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特許7319526杭頭保持具の引抜装置及び杭頭保持具の引抜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】杭頭保持具の引抜装置及び杭頭保持具の引抜方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/02 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
E02D13/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019093193
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020186612
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【弁理士】
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 和彦
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3180492(JP,U)
【文献】特開2014-077237(JP,A)
【文献】特開2018-111984(JP,A)
【文献】特開2009-013615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭穴に沈設された杭の杭頭部に対し相対回転により係合解除可能に取り付けられて前記杭穴内に注入された固化材が固化するまで前記杭を保持していた杭頭保持具を、前記固化材の固化後に前記杭頭部との係合を解除して引き抜くための杭頭保持具の引抜装置であって、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部を囲繞可能な円筒部を有し、
前記円筒部の周壁には、側面視にてL字形状の係合溝が設けられ、
前記杭頭部には、前記係合溝に挿入される突起が前記杭頭部から径方向に突出するように設けられ、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部の軸線方向にて前記突起を前記係合溝の鉛直部分に所定長さ進入させてから、前記杭頭部に対し前記円筒部を一の方向に相対回転させることで、前記突起が前記係合溝の水平部分に進入し、前記杭頭部と前記杭頭保持具とが上下方向にて係合するように構成される一方、前記杭頭部に対し前記円筒部を前記一の方向とは逆方向に相対回転させることで、前記杭頭部と前記杭頭保持具との上下方向での係合を解除することができるように構成されている、杭頭保持具の引抜装置において、
前記杭頭保持具に対し相対回転不能に同軸に取り付け可能な従動筒部と、
前記従動筒部に同軸に嵌合された原動筒部であって、前記従動筒部の軸線周りに回転可能且つ前記従動筒部の軸線方向に移動可能な原動筒部と、
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動を前記従動筒部の回転に変換するように構成された変換機構と、
を備え
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動に伴う前記従動筒部の回転により、前記杭頭部に対し前記杭頭保持具を前記逆方向に相対回転させて前記杭頭部との上下方向の係合を解除可能である
ことを特徴とする杭頭保持具の引抜装置。
【請求項2】
前記変換機構は、
前記原動筒部から径方向外側に突出するロッドと、
前記従動筒部に設けられ、前記ロッドが挿通されるガイド溝と、
を含み、
前記ガイド溝は、前記従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載の杭頭保持具の引抜装置。
【請求項3】
杭穴に沈設された杭の杭頭部に対し相対回転により係合解除可能に取り付けられて前記杭穴内に注入された固化材が固化するまで前記杭を保持していた杭頭保持具を、前記固化材の固化後に前記杭頭部との係合を解除して引き抜くための杭頭保持具の引抜方法であって、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部を囲繞可能な円筒部を有し、
前記円筒部の周壁には、側面視にてL字形状の係合溝が設けられ、
前記杭頭部には、前記係合溝に挿入される突起が前記杭頭部から径方向に突出するように設けられ、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部の軸線方向にて前記突起を前記係合溝の鉛直部分に所定長さ進入させてから、前記杭頭部に対し前記円筒部を一の方向に相対回転させることで、前記突起が前記係合溝の水平部分に進入し、前記杭頭部と前記杭頭保持具とが上下方向にて係合するように構成される一方、前記杭頭部に対し前記円筒部を前記一の方向とは逆方向に相対回転させることで、前記杭頭部と前記杭頭保持具との上下方向での係合を解除することができるように構成されている、杭頭保持具の引抜方法において、
前記杭頭保持具に対し相対回転不能に同軸に取り付け可能な従動筒部、前記従動筒部に同軸に嵌合された原動筒部であって、前記従動筒部の軸線周りに回転可能且つ前記従動筒部の軸線方向に移動可能な原動筒部、及び前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動を前記従動筒部の回転に変換するように構成された変換機構を具備する杭頭保持具の引抜装置を用意する装置用意工程と、
前記杭頭保持具に前記杭頭保持具の引抜装置の従動筒部を取り付ける従動筒部取付工程と、
前記従動筒部の軸線方向に前記原動筒部を移動させ、前記従動筒部を回転させる係合解除工程と、
前記杭頭保持具とともに前記杭頭保持具の引抜装置を引き上げる引き上げ工程と、
を備え
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動に伴う前記従動筒部の回転により、前記杭頭部に対し前記杭頭保持具を前記逆方向に相対回転させて前記杭頭部との上下方向の係合を解除する
ことを特徴とする杭頭保持具の引抜方法。
【請求項4】
前記係合解除工程において、バケットを有するバックホーを用いて前記従動筒部の軸線方向にて前記原動筒部を移動させることを特徴とする請求項3に記載の杭頭保持具の引抜方法。
【請求項5】
前記変換機構は、
前記原動筒部から径方向外側に突出するロッドと、
前記従動筒部に設けられ、前記ロッドが挿通されるガイド溝と、
を含み、
前記ガイド溝は、前記従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜している
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の杭頭保持具の引抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は杭頭保持具の引抜装置及び杭頭保持具の引抜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭には、杭打ち機を用いて杭穴を掘削した後、杭穴にセメントミルク等の固化材を注入し、更に既製杭を沈設するプレボーリング工法によって構築されるものがある。そして、既製杭の杭頭部を地表よりも深くに配置するために、固化材が固化するまで回転キャップ(杭頭保持具)を用いて杭穴内の既製杭を保持することがある。
回転キャップは、杭頭部に対し一方向に回転させることにより係合可能であり、逆方向に回転させることにより係合解除可能である。従って、固化材の固化後に回転キャップを外すときには、一旦杭穴から離れていた杭打ち機を再び移動させて来て、杭打ち機を用いて回転キャップを回転させてから引き上げていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3175416号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転キャップを取り外すためだけに、杭穴を掘削可能な杭打ち機を用いるのは作業効率が低く、また煩雑である。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、杭打ち機を用いなくても杭頭保持具を引抜可能な杭頭保持具の引抜装置、及び杭頭保持具の引抜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る杭頭保持具の引抜装置は、
杭穴に沈設された杭の杭頭部に対し相対回転により係合解除可能に取り付けられて前記杭穴内に注入された固化材が固化するまで前記杭を保持していた杭頭保持具を、前記固化材の固化後に前記杭頭部との係合を解除して引き抜くための杭頭保持具の引抜装置であって、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部を囲繞可能な円筒部を有し、
前記円筒部の周壁には、側面視にてL字形状の係合溝が設けられ、
前記杭頭部には、前記係合溝に挿入される突起が前記杭頭部から径方向に突出するように設けられ、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部の軸線方向にて前記突起を前記係合溝の鉛直部分に所定長さ進入させてから、前記杭頭部に対し前記円筒部を一の方向に相対回転させることで、前記突起が前記係合溝の水平部分に進入し、前記杭頭部と前記杭頭保持具とが上下方向にて係合するように構成される一方、前記杭頭部に対し前記円筒部を前記一の方向とは逆方向に相対回転させることで、前記杭頭部と前記杭頭保持具との上下方向での係合を解除することができるように構成されている、杭頭保持具の引抜装置において、
前記杭頭保持具に対し相対回転不能に同軸に取り付け可能な従動筒部と、
前記従動筒部に同軸に嵌合された原動筒部であって、前記従動筒部の軸線周りに回転可能且つ前記従動筒部の軸線方向に移動可能な原動筒部と、
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動を前記従動筒部の回転に変換するように構成された変換機構と、
を備え
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動に伴う前記従動筒部の回転により、前記杭頭部に対し前記杭頭保持具を前記逆方向に相対回転させて前記杭頭部との上下方向の係合を解除可能である。
【0006】
上記構成(1)によれば、従動筒部の軸線方向に原動筒部を移動させることによって、変換機構を介し、従動筒部を回転させることができる。そして、従動筒部の回転に伴い、杭頭保持具を回転させて杭頭部との係合を解除することができ、既製杭を杭穴内に残したまま杭頭保持具を引き上げることができる。この結果として、上記構成(1)によれば、杭打ち機を用いなくても、杭頭保持具を引抜可能である。
【0007】
幾つかの実施形態では、上記構成(2)において、
前記変換機構は、
前記原動筒部から径方向外側に突出するロッドと、
前記従動筒部に設けられ、前記ロッドが挿通されるガイド溝と、
を含み、
前記ガイド溝は、前記従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜している。
【0008】
上記構成(2)によれば、ガイド溝が従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜しているので、従動筒部の軸線方向にて原動筒部が移動し、ロッドがガイド溝に沿って移動したときに、ロッドと従動筒部が相対回転する。この際、原動筒部の回転が規制されていれば、ガイド溝が設けられた従動筒部を回転させることができ、簡単な構成にて、変換機構を実現可能である。
【0009】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係る杭頭保持具の引抜方法は、
杭穴に沈設された杭の杭頭部に対し相対回転により係合解除可能に取り付けられて前記杭穴内に注入された固化材が固化するまで前記杭を保持していた杭頭保持具を、前記固化材の固化後に前記杭頭部との係合を解除して引き抜くための杭頭保持具の引抜方法であって、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部を囲繞可能な円筒部を有し、
前記円筒部の周壁には、側面視にてL字形状の係合溝が設けられ、
前記杭頭部には、前記係合溝に挿入される突起が前記杭頭部から径方向に突出するように設けられ、
前記杭頭保持具は、前記杭頭部の軸線方向にて前記突起を前記係合溝の鉛直部分に所定長さ進入させてから、前記杭頭部に対し前記円筒部を一の方向に相対回転させることで、前記突起が前記係合溝の水平部分に進入し、前記杭頭部と前記杭頭保持具とが上下方向にて係合するように構成される一方、前記杭頭部に対し前記円筒部を前記一の方向とは逆方向に相対回転させることで、前記杭頭部と前記杭頭保持具との上下方向での係合を解除することができるように構成されている、杭頭保持具の引抜方法において、
前記杭頭保持具に対し相対回転不能に同軸に取り付け可能な従動筒部、前記従動筒部に同軸に嵌合された原動筒部であって、前記従動筒部の軸線周りに回転可能且つ前記従動筒部の軸線方向に移動可能な原動筒部、及び前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動を前記従動筒部の回転に変換するように構成された変換機構を具備する杭頭保持具の引抜装置を用意する装置用意工程と、
前記杭頭保持具に前記杭頭保持具の引抜装置の従動筒部を取り付ける従動筒部取付工程と、
前記従動筒部の軸線方向に前記原動筒部を移動させ、前記従動筒部を回転させる係合解除工程と、
前記杭頭保持具とともに前記杭頭保持具の引抜装置を引き上げる引き上げ工程と、
を備え
前記従動筒部の軸線方向での前記原動筒部の移動に伴う前記従動筒部の回転により、前記杭頭部に対し前記杭頭保持具を前記逆方向に相対回転させて前記杭頭部との上下方向の係合を解除する。
【0010】
上記構成(3)によれば、従動筒部の軸線方向に原動筒部を移動させることによって、変換機構を介し、従動筒部を回転させることができる。そして、従動筒部の回転に伴い、杭頭保持具を回転させて杭頭部との係合を解除することができ、既製杭を杭穴内に残したまま杭頭保持具を引き上げることができる。この結果として、上記構成(3)によれば、杭打ち機を用いなくても、杭頭保持具を引抜可能である。
【0011】
幾つかの実施形態では、上記構成(4)において、
前記係合解除工程において、バケットを有するバックホーを用いて前記従動筒部の軸線方向にて前記原動筒部を移動させる。
上記構成(4)によれば、バックホーを用いることで、従動筒部の軸線方向にて原動筒部を容易に移動させ、従動筒部を回転させることができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、上記構成(5)において、
前記変換機構は、
前記原動筒部から径方向外側に突出するロッドと、
前記従動筒部に設けられ、前記ロッドが挿通されるガイド溝と、
を含み、
前記ガイド溝は、前記従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜している。
【0013】
上記構成(5)によれば、ガイド溝が従動筒部の軸線方向及び周方向に対し傾斜しているので、従動筒部の軸線方向にて原動筒部が移動し、ロッドがガイド溝に沿って移動したときに、ロッドと従動筒部が相対回転する。この際、原動筒部の回転が規制されていれば、ガイド溝が設けられた従動筒部を回転させることができ、簡単な構成にて、変換機構を実現可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一実施形態によれば杭打ち機を用いなくても杭頭保持具を引抜可能な杭頭保持具の引抜装置、及び杭頭保持具の引抜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る杭頭保持具の引抜装置を、2点鎖線で示した杭頭保持具とともに概略的に示す断面図である。
図2】引抜装置の概略的な側面図であり、(a)は作動前、(b)は作動後の状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る杭頭保持具の引抜方法の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。
図4】引抜方法の一例を説明するための概略図である。
図5】他の実施形態に係る引抜装置の概略的な構成を示す図である。
図6】他の実施形態に係る引抜装置の概略的な断面を、杭頭保持具とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る杭頭保持具の引抜装置(以下、引抜装置ともいう)1を、2点鎖線で示した杭頭保持具3とともに概略的に示す断面図である。図2は、引抜装置1の概略的な側面図であり、(a)は作動前、(b)は作動後の状態を示している。
【0018】
図1に示したように杭頭保持具3は、杭頭部に対し一方向に相対回転させることにより係合させられ、逆方向に相対回転させることにより係合解除されるものであり、回転キャップあるいはヤットコとも称される。
具体的には、杭頭保持具3は、杭頭部を囲繞可能な円筒部5と、円筒部5に同軸に連結された軸部7とを有する。円筒部5の周壁には、側面視にてL字形状の係合溝9が設けられ、杭頭部には、係合溝9に挿入される突起が杭頭部から径方向に突出するように設けられる。杭頭部の軸線方向にて突起を係合溝9の鉛直部分に所定長さ進入させてから、杭頭部に対し円筒部5を相対回転させることで、突起が係合溝9の水平部分に進入し、杭頭部と杭頭保持具3とが上下方向にて係合する。この状態から、杭頭部に対し円筒部5を逆方向に相対回転させることで、杭頭部と杭頭保持具3との上下方向での係合を解除することができる。
【0019】
図1及び図2に示したように、引抜装置1は、従動筒部11と、原動筒部13と、変換機構15とを備えている。
従動筒部11は、杭頭保持具3に対し相対回転不能に同軸に取り付け可能である。例えば、従動筒部11は中空の円筒形状を有し、杭頭保持具3の軸部7の上端部に嵌合され、ジョイントピンにて抜け止めがなされる。
【0020】
原動筒部13は、従動筒部11に同軸に嵌合され、従動筒部11の軸線周りに回転可能であり、従動筒部11の軸線方向に移動可能である。例えば、原動筒部13は、中実の円筒形状(円柱形状)を有し、従動筒部11の内側に摺動自在に嵌合される。
そして、変換機構15は、図2(a)及び図2(b)に示したように、従動筒部11の軸線方向での原動筒部13の移動を従動筒部11の回転に変換するように構成されている。
【0021】
上記構成によれば、従動筒部11の軸線方向に原動筒部13を移動させることによって、変換機構15を介し、従動筒部11を回転させることができる。そして、従動筒部11の回転に伴い、杭頭保持具3を回転させて杭頭部との係合を解除することができ、既製杭を杭穴内に残したまま杭頭保持具3を引き上げることができる。この結果として、上記構成によれば、杭打ち機を用いなくても、杭頭保持具3を引抜可能である。
【0022】
幾つかの実施形態では、図1及び図2に示したように、変換機構15は、原動筒部13から径方向外側に突出するロッド17と、従動筒部11に設けられ、ロッド17が挿通されるガイド溝19と、を含む。そして、ガイド溝19は、従動筒部11の軸線方向及び周方向に対し傾斜している。例えば、3本のロッド17が、原動筒部13の周方向に等間隔で設けられ、各ロッド17に対応してガイド溝19が設けられる。
【0023】
上記構成によれば、ガイド溝19が従動筒部11の軸線方向及び周方向に対し傾斜しているので、従動筒部11の軸線方向にて原動筒部13が移動し、ロッド17がガイド溝19に沿って移動したときに、ロッド17と従動筒部11が相対回転する。この際、原動筒部13の回転が規制されていれば、ガイド溝19が設けられた従動筒部11を回転させることができ、簡単な構成にて、変換機構15を実現可能である。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に係る杭頭保持具の引抜方法(以下、引抜方法ともいう)の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。図3に示したように、引抜方法は、装置用意工程S1、従動筒部取付工程S3、係合解除工程S5及び引き上げ工程S7を備えている。
【0025】
装置用意工程S1では、上述した引抜装置1を用意する。
従動筒部取付工程S3では、引抜装置1の従動筒部11を杭頭保持具3に取り付ける。
係合解除工程S5では、従動筒部11の軸線方向に原動筒部13を移動させ、従動筒部11を回転させる。これにより、杭頭部と杭頭保持具3の上下方向での係合が解除される。
引き上げ工程S7では、杭頭保持具3とともに引抜装置1を引き上げる。これにより、杭頭保持具3を杭頭部から取り外すことができる。
【0026】
上記構成によれば、従動筒部11の軸線方向に原動筒部13を移動させることによって、変換機構15を介し、従動筒部11を回転させることができる。そして、従動筒部11の回転に伴い、杭頭保持具3を回転させて杭頭部との係合を解除することができ、既製杭を杭穴内に残したまま杭頭保持具3を引き上げることができる。この結果として、上記構成によれば、杭打ち機を用いなくても、杭頭保持具3を引抜可能である。
【0027】
図4は、引抜方法の一例を説明するための概略図である。幾つかの実施形態では、図4に示したように、係合解除工程S5において、バックホー(油圧ショベル)21を用いて従動筒部11の軸線方向にて原動筒部13を移動させる。この場合、例えば、バックホー21のバケット23と原動筒部13とを剛性を有する連結棒25で連結すればよい。
【0028】
上記構成によれば、バックホー21を用いることで、従動筒部11の軸線方向にて原動筒部13を容易に移動させ、従動筒部11を回転させることができる。この結果として、杭頭保持具3を回転させ、杭頭保持具3と既製杭27の杭頭部との上下方向での係合を解除することができる。
なお、原動筒部13を上下方向に移動させる手段は、バックホー21に限定されることはなく、原動筒部13の回転を規制できれば、クレーンを用いてもよい。
【0029】
図5は、他の実施形態に係る引抜装置30の概略的な構成を示す図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は符号を付して説明を省略又は簡略化する。
引抜装置1は、従動筒部11に対し原動筒部13を上方向に引き上げることにより、従動筒部11を回転させるように構成されていたが、引抜装置30では、従動筒部11に対し原動筒部13を下方向に押し下げることにより、従動筒部11を回転させるように構成されている。つまり、係合解除工程S5における従動筒部11の軸線方向での原動筒部13の移動方向は、変換機構15の構成に応じて上下方向のいずれも選択可能である。
【0030】
具体的には、引抜装置30のガイド溝32の形状は、引抜装置1のガイド溝19の形状と異なっている。なお、引抜装置30では、原動筒部13を押し下げて係合を解除した後に原動筒部13及び従動筒部11を引き上げるため、引き上げるときに従動筒部11が回転しないよう、ガイド溝32の下端から上方に向けて軸線方向溝34が延びている。軸線方向溝34にロッド17が進入することで、引き上げ時に従動筒部11の回転が規制される。
【0031】
図6は、他の実施形態に係る引抜装置40の概略的な断面を、杭頭保持具3とともに示す図である。引抜装置40では、従動筒部42が内筒44、及び内筒44よりも大径の外筒46を有しており、二重筒構造を有している。内筒44は、引抜装置1の従動筒部11に略相当し、内筒44に原動筒部13が同軸に嵌合される。一方、ガイド溝48は、外筒46に設けられており、内筒44には、ロッド17との干渉を防止するためにスリット50が設けられている。
【0032】
上述した構成によれば、ロッド17とガイド溝48との接触位置が、引抜装置1,30に比べ原動筒部13の径方向にて遠方になるため、従動筒部42に対し大きなトルクを作用させることができ、従動筒部42を確実に回転させることができる。
【0033】
最後に本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した変換機構15は円筒カム機構であり、ロッド17が原動筒部13と一体に設けられ、ガイド溝19,32が従動筒部11に設けられていたが、これとは逆に、ガイド溝を原動筒部13の外周面に設け、内向きのロッド(ピン)を従動筒部11と一体に設けてもよい。
また、上述した変換機構15では、杭頭保持具3に固定される従動筒部11の内側に原動筒部13が嵌合されていたが、これとは逆に、従動筒部11の外側に原動筒部13が嵌合されていてもよい。
【0034】
また、ロッド17の数は特に限定されることはなく、2本であっても3本以上であってもよい。ロッド17の長さは特に限定されることはないが、従動筒部11,42よりも外側に突出しているのが好ましい。この場合、杭周液によって杭頭保持具3が杭穴や杭頭部に固着しているときに、原動筒部13が自由な状態(バックホー21との連結を解除した状態)にてハンマー等でロッド17の外端に衝撃を加えることで、固着を解くことができる。また、引き上げ工程S7直前に既製杭27の杭頭部に設けた突起の位置が係合溝9の鉛直部分の位置と僅かに合っていないときに、原動筒部13が自由な状態にてハンマー等でロッド17の外端を周方向に押すことで、位置を微調整することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,30,40 杭頭保持具の引抜装置
3 杭頭保持具
5 円筒部
7 軸部
9 係合溝
11,42 従動筒部
13 原動筒部
15 変換機構
17 ロッド
19,32,48 ガイド溝
21 バックホー
23 バケット
25 連結棒
27 既製杭
34 軸線方向溝
44 内筒
46 外筒
50 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6