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特許7319506活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20230726BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20230726BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20230726BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/104
C08G63/199
B41M1/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022155491
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2023-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】592057961
【氏名又は名称】マツイカガク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三木 健生
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 泰寿
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127112(JP,A)
【文献】特開2020-183463(JP,A)
【文献】特表2004-514014(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115600(WO,A1)
【文献】特開2010-13528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C08G 63/199
B41M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、ポリエステル樹脂と、アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含み、
前記アクリレートモノマーは、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーと、2官能のアクリレートと、単官能のアクリレートとを含み、
前記イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、25~50質量%であり、
前記単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、8~30質量%であり、
前記単官能のアクリレートの含有量と、前記2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、30~75質量%である、活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂の水酸基過剰率は、1.0以上である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項3】
金属印刷用である、請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、基材に印刷された、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物に関する。より詳細には、本発明は、得られる印刷物が、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
食料缶などの金属容器の表面には、内容物の表示や装飾等が施されている。DR缶は、金属基材に表示等を印刷し、打ち抜き加工を行うことにより作製される。DR缶は、食品を入れて封がされた後、レトルト処理が行われる。特許文献1には、印刷後のレトルト処理において白化を生じにくい、活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6514836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DR缶は、打ち抜き加工時にクラックが発生しやすい。発生したクラックは、その後のレトルト処理によってさらに大きくなる。その結果、従来のDR缶は、グロスが低下しやすい。グロスが低下すると、缶表面の艶が失われ、商品価値が低下しやすい。そのため、インキ組成物は、打ち抜き加工時にクラックを発生しないように、優れた加工性が要求される。また、表示等が印刷された金属基材は、打ち抜き加工前に、ニスが塗工されることなく平積みで保管されることがある。この場合、印刷された表示が、他の金属基材の裏面に写る。DR缶において、金属基材の裏面は、食品等が直接接触する面である。そのため、衛生面からも、裏移りを防止する優れた耐ブロッキング性が要求される。特許文献1に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキ組成物は、これら加工性および耐ブロッキング性が両立できていない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、得られる印刷物が、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)顔料と、ポリエステル樹脂と、アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含み、前記アクリレートモノマーは、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーと、2官能のアクリレートと、単官能のアクリレートとを含み、前記イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、25~50質量%であり、前記単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、8~30質量%であり、前記単官能のアクリレートの含有量と、前記2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、30~75質量%である、活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【0008】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて得られる印刷物は、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する。
【0009】
(2)前記ポリエステル樹脂の水酸基過剰率は、1.0以上である、(1)記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【0010】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて得られる印刷物は、熱水レトルト耐性がより優れる。その結果、得られるDR缶は、より白化を生じにくく、グロスの低下が起こりにくい。
【0011】
(3)金属印刷用である、(1)または(2)記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【0012】
このような構成によれば、活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて得られる印刷物は、DR缶用途において特に好適である。
【0013】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、基材に印刷された、印刷物。
【0014】
このような構成によれば、印刷物は、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、得られる印刷物が、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<活性エネルギー線硬化型インキ組成物>
本発明の一実施形態の活性エネルギー線硬化型インキ組成物(以下、インキ組成物ともいう)は、顔料と、ポリエステル樹脂と、アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含む。アクリレートモノマーは、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーと、2官能のアクリレートと、単官能のアクリレートとを含む。イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、25~50質量%である。単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、8~30質量%である。単官能のアクリレートの含有量と、2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、30~75質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0017】
(顔料)
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、各種無機顔料または有機顔料である。
【0018】
無機顔料、有機顔料は、耐熱性、耐光性、レトルト耐性を有するものであることが好ましい。無機顔料は、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等である。有機顔料は、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料等である。
【0019】
顔料の含有量は、種類や目的によって適宜調整される。一例を挙げると、顔料の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましい。また、顔料の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることが好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、分散安定性が優れ、皮膜物性においては、顔料濃度が高いことによる弊害を回避できる。
【0020】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分と多価アルコール成分とを構成成分とするポリエステルである。ポリエステル樹脂は、多塩基酸を含む酸成分が2価の酸であり、多価アルコール成分が2価のアルコールであることが好ましい。これにより、得られる皮膜は、熱水レトルト耐性が優れる。また、得られる皮膜は、金属基材に対する密着性および耐ブロッキング性がより優れる。
【0021】
酸成分に含まれる多塩基酸は特に限定されない。多塩基酸は、複数のカルボキシ基を有する化合物であり、多価アルコール成分と縮重合して高分子量化させるための成分である。多塩基酸としては芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環式多塩基酸、α、β-不飽和ジカルボン酸等の化合物を使用できる。これらの中でも、多塩基酸を含む酸成分は、脂環式多塩基酸、脂環式多塩基酸の無水物、芳香族系多塩基酸および芳香族系多塩基酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。複数のカルボキシ基を有する化合物は、2または3以上のカルボキシ基を備えており、これらの酸無水物であってもよい。また、酸無水物基は、2つのカルボキシ基から脱水によって生成するものであるため、本実施形態においては、酸無水物基1個はカルボキシ基2個に相当するものとする。
【0022】
芳香族多塩基酸としては、たとえば、オルソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族多塩基酸としては、たとえばコハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸等が挙げられる。脂環式多塩基酸としては、たとえば1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。α、β-不飽和ジカルボン酸としては、たとえば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。なお、これらの化合物のアルキルエステル、および酸無水物も使用することができる。これらの中でも、酸成分は、脂環式多塩基酸またはその無水物、芳香族系多塩基酸またはその無水物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。これにより、インキ組成物は、より優れた熱水レトルト耐性を有する。
【0023】
多価アルコール成分は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシ)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシ)グリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等である。これらの中でも、多価アルコール成分は、水添ビスフェノールA、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、インキ組成物は、より優れた熱水レトルト耐性を有する。
【0024】
本実施形態のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1300以上であることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の重合平均分子量が上記範囲内であることにより、本実施形態のインキ組成物を用いて得られる皮膜は、より優れた金属基材に対する密着性および耐ブロッキング性を有する。なお、本実施形態のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0025】
本実施形態のポリエステル樹脂の水酸基過剰率は、1.0以上であることが好ましく、1.15以上であることがより好ましい。また、水酸基過剰率は、2.0以下であることが好ましく、1.90以下であることがより好ましい。水酸基過剰率が1.0未満である場合、インキ組成物は、得られる皮膜の熱水レトルト耐性が劣る。
【0026】
なお、本実施形態において、カルボキシ基に対する水酸基のモル比率である水酸基過剰率(OH量/COOH量)は、用いたモノマーの配合に基づき、以下の式によりOH量およびCOOH量を算出し、OH量/COOH量を算出することにより求め得る。
OH量=配合に使用した各モノマーのモル数×価数
COOH量=配合に使用した各モノマーのモル数×価数
【0027】
ポリエステル樹脂の酸価は特に限定されない。一例を挙げると、ポリエステル樹脂の酸価は、0.1mgKOH/g以上であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂の酸価は、35mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より優れた熱水レトルト耐性を有する。なお、本実施形態において、酸価は、たとえば、中和滴定法により算出することができる。
【0028】
ポリエステル樹脂の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂の含有量は、インキ組成物中、40質量%以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、本実施形態のインキ組成物を用いて得られる皮膜は、より優れた金属基材に対する密着性および耐ブロッキング性を有する。
【0029】
また、上記ポリエステル樹脂に加え、従来用いられるインキ用樹脂が併用されてもよい。インキ用樹脂は、石油樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、ケトン樹脂などである。
【0030】
(アクリレートモノマー)
アクリレートモノマーは、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーと、2官能のアクリレートと、単官能のアクリレートとを含む。
【0031】
・イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマー
イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーは、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸ε-カプロラクトン変性トリアクリレート等である。これらの中でも、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーは、インキ組成物を用いて得られる印刷物の耐ブロッキング性が優れる点から、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートであることが好ましい。
【0032】
イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、25質量%以上であればよく、30質量%以上であることが好ましい。また、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、50質量%以下であればよく、45質量%以下であることが好ましい。イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量が25質量%未満である場合、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、DR缶用途における加工性が劣る。一方、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量が50質量%を超える場合、インキ組成物は、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーが析出し、インキ組成物として不適である。
【0033】
・2官能のアクリレート
2官能のアクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、2官能のアクリレートは、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレ-ト、ネオペンチルグリコールEO変性ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(EO変性)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(PO変性)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性ジ(メタ)アクリレート等である。
【0034】
2官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、2官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、65質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。2官能のアクリレートの含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、加工性が優れる。
【0035】
・単官能のアクリレート
単官能のアクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、単官能のアクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等である。
【0036】
単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、8質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、30質量%以下であればよく、25質量%以下であることが好ましい。単官能のアクリレートの含有量が8質量%未満である場合、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、DR缶用途における加工性が劣る。一方、単官能のアクリレートの含有量が30質量%を超える場合、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、耐ブロッキング性が劣る。
【0037】
アクリレートモノマー全体の説明に戻り、単官能のアクリレートの含有量と2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、30質量%以上であればよく、40質量%以上であることが好ましい。また、単官能のアクリレートの含有量と2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、75質量%以下であればよく、65質量%以下であることが好ましい。単官能のアクリレートの含有量と2官能のアクリレートの含有量との合計が30質量%未満である場合、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、DR缶用途における加工性が劣る。一方、単官能のアクリレートの含有量と2官能のアクリレートの含有量との合計が75質量%を超える場合、インキ組成物を用いて得られる印刷物は、耐ブロッキング性が劣る。
【0038】
なお、アクリレートモノマーは、上記したイソシアヌレート環を有するアクリレートモノマー、2官能のアクリレートおよび単官能のアクリレートのほか、その他のアクリレートモノマーを含んでもよい。その他のアクリレートモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、その他のアクリレートモノマーは、3官能アクリレート、4官能アクリレート、5官能アクリレート、6官能アクリレート等であってよく、ジオール化合物の2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレートモノマー、トリオール化合物の2つまたは3つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジまたはトリ(メタ)アクリレートモノマー等であってもよい。
【0039】
3官能アクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、3官能アクリレートは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、また、それらのEO変性物およびPO変性物等である。
【0040】
4官能アクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、4官能アクリレートは、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等である。
【0041】
5官能アクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、5官能アクリレートは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等である。
【0042】
6官能アクリレートは特に限定されない。一例を挙げると、6官能アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等である。
【0043】
ほかにも、多官能アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールの複数の水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたポリ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0044】
アクリレートモノマーの含有量は、インキ組成物中、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、アクリレートモノマーの含有量は、インキ組成物中、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。アクリレートモノマーの含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、より優れた金属基材に対する密着性および耐ブロッキング性を有する。
【0045】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、インキ組成物を硬化させるために配合される。
【0046】
光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤は、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。
【0047】
光重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤の含有量は、インキ組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、インキ組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、充分に硬化しやすい。
【0048】
(任意成分)
本実施形態のインキ組成物は、上記した顔料、ポリエステル樹脂、アクリレートモノマーおよび光重合開始剤のほか、体質顔料、ワックス、重合禁止剤、分散剤等の任意成分を含んでもよい。
【0049】
体質顔料は、インキ組成物に粘弾性を付与したり、流動性を調整したり、ミスチングを防止する等のために、好適に含まれる。
【0050】
体質顔料は特に限定されない。一例を挙げると、体質顔料は、クレー、タルク、マイカ、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ベントナイト、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ジルコニア、アルミナ等である。
【0051】
体質顔料が含まれる場合において、体質顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、体質顔料の含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、体質顔料の含有量は、インキ組成物中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。体質顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、粘弾性、流動性が調整されやすく、ミスチングが防がれやすい。
【0052】
ワックスは特に限定されない。一例を挙げると、ワックスは、ポリエチレン系ワックス、オレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のワックス類である。
【0053】
ワックスが含まれる場合において、ワックスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ワックスの含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、ワックスの含有量は、インキ組成物中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤は、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等である。
【0055】
重合禁止剤が含まれる場合において、重合禁止剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤の含有量は、インキ組成物中、0質量%を超えることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、重合禁止剤の含有量は、インキ組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等である。
【0057】
分散剤が含まれる場合において、分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤の含有量は、着色剤を100質量%とした場合において、1~200質量%であることが好ましい。
【0058】
本実施形態のインキ組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、ロールミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて、常法によって調製することができる。
【0059】
<印刷物>
本発明の一実施形態の印刷物は、上記実施形態の活性エネルギー線硬化型インキ組成物が、基材に印刷された、印刷物である。以下、一例として、金属板またはベースコート層を設けた金属基材に、上記したインキ組成物が印刷されて形成された皮膜とからなる印刷物について説明する。
【0060】
上記実施形態のインキ組成物は、金属基材等の基材に印刷されて、皮膜を形成する。金属基材は特に限定されない。一例を挙げると、金属板は、ステンレススチール、アルミニウム、錫メッキ鋼板、ティンフリースチール等の金属基材、または、これらの金属基材上にベースコート(プライマー)層を設けた金属下地板等である。ベースコート層の形成には、たとえば金属印刷において一般的に用いられるサイズ塗料やホワイトコーティングなどのベースコート用組成物が用いられてもよい。また、金属基材は、PETフィルムがラミネート処理されていてもよい。
【0061】
金属基材に本実施形態のインキ組成物を印刷する方法は特に限定されない。一例を挙げると、印刷方法は、湿し水を利用したオフセット方式、ドライオフセット方式等の通常の印刷方式である。
【0062】
得られるインキ皮膜の膜厚は特に限定されない。一例を挙げると、インキ皮膜の膜厚は、0.1~6μmである。
【0063】
インキ組成物を硬化する条件は特に限定されない。活性エネルギー線硬化反応に用いる活性エネルギー線は、紫外線や電子線等である。紫外線の光源は、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)などが挙げられ、これらの光源を有する紫外線照射装置などが利用できる。なお、光量や光源配置、搬送速度等は必要に応じて調整され得る。高圧水銀灯を使用する場合には、80~160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して搬送速度2~100m/分程度で硬化させるのが好ましい。一方、電子線の場合には、10~300kV程度の加速電圧を有する電子線加速装置により、搬送速度5~50m/分程度の条件で硬化させるのが好ましい。
【0064】
インキ層上には、熱硬化性トップコート用ニス層が形成されてもよい。熱硬化性トップコート用ニス層は、任意の水性型、溶剤型の熱硬化性トップコート用ニスが例示できる。市販で入手可能な溶剤型熱硬化性トップコート用ニスとしては、トーヨーケム(株)製のポリエステル/アミノ系トップコート用ニスなどがある。
【0065】
本実施形態の印刷物は、上記したインキ組成物からなる皮膜が形成されている。そのため、このようなニス層が設けられることなく、平積みされる場合であっても、皮膜が、別の印刷物の裏面に写りにくく、耐ブロッキング性が優れる。
【0066】
ニス層を形成する方法は特に限定されない。一例を挙げると、ニス層は、ロールコーター塗装された後、150℃~250℃で5秒~15分間加熱乾燥されることによって、外観、硬度、加工性、レトルト耐性に優れる塗膜を形成することができる。
【0067】
ニス層が形成される場合、ニス層の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、ニス層の厚みは、3μm以上であることが好ましい。また、ニス層の厚みは、10μm以下であることが好ましい。ニス層の厚みが上記範囲内であることにより、印刷物は、DR缶を作製する際の打ち抜き加工等において、クラックを生じにくく、レトルト処理後の白化が抑制される。
【0068】
このように、上記実施形態のインキ組成物は、DR缶を作製する際の加工性が優れ、クラックや、熱水レトルト処理後の白化を生じにくい。そのため、金属印刷用として好適であり、特にDR缶への金属印刷用として好適である。
【0069】
以上、本実施形態のインキ組成物によれば、得られる印刷物は、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する。
【実施例
【0070】
以下、実施例と比較例とにより本発明をより詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されない。なお、表中の各数値は質量%基準によるものである。
【0071】
使用した原料は、以下の通りである。
<顔料>
LIONOL BLUE FG-7351:Pigment Blue15:3、トーヨーカラー(株)製
<ポリエステル樹脂合成用の酸およびアルコール>
テトラヒドロ無水フタル酸:リカシッドTH、152g/mol、価数2、新日本理化(株)製
水添ビスフェノールA:リカビノールHB、240g/mol、価数2、新日本理化(株)製
1,6ヘキサンジオール:1,6ヘキサンジオール、118g/mol、価数2、UBE(株)製
<アクリレートモノマー>
アロニックス M-408:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、4官能アクリレート、東亞合成(株)製
OTA480:グリセリンPO変性トリアクリレート、3官能アクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製
Laromer LR 8863:トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、3官能アクリレート、BASF社製
MIRAMER M370:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(>99.9%)、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマー、MIWON SPECIALTY CHEMICAL社製
アロニックス M-315:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートおよびジアクリレート(ジアクリレート比率:3~13%)、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマー、東亞合成(株)製
MIRAMER M216:ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、2官能アクリレート、MIWON SPECIALTY CHEMICAL社製
KAYARAD HX220:カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、2官能アクリレート、日本化薬(株)製
ユピマーUV SA-1002N:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2官能アクリレート、三菱化学(株)製
アロニックスM-101A:フェノールEO変性アクリレート、単官能アクリレート、東亞合成(株)製
MIRAMER M1140:イソボルニルアクリレート、単官能アクリレート、MIWON SPECIALTY CHEMICAL社製
MIRAMER M150:テトラヒドロフルフリルアクリレート、単官能アクリレート、MIWON SPECIALTY CHEMICAL社製
<光重合開始剤>
Omnirad 379:2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、IGM Resins社製
Omnirad EMK:4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、IGM Resins社製
Omnirad DETX:2,4-ジエチルチオキサントン、IGM Resins社製
<添加剤>
SST-3T1-RC:ポリテトラフルオロエチレン、Shamrock社製
【0072】
<樹脂1の調製>
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸:34.5質量%、水添ビスフェノールA:60.3質量%、1、6ヘキサンジオール:5.2質量%を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、220℃で常法にてエステル化し、酸価15.1、重量平均分子量1834のポリエステル樹脂(樹脂1)を得た。得られた樹脂1の水酸基過剰率は1.3であった。
<樹脂2の調製>
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸:28.7質量%、水添ビスフェノールA:65.6質量%、1、6ヘキサンジオール:5.7質量%を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、220℃で常法にてエステル化し、酸価12.5、重量平均分子量1069のポリエステル樹脂(樹脂2)を得た。得られた樹脂2の水酸基過剰率は1.7であった。
<樹脂3の調製>
攪拌機、水分離器付き還流冷却器、および温度計を備えた4つ口フラスコに、テトラヒドロ無水フタル酸:43.3質量%、水添ビスフェノールA:52.2質量%、1、6ヘキサンジオール:4.5質量%を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、220℃で常法にてエステル化し、酸価65.0、重量平均分子量2767のポリエステル樹脂(樹脂1)を得た。得られた樹脂3の水酸基過剰率は0.9であった。
【0073】
<実施例1>
表1に記載の処方に従い、各成分を混合した後、40℃に加熱した3本ロールミルにて練肉攪拌することにより、実施例1のインキ組成物を調製した。得られたインキ組成物について、以下の評価方法により、加工性、耐ブロッキング性、析出の有無、白化の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
<実施例2~16、比較例1~16>
表1~表2に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、インキ組成物を調製し、評価した。結果を表1~表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
評価に使用する金属板として、電気ブリキ板(新日鉄住金(株)製のET2.8/2.8 T2.5B)に、ポリエステル/アミノ系ベースコーティング(トーヨーケム(株)製)を塗膜量140mg/100cm2で塗装し、180℃、10分間焼付けしたベースコート層を設けた金属板を作成した。得られたインキを、RIテスター(テスター産業(株)製)を用いて、上記金属板のベースコート層上に、膜厚1.5μmになるように展色し、集光型メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製、120W/cm)照射装置を用いて、印刷物との距離11cm、コンベア速度30m/分で紫外線を印刷物に照射しインキを硬化させ、試験サンプルAとした。また、同様の印刷条件で2度刷りした後に、ポリエステル/アミノ系トップコーティング(トーヨーケム(株)製)を塗布量70mg/100cm2で塗装し、180℃、10分間焼付け、試験サンプルBを作成した。得られた試験サンプルA、およびBを用いて、以下の方法により評価を行なった。なお、RIテスターとは、被記録媒体にインキを展色させる試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することができる。
【0078】
<加工性>
上記方法で作成した試験サンプルBを、プレス加工により直径80mm、高さ50mmの円筒状に打ち抜き、加工品を得た。得られた加工品を125℃の熱水に浸漬したまま90分間滅菌処理を行い、その後、加工品側面の光沢低下を目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:光沢低下が非常に小さかった。
○△:光沢低下は見られたが、ある程度光沢が残っていた。
△:光沢低下が大きかった。
×:光沢低下が非常に大きかった。
-:析出を生じたため、評価できなかった。
【0079】
<耐ブロッキング性>
上記方法で作成した試験サンプルAを3cm×5cmにカットし、インキ皮膜の対面に同じ大きさにカットした電気ブリキ板を重ね、ブロッキングテスター(テスター産業(株)製)にて3kg/cm2の荷重をかけたまま40℃の電気オーブンに1時間静置後取出し、対面の電気ブリキ板にインキが裏移りしているかどうかを目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:裏移りしなかった。
○△:僅かに裏移りが確認できた。
△:明らかな裏移りが確認できた。
×:明らかな裏移りが確認でき、インキ皮膜の剥離が確認できた。
-:析出を生じたため、評価できなかった。
【0080】
<析出の有無>
作製したインキについて、10℃条件下にて240時間放置した後に、インキ中の析出物の有無を目視により以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:析出物がなかった。
×:析出物があった。
【0081】
<白化の有無>
上記方法で作成した試験サンプルBを125℃の熱水に浸漬したまま90分間滅菌処理を行い、その後、塗膜表面の白化度合いを目視により以下の基準で評価した。○△以上を実用レベルと判断した。
(評価基準)
○:白化がなかった。
○△:僅かに白化があった。
△:明らかな白化が確認できた。
×:塗膜全体が完全に白化した。
-:析出を生じたため、評価できなかった。
【0082】
表1~表2に記載のとおり、本発明の実施例1~16のインキ組成物は、析出を生じなかった。また、インキ組成物を用いた印刷物は、DR缶の用途に適した加工性を有し、熱水レトルト処理を行った場合であっても白化を生じにくかった。さらに、印刷物は、平積みした場合であっても裏写りがなく、耐ブロッキング性が優れた。
【要約】
【課題】得られる印刷物が、DR缶用途に使用可能な優れた加工性を有し、ニスを塗工しなくても、平積みすることのできる耐ブロッキング性を有する、活性エネルギー線硬化型インキ組成物および印刷物を提供する。
【解決手段】顔料とポリエステル樹脂とアクリレートモノマーと光重合開始剤とを含み、アクリレートモノマーは、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーと2官能のアクリレートと単官能のアクリレートとを含み、イソシアヌレート環を有するアクリレートモノマーの含有量は、アクリレートモノマー全量中、25~50質量%であり、単官能のアクリレートの含有量は、アクリレートモノマー全量中、8~30質量%であり、単官能のアクリレートの含有量と2官能のアクリレートの含有量との合計は、アクリレートモノマー全量中、30~75質量%である、活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
【選択図】なし