(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/26 20060101AFI20230726BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20230726BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20230726BHJP
B29C 65/54 20060101ALI20230726BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B29C51/26
B29C51/10
B29C51/14
B29C65/54
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2019148568
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】眞▲瀬▼ 和文
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184354(JP,A)
【文献】特開2002-355837(JP,A)
【文献】特開平09-029827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
B29C 33/00-33/76
B29C 65/00-65/82
B60R 13/01-13/04,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製部分を有する表皮材と前記縫製部分を挿入する溝部が表面に形成された基材とを備える部品を製造する製造装置であって、
前記縫製部分を前記溝部に挿入する前に、前記縫製部分に当接し前記縫製部分の形を整える蛇行抑制機構と、
前記縫製部分を前記溝部に挿入して前記基材の表面に前記表皮材を貼着する貼着機構と、を備え
、
前記蛇行抑制機構は、前記縫製部分の縫製ラインに沿って形成され前記縫製部分の側部に当接するプレート状又は棒状の当接部材と、該当接部材を支持する基部と、を備え、
前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記基部に対して上下方向に移動可能に設けられ、
前記蛇行抑制機構は、前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢する付勢部を有することを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記蛇行抑制機構は、前記縫製部分を挟み込む位置に前記当接部材を複数備えることを特徴とする請求項
1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記縫製部分の縫製ラインに対して複数に分割して設けられていることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記付勢部は、前記当接部材のそれぞれの端部に配置されていることを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項5】
前記当接部材は、前記縫製部分の縫製ラインが曲がった部分に合わせて形成された屈曲部分を有することを特徴とする請求項
1から
4のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項6】
前記貼着機構は、真空成形により前記表皮材を成形して前記基材に貼着することを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の製造装置。
【請求項7】
縫製部分を有する表皮材と、前記縫製部分を挿入する溝部が表面に形成された基材とを備える部品を、第一の型、第二の型、前記表皮材の周囲を挟持する表皮クランプ及び前記縫製部分に当接し前記縫製部分の形を整える蛇行抑制機構を用いて製造する製造方法であって、
前記蛇行抑制機構は、前記表皮材の前記縫製部分を挟み込む位置に前記表皮材の側部に当接するプレート又は棒状の当接部材と、該当接部材を支持する基部と、を備え、
前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記基部に対して上下方向に移動可能に設けられ、
前記蛇行抑制機構は、前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢する付勢部を有しており、
前記製造方法は、
前記基材を前記第二の型に配置する工程と、
前記表皮材を加熱し、加熱された前記表皮材を前記表皮クランプに取り付ける工程と、
前記表皮クランプに取り付けられた前記表皮材を前記第一の型と前記第二の型との間に移動させる工程と、
前記表皮材を前記第一の型に向けて移動させると共に前記蛇行抑制機構を移動させ、
前記付勢部が前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢すると共に前記蛇行抑制機構を前記縫製部分に当接させ前記縫製部分の形を整えつつ前記表皮材を成形する工程と、
前記第一の型と前記第二の型とを噛合わせて、前記縫製部分を前記溝部に挿入しつつ前記表皮材と前記基材とを圧着する工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
前記表皮材を成形する工程において、前記縫製部分が前記当接部
材に挟み込まれた状態で、真空成形により前記表皮材を成形することを特徴とする請求項
7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置及び製造方法に係り、特に、縫製部分を有する表皮材を備える部品を製造する製造装置及び部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアトリム等の内装部品は、車体のパネル形状にほぼ合致するよう成形された基材の表面にウレタンフォーム等のパッド材を介して表皮材を被覆して構成されている。特許文献1には、所要形状に成形された基材(特許文献1では芯材)と、その表面に貼着され、縫製ライン(特許文献1では見切りライン)を境界として接合された表皮材とから構成される自動車用内装部品の製造方法が開示されている。
特許文献1に記載の自動車用内装部品は、縫製加工して形成された表皮材の縫製部分を、縫製ラインに沿って基材に凹設された溝部内に嵌挿させた後、真空成形により、表皮材を基材の表面に一体的に貼着することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、縫製加工することによりできた縫製部分は、表皮材を型で成形したとき縫製ラインに対して蛇行する場合がある。縫製部分が蛇行した状態で、表皮材を基材の表面に貼着する際、縫製部分が溝部に挿入されると縫製部分が基材の溝部の縁に引っ掛かり、縫製部分が倒れてしまう場合がある。そのような倒れによって基材に対する表皮材のスムーズな貼着作業が阻害される場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、縫製部分の蛇行を抑制し、貼着作業が阻害されることなく部品を製造できる製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、縫製部分を有する表皮材と、前記縫製部を挿入する溝部が表面に形成された基材とを備える部材を製造する製造装置であって、前記縫製部分を前記溝部に挿入する前に、前記縫製部分に当接し前記縫製部分の形を整える蛇行抑制機構と、前記縫製部分を前記溝部に挿入して前記基材の表面に前記表皮材を貼着する貼着機構と、を備え、前記蛇行抑制機構は、前記縫製部分の縫製ラインに沿って形成され前記縫製部分の側部に当接するプレート状又は棒状の当接部材と、該当接部材を支持する基部と、を備え、前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記基部に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記蛇行抑制機構は、前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢する付勢部を有する製造装置により解決される。
縫製部分を基材の溝部に挿入する前に、蛇行抑制機構が縫製部分に当接して縫製部分の形を整えて蛇行を抑制するため、溝部に対する縫製部分の位置がずれにくくなる。そのため、表皮を基材に貼着する際、溝の縁に引っ掛かることがなくなり、縫製部分の倒れが抑制され、縫製部分の溝部への挿入が阻害されることなく、部品を製造することができる。
【0007】
また、縫製部分の側部に当接するプレート状又は棒状の当接部材により、縫製部分の蛇行を抑制できる。
また、当接部材が表皮材に向けて付勢する付勢部により、当接部材を表皮材に押し付けたときの圧力が吸収されるため、表皮材の意匠面に押し跡が残ることを抑制できる。
【0008】
また、上記構成において、前記蛇行抑制機構は、前記縫製部分を挟み込む位置に前記当接部材を複数備えていると良い。
縫製部分を挟み込む位置に当接部材を複数備えることで、縫製部分の両側の側部から当接し、縫製部分をより正確な基材の溝に位置合わせすることができる。
【0009】
また、上記構成において、前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記縫製部分の縫製ラインに対して複数に分割して設けられても良い。
当接部材を複数に分割して設けることで、分割された当接部材のそれぞれが独立して動作可能となる。
【0011】
また、上記構成において、前記付勢部は、前記当接部材のそれぞれの端部に配置されていても良い。
付勢部を当接部材の端部に配置することにより、当接部材を安定して上下方向に移動させることができる。
【0012】
また、上記構成において、前記当接部材は、前記縫製部分の縫製ラインが曲がった部分に合わせて形成された屈曲部分を有しても良い。
縫製ラインの曲がった部分に合わせて形成された屈曲部分により、縫製ラインが曲がった部分においても蛇行を抑制することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記貼着機構は、真空成形により前記表皮材を成形して前記基材に貼着しても良い。
真空成形により表皮材を成形することにより、表皮の意匠面にデザインを転写してから基材に貼着させることができる。
【0014】
また、上記課題は、縫製部分を有する表皮材と、前記縫製部分を挿入する溝部が表面に形成された基材とを備える部材を、第一の型、第二の型、前記表皮材の周囲を挟持する表皮クランプ及び前記縫製部分に当接し前記縫製部分の形を整える蛇行抑制機構を用いて製造する製造方法であって、前記蛇行抑制機構は、前記表皮材の前記縫製部分を挟み込む位置に前記表皮材の側部に当接するプレート又は棒状の当接部材と、該当接部材を支持する基部と、を備え、前記蛇行抑制機構の前記当接部材は、前記基部に対して上下方向に移動可能に設けられ、前記蛇行抑制機構は、前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢する付勢部を有しており、前記製造方法は、前記基材を前記第二の型に配置する工程と、前記表皮材を加熱し、加熱された前記表皮材を前記表皮クランプに取り付ける工程と、前記表皮クランプに取り付けられた前記表皮材を前記第一の型と前記第二の型との間に移動させる工程と、前記表皮材を前記第一の型に向けて移動させると共に前記蛇行抑制機構を移動させ、前記付勢部が前記当接部材を前記表皮材に向けて付勢すると共に前記蛇行抑制機構を前記縫製部分に当接させ前記縫製部分の形を整えつつ前記表皮材を成形する工程と、前記第一の型と前記第二の型とを噛合わせて、前記縫製部分を前記溝部に挿入しつつ前記表皮材と前記基材とを圧着する工程と、を含む製造方法により解決される。
蛇行抑制機構が縫製部分に当接して縫製部分の形が整えられることで、縫製部分の倒れが抑制され、縫製部分の溝部への挿入が阻害されることなく部品が製造されるようになる。
【0015】
上記の部品の製造方法の前記表皮材を成形する工程において、前記縫製部分が前記当接部材に挟み込まれた状態で、真空成形により前記表皮材が成形されても良い。
縫製部分を挟み込む位置に当接部材を複数備えることで、縫製部分の両側側部から当接し、縫製部分をより正確な基材の溝に位置合わせすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造装置によれば、縫製部分を基材の溝部に挿入する前に、蛇行抑制機構が縫製部分に当接して縫製部分の形を整えて蛇行を抑制するため、溝部に対する縫製部分の位置がずれにくくなる。そのため、表皮を基材に貼着する際、溝の縁に引っ掛かることがなくなり、縫製部分の倒れが抑制され、縫製部分の溝部への挿入が阻害されることなく、部品を製造することができる。
また、縫製部分の側部に当接するプレート状又は棒状の当接部材により、縫製部分の蛇行を抑制できる。
縫製部分を挟み込む位置に当接部材を複数備えることで、縫製部分の両側側部から当接し、縫製部分をより正確な基材の溝に位置合わせすることができる。
当接部材を複数に分割して設けることで、分割された当接部材のそれぞれが独立して動作可能となる。
当接部材が表皮材に向けて付勢する付勢部により、当接部材を表皮材に押し付けたときの圧力が吸収されるため、表皮材の意匠面に押し跡が残ることを抑制できる。
付勢部を当接部材の端部に配置することにより、当接部材を安定して上下方向に移動させることができる。
縫製ラインの曲がった部分に合わせて形成された屈曲部分により、縫製ラインが曲がった部分においても蛇行を抑制することができる。
真空成形により表皮材を成形することにより、表皮の意匠面にデザインを転写してから貼り合わせることができる。
また、本発明の製造方法により、蛇行抑制機構が縫製部分に当接して縫製部分の形が整えられることで、縫製部分の倒れが抑制され、縫製部分の溝部への挿入が阻害されることなく部品が製造されるようになる。
また、縫製部分を挟み込む位置に当接部分を複数備えることで、縫製部分の両側側部から当接し、縫製部分をより正確な基材の溝に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本実施形態に係る製造装置の構成を示す図であり、表皮材を基材に貼着する前の状態を示す図である。
【
図1B】製造装置の構成を示す図であり、表皮材が上型に吸着され、蛇行抑制装置が縫製部分に当接した状態を示す図である。
【
図1C】製造装置の構成を示す図であり、蛇行抑制装置が表皮材の縫製部分から取り外された状態を示す図である。
【
図1D】基材に表皮材が貼着された状態を示す図である。
【
図2】表皮材を示す平面図であり、表皮クランプに固定された状態を示す図である。
【
図3】内装部品の基材を示す平面図であり、製造装置の下型に載置された状態を示す図である。
【
図5A】
図4BのV-V線に沿った断面図であり、
図1Aの部分Aを拡大して示すと共に、蛇行抑制装置が縫製部分に当接した直後の状態を示す図である。
【
図5B】
図4BのV-V線に沿った断面図であり、
図1Bの部分Bを拡大して示すと共に蛇行抑制装置が縫製部分に当接して縫製部分の形を整えた状態を示す図である。
【
図7】蛇行抑制装置の別例を示す図であり、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図7を参照しながら、本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る製造装置及び製造方法について説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する装置・部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付して示し、理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
【0019】
まず、図を参照しながら、製造装置1及びドア内装部品3(部品の一例)について説明する。
図1Aはドア内装部品3を製造する製造装置1の構成図である。製造装置1は、貼着機構としての真空成形装置20と、蛇行抑制機構である蛇行抑制装置30と、から構成される。なお、以下の説明中、「上下方向」とは、
図1Aに示す矢印のように、製造装置1の高さ方向を意味する。
【0020】
ドア内装部品3(
図1D参照)は、車両用ドアパネルのアッパーベースとして用いられる部品であり、基材4と基材4の表面4aに貼着される表皮材6とから構成されている。
【0021】
表皮材6は一対の表皮ピース材6a、6bから構成されている。表皮ピース材6a、6bの裏面にはウレタン素材等からなるクッション材12が張り付けられている。このクッション材12は必要に応じて省略することが可能である。
表皮ピース材6a、6bの素材としては、熱処理によって硬化する素材が用いられる。その素材の一例としてポリ塩化ビニル(PVC)、サーモプラスチックオレフィン(TPO)が挙げられるが、これに限定されることはない。
表皮ピース材6a、6bは、その端部を突き合わせて、
図1A、
図5A、
図5Bに示すように裏面側に端部を立ち上げ、端部同士を重ねた状態で糸Sにより縫い合わされている。縫い合わされた部分より先の部分が縫製部分7として表皮材6の裏面側に突出する。
表皮材6は、
図2に示すように、表皮ピース材6a、6bが縫製された状態で周囲が表皮クランプ27によって固定され、その状態で、
図1Aに示すように、真空成形装置20にセットされる。
なお、表皮ピース材6a、6bが突き合わされ、縫製部分7が形成された境界線を縫製ライン8と呼ぶ。本実施形態の表皮材6は、
図2に示すように、途中に曲がった部分10が形成された縫製ライン8を有する。
【0022】
図3に示す基材4は、成形された樹脂製の部材であり、基材4の表面4aには、縫製部分7が挿入されるよう溝部5が形成されている。溝部5は縫製部分7の縫製ライン8に沿って形成されていて、途中に、縫製ライン8の曲がった部分10が挿入されるよう、屈曲部分9が形成されている。なお、この溝部5は、表皮材6の意匠面に縫製部分7の凹凸を出さないために設けられる。基材4は樹脂以外の部材、例えばケナフ材により形成されてもよい。
基材4と表皮材6との貼着には、接着剤11が用いられる。接着剤11は、基材4の表面4aに塗布される。基材4は、表皮材6を貼着する際、基材4は、
図1A及び
図3に示すように、真空成形装置20の下型22(第二の型)に載置される。基材4は下型22に載置されたのち、後述する吸引ポンプ26の吸引により固定される。
【0023】
次に、製造装置1の貼着機構である真空成形装置20について説明する。真空成形装置20は、表皮材6を成形した後、基材4の表面4aに表皮材6を貼着する装置であり、表皮材6を成形する上型21(第一の型)と、基材4が載置される下型22(第二の型)とから構成される。上型21には、
図1Aに示すように複数の吸引孔21aが形成されていて、各吸引孔21aは、パイプライン25aを介して吸引ポンプ25に接続されている。加熱された表皮材6を、上型21にセットして、吸引ポンプ25を稼働させることで、表皮材6が成形される(
図1B参照)。
【0024】
下型22も、上型21と同様、
図1Aに示すように複数の吸引孔22aが形成されていて、各吸引孔22aはパイプライン26aを介して吸引ポンプ26に接続されている。上型21により表皮材6が成形された後、図示しない駆動機構により、基材4がセットされた下型22を上方向に移動させ、表皮材6が吸引された上型21と噛み合うことにより表皮材6と基材4とが貼着される。
【0025】
製造装置1の蛇行抑制装置30について説明する。蛇行抑制装置30は表皮材6の縫製部分7に当接して、その形を整える装置である。蛇行抑制装置30は、
図4Aに示すように、平面視で縫製部分7の縫製ライン8に沿って延びるよう形成されている。蛇行抑制装置30は、縫製部分7に側部に当接するプレート状の当接部材32と、当接部材32を支持する基部31とを備える。当接部材32は、
図5A、
図5Bに示すように、縫製部分7を挟み込み、その両側の側部7cに当接するように設けられている。当接部材32は、
図4A、
図4Bに示すように、縫製部分7の縫製ライン8に対して複数に分割されている。分割する数は任意であり、縫製ライン8の長さやその形状の複雑さによって分割数が設定される。
【0026】
各当接部材32は、基部31に付勢部34を介して弾性的に支持されていて、基部31に対して上下方向に移動可能に設けられている。付勢部34は、当接部材32を表皮材6に向けて付勢するよう設けられている。当接部材32を付勢部34により弾性的に支持することで、当接部材32を表皮材6に押し付けたとき、
図1B及び
図5Bに示すように、当接部材32が下がり圧力が吸収されるため、表皮材6の意匠面に押し跡がのこることを抑制できる。
【0027】
付勢部34は、
図5A及び
図5Bに示すように、当接部材32と連結する連結部35と、連結部35を支持するバネ36とから構成される。バネ36により、当接部材32は上方、すなわち、表皮材6に向けて付勢される。
【0028】
付勢部34は、
図4A及び
図4Bに示すように当接部材32の縫製ライン8の方向の端部32cのそれぞれに配置されている。このように、配置することで、当接部材32を安定して上下方向に移動させることができる。
【0029】
図4Aに示すように、当接部材32は、縫製ライン8が曲がった部分10に合わせて形成された屈曲部分39を有する。そのため、縫製ライン8の形状に合わせて当接部材32を設けることにより、縫製ライン8が曲がっている場合でも、縫製部分7の形を整え、蛇行を抑制することができる。
【0030】
一対の当接部材32の間には、基部31から立設するプレート状の押え部38が設けられている。押え部38は、縫製部分7とほぼ同じ幅を有し、当接部材32のそれぞれは、押え部38の側面を摺動して上下方向に移動する。押え部38は、当接部材32が縫製部分7の両側の側部7cに当接しているとき、上端38aが縫製部分7の先端7aに当接する。上端38aは、図に示すように先が尖った形状であるが、縫製部分7の形状に合わせて平らに形成されてもよい。
【0031】
蛇行抑制装置30は、基部31の下方に支持部材33が設けられていて、支持部材33が図示しない駆動機構と連結することにより、蛇行抑制装置30が上下方向及び幅方向に移動するよう構成されている。蛇行抑制装置30は、縫製部分7を挟み込み、当接して形を整えた後、下方に移動して、その後下型22の移動の妨げにならないよう、真空成形装置20の外まで幅方向(
図1Cの矢印F方向)に移動する。
【0032】
本実施形態の製造装置1を用いたドア内装部品3の製造方法について説明する。準備工程として、
図1Aに示すように、基材4を下型22に配置して、基材4の表面4aに接着剤11を塗布しておく。また、表皮材6を成形しやすいよう表皮材6を予め暖めておく。加熱された表皮材6を表皮クランプ27に取り付ける。この段階で、表皮クランプ27に取り付けられた表皮材6を下型22と上型21との間に移動させる。また、表皮材6と下型22との間に、蛇行抑制装置30を移動させる。
【0033】
次に、動作工程として、表皮材6を上型21に向けて上方向に移動させる。また同時に、蛇行抑制装置30を表皮材6に向けて上方向に移動させ、表皮材6の縫製部分7に当接させる。この時、
図5Aに示すように、縫製部分7の先端7aが、当接部材32に挟まれる。更に上方向に蛇行抑制装置30を移動させることで、
図5Bに示すように、当接部材32の上端32aが、縫製部分7の根元部分7bに当接して、押え部38も縫製部分7の先端7aに当接するようになる。当接部材32は、根元部分7bに下方に押され、基部31に対して下方(
図5Aの矢印E方向)に移動する。付勢部34により、当接部材32の表皮材6を押し付けたときの圧力が吸収されるため、表皮材6の意匠面に押し跡が残ることが抑制される。
そして、吸引ポンプ25を稼働させて、表皮材6を吸引し、上型21により成形する。このとき、表皮材6の意匠面に模様が形成される。
【0034】
次に、蛇行抑制装置30を、
図1Cに示すように、上型21により成形された表皮材6から離す。下方且つ幅方向(矢印F方向)に移動させ、真空成形装置20の外側まで移動させる。基材4が配置された下型22を、上方向に移動させ、表皮材6を吸引する上型21と噛み合わせる。このとき、表皮材6の縫製部分7が、基材4の溝部5に挿入され、表皮材6と基材4とを圧着する。表皮材6と基材4とは接着剤11により接着される。
表皮材6の吸引を解除して、下型22を下方に移動させることにより、
図1Dに示すように、ドア内装部品3の基材4に表皮材6が貼着された状態となる。この後、余分な表皮材6を切断する等の工程を経てドア内装部品3が完成する。
【0035】
図6及び
図7に、蛇行抑制装置30の別例である蛇行抑制装置130を示す。蛇行抑制装置130は、
図1A~
図5Bに示す蛇行抑制装置30と比べて、当接部材132の形状が異なっている。それ以外の部材は、蛇行抑制装置30と同様であるため、同じ符号を付しそれら説明は省略するものとする。当接部材132は棒形状であり、棒の側面が縫製部分7の側部7cに当接するよう構成されている。当接部材132はフレーム133により支持されていて、フレーム133が、付勢部34と連結している。このように、当接部材は、プレート状又は棒状に形成されてもよい。
【0036】
また、付勢部34はバネ36により付勢していたが、これは一例であり、バネ36の代わりにダンパーやゴム等を設けてもよい。
また、本実施形態では、貼着機構として真空成形装置20を用いていたが基材4及び表皮材6は吸着以外の方法、例えばクランプ等により上型、下型に固定されてもよい。また、基材4及び表皮材6は上下逆にセットされてもよい。
【0037】
上記の本実施形態では、具体例として自動車に用いられるドア内装部品3の製造装置及び製造方法について説明したが、製造装置及び製造方法は、ドア内装部品3に限定されることなく、別の内装部品や外装部品を製造するための製造装置及び製造方法であってよい。また、自動車に限定されることなく、電車、バス等の内装部品又は外装部品を製造する製造装置及び製造方法であってもよい。また、飛行機、船に用いられる部品の製造に利用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 製造装置
3 ドア内装部品(部品)
4 基材
4a 表面
5 溝部
6 表皮材
6a、6b 表皮ピース材
7 縫製部分
7a 先端
7b 根元部分
7c 側部
8 縫製ライン
9 屈曲部分
10 曲がった部分
11 接着剤
12 クッション材
20 真空成形装置(貼着機構)
21 上型(第一の型)
21a 吸引孔
22 下型(第二の型)
22a 吸引孔
25 吸引ポンプ
25a パイプライン
26 吸引ポンプ
26a パイプライン
27 表皮クランプ
30 蛇行抑制装置(蛇行抑制機構)
31 基部
32 当接部材
32a 上端
32c 端部
33 支持部材
34 付勢部
35 連結部
36 バネ
38 押え部
38a 上端
39 屈曲部分