(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法、これを用いて製造された軟骨再生用組成物、軟骨再生用組成物を用いた患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法及び患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールド
(51)【国際特許分類】
A61L 27/38 20060101AFI20230725BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20230725BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20230725BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20230725BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20230725BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61L27/38 200
A61K35/32
A61K35/35
A61K35/44
A61K38/39
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/34
A61L27/36 120
A61P19/04
(21)【出願番号】P 2021555016
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2020003376
(87)【国際公開番号】W WO2020184974
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0027705
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519134452
【氏名又は名称】ロキット ヘルスケア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソク ファン ユー
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0219182(US,A1)
【文献】特表2015-500031(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042049(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/083051(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151597(WO,A1)
【文献】Regeneration Mechanism of Full Thickness Cartilage Defect Using Combination of Freeze Dried Bovine Cartilage Scaffold - Allogenic Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells - Platelet Rich Plasma Composite (SMPC) Implantation,Journal of Biomimetics, Biomaterials and Biomedical Engineering,2017年,Vol. 31,pp 70-82,doi:10.4028/www.scientific.net/JBBBE.31.70
【文献】Characterization of adipose tissue-derived stromal vascular fraction for clinical application to cartilage regeneration,In Vitro Cell.Dev.Biol.-Animal,2015年,Vol.51,pp.142-150,DOI:10.1007/s11626-014-9814-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
A61P 19/00-19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)硝子軟骨(hyaline cartilage)を準備する段階;
B)前記硝子軟骨を凍結乾燥及び粉砕して凍結乾燥硝子軟骨パウダーを製造する段階;
C)自己脂肪組織から脂肪組織抽出物を製造する段階
であって、前記脂肪組織抽出物は、自己脂肪組織から分離された間質血管分画(stromalvascular fraction)を含む、前記段階;及び
D)前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー及び前記脂肪組織抽出物を含む軟骨再生用組成物を製造する段階を含
み、
前記C)段階は、
C1)2mm~3mmの細孔(pore)直径を有する第1フィルタを用いて自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;
C2)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を450μm~550μmの細孔(pore)直径を有する第2フィルタ、及び150μm~250μmの細孔(pore)直径を有する第3フィルタに順次的に通過させた後、その濾過物を収集して脂肪組織抽出物を収得する段階;及び
C3)前記粉砕された自己脂肪組織を25μm~75μm細孔(pore)直径を有する第4フィルタを通じてフィルタリングした後、前記第4フィルタに捕集された残余物を収集して脂肪組織抽出物を収得する段階;を含むことを特徴とする、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記D)段階は、生体用接合剤をさらに含んで混合することを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記生体用接合剤は、フィブリン糊、ゼラチン糊、シアノアクリレート系糊及びポリウレタン系糊からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項
2に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項4】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの濃度は、
軟骨再生用組成物1ml当たり0.005
g~0.1
gであることを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記間質血管分画の濃度は、前記軟骨再生用組成物1ml当たり10
5個~10
7個であることを特徴とする、請求項
1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記硝子軟骨は、施術対象と同種の硝子軟骨に由来したことを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記硝子軟骨は、肋軟骨(costal cartilage)に由来したことを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの粒径は、30μm以上300μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法。
【請求項9】
a)3Dスキャナを用いて欠損した軟骨部位の3次元データを収得し、3Dプリンタを用いてスキャフォールド用モールドを製造する段階;
b1)請求項
1に記載の方法により製造した凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物にフィブリノーゲンを混合して第1液を製造し、
b2)前記第1液を前記スキャフォールド用モールド内に塗布して第1層を形成する段階;
c)トロンビンを含む第2液を前記第1層上に塗布して第2層を形成する段階;及び
d)前記第1層及び前記第2層が反応して軟骨再生用スキャフォールドを形成する段階;を含むことを特徴とする、患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法。
【請求項10】
請求項1
に記載の方法により製造した凍結乾燥硝子軟骨パウダー
を人体注入用注射器に充填
する段階を含むことを特徴とする、軟骨再生用医療キット
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2019年3月11日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0027705号に基づく優先権の利益を主張し、その内容の全部は、本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法、これを用いて製造された軟骨再生用組成物、軟骨再生用組成物を用いた患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法及び患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドに関する。
【背景技術】
【0003】
人体で骨と骨が出会う蝶番部位は、硝子軟骨(hyaline cartilage)からなる関節軟骨(articular cartilage)が互いに触れ合って耐圧力と引張力を行使し、各関節は、滑液包(synovial capsule)が滑液(synovial fluid)を含んでいるため関節運動による摩擦力を減少させる形態を有する。
【0004】
関節軟骨の退行性変化の原因は、まだ糾明されていないが、軟骨細胞数の絶対的減少と軟骨細胞(chondrocytes)で起こる軟骨基質の合成と分解の不均衡が一つの原因として知られている。したがって、関節軟骨の退行性変化は、軟骨基質の分解によって軟骨強度とクッションとしての能力が減少する。
【0005】
従来の細胞治療剤は、移植された細胞が重力により一方向に集まるので、欠損部位に均等に分布しにくいという短所があり、細胞生着の困難があるので、軟骨欠損部の細胞再生を減少させる。また、自己軟骨細胞移植術及び幹細胞移植術の場合には、組織を抽出した後、培養過程を経て患者に適用するので、2回の手術が必要であり、約4週間の細胞培養期間又は操作を必要とする。また、移植された細胞が重力により欠損部位に均等に分布及び生着しにくく、硝子軟骨の分化でなく線維軟骨への分化が誘導されて、以後に軟骨がよく壊れる現象が生じるという問題がある。したがって、軟骨欠損部の細胞再生を効果的に行うことができる方法の開発が必要であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国特許公開第10-2017-0012099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法、これを用いて製造された軟骨再生用組成物、軟骨再生用組成物を用いた患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法及び患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを提供しようとする。また、前記軟骨再生用組成物を用いた軟骨再生用医療キットを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施状態は、A)硝子軟骨(hyaline cartilage)を準備する段階;B)前記硝子軟骨を凍結乾燥及び粉砕して凍結乾燥硝子軟骨パウダーを製造する段階;C)自己脂肪組織から脂肪組織抽出物を製造する段階;及びD)前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー及び前記脂肪組織抽出物を含む軟骨再生用組成物を製造する段階を含む、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の他の実施状態は、前記製造方法を用いて製造された軟骨再生用組成物を提供する。
【0010】
本発明のまた他の実施状態は、a)3Dスキャナを用いて欠損した軟骨部位の3次元データを収得し、3Dプリンタを用いてスキャフォールド用モールドを製造する段階;b)上記による凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物にフィブリノーゲンを混合して第1液を製造し、これを用いて前記スキャフォールド用モールド内に塗布して第1層を形成する段階;c)トロンビンを含む第2液を前記第1層上に塗布して第2層を形成する段階;d)前記第1層及び前記第2層が反応して軟骨再生用スキャフォールドを形成する段階;を含む、患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法を提供する。
【0011】
本発明のまた他の実施状態は、前記患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法を用いて製造された患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを提供する。
【0012】
本発明のまた他の実施状態は、前記軟骨再生用組成物が人体注入用注射器に充填されている軟骨再生用医療キットを提供する。
【0013】
本発明のまた他の実施状態は、前記軟骨再生用組成物を欠損した軟骨部位に注入する段階を含む欠損軟骨の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本出願による軟骨再生用組成物は、損傷軟骨の再生のための施術時に即席で容易に製造して適用できるという長所がある。具体的に、本発明による軟骨再生用組成物は、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いるので、常温で凍結乾燥硝子軟骨パウダーを保管しておき施術時に患者から脂肪組織由来間質血管分画を収得して即席で軟骨再生用組成物を製造することができる。
【0015】
本発明による軟骨再生用組成物は、患者オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールド又はこれを直接軟骨の欠損部位に注入して軟骨の再生を促進し得るという長所がある。
【0016】
本発明によるオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法は、手術室で患部の軟骨欠損部を3Dスキャニングして直ちにオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを製造することができるので、一回の手術過程を通じてスキャフォールドを移植することができるという長所がある。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、請求範囲及び図面を通じてより明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】比較例1による硝子軟骨組織及びこれをパウダー化した結果に対するイメージを示す。
【0019】
【
図2】実施例1による凍結乾燥された硝子軟骨組織及びこれをパウダー化した結果に対するイメージを示す。
【0020】
【
図3】比較例1及び実施例1による硝子軟骨パウダーの粒子サイズをそれぞれ調節して製造した結果を示す。
【0021】
【
図4】実験例1による4週及び12週後の結果を示す。
【0022】
【
図5】実験例2及び比較実験例によるMRI結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、任意の部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これは、任意の部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合をも含む。
【0024】
本明細書において、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0026】
本発明の一実施状態は、A)硝子軟骨(hyaline cartilage)を準備する段階;B)前記硝子軟骨を凍結乾燥及び粉砕して凍結乾燥硝子軟骨パウダーを製造する段階;C)自己脂肪組織から脂肪組織抽出物を製造する段階;及びD)前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー及び前記脂肪組織抽出物を含む軟骨再生用組成物を製造する段階を含む、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物の製造方法を提供する。
【0027】
本発明の一実施状態によると、前記硝子軟骨は、施術対象と同種又は異種の硝子軟骨に由来したものであってもよい。好ましくは、前記硝子軟骨は、施術対象と同種の硝子軟骨に由来したものであってもよい。具体的に、軟骨施術対象がヒトである場合、ヒトの硝子軟骨から抽出した硝子軟骨パウダーを用いることができる。また、軟骨施術対象が動物である場合、同じ種の動物の硝子軟骨から抽出した硝子軟骨パウダーを用いることができる。
【0028】
本発明の一実施状態によると、前記硝子軟骨は、肋軟骨(costal cartilage)に由来したものであってもよい。具体的に、前記軟骨再生用組成物を用いた施術対象がヒトである場合、前記硝子軟骨は、ヒトの肋軟骨に由来し得る。また、前記軟骨再生用組成物を用いた施術対象が動物である場合、前記硝子軟骨は、施術対象である動物と同種の肋軟骨に由来し得る。例えば、前記硝子軟骨は、市販されている同種異系の肋骨軟骨(allogenic costal cartilage)を用いることができる。
【0029】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、硝子軟骨を凍結乾燥した後、これを粉砕して収得することができる。又は、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、硝子軟骨を凍結乾燥すると同時に粉砕して収得することができる。前記凍結乾燥は、当業界で一般的に行われる凍結乾燥法を用いることができる。また、前記粉砕は、例えば、ボールミル法を用いて所望する直径の粒子に微分化することができる。前記硝子軟骨を粉砕する方法は、これに制限されるものではなく、目的とする直径の粒子を得ることができる方法であれば、制限なしに適用され得る。
【0030】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、前記軟骨再生用組成物が欠損した軟骨組織に適用される場合、軟骨再生用組成物に由来したインプラント又はスキャフォールドの支持体の構成要素となり得る。具体的に、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、生体接合剤により互いに結合されて欠損軟骨部位内でインプラント又はスキャフォールドを形成することができる。
【0031】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、別に温度、湿度などを調節せずに保管することができるという長所がある。このような凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いることによって、前記軟骨再生用組成物は、患者から脂肪組織抽出物を抽出した後直ちに製造できるという長所がある。すなわち、一般的な硝子軟骨パウダーの場合には、低温条件で保管しなければならないので、保管費用が発生することがあり、また、脂肪組織抽出物と混合するためには、適切な温度に上昇するまで待たなければならない場合が発生し得る。これに反して、本発明による軟骨再生用組成物は、凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いるので、上記のような問題点を解決することができるという利点がある。
【0032】
また、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、水分含量を最小化し、粒子サイズの均一度が非常に高く、粒子間の固まりを最小化することができるという長所がある。例えば、一般的な硝子軟骨を微分化する場合、硝子軟骨内の水分により粉砕が均一に行われないことがあり、また、粉砕した粒子間の固まりが発生して、これを用いた注射器又は(3D)プリンタのノズルが塞がるという問題があり得る。さらに、一般的な硝子軟骨パウダーは、固まった粒子により患部に適用時に均一な効果を発現できないか、副作用が発生することもある。
【0033】
前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、軟骨再生関連成長因子を排出して前記脂肪組織抽出物が軟骨細胞に分化することを誘導することができる。さらに、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーに含まれるタンパク質は、患部の軟骨再生が活発に行われるように助ける役目とすることができる。
【0034】
本発明の一実施状態によると、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの粒径は、30μm以上300μm以下であってもよい。前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの平均粒径が前記範囲内である場合、軟骨細胞の分化及び再生が効果的に行われるという長所がある。
【0035】
本発明の一実施状態によると、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの濃度は、0.005%(w/v)~0.1%(w/v)であってもよい。すなわち、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、前記軟骨再生用組成物1ml当たり0.005g~0.1gで含まれ得る。前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの濃度は、好ましくは、0.005%(w/v)~0.07%(w/v)、より好ましくは、0.005%(w/v)~0.03%(w/v)、最も好ましくは、0.007%(w/v)~0.03%(w/v)であってもよい。前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーの濃度が前記範囲内である場合、前記軟骨再生用組成物を用いて製造されたオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを製造して移植するか、前記軟骨再生用組成物を患部に注入してインプラントを形成するとき、軟骨細胞の生存性、軟骨細胞への分化及びモルフォロジーが最も良好に具現され得る。
【0036】
本発明の一実施状態によると、前記脂肪組織抽出物は、自己脂肪組織から分離された間質血管分画(stromal vascular fraction)を含むことができる。すなわち、前記脂肪組織抽出物は、前記脂肪組織由来間質血管分画(adipose tissue derived stromal vascular fraction)を含むことができ、これは、脂肪組織由来幹細胞(adipose derived stem cells)を含むことができる。好ましくは、前記脂肪組織由来間質血管分画は、脂肪組織由来幹細胞以外の他の細胞(例えば、脂肪細胞、赤血球細胞及び他の基質細胞など)及び細胞外基質物質を実質的に含まなくてもよく、より好ましくは、他の細胞及び細胞外基質物質を全く含まなくてもよい。
【0037】
前記脂肪組織抽出物の脂肪組織由来間質血管分画は、同種動物又は異種動物の脂肪組織から抽出したものであってもよい。具体的に、前記脂肪組織抽出物内の前記脂肪組織由来間質血管分画は、同種動物又は異種動物の脂肪組織から抽出したものであってもよい。好ましくは、前記脂肪組織抽出物は、自己由来脂肪組織から抽出したものであってもよい。より具体的に、前記脂肪組織抽出物は、施術対象である患者又は動物の脂肪組織を用いて抽出したものであってもよい。前記脂肪組織抽出物(又はこれに含まれた脂肪組織由来間質血管分画)は、脂肪組織から脂肪組織由来間質血管分画(SVF)と細胞外基質(ECM)などを微細クラスター(micro or nano SVF/ECM Cluster)の形態で抽出して収得することができ、必要に応じて、純粋な脂肪組織由来間質血管分画(SVF)と細胞外基質(ECM)を別に分離して用いてもよい。一例として、Tiss'you社のLipocellキットを用いて脂肪組織から抽出したもの又はnanofatとして知られている脂肪組織由来抽出物であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記脂肪組織由来間質血管分画は、当業界に知られている方法及び抽出キットなどを用いて得ることができる。
【0038】
本発明の一実施状態によると、前記C)段階は、
C1)2mm~3mmの細孔(pore)直径を有する第1フィルタを用いて自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;C2)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を450μm~550μmの細孔(pore)直径を有する第2フィルタ、及び150μm~250μmの細孔(pore)直径を有する第3フィルタに順次的に通過させた後、その濾過物を収集して脂肪組織抽出物を収得する段階;を含むことができる。
【0039】
本発明のまた他の実施状態によると、前記C)段階は、
C1)2mm~3mmの細孔(pore)直径を有する第1フィルタを用いて自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階;C2)前記繊維質が除去された自己脂肪組織を450μm~550μmの細孔(pore)直径を有する第2フィルタ、及び150μm~250μmの細孔(pore)直径を有する第3フィルタに順次的に通過させて自己脂肪組織を粉砕する段階;及びC3)前記粉砕された自己脂肪組織を25μm~75μmの細孔(pore)直径を有する第4フィルタを通じてフィルタリングした後、前記第4フィルタに捕集された残余物を収集して脂肪組織抽出物を収得する段階;を含むことができる。
【0040】
すなわち、前記脂肪組織抽出物は、前記第3フィルタを通過した濾過物を用いてもよく、又は前記第4フィルタに捕集された残余物を用いてもよい。
【0041】
前記C1)段階は、細孔の直径が相対的に大きい第1フィルタを用い、抽出された自己脂肪組織内の繊維質を除去する段階であってもよい。具体的に、前記C1)段階での前記第1フィルタは、ステンレス材質のシリンジフィルタであってもよい。具体的に、前記第1フィルタは、高強度のステンレス材質のフィルタ部を有しているため、前記自己脂肪組織から繊維質を効果的に分離させ得る。より具体的に、前記C1)段階は、前記第1フィルタの両端に注射器を装着した後、注射器のピストン運動を用いて抽出した自己脂肪組織を2回以上、具体的に、2~3回前記第1フィルタを通過させる段階であってもよい。前記C1)段階の場合、1次的に自己脂肪組織内の繊維質をフィルタリングして一層効果的で短時間内に自己脂肪組織の粉砕が行われるようにすることができる。
【0042】
前記C2)段階は、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を前記第2フィルタに通過させて自己脂肪組織を粉砕させ、その濾過物を前記第3フィルタに通過させて追加的に自己脂肪組織を粉砕する段階を含むことができる。
【0043】
本発明の一実施状態によると、前記C2)段階は、フィルタバッグ(filterbag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、これを外部圧力を加えてフィルタに通過させ、前記繊維質が除去された自己脂肪組織を粉砕する段階であってもよい。具体的に、前記C2)段階は、フィルタバッグ(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織を注入した後、外部からシリコンベラなどのような道具を用いて前記繊維質が除去された自己脂肪組織が第2及び第3フィルタを順次的に通過するようにして、自己脂肪組織が粉砕されるようにする段階であってもよい。
【0044】
本明細書において、フィルタバッグ(filter bag)は、柔軟なプラスチック素材の密閉された袋形状のフィルタキットであって、一側に注入口が具備され、他側に排出口が具備されて、フィルタにより内部空間が分画された形態であってもよい。
【0045】
前記C2)段階での第2フィルタ及び第3フィルタの一例は、Tiss'you社のLipocellキットのフィルタバッグを変形して用いることができる。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の目的に応じたフィルタを用いることができる。
【0046】
前記C2)段階でのように、漸次的に細孔直径が小さいフィルタを用いて自己脂肪組織を粉砕する場合、自己脂肪組織を微粉砕するための時間を大きく短縮することができ、脂肪組織抽出物内の細胞が高い細胞活性を維持することができる。具体的に、前記C2)段階を用いる場合、物理的な方法で脂肪組織を微粉砕するにもかかわらず、効果的に治療に効果的な脂肪組織及び活性細胞及び活性タンパク質を多量確保し得る長所がある。また、前記C2)段階を用いる場合、細胞外基質及び成長因子を最適の活性状態で収集可能であり、また、(3D)バイオプリンティングを実行し得る物性を持たせることができる。
【0047】
前記C3)段階は、前記C2)段階を通じて粉砕された自己脂肪組織を前記第4フィルタで濾過した後、前記第4フィルタに捕集される残余物を収集して、脂肪組織抽出物を収得する段階であってもよい。具体的に、前記C3)段階は、前記粉砕された自己脂肪組織を25μm~75μmの細孔(pore)直径を有する第4フィルタを通じて濾過した後、濾過物を除去して前記第4フィルタに捕集される残余物を収集して、脂肪組織抽出物を収得する段階であってもよい。具体的に、前記C3)段階は、前記第4フィルタで濾過された物質を捨て、前記第4フィルタに捕集される物質を収得する段階であってもよい。具体的に、前記C3)段階は、C2)段階を通じて粉砕された自己脂肪組織を生理食塩水と混合した後、前記第4フィルタを用いて濾過し、濾過される物質を分離して除去した後、前記第4フィルタに捕集される物質を脂肪組織抽出物として用いる段階であってもよい。前記濾過されて除去される物質は、過度に微粉砕されて細胞活性が落ちる脂肪組織、血液、生理食塩水などを含むことができ、これは、本発明で意図する軟骨再生活性を妨害し得るため除去され得る。
【0048】
前記C3)段階は、フィルタバッグ(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織及び生理食塩水を注入した後、前記第4フィルタで濾過される物質を除去する段階であってもよい。具体的に、前記C3)段階は、フィルタバッグ(filter bag)に前記繊維質が除去された自己脂肪組織及び生理食塩水を注入した後、適切な圧力を加えて前記粉砕された自己脂肪組織を前記第4フィルタで濾過する段階であってもよい。
【0049】
前記C3)段階での第4フィルタの一例は、Tiss'you社のLipocellキットのフィルタバッグを変形して用いることができる。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の目的に応じたフィルタを用いることができる。
【0050】
本発明によって製造される前記脂肪組織抽出物は、特に軟骨再生に必要な成長因子(growth factor)、活性細胞及び活性タンパク質などを豊富に含有することができる。また、前記脂肪組織抽出物を用いたバイオプリンティング組成物(例えば、第1液)は、バイオプリンティング過程でノズルが塞がれることがなく、さらに、適切な粘度を維持して一定の速度で噴出され得るので、精緻なバイオプリンティングが要求される皮膚再生シートの製造に適合する。
【0051】
また、前記脂肪組織抽出物は、迅速な時間内に成長因子活性細胞及び活性タンパク質などを最大に含有して抽出され得るので、一層効果的な治療が可能となる。
【0052】
本発明の一実施状態によると、前記間質血管分画の濃度は、前記軟骨再生用組成物1ml当たり105個~107個であってもよい。前記間質血管分画の含量が前記範囲内である場合、前記軟骨再生用組成物を用いて製造されたオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを製造して移植するか、前記軟骨再生用組成物を患部に注入してインプラントを形成するとき、軟骨分化能力及び軟骨再生能力が大きく向上し得る。
【0053】
前記間質血管分画は、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーとともに用いられることによって、軟骨細胞に分化され得る。これによって、前記軟骨再生用組成物を用いて製造されたオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを製造して移植するか、前記軟骨再生用組成物を患部に注入してインプラントを形成するとき、患部から軟骨細胞への分化が活発に誘導され得る。
【0054】
本発明の一実施状態によると、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー5mg~100mgに対して、前記間質血管分画の個数は、105個~107個であってもよい。好ましくは、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー5mg~70mgに対して、前記間質血管分画の個数は、105個~107個であってもよい。より好ましくは、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー5mg~30mgに対して、前記間質血管分画の個数は、105個~107個であってもよい。
【0055】
本発明の一実施状態によると、前記D)段階は、生体用接合剤をさらに含んで混合する段階であってもよい。
【0056】
本発明の一実施状態によると、前記生体用接合剤は、フィブリン糊、ゼラチン糊、シアノアクリレート系糊及びポリウレタン系糊からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。具体的に、前記生体用接合剤は、フィブリン糊及び/又はゼラチン糊であってもよく、より具体的に、フィブリン糊であってもよい。
【0057】
前記生体用接合剤としてフィブリン糊を適用する場合、前記軟骨再生用組成物は、生体用接合剤としてフィブリノーゲンを含み、トロンビンを含む別の組成物とともに用いられ得る。具体的に、フィブリノーゲンを含む前記軟骨再生用組成物をスキャフォールドを製造するために塗布した後にトロンビンを含む組成物を用いてスキャフォールドに固形化することができる。又は、フィブリノーゲンを含む前記軟骨再生用組成物を欠損した軟骨部位に注入し、トロンビンを含む組成物を用いてこれを固形化して欠損領域内でインプラントを形成することができる。
【0058】
本発明の一実施状態によると、前記軟骨再生用組成物は、フィブリノーゲンを含み、また、アプロチニンをさらに含むことができる。前記アプロチニン(aprotinin)は、膵臓から分泌されるプロテイン分解酵素の抑制剤として、合計58個のアミノ酸からなるポリペプチドである。主に、ウシの肺から抽出され、血液中ではフィブリンの分解を阻止して、止血作用をすることが知られている。
【0059】
本発明の一実施状態によると、前記フィブリノーゲンは、前記軟骨再生用組成物1ml当たり65mg~115mgで含まれ得る。
【0060】
本発明の一実施状態によると、前記アプロチニンは、前記軟骨再生用組成物1ml当たり900KIU~1,100KIU(kininogen Inactivator Unit)、具体的に、1000KIUで含まれ得る。
【0061】
具体的に、本発明の一実施状態によると、前記軟骨再生用組成物は、1ml当たり、105個~107個の脂肪組織由来間質血管分画、5mg~100mgの凍結乾燥硝子軟骨パウダー、65mg~115mgのフィブリノーゲン及び900KIU~1,100KIUのアプロチニンを含むことができる。
【0062】
本発明の一実施状態によると、前記トロンビンを含む組成物は、塩化カルシウム溶液内にトロンビンが分散されたものであってもよい。具体的に、前記トロンビンを含む組成物は、1ml当たり、400IU~600IUのトロンビン、5mg~6.5mgの塩化カルシウムを含むことができる。
【0063】
前記軟骨再生用組成物及びトロンビンを含む組成物の溶媒は、水、具体的には、生理食塩水であってもよい。また、前記軟骨再生用組成物内のフィブリノーゲンと前記トロンビンを含む組成物内のトロンビンは、常用のフィブリン糊キットを通じて入手することができる。
【0064】
本発明の他の実施状態は、前記製造方法を用いて製造された軟骨再生用組成物を提供する。
【0065】
本発明のまた他の実施状態は、a)3Dスキャナを用いて欠損した軟骨部位の3次元データを収得し、3Dプリンタを用いてスキャフォールド用モールドを製造する段階;b)上記による軟骨再生用組成物にフィブリノーゲンを混合して第1液を製造し、これを用いて前記スキャフォールド用モールド内に塗布して第1層を形成する段階;c)トロンビンを含む第2液を前記第1層上に塗布して第2層を形成する段階;d)前記第1層及び前記第2層が反応して軟骨再生用スキャフォールドを形成する段階;を含む、オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法を提供する。
【0066】
a)段階は、当業界に知られている3Dスキャナ装備及び3Dプリント装備を用いることができる。また、前記スキャフォールド用モールドは、前記第1液及び第2液の塗布時に立体的形態を固定できるようにする役目をすることができる。前記スキャフォールド用モールドは、前記軟骨再生用スキャフォールドの形成後に除去され得る。前記スキャフォールド用モールドは、当業界において一般的に用いられる生体適合性高分子を用いて形成され得る。
【0067】
本発明の一実施状態によると、b)段階及びc)段階は、インクジェットプリンティング又は3Dプリンティングを用いて行われ得る。具体的に、b)段階及c)段階は、当業界に知られている2以上のノズルを有するプリンティング装置を用いることができ、それぞれのノズルから前記第1液及び第2液をそれぞれ吐出して立体形状を作ることができる。
【0068】
本発明の一実施状態によると、b)段階及びc)段階は、2回以上交互に繰り返し行われ得る。具体的に、体積が大きい軟骨再生用スキャフォールドの形成が必要な場合、b)段階及びc)段階が交互に行われ、「第1層/第2層/第1層/第2層」のように積層された後に凝固して軟骨再生用スキャフォールドが形成され得る。
【0069】
本発明の一実施状態によると、d)段階は、10分以内に完了し得、好ましくは、5分以内に完了することができる。具体的に、d)段階は、3分~7分間反応して前記第1層及び前記第2層が反応し、軟骨再生用スキャフォールドを形成する段階であってもよい。
【0070】
本発明は、フィブリノーゲン及びフィブリンで構成されるフィブリン糊を接着剤として用い、これは、ヒアルロン酸接着剤又はコラーゲン接着剤より高い粘性を確保することができるので、前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドは、患部との優れた接着力を有し、ひいては、高い強度を維持することができる。
【0071】
本発明のまた他の実施状態は、前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドの製造方法を用いて製造されたオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを提供する。
【0072】
前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドは、上述したように、短時間内に欠損した軟骨領域に対応する形状で製造して移植され得る。前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドは、細胞のための培養過程を必要とせず、移植後に前記スキャフォールド内の脂肪組織由来間質血管分画は、軟骨細胞に分化され、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、軟骨の再生を活性化させ、再生された軟骨細胞の生存率を高めることができる。
【0073】
前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドは、患部に移植される場合、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダーから分泌される硝子軟骨成長因子及びタンパク質により軟骨(具体的には、膝軟骨)本然の硝子軟骨が再生されるように誘導することができる。これを通じて、前記オーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドが患部に適用される場合、効果的に従来の軟骨と同一又は類似した状態に回復され得る。
【0074】
本発明のまた他の実施状態は、前記軟骨再生用組成物が人体注入用注射器に充填されている軟骨再生用医療キットを提供する。具体的に、前記軟骨再生用医療キットは、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー、前記脂肪組織由来間質血管分画及び前記生体用接合剤を含む軟骨再生用組成物が注射器に充填されているものであってもよい。
【0075】
また、前記軟骨再生用医療キットは、前記凍結乾燥硝子軟骨パウダー、前記脂肪組織由来間質血管分画及びフィブリノーゲンを含む軟骨再生用組成物が充填されている第1注射器;及びトロンビンを含む組成物が充填されている第2注射器;を含むことができる。上述したように、前記第1注射器を用いて欠損軟骨部位に前記軟骨再生用組成物を注入した後、第2注射器のトロンビンを含む組成物を注入して欠損軟骨部位にインプラントを形成することができる。
【0076】
本発明のまた他の実施状態は、前記軟骨再生用組成物を欠損した軟骨部位に注入する段階を含む欠損軟骨の治療方法を提供する。前記欠損軟骨の治療方法は、上述した軟骨再生用医療キットを用いて行われ得る。
【0077】
従来の自己脂肪組織移植術及び幹細胞移植術の場合、患者の欠損した軟骨領域の組織を抽出するために患部を1次切開した後、前記組織の培養過程を経て患部に移植するための2次切開が必要であるため、2回の手術過程が必要であるという問題があった。これに反して、本発明で提示するオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールド及び軟骨再生用医療キットを用いた欠損軟骨の治療方法は、1次切開を通じて欠損した軟骨領域を確認した後、短時間内に欠損した軟骨領域に対応するスキャフォールドを製造して欠損した軟骨領域に移植するか、直接欠損部位に注入してインプラントを形成することができるという長所がある。
【0078】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例により詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形され得、本発明の範囲が下で記述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0079】
<比較例1>一般的な硝子軟骨パウダーの製造
【0080】
収得した硝子軟骨組織を別の加工なしにスライス処理した後、ボールミルを用いてパウダー化した。
【0081】
図1は、比較例1による硝子軟骨組織及びこれをパウダー化した結果に対するイメージを示した図である。
図1によると、別の凍結乾燥を行わず硝子軟骨をパウダー化する場合、内部水分により固まりが発生することが確認できる。
【0082】
<実施例1>凍結乾燥硝子軟骨パウダーの製造
【0083】
収得した硝子軟骨組織をスライス処理した後、約5barの圧力、約-80℃の温度及び真空に近い雰囲気下で凍結乾燥を約12時間の間行った後、これをボールミルを用いてパウダー化した。
【0084】
図2は、実施例1による凍結乾燥された硝子軟骨組織及びパウダー化した結果に対するイメージを示した図である。
図2によると、
図1とは異なり、硝子軟骨パウダーが固まらず非常に微細な粒子に粉砕されたことが確認できる。
【0085】
すなわち、比較例1のように製造された硝子軟骨パウダーの場合、固まり現象によって別の分散過程が必要であるという問題が発生することがあり、プリンタのノズルが塞がる現象が発生し得るという問題点があり、また、比較例1のように製造された硝子軟骨パウダーは、約-20℃で冷凍保管しなければならない不便さが存在する。これに反して、実施例1のように製造された凍結乾燥硝子軟骨パウダーの場合には、製造した後に常温で保管しても問題点が発生せず、これを通じて、患者治療時に解凍する過程を省略するすることができるので、適用の容易性が非常に高い。また、実施例1のように製造された凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、比較例1のように製造された硝子軟骨パウダーに比べて粒子サイズの均一性が非常に高いという長所がある。
【0086】
図3は、比較例1及び実施例1による硝子軟骨パウダーの粒子サイズをそれぞれ調節して製造した結果を示した図である。
図3によると、実施例1のような凍結乾燥硝子軟骨パウダーは、比較例1のような一般的な硝子軟骨パウダーに比べて粒子サイズの均一性が高いことが確認できる。
【0087】
<実験例1>凍結乾燥硝子軟骨パウダーの生体適合性実験
【0088】
実施例1のように製造された硝子軟骨パウダーの生体適合性及び再生能力を確認するために、実験用ラットの真皮に注入した後、4週及び12週後、H&E(Hematoxylin & Eosin)染色を通じて凍結乾燥硝子軟骨パウダーの細胞適合性結果を観察した。
【0089】
図4は、実験例1による4週及び12週後の結果を示した図である。具体的に、
図4によると、4週目以後に移植された凍結乾燥硝子軟骨パウダーの周辺に細胞が集まることが確認でき、12週目以後に凍結乾燥硝子軟骨パウダーの周辺に集まっていた細胞が新たな組織を形成することが確認できた。これを通じて、硝子軟骨を凍結乾燥しても組織内で炎症反応や再生能力低下の副作用が発生しないことが確認できた。
【0090】
<実験例2>軟骨再生(Cartilage Regeneration)有無の確認のための動物実験(In vivo実験)
【0091】
実験用ビーグルを麻酔した後、脂肪吸引術を用いて実験用ビーグルの腹部から70ml~150mlの吸入物を抽出し、約5分間放置した後、脂肪組織とともに混じって出る食塩水及び血液を沈めて沈殿物を除去して自己脂肪組織を取得した。
【0092】
その後、実験体の脂肪が入っている注射器と新しい注射器を細孔が2.4mmであるステンレスシリンジフィルタ(Adnizer、SKT-AN-2400、BSL)が含まれたコネクターの両方向注入口に装着し、ピストン運動により脂肪がフィルタを2~3回通過するようにして自己脂肪組織から繊維質を除去した。
【0093】
その後、繊維質が除去された脂肪を細孔直径が500μmであるPETフィルタが具備されたFilter bag(Adipose tissue processing device、Tiss'you)に注入してシリコンベラを用いてフィルタリングした。その後、細孔直径が200μmであるPETフィルタが具備されたFilter bag(Adipose tissue processing device、Tiss'you)を用い、500μmフィルタを通過した脂肪を同じ方法でフィルタリングした。その後、200μmフィルタを通過した脂肪を細孔直径が50μmであるPETフィルタが具備されたFilter bag(Adipose tissue processing device、Tiss'you)に同量の生理食塩水とともに注入し、生理食塩水とその他異物をフィルタリングしてフィルタに残余する脂肪組織抽出物を収得した。
【0094】
収得された脂肪組織抽出物と実施例1で製造された凍結乾燥硝子軟骨パウダー10mgを生理食塩水と混合した後、4℃で5分間1000rpmで遠心分離した後、生理食塩水の上層液を除去した。その後、フィブリノーゲンが混合されたアプロチニン液1mlと混合注射器(mix syringe)を用いて混合して第1液を準備し、トロンビンが分散された塩化カルシウム溶液1mlを第2液として準備した。
【0095】
実験用ビーグルの膝大腿部球関節を露出させ、ここに直径約6mm、深さ約2mmサイズの欠損(defect)領域を形成した。
【0096】
スキャフォールド用モールドを製造するために、3Dスキャナを用いて実験用ビーグルの欠損した軟骨部位の3次元データを収得し、これを基礎として3D Bio 3Dプリンタ(INVIVO、ROKIT)を用いて医療等級のPCL(polycaprolactone)外壁を出力した。その後、前記第1液と前記第2液をそれぞれ3D Bio 3Dプリンタ(INVIVO、ROKIT)を用いて前記スキャフォールド用モールド内に順次的に塗布した後、5分間固めて軟骨再生用スキャフォールドを製造した。
【0097】
実験用ビーグルの欠損領域にフィブリン糊(べリプラスト)を100μlを注入し、製造されたオーダーメード型軟骨再生用スキャフォールドを移植した後に手術部位を縫合した。
【0098】
その後、8週後及び12週後にMRIを用いて欠損部位の軟骨再生有無を確認した。実験例2の比較のために、同じ条件で実験用ビーグルの軟骨部位に欠損領域を形成した後、別の処理なしに縫合した比較実験例をともに行った。
【0099】
図5は、実験例2及び比較実験例によるMRI結果を示した図である。具体的に、
図5は、比較実験例(凍結乾燥硝子軟骨パウダー(-))及び実験例2(凍結乾燥硝子軟骨パウダー(+))の8週目及び12週目のMRI結果を示した図である。8週目結果の場合には、比較実験例及び実験例2の両方で明らかな回復効果が見られなかったが、12週目結果の場合には、実験例2で明らかな軟骨組織回復が確認できた。
【0100】
前記実験例2の結果を通じて、本発明による凍結乾燥硝子軟骨パウダーを用いた軟骨再生用組成物及びこれを用いた軟骨再生用スキャフォールドは、優れた軟骨再生効果があることが確認できる。
【0101】
以上、本発明内容の特定の部分を詳しく記述したが、当業界において通常の知識を有した者に、このような具体的技術は好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付した請求項とそれらの等価物によって定義されるはずである。