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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】溶融金属撹拌用ガス吹込みプラグ
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/072 20060101AFI20230726BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20230726BHJP
   C21C 5/48 20060101ALI20230726BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C21C7/072 J
B22D1/00 P
C21C5/48 C
F27D3/16 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019215047
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021085071
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】冨谷 尚士
(72)【発明者】
【氏名】今井 忍
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 亮磨
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-036612(JP,A)
【文献】特開平11-071610(JP,A)
【文献】特開昭61-284513(JP,A)
【文献】特開昭62-214121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 5/28- 5/50
F27D 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端に接続部を有し、溶融金属を撹拌するガスが流れる導入管と、
前記導入管の前記接続部が接続され、上部に風箱上面を有し、内部が中空に形成されている風箱と、
一方端に固定部と、他方端に開口部とを有する中空管であり、前記風箱上面に前記風箱の内部と連通した状態で各々の前記固定部が固定されている複数の細管を有する細管群と、
前記細管群の少なくとも一部が埋設されて形成されている耐火物と、を備えているマルチホールプラグであって、
前記細管群には、直管部と、少なくとも1つの曲げられて形成されている曲がり部とを含んでいる細管が少なくとも1つ含まれているマルチホールプラグ。
【請求項2】
前記曲がり部は、前記細管が折り曲げられて形成されている折れ部を含む請求項1に記載されたマルチホールプラグ。
【請求項3】
前記曲がり部は、前記細管が滑らかに湾曲されて形成されている湾曲部を含む請求項1に記載されたマルチホールプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の精錬時において、溶融金属の撹拌に用いるガス吹込みプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の精錬において、効率的に精錬を行うには溶融金属の撹拌が効果的である。非引用文献1に開示されている、炉底に設置されたガス吹込みプラグから吐出するガスにより溶融金属を撹拌させる底吹き撹拌技術は、現在の製鋼プロセスにおいて不可欠なものとなっている。ガス吹込みプラグには種々の種類があり、単管、二重管、又は、SA羽口のように風箱を持たないガス吹込みプラグと、マルチホールプラグに代表されるガス吹込みプラグ自体に金属製の風箱を持つガス吹込みプラグとがある。
【0003】
図9図11は、従来のマルチホールプラグ10Fを示している。図9はマルチホールプラグ10Fの上面図、図10図8におけるC-C断面図、図11図9の細管群3Fの拡大図である。従来のマルチホールプラグ10Fは、ガスが導入される導入管2と、中空に形成され導入管2の一方端が固定されている風箱1と、風箱1に固定されており、風箱1からガスが分配供給され、複数の細管からなる細管群3Fと、細管群3Fが埋設されて形成されている耐火物4と、が組み合わされて形成された複合体として構成されている。図8図9において、ブロック体5は、炉を構成する部材である。
【0004】
細管群3Fは、複数の細管31~47を有している。図11に示されているように、複数の細管31~47は、炉の内面である稼働面8に平行な断面で見ると、四角形の各辺上と、各辺で画定された四角形の内部とに配置されており、全体として四角形状に配列されている。四角形の左端の頂点には細管31が配置されており、そこから四角形の各辺上に、反時計回りに細管32~42が配置されている。その内側には、細管43~46が四角形の各頂点上に配置されている。左端の頂点には、細管43が配置されており、そこから反時計回りに細管44~46が配置されている。中央には、細管47が配置されている。中心軸X-Xは、マルチホールプラグ10Fを構成する耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸である。17本の全ての細管31~46は、中心軸X-Xに平行に配置されており、細管31~47同士の間隔は、中心軸X-Xに直交するどの位置の断面においても図8と同じである。
【0005】
細管31~47を保護する耐火物4は、耐食性と耐スポーリング性のバランスに優れる材質、例えばMgO-Cれんがで形成されている。導入管2と、風箱1とは、炉内面に露出して配置されていないため、耐熱鋼やステンレス鋼で形成されていることはまれであり、多くの場合、普通鋼で形成されている。一方、細管群3Fは炉内面に露出することから、細管群3Fを構成する細管には、耐熱性に優れる各種ステンレス鋼や耐熱鋼のパイプが用いられている。精錬の対象となる溶融金属の実際の温度は、常に細管を形成する金属の融点以上であるが、細管から吐出されるガスによって細管が冷却されることで、細管群3Fは溶解されることはなく、ガス吹きプラグとしての機能が維持されている。しかし、このようなガス吹きプラグにおいて、細管同士の配置間隔が大きいと、稼働面からの受熱に比べてガスによる冷却が十分でない場合がある。その場合、細管に溶融部分が生じ、その溶融部分を起点に損傷が進んで、細管が大きく損傷することが知られている。細管の先行損傷を抑えるためには、吐出するガスによる細管の冷却を十分効かせることが有効であり、その方法として、細管同士の間隔を小さくし、耐火物に複数の細管を高密度に埋設することが考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「耐火物手帳(改訂12版)、第257ページ~第261ページ[耐火物技術協会編]」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、マルチホールプラグ10Fの製造時には、細管31~47と風箱1とを溶接する必要があり、細管溶接時の作業スペースを確保する必要から、隣り合う細管同士の間隔を大きくせざるを得ない状況にある。細管溶接時の作業スペースを十分確保すると、細管31~47同士の間隔が大きくなる。この対応策として、非特許文献1には、炭化水素ガスの分解による吸熱反応を利用した冷却方法が開示されているが、この方法では細管を2重構造にする必要があり、細管を多数埋設するマルチホールプラグには適していない。また、細管の2重構造化に対応して付帯設備も大掛かりになるため、設備導入に多額のコストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、細管と風箱との容易な溶接作業性を確保したまま、炉内面側の細管同士の間隔を小さくして細管同士を高密度に配置することで、細管の先行損傷を防ぎ、耐用性に優れる底吹きプラグを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一方端に接続部を有し、溶融金属を撹拌するガスが流れる導入管と、導入管の接続部が接続され、上部に風箱上面を有し、内部が中空に形成されている風箱と、一方端に固定部と、他方端に開口部とを有する中空管であり、風箱上面に風箱の内部と連通した状態で各々の固定部が固定されている複数の細管を有する細管群と、細管群の少なくとも一部が埋設されて形成されている耐火物と、を備えているマルチホールプラグであって、細管群には、直管部と、少なくとも1つの曲げられて形成されている曲がり部とを含んでいる細管を少なくとも1つ含まれている。
【0010】
また、本発明は、一方端に接続部を有し、溶融金属を撹拌するガスが流れる導入管と、導入管の接続部が接続され、上部に風箱上面を有し、内部が中空に形成されている風箱と、一方端に固定部と、他方端に開口部とを有する中空管であり、風箱上面に風箱の内部と連通した状態で各々の固定部が固定されている複数の細管を有する細管群と、細管群の少なくとも一部が埋設されて形成されている耐火物であって、上部に耐火物上面を有する耐火物と、を備えているマルチホールプラグであって、細管群には、耐火物上面における各々の開口部と耐火物の鉛直方向に平行な中心軸との間隔が、風箱上面における各々の固定部と耐火物の中心軸との間隔より小さくされている細管を少なくとも1つ含まれている。
【0011】
本発明に係るマルチホールプラグの曲がり部は、細管が折り曲げられて形成されている折れ部を含んでいてもよい。
【0012】
本発明に係るマルチホールプラグの曲がり部は、細管が滑らかに湾曲されて形成されている湾曲部を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細管群には、曲がり部を1つ以上含んでいる細管を少なくとも1つ含まれているため、耐火物上面における複数の細管同士の間隔を狭くしてより密集させ、冷却能を向上させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、細管群には、耐火物上面における各々の開口部と耐火物の鉛直方向に平行な中心軸との間隔が、風箱上面における各々の固定部と耐火物の中心軸との間隔より小さくされている細管を少なくとも1つ含まれているため、耐火物上面における複数の細管同士の間隔を狭くしてより密集させ、冷却能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、マルチホールプラグの曲がり部は、折れ部を含むことができる。したがって、細管に折れ部を設けるという容易な方法で、耐火物上面における複数の細管同士の間隔を狭くしてより密集させ、冷却能を向上させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、マルチホールプラグの曲がり部は、湾曲部を含むことができる。したがって、1か所で折り曲げる折れより滑らかに細管を加工できる湾曲部を設けるという容易な方法で、耐火物上面における複数の細管同士の間隔を狭くしてより密集させるとともに、折れ部よりも滑らかな湾曲部によりガスの流れの圧力損失を抑えて効率よく流すこととあいまって、冷却能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るマルチホールプラグの上面図である。
図2図1のA-A断面における断面図である。
図3図2のB-B断面における断面図である。
図4図1の細管群3Aの拡大図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るマルチホールプラグにおいて、図2に相当する断面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るマルチホールプラグにおいて、図2に相当する断面図である。
図7】本発明の実施の形態4に係るマルチホールプラグにおいて、図2に相当する断面図である。
図8】本発明の実施の形態5に係るマルチホールプラグにおいて、図2に相当する断面図である。
図9】従来のマルチホールプラグの上面図である。
図10図9のC-C断面における断面図である。
図11図9の細管群3Fの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態1に係るマルチホールプラグ10Aについて、図1図4を参照して詳細に説明する。
図1はマルチホールプラグ10Aの上面図である。また、図2図1のA-A断面における断面図である。また、図3図2のB-B断面における断面図である。また、図4は、図1の細管群3Aの拡大図であり、細管131~147の配置を示している。
【0019】
図1図4に示すように、マルチホールプラグ10Aは、溶融金属を撹拌するガスが流れる導入管2と、導入管2が接続され、内部が中空に形成されている風箱1と、複数の細管131~147を有し、風箱1に固定されている細管群3Aと、前記細管群3Aの一部を除く全体が埋設されて形成されている耐火物4とが組み合わされて形成された複合体である。なお、図1図3図5図10に示されているブロック体5は、マルチホールプラグ10A~10Fが設置される炉を構成している部材である。
【0020】
導入管2は、図示しないガス供給源から風箱1にガスを供給する中空管である。導入管2の一方端である接続部2aは、風箱1に接続されている。導入管2の図示しない他方端は、前記図示しないガス供給源に接続されている。導入管2と風箱1とは連通しており、導入管2を流れるガスが風箱1に供給される。導入管2は、普通鋼により形成されている。
【0021】
風箱1は、導入管2から供給されるガスを細管群3Aに分配供給する中空の部材である。風箱1は、風箱1の上部に風箱上面1a、風箱1の下部に風箱下面1bを有している。風箱下面1bには、導入管2の接続部2aが接続されている。また、風箱上面1aには、細管群3Aが接続されている。風箱1は、普通鋼で形成されている。
【0022】
細管群3Aは、風箱1内のガスをマルチホールプラグ10Aの上部まで導く中空の複数の細管131~147である。本発明は、細管を密集して配置させることで冷却能を高めることを目的としているため、細管群3Aは少なくとも2本以上で構成されることが望ましい。また、細管数が多いほど冷却能が増すことから、細管数は3本以上とすることが好ましい。細管群3Aは、複数の細管131~147を有している。細管のそれぞれの符号は、細管30+n(ただしnは自然数)と表すこともできる。以下では、それらの何れかで表記する。
【0023】
複数の細管131~147は、炉の内面である稼働面8に平行な断面で見ると、四角形の各辺上と、各辺で画定された四角形の内部とに配置されており、全体として四角形状に配列されている。図4には、複数の細管131~147の配置が示されている。四角形の左端の頂点には細管131が配置されており、そこから四角形の各辺上に、反時計回りに細管132~142が配置されている。その内側には、細管143~146が四角形の各頂点上に配置されている。左端の頂点には、細管143が配置されており、そこから反時計回りに細管144~146が配置されている。
【0024】
稼働面8に平行な断面における細管群3Aの配列形状は、四角形以外でも可能であり、例えば、円形、または、五角形、六角形のような四角形以外の多角形でもよい。複数の細管30+nが四角形状以外に配列されている場合でも、複数の細管30+nのそれぞれは、円形を画定する円上、または多角形を画定する各辺上と、その内部とに配置される。
【0025】
複数の細管131~147は、一方端に固定部3a、他方端に開口部3bとをそれぞれ有している。複数の細管131~147は、固定部3aを下に、開口部3bを上にし、固定部3aが風箱上面1aに溶接されて、それぞれ固定されている。
【0026】
細管群3Aは、曲がり部3dを含む16本の細管131~146と、まっすぐな細管147との合計17本の細管131~147を有している。16本の細管131~146は、それぞれの固定部3aと開口部3bとの間において、2つの曲がり部3dが設けられている。2つの曲がり部3dは、折れ部である。細管131は、固定部3aと開口部3bとの間に、固定部3a側に第1折れ部131eと、開口部3b側に第2折れ部131fとを有している。その他の細管132~146も同様に、固定部3a側に第1折れ部132e~146eと、開口部3b側に第2折れ部132f~146fとを有している。複数の細管131~147のうち、中央に配置されている1本の細管147は、曲がり部3dがなく直線状に形成されている。
【0027】
細管131~146は、それぞれ風箱上面1aから鉛直上方にまっすぐ伸びている。細管131~146のそれぞれに設けられている第1折れ部131e~146eにより、固定部3aから延びている細管131~146がそれぞれ曲げられて、耐火物4の中心軸X-X方向に延びる形状とされている。また、第2折れ部131f~146fより、耐火物4の中心軸X-X方向に延びる形状とされている複数の細管131~146のそれぞれは、第2折れ部131f~146fから鉛直上方に延びる形状とされている。このような細管131~146の形状により、細管群3Aは、耐火物上面4aにおける開口部3bと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔Lが、風箱上面1aにおける固定部3aと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔Mより小さくされている。すなわち、耐火物上面4aにおける細管131~147同士の間隔は、風箱上面1aにおける細管131~147同士の間隔より小さくされている。
なお、耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xを正確に決定しにくい場合は、耐火物4の概略中央付近を通る鉛直方向に平行な直線、または耐火物4の概略中央付近に位置する細管の中心軸を通る鉛直な直線を、耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとしてもよい。
【0028】
複数の細管131~147について、中央の1本の細管147は曲がり部がないまっすぐな細管である。そのすぐ周囲に配置されている複数の細管143~146は、曲げ角度が小さい第1折れ部143e~146eと第2折れ部143f~146fとが設けられている。更にそれらの外周に配置されている複数の細管131~142には、曲げ角度が大きい第1折れ部131e~142eと第2折れ部131f~142fとが設けられている。なお、折れ部の曲がり角度とは、曲げられて形成されている部分と、折れ部がなくまっすぐな直管とのなす角度(狭角)である。すなわち、複数の細管131~147は、耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xからの距離により、曲げ角度が大きい細管131~142と、曲げ角度が小さい細管143~146と、曲げられていない細管147とが組み合わせて配置されている。円形あるいは多角形状に配列された細管131~147の中央付近に配置されている1本の細管147は、最初に溶接するので十分な作業スペースが存在することから、曲がり部が設けられている細管を使う必要がない。
【0029】
なお、それぞれの細管の曲がり方向や角度について、複数の細管131~147の開口部3bを、耐火物4の中心軸X-Xに寄せるように、曲がり部形状を決定すると、複数の細管131~147の開口部3bを密集させやすい。それ以外でも、それぞれの細管の曲がり方向や角度は、上記以外にも細管131~146ごとに適宜設定可能である。複数の細管131~147の配列、または取り合わせの関係上、2回を超えて曲がり部を有する複数の細管131~146とすることも可能である。また、それぞれの細管の曲がり形状は、直管を加工して曲がり部を設けてもよいし、曲がり部3dを有する形状の細管を鋳造してもよい。
【0030】
風箱1の風箱上面1aにおける複数の細管131~147同士の間隔は、各々の細管を風箱上面1aに溶接できる空間を確保した間隔である必要がある。一方、耐火物上面4aにおける複数の細管131~147同士の間隔を狭くし、冷却能上、密集させることが好ましい。これを実現するために、上記構成により、風箱上面1aにおいては細管131~147同士の間隔を大きくして溶接作業性を確保しながら、耐火物上面4aにおける複数の細管131~147同士の間隔を狭くしてより密集させ、冷却能を向上させることができる。また、第1折れ部131e~146eと第2折れ部131f~146fとを含む細管131~146とすることで、マルチホールプラグ10Aの耐火物4に亀裂が発生した場合でも、細管131~146がアンカーのように作用して耐火物4の剥離を抑制できるという付随効果も期待できる。
【0031】
各々の細管131~147の内径は1mm~4mm、肉厚は0.5mm~2mm(片側分)であることが望ましい。この理由については、次のとおりである。細管131~147の内径が1mm未満であると、使用中に閉塞が生じて、溶融金属への十分なガス供給ができなくなる可能性がある。また、内径が4mmを超えると、溶鋼静圧によって細管131~147内に溶融金属が流れ込み、溶融金属のマルチホールプラグ10Aからの漏洩を引き起こす可能性がある。
【0032】
複数の細管131~147は、その用途から高い耐熱性を必要とする。加えて、曲げ加工されることから、耐熱性、及び塑性に優れる各種のステンレス鋼あるいは耐熱鋼により形成されることが最も望ましい。
【0033】
耐火物4は、細管131~147を保護する部材である。耐火物4は、MgO-C質、Al203-C質、Al203-MgO質、Al203-Spinel質等、市販されている各種組成のものから、使用条件によって適した組成の材料が選択されて用いられる。特に、耐火物4は、カーボン含有量が10~30%のMgO-Cれんがで形成されることが好ましい。
【0034】
耐火物4の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下のように、混合混練工程、成形工程、及び、加熱工程により製造される。
【0035】
混合混練工程では、配合された原料を一括あるいは分割して、混合機、または混練機により混合及び混練する。一般的に、耐火物4の原料の混練には、容器固定型では、ローラー式のSWP、及びシンプソンミキサー、ブレード式のハイスピードミキサー、加圧式のハイスピードミキサー、及びヘンシェルミキサー、加圧ニーダーと呼ばれる混練機が使用される。また、容器駆動型では、ローラー式のMKP、ウェットパン、及び、コナーミキサー、ブレード式のアイリッヒミキサー、ボルテックスミキサーなどの混練機が使用される。また、これら混練機に、加圧減圧制御装置、及び/または温度制御装置(加温、冷却、または保温)等を付加する場合もある。混合時間、または混練時間は、原料の種類、配合量、バインダーの種類、温度(室温、原料とバインダーの温度)、混練機の種類や大きさによって異なり、通常数分から数時間である。
【0036】
混合混練工程の次は、成形工程である。混練物の機械成形には、静圧式プレスである、衝撃圧プレスのフリクションプレス、スクリュープレス、ハイドロスクリュープレス等の油圧プレス、トッグルプレス等が使用される。または、振動プレス式、CIPと呼ばれている成形機、等によって成形することができる。これら成形機には真空脱気装置、及び/または温度制御装置(加温と冷却、または保温)等を付加する場合もある。プレス成形機による成形圧力や締め回数は、成形される煉瓦の大きさ、原料の種類、配合量、バインダーの種類、温度(室温、原料やバインダー)、成形機の種類や大きさ、によって異なるが、成形圧力は通常0.2t~3.0tであり、締め回数は1回~数十回である。また、この成形物は、不定形耐火物を流し込んで成形することも可能であり、混練後数分から数時間かけて施工される。施工の際には、必要に応じてバイブレーターまたは振動テーブルを用いて加振し、より緻密な施工体とすることが可能である。
【0037】
成形工程の次は、加熱工程である。成形体は、揮発分の除去と強度発現を促すために熱処理されて、乾燥される。成形後に熱処理することにより、施工に耐えうる強度を発現できる。およそ500℃以下の加熱の場合には、熱風循環式の乾燥加熱炉を使用する。また、それ以上の温度の場合には、電気加熱式、ガス加熱式、オイル加熱式等のバッチ式単独窯、例えばシャトルキルンやカーベルキルンや、連続式のトンネル窯などが最適である。十分に温度調整可能で均質加熱ができる加熱炉であれば、どのような形式のものでも使用できる。
【0038】
<実施の形態2>
続いて、本発明の実施の形態2に係る、マルチホールプラグ10Bについて説明する。実施の形態2は、実施の形態1に対し、細管231~246に設けられているそれぞれの曲がり部3dが1つである点が異なっている。その他は同じである。
【0039】
図5には、細管群3Bを備えるマルチホールプラグ10Bの、図2に相当する断面図が示されている。なお、細管231~247の配置は、実施の形態1に準じている。すなわち、細管231~247の配置は、図4に示す細管131~147とそれぞれ同じである。図5には、1つの曲がり部3dを含む複数の細管231~246と、まっすぐな細管247とを有する細管群3Bが示されている。曲がり部3dは、1つの第3折れ部231g~246gである。中央の1本の細管247は曲り部3dがないまっすぐな細管247である。また、そのすぐ周囲に配置されている複数の細管243~246は、曲がり角度量が小さい第3折れ部243g~246gが設けられている。更にその外周に配置されている複数の細管231~242は、曲がり角度量が大きい第3折れ部231g~242gが設けられている。
【0040】
上記構成により、細管群3Bは、耐火物上面4aにおける開口部3bと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔Lが、風箱上面1aにおける固定部3aと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔Mより小さくされている。複数の細管231~246は、各々の開口部3bが固定部3aより中心軸X-Xに寄っている。すなわち、耐火物上面4aにおける細管231~247同士の間隔は、風箱上面1aにおける細管231~247同士の間隔より小さくされている。
【0041】
<実施の形態3>
続いて、本発明の実施の形態3に係る、マルチホールプラグ10Cについて説明する。実施の形態3は、実施の形態1に対し、細管331~347には曲がり部3dが設けられておらず、細管331~346の風箱上面1aに対する固定角度が異なっている。その他は同じである。
【0042】
図6には、細管群3Cを備えるマルチホールプラグ10Cの、図2に相当する断面図が示されている。なお、細管331~347の配置は、実施の形態1に準じている。すなわち、細管331~347の配置は、図4に示す細管131~147の配置とそれぞれ同じである。図6には、折れ部等の曲がり部3dが設けられていない細管331~347を有する細管群3Cが示されている。細管群3Cが有する複数の細管331~347は、全てまっすぐな細管331~347である。細管331~347は、各々の固定部3aが風箱上面1aに溶接されて固定されているが、それぞれの細管331~347の位置に応じた固定角度を有して溶接固定されている。
【0043】
細管331~347の固定角度について、中央に位置する配管347は、風箱上面1aに対し垂直、すなわち鉛直上方になるように固定されている。また、中央に位置する配管347以外の複数の配管331~346は、その位置に応じて、鉛直上方に対して傾けて配置されている。中央の1本の細管347のすぐ周囲の複数の細管343~346は、耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-X側に少し傾いて固定されている。その外周の複数の細管331~342は、複数の細管343~346より中心軸X-X側にさらに傾いて固定されている。それにより、複数の細管331~346は、各々の開口部3bが固定部3aより耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-X側に近づけて配置されている。すなわち、耐火物上面4aにおける細管331~347同士の間隔は、風箱上面1aにおける細管331~347同士の間隔より小さくされている。
【0044】
<実施の形態4>
続いて、本発明の実施の形態4に係る、マルチホールプラグ10Dについて説明する。実施の形態4は、実施の形態1に対し、2つ設けられている曲がり部3dが、折れ部ではなく、2つの湾曲部である点が異なっている。その他は同じである。
【0045】
図7には、細管群3Dが備えるマルチホールプラグ10Dの、図2に相当する断面図が示されている。なお、細管431~447の配置は、実施の形態1に準じている。すなわち、細管431~447の配置は、図4に示す細管131~147の配置とそれぞれ同じである。図7には、2つの曲がり部3dを含む複数の細管431~446を有する細管群3Dが示されている。細管群3Dは、2つの曲がり部3dを含む16本の細管431~446と、まっすぐな細管447との合計17本の細管431~447を有している。16本の細管431~446は、それぞれの固定部3aと開口部3bとの間において、2つの曲がり部3dが設けられている。2つの曲がり部3dは、滑らかに湾曲している2つの湾曲部である。細管131は、固定部3aと開口部3bとの間に、固定部3a側に第1湾曲部431hと、開口部3b側に第2湾曲部431jとを有している。その他の細管432~446も同様に、固定部3a側に第1湾曲部432h~446hと、開口部3b側に第2湾曲部432j~446jとを有している。複数の細管131~147のうち、中央に配置されている1本の細管147は、曲がり部3dがなく直線状に形成されている。
【0046】
複数の細管431~447は、風箱上面1aも鉛直方向になるように固定されている。複数の細管431~446は、第1湾曲部431h~446hにより、固定部3aから延びている各々の細管431~446が曲げられて、耐火物4の中心軸X-X方向に延びる形状とされている。また、第2の湾曲部432j~446jにより、第1湾曲部432h~446hで耐火物4の中心軸X-X方向に曲げられて延びる形状とされている複数の細管431~446の各々は、鉛直上方に延びる形状とされている。中央の1本の細管447は湾曲部を含まないまっすぐな細管である。中央の1本の細管447のすぐ周囲に配置されている細管443~446は、曲率が大きい第1湾曲部443h~446hと第2湾曲部443j~446jとが設けられている。その外周に配置されている細管431~442は、曲率が小さい第1湾曲部431h~442hと第2湾曲部431j~442jとが設けられている。
【0047】
上記構成により、複数の細管431~446は、各々の開口部3bが各々の固定部3aより中心軸X-Xに寄って配置されている。すなわち、細管群3Dは、耐火物上面4aにおける開口部3bと耐火物4の中心軸X-Xとの間隔Lが、風箱上面1aにおける固定部3aと耐火物4の中心軸X-Xとの間隔Mより小さくされている。その結果、耐火物上面4aにおける細管431~447同士の間隔は、風箱上面1aにおける細管431~447同士の間隔より小さくされている。
【0048】
<実施の形態5>
続いて、本発明の実施の形態5に係る、マルチホールプラグ10Eについて説明する。実施の形態5は、実施の形態1の2つの曲がり部3dに対し、1つの曲がり部3dである点が異なっている。その他は同じである。
【0049】
図8には、細管群3Eが備えるマルチホールプラグ10Eの、図2に相当する断面図が示されている。なお、細管531~547の配置は、実施の形態1に準じている。すなわち、細管531~547の配置は、図4に示す細管131~147の配置とそれぞれ同じである。1つの曲がり部3dとは、細管531~547の全長にわたって形成されている湾曲部である。図8には、細管531~547の固定部3aから開口部3bまで、すなわち細管531~547の全長にわたって第3湾曲部531k~546kとされている複数の細管531~546を有する細管群3Eが示されている。中央に配置されている細管547は、第3湾曲部を含まないまっすぐな細管547である。中央の1本のまっすぐな細管547のすぐ周囲に配置されている細管543~546は、湾曲の曲率が大きい第3湾曲部543k~546kが設けられている。更にその外周に配置されている細管531~542は、湾曲の曲率が小さい第3湾曲部531k~542kが配置されている。
【0050】
この構成により、細管群3Eは、耐火物上面4aにおける開口部3bと耐火物4の中心軸X-Xとの間隔Lが、風箱上面1aにおける固定部3aと耐火物4の中心軸X-Xとの間隔Mより小さくされている。すなわち、細管群3Eにおいて、耐火物上面4aにおける複数の細管531~547同士の間隔は、風箱上面1aにおける複数の細管531~547同士の間隔より小さくされている。
【0051】
なお、実施の形態5では、細管531~546の全長にわたって第3湾曲部531k~546kとされているが、複数の細管531~546の固定部3aから開口部3bまでの間において、全長ではなく部分的に、すなわち一部分が第3湾曲部531k~546kとされていてもよい。
【0052】
本発明に係るマルチホールプラグ10Aが備える細管群3Aには、曲がり部3dである第1折れ部131e~146eと第2折れ部131f~146fと含んでいる細管131~146が16本含まれている。そのため、本発明に係るマルチホールプラグ10Aが備える細管群3Aは、耐火物上面4aにおける各々の開口部3bと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔が、風箱上面1aにおける各々の固定部3aと耐火物4の鉛直方向に平行な中心軸X-Xとの間隔より小さくされている。
【0053】
したがって、細管と風箱1との容易な溶接作業性を確保したまま、炉内面である耐火物上面4aにおける、細管同士の間隔を小さくし、細管同士を高密度に配置することで、細管の先行損傷を防ぎ、耐用性に優れる底吹きプラグを得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 風箱、1a 風箱上面、2 導入管、2a 接続部、3A~3F 細管群、3a 固定部、3b 開口部、3d 曲がり部、4 耐火物、4a 耐火物上面、31~47,131~147,231~247,331~337,431~437,531~547 細管、131e~146e 第1折れ部、131f~146f 第2折れ部、231g~246g 第3折れ部、431h~436h 第1湾曲部、431j~436j 第2湾曲部、531k~546k 第3湾曲部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11