGISP;配列番号33)、1-5con(FSLVGISP;配列番号34)、1-6(QIMMGPSLGYYMPSESIFAY;配列番号35)、2-11(ISWDIWRWWYTSEDRDAGSA;配列番号36)、2-14(VWGMTTSDHQRKTERLDSPE;配列番号37)、2-20(MTSAQTSEKLKAETDRHTAE;配列番号38)、2-9(MGSRSAVGDFESAEGSRRP;配列番号39)、3b-6(MGRTVQSGDGTPAQTQPSVN;配列番号40)、4*-5(MARTVTANVPGMGEGMVVVP;配列番号41)、CLLペプチド、PD-1、GLAポリペプチド(例えば、第X因子)、抗原遺伝子、融合タンパク質、融合性糖タンパク質(fusogenic glycoproteins)、一本鎖抗体、および他のウイルス由来のキャプシドタンパク質。標的化ポリペプチドは、任意の適切なタイプの細胞を標的とすることができる。本明細書において記載される組換えAdに含まれる標的化ポリペプチドによって標的とされ得る細胞のタイプの例としては、筋細胞(例えば、骨格筋細胞)、腫瘍、癌細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、粘膜細胞、炭水化物および細胞膜が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0098】
この例は、ファージライブラリー上の適合性の構造的状況において選択されたペプチドが、Adヘキソンタンパク質に翻訳され得ることを実証している。例えば、12.51ペプチドに関しては、この挿入部位は、筋肉形質導入を増加させるが、肝臓におけるオフターゲット感染を減少させる。従って、筋肉組織を標的とするこのような組換えAdは、遺伝子ベースの筋肉ワクチン接種のための、または筋肉への遺伝子療法適用/送達のためのベクターとして使用され得る。
【0099】
いくつかの場合において、核酸挿入はウイルスを脱標的化することができる(例えば、所与のHVR上で生じる細胞およびタンパク質相互作用を崩壊させることによって)。いくつかの場合において、核酸挿入は、検出可能な標識をコードすることができる。検出可能な標識の例としては、発蛍光団(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherryおよびmBFP)、ならびに酵素(例えば、ルシフェラーゼ、DNAse、プロテアーゼ、トランスポーターおよびポリメラーゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書に記載の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657、およびそのバリアント)を含有する発現ベクターもまた、本明細書において提供される。発現ベクターは、本明細書において記載される組換えAdを、別の細胞(例えば、癌細胞)中に運ぶことができ、そこでそれは複製および/または発現され得る。一般に発現構築物とも呼ばれる発現ベクターは、典型的には、特定の核酸の発現を制御するエンハンサー/プロモーター領域を有するプラスミドまたはベクターである。細胞に導入される場合、発現ベクターは、細胞内でウイルスを産生するために細胞のタンパク質合成機構を使用することができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdを含む発現ベクターは、ウイルスベクターであることができる。例えば、本明細書において記載される組換えAdを含む発現ベクターは、レトロウイルスベクターであることができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される組換えAdを含む発現ベクターはまた、1種または複数の導入遺伝子の挿入(例えばマルチクローニングサイトで)を可能にするように設計することもできる。例えば、本明細書において記載される組換えAdを含む発現ベクターはまた、検出可能な標識をコードする核酸を含むこともできる。検出可能な標識の例としては、発蛍光団(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherryおよびmBFP)、ならびに酵素(例えば、ルシフェラーゼ、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼ、および転写因子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明はまた、本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)を使用するための方法および材料を提供する。いくつかの場合において、本明細書において提供される組換えAdは、癌を有するか、または癌を有するリスクがある哺乳動物を治療するために使用することができる。例えば、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物を治療するための方法は、本明細書において記載される1種または複数の組換えAdを前記哺乳動物に投与することを含むことができる。いくつかの場合において、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物を治療するための方法は、本明細書において記載される組換えAdをコードする1種または複数の発現ベクター、または本明細書において記載される組換えAdをコードする核酸を、前記哺乳動物に投与することを含むことができる。いくつかの場合において、本明細書において記載される1種または複数の組換えAdは、哺乳動物における癌細胞の数を減少させるために(例えば、腫瘍増殖を抑制するおよび/または遅らせる)、および/または哺乳動物の生存を増加させるために、哺乳動物に投与することができる。
【0102】
血清型スイッチング腫瘍溶解性アデノウイルスによる癌性腫瘍の標的化が実証される。側腹にDU145またはLNCaP前立腺腫瘍を有するマウスを、Ad657でIV注射により一度処置した。これらのマウスを、2度目に、ファイバー修飾を有し、GFPルシフェラーゼを発現する別のAd6またはAd6/57/6腫瘍溶解性ウイルスバリアントで処置し、ルシフェラーゼ活性をイメージングによって測定した。Ad6は、Ad6ヘキソンとCARを標的とするファイバーを有する。Ad6-F35は、Ad6ヘキソンとCD46を標的とするAd35ファイバーを有する。Ad6/57/6は、Ad6からのHVR1および7、ならびにAd57からのHVR2~6を有する。Ad6/57/6ウイルスは、Ad6ファイバー、AdC68ファイバー、またはAd35ファイバーを有する。
図9におけるこれらのデータは、肝臓のオフターゲット感染がより低い、腫瘍を標的とするウイルスによる血清型スイッチ腫瘍溶解に関する驚くべき能力を示している。
【0103】
血清型スイッチングの別の例では、側腹にLNCaP前立腺腫瘍を有するマウスを、Ad657またはCRAd657を用いる単回の静脈内(IV)注射により処置した。これらのマウスを、5月後、2度目に、GFPルシフェラーゼおよびファイバーバリアントK7(7個のリジンが付加)、F35(Ad35ファイバーを有する)またはKKTK-C68(Ad6 KKTKフレキシビリティードメインの後に融合されたチンパンジーC68ファイバー)を発現する別のAd6/57/6腫瘍溶解性ウイルスで処置した。KKTK-C68ウイルスはまた、ウイルス生産性を増強するために、付加されたコドン最適化E4 34K遺伝子を有する。ルシフェラーゼ活性をイメージングによって測定した。全てのAd6/57/6は、Ad6からのHVR1および7、ならびにAd57からのHVR2~6を有するヘキソンを有する。Ad6/57/6およびKKTK-C68は、CARを標的とするファイバーを有する。Ad6/57/6-F35は、CD46を標的とするAd35ファイバーを有する。K7は、ヘパリン硫酸プロテオグリカンの結合を含む細胞上の負電荷への結合を増加させる。
図70は、肝臓のオフターゲット感染がより低い、腫瘍を標的とするウイルスによる血清型スイッチ腫瘍溶解に関する能力を示している。
【0104】
癌、感染性疾患、および/または遺伝的疾患を有するか、またはこれらを有するリスクがある任意の適切な哺乳動物を、本明細書において記載されるように治療することができる。例えば、癌、感染性疾患および/または遺伝的疾患を有する、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル類)、ウマ類、ウシ種、ブタ種、イヌ類、ネコ類、マウス類、ラット類、およびペット(feed animals)を、本明細書に記載されるように癌について治療することができる。いくつかの場合において、癌を有するヒトを治療することができる。いくつかの場合において、本明細書において記載されるように治療される哺乳動物(例えばヒト)は、本明細書において記載される組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)を生成するために使用されるAdの天然宿主ではない。例えば、本明細書において記載される組換えAd657で治療されているヒトは、Ad6に対する既存の適応免疫を欠くことができる。
【0105】
任意のタイプの癌を有する哺乳動物を、本明細書において記載されるように治療することができる。いくつかの場合において、癌は、1種または複数の固形腫瘍を含むことができる。いくつかの場合において、癌は、血液癌であることができる。本明細書に記載されるように治療することができる癌の例には、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、メラノーマ、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫および白血病(例えば、リンパ性白血病および骨髄性白血病)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0106】
いくつかの場合において、本明細書において記載される方法はまた、哺乳動物を癌を有すると同定することを含むことができる。癌を有するとして哺乳動物を同定するための方法の例としては、身体的検査、実験室試験(例えば、血液および/または尿)、生検、イメージング試験(例えば、X線、PET/CT、MRI、および/または超音波)、核医学スキャン(例えば、骨スキャン)、内視鏡検査、および/または遺伝子診断が挙げられるが、これらに限定はされない。癌、感染性疾患および/または遺伝性疾患を有するとして一旦同定されると、哺乳動物は、本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)または本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)をコードする核酸(例えば、発現ベクター)を、投与されることができ、または自己投与するように指示され得る。
【0107】
本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657s)は、任意の適切な経路によって投与することができる。いくつかの場合において、投与は局所投与であることができる。いくつかの場合において、投与は全身投与であることができる。投与経路の例としては、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻内、吸入、経皮、非経口、腫瘍内、後尿管(retro-ureter)、被膜下、膣および直腸投与が挙げられるが、これらに限定はされない。複数ラウンドの治療が実施される場合、第1ラウンドの治療は、第1経路(例えば、静脈内)によって哺乳動物(例えば、ヒト)に本明細書に記載される1種または複数の組換えAdを投与することを含むことができ、第2ラウンドの治療は、第2経路(例えば、筋肉内)によって哺乳動物(例えば、ヒト)に本明細書に記載される1種または複数の組換えAdを投与することを含むことができる。
【0108】
本明細書中で使用される場合、用語「医薬組成物」は、当該組成物を治療的用途のために特に好適にする、本発明の1種または複数の組換えおよび/またはキメラAdとキャリア(不活性または活性)との組み合わせを表す。本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657)は、哺乳動物(例えば、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物)への投与のための組成物(例えば、医薬組成物)に処方することができる。例えば、1種または複数の組換えAdは、癌を有するかまたは癌を有するリスクがある哺乳動物への投与のために、薬学的に受容可能な組成物に処方することができる。いくつかの場合において、1種または複数の組換えAdは、1種または複数の薬学的に許容可能なキャリア(添加剤)および/または希釈剤と一緒に処方することができる。医薬組成物は、無菌溶液、懸濁剤、徐放性製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、ウエファーおよび顆粒剤を含むがこれらに限定されない固体または液体形態で投与するために製剤化することができる。本明細書において記載される医薬組成物において使用され得る薬学的に許容可能なキャリア、増量剤およびビヒクルには、限定はされないが、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、バッファー物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれる。適切な医薬キャリアは、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版に記載されている。適切な賦形剤の選択および使用は、Gennaro編、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版(Lippincott Williams & Wilkins 2003)に教示されている。
【0109】
本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば、組換えAd657)を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、ワクチンとして哺乳動物(例えば、癌を有するか、または癌を有するリスクがある哺乳動物)に投与することができる。ワクチンは、予防的または治療的であり得る。
【0110】
いくつかの場合において、本明細書において記載される方法はまた、哺乳動物(例えば、癌を有する哺乳動物)に、癌を治療するために使用される1つまたは複数の追加的な剤を投与することを含むこともできる。癌を治療するために使用される1種または複数の追加的な剤は、任意の適切な癌治療を含み得る。いくつかの場合において、癌治療は手術を含み得る。いくつかの場合において、癌治療は放射線治療を含み得る。いくつかの場合において、癌治療は、薬物療法、例えば化学療法、ホルモン療法、標的化療法および/または細胞傷害性療法の実施を含むことができる。例えば、癌を有する哺乳動物に、本明細書において記載される1種または複数の組換えAd(例えば、腫瘍溶解性抗癌活性を有する組換えAd、例えば組換えAd657およびそのバリアント)を投与し、および癌を治療するために使用される1種または複数の追加的な剤を投与することができる。癌を有する哺乳動物が本明細書において記載される1種または複数の組換えAdで治療され、および癌、感染性疾患および/または遺伝性疾患を治療するために使用される1種または複数の追加的な剤で治療される場合、癌、感染性疾患および/または遺伝性疾患を治療するために使用される追加的な剤は、同時にまたは独立して投与することができる。例えば、本明細書において記載される1種または複数の組換えAdおよび癌、感染性疾患および/または遺伝的疾患を治療するために使用される1種または複数の追加的な剤を一緒に処方して、単一の組成物を形成することができる。いくつかの場合においては、本明細書において記載される1種または複数の組換えAdを最初に投与し、癌、感染性疾患および/または遺伝的疾患を治療するために使用される1種または複数の追加的な剤を次に投与することができ、またはその逆も同様である。
【実施例】
【0111】
例
例1.アデノウイルス。
【0112】
50年間にわたって、Ad1、Ad2、Ad5、およびAd6を含む4つの種Cのヒト種Adのみが知られていた(例えば、Weaverら、2011 Virology.412:19-27を参照のこと)。2001年に、第5の種Cアデノウイルスが、野生分離株#16700として同定され、Ad1、2、5および6に対する抗血清を用いたウイルス中和試験により、各抗血清がその同族ウイルスに対して使用された場合の高レベルの中和(500~16,000の相互力価(reciprocal titers)が実証された(Lukashevら、2008 J Gen Virol.89:380~388)。対照的に、抗Ad1、2および5抗体は、#16700に対して弱い交差反応性を有する(32~64の相互力価)。抗Ad6血清は#16700に対してより高い交差反応性を示したが、中和は、Ad6自体と比較した場合、#16700を中和するために10倍高い濃度の血清を必要とした。その後の配列比較によって、#16700は新規の種Cアデノウイルスとして確認され、Ad57と改名された(例えば、Walshら、2011 J. Clin Microbiol.49:3482-3490を参照のこと)。
【0113】
15のヒトAdについて、乳房、卵巣、肝臓、前立腺、腎臓およびB細胞性悪性腫瘍に対する腫瘍溶解活性を評価した。DU145ヒト前立腺腫瘍に対する試験において、種C Ad6は、腫瘍内または静脈内(i.v.)単回注射後において、種C Ad5または種BウイルスAd11およびAd35よりも強力であった。Ad6はまた、免疫正常シリアンハムスターにおいてAd5およびAd11よりも有効であった。
【0114】
組換えアデノウイルスの構築。
【0115】
組換えアデノウイルスを、当業者に公知の方法を利用する組換えDNA技術によって構築した。組換えAdは、第1のAdから誘導され(例えば、第1のAd、例えばAd6のゲノムを含むことができ)、そして、第2のAd、例えばAd57からのヘキソンHVRを含むことができる。組換えAdがAd6ゲノムおよびAd57ヘキソンHVRを含む場合、組換えAdはAd657と称されるキメラAdであり得る。
【0116】
Ad657を得るために、Ad57HVR配列を合成し、pVIとヘキソンとの間にFRT-Zeocin
(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを種々のpAd6プラスミド中に組換えて、Ad657およびその変異体を生成した。Ad657ヘキソンのアミノ酸配列を配列番号49に示す。Ad657バリアントのプラスミドマップについては、
図34および59~65を参照のこと。
【0117】
Ad657のバリアントに関して、Ad57 HVR配列を、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能にするための制限部位で修飾されたHVR1を用いて合成した。これを、pVIとヘキソンとの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にシステインを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-XXAと呼ぶ当該バリアントは、配列番号50のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0118】
Ad657のバリアントに関して、Ad57 HVR配列を、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能にするための制限部位で修飾されたHVR5を用いて合成した。これを、pVIとヘキソンとの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR5中にシステインを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-XXAと呼ぶ当該バリアントは、配列番号51のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0119】
Ad657のバリアントに関して、Ad57 HVR配列を、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能にするための制限部位で修飾されたHVR1を用いて合成した。これを、pVIとヘキソンとの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にシステインを有しないが、HVR1中へのペプチド挿入を可能にする制限部位を有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-XAと呼ぶ当該バリアントは、配列番号52のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0120】
Ad657のバリアントに関して、Ad57 HVR配列を、システイン、柔軟性アミノ酸、および他のペプチドの挿入を可能にするための制限部位で修飾されたHVR5を用いて合成した。これを、pVIとヘキソンとの間にFRT-Zeocin(登録商標)-FRTカセットを有するプラスミドにおいてAd6ヘキソン中に挿入した。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR5中にシステインを有しないが、HVR5中へのペプチド挿入を可能にする制限部位を有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-XAと呼ぶ当該バリアントは、配列番号53のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0121】
Ad657のバリアントに関して、Ad657 HVR1-XA配列は、HVR1へのビオチンアクセプターペプチドの挿入によって修飾された。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にBAPを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR1-PSTCDと呼ぶ当該バリアントは、配列番号54のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0122】
ビオチンアクセプターペプチドの挿入は、ウイルスバリアントを肝臓から脱標的化し(detarget)、当該ウイルスをアビジンまたはストレプトアビジンとビオチン化リガンドで再標的化(retargeted)させることを可能にし、そして当該ウイルスを単量体アビジンまたはストレプトアビジンカラムで精製することを可能にする。
【0123】
Ad657のバリアントに関して、Ad657 HVR1-XA配列を、HVR1へのビオチンアクセプターペプチドの挿入によって修飾した。これを種々のpAd6プラスミドに組換えて、HVR1中にBAPを有するAd657バリアントを生成し、Ad657-HVR5-PSTCDと呼ぶ当該バリアントは、配列番号55のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0124】
Ad657のバリアントに関して、Ad657 HVR5-XA配列をHIVエンベロープ由来の合成V1/V2ループのHVR5中への挿入によって修飾した。Ad657-HVR5-V1/V2と呼ぶ当該バリアントは配列番号56のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0125】
HIVエンベロープ由来の合成V1/V2ループの挿入により、この抗原の提示がワクチンとしての役割を果たすとともに、HIVエンベロープと相互作用するタンパク質と結合することによって再標的化が可能になる。
【0126】
Ad657のバリアントに関して、Ad657 HVR5-XA配列をヒト乳頭腫ウイルス由来の合成ペプチドのHVR5中への挿入によって修飾した。Ad657-HVR5-HPVと呼ぶ当該バリアントは配列番号57のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0127】
ヒト乳頭腫ウイルス由来の合成ペプチドの挿入は、ワクチン目的のため、ならびにHPVペプチドと相互作用するタンパク質への結合による再標的化のための抗原としてのHPVペプチドの提示を可能にする。
【0128】
本発明の別の態様において、Ad6 HVR1およびAd57 HVR2~7を有するキメラAdを生成した。Ad6/57HVRキメラと呼ぶ当該キメラは、配列番号58のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0129】
本発明のさらに別の態様において、Ad6 HVR1および7ならびにAd57 HVR2~6を有するキメラAdを生成した。Ad6/57/6HVRキメラと呼ぶ当該キメラは、配列番号59のアミノ酸配列を有するヘキソンを含む。
【0130】
例2.遺伝子送達のための再標的化および脱標的化組換えアデノウイルス。
【0131】
アデノウイルスは、遺伝子送達および遺伝子ベースの免疫化のための確固たるベクターである。これらの適用の大部分では、原型アデノウイルスは、ヒト種Cアデノウイルス血清型5(HAdV-C5またはAd5)が使用されてきた。In vitroでは、Ad5はそのファイバーおよびペントンベースタンパク質と細胞表面受容体との組み合わされた相互作用を介して細胞に結合し、侵入する。三量体のファイバーは、コクサッキー・アデノウイルス受容体(CAR)に結合し、CARを欠く細胞は、ペントンベース上のRGDモチーフによって結合され得るαvインテグリンも発現しない限り、感染に対して比較的耐性である。
【0132】
In vivoでは、これらの相互作用が依然として利用されるが、それらの重要性は注射経路によって異なる。固形組織または腫瘍に直接注射した場合、CARおよびインテグリン相互作用が優勢である。静脈内注射(IV)した場合、これらの相互作用は、Ad5のビタミン-K依存性血液凝固因子への結合の影響のため、二の次になる。血液第X因子(FX)は、Ad5のヘキソンにナノモル以下の親和性で結合し、その結果、Ad5がIV注射後に肝細胞に効率的に形質導入することを可能にする。FXの非存在下では、肝臓の形質導入は大幅に減少する。
【0133】
アデノウイルスベクターは、わずか4.5kbのDNA配列しかもたないアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのような他のベクターと比較すると、36キロ塩基対(kbp)までの非常に大きなcDNA配列を運ぶ能力という点において、いくぶんユニークである。このペイロード容量は、14kbpのジストロフィンcDNAのような非常に大きな導入遺伝子を送達する場合、筋肉遺伝子治療のためのAdベクターの早期探索を正当化した。新生マウスでのIV投与は、筋肉の遺伝子送達を媒介できるが、この能力は成体マウスでは失われる。加齢に伴うトランスフェクションの減少は、部分的にはAdビリオンの非常に大きなサイズ(すなわち、100nm)、ならびに加齢に伴う筋肉細胞上のCAR受容体の喪失に起因する。骨格筋細胞にCARが存在しないという事実にもかかわらず、筋肉内(IM)経路は、Ad5および他の血清型を用いる場合、遺伝子ベースのワクチンのための圧倒的に最も一般的な経路である。
【0134】
従って、筋肉のAd5および他の血清型形質導入は、遺伝子治療または遺伝子ベースのワクチン接種に適切であり得る。しかしながら、筋肉中にウイルスの一次受容体が存在しないと、ウイルスの有効性が低下し、所望の効果を達成するためにはより多くのベクターが送達されることが必要となる。
【0135】
アデノウイルスにおけるペプチド修飾ヘキソンの構築。
【0136】
C2C12マウス筋肉細胞上の12アミノ酸(12mer)のペプチドを、Ad5のノブ領域からのHおよびIβシートの間に提示されたランダムペプチドライブラリーから選択した(
図1A)。ペプチド12.51(TARGEHKEEELI;配列番号1)および12.52(LRQTGAASAVWG; 配列番号2)を、非標的細胞に対して前清澄化(pre-clearing)した筋芽細胞に対して選択して、筋肉細胞への結合に関して特異的であるペプチドを得た。ほとんどの場合、小さいペプチドは比較的低い親和性を有する。従って、Ad5ヘキソンの720コピー上にこれらの筋肉選択ペプチドを提示することは、より良好な筋肉遺伝子送達を可能にし得ると推論した。この挿入部位はまた、IM注射後にベクターが血液中に漏出した場合に、ヘキソンに結合するFXを不活性化してベクターを肝臓から「脱標的化」するという利点を有するかもしれない。
【0137】
これらの筋肉選択ペプチドを、ウイルス上の超可変ループも拘束する2つの他のβシートの間に挿入し、トロピズムを調節する修飾Adの能力を評価した。ペプチド12.51および12.52を、Ad5ヘキソン中のβ7およびβ8シートによって拘束された超可変領域(HVR)5ループ中に導入した。マウスおよびハムスターにおける静脈内および筋肉内注射の後のこれらのウイルスの組織形質導入能(in vivo)を評価した。
【0138】
アデノウイルス
E1-欠失Ad5-GL(RD-Ad5-GL)は、他に記載されるように、緑色蛍光タンパク質-ルシフェラーゼ(GFP-ルシフェラーゼ、GL)融合タンパク質を発現する(例えば、Crosbyら、2002 J. Virol.,76:6893-6899;Khareら、2011 Mol.Ther.,19:1254-1262;およびKhareら、2012 J. Virol.,86:2293-2301を参照のこと)。当業者に公知の方法に従って、筋肉選択ペプチド12.51および12.52を、Ad5ヘキソン上のHVR5の代わりに、Ad5のノブ領域からのHおよびIβシートと構造的に類似するそのβ7およびβ8シートの間に挿入した(
図1A)。フレキシビリティーリーダー(flexibility leader)を有するペプチドで、Ad5におけるHVR5ループ全体を置き換えた(
図1B)。これらの修飾されたヘキソン配列を、細菌におけるred recombinationによって、緑色蛍光タンパク質-ルシフェラーゼ融合タンパク質を発現する複製欠損Ad5(RD-Ad5-GL)に導入した(例えば、Camposら、2004 Hum.Gene Ther.,15:1125-1130を参照のこと)。ペプチド修飾Adを、ペプチド12.51および12.52(
図1B)をコードするアニーリングされたオリゴヌクレオチドをプラスミドpHVR5ディスプレイ(
図1A下)に挿入することによって構築して、組換えAdであるAd5-HVR5-12.51およびAd5-HVR5-12.52を得た。
【0139】
得られたプラスミドを消化し、pAd5-GLへのred recombinationに使用した。これらのベクターを293細胞中でレスキューし、2つの連続するCsCl勾配で精製し、Econopac 10-DGクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad)で0.5Mスクロースを含む50mM Tris pH 8中に脱塩し、-80℃で保存した。
【0140】
In vitroウイルス試験
C2C12マウス筋芽細胞は、American Type Tissue Culture(Manassas,VA)から購入した。293細胞は、Microbix,Toronto,Ontario,Canadaから入手した。細胞を、10%FBS Invitrogenを含むDMEM中で維持した。
【0141】
C2C12筋肉細胞を、感染の前日に6ウェルプレート(Corning)に播種した。ウイルスを用いて、5%FBSを含むDMEMにおいて細胞を感染させた。細胞を2日間インキュベートした後、緑色蛍光下で観察した。
【0142】
動物実験は、Mayo Clinic Institutional Animal Care and Use Committeeの承認を得て、Animal Welfare Act、PHS Animal Welfare Policyの規定およびNIH Guide for Care and Use of Laboratory Animalsの指針に基づいて行った。雌CD-1マウス(Charles River)に麻酔をかけ、示された時間に、1010vpの示されたウイルスを筋肉内(IM)または静脈内(IV)に注射した。動物を麻酔し、3mgのd-ルシフェリン(Molecular Imaging Products)を注射し、Xenogenイメージングシステムでイメージングした。その後、動物を麻酔し、ELISA用の血清分離器で血液を回収した。
【0143】
ELISAを以下のように行った。Immulon4HBXプレート(Thermo)を、1ウェルあたり100ngの1Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のGFPタンパク質と共に4℃で一晩インキュベートし、洗浄し、0.1%Tween 20(TBST)を含むTRIS緩衝生理食塩水中の5%ミルクを用いて室温で2時間ブロッキングを行った。各血清サンプルの1:100,000~1:1,1000希釈物をブロッキングバッファー中に調製した。ウェルを洗浄し、各100μLをGFPでコーティングしたプレートにn=3で添加し、室温で3時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、ヤギ抗マウスHRP二次抗体(Pierce Chemical)の1/10,000希釈物を各ウェルに添加した。プレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄し、50μLの1 Step Ultra TMB ELISA(Thermo Fisher Scientific Inc.)、続いて50μLの2M H2SO4を添加した。450nmでの吸光度を、Beckman Coulter DTX 880を用いて決定した。
【0144】
統計解析は、Prism(Graphpad)を用いて行った。統計学的有意性は、一元配置ANOVAとそれに続くTukey’s HSDにより算出した。
【0145】
マウスC2C12筋肉細胞におけるin vitro形質導入
RD-Ad5-GL、RD-Ad5-GL-HVR5-12.51およびRD-Ad5-HVR5-12.52を使用して、ウイルス粒子(vp)/細胞に関して様々な感染多重度(MOI)でマウスC2C12筋芽細胞に感染させた。GFP融合タンパク質からの緑色蛍光が蛍光顕微鏡によって観察された場合、ペプチド修飾ベクターの両方が、RD-Ad5-GLよりも有意に良好な形質導入を媒介した(
図2A)。ルシフェラーゼ活性を測定したところ、RD-Ad5-GL-12.51および12.52感染細胞において有意な増加が観察された(
図2B)。ペプチドの1つ12.51をAd5のノブ領域に挿入し戻すと、当該ペプチドはC2C12筋芽細胞におけるin vitro形質導入を14倍増加させた。
【0146】
マウスでの筋肉内注射後のin vivo形質導入
10
9vpのAd5-GL、Ad5-GL-HVR5-12.51およびAd5-GL-HVR5-12.52を、マウスの両四頭筋内にIM経路によって注射し、ルシフェラーゼイメージングを様々な時間で行った(
図3Aの上)。Ad5-GL-HVR5-12.51は、すべての時間点でAd5-GLよりも2~3倍高いルシフェラーゼ活性をもたらした(一元配置ANOVAにより1日目でp<0.05)(
図3B左)。筋肉におけるAd5-GL-HVR5-12.52活性は、in vitroでのそのより強い活性とは対照的に、Ad5-GLとHVR5-12.51の両方よりも低かった。
【0147】
マウスでの静脈内注射後のin vivo形質導入
3×10
10vpのAd5-GL、Ad5-GL-HVR5-12.51およびAd5-GL-HVR5-12.52を、マウスにIV経路によって注射し、ルシフェラーゼイメージングを行った(
図3Aの下)。筋肉での結果とは対照的に、非修飾Ad5-GLのみが強い肝臓形質導入を媒介した。Ad5-GLによる肝臓形質導入は、Ad5-GL-HVR5-12.51およびAd5-GL-HVR5-12.52の両方よりも60倍高かった(一元配置ANOVAにより1日目にp<0.001)(
図3B右)ことから、組換えAdが肝臓におけるオフターゲット感染を減少させながら、筋肉組織を標的とすることが実証された。
【0148】
ハムスターでの筋肉内注射後のin vivo形質導入
12.51修飾ベクターがマウス以外の種で機能するかどうかを試験するために、10
10vpのAd5-GLおよびAd5-GL-HVR5-12.51を、より大きなシリアンハムスターの両四頭筋中にIM注射し、24時間後にルシフェラーゼイメージングを行った(
図4)。この場合、Ad5-GL-HVR5-12.51は、Ad5-GLよりも7倍高いルシフェラーゼ活性を媒介した(一元配置ANOVAにより1日目でp<0.01)。
【0149】
マウスにおける筋肉内注射後の遺伝子をベースとする免疫化
IM注射の16週間後、血清を、上記のようにおよび
図3に示されるように処置されたマウスから収集し、そして導入遺伝子コードGFPに対する抗体についてELISAによって段階希釈で分析した(
図5)。全てのAd注射マウスは、1:10,000~1:1000の血清希釈でPBS群と比較した場合に、有意な抗GFP抗体を生成した(一元配置ANOVAによりp<0.0001)。しかしながら、Ad5-GL-HVR-12.51は、Ad5またはAd5-HVR5-12.52よりも高い抗体を産生した。血清の1:1000~1:10,000希釈において、Ad5-GL-HVR-12.51はAd5-GLよりも有意に高かった(一元配置ANOVAによりp<0.01~0.0001)。血清の1:1000希釈では、12.51が12.52よりも有意に高かった(p<0.05)。Ad5-GL-12.52は、血清の1:1000および1:10,000希釈においてAd5-GLよりも有意に高かった(p<0.05~0.001)。
【0150】
この例は、ファージライブラリー上の適合性の構造的状況において選択されたペプチドが、Adヘキソンタンパク質に翻訳され得ることを実証している。例えば、12.51ペプチドに関しては、この挿入部位は、筋肉形質導入を増加させるが、肝臓におけるオフターゲット感染を減少させる。従って、筋肉組織を標的とするこのような組換えAdは、遺伝子ベースの筋肉ワクチン接種のための、または筋肉への遺伝子治療適用/送達のためのベクターとして使用され得る。
【0151】
本発明のさらなる態様は、Ad657HVRに、ならびにAd6およびC68 HIループに挿入された他の細胞標的化ペプチドを含む組換えおよび/またはキメラAdに関する(表1に記載)。
【0152】
【0153】
示されたペプチドをコードするDNAおよびその相補DNAを、Adプラスミド(例えば、XAヘキソンプラスミドまたはpAd6-NdePflファイバーシャトルプラスミド)へのライゲーションのために付着末端に隣接して合成した。これらのアニーリングしたオリゴヌクレオチドを、HVRまたはAdのHIループにライゲートした。これらのプラスミドを使用して、種々のAdバックボーンプラスミド中に組換えた。
【0154】
一部のペプチドは、細胞上の新しい受容体を標的とするために利用できる。細菌ビオチンリガーゼBirAを発現する細胞中でウイルスを増殖させる場合、small BAPのような他のものをアビジン標的化および精製のために使用することができる。カルモジュリンペプチドは、再標的化のためまたはウイルス精製のために、ウイルスがカルモジュリンまたはカルモジュリン融合タンパク質に結合することを可能にする。
【0155】
従って、特定の組織/細胞受容体を標的とするこのような組換えAdは、遺伝子ベースのワクチン接種のための、または標的化細胞および/または組織における遺伝子治療適用のためのベクターとして使用され得る。
【0156】
例3.細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸の挿入による異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入。
【0157】
ヘキソンシャトルプラスミドマップ(
図34)は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、細胞標的化/脱標的化ペプチドまたは新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入との組み合わせを示す。
【0158】
特定の実施態様では、細胞結合ペプチド12.51、VSV、RGD(表1を参照)がHVR1またはHVR5に挿入され、当該実施態様は、これらのおよび他のペプチドをAdのHVRのいずれかに挿入する例として役立つ(
図34)。別の例は、これらのHVRへのビオチンアクセプターペプチド(BAP:biotin acceptor peptide)の挿入を示し、これは、アビジンまたはストレプトアビジンおよびビオチン化リガンド、あるいはアビジン-またはストレプトアビジン融合タンパク質を用いたベクター再標的化を可能にする。BAP挿入はまた、ウイルスを、ベクター産生のために単量体アビジンまたはストレプトアビジンカラム上で精製することを可能にする。同様に、Ad57-HVR1-XXAおよびXAは、マレイミドまたは他のシステイン反応性剤での標的化化学修飾を可能にするために、この部位にシステインを挿入する例を示す(
図34)。
【0159】
これらの実施態様は、異なるAdからの異なるHVRを組み合わせる(すなわち、HVRをシャッフルする)Adとの関連においても適用されている。例えば、Ad6のHVR1とAd57のHVR2~7、またはAd6のHVR1および7とAd57のHVR2~6。さらなる実施態様において、6/56/6ウイルスは、Ad6由来のHVR1および7、ならびにAd657由来のHVR2~6を有する。
【0160】
例4.システイン修飾ヘキソン修飾Ad657-HVR5Cの標的化化学的連結。
【0161】
図35は、異なるAd血清型由来の個々のHVRの挿入と、新規アミノ酸、例えばシステインの、標的化化学修飾および遮蔽のためのヘキソンへの挿入との組み合わせを示すAdバリアントを示す。
【0162】
システイン修飾ヘキソン修飾Ad657-HVR1Cの遮蔽および機能に対する、非標的化化学的連結の効果と標的化化学的連結の効果との比較(
図36)。この例は、Adヘキソンに挿入されたシステインに対するポリマーおよび他の化学修飾を標的とする能力を示す。非標的化PEGは、ウイルス感染を不活性化するが、システイン標的化PEG化はウイルス機能を保持する。
【0163】
本発明の一態様では、抗体、タンパク質、細胞を脱標的化、再標的化およびそれらから遮蔽するための、ポリマーまたは挿入されたペプチド/タンパク質の使用が企図される。
図54は、例えば、PEG化または「BAP化(BAPylation)」によって修飾され得るAd HVRの部位を示す。
【0164】
一実施態様では、異なるAd血清型および/またはバリアントは、Ad6およびAd657バリアントの複数投与(multi dosing)を可能にするポリマー遮蔽を含む。Ad6およびAd657が、共有結合ポリマー連結と組み合わされた血清型スイッチングによる複数ラウンドの治療のために使用できる、例示的な治療サイクルを示す(
図41B)。
【0165】
GFPルシフェラーゼを発現するAd657-HVR1Cを細胞から産生し、CsCl勾配で精製した。ウイルスを5kDaポリエチレングリコール(PEG)で共有結合により修飾した。ウイルスを、ウイルスタンパク質上のアミン/リジンとランダムに反応するNHS-PEGで、またはXXAシャトルプラスミドを使用してHVR1に挿入されたシステインと特異的に反応するマレイミドPEGのいずれかで処理した。引き続き、これらの非修飾または修飾ウイルスを最終的なCsClスピンによって精製し、続いて脱塩した。示したウイルスをSDS-PAGEゲル上で分離し、SyproRubyで染色し、イメージングによって可視化した(
図36A)。これは、タンパク質の見掛け質量の増加によって示されるように(矢印によって示される)、NHS-PEG化が多くのウイルスタンパク質をランダムに修飾することを示す。対照的に、HVR1におけるシステインとの標的化マレイミドPEG反応はヘキソンのみを修飾し、他のウイルスカプソメアタンパク質に損傷を与えない。ウイルス機能に対するPEG化の影響を評価した。
【0166】
示したウイルスをA549細胞と共にインキュベートし、細胞に感染するためのそれらの能力をルシフェラーゼアッセイによって測定した。これは、ランダムなNHS-PEG化がウイルス活性を90%を超えて低下させるが、マレイミド-PEGは低下させないことを示す(
図36B)。
【0167】
免疫正常シリアンハムスターに皮下HaK腎臓癌腫瘍を移植した。これらが200μlの体積に達したとき、それらに、E3(DE3)有りでまたは無しで、およびランダムNHS-PEG化有りでまたは無しで構築された示したAd6ウイルスを静脈内経路によって1回注射した。腫瘍サイズを経時的に測定した。データから、腫瘍溶解性ウイルスAd6-deltaE3-Lucにおいて全てのE3遺伝子を欠失させると、当該ウイルスは、腫瘍溶解性の親ウイルスAd6-Lucよりも腫瘍体積を減少させる効果が低下することが示される。当該データはまた、Ad6はPEG化されて、有効性を保持できることを示す(Ad6-Luc対Ad6-Luc-20kDa PEGを参照のこと)(
図58)。
【0168】
システイン修飾ヘキソン修飾Ad、例えばAd657-HVR5Cの標的化化学的連結。GFPルシフェラーゼを発現するAd657-HVR5Cを細胞から産生し、CsCl勾配で精製した。当該ウイルスを、マレイミド-IR800近赤外発蛍光団、マレイミド-ビオチン、またはHVR5中にそのXXAシャトルプラスミドを用いて挿入されたシステインと特異的に反応する5kDaマレイミド-PEGで、共有結合により修飾した。示したAdおよび修飾AdをSDS-PAGEゲル上で分離し、SyproRubyで染色し、イメージングによって可視化した(
図37A)。ウイルスタンパク質のSDS-PAGE、それに続く近赤外イメージングは、HVR-Cがイメージング剤でタグ化できることを示す(
図37B)。PEG化Adウイルスを腹腔内注射することにより、in vivo Adウイルス機能に対するPEG化の影響が示された。腫瘍を有するマウスにおける細胞に感染する能力は、イメージングにより検出可能なルシフェラーゼ活性によって実証される。
図37Cは、Ad657ヘキソン領域に挿入されたシステインに対するポリマーおよび他の化学修飾を標的化する能力を示す。さらに、PEG化が、in vivoでアデノウイルスを肝臓に関して脱標的化することが示される(
図50)。
【0169】
例5.Ad657によるヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)の発現。
【0170】
ヒトGMCSFのcDNAを有するAd657を使用してA549細胞に感染させ、様々な量の上清をGMCSF増殖依存性TF-1細胞に添加した。増加した細胞数は、機能的なヒトサイトカインの発現を示す(
図27)。当該データは、組換えAdを異種タンパク質の発現のために利用できることを実証している。
【0171】
例6.癌細胞に対する全身性ウイルス療法のための腫瘍溶解性アデノウイルスAd657。
【0172】
選択した全Adゲノムのアラインメントにより、Ad57と、Ad6とほぼ相同の他の種Cウイルスとをクラスター化する系統樹が得られ、
図6に示す。
【0173】
Ad57はAd6とほぼ同一であると考えられ、ヘキソン超可変領域(HVR)およびE3免疫回避遺伝子において配列の相違を有する(
図7)。ファイバー、ペントンベース、IIIaおよびIXを含む他の曝露されるウイルスキャプシドタンパク質は、Ad6とAd57の間で実質的に同一である。中和データは、ほとんどのアデノウイルス中和抗体がAd上のHVRを標的とするという事実と一致する。Ad6抗血清とAd57との間の低い交差反応性は、それらの共通のファイバータンパク質を標的とし得る抗体に起因すると考えられる(Lukashevら、2008 J Gen Virol.89:380-388)。
【0174】
この例では、ヒト前立腺癌に対する腫瘍溶解物質としてのAd657の有用性が実証される。Ad6 HVRをAd57由来のものと置き換えて、Ad657と呼ぶキメラ種C腫瘍溶解性ウイルスを生成した。Ad657およびAd6を、ヒト前立腺癌腫瘍を有するヌードマウスにおいて単回i.v.注射による全身性腫瘍溶解療法として試験した。このウイルスの肝臓及び腫瘍トロピズムを、前立腺癌のマウスモデルで以下のように評価した。
【0175】
DU145ヒト前立腺癌細胞を、American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA,USA)から購入し、そしてRADILによるIMPACT試験によって特異的病原体フリーであることを確認した。293細胞は、Microbix,Toronto,Ontario,Canadaから入手した。細胞を、10%FBSを含むDMEM(Invitrogen,Grand Island,NY,USA)中で維持した。
【0176】
Ad6、Tonsil 99株(ATCC VR-1083)のゲノムを、他に記載されるようにクローニングした(例えば、Weaverら、2013 PLoS One.8:e73313を参照のこと)。天然のApaI部位とSacI部位との間のAd57ヘキソンに対応するカセットをGenscriptによって合成した。このフラグメントを、他に記載されるように、Ad6 pVIおよびヘキソン遺伝子と細菌における相同組換えのためのそれらの間のFRT-Zeocin
(登録商標)耐性遺伝子-FRTカセットとを含むシャトルプラスミドpUC57-Ad6 Hexon-FZFにクローニングした(例えば、Camposら、2004 Hum Gene Ther.15:1125-1130;およびKhareら、2012 J Virol.86:2293-2301を参照のこと)。Ad6 ApaI-SacIフラグメントを、プラスミドpUC57-Ad6/57ヘキソン-FZFを生成するAd57フラグメントで置き換えた。これをred recombinationによりAd6ゲノム中に組み換えた(Campos et al., 2004 Hum Gene Ther. 15:1125-1130)。
図59は、E3欠失を有するAd657のプラスミドマップを示す。ウイルスを、293細胞へのトランスフェクションによってレスキューし、10 plate CellStack(Corning Life Sciences,Lowell,MA,USA)から産生させた。緑色蛍光タンパク質-ルシフェラーゼ(GFP-Luc)融合タンパク質を発現するウイルスは、AdファイバーとE4との間に挿入されたCMV-GFP-Luc発現カセットと、この挿入のためのスペースを作るためのE3欠失とを有する。ウイルスを2つのCsCl勾配で精製し、ウイルス粒子(vp)数をOD260によって計算した。
【0177】
in vitro腫瘍溶解活性を試験するために、細胞を、5%FBSおよび抗生物質-抗真菌剤(Invitrogen, Grand Island, NY, USA)を含むDMEM中で、vp/細胞に関して示された感染多重度(MOI)で処理した。5日後、培地を除去し、細胞をクリスタルバイオレット(リン酸緩衝生理食塩水において0.05%クリスタルバイオレット、3.7%ホルムアルデヒド; Invitrogen,Grand Island,NY,USA)で10分間処理した。細胞をPBSで2回洗浄し、次いで、PBS中の0.1%ドデシル硫酸ナトリウムにおいて37℃で一晩インキュベートして、クリスタルバイオレットを可溶化した。クリスタルバイオレットの吸光度を、Beckman Coulter DTX 880プレートリーダーでOD595で測定した。細胞生存率(%)は、サンプルのODを同じ96ウェルプレート上の未処理コントロール細胞の平均ODで割り、この数に100を掛けることによって計算した。
【0178】
動物は、実験動物管理ガイドラインの評価および認定のための協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care guidelines)の下、メイヨークリニック動物施設(Mayo Clinic Animal Facility)に収容した。これらの研究は、Animal Welfare Act、PHS Animal Welfare Policyの規定に基づき、Mayo Clinic Animal Use and Care Committeeによって承認された。皮下腫瘍を、100μLのDMEM/50%Matrigel(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)中の1×107個のDU145細胞を皮下(s.c.)注射することによって、4週齢のヌードマウス(Harlan Sprague Dawley,Indianapolis,IN,USA)において開始させた。腫瘍体積は、幅2×長さ×1/2の等式を用いて計算した。腫瘍が体積で約200μLに達したとき、マウスを異なる群に割り当て、単回i.v.注射(尾静脈)によって処置した。腫瘍体積が2000μLに達した場合、または動物が瀕死、苦痛状態の場合、または皮膚が腫瘍上で破裂した場合、動物は安楽死させた。
【0179】
血中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)測定のために、6匹のC57BL/6マウスの群に、尾静脈により1011vpのAd5、Ad6またはAd657をi.v.注射し、ALT Activity Assay(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を用いたALT測定のために3日後に血液を採取した。
【0180】
統計解析は、Prism(Graphpad)を用いて、反復測定ANOVAまたは一元配置ANOVA、それに続くTukeyのHSD検定によって行った。カプラン・マイヤー生存曲線をプロットし、ログランク検定により比較した。
【0181】
Ad57のカプソメア遺伝子は、それらのヘキソンHVRを除いてAd6とほぼ同一である(
図6および7)。Ad57およびAd6のキメラウイルスを作製するために、Ad57ヘキソンHVRに対応するカセットを野生型Ad6ゲノム中に組換えた(
図8)。このウイルスをレスキューし、293細胞中で産生し、CsCl勾配で精製した。ベースのウイルスゲノムがAd6であることを考え、これらのヘキソンキメラウイルスをAd657と呼ぶ(
図59)。
【0182】
LNCapおよびDU145細胞に10、100または1000vp/細胞で感染させることによって、in vitro腫瘍溶解活性を評価した。Ad5、Ad6およびAd657による肝臓損傷を比較するために、10
11vpという高用量の各ウイルスを、尾静脈によって免疫正常C57BL/6マウス中に注射した。Ad5注射動物は2日以内に瀕死となり、安楽死させざるを得なかった(
図10A)。Ad5およびAd6の生存率はPBSと比較した場合、有意に低かった(ログランク分析により、それぞれ、p=0.0001および0.0009)。Ad657に関する生存率も、PBSと比較した場合に減少した(p=0.0578)。Ad6またはAd657への曝露後の生存率は、Ad5処理マウスにおけるよりも有意に良好であった(それぞれ、p=0.0001および0.0001)。Ad6とAd657生存率は統計学的に差がなかった(p=0.248)。
【0183】
生存しているAd6およびAd657動物において、注射後3日目の血液中のALTを測定した。Ad5処置動物に関しては、ほとんどの群が屠殺される必要があったため、試験しなかった。このアッセイにより、Ad6によって引き起こされる肝臓損傷レベルが、血中の肝ALT酵素放出に関して、比較的低いことが示された(
図10B)。Ad6群およびAd657群は両者とも、PBS処理マウスと比較した場合に、低いが有意なALT値を有していた(両ウイルスに関して、Tukeyの多重比較検定との一元配置ANOVAによりp<0.001)。Ad657はAd6よりもALTレベルが低かった(ANOVAによりp<0.001)。これは、ルシフェラーゼ発現ウイルスのi.v.注射後のAd657よりも肝臓におけるAd6感染のより高いレベルと一致する(
図12)。1匹のAd657動物は、3日目の出血後に失われた。6日目までに、Ad6動物のほとんどが瀕死となった(
図10A)。対照的に、Ad657動物の50%は、処置の2週間を超えて生存した。
【0184】
ヒトDU145前立腺腫瘍に対するAd6およびAd657の腫瘍溶解活性を比較するために、ヌードマウスにDU145細胞をs.c.で移植した。動物を、平均200μLの類似の腫瘍サイズを有する群に割り当て、そして9匹のマウスの群を、3×10
10vpの用量のAd6またはAd657で、i.v.経路によって単回処置した(
図11)。
【0185】
Ad6およびAd657のこの単回i.v.注射は、PBS注射されたコントロール動物と比較した場合に、腫瘍サイズを減少させた。腫瘍は、PBS群と比較した場合、7日以内のAd6群において有意に小さかった(Tukeyの多重比較検定と二元配置ANOVAによりp<0.05)。Ad657群における腫瘍は、14日目までにPBS群における腫瘍と有意に異なっていた(ANOVAによりp<0.01)。Ad6およびAd657は両方とも、38日目までPBSとの有意差を維持した(二元配置ANOVAによりp<0.0001)。PBS群において最初の動物を犠牲にしなければならなかった38日目にこの比較は終了したが、なぜなら、以降の比較は動物数の変化のために歪められるであろうからである。Ad6群とAd657群における腫瘍サイズは、Ad657が二元ANOVAにより有意により高い腫瘍体積を有していた(p<0.05)38日目までは有意差がなかった(
図11A)。Ad6とAd657腫瘍サイズ間のこの差は、52日目まで持続し(T検定によりp=0.04)、その後、この時以後は、腫瘍は有意に相違しなかった。
【0186】
原因を問わない生存率を評価すると、Ad6およびAd657は両方とも、PBS処置動物と比較した場合に生存が有意に延長された(
図11B、ログランク分析により、それぞれp<0.01および0.05)。原因を問わないAd6生存率は、Ad657より有意に良好であった(p<0.05)。しかしながらこれは、全てに起因する生存率のアーティファクトであった。なぜなら、Ad657動物のうち3匹は、過剰な腫瘍サイズによるためではなく、腫瘍上の皮膚に潰瘍が形成されたために、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のガイドラインに従って屠殺しなければならなかったからである。一部の場合には、潰瘍形成が実際には有効な腫瘍制御と関連している。Ad6のように、GFP-ルシフェラーゼを発現するAd657は、単回i.v.注射後に遠隔DU145皮下腫瘍において有意なルシフェラーゼ活性を生じた(
図12および
図13)。このことから、Ad6およびAd657は両方とも、単回の全身治療後に前立腺腫瘍において腫瘍溶解効果を媒介できることが示唆される。
【0187】
この例は、Ad657が前立腺癌に対する局所または全身腫瘍溶解性ウイルス療法として使用し得ることを実証している。これらのデータは、腫瘍溶解性の種C Adでの血清型スイッチングの驚くべき効果も示している。
【0188】
Adの腫瘍溶解活性を、腫瘍細胞および/または癌性腫瘍において評価した。Ad6単回IV注射vsA549肺腫瘍細胞を評価し(
図28);Ad6単回IVまたは腫瘍内(IT)注射vsPanc1膵臓腫瘍を評価し(
図29)、免疫正常ハムスターにおけるAd6単回IV注射vs腎臓癌を評価した(
図30)。
【0189】
図38は、ヌードマウスのルシフェラーゼイメージングを示す。A)Ad6単回I.V.注射後1、4、7、14、28および42日目vs遠隔DU145前立腺腫瘍。B)LNCaP前立腺腫瘍を有するマウスへの増殖型Ad5-GFPLUCのI.V.注射後3、7および19日目。
【0190】
Ad6はIV注射後に遠隔の標的細胞に到達すると結論付けることができる。
【0191】
別の実施態様では、ヘキソンのHVR5に挿入されたペプチドライブラリー生成ペプチド12.51および12.52を伴うおよび伴わないルシフェラーゼを発現するAdを、示された細胞株、すなわちB16メラノーマおよびA549肺癌細胞上で、示された数のウイルス粒子(vp)でインキュベートし、ルシフェラーゼ活性を測定した。ペプチド修飾ヘキソンを有するAdによる癌細胞の感染の改善が示される(
図31)。
【0192】
ペプチド修飾ヘキソンを有するAdによる癌細胞の改善された感染。
【0193】
ヘキソンのHVR5に挿入されたペプチドライブラリー生成ペプチド12.51および12.52を伴うおよび伴わないルシフェラーゼを発現するAdを、示された肝細胞癌細胞株で、10
4vpの各ウイルスでインキュベートし、ルシフェラーゼ活性を測定した。ペプチド修飾ヘキソンを有するAdによる癌細胞の感染の改善が示される(
図32)。
【0194】
例7.アカゲザルにおける複製シングルサイクルアデノウイルスを用いた全身および粘膜免疫化によって生成される異なるHIV-1指向性の免疫応答(Divergent HIV-1 Directed Immune Responses)。
【0195】
ほとんどの遺伝子ベースのアデノウイルスワクチンは、複製欠損Ad(RD-Ad)ベクターであり、それらが複製してAd感染を引き起こすのを妨げるために、それらのE1遺伝子を欠失させている。ヘルパー依存性アデノウイルス(HD-Ad)は、全てのAd遺伝子を欠失しており、そしてまた複製欠損性である。E1欠失Adワクチンは、細胞に感染し、その1コピーの抗原遺伝子を送達し、そしてこの抗原の単一コピー(例えば、「1X」)を発現することができる。これらは安全であるが、導入遺伝子またはそれらの発現を複製しない。
【0196】
対照的に、E1+複製能を有するAd(RC-Ad)ワクチンは、同じ細胞に感染し、抗原遺伝子DNAを10,000倍に複製し、実質的により多くの抗原を産生し、そしてE1欠失ベクターよりも強い免疫応答を誘発することができる。RC-AdはRD-Adよりも強力であるが、複製能を有するAdは、ヒトにおいて明らかなアデノウイルス感染を引き起こす現実的なリスクを有し得る。
【0197】
導入遺伝子DNA複製を活用するが、アデノウイルス感染のリスクを回避するために、重要なウイルス後期タンパク質であるpIIIaに関する遺伝子の欠失を有するシングルサイクルAd(SC-Ad)ベクターが開発された(Crosbyら、2014. Virology 462-463:158-165; Crosbyら、2015 J Virol 89:669-675; Anguiano-Zarateら、2018 J Infectious Dis 218:1883-1889;およびCrosbyら、2017 Genes(Basel)8:E79)。SC-Adは、それらのE1遺伝子を保持して、そのゲノムを複製できるが、pIIIaの非存在によって感染性の子孫ウイルスの産生が阻止される。SC-Adはそれらのゲノムおよび導入遺伝子を、RC-Adと同様に複製する(10,000倍まで;Crosbyら、2014.Virology 462-463:158-165)。RC-およびSC-Adは、RD-Adベクターより多く導入遺伝子タンパク質を産生する(Crosbyら、2014. Virology 462-463:158-165)。SC-Adは、RD-AdまたはRC-Adのいずれよりも、より強固でより持続的な免疫応答を生成する(Crosbyら、2015 J Virol 89:669-675)。head-to-headの比較において、SC-Adは、インフルエンザウイルスに対して有意に高い抗体および良好な保護をもたらす(Crosbyら、2017 J Virol 91:e00720-16)。
【0198】
この研究では、アカゲザルを、クレードBエンベロープ配列(それらの抗体応答が中和範囲の拡大を受けた前後にHIV-1患者から得られた)を発現するSC-Adで免疫化した。アカゲザルを、単回全身性IM免疫化または単回粘膜鼻内(IN)免疫化により免疫化した。次いで、動物を、SC-6 Adを用いた同じ経路または代替経路によってブーストし、続いてタンパク質ブーストを行った。この例は、これらの種々のSC-Ad免疫化ストラテジーが、HIV結合、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および中和抗体の生成ならびに血液およびリンパ節中のT濾胞ヘルパー(pTfh)細胞を含む細胞性免疫応答に対するそれらの効果にどのように影響したかを記載する。
【0199】
HIV-1エンベロープタンパク質gp140を発現するシングルサイクルアデノウイルス。
【0200】
HIV患者VC10014(Malherbe et al., 2014 J Virol 88:12949-12967)からの抗体中和範囲の拡大におけるピークの前(G4)および直前(F8)に生じたクレードB gp160エンベロープ配列を免疫原として使用した。モチーフ最適化G4およびF8 gp160配列を、ヒトAd血清型6および57をベースとしてSC-Ad中に組換えた(例えば、Crosbyら、2014.Virology 462-463:158-165;Crosbyら、2015 J Virol 89:669-675;Anguiano-Zarateら、2018 J Infectious Dis 218:1883-1889;およびNguyenら、2018 Oncolytic Virotherapy 7:43-51を参照のこと)。Ebola糖タンパク質を発現するコントロールSC-Adも使用した。ウイルスをレスキューし、他に記載されるように精製した(例えば、Crosbyら、2014.Virology 462-463:158-165; Crosbyら、2015 J Virol 89:669-675;およびAnguiano-Zarateら、2018 J Infectious Dis 218:1883-1889を参照のこと)。
【0201】
SC-Adベクターにおいて使用されるHIVクレードB感染対象からクローニングされたエンベロープ遺伝子F8をモチーフ最適化し、部位特異的突然変異誘発により改変して、未切断の三量体gp140を発現させた。発現、精製、および抗原性の特徴付けの詳細は他に記載されている(例えば、Malherbeら、2014 J Virol 88:12949-12967を参照のこと)。
【0202】
インド起源の雌の成体アカゲザル(Macaca mulatta)を、特定の病原体を含まない繁殖コロニーにおいてテキサス大学MDアンダーソン癌センター(Bastrop TX)のMichael Keeling Center for Comparative Medicine and Researchで維持した。全ての動物の取り扱いは、Mayo Clinicおよびテキサス大学MDアンダーソン癌センターの方針および手順、Animal Welfare Act、PHS Animal Welfare Policyの規定、NIH Guide for Care and Use of Laboratory Animalsの指針に従って行った。
【0203】
アカゲザルをケタミンで麻酔し、2×1010ウイルス粒子(vp)の示したSC-Adワクチンで鼻内(IN)または筋肉内(IM)経路によって免疫化した。動物を、Adjuplex(商標)アジュバントと組み合わせた50μgの精製された三量体組換えF8 gp140で、他に記載されるようにIM経路によってブーストした(例えば、Malherbeら、2014 J Virol 88:12949-12967;およびHessellら、2016 J Immunol 196:3064-3078を参照のこと)。
【0204】
末梢静脈血液サンプルをEDTA中に採取した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離する前に、血漿を分離し、直ちに-80℃で保存した。PBMCを、Ficoll-Hypaque密度勾配で血液から調製した。唾液および膣スワブを、プロテアーゼ阻害剤を含有する1mlのPBSにWek-Cel Spearを用いて採取し、ボルテックスし、上清を、他に記載されるように2,000r.p.m.での遠心分離後に回収した (例えば、Kozlowskiら、1997 Infect Immun 65:1387-1394を参照のこと)。サンプルは、さらなる使用まで-80℃で凍結して保持した。
【0205】
抗原特異的IFN-γ産生細胞を検出するためのELISPOTアッセイ
フレッシュに単離されたPBMCを、F8 gp140タンパク質(1μg/mL)または熱不活性化Ad6(7.0X108vp/ウェル)のいずれかで刺激して、他で記載されている方法論(例えば、Neheteら、2017 Comp Med 67:67-78;Neheteら、2013 PLoS One 8:e79836;およびNeheteら、2017 J Am Assoc Lab Anim Sci 56:509-519を参照のこと)を用いた酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイによってIFN-γ産生細胞の数を決定した。簡単に述べると、PBMCのアリコート(105/ウェル)を、一次IFN-γ抗体で予めコーティングした96ウェルプレート(ポリビニリデンジフルオリドで裏打ちされたプレート、MAIP S 45、Millipore、Bedford、MA)のウェルにn=2で播種し、リンパ球をCon A、F8 gp140タンパク質または熱不活性化Ad6のいずれかで刺激した。37℃で30~36時間インキュベートした後、細胞を除去し、ウェルをPBSで十分に洗浄し、製造業者によって提供されるプロトコールに従って現像した。結果を、培地のみ(ネガティブコントロール)のウェル(n=2)を差し引いた後の105個のPBMCあたりのIFN-γスポット形成細胞(SFC)として表し、バックグランドの2倍を超え、5SFC/105PBMCを超える場合にポジティブとみなす。
【0206】
抗体ELISA法
HIV-1エンベロープ結合抗体力価を、他に記載されるように、F8 gp140またはSF162 gp140に対して規則的な間隔で採取された血漿サンプルにおいて測定した(Malherbeら、2014 J Virol 88:12949-12967;およびHessellら、2016 J Immunol 196:3064-3078)。
【0207】
中和アッセイ
HIV中和は、他に記載されるように、TZM-bl中和アッセイを用いて行った(Malherbeら、2014 J Virol 88:12949-12967;およびHessellら、2016 J Immunol 196:3064-3078)。全ての値は、ウイルスのみのウェルと比較して計算した。
【0208】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
CEM.NKR.CCR5.CD4+-Luc,標的細胞を、50ngのSHIVSF162P3で感染させ、そして他に記載されるように4日間培養した(例えば、Alpertら、2012 PLoS Pathog 8:e1002890を参照のこと)。各サンプルの2倍段階希釈液を、感染した標的に室温で20分間添加した。CD16-KHYG-1エフェクター細胞を、10:1のエフェクター対標的比で添加し、これらをさらに8時間インキュベートした。細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性をBio-Tekプレートリーダーで測定した。
【0209】
フローサイトメトリー
直腸およびリンパ節生検から採取した細胞を、0.2μgのgp140または培地単独と一晩、最後の4時間はGolgiPlug(商標)(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)の存在下で、インキュベートした。培養後、細胞を回収し、アカゲザルサンプルと交差反応するヒト抗体のパネルと共に氷上で45分間インキュベートした。パネルには以下の蛍光色素標識抗体が含まれていた:CD8(Qdot655)、α4β7(PE)およびCXCR5(PE)(全てNonhuman Primate Reagent Resourceから入手);CD69(BV737,クローンFN50)およびFoxP3(PECy5,クローン:PCH101)(eBioscience社から入手)、IL-21(BV421,クローン:3A3-N2.1)、CD45(BV786,D058-1283)およびCD3(クローンSP34-2,PE-Cy7標識)(全てBD Bioscience社(San Jose,CA)から入手);CD4(Pacific Blue,クローンOKT4)(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)から)。抗体の希釈は、製造業者の推奨に従って決定した。死細胞は、Invitrogen(Carlsbad,CA)から入手したlive-dead fixable dead cells stain kitを使用することによって排除した。続いて、細胞を2%FBSおよび2mM EDTAを含有するPBSで2回洗浄し、次いで固定化し、FoxP3 Fix/Perm Kit(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)で透過処理した。細胞内マーカーFoxP3およびIL-21を透過化バッファー中で染色した。コンペンセーションコントロール(OneComp eBeads、(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)およびfluorescence minus one(FMO)コントロールの両方を利用した。全てのサンプルをLSR Fortessa X-20アナライザー(BD Biosciences,San Jose,CA)上で収集し、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC,Ashland,Oregon)を用いて分析した。約2x105~1x106イベントをサンプルごとに収集した。
【0210】
SHIVSF162P3直腸チャレンジ
SHIVSF162P3ウイルスは、R157 harvest 3(3.16.12)から誘導された。このストックは、66ng/mlのP27含有量、Log約9.35のRNA含有量、インド起源のアカゲザルPBMCにおけるTCID50:1288/ml、およびTZM-bl細胞におけるTCID50:4.1×104/mlを有していた。ストックの1:300希釈1mlを使用した。これは、アカゲザルPBMCにおける4.3TCID50と、およびTZM-bl細胞における137TCID50と同等であった。この用量を週1回の直腸内(IR)チャレンジのために使用した。血漿サンプルを、Leidos Biomedical Research, Inc., Frederick National Laboratoryによって、SHIVウイルスRNAコピー数に関して分析した。10を超えるRNAコピーを有する動物を感染動物とみなし、その動物に感染させるのに必要なチャレンジの回数をカプラン・マイヤー生存分析のイベントとして用いた。いったん感染させた後は、当該動物はもうチャレンジされなかった。血漿中ウイルス量を、試験終了まで同じ方法で定期的にモニタリングした。
【0211】
組織におけるSHIVSF162P3のウイルス量
試験終了時に、PBMCおよび死後組織を採取した。PBMCおよび腸サンプルを、qPCRによってSHIVSF162P3ウイルスRNAについて分析した。Prism 7 Graphicalソフトウェアを全ての統計解析に使用した。
【0212】
HIV-1 gp160を発現するSC-Ad
クレードBエンベロープタンパク質配列(G4 gp160)を、HIV患者VC10014からの抗体中和範囲の拡大におけるピークの前および直前(F8 gp160)に同定した。これらのgp160配列を、強力なサイトメガロウイルスプロモーターの制御下でSC-Ad6およびSC-Ad657に挿入した(
図24A)。Ad57は、そのヘキソン超可変領域(HVR)およびそのE3免疫回避遺伝子においてバリエーションを有するAd6とほぼ同一である種CヒトAdである(
図24B)。大部分のAd中和抗体はAdのヘキソンHVRを標的とする(Pichla-Gollonら、2007 J Virol 81:1680-1689;およびSumidaら、2005 J Immunol 174:7179-7185)。これを考慮して、Ad6のHVRをAd57由来のものと置き換えて、Ad657と呼ぶキメラ種Cベクターを生成した。SC-Ad6およびSC-Ad657は両方とも、E1を含む全てのAd遺伝子を保持し、機能的なpIIIAおよびE3遺伝子を欠いている(
図24A)。従って、両SC-Adは、それらのゲノムを複製してgp160の発現を増幅することができるが、子孫のAdウイルスは生成しない。両ウイルスをレスキューし、293-IIIA細胞中で産生し、CsCl勾配で精製した。A549細胞に感染させるために使用した場合、両ベクターは、ウェスタンブロッティングによって決定されるように、gp160を産生した。
【0213】
種々のAdベクターが、全身性筋肉内(IM)経路によって、ならびに強制経口投与、経口腸溶性コーティングカプセル、鼻内(IN)および膣内(IVAG)を含む種々の粘膜経路によって、アカゲザルにおいて前もって試験された。小動物におけるIM、INおよびIVAG経路によるSC-Ad-G4の試験により、IVAG経路によるプライミングが無視できる程度の抗体応答を生成することが明らかとなった。対照的に、マウスおよびハムスターの両方においてIN免疫化は、強い抗体反応を生成した。これらのデータと、ヒトにおけるIVAG免疫化を実施することが困難である可能性を考慮し、その後のマカクを用いた試験では、粘膜免疫化経路としてIN経路を選択した。
【0214】
アカゲザルにおける単回粘膜および全身性免疫化
2x10
10vpのSC-Ad6-G4 Envを使用して、8匹の雌アカゲザルの群に、単回のIMまたはIN免疫化によってワクチン接種した(
図14)。この用量は比較的低く、INとIMの混合免疫化によって送達されるRC-Ad HIVエンベロープワクチンの最近の使用よりも約7.5倍低い。ネガティブコントロールベクター群を、エボラ糖タンパク質(gp)を発現するSC-Ad6でIN免疫化した。4週後、血漿サンプルを、F8 gp140に対するEnv結合抗体についてアッセイした(
図14)。これは、単回免疫化後のIM免疫化経路群において、有意に高いミッドポイント結合力価を示した(ANOVAによりp<0.01)。SF162中和抗体(NAb)力価もこの時点で上昇したが、個々の経路群に関して、ANOVAによる有意には至らなかった。
【0215】
4週目におけるSC-Ad6を用いたIM vs INブースト
1回のAd IM免疫化によって産生される抗アデノウイルス中和抗体は、異なる経路によるブースティングによって回避され得ることが報告された(Xiangら、2003 J Virol 77:10780-10789)。この経路コンセプトを検証して、マカクにおける同じAd血清型の再使用を可能にするために、各々のSC-Ad6で抗原刺激を受けた群を4匹の2群に分けた。これらを、それぞれ、IMまたはIN経路のいずれかによって、4週目に、代替F8 Envを発現するSC-Ad6でブーストした。このブーストの3週後に採取した血漿サンプルは、IM-IM群、IM-IN群およびIN-IM群によってプライム-ブーストされた動物において、ミッドポイント結合力価の上昇を示した。検出可能な抗体は、IN-IN群では観察されなかった(
図14)。
【0216】
13週目でのSC-Ad657ブースト
その後、前記動物を13週目に、G4 Envを発現するSC-Ad657での血清型スイッチングによってブーストした。以前のブーストにおけるのと同じ経路を使用した。15週目の力価により、IMで抗原刺激を受けた動物が350近い上昇したEnv結合力価を有するが、これらのレベルはコントロール群と有意差がないことが示された(
図14)。対照的に、IN-IM-IM群における抗体は、ベクターコントロールおよびIN-IN-IN群の両方より有意に高かった(p<0.01)。IN-IN-IN群は再び、3回の免疫化の後でさえEnv抗体を示さなかった。
【0217】
24週目における組換え三量体Envタンパク質ブースト
ほとんどのHIVワクチン研究は、タンパク質ブーストでAd免疫化を増強して、抗体反応を増幅する。例えば、最近の研究では、RD-Ad26ベクターが2回使用され、そしてアジュバント化gp140タンパク質で3回ブーストされた(Barouchら、2015 Science 349(6245):320-4)。このストラテジーがSC-Adワクチンを増強するかどうかを決定するために、SC-Ad-Env群の全てを、ADJUPLEX
(商標)アジュバントと混合した組換えF8三量体gp140タンパク質50μgでIM経路によりブーストした。F8三量体タンパク質は、全ての群において2桁の大きさでミッドポイント結合力価を増大させた(
図14)。初期のSC-Ad免疫化後にEnv結合抗体が検出されなかったにもかかわらず、このタンパク質免疫化はまた、他の群に匹敵するレベルまでIN-IN-INを増大させた。
【0218】
2回目のタンパク質ブースト後の血漿における結合および中和抗体
動物を38週目に2回目にタンパク質でブーストした。これは、40週目までにF8結合血漿抗体力価をほぼ10
5にまで増加させ、全ての群がコントロールと有意に異なるようになった(
図14)。Tier1A SF162ウイルスに対する中和抗体(NAb)力価は、40週目に100~10,000に上昇した(
図15)。Tier1BウイルスSS1196およびTier2 JRCSFウイルスに対するNAbは、力価がバックグラウンドレベルであったIN-IN-IN群の2匹の動物を除き、ほとんどの動物において100に増加した(
図15)。
【0219】
2回目のタンパク質ブースト後のADCC活性
40週目の血漿中の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性を、SHIV
SF162P3感染細胞に対して試験した。ADCC活性は一般に、少なくとも1回のIN粘膜SC-Ad免疫化を行った動物においてより高かった(
図16)。粘膜免疫化を受けた全ての動物は、SC-Ad-Ebolaコントロール動物よりも有意に高い最大%ADCCを有していた(IM-IN-IN、IN-IM-IMおよびIN-IN-INに関してそれぞれp<0.05、0.0001、0.0001)。50%のADCC力価によって比較した場合、IN SC-Adで抗原刺激を受けた群のみが、コントロールよりも有意に高いADCC活性を有していた(IN-IM-IMおよびIN-IN-IN群に関してANOVAによりp<0.05および0.001)。
【0220】
2回目のタンパク質ブースト後の、唾液および膣洗浄液における抗体反応
上記のデータにより、血漿中の全身性抗体応答をモニターした。唾液および膣洗浄サンプルを、40週にも採取し、これらの粘膜部位における抗体に関して測定した。唾液および膣洗浄液を、ELISAによってF8およびSF162 env結合についてアッセイした場合、SC-Ad-Ebola対照群を除いてほとんどの群でこれらの応答が観察された(
図25)。
【0221】
これらの粘膜抗体に対する局所的効果があると考えられる。ほとんどIN経路(IM-IN-INおよびIN-IN-IN)によりSC-Adで免疫化した動物において、結合抗体は免疫化のこの部位に近い唾液でより高かったが、より離れた膣部位ではより低かった(
図25)。ADCC活性をこれらの粘膜サンプルで測定した場合、これらの応答は非常に変動しやすかった(
図17)。これにもかかわらず、コントロール動物と比較した場合、IN-IN-IN群においてより高いADCC活性が観察された(ANOVAによりp<0.05)。
【0222】
1回のタンパク質ブースト後の全身性細胞性免疫応答
2回目のF8 Envタンパク質ブーストの直前に採取したサンプルにおいて、38週目のPBMCをELISPOTにより、Envに対するおよびアデノウイルスに対するT細胞に関してアッセイした。すべてのEnv免疫化動物は、それらのPBMCにおいてEnv特異的IFN-γ分泌細胞を有していた(
図18A)。Env特異的IFN-γ SFCのレベルは、少なくとも1回の粘膜免疫化を受けた動物において概して増加した。しかし、IFN-γ SFCは、それらをSC-Ad Ebolaで免疫化したコントロール動物と比較した場合、IN-IN-IN SC-Ad群でのみ有意に高いだけであった(ANOVAによりp<0.05)。抗Ad SFCは、この時点で抗Env SFCと比較した場合、全ての群において比較的低かった。
【0223】
2回目のタンパク質ブースト後の全身性細胞性免疫応答
40週目に、PBMCおよび鼠径リンパ節細胞を、ELISPOTによりEnv特異的IFN-γ SFCについてアッセイした(
図18B)。このタンパク質ブーストにより、PBMCおよびリンパ節において、Env特異的SFCが、Envで免疫化した全ての動物において類似したレベルに増加した。
【0224】
粘膜細胞輸送
40週目の直腸生検サンプルに関するフローサイトメトリーでは、直腸部位におけるα4β7 CD4およびCD8細胞について類似の数を示した(
図19A)。INで抗原刺激を受けた群の数が増加する傾向があったが、これらは有意には達しなかった。直腸組織における活性化CD69+CD4+細胞数は、群間で類似していた(
図19B)。同様に、この粘膜部位のFoxP3+CD4+細胞に関しても、明らかな差は認められなかった(
図19B)。
【0225】
抗原特異的Tfh細胞分布
CXCR5+IL-21+CD4+T濾胞ヘルパー(pTfh)細胞を、40週目に、PBMCおよびリンパ節サンプルで測定した(
図20)。IM経路のみによってAdおよびタンパク質により免疫化した動物は、他の群よりも、有意に高いPBMCにおける末梢Tfh(pTfh)細胞を有していた(
図20)。リンパ節では、Tfh細胞はコントロール群およびIMのみの群において最も低かった。対照的に、少なくとも1回のIN粘膜免疫化を受けた動物の約半数は、最後のタンパク質ブースト後にそれらのリンパ節において検出可能なTfhを有している(
図20)。
【0226】
SHIV
SF162P3を用いた直腸チャレンジ
免疫化されたマカクを、HIV分離株SHIV
SF162P3で直腸チャレンジした。4匹の免疫化されていないコントロール動物を研究に加え、それぞれの群を、NIHによって提供されたSHIV
SF162P3チャレンジストックの1:300希釈物1mLを直腸接種することによって毎週チャレンジした。このチャレンジは、アカゲザルPBMCにおける4.3TCID
50と、およびTZM-bl細胞における137TCID
50と同等であった。初回チャレンジ後、非免疫化コントロール群における2匹とIM-IM-IM群の2匹が感染した(
図21)。各々の混合経路群(IM-IN-INおよびIN-IM-IM)における1匹は、1回のチャレンジ後に感染した。IN-IN-IN群では、初回チャレンジ後に感染した動物はいなかった。血漿中のウイルス量から、エボラ群動物を除く全動物が、3回のチャレンジ後に高ウイルス量に達したことが示された(
図22B)。IN-IN-IN群における動物では、これらの高ウイルス量への到達が遅れた。
【0227】
チャレンジを継続するにつれて、7回のチャレンジ後に未感染のままであったエボラ群の1匹を除いて、全群における動物が感染した。Trim5αおよびMHC対立遺伝子をレトロスペクティブに調べた(表2)。この解析では、耐性Ebola群動物において明白な保護遺伝子は明らかにならなかった。ほとんどの動物は、それらを適度に保護している可能性のある対立遺伝子によって分類することはできなかったが、ほとんどの群は、これらの対立遺伝子のおかげで保護の可能性がより高い動物を少なくとも1匹有していた。IM-IM-IMおよびIN-IN-IN群における2/4匹の動物が、SIVsmmおよびおそらくSHIVSF162P3に対する先天的保護のより高い可能性を予測し得るTrim5aおよびMHC対立遺伝子を有していたことに注目すべきである(表2)。
【0228】
【0229】
動物を、それらをSC-Adを用いるIM経路またはIN経路のいずれで抗原刺激を受けたかどうかに基づいて群分けし、カプラン・マイヤー生存率を分析したところ、IMで抗原刺激を受けた8匹の動物の感染はコントロール動物の感染と類似していた(
図22A)。対照的に、粘膜IN経路によりSC-Ad-Envで抗原刺激を受けた8匹の動物では、感染がいくぶん遅れた。
【0230】
組織における死後のウイルス量
チャレンジ試験は、最初のチャレンジから9週後に終了した。PBMCおよび腸組織を単離し、RNAを精製し、SHIVウイルスゲノムについて評価した(
図22B)。死後PBMCは、種々のレベルのSHIVウイルスRNAを有しており、IM-IM-IM群におけるよりもIN-IN-IN群における方が若干低いレベルであった。結腸における平均ウイルスRNAは、IN-IN-IN群においてIM-IM-IM群よりも15倍低かった(
図23)。この差はANOVAでは有意に達しなかったが、両側T検定ではp値が0.0079であった。
【0231】
この例は、複製性SC-Adベクターが、HIV-1および他の感染性疾患に対するワクチン接種のための強固たるかつ安全なプラットフォームとして使用できることを実証している。SC-Adは、感染したヒト細胞において10,000倍まで抗原およびサイトカイン遺伝子を増幅することができる。ヒトにおけるHIV-1ワクチンとして現在試験されているRD-Adベクターによって媒介されるものよりもはるかに免疫応答が増幅される。HIVワクチンを、SC-Adベクター、例えば低い血清抗体保有率を有する組換えAdをベースとするSC-Adベクターを利用することによって、HIV抗原遺伝子を増幅するワクチンプラットフォームに移行させることができる。
【0232】
例8.C型肝炎ウイルス(HCV)抗原に対する免疫応答に関するIn Vivo細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ。
【0233】
CMVサイトメガロウイルス(CMV)糖タンパク質B(gB)cDNAまたはHCV抗原2.4を発現するAd657でマウスを免疫化した。同系細胞をHCVペプチドでパルスし、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した後、免疫化マウスに注射した。同種CTL活性(cognate CTL activity)がHCV中の標識細胞の消失によりHCVに対して観察されるが、CMV免疫化動物では観察されない(
図26)。
【0234】
例9.制限増殖型Ad(CRAd)。
【0235】
Ad6、Ad657およびそれらのバリアントにおける、当該ウイルスを制限増殖型Ad(CRAd)に変換するE1タンパク質における突然変異を含む、突然変異の概要を
図39および
図43に示す。これらは、それぞれp300およびpRBへの結合を遮断するdl1107および/またはdl1107を含む。
【0236】
図56は、野生型AdにおけるE1A、ならびにAdバリアントであるE1A dl1101、E1A dl1107およびE1A dl1101/1107のN末端アミノ酸配列を示す。
【0237】
また、CRAd、Ad-PBを生成するための、配列番号44の前立腺特異的プロモーターであるプロバシン-E1 DNA配列による、Ad E1プロモーターの置換を示す(
図55)。プロバシンプロモーターは、アンドロゲン依存性であるため、LNCaPのようなアンドロゲン感受性腫瘍では作動するが、DU145のようなアンドロゲン抵抗性腫瘍では作動しない。
【0238】
A549細胞を、示されたウイルス(vp/細胞)濃度で、示されたAd6またはAd657バリアントに感染させ、5日後にクリスタルバイオレット染色によって細胞生存率を測定した(
図40)。
【0239】
複製欠損Ad(RD-Ad)、Ad6、CRAd6-dl1101/dl1107またはCRAd6-PBによる非癌性細胞の殺傷。制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾(
図44)。
【0240】
複製能を有するAd5、Ad6、Ad657、および示されたCRAdにより癌性細胞が殺されることが、
図45において示される。制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾が示されている(
図44)。
【0241】
図46に示される結果は、乳癌細胞における制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示している。
【0242】
図47に示される結果は、前立腺癌および肺癌細胞における制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示している。
【0243】
マウスにおけるDU145腫瘍の成長に対する、複製能を有するAd6または示されたCRAdのin vivo効果。
図48は、ヒト前立腺腫瘍を有するマウスにおける単回静脈内注射後にin vivoで制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示す。
【0244】
DU145腫瘍を有するマウスの生存に対する、複製能を有するAd6または示されたCRAdのin vivo効果。
図49は、ヒト前立腺腫瘍を有するマウスにおける単回静脈内注射後にin vivoで制限増殖型Ad(CRAd)であるためのAd6およびAd657の修飾を示す。
【0245】
図51は、チンパンジーAdC68由来のより短いファイバーでのAd657の修飾が有効性を低下させることを実証している。
【0246】
一実施態様において、Ad6/56/6ウイルスは、Ad6由来のHVR1および7、ならびにAd657由来のHVR2~6を有する。
図52は、CRAd修飾の有無にかかわらず、Ad6/56/6ウイルスがヒト肺癌細胞を殺すことを示す。
【0247】
E3タンパク質に突然変異を含むAdバリアントによる腫瘍細胞の殺傷。免疫正常シリアンハムスターに皮下HaK腎臓癌腫瘍を移植した。これらが200μlの体積に達したとき、それらに、E3有りまたは無し(DE3)で、およびランダムNHS-PEG化有りでまたは無しで構築された示したAd6ウイルスを静脈内経路によって1回注射した。腫瘍サイズを経時的に測定した。データにより、全てのE3遺伝子を欠失させると、腫瘍溶解性ウイルスの効果が低下することが示される(Ad6-deltaE3-Luc対Ad6-Luc)(
図58)。
【0248】
Adファイバータンパク質は、初期の付着ステップを媒介する3つの一見同一のサブユニットの複合体である。天然のAd6ファイバータンパク質は、配列番号60に示されるアミノ酸配列を含み、CARに結合する。
【0249】
本発明のさらなる態様において、親Ad由来でない異なるファイバータンパク質を有するファイバー修飾組換えAdを生成した。異なるAd株由来のキャプシドタンパク質を含むCRAdを含む組換えAd、例えば、異種Ad35ファイバーポリペプチドまたはチンパンジーC68ファイバーポリペプチド、+/-K7ペプチドを含む組換えAdを作製した(
図62~69)。
【0250】
キメラAdであるAdF35ファイバーキメラは、配列番号61のアミノ酸配列を有し、Ad5およびAd6ファイバータンパク質より短く、ウイルスの標的をCD46に変える。
【0251】
配列番号62の配列を有するK7ファイバーを含むファイバー修飾組換えAdは、ウイルスの標的を、ヘパリン硫酸プロテオグリカンおよび細胞上の負電荷にする。
【0252】
配列番号63の配列を含む組換えキメラAd、すなわち6/FC68ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短く、CARに結合する。
【0253】
配列番号64の配列を含む組換えキメラAd、すなわち6/FC68-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短い。6/FC68-K7ファイバーはCARに結合し、標的がヘパリン硫酸および負電荷に変えられる。
【0254】
配列番号65の配列を含む組換えキメラAd、すなわち6/FC68-HI-K7ファイバーは、チンパンジーアデノウイルスC68由来のファイバータンパク質を有するキメラAdである。当該ファイバータンパク質は、Ad5またはAd6ファイバータンパク質より短い。6/FC68-HI-K7ファイバーはCARに結合し、標的がヘパリン硫酸および負電荷に変えられる。
【0255】
例10.アデノウイルスの血清型スイッチング。
【0256】
図41は、Ad治療サイクルを示す概略図である。一実施態様では、治療の過程にわたる異なるAdでの血清型スイッチングが例示される(
図41A)。
【0257】
腫瘍溶解性アデノウイルスの血清型スイッチング後の前立腺腫瘍標的化。
【0258】
側腹にDU145前立腺腫瘍を有するマウスを、Ad657またはCRAd657の単回静脈内(IV)注射により処置した。これらのマウスを、2度目に、GFPルシフェラーゼを発現する別のAd6腫瘍溶解性ウイルスまたはAd6-F35で処置し、ルシフェラーゼ活性をイメージングによって測定した。Ad6は、Ad6ヘキソンとCARを標的とするファイバーを有する。Ad6-F35は、Ad6ヘキソンとCD46を標的とするAd35ファイバーを有する。
図42は、肝臓のオフターゲット感染がより低い、腫瘍を標的とするウイルスによる血清型スイッチ腫瘍溶解に関する能力を示している。
【0259】
血清型スイッチングの別の例では、側腹にLNCaP前立腺腫瘍を有するマウスを、Ad657またはCRAd657の3e10のウイルス粒子(vp)を用いる単回の静脈内(IV)注射により処置した。これらのマウスを、5月後、2度目に、GFPルシフェラーゼおよびファイバーバリアントK7(7個のリジンを付加)、F35(Ad35ファイバーを有する)またはKKTK-C68(Ad6 KKTKフレキシビリティードメインの後に融合されたチンパンジーC68ファイバー)を発現する別のAd6/57/6腫瘍溶解性ウイルス3e10vpで処置した。KKTK-C68ウイルスはまた、ウイルス生産性を増強するために、付加されたコドン最適化E4 34K遺伝子を有する。ルシフェラーゼ活性を7日後にイメージングによって測定した。全てのAd6/57/6は、Ad6からのHVR1および7、ならびにAd57からのHVR2~6を有するヘキソンを有する。Ad6/57/6およびKKTK-C68は、CARを標的とするファイバーを有する。Ad6/57/6-F35は、CD46を標的とするAd35ファイバーを有する。K7は、ヘパリン硫酸プロテオグリカンの結合を含む細胞上の負電荷への結合を増加させる。
図70は、肝臓のオフターゲット感染がより低い、腫瘍を標的化するウイルスによる血清型スイッチ腫瘍溶解に関する能力を示している。
【0260】
非ヒト霊長類のワクチン接種中の血清型スイッチング。
【0261】
図14から25において、アカゲザルを、HIVエンベロープを発現する複製性シングルサイクルAd6で免疫化し、その後、HIVエンベロープを発現するシングルサイクルAd657での血清型スイッチングによってブーストした。これらの免疫化の後、各動物をエンベロープタンパク質でブーストした。それぞれの図は、適応抗体または細胞性免疫応答の生成、および動物がどのようにしてSHIV
SF162P3ウイルスによる直腸チャレンジを撃退したかを示す。
図14は、Ad657への変化が抗体応答の顕著な増加を生じさせた血清型スイッチの値を示す。
【0262】
例11.腫瘍溶解性癌ワクチン。
【0263】
BALB/cマウスを、元のままのE3を有し、ヒトホレート受容体αを発現するCRAd-657-dl1101/1107-FolRの10
10個のウイルス粒子で、またはPBSで、筋肉内経路により免疫化した。1回の免疫から2週間後に血清を採取し、検出のために抗IgM抗体を用いるELISA法により抗ホレート受容体α抗体に関して分析を行った(全ての抗体は、このタイプの免疫後の早期時点でIgMである)。データは、このCRAdによる既知の癌抗原ホレート受容体αに対する抗体の生成を示す。T検定によりp-0.07(
図53)。
【0264】
例12.腫瘍溶解活性に対するE3免疫回避遺伝子の影響。
【0265】
図57は、Adにおける異なるE3免疫回避遺伝子の概略図を示す。E3 19Kは感染細胞をT細胞およびNK細胞から保護する。RIDタンパク質は、死誘導性リガンド(FAS、TRAIL、TNFRおよびEGFR)から感染細胞を保護する。14.7Kは、感染細胞におけるアポトーシスの内因性活性化を阻害する。種CのAdはまた、adenovirus death protein(ADP)として知られる11.6Kも発現する。ADPの過剰発現は細胞死を加速させるが、全体的な細胞死は同等である。種49Kは、T細胞およびNK細胞上のCD46に結合し、これらの細胞のダウンレギュレーション、およびNK細胞によるクラスI MHC欠損細胞の効率の低い細胞殺傷をもたらす。
【0266】
図58は、E3 12.5Kの部分的欠失、およびE3 6.7K、19K、11.6K(ADP)、10.4K(RIDα)、14.5K(RIDβ)および14.7K遺伝子の全欠失が、これらの免疫回避遺伝子が腫瘍溶解性アデノウイルスに存在しない場合、腎臓癌の免疫正常ハムスターモデルにおいて、腫瘍溶解性の有効性を低下させることを示している。
【0267】
他の実施態様
本発明をその詳細な説明と組み合わせて説明してきたが、前記の説明は例示を意図し、添付の請求項の範囲によって定義される発明の範囲を限定しないことを意図することは理解されるべきである。他の態様、利点および修飾は、以下の請求項の範囲内にある。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.(a)第1のAd株からのAdキャプシドポリペプチドおよび(b)1種または複数の異なるAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドを含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記ヘキソンポリペプチドの少なくとも1つの超可変領域(HVR)が第1のAd株のHVRとは異なる、前記組換えアデノウイルス(Ad)。
2.前記の第1のAd株および前記の1種または複数の異なるAd株が血清型的に異なる、上記1に記載の組換えAd。
3.前記の第1のAd株がヒトAd6株であり、1つの第2のAd株がヒトAd57株である、上記1または2に記載の組換えAd。
4.1種または複数の異なるAd株からのキャプシドポリペプチドをさらに含み、当該キャプシドポリペプチドが、第1のAd株のキャプシドポリペプチドとは異なる、上記1~3のいずれか1つに記載の組換えAd。
5.1つまたは複数の標的化ポリペプチド、抗原性ポリペプチド、酵素、受容体またはリガンドをさらに含む、上記1~4のいずれか1つに記載の組換えAd。
6.前記標的化ポリペプチドが、配列番号1~41および配列番号46~47から選択されるアミノ酸配列を含む、上記5に記載の組換えAd。
7.アミノ酸置換および/またはアミノ酸修飾をさらに含み、前記のアミノ酸置換がシステインへの置換であり、前記のアミノ酸修飾がPEG化およびBAP化から選択される、上記1~6のいずれか1つに記載の組換えAd。
8.制限増殖型Ad(CRAd)である、上記1~7のいずれか1つに記載の組換えAd。
9.配列番号43、配列番号44または配列番号45のアミノ酸配列を含む、上記8に記載の組換えAd。
10.(a)第1のAd株からのヘキソンポリペプチドをコードするAdゲノムおよび(b)1種または複数の異なるAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドをコードする核酸を含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記ヘキソンポリペプチドの少なくとも1つの超可変領域(HVR)が第1のAd株のAdゲノムによってコードされるHVRとは異なる、前記組換えアデノウイルス(Ad)。
11.前記の第1のAd株および前記の1種または複数の異なるAd株が血清型的に異なる、上記10に記載の組換えAd。
12.前記の第1のAd株がヒトAd6株であり、1つの第2のAd株がヒトAd57株である、上記10~11のいずれか1つに記載の組換えAd。
13.1種または複数の異なるAd株からのキャプシドポリペプチドをさらに含み、当該キャプシドポリペプチドが、第1のAd株のキャプシドポリペプチドとは異なる、上記10~12のいずれか1つに記載の組換えAd。
14.標的化ポリペプチド、抗原性ポリペプチド、酵素、受容体またはリガンドをコードする1種または複数の核酸をさらに含む、上記10~13のいずれか1つに記載の組換えAd。
15.前記核酸が、配列番号1~41および配列番号46~47から選択されるアミノ酸配列を有する標的化ポリペプチドをコードする、上記14に記載の組換えAd。
16.アミノ酸置換および/またはアミノ酸修飾をさらに含み、前記のアミノ酸置換がシステインへの置換であり、前記のアミノ酸修飾がPEG化およびBAP化から選択される、上記10~15のいずれか1つに記載の組換えAd。
17.さらに別の修飾を含む上記10~16のいずれか1つに記載の組換えAdであって、制限増殖型Ad(CRAd)である、前記組換えAd。
18.配列番号43、配列番号44または配列番号45のアミノ酸配列をコードする核酸を含む、上記17に記載の組換えAd。
19.癌を有する哺乳動物を治療するための方法であって、前記哺乳動物に、上記1~18のいずれか1つに記載の組換えアデノウイルス(Ad)を投与することを含む、前記方法。
20.前記癌が、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、肝細胞癌、膵臓癌、腎臓癌、メラノーマ、脳腫瘍、結腸癌、リンパ腫、骨髄腫、リンパ性白血病および骨髄性白血病からなる群から選択される、上記19に記載の方法。
21.前記投与が全身投与を含む、上記19~20のいずれか1つに記載の方法。
22.全身投与が筋肉内、鼻内または静脈内投与を含む、上記21に記載の方法。
23.前記投与が局所投与を含む、上記19~22のいずれか1つに記載の方法。
24.前記局所投与が腫瘍内注射を含む、上記24に記載の方法。
25.癌の治療のための、上記1~18のいずれか1つに記載の組換えAdの使用。
26.(a)第1のAd株からのAdキャプシドポリペプチドおよび(b)1種または複数の異なるAd株からの少なくとも1つのヘキソンポリペプチドを含む組換えアデノウイルス(Ad)であって、前記ヘキソンポリペプチドの少なくとも1つの超可変領域(HVR)が第1のAd株のHVRとは異なる前記組換えアデノウイルス(Ad)の、癌の治療のための医薬としての使用。
【配列表】