(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】磁気ヘッド及び磁気記録装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20230726BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 D
G11B5/31 Q
G11B5/02 R
(21)【出願番号】P 2019163030
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】高岸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁志
(72)【発明者】
【氏名】首藤 浩文
(72)【発明者】
【氏名】永澤 鶴美
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-014791(JP,A)
【文献】特開2017-117502(JP,A)
【文献】米国特許第09064508(US,B1)
【文献】特開2014-032721(JP,A)
【文献】特開2013-048000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極と、
第1シールドと、
前記磁極と前記第1シールドとの間に設けられた第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第3磁性層と、
前記磁極と前記第1磁性層との間に設けられ、Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群から選択された少なくとも1つを含む第1中間層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられ、Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh
、及びPdよりなる第2群から選択された少なくとも1つを含む第2中間層と、
前記第2磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、前記第1群から選択された少なくとも1つを含む第3中間層と、
前記第3磁性層と前記第1シールドとの間に設けられ、前記第2群から選択された少なくとも1つを含む第4中間層と、
を備え
、
前記第1磁性層は、第1飽和磁束密度と、前記磁極から前記第1シールドに向かう第1方向に沿う第1厚さと、を有し、
前記第2磁性層は、第2飽和磁束密度と、前記第1方向に沿う第2厚さと、を有し、
前記第1飽和磁束密度と前記第1厚さとの第1積は、前記第2飽和磁束密度と前記第2厚さとの第2積よりも小さく、
前記第3磁性層は、第3飽和磁束密度と、前記第1方向に沿う第3厚さと、を有し、
前記第1積は、前記第3飽和磁束密度と前記第3厚さとの第3積よりも大きい、磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1中間層は、前記第1磁性層と接し、
前記第2中間層は、前記第1磁性層及び前記第2磁性層と接し、
前記第3中間層は、前記第2磁性層及び前記第3磁性層と接し、
前記第4中間層は、前記第3磁性層と接した、請求項
1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1中間層は、前記磁極と接した、請求項
2記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第4中間層は、前記第1シールドと接した、請求項
3記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層を含む積層体に前記第1磁性層から前記第3磁性層への第1向きを有する第1電流を流したときに前記積層体は第1電気抵抗を有し、
前記積層体に前記第1向きを有する第2電流を流したときに前記積層体は第2電気抵抗を有し、前記第2電流は前記第1電流よりも大きく、
前記積層体に前記第1向きを有する第3電流を流したときに前記積層体は第3電気抵抗を有し、前記第3電流は前記第2電流よりも大きく、
前記第2電気抵抗は、前記第1電気抵抗よりも高く、前記第3電気抵抗よりも高い、請求項1~
4のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
磁極と、
第1シールドと、
前記磁極と前記第1シールドとの間に設けられた第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第3磁性層と、
前記磁極と前記第1磁性層との間に設けられ、Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群から選択された少なくとも1つを含む第1中間層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられ、Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh
、及びPdよりなる第2群から選択された少なくとも1つを含む第2中間層と、
前記第2磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、前記第1群から選択された少なくとも1つを含む第3中間層と、
前記第3磁性層と前記第1シールドとの間に設けられ、前記第2群から選択された少なくとも1つを含む第4中間層と、
を備え
、
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層を含む積層体に前記第1磁性層から前記第3磁性層への第1向きを有する第1電流を流したときに前記積層体は第1電気抵抗を有し、
前記積層体に前記第1向きを有する第2電流を流したときに前記積層体は第2電気抵抗を有し、前記第2電流は前記第1電流よりも大きく、
前記積層体に前記第1向きを有する第3電流を流したときに前記積層体は第3電気抵抗を有し、前記第3電流は前記第2電流よりも大きく、
前記第2電気抵抗は、前記第1電気抵抗よりも高く、前記第3電気抵抗よりも高い、磁気ヘッド。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドにより情報が記録される磁気記録媒体と、
を備えた磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ヘッド及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体に情報が記録される。磁気ヘッド及び磁気記録装置において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気ヘッドは、磁極、第1シールド、第1磁性層、第2磁性層、第3磁性層、第1中間層、第2中間層、第3中間層及び第4中間層を含む。前記第1磁性層は、前記磁極と前記第1シールドとの間に設けられる。前記第2磁性層は、前記第1磁性層と前記第1シールドとの間に設けられる。前記第3磁性層は、前記第2磁性層と前記第1シールドとの間に設けられる。前記第1中間層は、前記磁極と前記第1磁性層との間に設けられ、Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群から選択された少なくとも1つを含む。前記第2中間層は、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられ、Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh、Pd及びPdよりなる第2群から選択された少なくとも1つを含む。前記第3中間層は、前記第2磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、前記第1群から選択された少なくとも1つを含む。前記第4中間層は、前記第3磁性層と前記第1シールドとの間に設けられ、前記第2群から選択された少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
【
図4】
図4は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図5】
図5は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図6】
図6は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図9】
図9は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図10】
図10は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
【
図14】
図14(a)及び
図14(b)は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式的断面図である。
図1は、
図3の一部の拡大図である。
【0009】
図2に示すように、実施形態に係る磁気ヘッド110は、磁気記録媒体80と共に用いられる。実施形態に係る磁気記録装置210は、磁気ヘッド110及び磁気記録媒体80を含む。この例では、磁気ヘッド110は、記録部60及び再生部70を含む。磁気ヘッド110の記録部60により、磁気記録媒体80に情報が記録される。再生部70により、磁気記録媒体80に記録された情報が再生される。
【0010】
磁気記録媒体80は、例えば、媒体基板82と、媒体基板82の上に設けられた磁気記録層81と、を含む。磁気記録層81の磁化83が記録部60により制御される。
【0011】
再生部70は、例えば、第1再生磁気シールド72a、第2再生磁気シールド72b、及び磁気再生素子71を含む。磁気再生素子71は、第1再生磁気シールド72aと第2再生磁気シールド72bとの間に設けられる。磁気再生素子71は、磁気記録層81の磁化83に応じた信号を出力可能である。
【0012】
図2に示すように、磁気ヘッド110の記録部60は、磁極30、第1シールド31、及び積層体20を含む。積層体20は、磁極30と第1シールド31との間に設けられる。
【0013】
図2に示すように、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気ヘッド110に対して相対的に移動する。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が制御される。磁気ヘッド110により、任意の位置において、磁気記録層81の磁化83に対応する情報が再生される。
【0014】
図3に示すように、磁気ヘッド110において、コイル30cが設けられる。記録回路30Dから、コイル30cに記録電流Iwが供給される。磁極30から、記録電流Iwに応じた記録磁界が磁気記録媒体80に印加される。磁極30は、例えば、主磁極である。第
1シールド
31は、例えば、補助磁極である。磁極30及び第
1シールド
31により磁気回路が形成される。
【0015】
図3に示すように、磁極30は、媒体対向面30Fを含む。媒体対向面30Fは、例えば、ABS(Air Bearing Surface)である。媒体対向面30Fは、例えば、磁気記録媒体80に対向する。
【0016】
媒体対向面30Fに対して垂直な方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0017】
Z軸方向は、例えば、ハイト方向である。X軸方向は、例えば、ダウントラック方向である。Y軸方向は、例えば、クロストラック方向である。
【0018】
図3に示すように、電気回路20Dが、積層体20に電気的に接続される。この例では、積層体20は、磁極30及び第1シールド31と電気的に接続される。磁気ヘッド110に、第1端子T1及び第2端子T2が設けられる。第1端子T1は、配線W1及び磁極30を介して積層体20と電気的に接続される。第2端子T2は、配線W2及び第1シールド31を介して積層体20と電気的に接続される。電気回路20Dから、例えば、電流(例えば、直流電流でも良い)が積層体20に供給される。電流が積層体20に流れたときに、積層体20から交流磁界(回転磁界)が発生する。交流磁界は、例えば、高周波磁界である。交流磁界が、磁気記録媒体80の一部に印加される。例えば、交流磁界が印加された磁気記録媒体80の一部において、磁気共鳴が生じ、磁化83の向きが変化し易くなる。磁気ヘッド110において、例えば、MAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)が行われる。
【0019】
図3に示すように、記録部60において、第2シールド32が設けられても良い。第2シールド32と第1シールド31との間に磁極30が設けられる。第1シールド31、第
2シールド3
2及び磁極30の周りに、絶縁部30iが設けられる。
【0020】
図1に示すように、磁気ヘッド110の記録部60は、磁極30、第1磁性層21、第2磁性層22、第3磁性層23、第1中間層41、第2中間層42、第3中間層43及び第4中間層44を含む。
【0021】
積層体20は、例えば、第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23を含む。積層体20は、例えば第1磁性層21、第2磁性層22及び第3磁性層23に加えて、第2中間層42及び第3中間層43を含む。積層体20は、第1中間層41をさらに含んでも良い。積層体20は、第4中間層44をさらに含んでも良い。
【0022】
第1磁性層21は、磁極30と第1シールド31との間に設けられる。第2磁性層22は、第1磁性層21と第1シールド31との間に設けられる。第3磁性層23は、第2磁性層22と第1シールド31との間に設けられる。
【0023】
第1中間層41は、磁極30と第1磁性層21との間に設けられる。第2中間層42は、第1磁性層21と第2磁性層22との間に設けられる。第3中間層43は、第2磁性層22と第3磁性層23との間に設けられる。第4中間層44は、第3磁性層23と第1シールド31との間に設けられる。第1~第4中間層41~44は、非磁性である。
【0024】
第1中間層41は、例えば、Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群から選択された少なくとも1つを含む。第2中間層42は、Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh、Pd及びPdよりなる第2群から選択された少なくとも1つを含む。第3中間層43は、上記の第1群から選択された少なくとも1つを含む。第4中間層44は、上記の第2群から選択された少なくとも1つを含む。
【0025】
Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群の材料は、例えば、スピンを効率良く伝達させる機能を有すると考えられる。第1群の材料は、例えば、スピン良導体である。Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh、及びPdよりなる第2群の材料は、スピンを伝達させ難くする機能を有すると考えられる。第2群の材料は、例えば、スピン不導体である。
【0026】
このような構成において、電流が積層体20に流れたときに、積層体20から交流磁界が発生する。
【0027】
図1に示すように、磁極30から第1シールド31に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、積層体20の積層方向に対応する。1つの例において、第1方向D1は、媒体対向面30Fに対して傾斜している。第1方向D1と媒体対向面30Fとの間の角度を角度θ1とする。角度θ1は、例えば、15度以上30度以下である。角度θ1は、0度でも良い。
【0028】
図1に示すように、第1磁性層21は、磁極30から第1シールド31に向かう第1方向D1に沿う第1厚さt21を有する。第2磁性層22は、第1方向D1に沿う第2厚さt22を有する。第3磁性層23は、第1方向D1に沿う第3厚さt23を有する。第1方向D1は、例えば、X軸方向に沿う。
【0029】
図1に示すように、第1中間層41は、第1方向D1に沿う厚さt41を有する。第2中間層42は、第1方向D1に沿う厚さt42を有する。第3中間層43は、第1方向D1に沿う厚さt43を有する。第4中間層44は、第1方向D1に沿う厚さt44を有する。
【0030】
例えば、積層体20からの発生した交流磁界は、正回転(例えば、反時計回り)の磁界と、負回転(例えば時計回り)の磁界と、を有する場合がある。例えば、正回転の磁界は、磁極30からの記録磁界をアシストする作用を有し、負回転の磁界は、磁極30からの記録磁界を弱める作用を有すると考えられる。以下、上記の中間層の材料を変えたときの、積層体20から発生する交流磁界における正回転及び負回転の磁界の変化の例のシミュレーション結果の例について説明する。
【0031】
図4及び
図5は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図4は、参考例の磁気ヘッド118に対応する。磁気ヘッド118においては、磁極30と第1シールド31との間に、第1磁性層21及び第2磁性層22が設けられ、第3磁性層23が設けられない。磁気ヘッド118においては、磁極30と第1磁性層21との間の第1中間層41は、上記の第2群の材料を含む。第1磁性層21と第2磁性層22のとの間の第2中間層42は、上記の第1群の材料を含む。第2磁性層22と第1シールド31との間の中間層は、上記の第2群の材料を含む。
【0032】
図5は、実施形態に係る磁気ヘッド110に対応する。磁気ヘッド110において、第1中間層41及び第3中間層43は、上記の第1群の材料を含み、第2中間層42及び第4中間層44は、上記の第2群の材料を含む。
【0033】
図4及び
図5は、磁極30のY軸方向の中心を通りX軸方向に沿う線上の回転磁界の強度の特性を例示している。
図4及び
図5の横軸は、X軸方向における位置px(nm)である。位置pxが0の位置は、磁極30の第1シールド31に対向する側の端の位置に対応する。
図4及び
図5の縦軸は、回転磁界強度Hr(Oe)である。
図4及び
図5には、正の回転磁界の強度Hpと、負の回転磁界の強度Hnと、が例示されている。
【0034】
磁気ヘッド118のシミュレーションのモデルにおいて、第1磁性層21の物性値として、Fe
60Co
40の物性値が用いられる。第1磁性層21の飽和磁化Msは、2.4Tである。第1磁性層21の第1厚さt21は、9nmである。第2磁性層22の物性値として、N
70Fe
30の物性値が用いられる。第2磁性層22において、飽和磁化Msは、1Tである。第2磁性層22の第2厚さt22は、3nmである。磁極30と第1シールド31との間の領域g1(
図4参照)の距離は、24nmである。
【0035】
磁気ヘッド110のシミュレーションのモデルにおいて、第1磁性層21の物性値として、Fe
60Co
40の物性値が用いられる。第1磁性層21の飽和磁化Msは、2.4Tである。第1磁性層21の第1厚さt21は、6nmである。第2磁性層22の物性値として、Fe
60Co
40の物性値が用いられる。第2磁性層22において、飽和磁化Msは、2.4Tである。第2磁性層22の第2厚さt22は、9nmである。第3磁性層23の物性値として、N
70Fe
30の物性値が用いられる。第3磁性層23の飽和磁化Msは、1Tである。第3磁性層23の第3厚さt23は、3nmである。第1中間層41の厚さt41は、3nmである。第2中間層42の厚さt42は、3nmである。第3中間層43の厚さt43は、3nmである。第4中間層44の厚さt44は、3nmである。磁極30と第1シールド31との間の領域g1(
図4参照)の距離は、30nmである。
【0036】
図4に示すように、磁気ヘッド118においては、磁極30と第1シールド31との間の領域g1において、正の回転磁界の強度Hpは、負の回転磁界の強度Hnと同じ程度である。領域g1の第1シールド31に近い部分では、負の回転磁界の強度Hnは、正の回転磁界の強度Hpよりも高い。磁気ヘッド118においては、磁気記録媒体80の内で、磁極30と対向した後に第1シールド31と対向する位置では、負の回転磁界の影響を大きく受けるため、磁極30からの記録磁界が弱められ、回転磁界によるアシスト効果が十分に得られない。
【0037】
これに対して、
図5に示すように、磁気ヘッド110においては、磁極30と第1シールド31との間の領域g1において、正の回転磁界の強度Hpは、負の回転磁界の強度Hnよりも高い。特に、領域g1の第1シールド31に近い部分では、正の回転磁界の強度Hpは、負の回転磁界の強度Hnと比べて、著しく高い。磁気ヘッド110においては、磁気記録媒体80の内で、磁極30と対向した後に第1シールド31と対向する位置では、強度が高い正の回転磁界により、磁極30からの記録磁界を効果的にアシストできる。
【0038】
図4に示すように、磁気ヘッド118における正の回転磁界の強度Hpの最大値は、約260Oeである。これに対して、磁気ヘッド110における正の回転磁界の強度Hpの最大値は、約420Oeである。このように、磁気ヘッド110においては、高い、正の回転磁界の強度Hpが得られる。
【0039】
このように、第1~第3磁性層21~23が設けられ、第1中間層41及び第3中間層43が上記の第1群の材料を含み、第2中間層42及び第4中間層44が上記の第2群の材料を含む磁気ヘッド110においては、参考例の磁気ヘッド118と比べて、良好な特性が得られることが分かった。
【0040】
上記のように、積層体20から発生する回転磁界により記録磁界が弱まる場合がある。実施形態によれば、回転磁界により記録磁界が弱まること、が抑制される。実施形態によれば、良好なMAMRを実施することができる。実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッドが提供できる。
【0041】
図6は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図6は、上記の磁気ヘッド110及び磁気ヘッド118について、バイアス電流密度を変えたときのSNRの改善特性のシミュレーション結果の例を示している。
図6の横軸は、積層体20に供給されるバイアス電流の電流密度JB(×10
8A/cm
2)である。
図6の縦軸は、SNR(Signal-Nose-Ratio)の改善効果に関するパラメータPSNRである。パラメータPSNRは、バイアス電流密度が0の時の記録時間が2TにおけるSNR(Signal-Nose-Ratio)を基準にしたときの、バイアス電流密度が電流密度JBである時の記録時間が2TにおけるSNRに対応する。この例では、線記録密度は2300kFCIである。
【0042】
図6に示すように、電流密度JBが約2×10
8cm
2以上において、磁気ヘッド110におけるパラメータPSNRは、磁気ヘッド118におけるパラメータPSNRよりも大きい。例えば、電流密度JBが約3×10
8cm
2の時、磁気ヘッド110においては、磁気ヘッド118に対して、2.6dBのSNRの改善効果が得られる。実施形態において、積層体20に流れる電流の電流密度JBは、2×10
8cm
2以上であることが好ましい。
【0043】
第3磁性層23は、例えば、スピン注入層として機能すると考えられる。第2磁性層22は、例えば、発振層として機能すると考えられる。第1磁性層21は、例えば、負回転の磁界を抑制する機能を有すると考えられる。
【0044】
図7(a)~
図7(c)は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
これらの図の横軸は時間tm(ns)である。これらの図の縦軸は、磁化Mxを示す。
図7(a)は、第1磁性層21の磁化Mx(21)、及び、第2磁性層22の磁化Mx(22)を示している。
図7(b)は、第3磁性層23の磁化Mx(23)を示している。
図7(c)は、磁極30の磁化Mx(30)を示している。これらの図において、バイアス電流の電流密度JBは、3×10
8A/cm
2である。
【0045】
図7(a)に示すように、第1磁性層21の磁化Mx(21)、及び第2磁性層22の磁化Mx(22)は、安定して発振している。第1磁性層21の磁化Mx(21)の位相は、第2磁性層22の磁化Mx(22)の位相と逆である。例えば、第1磁性層21は、第2磁性層22と静磁気的に結合して、第2磁性層22の発振を促進すると考えられる。
【0046】
図8は、第1実施形態に係る磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図8は、
図7(a)~
図7(c)の振動特性をフーリエ変換した結果を例示している。
図8の横軸は、周波数f1(GHz)である。縦軸は、磁化Mxの絶対値AMxである。
図8に示すように、磁化Mxの絶対値AMxは、鋭いピークを有する。安定した発振が得られる。
【0047】
図9は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図9は、第1磁性層21の第1厚さt21を変えたときのパラメータPSNRのシミュレーション結果を例示している。
図9から分かるように、第1厚さt21が2.5nm以上8nm以下のときに、大きなパラメータPSNRが得られる。実施形態において、第1厚さt21が2.5nm以上8nm以下であることが好ましい。実施形態において、第1厚さt21は3nm以上7.5nm以下でも良い。より大きいパラメータPSNRが得られる。
【0048】
実施形態において、例えば、第1中間層41は、第1磁性層21と接する。例えば、第2中間層42は、第1磁性層21及び第2磁性層22と接する。例えば、第3中間層43は、第2磁性層22及び第3磁性層23と接する。例えば、第4中間層44は、第3磁性層23と接する。例えば、第1中間層41は、磁極30と接する。例えば、第4中間層44は、第1シールド31と接する。
【0049】
1つの例において、第1磁性層21の第1厚さt21は、第2磁性層22の第2厚さt22よりも薄い。第1厚さt21は、第3磁性層23の第3厚さt23よりも厚い。
【0050】
既に説明したように、第1厚さt21は、例えば、2.5nm以上8nm以下である。
【0051】
第2厚さt22は、例えば、5nmを超え15nm以下である。第2厚さt22は、約9nmである。
【0052】
第3厚さt23は、例えば、1nm以上5nm未満である。第3厚さt23は、約3nmである。
【0053】
第1磁性層21は、第1飽和磁束密度を有する。第2磁性層22は、第2飽和磁束密度を有する。第3磁性層23は、第3飽和磁束密度を有する。
【0054】
第1飽和磁束密度と第1厚さt21との第1積は、第2飽和磁束密度と第2厚さt21との第2積よりも小さい。第1積は、第3飽和磁束密度と第3厚さt23との第3積よりも大きい。このような関係により、例えば、第1磁性層21と第2磁性層22との間の静磁気結合が容易になる。例えば、第2磁性層22の発振が促進される。例えば、負回転磁界の発生が抑制される。
【0055】
厚さt41は、例えば、1nm以上4nm以下である。厚さt42は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt43は、例えば、1nm以上5nm以下である。厚さt44は、例えば、1nm以上10nm以下である。厚さt41が4nm以下であることで、第1磁性層21の発振が安定する。例えば、大きなパラメータPSNRが得やすくなる。
【0056】
実施形態において、第1~第3磁性層21~23の少なくともいずれかは、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0057】
実施形態において、積層体20の厚さは25nm以下であることが好ましい。これにより、例えば、良好な記録磁界傾度が得られる。
【0058】
以下、積層体20に電流を流したときの積層体20の特性のシミュレーション結果の例について説明する。
【0059】
図10は、磁気ヘッドの特性を例示するグラフ図である。
図10は、磁気ヘッド110に対応する。
図10の横軸は、積層体20に流れる電流Id1に対応する。これらの図の縦軸は、積層体20の電気抵抗Rcに対応する。電流Id1は、例えば、第1端子T1及び第2端子T2を含む電流経路に流れる電流に対応する。電流Id1は、第1磁性層21から第3磁性層23への第1向きを有する。第1向きは、例えば、第1端子T1から第2端子T2への向きに対応する。第1向きは、例えば、配線W1から配線W2への向きに対応する。電子流は、電流Id1とは逆の向きに流れる。
【0060】
図10に示すように、磁気ヘッド110において、電流Id1の大きさが増大すると、一旦上昇し、その後、低下する。例えば、積層体20に上記の第1向きを有する第1電流I1を流したときに、積層体20は第1電気抵抗R1を有する。積層体20に第1向きを有する第2電流I2を流したときに、積層体20は第2電気抵抗R2を有する。第2電流I2は、第1電流I1よりも大きい。積層体20に第1向きを有する第3電流I3を流したときに、積層体20は第3電気抵抗R3を有する。第3電流I3は、第2電流I2よりも大きい。
図10に示すように、第2電気抵抗R2は、第1電気抵抗R1よりも高く、第3電気抵抗R3よりも高い。
【0061】
この例のように、磁気ヘッド110において、電気抵抗Rcが3段階で変化する場合がある。このような電気抵抗Rcの変化は、磁性層の磁化の向きの変化に対応していると推定できる。以下、磁気ヘッド110における磁化の状態の例について説明する。
【0062】
図11(a)~
図11(d)は、磁気ヘッドの特性を例示する模式図である。
図11(a)~
図11(d)は、磁気ヘッド110に対応する。
図11(a)は、積層体20に電流が流れない状態ST0に対応する。
図11(b)は、積層体20に第1電流I1が供給される第1状態ST1に対応する。
図11(c)は、積層体20に第2電流I2が供給される第2状態ST2に対応する。
図11(d)は、積層体20に第3電流I3が供給される第3状態ST3に対応する。
【0063】
図11(a)に示すように、磁気ヘッド110において、状態ST0において、磁極30の磁化30M、第1磁性層21の磁化21M、第2磁性層22の磁化22M、及び、第3磁性層23の磁化23Mは、互いに、「平行」である。
図11(b)に示すように、第1状態ST1において、磁化23Mが反転する。
図11(c)に示すように、第2状態ST2において、磁化21Mが反転する。
図11(d)に示すように、第3状態ST3において、磁化21M及び磁化22Mが反平行であり、磁化30M及び磁化23Mと交差する。第3状態ST3において、例えば、磁化30M及び磁化23Mが発振する。これにより、積層体20から交流磁界が発生し、この交流磁界が有効に利用される。
【0064】
磁気ヘッド110におけるこのような磁化の変化が、
図10に例示した電気抵抗Rcの変化に関係していると考えられる。
【0065】
実施形態においては、磁気ヘッド110により情報が磁気記録媒体80に記録されるときに、磁極30から第1シールド31への電流が流れる。これにより、交流磁界(例えば高周波磁界)が生じる。例えば、磁極30から記録磁界が発生し、磁極30から第1シールド31への電流が流れたときに、積層体20から交流磁界が発生する。記録磁界は、積層体20に印加される。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態は、磁気記録装置210に係る。磁気記録装置210は、磁気ヘッド110と、磁気ヘッド110により情報が記録される磁気記録媒体80と、を含む。以下、実施形態に係る磁気記録装置の例について説明する。磁気記録装置は、磁気記録再生装置でも良い。磁気ヘッドは、記録部と再生部とを含んでも良い。
【0067】
図12は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図12は、ヘッドスライダを例示している。
磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159に設けられる。ヘッドスライダ159は、例えばAl
2O
3/TiCなどを含む。ヘッドスライダ159は、磁気記録媒体の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0068】
ヘッドスライダ159は、例えば、空気流入側159A及び空気流出側159Bを有する。磁気ヘッド110は、ヘッドスライダ159の空気流出側159Bの側面などに配置される。これにより、磁気ヘッド110は、磁気記録媒体の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体に対して相対的に運動する。
【0069】
図13は、第2実施形態に係る磁気記録装置を例示する模式的斜視図である。
図14(a)及び
図14(b)は、第2実施形態に係る磁気記録装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図13に示すように、実施形態に係る磁気記録装置150においては、ロータリーアクチュエータが用いられる。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mに装着される。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ180Mにより矢印ARの方向に回転する。スピンドルモータ180Mは、駆動装置制御部からの制御信号に応答する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録装置150は、記録媒体181を含んでもよい。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。例えば、磁気記録装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)でも良い。
【0070】
ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180に記録する情報の、記録及び再生を行う。ヘッドスライダ159は、薄膜状のサスペンション154の先端に設けられる。ヘッドスライダ159の先端付近に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0071】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力と、ヘッドスライダ159の媒体対向面(ABS)で発生する圧力と、がバランスする。ヘッドスライダ159の媒体対向面と、記録用媒体ディスク180の表面と、の間の距離が、所定の浮上量となる。実施形態において、ヘッドスライダ159は、記録用媒体ディスク180と接触しても良い。例えば、接触走行型が適用されても良い。
【0072】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、ボビン部などを有する。ボビン部は、駆動コイルを保持する。アーム155の他端には、ボイスコイルモータ156が設けられる。ボイスコイルモータ156は、リニアモータの一種である。ボイスコイルモータ156は、例えば、駆動コイル及び磁気回路を含む。駆動コイルは、アーム155のボビン部に巻かれる。磁気回路は、永久磁石及び対向ヨークを含む。永久磁石と対向ヨークとの間に、駆動コイルが設けられる。サスペンション154は、一端と他端とを有する。磁気ヘッドは、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端に接続される。
【0073】
アーム155は、ボールベアリングによって保持される。ボールベアリングは、軸受部157の上下の2箇所に設けられる。アーム155は、ボイスコイルモータ156により回転及びスライドが可能である。磁気ヘッドは、記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能である。
【0074】
図14(a)は、磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
図14(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0075】
図14(a)に示すように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157から延びる。支持フレーム161の延びる方向は、ヘッドジンバルアセンブリ158の延びる方向とは逆である。支持フレーム161は、ボイスコイルモータ156のコイル162を支持する。
【0076】
図14(b)に示すように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0077】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ159が設けられる。ヘッドスライダ159に、実施形態に係る磁気ヘッドが設けられる。
【0078】
実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気ヘッドと、磁気ヘッドが設けられたヘッドスライダ159と、サスペンション154と、アーム155と、を含む。ヘッドスライダ159は、サスペンション154の一端に設けられる。アーム155は、サスペンション154の他端と接続される。
【0079】
サスペンション154は、例えば、信号の記録及び再生用のリード線(図示しない)を有する。サスペンション154は、例えば、浮上量調整のためのヒーター用のリード線(図示しない)を有しても良い。サスペンション154は、例えばスピントルク発振子用などのためのリード線(図示しない)を有しても良い。これらのリード線と、磁気ヘッドに設けられた複数の電極と、が電気的に接続される。
【0080】
磁気記録装置150において、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。信号処理部190は、信号処理部190の入出力線は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気ヘッドと電気的に接続される。
【0081】
本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気ヘッドと、可動部と、位置制御部と、信号処理部と、を含む。可動部は、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とする。位置制御部は、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする。信号処理部は、磁気ヘッドを用いた磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う。
【0082】
例えば、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、例えば、ヘッドスライダ159を含む。上記の位置制御部は、例えば、ヘッドジンバルアセンブリ158を含む。
【0083】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
磁極と、
第1シールドと、
前記磁極と前記第1シールドとの間に設けられた第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第2磁性層と、
前記第2磁性層と前記第1シールドとの間に設けられた第3磁性層と、
前記磁極と前記第1磁性層との間に設けられ、Au、Cu、Ag、Al及びTiよりなる第1群から選択された少なくとも1つを含む第1中間層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられ、Ta、Ir、W、Mo、Cr、Tb、Rh、及びPdよりなる第2群から選択された少なくとも1つを含む第2中間層と、
前記第2磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、前記第1群から選択された少なくとも1つを含む第3中間層と、
前記第3磁性層と前記第1シールドとの間に設けられ、前記第2群から選択された少なくとも1つを含む第4中間層と、
を備えた、磁気ヘッド。
【0084】
(構成2)
前記第1磁性層は、第1飽和磁束密度と、前記磁極から前記第1シールドに向かう第1方向に沿う第1厚さと、を有し、
前記第2磁性層は、第2飽和磁束密度と、前記第1方向に沿う第2厚さと、を有し、
前記第1飽和磁束密度と前記第1厚さとの第1積は、前記第2飽和磁束密度と前記第2厚さとの第2積よりも小さい、構成1記載の磁気ヘッド。
【0085】
(構成3)
前記第3磁性層は、第3飽和磁束密度と、前記第1方向に沿う第3厚さと、を有し、
前記第1積は、前記第3飽和磁束密度と前記第3厚さとの第3積よりも大きい、構成2記載の磁気ヘッド。
【0086】
(構成4)
前記磁極から前記第1シールドに向かう第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さよりも薄い、構成1記載の磁気ヘッド。
【0087】
(構成5)
前記第1厚さは、前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さよりも厚い、構成4記載の磁気ヘッド。
【0088】
(構成6)
前記磁極から前記第1シールドに向かう第1方向に沿う前記第1磁性層の第1厚さは、2.5nm以上8nm以下である、構成1記載の磁気ヘッド。
【0089】
(構成7)
前記第1方向に沿う前記第2磁性層の第2厚さは、5nmを越え15nm以下である、構成6記載の磁気ヘッド。
【0090】
(構成8)
前記第1方向に沿う前記第3磁性層の第3厚さは、1nm以上5nm未満である、構成6または7に記載の磁気ヘッド。
【0091】
(構成9)
前記第1方向に沿う前記第1中間層の厚さは、1nm以上4nm以下である、構成6~8のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0092】
(構成10)
前記第1方向に沿う前記第2中間層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成6~9のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0093】
(構成11)
前記第1方向に沿う前記第3中間層の厚さは、1nm以上5nm以下である、構成6~10のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0094】
(構成12)
前記第1方向に沿う前記第4中間層の厚さは、1nm以上10nm以下である、構成6~11のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0095】
(構成13)
前記第1磁性層、前記第2中間層、前記第2磁性層、前記第3中間層及び前記第3磁性層を含む積層体の前記第1方向に沿う長さは、25nm以下である、構成6~12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0096】
(構成14)
前記第1磁性層、前記第2中間層、前記第2磁性層、前記第3中間層及び前記第3磁性層を含む積層体に流れる電流の電流密度は、2×108cm2以上である、構成1~12のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0097】
(構成15)
前記第1中間層は、前記第1磁性層と接し、
前記第2中間層は、前記第1磁性層及び前記第2磁性層と接し、
前記第3中間層は、前記第2磁性層及び前記第3磁性層と接し、
前記第4中間層は、前記第3磁性層と接した、構成1~14のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0098】
(構成16)
前記第1中間層は、前記磁極と接した、構成15記載の磁気ヘッド。
【0099】
(構成17)
前記第4中間層は、前記第1シールドと接した、構成16記載の磁気ヘッド。
【0100】
(構成18)
前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層を含む積層体に前記第1磁性層から前記第3磁性層への第1向きを有する第1電流を流したときに前記積層体は第1電気抵抗を有し、
前記積層体に前記第1向きを有する第2電流を流したときに前記積層体は第2電気抵抗を有し、前記第2電流は前記第1電流よりも大きく、
前記積層体に前記第1向きを有する第3電流を流したときに前記積層体は第3電気抵抗を有し、前記第3電流は前記第2電流よりも大きく、
前記第2電気抵抗は、前記第1電気抵抗よりも高く、前記第3電気抵抗よりも高い、構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0101】
(構成19)
前記磁極から記録磁界が発生し、前記磁極から前記第1シールドへの電流が流れたときに、前記第1磁性層、前記第2磁性層及び前記第3磁性層を含む積層体から交流磁界が発生する、構成1~17のいずれか1つに記載の磁気ヘッド。
【0102】
(構成20)
構成1~19のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドにより情報が記録される磁気記録媒体と、
を備えた磁気記録装置。
【0103】
実施形態によれば、記録密度の向上が可能な磁気ヘッド及び磁気記録装置が提供できる。
【0104】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0105】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドに含まれる磁極、第1シールド、第2シールド、積層体、磁性層、中間層及び配線などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0106】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0107】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気ヘッド及び磁気記録装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気ヘッド及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0108】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
20…積層体、 20D…電気回路、 21~23…第1~第3磁性層、 21M~23M…磁化、 30…磁極、 30D…記録回路、 30F…媒体対向面、 30M…磁化、 30c…コイル、 30i…絶縁部、 31、32…第1、第2シールド、 41~44…第1~第4中間層、 60…記録部、 70…再生部、 71…磁気再生素子、 72a、72b…第1、第2再生磁気シールド、 80…磁気記録媒体、 81…磁気記録層、 82…媒体基板、 83…磁化、 85…媒体移動方向、 θ1…角度、 110、118…磁気ヘッド、 150…磁気記録装置、 154…サスペンション、 155…アーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 159…ヘッドスライダ、 159A…空気流入側、 159B…空気流出側、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 180M…スピンドルモータ、 181…記録媒体、 190…信号処理部、 210…磁気記録装置、 AMx…絶対値、 AR…矢印、 D1…第1方向、 Hn、Hp…強度、 Hr…回転磁界強度、 I1~I3…第1~第3電流、 Id1…電流、 Iw…記録電流、 JB…電流密度、 Mx…磁化、 PSNR…パラメータ、 R1~R3…第1~第3電気抵抗、 Rc…電気抵抗、 ST0…状態、 ST1~ST3…第1~第3状態、 T1、T2…第1、第2端子、 W1、W2…配線、 f1…周波数、 g1…領域、 px…位置、 t21~t23…第1~第3厚さ、 t41~t44…厚さ、 tm…時間