IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 楽天株式会社の特許一覧

特許7319420処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法
<>
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図1
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図2
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図3
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図4
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図5
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図6
  • 特許-処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-24
(45)【発行日】2023-08-01
(54)【発明の名称】処理システム、無人で飛行可能な航空機、及び粉塵状態推定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20230725BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230725BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230725BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20230725BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20230725BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64C39/02
B64D47/08
B64C13/20 Z
B64F1/36
G01C21/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022064418
(22)【出願日】2022-04-08
(62)【分割の表示】P 2020203268の分割
【原出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2022097504
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-04-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】田爪 敏明
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-191124(JP,A)
【文献】特開2015-125760(JP,A)
【文献】特開2019-018589(JP,A)
【文献】特開2006-220445(JP,A)
【文献】特開平07-260945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
B64U 10/00 - 80/86
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを備え無人で飛行可能な航空機を含む処理システムであって、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得する取得部と、
前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定する処理部と、
を含むことを特徴とする処理システム。
【請求項2】
センサを備え無人で飛行可能な航空機を含む処理システムであって、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得する取得部と、
前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定する処理部と、
を含むことを特徴とする処理システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記地面に堆積した砂の量が多いほど、未来において砂塵は多いという状態を推定することを特徴とする請求項に記載の処理システム。
【請求項4】
前記処理部による推定結果に基づいて、前記航空機を制御する制御部を更に含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記処理部による推定結果に基づいて、所定の飛行経路に沿って飛行中の前記航空機の飛行経路を変更させることを特徴とする請求項に記載の処理システム。
【請求項6】
前記処理部による推定結果に基づいて、所定の飛行経路に沿って飛行中の前記航空機の飛行経路を再設定する設定部を更に含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項7】
前記処理部による推定結果に基づいて、前記移動予定先のエリアにおいて前記粉塵を抑える液体を投下するか否かを判定する判定部を更に含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
無人で飛行可能な航空機であって、
センサと、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得する取得部と、
前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定する処理部と、
を備えることを特徴とする航空機。
【請求項9】
無人で飛行可能な航空機であって、
センサと、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得する取得部と、
前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定する処理部と、
を備えることを特徴とする航空機。
【請求項10】
センサを備える無人で飛行可能な航空機を含む処理システムにより実行される粉塵状態推定方法であって、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得するステップと、
前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定するステップと、
を含むことを特徴とする粉塵状態推定方法。
【請求項11】
センサを備える無人で飛行可能な航空機を含む処理システムにより実行される粉塵状態推定方法であって、
前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得するステップと、
前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定するステップと、
を含むことを特徴とする粉塵状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを備え無人で飛行可能な航空機を含むシステム等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人航空機が備えるセンサにより当該無人航空機の周囲の粉塵量を取得することが可能になっている。例えば、特許文献1には、無人航空機に搭載されるセンサにより取得された、周辺の粉塵量を座標ごとに評価し、当該無人航空機の周辺環境が滞空に適さないものに変化した場合に、適切な位置に無人航空機を移動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-191124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の従来技術では、センサにより無人航空機の周囲に発生した砂塵等の粉塵を直接検出することができる。しかし、無人航空機の飛行中に大量の粉塵が当該無人航空機の周囲に発生した場合、当該無人航空機が粉塵による影響を受ける場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、無人で飛行可能な航空機が粉塵による影響を受ける前に粉塵の状態を推定することが可能な処理システム、無人航空機、及び粉塵状態推定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項に記載の発明は、センサを備え無人で飛行可能な航空機を含む処理システムであって、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得する取得部と、前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定する処理部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、センサを備え無人で飛行可能な航空機を含む処理システムであって、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得する取得部と、前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定する処理部と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の処理システムにおいて、前記処理部は、前記地面に堆積した砂の量が多いほど、未来において砂塵は多いという状態を推定することを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システムにおいて、前記処理部による推定結果に基づいて、前記航空機を制御する制御部を更に含むことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の処理システムにおいて、前記制御部は、前記処理部による推定結果に基づいて、所定の飛行経路に沿って飛行中の前記航空機の飛行経路を変更させることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システムにおいて、前記処理部による推定結果に基づいて、所定の飛行経路に沿って飛行中の前記航空機の飛行経路を再設定する設定部を更に含むことを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の処理システムにおいて、前記処理部による推定結果に基づいて、前記移動予定先のエリアにおいて前記粉塵を抑える液体を投下するか否かを判定する判定部を更に含むことを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、無人で飛行可能な航空機であって、センサと、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得する取得部と、前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られる色の濃さに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の度合いを推定する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、無人で飛行可能な航空機であって、センサと、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得する取得部と、前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項に記載の発明は、無人で飛行可能な航空機であって、センサと、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得する取得部と、前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の発明は、センサを備える無人で飛行可能な航空機を含む処理システムにより実行される粉塵状態推定方法であって、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得するステップと、前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られる色の濃さに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の度合いを推定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、センサを備える無人で飛行可能な航空機を含む処理システムにより実行される粉塵状態推定方法であって、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリアを観測することで得られたセンシングデータであって、前記移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データを含む前記センシングデータを取得するステップと、前記センシングデータに含まれる前記画像データから得られた色の濃さと、当該色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデルとに基づいて、前記移動予定先のエリアにおける現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明は、センサを備える無人で飛行可能な航空機を含む処理システムにより実行される粉塵状態推定方法であって、前記航空機の飛行位置から前記センサにより当該航空機の移動予定先のエリア内の地面を観測することで得られたセンシングデータを取得するステップと、前記センシングデータに基づいて、前記地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態を特定し、当該特定された状態から前記移動予定先のエリアにおいて未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、無人で飛行可能な航空機が粉塵による影響を受ける前に粉塵の状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】飛行システムSの概要構成例を示す図である。
図2】UAV1の概要構成例を示す図である。
図3】制御サーバCSの概要構成例を示す図である。
図4】制御部23における機能ブロック例を示す図である。
図5】粉塵の状態とUAV1の高度との組ごとに設定された制御情報の一例を示す図である。
図6】粉塵の状態とUAV1の高度との組ごとに設定された制御情報の一例を示す図である。
図7】制御サーバCSの制御部23により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、飛行システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0028】
1.飛行システムSの構成及び動作概要
先ず、図1を参照して、無人で飛行可能な航空機を所定の目的のために飛行させる飛行システムSの構成及び動作概要について説明する。所定の目的の例として、例えば、運搬、測量、撮影、点検、監視等が挙げられる。図1は、飛行システムSの概要構成例を示す図である。図1に示すように、飛行システムS(処理システムの一例)は、大気中(空中)を飛行する無人航空機(以下、「UAV(Unmanned Aerial Vehicle )」と称する)1、運航管理システム(以下、「UTMS(UAV Traffic Management System)」と称する)2、及びポート管理システム(以下、「PMS(Port Management System)」と称する)3を含んで構成される。UAV1、UTMS2、及びPMS3は、通信ネットワークNWを介して互いに通信可能になっている。通信ネットワークNWは、例えば、インターネット、移動体通信ネットワーク及びその無線基地局等から構成される。なお、図1の例では、1つのUAV1を示すが実際には複数存在する。UTMS2とPMS3とは、1つの管理システムとして構成されてもよい。
【0029】
UAV1は、地上からオペレータによる遠隔操縦に従って飛行、または自律的に飛行することが可能になっている。UAV1は、無人で飛行可能な航空機の一例である。UAV1は、ドローン、またはマルチコプタとも呼ばれる。UAV1は、飛行中、自己の飛行位置からセンサにより移動予定先のエリア(以下、「移動先エリア」という)を観測する(以下、センシング(リモートセンシング)ともいう)。これにより得られたセンシングデータは、飛行システムSにおいて、UAV1の移動先エリアにおける粉塵の状態の推定に用いられる。ここで、粉塵とは、空中に舞う(浮遊する)塵状の粒子をいう。当該粒子が砂である場合、粉塵は砂塵(砂埃)ともいう。UAV1は、GCS(Ground Control Station)により管理される。GCSは、例えば、アプリケーションとして通信ネットワークNWに接続可能な操縦端末に搭載される。この場合、オペレータは、例えば、操縦端末を操作してUAV1を遠隔操縦する人である。或いは、GCSは、サーバ等により構成されてもよい。この場合、オペレータは、例えば、GCSの管理者、またはサーバが備えるコントローラである。
【0030】
UTMS2は、制御サーバCSを含む1以上のサーバ等を備えて構成される。UTMS2は、UAV1の運航を管理する。UAV1の運航管理には、UAV1の運航計画の管理、UAV1の飛行状況の管理、及びUAV1の制御が含まれる。UAV1の運航計画とは、UAV1の出発地点(飛行開始地点)から目的地点(または経由地点)までの飛行経路(予定経路)等を含む飛行計画である。飛行経路は、例えば、その経路上の緯度及び経度で表され、飛行高度を含んでもよい。UAV1の飛行状況の管理は、UAV1の航空機情報に基づいて行われる。UAV1の航空機情報には、少なくともUAV1の位置情報が含まれる。UAV1の位置情報は、UAV1の現在位置を示す。UAV1の現在位置とは、飛行中のUAV1の飛行位置である。UAV1の航空機情報には、UAV1の速度情報等が含まれてもよい。速度情報は、UAV1の飛行速度を示す。UAV1の制御には、UAV1の移動先エリアにおいて推定された粉塵の状態に基づく制御が含まれる。なお、UAV1の制御には、UAV1の飛行状況に応じてUAV1に対して情報及び指示を与えるなどの航空管制が含まれてもよい。
【0031】
PMS3は、1または複数のサーバ等により構成される。PMS3は、例えばUAV1の移動先エリア内の目的地点(または経由地点)に設置された離着陸施設(以下、「ポート」と称する)を管理する。ポートの管理は、ポートの位置情報及びポートの予約情報等に基づいて行われる。ここで、ポートの位置情報は、ポートの設置位置を示す。ポートの予約情報には、ポートを予約したUAV1の機体ID、及び到着予定時刻の情報等が含まれる。UAV1の機体IDは、UAV1を識別する識別情報である。なお、UAV1は、上記ポートのように整備された地点以外の地点(以下、「臨時着陸地点」という)に着陸する場合もある。かかる場合の例として、UAV1が飛行する空域の気象が急変(悪化)することなどにより正常な飛行を維持することが困難になった場合や、災害時などUAV1が救援物資を配送する場合などが挙げられる。UAV1の臨時着陸地点は、一般に、整備されたポートに比べて、より多くの砂塵が発生しやすい。
【0032】
1-1.UAV1の構成及び機能概要
次に、図2を参照してUAV1の構成及び機能概要について説明する。図2は、UAV1の概要構成例を示す図である。図2に示すように、UAV1は、駆動部11、測位部12、無線通信部13、撮像部14、及び制御部15等を備える。なお、図示しないが、UAV1は、水平回転翼であるロータ(プロペラ)、各種センサ、運搬される物品を保持する物品保持機構、粉塵を抑える水(液体の一例)を投下(散水)するための散水機構、及びUAV1の各部へ電力を供給するバッテリ等を備える。ロータは、水平回転翼であり、垂直方向の推進力を発生させる。UAV1は緊急着陸用のパラシュートを搭載する場合もある。また、UAV1はロータとともに固定翼を備える場合(例えば、垂直離着陸(VTOL(Vertical takeoff and landing))型ドローンである場合)もある。UAV1の飛行制御に用いられる各種センサには、気圧センサ、3軸加速度センサ、地磁気センサ、及び気象センサ等が含まれる。気象センサは、気象状態の監視に用いられる。各種センサにより検出された検出情報は、制御部15へ出力される。散水機構には、水を蓄えるタンク、及び水を投下するスプリンクラー等が備えられる。なお、粉塵を抑えるために水以外の液体が使用されてもよい。
【0033】
駆動部11は、モータ及び回転軸等を備える。駆動部11は、制御部15から出力された制御信号に従って駆動するモータ及び回転軸等により複数のロータを回転させる。測位部12は、電波受信機及び高度センサ等を備える。測位部12は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の衛星から発信された電波を電波受信機により受信し、当該電波に基づいてUAV1の水平方向の現在位置(緯度及び経度)を検出する。なお、UAV1の水平方向の現在位置は、撮像部14により撮像された画像データや上記無線基地局から発信された電波に基づいて補正されてもよい。さらに、測位部12は、高度センサによりUAV1の垂直方向の現在位置(高度)を検出してもよい。測位部12により検出された現在位置を示す位置情報は、制御部15へ出力される。
【0034】
無線通信部13は、通信ネットワークNWを介して行われる通信の制御を担う。撮像部14は、カメラ(2Dまたは3Dカメラ)等を備える。撮像部14は、カメラの画角に収まる範囲内の実空間を連続的に撮像する。撮像部14により撮像された画像データは、制御部15へ出力される。カメラは、UAV1の飛行制御のほか、センサとして、UAV1の移動先エリアのセンシングにも用いられる。ここで、移動先エリアとは、例えば、UAV1の現在位置から進行方向にあり、ある距離以上離れたエリアである。UAV1の飛行経路が設定されている場合、移動先エリアは当該飛行経路上にあり、UAV1が進行に応じて進行方向に移動する。当該距離は、例えばUAV1が粉塵の影響を受ける距離以上であることが望ましい。また、当該距離は、移動先エリアにおける粉塵の状態により変わりうる(例えば、当該距離は粉塵が多いほど長くなる)。また、移動先エリアのセンシングとは、例えば、UAV1を視点としてUAV1の移動先エリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方を観測(観察)することをいう。地面は平らであるとは限らず凹凸が形成されている場合もある。このようなセンシングに用いられるセンサとして、カメラ等の光学センサ(例えば、物体から反射された可視光線や赤外線を検出するセンサ)のほか、マイクロ波(電波)センサや超音波センサを適用することができる。なお、センシングにより得られたセンシングデータは、制御部15へ出力される。
【0035】
制御部15は、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性メモリ等を備える。制御部15は、例えばROMまたは不揮発性メモリに記憶されたセンシングプログラムに従い、UAV1の飛行中、カメラ等のセンサを用いて移動先エリアのセンシングを行う。このとき、制御部15は、センサにより検出可能な範囲を連続的に観測するとよい。なお、UAV1の飛行中、制御部15は、UAV1の機体IDとともに、UAV1の航空機情報を無線通信部13を介して、UTMS2へ定期的に送信する。移動先エリアのセンシングによりセンシングデータが得られた場合、制御部15は、UAV1の機体ID及び航空機情報とともに、無線通信部13を介して、当該センシングデータをサーバCSへ送信する。
【0036】
また、制御部15は、例えばROMまたは不揮発性メモリに記憶された制御プログラムに従ってUAV1の各種制御を実行する。各種制御には、離陸制御、飛行制御、着陸制御、散水制御、及び物品受け渡し制御が含まれる。飛行制御及び着陸制御においては、測位部12から取得された位置情報、撮像部14から取得された画像データ、各種センサから取得された検出情報、及び目的地点(経由地点または臨時着陸地点でもよい。以下同様)の位置情報等が用いられて、ロータの駆動制御、UAV1の位置、姿勢及び進行方向の制御が行われる。かかる飛行制御において、例えばUTMS2から取得される飛行計画情報(例えば、UAV1の飛行経路を示す)が用いられてもよい。なお、UAV1の自律的な飛行は、当該UAV1に備えられる制御部15が飛行制御を行うことによる自律飛行に限定されるものではなく、当該UAV1の自律的な飛行には、例えば飛行システムS全体として飛行制御を行うことによる自律飛行も含まれる。
【0037】
また、着陸制御は、例えばUTMS2またはGCSからの、当該移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令によっても行われる。例えば、制御部15(第2選択部の一例)は、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令に応じて、複数の異なる着陸方法のうち何れか1つの着陸方法を選択する。着陸方法の例として、(i)ロータの駆動制御によりUAV1を徐々に降下して着陸する方法(通常の着陸方法)、(ii)ロータの駆動を停止し、パラシュートを開くことにより着陸する方法(UAV1がパラシュートを搭載する場合に限る)、(iii)ロータの駆動を停止し、固定翼で滑空飛行(例えば旋回しながら滑空飛行)することにより着陸する方法(UAV1が固定翼を備える場合に限る)が挙げられる。一方、散水制御は、例えば移動先エリアにおいて、例えばUTMS2またはGCSからの、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令によって行われる。例えば、制御部15は、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令に応じて、移動先エリアにおいて粉塵を抑える水を投下(散水)する。
【0038】
物品受け渡し制御では、例えば移動先エリアにおいて、物品保持機構に保持された物品がUAV1から人、UGV(Unmanned Ground Vehicle)、または他のUAV1へ目的地点で受け渡される(授受される)。物品受け渡し制御は、例えばUTMS2またはGCSからの、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令によっても行われる。例えば、制御部15(第1選択部の一例)は、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令に応じて、複数の異なる物品受け渡し方法のうち何れか1つの物品受け渡し方法を選択する。物品受け渡し方法の例として、(iv)物品の受け渡しのためにUAV1をホバリングさせた状態で例えばリールやウィンチ等を用いて物品を降下させる方法、(v)物品の受け渡しのために物品を投下(落下)させる方法、(vi)物品の受け渡しのためにUAV1を着陸させる方法が挙げられる。(iv)の物品受け渡し方法によれば、当該物品が地面に到達したとき、または地面から数mの高さに到達したときに当該物品が切り離されることで当該物品が受け渡される。一方、(vi)の物品受け渡し方法によれば、UAV1が着陸した後に物品が切り離されることで当該物品が受け渡される。なお、物品の切り離しは、当該物品を吊り下げたフックを自動で(つまり、制御部15からの制御信号により)開放することにより行われてもよいし、当該物品を吊り下げたフックを手動で(つまり、人により)開放するにより行われてもよい。
【0039】
1-2.制御サーバCSの構成及び機能概要
次に、図3及び図4を参照して制御サーバCSの構成及び機能概要について説明する。図3は、制御サーバCSの概要構成例を示す図である。図3に示すように、制御サーバCSは、通信部21、記憶部22、及び制御部23等を備える。通信部21は、通信ネットワークNWを介して行われる通信の制御を担う。記憶部22は、例えば、ハードディスクドライブ等を備える。記憶部22には、UAV1の機体ID、及びUAV1の航空機情報が対応付けられて記憶される。
【0040】
制御部23は、プロセッサであるCPU、ROM、RAM、及び不揮発性メモリ等を備える。図4は、制御部23における機能ブロック例を示す図である。制御部23は、例えばROMまたは不揮発性メモリに記憶されたプログラムに従って、図4に示すように、飛行経路設定部23a、センシングデータ取得部23b、推定処理部23c、散水判定部23d、及び航空機制御部23e等として機能する。なお、飛行経路設定部23aは設定部の一例である。センシングデータ取得部23bは取得部の一例である。推定処理部23cは処理部の一例である。散水判定部23dは判定部の一例である。航空機制御部23eは制御部の一例である。
【0041】
飛行経路設定部23aは、例えばUAV1またはGCSから飛行計画申請があった場合に、飛行計画申請に基づいて、UAV1の飛行経路を設定する。また、飛行経路設定部23aは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、所定の飛行経路(例えば、上記設定された飛行経路)に沿って目的地点へ向かっているUAV1の飛行経路を再設定する。例えば、飛行経路設定部23aは、UAV1の飛行経路上にある移動先エリアにおける粉塵の状態に基づいて、粉塵が多い空域を迂回する飛行経路を再設定する。なお、現在の飛行経路から高度を上げた飛行経路が再設定されてもよい。
【0042】
センシングデータ取得部23bは、UAV1が飛行中、UAV1の飛行位置からセンサにより当該UAV1の移動先エリアを観測することで得られたセンシングデータをUAV1の機体IDとともに、例えばUAV1またはGCSから取得する。センシングデータには、例えば、移動予定先のエリア内の空中と地面の少なくとも何れか一方の状態を表す画像データが含まれる。
【0043】
推定処理部23cは、センシングデータ取得部23bにより取得されたセンシングデータに基づいて、UAV1の移動先エリアにおける粉塵の状態を推定する。つまり、実際に粉塵が取り込まれてその量が検出されるのではなく、センシングデータの解析(例えば、画像解析)から粉塵の状態が推定される。ここで、粉塵の状態の例として、粉塵の度合い(レベル)、粉塵の量等が挙げられる。粉塵の度合いは、例えば、「多い」(レベル:高)、「中」(レベル:中)、「少ない」(レベル:低)というように段階的に表される(数値や記号等で表されてもよい)。粉塵の量は、例えば1m中に含まれる粉塵の質量で表される。
【0044】
また、推定される粉塵の状態には、現在の粉塵の状態と、未来の粉塵の状態とがある。現在の粉塵の状態とは、UAV1が目的地点に向けて飛行している時点(つまり、センシングデータが得られた時点)における粉塵の状態をいう。例えば、推定処理部23cは、センシングデータに含まれる画像データから得られる色の濃さに基づいて、現在の粉塵の状態として粉塵の度合い(例えば、色が濃いほど粉塵は多い)を推定する。また、推定処理部23cは、上記画像データから得られた色の濃さと、色の濃さと粉塵の質量の関係を示すモデル(例えば機械学習による学習済モデル)とに基づいて、現在の粉塵の状態として粉塵の量を推定する。
【0045】
一方、未来の粉塵の状態とは、UAV1が目的地点に向けて飛行している時点から所定時間後(例えば、5分~10分後)の時点における粉塵の状態をいう。所定時間後の時点は、例えば、UAV1が目的地点に到着する予定時刻である。例えば、推定処理部23cは、現在の粉塵の状態から所定時間後(例えば、5分~10分後)の粉塵の状態を予測することで未来に発生しうる粉塵の状態を推定する。現在の粉塵の状態から所定時間後の粉塵の状態は、例えば所定時間後の気象予報(例えば、天候、風向き等)に基づき予測されるとよい。
【0046】
また、推定処理部23cは、移動先エリア内の地面(例えば、目的地点付近の地面)が観測されることで得られたセンシングデータに基づいて、当該地面に堆積した砂の状態(例えば、砂の量または度合い)を特定し、当該特定された砂の状態から未来に舞う可能性のある砂塵の状態を推定してもよい。例えば、堆積した砂の量が多いほど、未来において砂塵は多いという状態が推定される。これは、地面に堆積した砂の量が多いほど、UAV1が降下する際に推進力により発生する風によって砂塵が舞う量が多くなるためである。
【0047】
散水判定部23dは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、UAV1の移動先エリアにおいて粉塵を抑える水を投下するか否かを判定する。例えば、散水判定部23dは、推定処理部23cにより、未来の粉塵の状態として粉塵が多いと推定された場合、水を投下すると判定する。
【0048】
航空機制御部23eは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、飛行中のUAV1を制御する。かかる制御は、例えば、UAV1または当該UAV1を管理するGCSに対して、移動先エリアにおける粉塵の状態に基づく制御指令を送信することで行われる。例えば、航空機制御部23eは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、飛行中のUAV1の飛行制御、散水制御、着陸方法の選択制御、または物品受け渡し方法の選択制御を行う。
【0049】
例えば、飛行制御において、航空機制御部23eは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、飛行経路設定部23aにより飛行経路が再設定された場合、所定の飛行経路に沿って飛行中のUAV1の飛行経路を変更させる。これにより、UAV1を、粉塵による影響を受けにくい飛行経路に沿って飛行させることができる。なお、飛行経路設定部23aにより飛行経路が再設定されない場合であっても、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより、現在の粉塵の状態として粉塵が多いと推定された場合に、所定の飛行経路に沿って飛行中のUAV1の飛行経路を変更させてもよい。
【0050】
また、散水制御において、航空機制御部23eは、散水判定部23dにより水を投下すると判定された場合、水を投下するようにUAV1を制御する。また、着陸方法の選択制御において、航空機制御部23eは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、複数の異なる着陸方法のうち何れか1つの着陸方法を選択させる。これにより、推定された粉塵の状態に応じて適切な着陸方法を選択することができる。例えば、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより、未来の粉塵の状態として粉塵が多いと推定された場合、上述した(ii)または(iii)の着陸方法を選択させる。
【0051】
また、物品受け渡し方法の選択制御において、航空機制御部23eは、推定処理部23cによる推定結果に基づいて、複数の異なる物品受け渡し方法のうち何れか1つの物品受け渡し方法を選択させる。これにより、推定された粉塵の状態に応じて適切な物品受け渡し方法を選択することができる。例えば、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより、現在の粉塵の状態として粉塵が多いと推定された場合、上述した(iv) または(v)の物品受け渡し方法を選択させる。
【0052】
なお、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより推定された粉塵の状態と、移動先エリア内でホバリング中のUAV1の高度とに基づいて、ホバリング中のUAV1を制御してもよい。この場合、粉塵の状態とUAV1の高度との組ごとに予め設定された制御情報が用いられる。図5及び図6は、粉塵の状態とUAV1の高度との組ごとに設定された制御情報の一例を示す図である。なお、図5及び図6の例では、粉塵の状態(粉塵の度合い)は、「多い」、「中」、及び「少ない」の3段階に区分され、UAV1の高度は、「高い」(例えば、100m以上)、「中」、「低い」(例えば、50m未満)の3段階に区分されているが、2段階または、4段階以上に区分されてもよい。
【0053】
図5の例では、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより粉塵が中と推定され、且つそのときのUAV1の高度が中と判定された場合、図5に示す制御情報1にしたがって、UAV1をホバリングさせた状態で待機(同じ高度で待機)させるか、或いはUAV1から物品を投下させる。また、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより粉塵が少ないと推定され、且つそのときのUAV1の高度が高いと判定された場合、図5に示す制御情報1にしたがって、UAV1を下降させる。そして、UAV1を下降させることによりUAV1の高度が中となったが、そのときの粉塵は変わらず少ないと推定された場合、航空機制御部23eは、UAV1をさらに下降させるか、或いはUAV1から物品を投下させる。一方、UAV1をさらに下降させることによりUAV1の高度が低いとなったが、そのときの粉塵は変わらず少ないと推定された場合、航空機制御部23eは、UAV1を着陸させる。
【0054】
一方、図6の例では、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより粉塵が中と推定され、且つそのときのUAV1の高度が中と判定された場合、図6に示す制御情報2にしたがって、UAV1をホバリングさせた状態でリールを用いて物品を降下させる。また、航空機制御部23eは、推定処理部23cにより粉塵が多いと推定され、且つそのときのUAV1の高度が低いと判定された場合、図6に示す制御情報2にしたがって、UAV1を上昇させる。そして、UAV1を上昇されることによりUAV1の高度が中となったが、そのときの粉塵は変わらず多いと推定された場合、航空機制御部23eは、UAV1をさらに上昇させる。一方、UAV1を上昇させることによりUAV1の高度が中となり、そのときの粉塵が低下して中と推定された場合、航空機制御部23eは、UAV1をホバリングさせた状態でリールを用いて物品を降下させる。
【0055】
2.飛行システムSの動作
次に、図7を参照して、飛行システムSの動作について説明する。図7は、制御サーバCSの制御部23により実行される処理の一例を示すフローチャートである。なお、制御対象となるUAV1の航空機情報が定期的に制御サーバCSにより受信されるものとする。
【0056】
図7に示す処理は、制御対象となるUAV1の飛行開始後に開始される。図7に示す処理が開始されると、制御部23は、所定の飛行経路に沿って飛行するUAV1が目的地点に到着したか否かを判定する(ステップS1)。目的地点への到着判断は、例えば、UAV1の位置情報と目的地点の位置情報とに基づき、UAV1の現在位置が目的地点の近傍範囲(例えば、数m)以内に入ったか否かを判定することにより行われる。制御部23は、UAV1が目的地点に到着していないと判定した場合(ステップS1:NO)、ステップS2へ進む。
【0057】
ステップS2では、制御部23は、UAV1が移動先エリアを観測すること(つまり、移動先エリアから離れた飛行位置からセンシング)により得られたセンシングデータを、通信部21を介して取得したか否かを判定する。制御部23は、センシングデータを取得したと判定した場合(ステップS2:YES)、ステップS3へ進む。一方、制御部23は、センシングデータを取得していないと判定した場合(ステップS2:NO)、ステップS4へ進む。
【0058】
ステップS3では、制御部23は、ステップS2で取得されたセンシングデータに基づいて、上述したように、UAV1の移動先エリアにおける粉塵の状態を推定する。例えば、現在の粉塵の状態と未来の粉塵の状態との双方が推定処理部23cにより推定される。推定された粉塵の状態を示す情報は、現在または未来の状態であるかを示す状態種別、及び推定時刻に対応付けられて時系列的に記憶部22に記憶される。
【0059】
ステップS4では、制御部23は、ステップS3における推定結果に基づいて、所定の飛行経路に沿って飛行中のUAV1の飛行経路を変更させるか否かを判定する。例えば、制御部23は、ステップS3で推定された現在の粉塵の状態(つまり、UAV1の飛行経路上にある移動先エリアにおける粉塵の状態)が第1基準レベル以上である場合、UAV1の飛行経路を変更させると判定し(ステップS4:YES)、ステップS5へ進む。
【0060】
なお、UAV1の飛行経路を変更させるか否かは、時系列で行われた複数回の推定結果に基づいて判定されてもよい。例えば、記憶部22に記憶された最も新しい粉塵の状態に対応付けられた推定時刻から過去所定時間(例えば、5分)遡った過去時点までに推定された複数回の粉塵の状態(最新の粉塵の状態を含む)の平均値(または最大値)が第1基準レベル以上である場合、UAV1の飛行経路を変更させると判定される。
【0061】
一方、制御部23は、ステップS3で推定された現在の粉塵の状態が第1基準レベル未満である場合、UAV1の飛行経路を変更させないと判定し(ステップS4:NO)、ステップS1に戻る。なお、ステップS4の判定時にまだ粉塵の状態が推定されていなければステップS1に戻る。
【0062】
ステップS5では、制御部23は、ステップS3における推定結果に基づいて、現在の粉塵の状態が第1基準レベル未満となる空域を通過する飛行経路を再設定する。例えば、粉塵が多い空域を迂回する飛行経路や、粉塵が少ない高度を飛行する飛行経路が再設定される。次いで、制御部23は、UAV1の現在の飛行経路を、ステップS5で再設定された飛行経路に変更させる制御指令をUAV1に対して送信し(ステップS6)、ステップS1に戻る。当該制御指令は、GCSを介してUAV1へ送信されてもよい。
【0063】
そして、UAV1は、ステップS6における制御サーバCSからの制御指令に応じて、現在の飛行経路を再設定された飛行経路に変更し、変更された飛行経路に沿って目的地点に向かって飛行を継続する。
【0064】
以上のステップS2~S6は、UAV1が目的地点に到着したと判定されるまで繰り返される。そして、制御部23は、UAV1が目的地点に到着したと判定した場合(ステップS1:YES)、ステップS7へ進む。
【0065】
ステップS7では、制御部23は、ステップS3における推定結果に基づいて、UAV1の移動先エリア内の目的地点において粉塵を抑える水を投下させるか否かを判定する。例えば、制御部23は、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態(例えば、記憶部22に記憶された最も新しい未来の粉塵の状態)が第2基準レベル以上である場合、当該粉塵を抑える水を投下させると判定し(ステップS7:YES)、ステップS8へ進む。
【0066】
なお、第2基準レベルは、第1基準レベルとは異なってもよい。また、粉塵を抑える水を投下させるか否かは、UAV1の飛行経路を変更させるか否かと同様、時系列で行われた複数回の推定結果に基づいて判定されてもよい。また、ステップS7の処理はステップS9の処理後に行われてもよい。
【0067】
一方、制御部23は、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態が第2基準レベル未満である場合、当該粉塵を抑える水を投下させないと判定し(ステップS7:NO)、ステップS9へ進む。
【0068】
ステップS8では、制御部23は、粉塵を抑える水を投下させる制御指令をUAV1に対して送信し、ステップS9へ進む。当該制御指令は、GCSを介してUAV1へ送信されてもよい。
【0069】
そして、UAV1は、ステップS8における制御サーバCSからの制御指令に応じて、散水制御により目的地点の上空から粉塵を抑える水を投下する。これにより、UAV1が発生させる推進力(つまり、当該推進力で発生する風)により地面に堆積した砂が砂塵として舞うことを防ぐことができる。
【0070】
ステップS9では、制御部23は、ステップS3における推定結果に基づいて、複数の物品受け渡し方法のうち何れか1つの物品受け渡し方法を決定(選択)する。例えば、制御部23は、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態が第3基準レベル以上である場合、UAV1をホバリングさせた状態でリール等を用いて物品を降下させる物品受け渡し方法(上記(iv)の物品受け渡し方法)を決定する。一方、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態が第3基準レベル未満である場合、UAV1を着陸させる物品受け渡し方法(上記(vi)の物品受け渡し方法)を決定する。
【0071】
なお、第3基準レベルは、第1基準レベル及び第2基準レベルとは異なってもよい。また、物品受け渡し方法の選択は、UAV1の飛行経路を変更させるか否かと同様、時系列で行われた複数回の推定結果に基づいて判定されてもよい。
【0072】
次いで、制御部23は、ステップS9で決定された物品受け渡し方法を選択させる制御指令をUAV1に対して送信し(ステップS10)、図7に示す処理を終了する。当該制御指令は、GCSを介してUAV1へ送信されてもよい。
【0073】
そして、UAV1は、ステップS10における制御サーバCSからの制御指令に応じて、1つの物品受け渡し方法を選択し、選択された物品受け渡し方法で物品受け渡し制御を行う。例えば、UAV1は、ホバリング状態でリールを用いて物品を降下させ、当該物品が地面に到達したとき、または地面から数mの高さに到達したときに当該物品を切り離す。これにより、UAV1が発生させる推進力により地面に堆積した砂が砂塵として舞うことを防ぐことができる。
【0074】
なお、上記ステップS9では、物品受け渡し方法が決定されるように構成したが、これに代えて、UAV1の着陸方法が決定されるように構成してもよい。この場合、制御部23は、ステップS3における推定結果に基づいて、複数の着陸方法のうち何れか1つの着陸方法を決定(選択)する。例えば、制御部23は、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態が第3基準レベル以上である場合、ロータの駆動を停止しパラシュートを開くことにより着陸する着陸方法(上記(ii)の着陸方法)を決定する。一方、ステップS3で推定された未来の粉塵の状態が第3基準レベル未満である場合、ロータの駆動制御によりUAV1を徐々に降下して着陸方法(上記(i)の着陸方法)を決定する。
【0075】
次いで、制御部23は、ステップS9で決定された着陸方法を選択させる制御指令をUAV1に対して送信する。そして、UAV1は、制御サーバCSからの当該制御指令に応じて、1つの着陸方法を選択し、選択された着陸方法で着陸制御を行う。例えば、UAV1は、ロータの駆動を停止しパラシュートを開くことにより着陸する。これにより、UAV1が発生させる推進力(つまり、当該推進力で発生する風)により地面に堆積した砂が砂塵として舞うことを防ぐことができる。
【0076】
以上説明したように、上記実施形態によれば、UAV1の飛行位置からセンサにより移動先エリアを観測することで得られたセンシングデータを取得し、当該センシングデータに基づいて移動先エリアにおける粉塵の状態を推定するように構成したので、UAV1が粉塵による影響を受ける前に粉塵の状態を推定することができる。そして、このような推定結果に基づいて、UAV1を制御するように構成したので、UAV1が飛行中に粉塵による影響を受けにくくすることができる。さらに、上記実施形態によれば、観測された移動先エリア内の地面に堆積した砂と粉塵との少なくとも何れか一方の状態に基づいて、未来に舞う可能性のある粉塵の状態を推定するように構成したので、UAV1が発生させる推進力により発生しうる粉塵の状態を精度良く推定することができる。
【0077】
なお、上記実施形態は本発明の一実施形態であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態から種々構成等に変更を加えてもよく、その場合も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記実施形態においては、制御サーバCSがセンシングデータに基づいて移動先エリアにおける粉塵の状態を推定するように構成したが、これに代えて、UAV1またはGCSがセンシングデータに基づいて移動先エリアにおける粉塵の状態を推定し、その推定結果に基づいて、UAV1を制御するように構成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、無人で飛行可能な航空機としてUAVを例にとって説明したが、本発明は、航空機内に操縦者(パイロット)が存在しなくても飛行することができる有人航空機に対しても適用可能である。かかる有人航空機には、操縦者以外の人(例えば乗客)が搭乗されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 UAV
2 UTMS
3 PMS
CS 制御サーバ
11 駆動部
12 測位部
13 無線通信部
14 撮像部
15 制御部
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
23a 飛行経路設定部
23b センシングデータ取得部
23c 推定処理部
23d 散水判定部
23e 航空機制御部
S 飛行システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7